説明

水分検知用可食性インキ

【課題】水分の検知を可食性天然色素の変色にて行い、水分検知後も図柄の形状を維持する水分検知用のインキおよび印刷したシート、積層物、紙おむつを提供する。
【解決手段】可食性の材料にて構成されたインキにおいて、エタノール可溶性の樹脂、PH変化にて変色する天然色素、およびエタノールからなる水分検知用のインキ。また、水分の検知を塩基性物質の作用にて行う上記水分検知用のインキ。また、天然色素がウコン色素、ベニバナ赤色素である上記水分検知用のインキ。さらに、天然色素が、天然色素と微結晶セルロースとを1〜20:80〜99の割合にて混合させた微粒子色素である上記水分検知用のインキ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水分の検知機能を有するインキに関し、特に視認による水分の検知機能を有するインキおよびそのインキを用いたシート、積層物、おむつに関する。
また、本発明は、食品関連における使用においての安全性や、乳幼児等が口にしても高い安全性を得られる、可食性の材料による構成としたインキおよびシート、積層物、紙おむつに関する。
【背景技術】
【0002】
幼児に対する躾の促進や、老人や寝たきり病人用の介護の観点において、紙おむつにも尿等の水分検知付きのものが用いられるようになっている。
このような観点でのインキや印刷物には、以下のような技術が検討されてきている。
【0003】
例えば文献1には、 酸性度にて見えるようになるインキおよび酸性度でぼやける、あるいは、消えるインキで構成された子供用おしめが記されている。用いられている材料は、リトマス試薬やフタレイン等のPH指示薬である。
【0004】
また、文献2は、水分にて透明化する層を用いるもので、不透明化の図柄と透明化部とを設けて水分を検知させる使い捨ておむつである。水分の検知はできるものの、視認性の観点では透明、不透明の領域がなかなか判別しにくい点があった。
【0005】
文献3および文献4には、水分の検知により有機酸と呈色性の発色材料を組み合わせたインキおよび記録媒体が示されている。文献3では、安息香酸が、文献4では、スルホン酸誘導体が用いられている。これらは、おむつの外部に漏れたり、子供が誤って口にしたりしたときに、必ずしも安全な材料とはいえない点を有している。
【0006】
文献5には、PH指示薬とPH調整成分からなる湿り度をしめすホットメルト接着剤が示されている。
【0007】
また、文献6、7、8には、PHにて変色するホットメルトタイプの湿り度のインジケータがしめされている。
【0008】
文献9には、 水分によりインキ皮膜がとけ図柄が崩れ去るインキが、文献10には、 結合剤第1と第2があり、第1は、初期の色を不動化し、結合剤第2は、最終色を不動化する着色剤の保持、耐久性を有する湿り度のインジケータが示されている。
【0009】
文献11,12、は、非水溶性の不変模様と溶解性の可変模様からなる使い捨てのおむつが示されている。
【0010】
文献13には、顕色剤の働きかけで発色する着色剤およびPH調整剤を含有するインジケータインキが示されている。
【0011】
これらの技術にて用いられている材料は、PHの指示薬を用いるものであり幼児等を対象とすると、口に間違って入ったときの安全性についての考慮が万全とはいえない。
【0012】
また、一部、食用の色素や天然色素を用いたものもあるが、この場合は、一般の顔料(食用の色素でない材料)を主体とした画像を形成し、食用ないし天然色素は、水分検知において流れ出すような用途で使用される程度であった。
【特許文献1】特開昭60-2468026号公報
【特許文献2】実開平03-58416号公報
【特許文献3】特開平6-289006号公報
【特許文献4】特開平8-92511号公報
【特許文献5】特開2001-11425号公報
【特許文献6】特開2003-516185号公報
【特許文献7】特開2004-512425号公報
【特許文献8】特開2003-183546号公報
【特許文献9】特開2005-517941号公報
【特許文献10】特開2004-57640号公報
【特許文献11】特開2004-89614号公報
【特許文献12】特開2004-285191号公報
【特許文献13】特開2005-185643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
これらの水分検知用インキをもちいた紙おむつにおいては、流れた染料や色素のため紙おむつ等が汚れた様に見えてしまうことがあった。特に、色素の流出によって変色させるタイプの水分検知用インキでは、変色前と変色後の色の判別差を大きくさせるために、色素の量を多くする必要があり、このため、流れた色素による汚れが目立ちやすくなる欠点が生じた。また、変色後の色が変色前の色より、どうしても、薄くなる傾向にあり、色調によっては水分による変色が判別し難いことがあった。また、他の衣料品を染着したりする心配も考えられた。また、そのような心配の少ないものとして水分検知により消色するタイプのインキを用いるものもあったが、こちらは、検知の前後での判別が目立ち難いことが欠点となった。
【0014】
このため、消色或いは変色後に流出した色素による汚染や、変色後の色が変色前の色と比べて淡いことによる視認性の不足の少ない、そして当然人体(乳幼児等)への害のない水分(尿)検知機能を有するインキおよびそのシート、積層物及び該シートを用いた紙おむつの実現が望まれていた。
【0015】
また、紙おむつの利用者としての幼児において、もし仮に、幼児が口にしても大丈夫なようなきわめて安全、衛生性に富んだ材料でのインキおよびシート、積層物、紙おむつの実現が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであり、
1)可食性の材料にて構成されたものよりなるインキにおいて、エタノール可溶性の樹脂、PH変化にて変色する天然色素およびエタノールよりなる水分検知用のインキに関する。
2)水分の検知を塩基性物質の作用にて行う上記インキ。
3)天然色素がウコン色素である上記インキ。
4)天然色素がベニバナ赤色素である上記インキ。
5)天然色素が、天然色素と微結晶セルロースとを1〜20:80〜99の割合にて混合させた微粒子色素である上記インキ。
6)更に、プロピレングリコールを用いる上記インキ。
7)樹脂がシェラック樹脂である上記インキ。
8)上記水分検知用インキを印刷したシート(A)と、塩基性物質を用いたインキにて印刷されたシートとより構成された水分検知可能な積層物。
9)上記塩基性物質を用いたインキにて印刷された印刷部を有するシートに、別途、水分検知用インキを印刷した水分検知可能なシート。
10)微粒子状の塩基性物質を含有させた液不透過性のシートに、水分検知用インキを印刷した水分検知可能なシート。
11)液不透過性のシート(A)と液透過性のシート(B)との間に水分の吸収体(C)を含む使い捨ておむつにおいて、液不透過性のシート(A)の水分吸収体に接する面に、水分吸収体側より、塩基性物質を印刷した液透過性シート(D)、エタノール可溶性の樹脂、PHにて変色する天然色素およびエタノールよりなるインキを用いる水分検知用インキを吸収体側に印刷した液不透過性のシート(A)となるように構成した使い捨ておむつ。
12)液不透過性のシート(A)と液透過性のシート(B)との間に水分の吸収体(C)を含む使い捨ておむつにおいて、液不透過性のシート(A)の水分吸収体に接する面に、エタノール可溶性の樹脂、PHにて変色する天然色素およびエタノールよりなるインキを用いた印刷画素と、塩基性物質を用いたインキ印刷画素とを、それぞれ1mm以上の間隔があくように配置して画像を形成した液不透過性のシート(A)となるように構成した使い捨ておむつ。
13)液不透過性のシート(A)と液透過性のシート(B)との間に水分の吸収体(C)を含む使い捨ておむつにおいて、液不透過性のシート(A)が、微粒子状の塩基性物質を含有させた液不透過性のシートであり、この水分吸収体に接する面側に、エタノール可溶性の樹脂、PHにて変色する天然色素およびエタノールよりなるインキを用いた印刷画素を形成した使い捨ておむつ。
14)液不透過性のシート(A)と液透過性のシート(B)との間に水分の吸収体(C)を含む使い捨ておむつにおいて、液不透過性のシート(A)と、水分吸収体(C)との間に、エタノール可溶性の樹脂、PHにて変色する天然色素およびエタノールよりなるインキを用いた印刷画素を形成したシートおよび塩基性物質を用いたインキにて印刷されたシートとにより構成された水分検知可能な積層物をもちいる使い捨ておむつ。
【0017】
本発明は、可食性の材料より構成されるインキとすることを主眼として開発した。
したがって、色素、インキベースとなる樹脂(インキバインダー)、色素のpHによる色相の変化、水分検知として最適な塩基性の物質を種々検討した。
更にpHの調整剤の安全性、効果等を考慮し、更にまたインキバインダーとなる樹脂は好ましくは水またはアルコール系の溶剤に溶解し且つ乾燥した塗膜が水に対する耐性(耐性は完全でなくてもよい。水に対して半溶解か膨潤してもよい)を持つ様な物を選定して本発明を完成したものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のインキは、水分の存在で変色することで、目視での確認を可能にした。また図柄が流れにくいことから、デザインの保持、色素流れ出しの汚れ感もない。また、安全性の高い材料を用いており、幼児等の使用においても好適なおむつ等の尿検知を発揮する。
【0019】
本発明の印刷構成方法によって得られる積層シートは、水分の存在下で、変色して該水分の存在を目視で確認することが可能であり、乳幼児等の排尿の的確な認識が容易となり、且つ色素の流出による変色でないため、汚れが目立たなくて済む。また、本発明のインキの印刷によって得られるシートは、変色前の色調より、乳幼児等の排尿による変色後の色調を濃くすることが可能であり、乳幼児等の排尿の的確な視認性に優れており、紙おむつ等の尿(水分)検知として優れている。
【0020】
本発明の、色相の変化の1例を示すと、シート(フィルム)に印刷されたインキ層中の色素は、黄色、赤色、等の色素の色であるが、水分や尿などによって、例えば、シート上ないし、表面に印刷した塩基性物質の作用でインキ層中の色素とのPHの変化作用が働き、その過程で、色素の色変化を生じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、可食性の材料にて構成されたものよりなるインキに関するものである。
インキの材料においては、食品素材および食品添加物として認められる(相当する)材料にて構成した。したがって、例え、間違って口にしても、安全性において十分配慮されたインキである。
【0022】
本発明にて、エタノール可溶性の樹脂としては、シェラック樹脂、ダンマル樹脂等の天然物からの精製樹脂ないし抽出樹脂また、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の合成系のセルロース樹脂等が用いられる。アルコールへの溶解性およびインキ化後の印刷塗膜の耐水性からはシェラック樹脂が好ましい。
【0023】
また、PH変化にて変色する天然色素としては、ぶどう果汁色素、ブルーベリー色素、レッドビート色素、赤キャベツ色素、チョウマメ色素、紫いも色素、シソ色素が用いられる。天然色素においては、PH変色後の色のにじみの発生を生じる場合も有しており、このようなにじみを低減させる色素としては、ベニバナ赤色素、ウコン色素、パプリカ色素が優れている。また、天然色素は、微結晶セルロースとの配合にて染着させた色素が変色および滲み出し、耐光性の向上も発揮する。この場合は、天然色素と微結晶セルロースとを1〜20:80〜99の割合にて混合させた微粒子色素とすることで効果が大となる。
【0024】
なお、上記の微粒子は、0.1〜200ミクロン、このましくは、0.5〜100ミクロンの粒子としたものを用いる。
【0025】
本発明におけるインキの液体成分は、樹脂の溶解および色素の溶解、分散を行う。このような溶剤としては、エタノールが好ましい。溶解の程度および粘度、乾燥性の調整において、水や、プロピレングリコールを一部用いることができる。
【0026】
本発明では、色素の安定性をよくするためインキは、PHを7以下にしたタイプが好ましい。インキは、前記の天然色素を用いる場合、PHは、7以下のインキとなるが、更に、インキを酸性サイドによせておく場合には、極微量の酸をインキに加えることができる。このような酸としても、可食性の材料であり、クエン酸、乳酸、酢酸、酒石酸等が用いられる。
【0027】
本発明においての水分検知は、水ないし尿等の検知となる。これらは、中性付近の液体であり、水分の作用だけでの天然色素の色の変化は生じにくい。このような色の変化を促進するため、本発明では、塩基性物質をもちいてPHの変化を顕著とさせる。このような塩基性の物質も、可食性の材料であり、さらには、化粧品用の材料としても認められる材料が好ましい。
【0028】
このような材料としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等が用いられる。なお、この塩基性物質は、水不透過性のシートに印刷される。あるいは、PHにて変色するインキの印刷面に対応して印刷される。あるいは、水不透過性のシートに微粒子状態で含有させる等の方法でもちいられる。あるいは、水透過性のシート(紙、不織布等)に、印刷(塗工、含浸等)し、乾燥させて用いる。
【0029】
塩基性物質をもちいるインキを製造する場合には、前記の天然色素を用いたインキと同様に、可食性の材料にて構成されたものよりなるインキとすることが好ましい。この場合は、塩基性物質 0.01重量%〜5重量%を含むエタノール可溶性(エタノールおよび水可溶性)の樹脂およびエタノールよりなる塩基性物質のインキとする。このインキは、前記の天然色素を用いたインキの印刷面と向き合う面への印刷あるいは、天然色素を用いたインキと同様のシートへの非重なりの印刷にて、水分の検知にてPH変化を生じさせる積層シートを作製することができる。また、別々に印刷したシートを積層することも好ましい方法である。
【0030】
本発明のインキには、用途に応じて消泡剤、増粘剤、可塑剤、分散剤、乳化剤、酸化防止剤、防腐剤等を適量含有することもできる。また、本発明のインキに、消色インキ或いは水分の検知機能を有しない通常のインキを混合することも可能である。
【0031】
本発明のインキは、前記の天然色素を0.1〜20重量部、アルコール可溶性樹脂(インキバインダー)を2〜50重量部、pH調整剤、溶剤(エタノール、必要に応じ、プロピレングリコール、水等)を適量混合して製造したものよりなる。なお、この比率は用途、印刷条件等に応じて適量変更しても良い。
【0032】
本発明に用いられるシートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂等に前記の炭酸カルシウム等の微粒子を多量に混練し、延伸することにより、微細な穴(透湿性)を有するように加工した塩基性物質の含有シート(合成樹脂フィルム)を挙げることができる。また、塩基性物質からなる微粒子を含有するシートは、そのままで、さらには、シートの上に塩基性物質からなるインキを印刷することにより得ることも出来る。
また、変色をするインキや塩基性のインキを印刷する基材は、合成樹脂フィルムの他、紙、合成紙、または不織布等を用いることも可能である。
【0033】
水分の存在下、塩基物質の働きかけで本発明のインキ(変色する天然色素、アルコール可溶性樹脂(インキバインダー)、アルコールを少なくとも含有するインキをシートに印刷ないし積層する方法としては、特に限定されず、グラビア印刷方式やフレキソ印刷方式やシルクスクリーン方式等が用いられる。インキの組成やその濃度や使用される被印刷体(シート)の加工の程度に応じて、適宜選択することができる。また、被印刷体(シート)は、前記したように、特には限定されず、例えば紙、合成紙、合成樹脂フィルム、不織布等を適宜もちいる。
【0034】
また、各種の安定性、必要な耐性や性能を得るためには、このインキの被印刷体(シート)への印刷に際してオーバーコートやアンダーコートを行うことも有用である。これらオーバーコートやアンダーコートは、変色までの時間の程度の調整、耐汗性の向上等に応じて適宜調整することが出来る。
【0035】
本発明の水分検知用インキを用いたおむつの主な構成としては、以下のようなものが挙げられる。
【0036】
☆ 液不透過性のシート(A)と液透過性のシート(B)との間に水分の吸収体(C)を含む使い捨ておむつにおいて、液不透過性のシート(A)の水分吸収体に接する面に、水分吸収体側より、塩基性物質を印刷した液透過性シート(D)、エタノール可溶性の樹脂、PHにて変色する天然色素およびエタノールよりなるインキを用いる水分検知用インキを吸収体側に印刷した液不透過性のシート(A)となるように構成した使い捨ておむつ。
【0037】
☆ 液不透過性のシート(A)と液透過性のシート(B)との間に水分の吸収体(C)を含む使い捨ておむつにおいて、液不透過性のシート(A)の水分吸収体に接する面に、エタノール可溶性の樹脂、PHにて変色する天然色素およびエタノールよりなるインキを用いた印刷画素と、塩基性物質を用いたインキ印刷画素とを、それぞれ1mm以上の間隔があくように配置して画像を形成した液不透過性のシート(A)となるように構成した使い捨ておむつ。
【0038】
☆ 液不透過性のシート(A)と液透過性のシート(B)との間に水分の吸収体(C)を含む使い捨ておむつにおいて、液不透過性のシート(A)が、微粒子状の塩基性物質を含有させた液不透過性のシートであり、この水分吸収体に接する面側に、エタノール可溶性の樹脂、PHにて変色する天然色素およびエタノールよりなるインキを用いた印刷画素を形成した使い捨ておむつ。
【0039】
☆ 液不透過性のシート(A)と液透過性のシート(B)との間に水分の吸収体(C)を含む使い捨ておむつにおいて、液不透過性のシート(A)と、水分吸収体(C)との間に、エタノール可溶性の樹脂、PHにて変色する天然色素およびエタノールよりなるインキを用いた印刷画素を形成したシートおよび塩基性物質を用いたインキにて印刷されたシートとにより構成された水分検知可能な積層物をもちいる使い捨ておむつ。
【0040】
以下、本発明のインキおよびシート、紙おむつをその実施例を基に具体的に説明する。
[実施例1]
色素としてベニバナと微結晶セルロースの混合品(ベニバナ赤色素5 微結晶セルロース95 120メッシュ篩パス品)14重量部、インキバインダーとしてシェラック樹脂((株)岐阜セラック製造所社製)を25重量部、更にプロピレングリコール2重量部、残量としてエチルアルコールを加えて100重量部とし、これらの混合液を全体が均一になるように分散し、ピンク色のインキを得た。
【0041】
炭酸ナトリウムを2%、シェラック樹脂15重量部、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)1重量部の混合樹脂、水 15部 残量としてエチルアルコールを加えて100重量部とし、これらの混合液を全体が均一になるように分散して塩基性物質のインキを得た。
【0042】
塩基性物質のインキにて、液不透過性のシート(透湿性ポリエチレンフィルム)に模様を印刷した。このシートに、上記にて得られたピンク色のインキを模様部が重ならない図形にて(画素が2mmの間隔を有する)印刷した。
以下の変色の確認試験を行った。
【0043】
印刷物(シート)の印刷面(インキ層)に濾紙No.2を重ねて水を5ml滴下して2分放置した。ピンク色の印刷物(シート)は、小豆色に変色し、ピンクから小豆色の濃色になり判別が容易に行えた。なお、この変色は、時間の経過とともに変色がすすみ(5時間後)には、赤橙色に変色していた。時間の経過も表示できる変色を示した。
【0044】
[実施例2]
天然色素としてウコン色素と微結晶セルロースの混合品 (ウコン色素5 微結晶セルロース95 120メッシュ篩パス品) 30重量部、インキバインダーとしてシェラック樹脂((株)岐阜セラック製造所社製)を25重量部、更にプロピレングリコール2重量部、残量としてエチルアルコールを加えて100重量部とし、これらの混合液を全体が均一になるように撹拌、分散し、黄色のインキ組成物を得た。炭酸ナトリウムを2%、シェラック樹脂15重量部、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)1重量部の混合樹脂、水 15部 残量としてエチルアルコールを加えて100重量部とし、これらの混合液を全体が均一になるように分散して塩基性物質のインキを得た。
【0045】
塩基性物質のインキにて、液不透過性のシート(透湿性ポリエチレンフィルム)に模様を印刷した。このシートに、上記にて得られた黄色のインキを模様部が重ならない図形にて(画素が2mmの間隔を有する)印刷した。以下の変色の確認試験を行った。
【0046】
印刷物(積層シート)の印刷面(インキ層)に濾紙No.2を重ねて水を5ml滴下して2分放置した。その後、濾紙を取り除いた。黄色の印刷物(積層シート)は、黒褐色に変色し、黄色から黒褐色の濃色になり判別が容易に行えた。なお、この変色は、時間の経過とともに変色がすすみ(5時間後)には、茶紫色に変色していた。時間の経過も表示できる変色を示した。
【0047】
炭酸カルシウム混練し、水に浸漬した場合の水のPHが8以上になるポリエチレンシート上に上記実施例1のインキを印刷し、更にその上面部に水分吸収体、さらに液透過性のシートからなる紙おむつを形成し、乳幼児に装着した。この場合、排尿による水分の作用にて、印刷模様がピンク色から小豆色に変色した。しかしながら、数時間の発汗による水分では発色はなかった。
【0048】
[実施例3〜7]
表1の水分検知インキを実施例1同様に製造した。
【0049】
【表1】

【0050】
これらのインキは、表2のシート材料に印刷した。
【0051】
【表2】

【0052】
そのシートを表3に示す。
【0053】
【表3】

【0054】
塩基性のインキを、表4にしめす。
【0055】
【表4】

【0056】
塩基性物質のインキを用いた液透過性シートを表5にしめす。
【0057】
【表5】

【0058】
表3のシートと表5のシートからなる積層物を構成し、この積層物に水を3ml滴下し、その際の色の変化とにじみの程度を確認した。この結果を表6に示す。
【0059】
【表6】

【0060】
いずれも、判別のし易い変色をしめした。とくに、黄色から黒褐色の変化は判別が良好であった。また、水分の供給にての天然色素のにじみは、ほとんど問題にならない。
これらの積層物は、水吸収体を有する使い捨ておむつにおいて、水分吸収体側より、塩基性物質を印刷した液透過性シート、エタノール可溶性の樹脂、PHにて変色する天然色素およびエタノールよりなるインキを用いる水分検知用インキを吸収体側に印刷した液不透過性のシート(A)となるように構成して使い捨ておむつを形成し、水吸収体側に水を供給し、この吸収体から液透過性のシートaないしシートdを通過して、液不透過性のシートのインキの変色の有無を確認した。いずれも、前記の積層物にて観察されたと同様の色の変化が確認された。紙おむつのにじみによる汚染もみられず良好な水分の検知を発揮したおむつとなった。
【0061】
[実施例8]
天然色素としてウコン色素と微結晶セルロースの混合品(ウコン色素5 微結晶セルロース95) 30重量部、インキバインダーとしてシェラック樹脂((株)岐阜セラック製造所社製)を25重量部、更にプロピレングリコール2重量部、残量としてエチルアルコールを加えて100重量部とし、これらの混合液を全体が均一になるように撹拌、分散し、黄色のインキ組成物を得た。
【0062】
このインキにて、濾紙(東洋濾紙No.2)に柄を印刷した(シートp)。
【0063】
炭酸ナトリウムを2%、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)1重量部、水 35部 残量としてエチルアルコールを加えて100重量部とし、これらの混合液を全体が均一になるように分散して塩基性物質のインキを得た。このインキは、別途、濾紙(東洋濾紙No.2)にベタ印刷(塗工)した。(シートw)
このインキの印刷物(シートp)と塩基性物質の印刷物(シートw)とを積層し、おむつの液不透過性シートと水分吸収体との中間に挿入しておむつを形成した。
このおむつも、前記の積層物にて観察されたと同様の色の変化が確認された。紙おむつのにじみによる汚染もみられず良好な水分の検知を発揮したおむつとなった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のインキは、水分の存在で変色することで、目視での確認を可能にした。また図柄が流れにくいことから、デザインの保持、色素流れ出しの汚れ感もない。また、安全性の高い材料を用いており、幼児等の使用においても好適なおむつ等の尿検知を発揮する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
可食性の材料にて構成されたインキにおいて、エタノール可溶性の樹脂、PH変化にて変色する天然色素、およびエタノールからなる水分検知用のインキ。
【請求項2】
水分の検知を塩基性物質の作用にて行う請求項1記載の水分検知用のインキ。
【請求項3】
天然色素がウコン色素である請求項1または2記載の水分検知用のインキ。
【請求項4】
天然色素がベニバナ赤色素である請求項1〜3いずれか記載の水分検知用のインキ。
【請求項5】
天然色素が、天然色素と微結晶セルロースとを1〜20:80〜99の割合にて混合させた微粒子色素である請求項1〜4いずれか記載の水分検知用のインキ。
【請求項6】
更に、プロピレングリコールを用いる請求項1〜5いずれか記載の水分検知用のインキ。
【請求項7】
樹脂がシェラック樹脂である請求項1〜6いずれか記載の水分検知用のインキ。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか記載の水分検知用インキを印刷したシート(A)と、塩基性物質を用いたインキにて印刷されたシートとにより構成された水分検知可能な積層物。
【請求項9】
塩基性物質を用いたインキにて印刷された印刷部を有するシートに、別途、請求項1〜7いずれか記載の水分検知用インキを印刷した水分検知可能なシート。
【請求項10】
微粒子状の塩基性物質を含有させた液不透過性のシートに、請求項1〜7記載の水分検知用インキを印刷した水分検知可能なシート。
【請求項11】
液不透過性のシート(A)と液透過性のシート(B)との間に水分の吸収体(C)を含む使い捨ておむつにおいて、液不透過性のシート(A)の水分吸収体に接する面に、水分吸収体側より、塩基性物質を印刷した液透過性シート(D)、エタノール可溶性の樹脂、請求項1〜7記載のPHにて変色する天然色素およびエタノールよりなるインキを用いる水分検知用インキを吸収体側に印刷した液不透過性のシート(A)となるように構成した使い捨ておむつ。
【請求項12】
液不透過性のシート(A)と液透過性のシート(B)との間に水分の吸収体(C)を含む使い捨ておむつにおいて、液不透過性のシート(A)の水分吸収体に接する面に、請求項1〜7記載のエタノール可溶性の樹脂、PHにて変色する天然色素およびエタノールよりなるインキを用いた印刷画素と、塩基性物質を用いたインキ印刷画素とを、それぞれ1mm以上の間隔があくように配置して画像を形成した液不透過性のシート(A)となるように構成した使い捨ておむつ。
【請求項13】
液不透過性のシート(A)と液透過性のシート(B)との間に水分の吸収体(C)を含む使い捨ておむつにおいて、液不透過性のシート(A)が、微粒子状の塩基性物質を含有させた液不透過性のシートであり、この水分吸収体に接する面側に、請求項1〜7記載のエタノール可溶性の樹脂、PHにて変色する天然色素およびエタノールよりなるインキを用いた印刷画素を形成した使い捨ておむつ。
【請求項14】
液不透過性のシート(A)と液透過性のシート(B)との間に水分の吸収体(C)を含む使い捨ておむつにおいて、液不透過性のシート(A)と、水分吸収体(C)との間に、エタノール可溶性の樹脂、PHにて変色する天然色素およびエタノールよりなるインキを用いた印刷画素を形成したシートおよび塩基性物質を用いたインキにて印刷されたシートとにより構成された水分検知可能な積層物をもちいる使い捨ておむつ。


【公開番号】特開2008−44983(P2008−44983A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219529(P2006−219529)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】