説明

水分測定用電量滴定装置

【課題】カールフィッシャー法により液体試料中の水分量を測定する水分測定装置用の電量滴定装置であって、回分の試料を逐次自動注入でき且つ一層多数回の測定を連続して行い得る水分測定用電量滴定装置を提供する。
【解決手段】水分測定用電量滴定装置は、滴定セル(1)内の試薬を循環させる試薬循環ライン、一定量の試料を採取する計量管(6)、計量管(6)に試料を通液する試料供給ライン及び流路切替弁(5)を備えている。流路切替弁(5)は、試料供給ラインに計量管(6)が組み込まれた試料注入用の流路と、試薬循環ラインに計量管(6)が組み込まれた水分測定用の流路とを切替えて構成可能な弁であり、試薬循環ライン(流路(41))には、回分の測定が終了した際に水分非含有押出用気体を供給する気体供給ライン(流路(46))が接続され、計量管(6)中の試薬を押出用気体により滴定セル(1)に回収する様に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分測定用電量滴定装置に関するものであり、詳しくは、カールフィッシャー法により液体試料中の水分量を測定する水分測定装置に適用可能な電量滴定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カールフィッシャー法を利用した水分の測定において、試料中の水分量(絶対量)が0.01〜100mg程度の低レベルの場合は電量滴定法が利用される。電量滴定法は、ヨウ化物イオン、二酸化硫黄、アルコールを主成分とする電解液(カールフィッシャー試薬)がメタノールの存在下で水と特異的に反応することを利用して物質中の水分を定量する方法である。すなわち、電量滴定法においては、電解液に試料を加えて電解酸化をすると、ヨウ素が発生してカールフィッシャー反応が起きるが、ヨウ素は「ファラデーの法則」に基づいて電気量に比例して生成するため、電解酸化に要したクーロン量から直接水分量を換算することが出来る。
【特許文献1】特開2004−333413号公報
【特許文献2】特開2007−278919号公報
【0003】
上記の電量滴定法においては、試料中の水分量が少なく、しかも、電解酸化に要した電気量を測定するため、電解によって必要量のヨウ素を発生し得る限り、試薬(電解液)を繰り返し使用することが可能である。そこで、電量滴定法を利用した水分測定装置においては、多数の試料を効率的に処理する観点から、回分の測定終了の都度、手動操作に代え、次の回分の試料を自動的に逐次注入し得る機構を設けるのが好ましい。
【0004】
試料を自動的に注入する機構としては、例えば、高速液体クロマトグラフィにおいて、液体試料の流路に挿入された一定長さの「計量管」によって定量の試料を採取すると共に、溶離液槽から分離カラム及び検出器を経て再び溶離液槽に戻る溶離液の循環路に対し、試料注入の際、「流路切替弁(自動切替弁)」による流路の切替えにより前記の循環路に計量管を組み込み、溶離液と共に試料を分離カラムへ供給する様にした技術が開示されている。
【特許文献3】特開平11−83821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電量滴定法による水分量の測定においては、試薬(電解液)に試料を加えて循環させながらこれを電解酸化するため、計量管と流路切替弁とを組み合せて試料を注入する上記の様な機構を利用した場合には、測定が終了した時点で試薬が計量管中に残存する。従って、次回分の新たな試料を計量管に通液して採取する際、計量管内の試薬が系外に排出されるため、測定を繰り返すに従い、系内の試薬濃度が漸次低下し、当初予定しただけの回数の測定を実施できないと言う問題が生じる。換言すれば、有効な試薬の一部が不必要に廃棄されると言う問題がある。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、カールフィッシャー法により液体試料中の水分量を測定する水分測定装置に適用可能な電量滴定装置であって、回分の試料を逐次自動注入でき且つ一層多数回の測定を連続して行うことが出来る水分測定用電量滴定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、滴定セルの試薬を循環させる試薬循環ライン、試料を定量採取する計量管、計量管に試料を通液する試料供給ラインを流路切替弁に接続し、流路切替弁の切替えにより、試料注入の際には試料供給ラインに計量管を組み込んで一定量の試料を採取し、水分測定の際には試薬循環ラインに計量管を組み込んで試料と共に滴定セルの試薬を循環させる様にした。そして、試薬循環ラインの上流部に気体供給ラインを接続することにより、回分の測定が終了した際には、試薬循環ラインに計量管が組み込まれた流路構成に対して、気体供給ラインから水分非含有押出用気体を供給し、計量管中の試薬を滴定セルへ回収する様にした。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、カールフィッシャー法により液体試料中の水分量を測定する水分測定装置に適用可能な電量滴定装置であって、電解電極および検出電極が挿入され且つ試薬を収容する滴定セルと、当該滴定セル内の試薬を循環させる試薬循環ラインと、一定量の試料を採取する計量管と、当該計量管に試料を通液する試料供給ラインと、少なくとも6個の接続ポートを有し且つこれら接続ポートに前記試薬循環ラインの上流部および下流部、前記計量管の一端および他端、前記試料供給ラインの上流部および下流部がそれぞれ接続された流路切替弁とを備え、当該流路切替弁は、前記試料供給ラインの上流部と下流部の間に前記計量管が組み込まれた試料注入用の流路と、前記試薬循環ラインの上流部と下流部の間に前記計量管が組み込まれた水分測定用の流路とを切替えて構成可能な弁であり、更に、前記試薬循環ラインの上流部には、回分の測定が終了した際に前記水分測定用の流路に対して水分非含有押出用気体を供給する気体供給ラインが接続されていることを特徴とする水分測定用電量滴定装置に存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水分測定用電量滴定装置によれば、回分の試料を測定の都度自動注入できるため、多数回の測定を効率的に行うことが出来、かつ、回分の測定が終了した際に押出用気体によって計量管中の試薬を滴定セルへ回収するため、次の回分の試料を注入する際に試薬の損失がなく、滴定セル内の試薬の濃度低下を低減でき、一層多数回の測定を連続して行うことが出来る。従って、本発明によれば、より効率的な水分測定が可能で且つ試薬の損失を防止可能な水分測定装置を構築できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る水分測定用電量滴定装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜3は、本発明に係る水分測定用電量滴定装置の主要部の構成を示すフロー図である。なお、以下の説明においては、水分測定用電量滴定装置を「滴定装置」と略記する。
【0011】
本発明の滴定装置は、カールフィッシャー法により液体試料中の水分量を測定する水分測定装置に適用可能な電量滴定装置である。前述した様に、カールフィッシャー電量滴定法による水分測定法では、ヨウ化物イオン、二酸化硫黄、アルコールを主成分とするカールフィッシャー試薬(電解液)を使用する。そして、試薬に試料を加えて電解酸化し、ヨウ素を発生させてカールフィッシャー反応を生起し、電解酸化に要したクーロン量から水分量が求める。上記の電量滴定法を利用した水分測定装置は、例えば、電量滴定を行う1つ又は複数の滴定部と、滴定部の操作を制御し且つ測定した電気量から水分量を定量するする制御部と、表示部が備えられた操作盤とから主に構成されており、本発明の滴定装置は、前記の滴定部として使用される。
【0012】
本発明の滴定装置は、図1に示す様に、電解電極(21)及び検出電極(22)が挿入され且つ試薬を収容する滴定セル(1)と、当該滴定セル内の試薬を循環させる試薬循環ライン(符号(41),(42),(43)で示す流路)と、一定量の試料を採取する計量管(6)と、当該計量管に試料を通液する試料供給ライン(符号(44),(45)で示す流路)と、少なくとも6個の接続ポート(A0)〜(A2),(B0)〜(B2)を有し且つこれら接続ポートに試薬循環ラインの上流部および下流部、計量管(6)の一端および他端、試料供給ラインの上流部および下流部がそれぞれ接続された流路切替弁(5)とを備えている。
【0013】
滴定セル(1)は、内容積が100〜300ml程度のガラス製容器から成り、大気の湿分の混入を防ぐため、O−リング等のシール材を使用したり、すり合わせを調節することにより、蓋や電極の密閉性が保持される。通常、滴定セル(1)に収容される試薬の量は50〜150ml程度である。電解電極(21)は、検出電圧に比例して電解電流を流すための円筒状の電極であり、白金網などから成る陽極、陰極、および、セラミック膜などの隔膜によって構成され、そして、陰極側には、陽極液とは異なる陰極液が充填される。検出電極(22)は、滴定セル(1)内の試薬(陽極液)の検出電圧をモニタリングする電極であり、斯かる電極としては、通常、双白金電極(直径約1mm、長さ約5mmの2本の白金線をガラス管に付設した電極)が使用される。
【0014】
上記の試薬循環ライン、試料供給ライン、ならびに、後述する気体供給ライン、均圧ライン、試薬供給ライン及び試薬排出ラインは、通常、内径1〜2mmのフッ素樹脂製の可撓性チューブによって構成される。試薬循環ラインは、電解電極(21)の筒内にその一部が挿入された試薬抜出し管(31)、当該試薬抜出し管に接続された流路(41)、ダイヤフラムポンプ等の循環ポンプ(83)、流路(42)、流路(43)、および、当該流路に接続され且つ電解電極(21)の筒内にその一部が挿入された試薬戻り管(32)から構成される。
【0015】
計量管(6)は、通常、内径1〜2mm、長さ1000〜2000mmのフッ素樹脂製のチューブによって構成される。また、試料供給ラインは、分析すべき試料を収容する試料容器(図示省略)に接続された流路(44)、当該流路に介装され且つ信号によって制御可能な電磁弁などの開閉弁(81)、および、系外の試料回収用の容器(図示省略)に通じる流路(45)によって構成される。
【0016】
流路切替弁(5)は、その内部機構において接続ポート(接続口)間の接続経路を変更し、当該流路切替弁に接続された複数の流路の組合せを他の複数の流路の組合せに同時に切り替える多流路の切替弁であり、斯かる切替弁としては、信号によって制御可能な例えばフロム社製の六方切替弁が使用される。
【0017】
本発明において、上記の流路切替弁(5)は、試料注入の際に試料供給ラインの上流部と下流部の間に計量管(6)を組み込む流路(図1参照)と、水分測定の際に試薬循環ラインの上流部と下流部の間に計量管(6)を組み込む流路(図2及び図3参照)とを切替操作によって構成する様に配置される。換言すれば、流路切替弁(5)は、試料供給ラインに計量管(6)が組み込まれた試料注入用の流路と、試薬循環ラインに計量管(6)が組み込まれた水分測定用の流路とを切替えて構成可能な弁である。
【0018】
具体的には、図1に示す様に、流路切替弁(5)において、接続ポート(A0)には、計量管(6)の一端が接続され、接続ポート(A1)には、試料供給ラインの上流部としての流路(44)が接続され、接続ポート(A2)には、試薬循環ラインの上流部を構成する流路(41),(42)のうちの流路(42)が接続される。また、接続ポート(B0)には、計量管(6)の他端が接続され、接続ポート(B1)には、試料供給ラインの下流部としての流路(45)が接続され、接続ポート(B2)には、試薬循環ラインの下流部である流路(43)が接続される。そして、流路切替弁(5)は、その切替操作により、接続ポート(A0)と接続ポート(A1)を繋ぐ流路および接続ポート(B0)と接続ポート(B1)を繋ぐ流路を構成する図1に示すパターンと、接続ポート(A0)と接続ポート(A2)を繋ぐ流路および接続ポート(B0)と接続ポート(B2)を繋ぐ流路を構成する図2及び図3に示すパターンとに切り替わる様になされている。
【0019】
なお、図1に示す様に、滴定セル(1)には、新たな試薬を供給するため、試薬容器(図示省略)から伸長された流路(48)が接続され、また、試薬循環ラインの上流部である流路(41)には、使用済みの試薬を系外に排出するため、ペレスタールポンプ等の試排出ポンプ(84)が介装された流路(49)が接続される。
【0020】
本発明においては、図3に示す様に、測定操作によって計量管(6)に収容された試薬を回分の測定が終了した際(次回分の試料を注入する前)に滴定セル(1)に回収するため、試薬循環ラインの上流部には、当該試薬循環ラインに計量管(6)が組み込まれた水分測定用の流路構成に対して、水分非含有押出用気体を供給する気体供給ラインが接続される。斯かる気体供給ラインは、押出用気体の供給源(発生源)に通じる流路(46)、および、当該流路に介装され且つ信号によって制御可能な電磁弁などの開閉弁(82)によって構成される。
【0021】
具体的には、気体供給ラインである流路(46)は、試薬循環ラインの上流部に介装された試薬循環用ポンプ(83)よりも更に上流側の流路(41)に接続される。これにより、気体駆動用のポンプ等を別途に設ける必要がなく、循環ポンプ(83)による吸引によって試薬循環ラインに押出用気体を供給することが出来る。
【0022】
上記の押出用気体としては、水分を含まず且つ滴定セル(1)における電解酸化に影響することのない気体が使用される。斯かる気体としては、各種の不活性ガス等の乾燥ガスが使用できるが、分析コストを低減し、滴定セル(1)内の液体の増加を抑制する観点からは、乾燥空気が好ましい。
【0023】
乾燥空気を使用する態様においては、押出用気体の発生源として、シリカゲル等の吸着材が充填された乾燥筒(7)が使用される。乾燥筒(7)は、その通気方向の一端が大気開放され、他端に上記の流路(46)が接続される。すなわち、図に例示した滴定装置においては、上記の気体供給ラインにより、乾燥筒(7)で水分が除去された乾燥空気を水分非含有押出用気体として試薬循環ラインに供給する様になされている。なお、流路(41)(試薬循環ライン)に乾燥空気を供給する際に滴定セル(1)内を常圧に保持するため、気体供給ラインを構成する流路(46)には、滴定セル(1)に通じる流路(47)が均圧ラインとして接続される。
【0024】
本発明の滴定装置を使用した水分の測定は、予めプログラムが書き込まれた前述の水分測定装置の制御部によって流路切替弁(5)、開閉弁(81),(82)、循環ポンプ(83)及びマグネティックスターラー(11)を制御することにより、以下の手順で行われる。
【0025】
先ず、図1に示す様に、流路切替弁(5)の切替操作により、接続ポート(A0)と接続ポート(A1)を接続する流路を構成し、かつ、接続ポート(B0)と接続ポート(B1)を接続する流路を構成する。これにより、試料供給ラインの上流部である流路(44)と試料供給ラインの下流部である流路(45)の間に計量管(6)を組み込み、試料注入用の流路を構成する。そして、開閉弁(81)を開放し、試料容器(図示省略)から流路(44)を通じて計量管(6)に試料を通液した後、開閉弁(81)を閉止して計量管(6)に一定量の試料を採取する。なお、余剰の試料は、流路(45)を通じて試料回収用の容器(図示省略)に収容する。
【0026】
次いで、図2に示す様に、流路切替弁(5)の切替操作により、接続ポート(A0)と接続ポート(A2)を接続する流路を構成し、かつ、接続ポート(B0)と接続ポート(B2)を接続する流路を構成する。これにより、試薬循環ラインの上流部である流路(42)と試薬循環ラインの下流部である流路(43)の間に計量管(6)を組み込み、水分測定用の流路を構成する。そして、循環ポンプ(83)を作動させることにより、滴定セル(1)内の試薬を試薬循環ラインに循環させる。すなわち、試薬抜出し管(31)、流路(41)、循環ポンプ(83)、流路(42)、計量管(6)、流路(43)及び試薬戻り管(32)によって試薬を循環させる。その結果、計量管(6)に採取した試料を試薬に注入することが出来る。
【0027】
水分の定量は、図2に示す上記の流路構成において試薬を循環させながら行う。滴定操作は、従来公知の操作と同様であり、電解電極(21)への通電により、試料が添加された試薬を電解酸化しながらヨウ素を発生させ、これを水と反応させ、ヨウ素が過剰となる状態を検出電極(22)により検出し且つそれまでに要した電気量を制御部の測定回路で測定し、斯かる電気量から水分量を定量する。
【0028】
水分量を測定した後は、図3に示す様に、開閉弁(82)を開放し、気体供給ラインである流路(46)を通じて乾燥空気(押出用気体)を供給する。すなわち、前述の水分測定用の流路構成において、循環ポンプ(83)を作動させたまま開閉弁(82)を開放することにより、乾燥筒(7)で除湿された空気を試薬循環ラインの流路(41)に吸引する。そして、流路(41)及び(42)、計量管(6)、流路(43)に乾燥空気を流し、これらの流路および計量管(6)の内部の試薬を滴定セル(1)に回収する。なお、試薬循環ラインにから滴定セル(1)に乾燥空気を導入する際、流路(47)により滴定セル(1)内の圧力が開放されるため、試薬抜出し管(31)を通じて試薬が吸上げられることがない。
【0029】
上記の様な手順で回分の測定を行った後は、上記と同様の操作、すなわち、図1に示す流路構成による試料の採取操作、図2に示す流路構成による水分の測定操作、および、図3に示す流路構成による試薬の回収操作を順次繰り返すことにより、次の回分以降の水分測定を逐次続けて行うことが出来る。なお、水分測定装置は、通常、滴定部における滴定の進行状況と共に、水分量の測定結果を操作盤の表示部で表示する様になされている。
【0030】
上記の様に、本発明の滴定装置においては、試薬循環ライン、計量管(6)、試料供給ラインを流路切替弁(5)に接続し、当該流路切替弁の切替えにより、試料注入の際には試料供給ラインに計量管(6)が組み込まれた試料注入用の流路を構成して一定量の試料を採取し、水分測定の際には試薬循環ラインに計量管(6)が組み込まれた水分測定用の流路を構成して試料と共に滴定セル(1)の試薬を循環させる。そして、試薬循環ラインの上流部に気体供給ラインを接続することにより、回分の測定が終了した際、水分測定用の流路構成に対して、気体供給ラインから試薬循環ラインの上流部に水分非含有押出用気体を供給し、計量管(6)中の試薬を滴定セル(1)へ回収する。
【0031】
従って、本発明によれば、回分の試料を測定の都度自動注入できるため、多数回の測定を効率的に行うことが出来る。そして、回分の測定が終了した際に押出用気体によって計量管(6)中の試薬を滴定セル(1)へ回収するため、次の回分の試料を注入する際に試薬の損失がなく、その結果、滴定セル(1)内の試薬の濃度低下を低減でき、一層多数回の測定を連続して行うことが出来る。これにより、より効率的な水分測定が可能で且つ試薬の損失を防止可能な水分測定装置を構築することが出来る。
【0032】
因に、図1に示す構造の滴定装置を制作し、水分量50ppmのトリクロロエチレンを予め試料として準備し、前述した試料の採取操作、試料中の水分の測定操作、試薬の回収操作を繰り返した後、測定結果から、有効な測定回数を確認した。滴定セル(1)に最初に収容した試薬の量は100ml、計量管(6)で1回に採取する試料の量は3mlであった。なお、試薬の回収操作では、気体供給ラインから試料循環ラインへ乾燥空気を供給した。その結果、20回までの測定について有効な結果が得られた。なお、この場合、滴定セル(1)の収容限度量の問題から20回の測定に止まった。
【0033】
これに対し、上記と同様の滴定装置を使用し、上記と同様の試薬および試料を使用し、当該試料中の水分量について繰り返して測定した。ただし、回分の測定操作の後は、気体供給ラインを使用することなく、計量管(6)に新たな試料を直ちに通液し、前回の測定で計量管(6)中に残った試薬は流路(45)を通じて廃棄した。その結果、試薬濃度の低下により、15回までしか有効な測定が出来なかった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る水分測定用電量滴定装置の主要部および試料注入の際の流路構成を示すフロー図である。
【図2】本発明に係る水分測定用電量滴定装置の主要部および水分測定の際の流路構成を示すフロー図である。
【図3】本発明に係る水分測定用電量滴定装置の主要部および測定終了の際の流路構成を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0035】
1 :滴定セル
21:電解電極
22:検出電極
41:流路(試薬循環ライン)
42:流路(試薬循環ライン)
43:流路(試薬循環ライン)
44:流路(試料供給ライン)
45:流路(試料供給ライン)
46:流路(気体供給ライン)
47:流路(均圧ライン)
5 :流路切替弁
6 :計量管
7 :乾燥筒
81:開閉弁
82:開閉弁
83:循環ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カールフィッシャー法により液体試料中の水分量を測定する水分測定装置に適用可能な電量滴定装置であって、電解電極および検出電極が挿入され且つ試薬を収容する滴定セルと、当該滴定セル内の試薬を循環させる試薬循環ラインと、一定量の試料を採取する計量管と、当該計量管に試料を通液する試料供給ラインと、少なくとも6個の接続ポートを有し且つこれら接続ポートに前記試薬循環ラインの上流部および下流部、前記計量管の一端および他端、前記試料供給ラインの上流部および下流部がそれぞれ接続された流路切替弁とを備え、当該流路切替弁は、前記試料供給ラインの上流部と下流部の間に前記計量管が組み込まれた試料注入用の流路と、前記試薬循環ラインの上流部と下流部の間に前記計量管が組み込まれた水分測定用の流路とを切替えて構成可能な弁であり、更に、前記試薬循環ラインの上流部には、回分の測定が終了した際に前記水分測定用の流路に対して水分非含有押出用気体を供給する気体供給ラインが接続されていることを特徴とする水分測定用電量滴定装置。
【請求項2】
気体供給ラインは、試薬循環ラインの上流部に介装された循環ポンプよりも更に上流側に接続されている請求項1に記載の電量滴定装置。
【請求項3】
気体供給ラインにより、水分非含有押出用気体として乾燥空気を試薬循環ラインに供給する様になされている請求項1又は2に記載の電量滴定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−294041(P2009−294041A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147089(P2008−147089)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(591061208)株式会社三菱化学アナリテック (17)