説明

水分濃度測定装置及びその測定方法、ならびに水素ガス濃度測定システム及びその測定方法

【課題】ガスの除湿および原子炉格納容器の外部へのサンプリングを必要としない水分濃度測定装置及びその測定方法を提供する。
【解決手段】実施形態の水分濃度測定装置30では、原子炉格納容器70内の陽電子源1から放出された陽電子と雰囲気に含まれる水分子とにより衝突して生ずる対消滅により発生するγ線を複数のγ線検出器3が検出する。原子炉格納容器70外の同時計数回路5が複数のγ線検出器3により検出されたγ線を時系列的に計測して対消滅により発生した対となる2個のγ線を検出したγ線検出器の位置を特定する。第1の信号処理ユニット6aが特定されたγ線検出器の位置から陽電子の飛程を算出して水分子の濃度と陽電子の飛程との相関関係に基づいて水分子の濃度を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水分濃度測定装置及びその測定方法、ならびに水素ガス濃度測定システム及びその測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、原子力発電所の原子炉格納容器内の雰囲気モニタにおいては、放射線、水素ガス(H)濃度及び酸素ガス(O)濃度などの測定を行っており、主として事故時の測定を目的としている。このうち水素ガス濃度測定については、原子炉格納容器の内部のガスをサンプリング装置により原子炉格納容器の外部へ引き出し、冷却除湿を行ったうえで、水素ガス分析計に通して水素ガス濃度を分析している。
【0003】
しかしながら、このような水素ガス分析計で測定できるようにするために、ガスを除湿する必要がある。また、冷却除湿用の冷却水源の喪失や、設計仕様を上回るガス条件に対しては測定不能となる場合がある。また、冷却除湿を行うためにサンプリングするガスを原子炉格納容器の外部へ引き出す必要があり、サンプリング配管の破損やサンプリング用ポンプの交流電源喪失等の外的要因でも測定不能となる場合がある。
【0004】
なお、原子炉格納容器内に存在する成分ガスの濃度を測定するガス濃度測定装置において、原子炉格納容器内に存在するガスをサンプルポンプ等で外部に取り出して、そのガスを冷却除湿した後にガスを分析計で成分濃度を測定し、測定後にガスを返送ポンプで原子炉格納容器内に返送すること等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平4−14318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した水素ガス分析計では、水素ガスの濃度を測定する場合、サンプリングするガスを原子炉格納容器の外部へ引き出すことが必要となる。また、水素ガス分析計で測定する前に、外部へ引き出したガスを冷却除湿して、水分子を除去する必要がある。さらに、汚染されたガスであるために、測定後には原子炉格納容器内に返送する必要がある。このため、除湿用の冷却水源、ガスを引き出しおよび返送するサンプリング配管などが必要となり、事故時においてサンプリング配管の破損や冷却水源の喪失、ポンプなどの交流電源喪失等の外的要因に影響を受けて、水素ガスの濃度を測定することが困難となる。
【0007】
一方、除湿しないで水素ガス濃度を測定する場合には、雰囲気中の水分(HO濃度)を把握することが重要となるが、事故時の高温環境下においても原子炉格納容器内の水分の濃度を測定できる装置は知られていない。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、かかる上記事情に対処してなされたものであり、ガスの除湿および原子炉格納容器の外部へのサンプリングを必要としない水分濃度測定装置及びその測定方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明が解決しようとする課題は、ガスの除湿および原子炉格納容器の外部へのサンプリングを必要としない水素ガス濃度測定システム及びその測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、実施形態の水分濃度測定装置は、原子炉格納容器内の雰囲気に含まれる水分子の濃度を測定する水分濃度測定装置である。当該水分濃度測定装置は、前記原子炉格納容器内に配置されて陽電子を発生する陽電子源と、前記原子炉格納容器内に配置され、前記陽電子源から放出された陽電子が前記雰囲気に含まれる水分子と衝突して生ずる対消滅により発生するγ線を検出するために陽電子放射方向に沿って並んで配置された複数のγ線検出器と、前記複数のγ線検出器のうちの2個のγ線検出器が同時にγ線を検出したときに、それら2個のγ線検出器の位置を解析する、前記原子炉格納容器の外側に配置された同時計数回路と、前記2個のγ線検出器の位置を結ぶ直線と前記陽電子が通る通路とが交差する位置として前記対消滅の位置を割り出し、それによって前記陽電子源から前記対消滅の位置までの距離として陽電子の飛程を算出する、前記原子炉格納容器の外側に配置された飛程演算部と、水分子の濃度と陽電子の飛程との予め求められた相関関係に基づいて、前記飛程演算部により算出された前記陽電子の飛程から前記水分子の濃度を算出する、前記原子炉格納容器の外側に配置された水分濃度算出部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、実施形態の水分濃度測定方法は、原子炉格納容器内の雰囲気に含まれる水分子の濃度を測定する水分濃度測定方法である。当該水分濃度測定方法は、前記原子炉格納容器内に陽電子放射方向に沿って並んで配置された複数のγ線検出器から、前記原子炉格納容器内に配置された陽電子源から放出された陽電子が前記雰囲気に含まれる水分子と衝突して生ずる対消滅により発生するγ線を検出するγ線検出処理ステップと、前記γ線検出処理ステップの後、前記複数のγ線検出器のうちの2個のγ線検出器が同時にγ線を検出したときに、それら2個のγ線検出器の位置を解析する同時計数処理ステップと、前記同時計数処理ステップの後、前記解析された前記2個のγ線検出器の位置を結ぶ直線と前記陽電子が通る通路とが交差する位置として前記対消滅の位置を割り出し、それによって前記陽電子源から前記対消滅の位置までの距離として陽電子の飛程を算出する飛程演算処理ステップと、前記飛程演算処理ステップの後、水分子の濃度と陽電子の飛程との予め求められた相関関係に基づいて、前記算出された前記陽電子の飛程から前記水分子の濃度を算出する水分濃度算出処理ステップと、を含むことを特徴とする。
【0012】
また、実施形態の水素ガス濃度測定システムは、水分濃度測定装置と水素原子濃度測定装置と水素ガス濃度算出部とを有し、原子炉格納容器内の雰囲気に含まれる水素ガスの濃度を測定する水素ガス濃度測定システムである。当該水素ガス濃度測定システムにおいて、前記水分濃度測定装置は、前記原子炉格納容器内に配置されて陽電子を発生する陽電子源と、前記原子炉格納容器内に配置され、前記陽電子源から放出された陽電子が前記雰囲気に含まれる水分子と衝突して生ずる対消滅により発生するγ線を検出するために陽電子放射方向に沿って並んで配置された複数のγ線検出器と、前記複数のγ線検出器のうちの2個のγ線検出器が同時にγ線を検出したときに、それら2個のγ線検出器の位置を解析する、前記原子炉格納容器の外側に配置された同時計数回路と、前記2個のγ線検出器の位置を結ぶ直線と前記陽電子が通る通路とが交差する位置として前記対消滅の位置を割り出し、それによって前記陽電子源から前記対消滅の位置までの距離として陽電子の飛程を算出する、前記原子炉格納容器の外側に配置された飛程演算部と、水分子の濃度と陽電子の飛程との予め求められた相関関係に基づいて前記飛程演算部により算出された前記陽電子の飛程から前記水分子の濃度を算出する、前記原子炉格納容器の外側に配置された水分濃度算出部とを備え、前記水素原子濃度測定装置は、前記原子炉格納容器内の雰囲気に含まれる水素原子の濃度を測定し、前記水素ガス濃度算出部は、前記水分濃度測定装置から測定された前記水分子の濃度と前記水素原子濃度測定装置から測定された前記水素原子の濃度とに基づいて前記原子炉格納容器内の水素ガスの濃度を算出し、前記原子炉格納容器の外側に配置されていることを特徴とする。
【0013】
また、実施形態の水素ガス濃度測定方法は、原子炉格納容器内の雰囲気に含まれる水素ガスの濃度を測定する水素ガス濃度測定方法である。当該水素ガス濃度測定方法は、前記原子炉格納容器内に陽電子放射方向に沿って並んで配置された複数のγ線検出器から、前記原子炉格納容器内に配置された陽電子源から放出された陽電子が前記雰囲気に含まれる水分子と衝突して生ずる対消滅により発生するγ線を検出するγ線検出処理ステップと、前記γ線検出処理ステップの後、前記複数のγ線検出器のうちの2個のγ線検出器が同時にγ線を検出したときに、それら2個のγ線検出器の位置を解析する同時計数処理ステップと、前記同時計数処理ステップの後、前記解析された前記2個のγ線検出器の位置を結ぶ直線と前記陽電子が通る通路とが交差する位置として前記対消滅の位置を割り出し、それによって前記陽電子源から前記対消滅の位置までの距離として陽電子の飛程を算出する飛程演算処理ステップと、前記飛程演算処理ステップの後、水分子の濃度と陽電子の飛程との予め求められた相関関係に基づいて、前記算出された前記陽電子の飛程から前記水分子の濃度を算出する水分濃度算出処理ステップと、前記原子炉格納容器内に配置された中性子源から放出された高速中性子が、前記原子炉格納容器内の雰囲気に含まれるガスと衝突して発生する熱中性子を検出する熱中性子検出処理ステップと、前記熱中性子処理ステップの後、検出された熱中性子に基づいて、前記水素原子の濃度を算出する水素原子濃度算出処理ステップと、前記水分濃度算出処理ステップおよび前記水素原子濃度算出処理ステップの後、前記算出された前記水分子の濃度と前記算出された前記水素原子の濃度とに基づいて、前記原子炉格納容器内の水素ガスの濃度を算出する水素ガス濃度算出処理ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る水分濃度測定装置の実施形態によれば、ガスの除湿および原子炉格納容器の外部へのサンプリングを行わずに、水分子の濃度を測定することができる。
【0015】
また、本発明に係る水分濃度測定方法の実施形態によれば、ガスの除湿および原子炉格納容器の外部へのサンプリングを行わずに、水分子の濃度を測定することができる。
【0016】
また、本発明に係る水素ガス濃度測定システムの実施形態によれば、ガスの除湿および原子炉格納容器の外部へのサンプリングを行わずに、水素ガスの濃度を測定することができる。
【0017】
また、本発明に係る水素ガス濃度測定方法の実施形態によれば、ガスの除湿および原子炉格納容器の外部へのサンプリングを行わずに、水素ガスの濃度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る水素ガス濃度測定システムの実施形態における構成図。
【図2】図1のII−II線矢視横断面図。
【図3】図1の実施形態における水素原子濃度測定装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態の水素ガス濃度測定システムについて、図面を参照して具体的に説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。ここで説明する下記の実施形態は、原子炉格納容器における水素ガス濃度測定システムの一例をとりあげて説明する。
【0020】
以下、本発明に係る水素ガス濃度測定システムの実施形態について、図1ないし図3を参照して説明する。実施形態の水素ガス濃度測定システムは、原子炉71を格納する原子炉格納容器70内の水素ガス濃度を測定するためのものであって、水分濃度測定装置30と水素原子濃度測定装置50とを備えている。ここで、図1及び図2は、主に実施形態における水分濃度測定装置30の構成図であり、特に図1には水分濃度測定装置30の一部を縦断面図で示し、図2は図1のII−II線矢視横断面図である。また、図3は、図1の水素原子濃度測定装置50の構成を示し、特にその一部を縦断面図で示す。
【0021】
実施形態の水分濃度測定装置30は、図1に示すように、陽電子源1と、コリメータ2と、複数のγ線検出器3と、第1のユニット間ケーブル4aと、第1ないし第4のγ線検出器ケーブル群41a、41b、41cおよび41dと、同時計数回路5と、第1の信号処理ユニット6aと、第1の遮へい体7aと、を備えている。
【0022】
陽電子源1、コリメータ2、複数のγ線検出器3及び第1の遮へい体7aは、原子炉格納容器70の内部で例えば原子炉71の上方の空間に設置されている。一方、同時計数回路5、第1の信号処理ユニット6aおよび第1のユニット間ケーブル4aは原子炉格納容器70の外部に設置されている。
【0023】
第1ないし第4のγ線検出器ケーブル群41a、41b、41cおよび41dは、原子炉格納容器70の壁を貫通してその内外に延びている。
【0024】
第1の遮へい体7aは、開口部を有した容器である。第1の遮へい体7aは、その第1の遮へい体7a外における原子炉格納容器70内で放射される放射線をその第1の遮へい体7a内に透過することを防ぐ。そのために、第1の遮へい体7aは、γ線などの放射線を遮蔽可能な鉛(Pb)等の材質で、例えば円筒状に形成されている。
【0025】
第1の遮へい体7aは、陽電子源1、コリメータ2および複数のγ線検出器3などを覆うように、原子炉格納容器70内に配置される。第1の遮へい体7aの開口部は原子炉71の方を向かず、原子炉格納容器70の壁に向かって開口している。これにより、第1の遮へい体7aは、その第1の遮へい体7aの外部から飛来するγ線が複数のγ線検出器3で検出されることを防止している。
【0026】
陽電子源1は、陽電子を発生する。陽電子源1は、β+崩壊する放射性同位体元素であり、22Na等が使用される。
【0027】
コリメータ2は、陽電子源1から発生した陽電子中から所定の陽電子放射方向21に陽電子を放出させる。コリメータ2には、一個の直線的貫通孔が設けられた鉛(Pb)、タングステン(W)等が使用される。
【0028】
複数のγ線検出器3は、各々の検出器においてγ線を検出する。複数のγ線検出器3は、陽電子源1から放出された陽電子が雰囲気に含まれる水分子と衝突して生ずる対消滅により発生するγ線を検出するために陽電子放射方向21に沿って並んで配置される。
【0029】
具体的には、図1および図2に示すように、複数のγ線検出器3は、コリメータ2で定義される陽電子放射方向21に垂直な面においてリング状に配置され、さらに、複数のリングが陽電子放射方向21に沿って列状に配置される。複数のγ線検出器3には事故時の高温においても動作可能なものが使用され、例えばシンチレーション検出器、霧箱等が使用される。
【0030】
以下に、複数のγ線検出器3の構成について、図1および図2を参照しながら、詳しく説明する。
【0031】
図2では、図1の第1の遮へい体7aの横断面における複数のγ線検出器3の中の1つのリング状の配列を示している。複数のγ線検出器3は、図2に示すように、第1の遮へい体7aの容器の中心軸上にある中心Pcから等間隔に、例えばγ線検出器31a、32a、33a、・・・、311a、312a(31a〜312a)がリングのγ線検出器群3aとされている。このリングのγ線検出器群3aは、例えば同一の円周上にかつ等間隔となるように配置される。
【0032】
リングのγ線検出器群3aのγ線検出器31a〜312a(31a〜37a〜とも記す)と、同様に、γ線検出器31b〜37b〜、γ線検出器31c〜37c〜およびγ線検出器31d〜37d〜からなる各々のリングのγ線検出器群3b、3cおよび3dが、さらに陽電子放射方向21に沿って列状に配置されている。なお、図1および図2に示すγ線検出器の個数は、説明を容易にするために、模式的に示したものであり、これらのリング状に配置される検出器の個数および列方向のリング数は本実施形態に限定されるものではない。
【0033】
複数のγ線検出器3と同時計数回路5との間には、第1ないし第4のγ線検出器ケーブル群41a、41b、41cおよび41dが接続されている。例えば、図2に示すリングのγ線検出器群3aのγ線検出器(31a〜37a〜)の各々に、図1に示す第1のγ線検出器ケーブル群41a中の対応するケーブルの一端が接続されて、他端が同時計数回路5に接続されている。その他のリングのγ線検出器群3bのγ線検出器(31b〜37b〜)、リングのγ線検出器群3cのγ線検出器(31c〜37c〜)およびリングのγ線検出器群3dのγ線検出器(31d〜37d〜)についても、同様に、第2のγ線検出器ケーブル群41b、第3のγ線検出器ケーブル群41cおよび第4のγ線検出器ケーブル群41dが接続されている。これらの第1ないし第4のγ線検出器ケーブル群41a、41b、41cおよび41dは、原子炉格納容器70の壁を貫通してその内外に延びている。
【0034】
また、同時計数回路5と第1の信号処理ユニット6aとの間には、第1のユニット間ケーブル4aが接続されている。この第1のユニット間ケーブル4aは、原子炉格納容器70の外部において敷設されている。
【0035】
同時計数回路5は、複数のγ線検出器3により検出されたγ線を時系列的に計測し、対消滅により発生した対となる2個のγ線を検出したγ線検出器を特定する。同時計数回路5は、原子炉格納容器70の外側に配置されている。
【0036】
同時計数回路5は、第1ないし第4のγ線検出器ケーブル群41aないし41dを通じて、逐次、複数のγ線検出器3からγ線の検出信号を受信している。同時計数回路5は、これらの受信した検出信号に基づいて時系列の比較により同時刻に検出された検出信号を割り出し、かつ予め記憶された複数のγ線検出器3の各々の位置を参照して、対消滅により発生した対となる2個のγ線を検出した検出器の位置を特定する。なお、同時計数回路5において、例えばγ線が検出された同時刻を比較する際に、受信した検出信号の受信時刻から第1ないし第4のγ線検出器ケーブル群41aないし41dの各々のケーブル長による伝播遅延時間を補正して算出してもよい。
【0037】
具体的には、同時計数回路5は、例えば図2に示すような中心Pcを中心とする円の円周上に、異なるリング上または同一のリング上に位置する複数のγ線検出器3を投影して、この中から対となる2個のγ線検出器を特定する。例えば、図1および図2に示す例では、互いに180度反対方向に位置するγ線検出器37bおよびγ線検出器31cから、対となる2個のγ線が同時に検出され、それらの検出器の位置が特定される。
【0038】
同時計数回路5は、例えばフィルタ処理、ピーク検出処理、論理演算処理や記憶処理などの機能の回路等が組み合わされて構成される。この場合、同時計数回路5には、時系列処理する検出信号に対して、十分な時間分解能、周波数分解能などの処理能力を有する回路等が用いられる。
【0039】
以上により、同時計数回路5は、複数のγ線検出器3のうちの2個のγ線検出器が同時にγ線を検出したときに、それら2個のγ線検出器の位置を解析することができる。
【0040】
第1の信号処理ユニット6aは、同時計数回路5から特定された2個のγ線検出器の位置の解析情報を受信する。そのために、第1の信号処理ユニット6aは、飛程演算部61a、水分濃度演算部62aおよび換算表63aを備えている。
【0041】
飛程演算部61aは、同時計数回路5により特定された対となる2個のγ線検出器の位置を結ぶ直線と、陽電子が通る通路とが交差する位置として対消滅の位置を割り出す。
【0042】
例えば、飛程演算部61aは、複数のγ線検出器3を陽電子放射方向21と垂直な方向の面に投影して、対となる2個のγ線検出器の位置が投影した面上で対角の方向に対する場合に、2個のγ線検出器の位置から対消滅の位置Xsを割り出す。
【0043】
これにより、飛程演算部61aは、陽電子源1から対消滅の位置Xsまでの距離として陽電子の飛程を算出する。
【0044】
水分濃度演算部62aは、水分子の濃度と陽電子の飛程との予め求められた相関関係に基づいて、飛程演算部61aにより算出された陽電子の飛程から水分子の濃度を算出する。例えば、水分子の濃度と陽電子の飛程との予め求められた相関関係は、後述するように換算表63aに格納されている。
【0045】
換算表63aは、水分子の濃度と陽電子の飛程との相関関係についてのデータを記憶している。換算表63aには、それらのデータが予め準備され、格納されている。例えば、事故時などにおいて原子炉格納容器70内の雰囲気には、主に、窒素ガス(N)、水素ガス(H)、酸素ガス(O)、水分子(HO)の含有が想定される。このような場合に、陽電子との散乱断面積は水分子が最も大きいため、陽電子の飛程はガスに含まれる水分子の濃度に強く依存する。このため、予め水分子の濃度と陽電子の飛程との相関関係が求められ、換算表63aにこの相関関係についてのデータが予め格納される。
【0046】
これにより、水分濃度演算部62aは、換算表63aに格納されたデータに基づいて、陽電子の飛程から水分子の濃度を求めることができる。なお、換算表63aに代えて、換算式などを用いてもよい。
【0047】
図3は、図1に示す実施形態の水素原子濃度測定装置50の構成図である。実施形態の水素原子濃度測定装置50は、中性子源10と、中性子検出器11と、中性子検出器ケーブル42と、第2の信号処理ユニット6bと、第2の遮へい体7bと、を備えている。
【0048】
水素原子濃度測定装置50は、原子炉格納容器70内における水分子(HO)、水素ガス(H)などを含む雰囲気中の水素原子(H)の濃度を測定する。
【0049】
第2の遮へい体7bは、原子炉格納容器70内の第1の遮へい体7aの近傍に配置され、その第2の遮へい体7b外からの放射線を遮へいするように、中性子源10と、中性子検出器11とを覆っている。第2の遮へい体7bは、例えば鉛(Pb)等の材質で、開口部を有するように円筒状に形成されている。
【0050】
第2の遮へい体7bの開口部は原子炉71の方を向かず、原子炉格納容器70の壁に向かって開口している。これにより、第2の遮へい体7bは、その第2の遮へい体7bの外部から飛来する熱中性子が中性子検出器11で検出されることを防止する。
【0051】
中性子源10は、高速中性子を放出する放射性同位体元素であり、252Cf等が使用される。
【0052】
中性子検出器11は、中性子源10から放出された高速中性子が原子炉格納容器70内の雰囲気に含まれるガスと衝突して発生する熱中性子を検出する。中性子検出器11は、熱中性子を検出する装置であり、He計数管等が使用される。
【0053】
中性子検出器ケーブル42は、中性子検出器11と第2の信号処理ユニット6bとの間に接続される。この中性子検出器ケーブル42は、原子炉格納容器70の壁を貫通してその内外に延びている。
【0054】
第2の信号処理ユニット6bは、この中性子検出器ケーブル42を通じて、中性子検出器11から熱中性子の検出信号を受信する。第2の信号処理ユニット(水素原子濃度算出部)6bは、検出された熱中性子の検出信号に基づいて、水素原子の濃度を算出する。第2の信号処理ユニット6bは、原子炉格納容器70の外部に設置されている。
【0055】
第2のユニット間ケーブル4bは、第1の信号処理ユニット6aと第3の信号処理ユニット6cとの間に接続されている。第3の信号処理ユニット6cは、この第2のユニット間ケーブル4bを通じて、第1の信号処理ユニット6aから算出された水分子の濃度に関する情報を受信する。
【0056】
第3のユニット間ケーブル4cは、第2の信号処理ユニット6bと第3の信号処理ユニット6cとの間に接続されている。第3の信号処理ユニット6cは、この第3のユニット間ケーブル4cを通じて、第2の信号処理ユニット6bから算出された水素原子の濃度に関する情報を受信する。
【0057】
第3の信号処理ユニット(水素ガス濃度算出部)6cは、水分濃度測定装置30から算出された水分子の濃度と、水素原子濃度測定装置50から算出された水素原子の濃度とに基づいて、原子炉格納容器70内の水素ガスの濃度を算出する。第3の信号処理ユニット6cは、原子炉格納容器70の外部に設置されている。
【0058】
ここで、水素原子(H)は他の原子よりも中性子の減速能が大きいため、熱中性子検出強度は、ガス中の水素分子(H)及び水分子(HO)に含まれる水素原子(H)の濃度に強く依存する。このため、ガス中に含まれる水素原子の濃度と熱中性子検出強度との相関を予め求めておき、第2の信号処理ユニット6bにおいて、この相関に基づいて熱中性子検出強度からガス中に含まれる水素原子の濃度を求めることができる。
【0059】
なお、上記では、中性子源10を原子炉格納容器70の内部に設置する場合についての作用と効果を説明したが、原子炉格納容器70の隔壁を透過可能なエネルギーを持つ高速中性子を放射する中性子源10を原子炉格納容器70の外部に設置しても同様の作用と効果を得ることができる。
【0060】
第3の信号処理ユニット6cは、第1の信号処理ユニット6aにより算出された水分子の濃度と、第2の信号処理ユニット6bにより算出された水素原子(H)の濃度とを用いて、ガス中の水素ガス(H)の濃度を算出する。即ち、水分濃度測定装置30で求めたガス中の水分子(HO)の濃度、および、水素原子濃度測定装置50で求めたガス中の水素原子(H)の濃度から、ガス中の水素ガス(H)の濃度を求めることができる。
【0061】
次に、実施形態の水素ガス濃度測定システムにおける処理の流れについて説明する。
【0062】
水分濃度測定装置30において、陽電子源1から放出された多数の陽電子はコリメータ2によってビーム状に切り出される。コリメータ2の孔を通過した陽電子は、原子炉格納容器70内のガスに含まれる電子等と衝突を繰り返して運動エネルギーを徐々に失っていき、最期に周辺の電子と結合して対消滅を起こす。この対消滅の発生と同時に、全質量エネルギーに等しい約511eVのエネルギーを持つγ線を、互いに反対となる180度方向に2個放出する。
【0063】
対消滅により放出された対となる2個のγ線は、複数のγ線検出器3の中のいずれかで検出される。複数のγ線検出器3がこれらのγ線を検出した場合に、検出したγ線検出器は検出信号を第1ないし第4のγ線検出器ケーブル群41aないし41dを通じて同時計数回路5に伝達する。
【0064】
同時計数回路5は、第1ないし第4のγ線検出器ケーブル群41aないし41dを通じて伝達された検出信号に基づいて、同時刻に検出された2個のγ線の検出位置を解析する。同時計数回路5は、この結果を解析情報として第1の信号処理ユニット6aに伝達する。
【0065】
第1の信号処理ユニット6aの飛程演算部61aが、例えば図2に示すように、対となる2個のγ線の検出位置としてγ線検出器37bおよびγ線検出器31cの解析情報を受信する。飛程演算部61aは、受信した解析情報に基づいて、γ線検出器37bとγ線検出器31cとの位置を結ぶ直線で定義されるγ線の飛跡9と、コリメータ2の孔を通る直線によって定義される陽電子の飛跡8とから、これらの交差する点である対消滅の位置Xs(図1に示す)を算出する。
【0066】
これにより、飛程演算部61aは、陽電子源1の位置から算出した対消滅の位置Xsまでの距離を、陽電子の飛程として算出する。
【0067】
次に、水分濃度演算部62aは、飛程演算部61aから陽電子の飛程の算出結果を受ける。水分濃度演算部62aは、換算表63aを参照して、この陽電子の飛程に対応する水分子の濃度を算出する。水分濃度演算部62aは、水分子の濃度について第3の信号処理ユニット6cに算出結果を送る。
【0068】
一方、上記水分濃度測定装置30の処理と並行して、水素原子濃度測定装置50の処理においては、中性子源10から放出された高速中性子は、ガスに含まれる原子と衝突を繰り返して運動エネルギーを徐々に失い、中性子の飛跡13を経て熱中性子となって中性子検出器11により検出される。
【0069】
中性子検出器11は、検出した熱中性子検出強度信号を、中性子検出器ケーブル42を通じて第2の信号処理ユニット6bに伝達する。
【0070】
次に、第2の信号処理ユニット6bは、受信した熱中性子検出強度信号を信号処理して熱中性子検出強度を算出する。第2の信号処理ユニット6bは、算出した熱中性子検出強度から、ガス中に含まれる水素原子の濃度と熱中性子検出強度との予め格納された相関関係に基づいて、熱中性子検出強度からガス中に含まれる水素原子の濃度を算出する。第2の信号処理ユニット6bは、この水素原子の濃度の算出結果を、第3の信号処理ユニット6cに送る。
【0071】
第3の信号処理ユニット6cは、第1の信号処理ユニット6aにより算出された水分子の濃度と、第2の信号処理ユニット6bにより算出された水素原子の濃度とを用いて、ガス中の水素ガス(H)の濃度を算出する。
【0072】
即ち、実施形態の水素ガス濃度測定システムにおいて、水分濃度測定装置30で算出されたガス中の水分子(HO)の濃度、および水素原子濃度測定装置50で算出されたガス中の水素原子(H)の濃度から、原子炉格納容器70内のガス中の水素ガス(H)の濃度を求めることができる。
【0073】
以上説明したように、実施形態の水分濃度測定装置によれば、ガスの検出部を原子炉格納容器の内部に設置しているため、サンプリングしたガスを原子炉格納容器の外部へ引き出すことが不要となる。また、原子炉格納容器内のガスに含まれる水分子の濃度を求めることができるため、ガスの除湿を必要としない。したがって、ガスの除湿および原子炉格納容器の外部へのサンプリングを行わずに、水分子の濃度の濃度を測定することができる。また、原子炉格納容器内のガスに含まれる水分子の濃度を高温環境下で高湿度であっても水分子の濃度を測定することができる。
【0074】
また、実施形態の水分濃度測定方法によれば、ガスの検出部を原子炉格納容器の内部に設置しているため、サンプリングしたガスを原子炉格納容器の外部へ引き出すことが不要となる。また、原子炉格納容器内のガスに含まれる水分子の濃度を求めることができるため、ガスの除湿を必要としない。したがって、ガスの除湿および原子炉格納容器の外部へのサンプリングを行わずに、水分子の濃度の濃度を測定することができる。また、原子炉格納容器内のガスに含まれる水分子の濃度を高温環境下で高湿度であっても水分子の濃度を測定することができる。
【0075】
また、実施形態の水素ガス濃度測定システムによれば、ガスの検出部を原子炉格納容器の内部に設置しているため、サンプリング用のガスを原子炉格納容器の外部へ引き出すことが不要となる。また、原子炉格納容器内のガスに含まれる水分子および水素原子の濃度を測定して水素ガスの濃度を求めることができるため、ガスの除湿を必要としない。したがって、ガスの除湿および原子炉格納容器の外部へのサンプリングを行わずに、水素ガスの濃度を測定することができる。また、原子炉格納容器内のガスに含まれる水分子の濃度を高温環境下で高湿度であっても水素ガスの濃度を測定することができる。
【0076】
また、実施形態の水素ガス濃度測定方法によれば、ガスの検出部を原子炉格納容器の内部に設置しているため、サンプリング用のガスを原子炉格納容器の外部へ引き出すことが不要となる。また、原子炉格納容器内のガスに含まれる水分子および水素原子の濃度を測定して水素ガスの濃度を求めることができるため、ガスの除湿を必要としない。したがって、ガスの除湿および原子炉格納容器の外部へのサンプリングを行わずに、水素ガスの濃度を測定することができる。また、原子炉格納容器内のガスに含まれる水分子の濃度を高温環境下で高湿度であっても水素ガスの濃度を測定することができる。
【0077】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形には、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0078】
上記水分濃度測定装置と他の従来技術による水素原子濃度測定装置とを組み合わせて水素ガス濃度測定システムを構成してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…陽電子源、2…コリメータ、3…複数のγ線検出器、3a、3b、3c、3d…リングのγ線検出器群、4a…第1のユニット間ケーブル、4b…第2のユニット間ケーブル、4c…第3のユニット間ケーブル、5…同時計数回路、6a…第1の信号処理ユニット、6b…第2の信号処理ユニット、6c…第3の信号処理ユニット、7a…第1の遮へい体、7b…第2の遮へい体、8…陽電子の飛跡、9…γ線の飛跡、10…中性子源、11…中性子検出器、13…中性子の飛跡、21…陽電子放射方向、30…水分濃度測定装置、31a、32a、33a、34a、35a、36a、37a、38a、39a、310a、311a、312a、31b、37b、31c、37c、31d、37d…γ線検出器、41a…第1のγ線検出器ケーブル群、41b…第2のγ線検出器ケーブル群、41c…第3のγ線検出器ケーブル群、41d…第4のγ線検出器ケーブル群、42…中性子検出器ケーブル、50…水素原子濃度測定装置、61a…飛程演算部、62a…水分濃度演算部、63a…換算表、70…原子炉格納容器、71…原子炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉格納容器内の雰囲気に含まれる水分子の濃度を測定する水分濃度測定装置であって、
前記原子炉格納容器内に配置されて陽電子を発生する陽電子源と、
前記原子炉格納容器内に配置され、前記陽電子源から放出された陽電子が前記雰囲気に含まれる水分子と衝突して生ずる対消滅により発生するγ線を検出するために陽電子放射方向に沿って並んで配置された複数のγ線検出器と、
前記複数のγ線検出器のうちの2個のγ線検出器が同時にγ線を検出したときに、それら2個のγ線検出器の位置を解析する、前記原子炉格納容器の外側に配置された同時計数回路と、
前記2個のγ線検出器の位置を結ぶ直線と前記陽電子が通る通路とが交差する位置として前記対消滅の位置を割り出し、それによって前記陽電子源から前記対消滅の位置までの距離として陽電子の飛程を算出する、前記原子炉格納容器の外側に配置された飛程演算部と、
水分子の濃度と陽電子の飛程との予め求められた相関関係に基づいて、前記飛程演算部により算出された前記陽電子の飛程から前記水分子の濃度を算出する、前記原子炉格納容器の外側に配置された水分濃度算出部と、
を備えることを特徴とする水分濃度測定装置。
【請求項2】
前記複数のγ線検出器は、前記陽電子放射方向と垂直な方向に前記陽電子放射方向の軸を中心としたリング状に並べられ、かつ前記陽電子放射方向に沿って複数のリング状を形成して配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の水分濃度測定装置。
【請求項3】
前記飛程演算部は、前記複数のγ線検出器を前記陽電子放射方向と垂直な方向の面に投影して前記2個のγ線検出器の位置が前記投影した面上で対角の方向に対する場合に、前記2個のγ線検出器の位置の中央の位置として前記対消滅の位置を割り出す
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水分濃度測定装置。
【請求項4】
前記原子炉格納容器内に配置されて前記陽電子源から発生した陽電子を前記陽電子放射方向に放出させるコリメータ
をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の水分濃度測定装置。
【請求項5】
開口部を有して前記原子炉格納容器内に配置され、前記陽電子源と、前記複数のγ線検出器と、前記コリメータとを収容し、放射線を遮へいする遮へい体
をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の水分濃度測定装置。
【請求項6】
原子炉格納容器内の雰囲気に含まれる水分子の濃度を測定する水分濃度測定方法であって、
前記原子炉格納容器内に陽電子放射方向に沿って並んで配置された複数のγ線検出器から、前記原子炉格納容器内に配置された陽電子源から放出された陽電子が前記雰囲気に含まれる水分子と衝突して生ずる対消滅により発生するγ線を検出するγ線検出処理ステップと、
前記γ線検出処理ステップの後、前記複数のγ線検出器のうちの2個のγ線検出器が同時にγ線を検出したときに、それら2個のγ線検出器の位置を解析する同時計数処理ステップと、
前記同時計数処理ステップの後、前記解析された前記2個のγ線検出器の位置を結ぶ直線と前記陽電子が通る通路とが交差する位置として前記対消滅の位置を割り出し、それによって前記陽電子源から前記対消滅の位置までの距離として陽電子の飛程を算出する飛程演算処理ステップと、
前記飛程演算処理ステップの後、水分子の濃度と陽電子の飛程との予め求められた相関関係に基づいて、前記算出された前記陽電子の飛程から前記水分子の濃度を算出する水分濃度算出処理ステップと、
を含むことを特徴とする水分濃度測定方法。
【請求項7】
水分濃度測定装置と水素原子濃度測定装置と水素ガス濃度算出部とを有し、原子炉格納容器内の雰囲気に含まれる水素ガスの濃度を測定する水素ガス濃度測定システムであって、
前記水分濃度測定装置は、
前記原子炉格納容器内に配置されて陽電子を発生する陽電子源と、
前記原子炉格納容器内に配置され、前記陽電子源から放出された陽電子が前記雰囲気に含まれる水分子と衝突して生ずる対消滅により発生するγ線を検出するために陽電子放射方向に沿って並んで配置された複数のγ線検出器と、
前記複数のγ線検出器のうちの2個のγ線検出器が同時にγ線を検出したときに、それら2個のγ線検出器の位置を解析する、前記原子炉格納容器の外側に配置された同時計数回路と、
前記2個のγ線検出器の位置を結ぶ直線と前記陽電子が通る通路とが交差する位置として前記対消滅の位置を割り出し、それによって前記陽電子源から前記対消滅の位置までの距離として陽電子の飛程を算出する、前記原子炉格納容器の外側に配置された飛程演算部と、
水分子の濃度と陽電子の飛程との予め求められた相関関係に基づいて前記飛程演算部により算出された前記陽電子の飛程から前記水分子の濃度を算出する、前記原子炉格納容器の外側に配置された水分濃度算出部とを備え、
前記水素原子濃度測定装置は、前記原子炉格納容器内の雰囲気に含まれる水素原子の濃度を測定し、
前記水素ガス濃度算出部は、前記水分濃度測定装置から算出された前記水分子の濃度と前記水素原子濃度測定装置から測定された前記水素原子の濃度とに基づいて前記原子炉格納容器内の水素ガスの濃度を算出し、前記原子炉格納容器の外側に配置されている
ことを特徴とする水素ガス濃度測定システム。
【請求項8】
前記水素原子濃度測定装置は、
前記原子炉格納容器内に配置されて高速中性子を発生する中性子源と、
前記原子炉格納容器内に配置され、前記中性子源から放出された高速中性子が前記原子炉格納容器内の雰囲気に含まれるガスと衝突して発生する熱中性子を検出する中性子検出器と、
前記検出された熱中性子に基づいて前記水素原子の濃度を算出する、前記原子炉格納容器の外側に配置された水素原子濃度算出部と、
を備えることを特徴とする請求項7に記載の水素ガス濃度測定システム。
【請求項9】
開口部を有して前記原子炉格納容器内に配置され、前記陽電子源と前記複数のγ線検出器と前記コリメータとを収容し、放射線を遮へいする第1の遮へい体と、
開口部を有して前記原子炉格納容器内に配置され、前記中性子源と前記中性子検出器とを収容し、放射線を遮へいする第2の遮へい体と、
をさらに備えることを特徴とする請求項8に記載の水素ガス濃度測定システム。
【請求項10】
原子炉格納容器内の雰囲気に含まれる水素ガスの濃度を測定する水素ガス濃度測定方法であって、
前記原子炉格納容器内に陽電子放射方向に沿って並んで配置された複数のγ線検出器から、前記原子炉格納容器内に配置された陽電子源から放出された陽電子が前記雰囲気に含まれる水分子と衝突して生ずる対消滅により発生するγ線を検出するγ線検出処理ステップと、
前記γ線検出処理ステップの後、前記複数のγ線検出器のうちの2個のγ線検出器が同時にγ線を検出したときに、それら2個のγ線検出器の位置を解析する同時計数処理ステップと、
前記同時計数処理ステップの後、前記解析された前記2個のγ線検出器の位置を結ぶ直線と前記陽電子が通る通路とが交差する位置として前記対消滅の位置を割り出し、それによって前記陽電子源から前記対消滅の位置までの距離として陽電子の飛程を算出する飛程演算処理ステップと、
前記飛程演算処理ステップの後、水分子の濃度と陽電子の飛程との予め求められた相関関係に基づいて、前記算出された前記陽電子の飛程から前記水分子の濃度を算出する水分濃度算出処理ステップと、
前記原子炉格納容器内に配置された中性子源から放出された高速中性子が、前記原子炉格納容器内の雰囲気に含まれるガスと衝突して発生する熱中性子を検出する熱中性子検出処理ステップと、
前記熱中性子処理ステップの後、検出された熱中性子に基づいて、前記水素原子の濃度を算出する水素原子濃度算出処理ステップと、
前記水分濃度算出処理ステップおよび前記水素原子濃度算出処理ステップの後、前記算出された前記水分子の濃度と前記算出された前記水素原子の濃度とに基づいて、前記原子炉格納容器内の水素ガスの濃度を算出する水素ガス濃度算出処理ステップと、
を含むことを特徴とする水素ガス濃度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−104745(P2013−104745A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247847(P2011−247847)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】