説明

水分蒸散量測定パッチ

【課題】簡単な構造で、皮膚等の測定対象表面に貼るだけの簡単な操作で水分蒸散量を正確に定量的に測定することができる水分蒸散量測定パッチを提供する。
【解決手段】粘着剤22により皮膚等の測定対象表面に貼付される透明フィルム12と、透明フィルム12の粘着剤22側の面に対面し発色剤28を吸着させた発色剤貯蔵部26と、発色剤貯蔵部26に連なり一方向に長く形成され発色剤28が長手方向に浸透する変色部24とを備える。変色部24の透明フィルム12側と反対側の面を覆う水分不透過層30と、透明フィルム12の粘着剤22側の面に設けられ発色剤貯蔵部26を覆う水分透過層34を備える。透明フィルム12には変色部24を視認可能にする透明な表示部16と、表示部16の周辺部に設けられ変色部24の長手方向に沿う目盛18が描かれた印刷部14を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ストレスやリフレッシュ効果等の心身の状態の測定、皮膚の各部位やその他の水分蒸発量測定のための水分蒸散量測定パッチに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、皮膚からの水分蒸発の種類には、ストレス等の精神的な刺激により、交感神経の働きによって手の平や足の裏から精神性の汗が分泌されることが知られている。この精神性発汗は運動による汗である温熱性発汗と異なり、極めて微量で数mg/cm/hrから数10mg/cm/hrの範囲である。この発汗により、経皮水分蒸発量(Trance Epidermal Water Loss、以下TEWL値と称す)は増加する。この現象から、TEWL値を測定することによって、ストレス等を調べることができる。
【0003】
皮膚からの水分蒸散量を連続的に測定する機器としてはTEWAメータ、エバポリメータなどが市販されているが、高価であり、大型で重く測定用のセンサーを長時間皮膚などの測定部位に固定することが必要であった。更に、目的の作業を行いながら測定することは困難であり、長時間の連続的な測定の場合には記録計が必要となるため、測定作業が被験者の負担になるものであった。このため、皮膚からの水分蒸散量の測定は、研究機関等での限定的なものに限られ、一般的ではなかった。
【0004】
そこで従来、TEWL値を簡単に測定し、ストレスの度合いを調べる試験シートが提供されている。本願発明者による特許文献1,2に開示されている試験シートは、粘着剤により皮膚に貼付される透明フィルムと、透明フィルムの粘着剤側の面に設けられ塩化コバルトを吸着させた塩化コバルト紙が設けられている。透明フィルムには、塩化コバルトが吸湿により反応する発色の色見本が設けられている。この試験シートの使用方法は、被験者の皮膚に貼り付け、皮膚の表面から蒸散する水分を塩化コバルト紙が吸湿して、吸着水分によって塩化コバルトの結晶構造が変化することによって色が変化するものである。この色の変化を、色見本と比較することにより蒸散する水分量を測定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−236794号公報
【特許文献2】特開2007−147449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記背景技術の場合、塩化コバルトの変色により水分量を定性的に測定するものであり、水分蒸発量を定量的に正確に測定することができるものではなかった。従って、簡単なパッチ等により、水分蒸散量をより正確に定量的に測定することができれば、種々の生活の場におけるQOL向上に役立つと考えられる。
【0007】
また、市販されているストレスや皮膚水分蒸散量を測定するための機器は高価であり、連続的な測定は不可能であり、実験的な測定に限られるものであった。
【0008】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で、皮膚等の測定対象表面に貼るだけの簡単な操作で水分蒸散量を正確に定量的に測定することができる水分蒸散量測定パッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、粘着剤により皮膚等の測定対象表面に貼付される透明フィルムと、上記透明フィルムの粘着剤側の面に設けられ発色剤を吸着させた発色剤貯蔵部と、前記発色剤貯蔵部に連なり一方向に長く形成され前記発色剤の溶解液が長手方向に浸透する変色部と、前記変色部の前記透明フィルム側と反対側の面を覆う水分不透過層と、上記透明フィルムの粘着剤側の面に対面し前記発色剤貯蔵部を覆う水分透過層が設けられ、前記透明フィルムには前記変色部を視認可能にする透明な表示部と、前記表示部の周辺部に設けられ前記変色部の長手方向に沿う目盛が描かれた印刷部が設けられている水分蒸散量測定パッチである。
【0010】
また、前記変色部は複数設けられ、前記変色部に各々前記発色剤貯蔵部が設けられ、複数の前記変色部は互いに重ねられて前記表示部に対面し、前記重ねられた複数の変色部は、相対的に前記表示部に近い側に位置した前記変色部が前記表示部に対して遠い側に位置した前記変色部より長手方向に短く形成され、前記各変色部同士の間には水分不透過層が設けられ、複数個の前記発色剤貯蔵部には、互いに異なる色の発色剤が吸着されているものである。
【0011】
前記発色剤貯蔵部には、前記発色剤の溶解・浸透速度を早める溶解促進剤として親水性高分子材料を混合したものである。前記発色剤貯蔵部には、前記発色剤の溶解・浸透速度を速める界面活性剤を混合したものである。前記親水性高分子材料は、例えばポリエチレングリコールである。前記変色部と前記発色剤貯蔵部及び表示部は、各々複数設けられているものでも良い。また、前記変色部と前記発色剤貯蔵部は、同一のシート材により形成され、前記発色剤貯蔵部は乾燥した固体の材料である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水分蒸散量測定パッチは、皮膚等の測定対象表面に貼付することによって水分蒸散量を、簡単に正確に定量的に測定することが可能である。そして、測定対象表面である皮膚等から、例えば不感蒸散水分量や手の平の発汗量の測定によってストレス・興奮・痛み等の精神的な刺激等を数量化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の第一実施形態の水分蒸散量測定パッチの横断面模式図である。
【図2】この発明の第一実施形態の水分蒸散量測定パッチの正面図である。
【図3】この発明の第一実施形態の水分蒸散量測定パッチの背面図である。
【図4】この発明の第一実施形態の水分蒸散量測定パッチの変形例を示す正面図である。
【図5】この発明の第一実施形態の水分蒸散量測定パッチのパッチ目盛とTEWL測定値の相関性を示すグラフである。
【図6】この発明の第二実施形態の水分蒸散量測定パッチの拡大横断面模式図である。
【図7】この発明の第二実施形態の水分蒸散量測定パッチの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1〜図3はこの発明の第一実施形態を示すもので、この実施形態の水分蒸散量測定パッチ10は、その支持体となる透明フィルム12が設けられている。透明フィルム12の素材は柔軟性を有し透明性に優れ、また強靭性にも優れた樹脂フィルムで作られている。例えば、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ナイロン、ウレタン等が使用される。厚さは、20〜100ミクロンであり、好ましくは50〜75ミクロンである。透明フィルム12は、長方形の角を丸めた形状又は長丸や円形に切断されている。
【0015】
透明フィルム12の表面12aには、所定の文字や絵柄が描かれた印刷部14が設けられている。図2は、水分蒸散量測定パッチ10の透明フィルム12の表面12aから見た印刷部14を示したものであり、透明フィルム12の表面12aの中心には、透明な表示部16が設けられている。表示部16の内側には、透明フィルム12を透過し、透明フィルム12の裏面12bに設けられた後述する変色部24が視認される。表示部16の形状は、透明フィルム12の長手方向に沿う長い矩形である。表示部16の長手方向に沿う一方の側縁部には、水分蒸散量を示す目盛18が印刷され、他方の側縁部には目盛18に対応する水分蒸散量の状態が5段階で、「非常に良好」「やや良好」「普通」「やや乾燥」「乾燥」という文字20で印刷されている。
【0016】
透明フィルム12の裏面12bには粘着剤22が均一に取り付けられている。粘着剤22は、例えばアクリル系粘着剤である。そして、透明フィルム12の裏面12bには、表示部16に対向する位置に変色部24が設けられている。変色部24は、ろ紙や和紙、レーヨンその他のセルロース系の親水性材料のシート材を所定形状に裁断したものであり、白色等の薄い色である。変色部24は表示部16の長手方向よりも長く、幅方向も広い矩形に設けられている。変色部24は、表示部16の「非常に良好」と印刷されている端部よりも所定長さに突出して設けられ、突出した部分は発色剤貯蔵部26となる。
【0017】
発色剤貯蔵部26には、発色剤28が吸着され乾燥されている。発色剤28は水溶性であり、顔料、染料から選ばれた1種または複数種類を混合し、目視判定に適した色から選ばれる。色は、赤、青、黄色、緑等である。例えば赤の発色剤は、アマランス、エリスロシン、アルラレッド、ニューコクシン等である。青の発色剤は、インジコカーミン、ブリリアントブルー等である。黄色の発色剤は、タートラジン、サンセットイエロー等である。また、これらの混合によって任意の色を調整することができる。例えば、緑色は青色と黄色の混合、オレンジ色は赤色と黄色の混合により形成することができる。
【0018】
発色剤28には、溶解促進剤29が混合されている。溶解促進剤29により、発色剤28の吸着水分への溶解と変色部への浸透速度は著しく速くなる。溶解促進剤29は水溶性のものであり、潮解性物質や親水性高分子材料、又は界面活性剤から選ばれた1種又は複数種が使用される。例えば、ソルビトール、ポリエチレングリコール、グリセリン、塩化アンモニウム、塩化カルシウム等である。特にポリエチレングリコールは、毒性が低く、化学変化しにくい特徴があるので有効である。ポリエチレングリコールは、その平均分子量は1000〜20000のものがよく、特に好ましくは1000〜4000の材料がよい。
【0019】
溶解促進剤29として、親水性高分子材料や界面活性剤は、発色剤28の溶解を促進し、変色部24への浸透を早めるので有効である。親水性高分子材料としてはポリエチレングリコールやポリビニルアルコール、界面活性剤としては、非イオン系界面活性剤が好ましく、しょ糖脂肪酸エステルソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルポリグリコシド、アルキルモノグリセリルエーテル等がある。
【0020】
変色部24の、透明フィルム12と反対側の面には、水分不透過層30が変色部24を覆って設けられている。水分不透過層30は変色部24よりもわずかに大きいものである。変色部24に連なる発色剤貯蔵部26は、水分不透過層30の端部から外側に突出し露出している。水分不透過層30は、例えばポリプロピレン等のフィルムである。水分不透過層30の、変色部24と反対側の面には、粘着剤32が均一に塗布されている。粘着剤32は、例えばアクリル系粘着剤である。
【0021】
透明フィルム12の裏面12bには、発色剤貯蔵部26を覆う水分透過層34が設けられている。水分透過層34は、透明フィルム12よりも小さい形状で、少なくとも発色剤貯蔵部26の全体を覆う大きさである。水分透過層34の接着は、水分透過層34の水分不透過層30に接する所は粘着剤32に、透明フィルム12に接する所は粘着剤22により貼り付けられている。水分透過層34は、ポリエステル、ポリプロピレン等の疎水性の不織布または織布である。
【0022】
透明フィルム12の裏面12bには、水分透過層34を覆って、剥離シート36が貼り合わされている。剥離シート36が取り付けられた水分蒸散量測定パッチ10は、図示しない樹脂フィルム等の袋に包装され、密封されている。これによって空気中の湿度による変質を防ぐことができる。
【0023】
次に、この実施形態の水分蒸散量測定パッチ10の使用方法について説明する。まず、水分蒸散量測定パッチ10から剥離シート36を剥がし、粘着剤22を露出させる。そして、被験者の皮膚、例えば手の平に水分蒸散量測定パッチ10を貼り付ける。このとき、水分蒸散量測定パッチ10を貼り付ける前に、手の平の汗や手洗い等で濡れた水分を予め拭き取る。貼付後その状態で、所定時間放置する。貼付時間は、数分〜24時間であり、例えば3分間でもよい。このとき、発生する手の平の汗を水分透過層34が捉え、その水分を発色剤貯蔵部26が吸着して発色剤28が溶け、変色部24に浸透して着色した水分が変色部24を移動する。吸着する水分が多いほど発色剤貯蔵部26から浸透する水分が多くなり、変色部24の着色領域での到達距離が長くなる。所定時間経過後、変色部24の色の到達距離を表示部16から見て、目盛18と比較して水分蒸散量を測定する。測定範囲は、ここでは0〜5mg/cmである。測定範囲は、変色部24の形状や大きさ、厚さ等を調整して数μg/cm〜100mg/cm程度の任意の値に設定することができる。
【0024】
水分蒸散量測定パッチ10の水分蒸散量の測定時間、反応速度、測定範囲等は、変色部24の形状や面積を適宜選択することによって任意に調整することができる。変色部24の面積を大きくすることによって測定時間を長く、例えば12時間〜24時間に設定し、長時間の測定が可能となる。また、水分透過層34の面積により吸着速度を調節することができる。水分透過層34の面積を大きくすると反応速度は速くなり、面積を小さくすれば遅くなる。水分透過層34の面積を大きくすることによって吸着水分量が増えるので測定感度は高くなり、測定時間を短くすることができる。変色部24の厚さ及び面積の組み合わせによっても吸着速度を任意に調整することが可能であり、厚く又は面積を大きくすると反応速度は遅くなる。
【0025】
この実施形態の水分蒸散量測定パッチ10は、皮膚に貼付することによって水分蒸散量を正確に定量することが可能であり低コストで、手軽に測定することができる。精神性発汗は、ストレス・興奮・痛み等の精神的な刺激の度合いに比例して分泌されるので、この発汗量を定量的に調べることによって、これらのストレス・興奮・痛み等の精神的な刺激を数量化することが可能となる。例えば、水分蒸散量測定パッチ10を手の平等に貼付し、自動車運転や日常の作業、危険作業等に従事する時に、発汗量を定量することによってストレスの度合いを数値化することが可能となる。さらに、水分蒸散量測定パッチ10を長時間貼り、その間の種々の作業や生活等個々の行動の単位時間当たりの発汗量を調べることによってどの作業や生活等からどれだけの精神的ストレスを受けているか容易に分析することが可能になる。その他、長時間の積算水分量を測定することもできる。
【0026】
また、水分蒸散量測定パッチ10は、医療機関で、治療や検査の間に感じる患者の痛みや不安から生じるストレスを、治療中または長時間連続的に測定することができる。また、学校や職場での生徒や社員間の人間関係、いじめによるストレスを測定することができ、また一般の人が自分の心の状態をセルフチェックすることができる。これにより、QOL(生活の質)向上に役立つ。
【0027】
さらに、精神性発汗の他に、不感蒸散を測定して皮膚のバリア機能、スキンケアの効果、保湿力、肌荒れのチェックを行うことができる。また、手足や背中、腹部等全身の温熱性発汗を測定して、不汗症や寝汗等のチェックを行うことができる。これは、皮膚科の医師や美容の専門家による診断に使用でき、また一般の人が自分の皮膚の状態を自宅や職場などいつでも定量測定することができる。
【0028】
水分蒸散量測定パッチ10は絆創膏状のパッチであり、測定セルや測定機械、記録機器、パソコンなどの機械類が不要であり、測定が極めて容易で違和感が無く、簡便であり、一定時間のTEWL値の積算、不感蒸散量、各部位の水分蒸散量、睡眠時の寝汗などの測定が容易である。また、複数か所を同時に測定することができる。また、皮膚の任意の部位に貼付することによって、貼付部位の水分蒸散量を連続的に長時間にわたって測定することが可能である。
【0029】
水分蒸散量測定パッチ10の印刷部14は、上記以外でもよく、例えば図4に示すように目盛18に0mg/cm〜5mg/cmの数値を印刷してもよい。測定範囲は、目盛18に対応する0〜5mg/cmである。測定範囲は、変色部24の形状や大きさ、厚さ等を調整して数μg/cm〜100mg/cm程度の任意の値に設定することができる。
【0030】
この実施形態では、本発明の水分蒸散量測定パッチの精度を調べるために、水分蒸散量測定パッチ10で目盛18から測定した値と、TEWAメータにより測定したTEWL値との相関性を調べた。水分蒸散量測定パッチ10を22歳から46歳の男女6人の前腕に貼付し、室温22±1℃、湿度55%の室内で5時間測定した。測定は、一定時間の目盛の変化量(mm)の記録と同時にTEWAメータによりTEWL値(g/m)を測定した。その結果を図5のグラフに示す。これによると、水分蒸散量測定パッチ10の目盛18の変化量とTEWL値の間に有意な相関のあることを認めた。
【0031】
次にこの発明の第二実施形態について図6、図7に基づいて説明する。ここで、上記実施形態と同様の部材は同様の符号を付して説明を省略する。この実施形態の水分蒸散量測定パッチ38は、その支持体となる透明フィルム12が設けられている。透明フィルム12の表面12aには、所定の絵柄が印刷される印刷部14が設けられ、透明フィルム12の表面12aの中心には、透明な表示部16が設けられている。
【0032】
透明フィルム12の裏面12bには粘着剤22が均一に塗布されている。そして、裏面12bには、表示部16の一方の端部を覆って第一変色部39が設けられている。第一変色部39は、ろ紙や和紙、その他のセルロース系のシートを所定形状にカットしたものであり、表示部16の長手方向よりも短く、例えば約半分の長さに設定され、幅方向は表示部16よりも広い矩形に設定されている。第一変色部39は、表示部16の一端部から所定長さに突出して設けられ、突出した部分は第一発色剤貯蔵部40となる。第一発色剤貯蔵部40には、発色剤41が吸着され乾燥されている。
【0033】
第一変色部39の、透明フィルム12と反対側の面には、第二変色部42が設けられている。第二変色部42は、第一変色部39の途中から表示部16に沿って表示部16の先端部を超えて設けられ、幅方向には第一変色部39よりも広い矩形に設定されている。第二変色部42の第一変色部39に対応した途中から第一発色剤貯蔵部40との境界までの領域が、第二発色剤貯蔵部44となる。第二発色剤貯蔵部44には、第一変色部39の発色剤41とは色が異なる発色剤43が吸着され乾燥されている。第二発色剤貯蔵部44と、第一発色剤貯蔵部40は、互いに位置がずれて後述する水分透過層52に露出しているため、水分透過層52が捉えた水分を、第一発色剤貯蔵部40と第二発色剤貯蔵部44が同時に吸湿する。各発色剤41,43には、溶解促進剤29(溶解補助剤・溶解促進剤)が混合されている。
【0034】
互いに重ねられた第一変色部39・第一発色剤貯蔵部40と第二変色部42・第二発色剤貯蔵部44の間には、粘着剤50が塗布された透明な水分不透過層46が設けられ、互いの発色剤41,43が混ざることを防いでいる。水分不透過層46は、透明フィルム12の一端部近傍まで延びている。第二変色部42の、水分不透過層46と反対側の面には、水分不透過層48が設けられ、水分不透過層48の端部も、透明フィルム12の一端部近傍まで延びている。第二変色部42に連続する第二発色剤貯蔵部44は、水分不透過層48の端部から外側に突出し露出している。水分不透過層48の、第二変色部42と反対側の面には、粘着剤50が均一に取り付けられている。
【0035】
透明フィルム12の裏面12bには、第二発色剤貯蔵部44を覆う水分透過層52が設けられている。水分透過層52は、透明フィルム12よりも小さい形状で、第二変色部42と第二発色剤貯蔵部44を覆う大きさである。水分透過層52の水分不透過層48に接する所は粘着剤50に、透明フィルム12に接する所は粘着剤22により貼り付けられている。さらに、透明フィルム12の裏面12bには、水分透過層52を覆って、剥離シート36が粘着剤22により貼り合わされている。
【0036】
次に、この実施形態の水分蒸散量測定パッチ38の使用方法について説明する。まず、水分蒸散量測定パッチ38から剥離シート36を剥がし、粘着剤22を露出させる。そして、被験者の皮膚、例えば手の平に水分蒸散量測定パッチ38を貼り付ける。貼付後その状態で所定時間放置する。このとき、発生する手の平の汗を水分透過層52が捉え、その水分を第一発色剤貯蔵部40、第二発色剤貯蔵部44が吸着して発色剤41,43が溶け、第一変色部39、第二変色部42に浸透して拡散する。第一発色剤貯蔵部40、第二発色剤貯蔵部44の間には水分不透過層46が設けられているため、発色剤41,43は混ざることがない。発色剤41,43は吸着する水分が多いほど第一発色剤貯蔵部40、第二発色剤貯蔵部44からの到達距離が長くなる。第一変色部39、第二変色部42の水分吸着速度は等しくても良いが、両者に差を持たせて、例えば第二変色部42の水分吸着速度を遅くしても良い。
【0037】
測定の開始直後は、透明フィルム12の表示部16から第一変色部39の発色剤41が見える。そして、水分の吸着が進行すると、発色剤41は、第一変色部39の端部39aに達した時にとまり、それより先は、表示部16から第二変色部42の発色剤43が見えるようになる。これにより、発色剤41と発色剤43は色が異なるため、水分蒸発量が一定値を超えたことが確実にわかる。
【0038】
この実施形態の水分蒸散量測定パッチ38は、上記実施形態と同様の効果を有するものであり、さらに、一定以上の水分蒸発量になると表示部16から見える色が異なる色に変化するため、水分蒸発量が一定値を超えたことが確実にわかり、測定しやすい。発色剤41と発色剤43は色が異なるため、水分蒸発量の度合いが確実に見やすくなり、正確に定量的に測定することができる。
【0039】
なお、本発明の水分蒸散量測定パッチは上記各実施の形態に限定されるものではなく、透明フィルムの印刷部の絵柄は自由に変更可能である。各部材の素材や形状も、適宜変更可能である。発色剤貯蔵部と変色部は別体でもよく、変色部の端部に発色剤貯蔵部が積層されてもよい。変色部の形状は、長方形の他、発色剤貯蔵部から遠い部位ほど細くなるような台形状にして、変色部先端側の吸着速度の低下を抑えるようにしても良い。発色剤貯蔵部及び変色部は、複数本並列に設けられていても良く、感度の異なるものや大きさの異なるものを複数設けても良い。水分蒸散量測定パッチの測定対象は、手の平以外に、顔、首、腕、手の甲、足等でもよい。人以外に動物の皮膚や植物の葉、果実の表皮、その他、工業的用途も含めて、微量の水分が蒸散する物質を対象に測定することができる。
【符号の説明】
【0040】
10 水分蒸散量測定パッチ
12 透明フィルム
14 印刷部
16 表示部
18 目盛
22,32,50 粘着剤
24、39,42 変色部
26,40,44 発色剤貯蔵部
28,41,43 発色剤
29 溶解促進剤
30,46,48 水分不透過層
34,52 水分透過層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤により測定対象表面に貼付される透明フィルムと、上記透明フィルムの粘着剤側の面に設けられ発色剤を吸着させた発色剤貯蔵部と、前記発色剤貯蔵部に連なり一方向に長く形成され前記発色剤の溶解液が長手方向に浸透する変色部と、前記変色部の前記透明フィルム側と反対側の面を覆う水分不透過層と、上記透明フィルムの粘着剤側の面に対面し前記発色剤貯蔵部を覆う水分透過層が設けられ、前記透明フィルムには前記変色部を視認可能にする透明な表示部と、前記表示部の周辺部に設けられ前記変色部の長手方向に沿う目盛が描かれた印刷部が設けられていることを特徴とする水分蒸散量測定パッチ。
【請求項2】
前記変色部は複数設けられ、前記変色部に各々前記発色剤貯蔵部が設けられ、複数の前記変色部は互いに重ねられて前記表示部に対面し、前記重ねられた複数の変色部は、相対的に前記表示部に近い側に位置した前記変色部が前記表示部に対して遠い側に位置した前記変色部より長手方向に短く形成され、前記各変色部同士の間には水分不透過層が設けられ、複数個の前記発色剤貯蔵部には、互いに異なる色の発色剤が吸着されている請求項1記載の水分蒸散量測定パッチ。
【請求項3】
前記発色剤貯蔵部には、前記発色剤の溶解・浸透速度を早める溶解促進剤として親水性高分子材料を混合した請求項1又は2記載の水分蒸散量測定パッチ。
【請求項4】
前記発色剤貯蔵部には、前記発色剤の溶解・浸透速度を速める界面活性剤を混合した請求項1又は2記載の水分蒸散量測定パッチ。
【請求項5】
前記界面活性剤は、非イオン系界面活性剤である請求項4記載の水分蒸散量測定パッチ。
【請求項6】
前記親水性高分子材料は、ポリエチレングリコールである請求項3記載の水分蒸散量測定パッチ。
【請求項7】
前記変色部と前記発色剤貯蔵部及び表示部は、各々複数設けられている請求項1乃至6のいずれかに記載の水分蒸散量測定パッチ。
【請求項8】
前記変色部と前記発色剤貯蔵部は、同一のシート材により形成され、前記発色剤貯蔵部は固体の材料である請求項1乃至6のいずれかに記載の水分蒸散量測定パッチ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−3040(P2013−3040A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136208(P2011−136208)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(397043190)ライフケア技研株式会社 (11)
【Fターム(参考)】