説明

水分計

【課題】被検者の水分量を簡単に測定することができ、被検者が適正な水分調節を行うための支援手段として有効な水分計を提供する。
【解決手段】水分計1は、被検者Mの水分を測定する水分計であって、被検者Mの腋下Rに保持されて、被検者Mの水分量を測定するために腋下Rの水分を測定するためのプローブ式の水分測定部30を有し、被検者Mの腋下Rに保持されて、被検者Mの体温を測定する体温測定部31を有し、水分計1は、本体部10と、プローブ式の水分測定部30と体温測定部31を保持して腋下Rに挟持される測定部の保持部12と、測定された被検者Mの水分量と測定された被検者Mの体温を表示する表示部20を保持する表示部の保持部12を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の腋下に挟んで生体の水分を測定する水分計に関する。
【背景技術】
【0002】
被検者の生体の水分を測定することは重要である。生体における脱水症状は、生体中の水分が減少する病態であり、日常しばしば発現し、特に発汗や体温上昇により多くの水分が体内から体外に排出される運動時や気温の高い時に多く発現する症状である。特に、高齢者においては、生体の水分保持能力自体が低下していることが多いために、高齢者は一般健常者と比較して脱水症状を起こし易いと言われている。
【0003】
一般的に、高齢者になると、水をためる筋肉が減少したり、腎臓機能の低下により尿量が増大したり、感覚鈍化により口の渇きに気づきにくくなったり、細胞内で必要とされる水分が少なくなったりする。この脱水症状を放置すると、脱水症状が引き金となって深刻な症状に進行してしまうことがある。また、同じような脱水症状は、乳幼児でも見られる。乳幼児はもともと水分量が多いが、自ら水分補給を訴えることができず、保護者が気づくのが遅れることから脱水症状を起こすことがある。
【0004】
通常、生体中の水分が体重の2%以上失われた時点で体温調整の障害が起こると言われており、体温調整の障害は体温の上昇を引き起こし、体温の上昇は更なる生体中の水分の減少を引き起こすという悪循環に陥り、遂には熱中症と称される病態にまで至ってしまう。熱中症には、熱痙攣、熱疲労、熱射病等の病態があり、時には全身の臓器障害が起こることもあり、脱水症状を的確に把握することで、熱中症に至る危険を未然に回避できるようにすることが望まれる。
脱水症状を把握する装置としては、両手でハンドルを保持するような装置で人体インピータンスを測定し、そこから水分量を算出するものが知られている(特許文献1〜3を参照)。
また、別の脱水症状を把握する装置として、舌粘膜、頬粘膜あるいは口蓋などの口腔内の水分を測定する口腔水分計等が知られている(特許文献4〜6を参照)。
さらに、皮膚の水分量の計測方法としては、イン・ビトロでの重量法やカール・フィシャー法に始まり、イン・ビボでのATR分光法、更にはより簡便なイン・ビボでの計測法である高周波インピーダンス法や電気伝導度法が一般的に利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−318845号公報
【特許文献2】特許第3977983号公報
【特許文献3】特許第3699640号公報
【特許文献4】WO2004/028359国際公開公報
【特許文献5】特開2001−170088号公報
【特許文献6】特開2005−287547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、両手でハンドルを保持するような装置で人体インピータンスを測定し、人体インピータンスから水分量を算出する水分計は、手の皮膚からインピーダンスを測定するので、皮膚の湿度や腕の筋肉量等に影響を受けやすく、高齢者や身体に障害がある人にとっては装置が大型であったり、立って測定しなければならず、使用勝手が悪い。
一般的に、体温が上昇すると生体電気インピーダンス値は下降し、体温が下降すると生体電気インピーダンス値は上昇するといったように、体温が変動すると生体電気インピーダンス値、すなわち水分量も変動することが知られている。しかし、従来の水分計では、このように体温の変動により生体電気インピーダンス値が変動することを何ら考慮せずに測定された生体電気インピーダンス値から体水分量を算出するため、正確な体水分量を求めることができず、従って脱水症状を正確に検出することができない。例えば、体水分量が減少し、体温が上昇している場合には、体水分量の減少により生体電気インピーダンス値は上昇するが、体温の上昇により生体電気インピーダンス値は下降するため、測定された生体電気インピーダンス値より算出した体水分量から判定しても、脱水状態は検出されないということも起こり得る。このため、インピータンス法により測定を行う場合、非測定者の体温がどの程度かを知る必要があるが、体温測定によるインピータンス値の補正、または発熱しているため正確な水分量が判定できないなどという警告等は実施されていない。
【0007】
また、舌粘膜、頬粘膜あるいは口蓋などの口腔内の水分を測定する口腔水分計は、被検者間相互の感染を防ぐために、口腔内に直接挿入する部分には被検者毎に新たに交換可能なカバーを装着しなければならず、カバーを交換して装着することを忘れる可能性もあり、高齢者や身体に障害がある人にとっては使用勝手が悪い。
【0008】
なお、特許第13977983号公報に記載の脱水状態判定装置は、体温測定を親指で測定する体温センサを備え、この体温に基づいて生体電気インピーダンスの測定値を補正し、この補正した生体電気インピーダンス値に基づいて脱水状態の判定を行うといったように、体温を考慮して生体電気インピーダンス値に基づいて脱水状態を判定するものであるので、脱水状態はより正確に判定され、被検者は脱水状態を正確に検査することができる。
しかしながら、この文献では、体温は親指により測定しているが、親指での体温測定には無理があり、現実的な手法ではない。
そこで、本発明は、被検者の水分量を簡単に測定することができ、被検者が適正な水分調節を行うための支援手段として有効な水分計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の水分計は、被検者の水分を測定する水分計であって、前記被検者の腋下に保持されて、前記被検者の水分量を測定するために前記腋下の水分を測定するためのプローブ式の水分測定部を有することを特徴とする。
上記構成によれば、被検者の水分量を簡単に測定することができ、被検者が適正な水分調節を行うための支援手段として有効である。ここで、水分計を用いて、被検者の水分量を適切に測定できる生体の部位として腋下を選んで、被検者の生体の水分量を測定するのは、水分量を腋下Rで測定することが被検者の生体全身の水分状態を反映しているためである。
【0010】
好ましくは、前記被検者の前記腋下に保持されて、前記被検者の体温を測定する体温測定部を有することを特徴とする。
上記構成によれば、被検者の腋下において被検者の水分量を測定すると同時に被検者の体温をも測定することで、水分量と体温の相関関係を利用して、被検者の状態の判断に用いることができる。
【0011】
好ましくは、本体部と、前記本体部の一端に配置され、前記水分測定部と前記体温測定部を保持して前記腋下に挟持される測定部の保持部と、前記本体部の他端に配置され、測定された前記被検者の水分量と測定された前記被検者の体温を表示する表示部を保持する表示部の保持部とを有することを特徴とする。
上記構成によれば、被検者が手で持ちやすいあるいは握りやすい形状であり、測定部の保持部は、腋下に挟持された状態で、表示部の保持部は、腋下から前方に突き出すことができ、測定者はこの表示部に表示された水分量と体温を目視により確認できる。
【0012】
好ましくは、複数の前記水分測定部と複数の前記体温測定部が、前記測定部の保持部に保持されていることを特徴とする。
上記構成によれば、複数の水分測定部を用いることで、測定された水分量を平均化して得ることができるとともに、複数の体温測定部を用いることで、測定された体温を平均化して得ることができるので、より正確な水分量と体温を得ることができる。
【0013】
好ましくは、前記水分測定部は、発光部からの光を前記腋下の皮膚の水分に照射して、その反射光を受光部で受光して、この受光量の変化により水分量を測定することを特徴とする。
上記構成によれば、被検者の腋下において光学式で水分量を測定できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、被検者の水分量を簡単に測定することができ、被検者が適正な水分調節を行う支援手段として有効な水分計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の水分計の実施形態を被検者が使用している状態を示す図。
【図2】図1に示す水分計の外観例を各方向から示した図。
【図3】図2に示す水分計の機能構成を示すブロック図。
【図4】光学式の水分測定部の構造例を示す図。
【図5】被検者Mの生体の水分量と被検者Mの生体の体温との相関関係から、被検者の症状例を示す図。
【図6】本発明の水分計の水分量検出動作例を示すフロー図。
【図7】本発明の別の実施形態の外観例を各方向から示した図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
図1は、本発明の水分計の好ましい実施形態を被検者が使用している状態を示す図である。図2は、図1に示す水分計の外観の構造例を示す図である。
図2に示す水分計1の部分1Aは、水分計1の正面部分を示し、水分計1の部分1Bは、水分計1の上面部分を示し、水分計1の部分1Cは、部分1Aに示した水分計1を紙面左側から見た側面部分を示し、水分計1の部分1Dは、部分1Aに示した水分計1を紙面右側から見た側面部分である。
【0017】
図1と図2に示す水分計1は、電子水分計あるいは腋下型電子水分計ともいい、水分計1は、小型で携帯可能な水分計である。図2に示すように、水分計1は、概略的には、本体部10と、測定部の保持部11と、表示部の保持部12とを備え、水分計1の全体の重量は、例えば約20g程度と軽量に作られている。
本体部10と測定部の保持部11と表示部の保持部12は、例えばプラスチックにより作られており、本体部10の一端は、測定部の保持部11に連続して形成されており、本体部10の他端は、表示部の保持部12に連続して形成されている。
本体部10は、被検者M又は測定者が手で持ちやすいあるいは握りやすい形状に形成されており、例えば本体部10は、外側に緩く湾曲した第1湾曲部分10Bと、内側に大きく湾曲した第2湾曲部分10Cを有しており、第2湾曲部分10Cは第1湾曲部分10Bに比べてより大きく湾曲している。
【0018】
本体部10がこのような特徴ある形状に形成されているのは、被検者M又は測定者が本体部10を手で持ってあるいは握って、水分計1の測定部の保持部11を腋下Rに挟み込んで確実に保持できるようにするためである。このように、水分計1を用いて、被検者Mの水分量を適切に測定できる生体の部位として腋下Rを選んで、被検者Mの生体の水分量を測定するのは、次の理由からである。すなわち、水分量を腋下Rで測定することは、被検者Mの生体全身の水分状態を反映しているためである。例えば高齢者の痩せている人であっても、水分計1の測定部の保持部11は、身体と上腕の間の腋下Rに確実に挟み込んで保持できる。また、被検者が乳幼児であっても、腋下Rであれば測定部の保持部11を容易に挟み込んで確実に保持できるからである。
【0019】
図2に示す水分計1の寸法を例示すると、本体部10の寸法例としては、大きなサイズ(大人用)では全長Lが約110mm,中サイズでは全長Lが約110mm,小さな大きなサイズ(乳幼児用)では全長Lが約90mmに設定されており、水分計1は測定部の保持部11と表示部の保持部12の一部を除いてはほぼ平板形状を有している。
また、本体部10の中央部10Aの厚さT2は約7mm、測定部の保持部11の最大厚さT1は約9mm程度、そして表示部の保持部12付近の最大厚さT3は約14mm程度となっている。
しかし、水分計1のこれらの寸法は、上述した寸法例に限定されるものではなく、任意に選定できる。
【0020】
図2に示すように、水分計1の測定部の保持部11は、円形状の外周部11Dと2つの凸部11Cを有しており、図1に示す被検者Mの腋下Rには、測定部の保持部11を2つの凸部11Cを用いて挟み込んで上腕Kで上から押さえて保持すれば、被検者Mの生体の水分量と、体温を安定して測定することができるようになっている。
このように、水分計1の測定部の保持部11が腋下Rに保持された状態では、本体部10が、被検者の上体Bの側面部に密着することで水分計1はより確実に被検者の上体B側に保持できる。
例えば、図1に示すように、水分計1を使用する際には、表示部の保持部12は、被検者Mの前方Dに向けてほぼ水平に保持させることができる。測定部の保持部11と表示部の保持部12との間の距離、すなわち本体部10の長さは、被検者Mが測定部の保持部11を腋下Rに挟んだ場合に、表示部の保持部12内の表示部20が、腋下Rの外側の位置(被検者Mの胴体部と上腕Kとにより挟まれない位置)にくるように設定されている。
【0021】
図2に示す表示部の保持部12は、円形状の外周部12Bを有しており、表示部の保持部12の正面側には例えば円形状の表示部20を保持している。この表示部20としては、例えば液晶表示装置、有機EL装置等を採用できる。表示部の保持部12の背面側には音声発生部としてのスピーカ29が配置されている。このように、表示部の保持部12の正面側には表示部20が配置され、背面側にはスピーカ29が配置されているので、表示部20とスピーカ29は腋下Rに位置されることはないので、被検者Mは表示部20に表示される水分量と体温を確実に目視して確認でき、スピーカ29から発生される音声ガイダンス等を聞き取ることができる。
【0022】
図2に示すように、表示部20は、被検者の生体内の水分量(%)表示画面(以下、水分量表示画面という)21と、体温(℃)表示画面(以下、体温表示画面という)22とを有している。水分量表示画面21は、水分示唆マーク23を有しており、比較的大きなサイズのデジタル表示24により、例えば40%等と表示できる。図2の例では、体温表示画面22は、水分量のデジタル表示24に比べて小さく表示された体温のデジタル表示25により、被検者の体温を表示することができる。しかし、表示部20の構成は、図2に示す例に限らず、水分量のデジタル表示24と体温のデジタル表示25の大きさは、同じ程度にしても良い。
【0023】
図2に示すように、水分計1の測定部の保持部11は、プローブ式の水分測定部30と、体温測定部31を保持している。測定部の保持部11の表面には、例えばディップル加工等で凹凸を設けることで、滑り止め手段を配置することが好ましい。これにより、被検者Mが、測定部の保持部11を腋下Rに挟み込んだ場合に、水分計1の測定部の保持部11を確実に安定して挟持できる形状を有するとともに、熱容量を小さくし熱平衡状態に早期に到達させることが可能である。
図2のプローブ式の水分測定部30は、図1に示す被検者の腋下Rにおいて、被検者Mの生体の水分量を測定する部分であり、好ましくは測定部の保持部11の外周部11Dに沿って露出するように配置されている。これにより、水分測定部30は腋下Rの肌面に対して、確実に直接接触させることができる。プローブ式の水分測定部30は、光学式、電気抵抗式、静電容量式、超音波式、絶乾式など様々な原理を用いることができるが、例えば光学式の測定部を採用でき、腋下Rの表面の水分量を光学式により測定するようになっている。水分測定部30の構造例は、後で図4を参照して説明する。
また、図2の体温測定部31は、図1に示す被検者の腋下Rにおいて、被検者Mの生体の体温を測定する部分であり、好ましくは測定部の保持部11の外周部11Dに沿って露出するように配置されている。
【0024】
図2に戻ると、体温測定部31は、被検者の腋下Rにおいて、生体の体温を測定する部分であり、好ましくは測定部の保持部11の外周部11Dに沿って露出するように配置されている。これにより、体温測定部31は腋下Rの肌面に対して、確実に直接接触させることができる。
体温測定部31は、図1に示す被検者Mの腋下Rに接触することで体温を検知するようになっており、体温測定部31は例えばサーミスタを有するものや、熱電対を有するものを採用できる。例えば、サーミスタにより検出された温度信号は、デジタル信号に変換して出力されるようになっている。このサーミスタは、例えばステンレスの金属キャップにより液密に保護されている。
【0025】
図3は、図2に示す水分計1の機能構成を示すブロック図である。
図3に示す水分計1のブロックでは、本体部10は、制御部40、電源部41、タイマー42、表示部の駆動部43、演算処理部44、ROM(読み出し専用メモリ)45,EEPROM(電気的にプログラム内容を消去および再書き込みすることができるPROM)46,RAM(ランダムアクセスメモリ)47を内蔵している。水分測定部30と体温測定部31は、測定部の保持部11に配置され、表示部20とスピーカ29は、表示部の保持部12に配置されている。
【0026】
図3の電源部41は、充電可能な二次電池あるいは一次電池であり、制御部40と水分測定部30と温度測定部31に電源供給する。制御部40は、電源スイッチ10Sと、水分測定部30と温度測定部31と、タイマー42と、表示部の駆動部43と、演算処理部44に電気的に接続されており、制御部40は水分計1の全体の動作を制御するようになっている。
図3の表示部20は、表示部の駆動部43に電気的に接続されており、表示部の駆動部43は、制御部40からの指令により、表示部20には図2に例示するように、カップのような水分示唆マーク23、水分量のデジタル表示24、そして体温のデジタル表示25を表示させるようになっている。
【0027】
図3の演算処理部44は、スピーカ29と、ROM45,EEPROM46,RAM47に電気的に接続されている。ROM45は、タイマー42により計測されたタイミングに基づいて、水分測定部30により測定された水分量データと、温度測定部31により測定された体温データから算出された水分量データと体温データの時間変化に基づいて、被検者の水分量と体温を予測演算するプログラムを格納している。EEPROM46は、所定の音声データを格納している。RAM47は、算出された水分量データと体温データをそれぞれ時系列で記憶することができる。
演算処理部44は、ROM45に格納されたプログラムに従った被検者の水分量と体温を予測演算や、スピーカ29への音声データの出力等を行う。
【0028】
次に、図4を参照して、上述した水分測定部30の構造例を説明する。
図4は、光学式の水分測定部30の構造例を示している。
図4(A)に示す光学式の水分測定部30は、容器部50と発光部51と受光部52を有しており、容器部50は発光部51と受光部52を収容している。容器部50は、樹脂製の不透明な周囲部分53と、この周囲部分53の開口部55に配置されて光透過性を有する樹脂製の蓋部分54とを有している。これにより、発光部51と受光部52が容器部50により液密になるように封止されているので、容器部50の蓋部分54を腋下の皮膚に密着させて腋下Rの皮膚の水分量を測定する際に、腋下Rの皮膚の水分Wが発光部51と受光部52に付着するのを防止できる。従って、腋下Rの皮膚の水分Wが水分測定の際に水分Wが発光部51と受光部52に付着してしまうという問題が生じない。
【0029】
図4(A)の発光部51は、例えば赤外線領域の光Lを、蓋部分54を通して腋下Rの皮膚に照射して、反射した光L1を、蓋部分54を通して受光部52により受光するようになっている。この光学式の水分測定部30は、腋下Rの皮膚上の水分Wの量が多いほど、光Lの光量は水分Wに吸収されて低下することを利用している。受光部52は、腋下Rの皮膚上の水分Wの量を検出し、受光部52からの水分量データ信号P1は、制御部40に送られ、演算処理部44は、水分量データ信号P1に基づいて水分量を計算する。
このように、光学式の水分測定部30は、発光部51からの光Lを腋下Rの皮膚の水分に照射して、その反射光L1を受光部31により受光して、この受光量の変化により水分量を測定でき、被検者の腋下Rにおいて光学式で水分量を測定できる。
これにより、演算処理部44は、水分測定部30により測定された水分量データP1と、温度測定部31により測定された体温データP2から得られる、被検者の水分量データと体温データの時間変化に基づいて、被検者の水分量と体温を予測演算する
【0030】
ここで、被検者Mの生体の水分量と被検者Mの生体の体温との相関関係から例えば、以下のように判断することができ、具体的な被検者の症状例として、図5を参照して説明する。
図5に示す被検者Mの生体の水分量と被検者Mの生体の体温との相関関係は、例えば図3のROM45に格納されている。
図5において、水分量が低い場合に、体温が正常値であれば被検者は軽度の脱水症状であり、水分量が正常である場合に、体温が正常であれば被検者は健康状態である。これに対して、水分量が低い場合に、体温が高いと被検者は重度の脱水症状であり、水分量が正常である場合に、体温が高いと被検者は風邪の様な脱水以外の疾患であるといえる。
【0031】
このように、被検者の生体の水分量と体温から、被検者の健康、軽度と重度の脱水症状、風邪症状を判断可能になるので、本発明の実施形態の水分計1では、腋下Rにおける水分量の測定と体温の測定が重要である。上述した被検者の症状の判断例は、図2の表示部20に表示するようにしても良い。
【0032】
図6は、水分計1が、被検者Mの水分量と体温を検出する動作例を示すフロー図である。
次に、図6を参照して、図1と図2に示す水分計1が被検者Mの水分量と体温を検出する動作例を説明する。
図6のステップS1では、被検者が図3に示す電源スイッチ10Sをオンして、オン信号を制御部40に送ると、水分計1は測定可能状態になる。ステップS2では、図1に示すように、被測定者Mが水分計1の測定部の保持部11を腋下Rに対して、図2の2つの凸部11Cを用いて挟みこむ。
【0033】
このように水分計1の測定部の保持部11が腋下Rに保持された状態では、本体部10が被検者の上体Bの側面部に密着することで水分計1はより確実に被検者の上体Bに保持でき、例えば、表示部の保持部12は、被検者Mの前方Dに向けてほぼ水平に位置させることができる。
しかも、測定部の保持部11と表示部の保持部12との間の距離は、被検者Mが測定部の保持部11を腋下Rに挟んだ場合に、表示部20が腋下Rの外側の位置(胴体部と上腕とにより挟まれない位置)にくるので、被検者Mは表示部の保持部12の表示部20の水分量のデジタル表示24と体温のデジタル表示25を容易に目視できる。しかも、被検者Mはスピーカ29が発生する音声ガイダンスを聞き取ることができる。
【0034】
図6のステップS3では、水分計1の測定部の保持部11が腋下Rに保持されると、演算処理部44は、水分計1の初期化を行い、タイマー42からのタイミング信号に基づいて、所定のサンプリングのタイミングで、水分測定部30により測定された水分量データ信号P1と、温度測定部31により測定された体温データ信号P2を取り込む。
ステップS4では、演算処理部44は、水分測定部30により測定された水分量データP1と、温度測定部31により測定された体温データP2から得られる、被検者の水分量データと体温データの時間変化に基づいて、被検者の水分量と体温を予測演算する。
【0035】
図6のステップS5では、演算された被検者Mの水分量の値と体温の値を、図3のスピーカ29から音声ガイダンスするとともに、図3と図2に示す表示部20の水分量表示画面21には、比較的大きなサイズのデジタル表示24と、体温表示画面22には、体温のデジタル表示25をすることができる。
ステップS6では、被検者Mが水分計1により測定を終了する場合には、図3の電源スイッチ10Sをオフするが、測定を終了しない場合には、ステップS3に戻って再度ステップS3からS6の処理を繰り返すことになる。
【0036】
上述した本発明の実施形態の水分計1は、被検者Mの水分量を適切に測定できる腋下Rで測定できるような構造を有している。これにより、日常生活における健康の維持に極めて重要な水分調節はもとより、口渇感による適切な飲水行動が困難な乳幼児や高齢者あるいは激しい運動時などに適正な水分調節を行う支援手段として有効である。
また、被検者Mの水分量を適切に測定できる生体の部位として腋下Rを選んで測定するのは、水分量を腋下Rで測定することは、被検者Mの生体全身の水分状態を反映しているためである。また、一般的に、高齢者の皮膚は乾燥しやすく人によるばらつきが多い。その中でも、腋下Rは他の部位に比べ、外部からの影響が少ないため、測定のばらつきが少なく好適である。高齢者の痩せている人であっても、水分計1の測定部の保持部11は、身体と上腕の間の腋下Rに確実に挟み込んで保持できる。また、被検者が乳幼児であっても、腋下Rであれば測定部の保持部11を容易に挟み込んで確実に保持できるからである。さらには、水分測定部30は腋下Rのなかでも真ん中を確保するような構造を有することで測定精度をより高めている。
【0037】
しかも、本発明の実施形態の水分計1は、好ましくはこのように被検者Mの水分量を適切に測定する際に、同時に腋下Rにおける体温をも測定できる構造を有している。これにより、図5に示すように、医療従事者や介護者は、口腔等から水分を測定する場合に比べて、被検者Mの腋下Rに水分計1の測定部の保持部11を挟んで保持させるだけであるので、被検者Mの水分量を容易に測定できる。
図2に例示するように、表示部20に表示された被検者Mの生体の水分量と被検者Mの生体の体温との関係から、水分量が低い場合に、体温が正常値であれば被検者は軽度の脱水症状であり、水分量が正常である場合に、体温が正常であれば被検者は健康状態である。これに対して、水分量が低い場合に、体温が高いと被検者は重度の脱水症状であり、水分量が正常である場合に、体温が高いと被検者は風邪症状であると、例えば医師により大まかな判断することができる。
【0038】
本発明の水分計の実施形態は、被検者の水分を測定する水分計であって、被検者の水分を測定する水分計であって、被検者の腋下に保持されて、被検者の水分量を測定するために前記腋下の水分を測定するためのプローブ式の水分測定部を有する。これにより、被検者の水分量を簡単に測定することができ、被検者が適正な水分調節を行うための支援手段として有効である。ここで、水分計を用いて、被検者の水分量を適切に測定できる生体の部位として腋下を選んで、被検者の生体の水分量を測定するのは、水分量を腋下Rで測定することが被検者Mの生体全身の水分状態を反映しているためである。
【0039】
本発明の水分計の実施形態では、被検者の腋下に保持されて、被検者の体温を測定する体温測定部を有することを特徴とする。これにより、被検者の腋下において被検者の水分量を測定すると同時に被検者の体温をも測定することで、水分量と体温の相関関係を利用して、被検者の状態の判断に用いることができる。
【0040】
本発明の水分計の実施形態では、本体部と、本体部の一端に配置され、水分測定部と体温測定部を保持して腋下に挟持される測定部の保持部と、本体部の他端に配置され、測定された被検者の水分量と測定された被検者の体温を表示する表示部を保持する表示部の保持部とを有する。これにより、被検者Mが手で持ちやすいあるいは握りやすい形状であり、測定部の保持部は、腋下に挟持された状態で、表示部の保持部は、腋下から前方に突き出すことができ、測定者はこの表示部に表示された水分量と体温を目視により確認できる。
【0041】
本発明の水分計の実施形態では、複数の水分測定部と複数の体温測定部が、測定部の保持部に保持されている。これにより、複数の水分測定部を用いることで、測定された水分量を平均化して得ることができるとともに、複数の体温測定部を用いることで、測定された体温を平均化して得ることができるので、より正確な水分量と体温を得ることができる。
【0042】
本発明の水分計の実施形態では、水分測定部は、発光部からの光を腋下の皮膚の水分に照射して、その反射光を受光して、この受光量の変化により水分量を測定する。これにより、被検者の腋下において光学式で水分量を測定できる。
【0043】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明は様々な修正と変更が可能であり、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変形が可能である。
図示例では、プローブ型の1つの水分測定部30と1つの体温測定部31が、測定部の保持部11に配置されている。
しかし、これに限らず、図7に例示するように、プローブ型の複数の水分測定部30と複数の体温測定部31が、測定部の保持部11に配置されるようにしても良い。これにより、各水分測定部30により得られる水分量を平均化することで、水分量の測定精度をより高めることができるとともに、各体温測定部31より得られる体温を平均化することで、体温の測定精度をより高めることができる。また、水分測定部30と体温測定部31のいずれかが複数個を測定部の保持部11に配置されるようにしても良い。
【0044】
また、プローブ型の水分測定部としては、近赤外線分光分析法を用いた水分測定を採用することもできる。近赤外線領域に該当する光を顔や測定を望む皮膚の位置に照射し反射したスペクトルを測定して皮膚の角質層に含まれた水分量を測定する。
水分に吸収される特定波長には1.2μm、1.45μm、1.94μm、2.95μm等があるが、どの波長を用いても良い。前記したいずれかの測定光だけでは、測定距離や、検体の色、表面状態等に影響を受け、バラツキが生じてしまう。そのため、参照光として、測定光に隣接した水分に影響しない光を同時に測定することができる。測定光と参照光は、測定距離の変動や色、表面状態にほぼ等しく影響するため、これらの比率を求める事により外乱の影響を除去する事ができるため望ましい。
プローブ型の水分測定部として、光熱分析法を用いた水分測定を採用する場合には、光熱分光法は、分光された光を測定対象物に照射し、測定対象物における光吸収の結果生じた温度変化量を測温素子で検出することにより、測定対象物の水分量を求める。
また、電磁波を用いる場合には、装置が大掛かりになる。
【符号の説明】
【0045】
1・・・水分計、10・・・本体部、11・・・測定部の保持部、12・・・表示部、M・・・被検者、R・・・腋下、11・・・測定部の保持部、12・・・表示部の保持部、12・・・表示部の保持部、20・・・表示部、30・・・プローブ式の水分測定部、31・・・体温測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の水分を測定する水分計であって、
前記被検者の腋下に保持されて、前記被検者の水分量を測定するために前記腋下の水分を測定するためのプローブ式の水分測定部を有することを特徴とする水分計。
【請求項2】
前記被検者の前記腋下に保持されて、前記被検者の体温を測定する体温測定部を有することを特徴とする請求項1に記載の水分計。
【請求項3】
本体部と、前記本体部の一端に配置され、前記水分測定部と前記体温測定部を保持して前記腋下に挟持される測定部の保持部と、前記本体部の他端に配置され、測定された前記被検者の水分量と測定された前記被検者の体温を表示する表示部を保持する表示部の保持部とを有することを特徴とする請求項2に記載の水分計。
【請求項4】
複数の前記水分測定部と複数の前記体温測定部が、前記測定部の保持部に保持されていることを特徴とする請求項3に記載の水分計。
【請求項5】
前記水分測定部は、発光部からの光を前記腋下の皮膚の水分に照射して、その反射光を受光部で受光して、この受光量の変化により水分量を測定することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の水分計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−71056(P2012−71056A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219965(P2010−219965)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】