説明

水分透過性不織布シート

【課題】生理用品、生理ナプキン、おりものシート、紙オムツおよびその他の吸収性物品などのセカンドシートとして好適に用いられる水分透過性不織布シートを提供すること。
【解決手段】片面層(A)が、単糸繊度2〜6dtexの親水性の表面処理をした熱接着性複合繊維(a)100〜90重量%およびセルロース系繊維0〜10重量%を主成分とし、目付けが10〜35g/mの層からなり、別の片面層(B)が、単糸繊度0.5〜2.5dtexの親水性の表面処理をした熱接着性複合繊維(b)100〜70重量%およびセルロース系繊維0〜30重量%を主成分とし、目付けが5〜30g/mの層からなり、該複合繊維(a)の単糸繊度(a)(dtex)と該複合繊維(b)の単糸繊度(b)(dtex)は(a)(dtex)>(b)(dtex)であり、かつ全体目付けが15〜65g/mである、熱処理によって一体化されたエアレイド不織布であって、衛材用の表面シートと吸収体の間で、片面層(A)が表面シートに接するように用いる、2層以上の多層構造からなる、水分透過性不織布シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性や快適性に優れた使い捨て可能な衛生用品、吸収性物品、例えば成人用や赤ちゃん用の失禁用シート、尿取りパッド、使い捨ておむつ、女性用の生理用品やおりものシート、母乳パッドなどを構成する水分透過性不織布シートに関する。特に、肌に接する表面シートと、尿や経血やおりものなどの水系排泄物を吸収し保持する吸収体シートとの中間に使用する、いわゆるセカンドシートに用いる水分透過性シート、更にこのようなシートを適用した吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような吸収性物品には、一般に種々の品質性能が要求されており、要求性能として、尿や経血をすばやく吸収層に導く吸収性能、吸収層に保水された液体の逆戻り(リウェット、ウエットバック)の防止性、肌触り、柔らかさ、湿気防止、かぶれ防止等の快適性維持、使用感などが挙げられる。
これらの吸収性物品の品質課題を改良するために、しばしば表面シートと吸収体との間にセカンドシートを用いることが提案され、実用化されている。
【0003】
例えば、国際公開WO01/054640号パンフレットには、目付け20〜100g/mの不織布からなる一時貯水層(つまりセカンドシート)として、熱溶融性繊維とレーヨン繊維(10%以上)からなるエアスルー不織布が示されているが、繊度や層構造等の具体的な内容は示されておらず、更に本発明のエアレイド不織布についてはなんら記載、示唆がない。また、レーヨン繊維は、繊維自体が水分を吸収するので表面シートを通して肌に湿気を与えやすく、蒸れ感が発生しやすいという問題がある。
【0004】
また、特表2007-500048号公報には、レギュラーPET繊維と、スパイラル捲縮のPET繊維と、ラテックス結合剤からなる捕捉部材(つまりセカンドシート)が提案されている。しかしながら、繊維が太繊度なので肌触りが良くなく、しかもケミカルボンドなので残存モノマーや微量ホルマリン発生の危惧があり、安心・安全性の観点からは好ましくない。
更に、特開平11−81116号公報には、衛生材料に用いられる長さ3〜25mmの短繊維で構成されるエアレイド法不織布が提案されているが、具体的なセカンドシートとしてあるべき繊度、層構成、親水性などについてはなんら記述、示唆がない。
【特許文献1】国際公開WO01/054640号パンフレット
【特許文献2】特表2007-500048号公報
【特許文献3】特開平11−81116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、生理用品、生理ナプキン、おりものシート、紙オムツおよびその他の吸収性物品などのセカンドシートとして好適に用いられる水分透過性不織布シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、繊維がタテ・ヨコ方向のみならず厚さ方向にもランダムに配列しやすいエアレイド法不織布に着目し、その最適な構造について鋭意検討した結果、非含水性のポリマーを成分とする繊維の表面を親水化処理した熱接着性複合合成繊維を用い、表面シートに接する側と吸収体に接する側の繊度を変えて勾配を持たせた層状構造が繊維間の毛細管現象による水分透過性に効果を発揮することを見出し、更にそれらの繊度も最適化することにより本用途に有効な性能と実用性を有する水分透過性不織布シートの技術に到達したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、片面層(A)が、単糸繊度2〜6dtexの親水性の表面処理をした熱接着性複合繊維(a)100〜90重量%およびセルロース系繊維0〜10重量%を主成分とし、目付けが10〜35g/mの層からなり、別の片面層(B)が、単糸繊度0.5〜2.5dtexの親水性の表面処理をした熱接着性複合繊維(b)100〜70重量%およびセルロース系繊維0〜30重量%を主成分とし、目付けが5〜30g/mの層からなり、該複合繊維(a)の単糸繊度(a)(dtex)と該複合繊維(b)の単糸繊度(b)(dtex)は(a)(dtex)>(b)(dtex)であり、かつ全体目付けが15〜65g/mである、熱処理によって一体化されたエアレイド不織布であって、衛材用の表面シートと吸収体の間で、片面層(A)が表面シートに接するように用いる、2層以上の多層構造からなる、水分透過性不織布シートに関する。
ここで、上記熱接着性複合繊維(a)および(b)は、好ましくは、PET(ポリエチレンテレフタレート)/PE(ポリエチレン)系、PP(ポリプロピレン)/PE系、PET/低融点ポリエステル系のいずれかである、芯鞘型またはサイドバイサイド型の複合繊維からなる。
次に、本発明は、上記水分透過性不織布シートを、表面シートと吸収体の間に用いてなる吸収性物品に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水分透過性不織布シートを構成する片面層(A)(表層)は、水分吸収性のない熱接着性複合繊維からなる合成繊維を主成分としているので、繊維自身が水分を抱き込まず、かつ親水処理した繊維表面で水分が移動するので、シートとして拡散する効果を示すうえ、繊度が裏層よりも太いので、繊維間の空隙が大きく、水分保持し難いので、リウエットが少なく、空隙大で蒸れにくい。
また、本発明の水分透過性不織布シートを構成する片面層(B)(裏層)は、繊度が細いので表層に侵入した水分を毛細管現象で引き込み、接している吸収体に透過させる効果がある。
したがって、本発明の水分透過性不織布シートは、吸収性物品の表面シートと吸収体との間のセカンドシートとして用いることより、表面シートから浸透してくる尿や経血やオリモノなどの水系排泄物を面積方向に拡散し、吸収体の能力を広い面積で活用しつつ、すばやく吸収体に透過させ、かつリウエットしにくい構造体(吸収性物品)を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の水分透過性シートを構成する熱接着性複合繊維(a),(b)、セルロース系繊維などについて、説明する。
【0010】
≪熱接着性複合繊維≫
本発明の水分透過性不織布シートを構成する片面層(A)、(B)に用いられる熱接着性複合繊維(a),(b)としては、公定水分率が5%未満の非含水性ポリマーによるものを用いる。水分率が5%以上の場合は、繊維自身が含水するため、ウエットバックに悪影響が出やすい。特に、ポリオレフィン系や低融点ポリエステル系の芯鞘型や偏芯サイドバイサイド型の複合繊維が好適である。鞘あるいは繊維外周部を構成するポリオレフィンとしては、ポリエチレンやポリプロピレンが挙げられる。芯成分あるいは繊維内層部を構成するポリマーとしては、鞘より高融点であり、加熱接着処理温度で変化しないポリマーが好ましい。このような組み合わせとして、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)/PE(ポリエチレン)系、PP(ポリプロピレン)/PE系、PET/低融点ポリエステル系などが挙げられる。これらのポリマーは、本発明の作用・効果を阻害しない範囲で変性されていても差し支えがない。
【0011】
<繊度>
ここで、片面層(A)を構成する熱接着性複合繊維(a)は、単糸繊度が2〜6dtex、好ましくは2.5〜5dtexであり、反対側の片面層(B)を構成する熱接着性複合繊維(b)は、単糸繊度が0.5〜2.5dtex、好ましくは0.8〜2dtexであり、かつ複合繊維(a)の単糸繊度(a)(dtex)と該複合繊維(b)の単糸繊度(b)(dtex)は(a)(dtex)>(b)(dtex)である。
【0012】
片面層(A)を構成する複合繊維(a)の単糸繊度が6dtexを超えると、太過ぎて肌触りが悪化する。また、セカンドシートは直接肌に接しないものの、トップシートを介して太繊度のざらつき感は敏感な肌に感じられることになる。一方、2dtex未満の場合は、細過ぎて、トップシートとの間に繊維間空隙が小さくなり、吸水したあとで湿気がこもりやすく、快適感が損なわれやすくなるので好ましくない。
また、片面層(B)を構成する複合繊維(b)は、単糸繊度が0.5dtexよりも細いと、エアレイド不織布の工程で繊維同士がからまりやすくなり、地合いが悪化し、均一性が保てなくなる。一方、2.5dtexを超えると(a)>(b)の関係が保てなくなる。
更に、複合繊維(a)よりも複合繊維(b)の単糸繊度を小さくすることによって、繊維間の毛細管作用は体液を表面シート(トップシート)から、片面層(A)を経由して他の片面層(B)へ引き込みやすくすることができる。従って、この(a)>(b)は重要な要因である。
【0013】
<繊維長>
なお、上記熱接着性複合繊維(a)、(b)の繊維長は、2〜15mm、好ましくは3〜7mmである。
繊維が短いと開繊性がよくなり、より均一な不織布となりやすいが、2mm未満になると粉末状に近づき、繊維間結合による網目構造が作りにくくなるばかりか、不織布としての強力が低くなり、実用性に欠けるので好ましくない。一方、15mmより長くなると不織布の強力は上がるが、不織布製造時の繊維の空気輸送において繊維どうしが絡まりやすくなり、繊維塊状欠点を増大させるので好ましくない。
【0014】
<親水性の付与>
トップシートに浸入した水分を吸収体にスムースに移行させるには、セカンドシートには親水性が必要である。しかし、セルロース系繊維のように繊維自身が保水するとウエットバックに悪い影響を及ぼすので、基本的にはセカンドシートは非含水性の合成繊維でなければならない。
ここで、本発明におけるセカンドシート(水透過性不織布シート)を構成する熱接着性複合繊維、つまり合成繊維は一般に非親水性である。これに親水性を付与する方法としては、親水性の剤を練り込む方法、繊維表面に親水剤をコーティングする方法、などがある。
【0015】
親水化剤としては、例えば特開平10-325060号公報に示されているようなスルホン酸金属塩化合物、例えばアルキルスルホン酸ナトリウムなどを、エチレンビス脂肪酸アミドなどのような親水化助剤と共に練り込む方法が挙げられる。複合繊維に練り込む場合は、繊維表面を形成するポリマーにのみ練り込めばよい。
また、繊維表面の処理としては、一般に界面活性剤を用いる方法が知られているが、吸収物品には一過性の初期親水性ではなく数回程度の体液排泄に耐える耐久親水性が求められる場合がある。例えば、特開昭62-19165号公報や特開2000-256965号公報に示されているように、親水性基含有ポリエステルオリゴマー、スルホイソフタレート・ナトリウム塩、ポリエーテルポリエステルブロック共重合体、ポリオキシアルキレングリコールの誘導体などを用い、表面付与したのちに熱処理を加えて繊維表面を形成するポリマーと処理剤との部分的な結合を作るのが好適である。
【0016】
≪セルロース系繊維≫
吸収性物品のセカンドシートが、導水効果が高くしかも吸収層からの液戻り(ウエットバック)が小さいという性質を発現するには、該シートを上述のように表面が親水性で内部が非親水性であるような繊維で構成することが必要であるが、このような繊維の組成が100重量%である必要はない。もともと親水性であるセルロース系繊維、例えば粉砕パルプ、レーヨンなどを併用しても良く、それによって導水効果が高まる。
しかしながら、片面層(A)におけるセルロース系繊維の使用量は、10重量%以下、好ましくは5重量%以下である。10重量%を超えると、セルロース系繊維自身の保水によってウエットバックが悪化する現象を生じるので、好ましくない。
また、片面層(B)におけるセルロース系繊維の使用量は、30重量%以下、好ましくは25重量%以下である。30重量%を超えると、片面層(A)の場合と同様に、セルロース系繊維自身の保水によってウエットバックが悪化する現象を生じたり、局所の肌近傍における蒸れ感などの快適性が阻害されやすく好ましくない。
【0017】
≪他の繊維≫
なお、片面層(A)や片面層(B)を構成する繊維成分は、いずれも、熱接着性複合繊維(a)(およびセルロース系繊維)、あるいは、熱接着性複合繊維(b)(およびセルロース系繊維)を主成分とするが、全体の10重量%以下程度、熱接着性複合繊維やセルロース系繊維以外の他の繊維、例えばアセテートなどの半合成繊維、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ビニロンなどの合成繊維、SWPなどのフィブリル状繊維、コットン、麻などの天然繊維などの他の繊維を含んでいてもよい。この場合、他の繊維が10重量%を超えると、不上記の他の繊維の脱落が生じる可能性が多くなるうえ、湿潤強力も低くなる場合があり、実用上の問題を生じる。
【0018】
≪目付≫
本発明の水分透過性不織布シートでは、吸収性物品の表面シート側になる片面層(A)の目付は、10〜35g/m、好ましくは12〜30g/mである。10g/mよりも小さいと、薄すぎて液戻り(ウエットバック)が大きくなり、一方35g/mよりも大だと、厚過ぎるので、片面層(B)層を通じての吸収体への導水効果、吸液が悪化するばかりか、片面層(A)内部の繊維間空隙に保水する現象が強まり、液戻り(ウエットバック)が悪化する。
また、吸収性物品の吸収体側になる片面層(B)の目付は、5〜30g/m、好ましくは8〜20g/mである。5g/mよりも小さいと、薄すぎて液戻り(ウエットバック)が大きくなるばかりか、不織布の生産性やバラツキが悪化するので現実的でない。一方、30g/mよりも大だと厚過ぎるので、片面層(A)からの水分を吸収体へ導水する効果が悪化する。
更に、本発明の水分透過性不織布シートの全体の目付は、15〜65g/m、好ましくは25〜60g/mである。15g/mよりも小さいと、上記片面層(A),(B)の目付が小さ過ぎる場合と同様のデメリットを生起し、一方65g/mよりも大だと、厚過ぎて層の内部に水分を保持しやすくなり、液戻り(ウエットバック)が悪化する。
なお、全体の目付としては、生理用ナプキンやおりものシートの場合は液体量が比較的に少ないので、低目付のものが好適であり、赤ちゃんや成人の尿を対象とする場合は高目付が好適となる。
【0019】
≪厚み≫
なお、本発明の不織布シートの厚みは、セカンドシートとして用いた場合の液戻り性能と使用感、製造コストとを考慮し、最も適当な範囲にあることが必要である。適正な厚みの範囲は、用途により異なってくるが、例えば該不織布シートを生理用ナプキンの用途に使用する場合は、7g/cm2荷重下で全体の厚みが、0.5〜2mm、紙おむつの用途に使用する場合は、0.8〜2.5mmの範囲にあることが望ましい。
不織布シートの厚みは、該シートの目付量や熱処理条件により、適宜、調整することができる。
【0020】
≪水分透過性不織布シート≫
本発明のこのような不織布シートは、エアレイド法によって製造される。エアレイド法で製造された不織布は、不織布を形成している繊維が、不織布の長手方向、幅方向および厚み方向にランダムに3次元配向されているので好ましい。
また、本発明の不織布シートを形成する熱接着性複合繊維(a)、(b)は、熱処理によって熱接着されており、この繊維間結合による網目状構造で該不織布シートが固定されている。
【0021】
≪本発明の不織布シートの製造≫
ここで、本発明に係るエアレイド法による不織布シートは、以下のようにして得ることができる。
すなわち、所定量の解繊された熱接着性合成繊維(および必要に応じてパルプなどのセルロース系繊維)を主成分とし、片面層(A)を構成する繊維を空気流に均一分散させながら搬送し、吐出部に設けた細孔から吹き出した該繊維を、下部に設置された金属またはプラスチックの繊維捕集用ネットに落とし、該ネット下部で空気をサクションしながら、上記繊維を該ネット上に堆積させ、必要に応じて、この操作を少なくとも2回繰り返す。
例えば、第2回以降のウェブの堆積は、同様にして、上記堆積シートの上に片面層(B)を構成するウェブとして堆積させ、2層以上の多層ウェブを形成する。
なお、繊維捕集用ネット上には、まず、片面層(B)を構成するウェブを堆積させたのち、片面層(A)を構成するウェブを堆積させてもよい。
次に、この熱接着性複合繊維が充分その接着効果を発揮する温度に全体を加熱処理して、本発明の不織布シートを得ることができる。接着効果を十分発揮させるには、熱接着性複合繊維の接着成分の融点より5〜20℃高い温度での加熱処理が必要である。
【0022】
なお、本発明の不織布シートには、消臭剤、抗菌剤、芳香剤、保湿剤、着色剤、親水剤、撥水剤などの機能加工を付与することもできる。加工法としては、あらかじめそれらの機能を付与した繊維を混合したり、粉体状の剤を混合したり、液体状の剤をスプレーや含浸したりする方法が挙げられる。
【0023】
このように、エアレイド法で製造された不織布シートは、不織布の流れ方向、幅方向および厚み方向へ繊維をランダムに3次元配向させることが可能である。特に、厚み方向への繊維の配列は水分透過の性能に寄与する。そして、これらが熱接着するので、層間剥離を起こすことがない。また、エアレイド法で製造した不織布シートは、均一性が良好なので、性能のバラツキも少なくなる。
【0024】
≪吸収性物品≫
本発明の水分透過性不織布シートは、吸収性物品における、表面シートと吸収体の間にセカンドシートとして、好適に用いられる。
本発明の水分透過性シートを吸収物品のセカンドシートに用いると、片面層(A)(表層)は、水分吸収性のない熱接着性複合繊維を主成分としているので、繊維自身が水分を抱き込まず、かつ親水処理した繊維表面で水分が移動するので、シートとして拡散する効果を示すうえ、繊度は裏層よりも太いので、繊維間の空隙が大きく、水分保持し難いので、リウエットが少なく、空隙大で蒸れにくい。また、本発明の水分透過性不織布シートを構成する片面層(B)(裏層)は、繊度が細いので表層に侵入した水分を毛細管現象で引き込み、接している吸収体に透過させる効果がある。
したがって、本発明の水分透過性不織布シートを、吸収性物品の表面シートと吸収体との間のセカンドシートとして用いることより、表面シートから浸透してくる尿や経血やオリモノなどの水系排泄物を面積方向に拡散しつつ、すばやく吸収体に透過させ、かつリウエットしにくい吸収性物品となる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。
なお、実施例において、各種の評価は、次のようにして測定した。
【0026】
<厚み>
厚み計(尾崎製作所製、FFA−8型。ただし、測定子径は3cmφとし、荷重を追加して7g/cm2とした)により、7g/cm2荷重下での不織布の厚み(乾燥時)を測定した。
【0027】
<液戻り(ウエットバック)、拡散長さ、吸収速度の試験方法>
1.試料
(1)尿取りパッドの場合(実施例1〜2、比較例1〜3)
市販大人用オムツ(平版タイプ)からまず表面シートを取り除き、実施例の不織布シートをセカンドシートとして吸収体の上に載置し、更に表面シートをその上に載置したものを試験試料とした。
(2)おりものシートの場合(実施例3〜4、比較例4〜5)
市販おりものシートからまず表面シートを取り除き、実施例の不織布シートをセカンドシートとして吸収体の上に載置し、更に表面シートをその上に載置したものを試験試料とした。
【0028】
2.試験方法
(1)円筒 (内径20mmφ、高さ80mm、重さ160gのプラスチック製)を試料の上に載置する。
(2)その円筒中央に、生理食塩水(食塩0.9%、着色剤ブリリアントブルー0.05%でブルーに着色)30ccを、10秒間で静かにそそぐ。尿取りパッドの場合は生理食塩水は30cc、おりものシートの場合は3ccとする。
(3)そそぎ終わってから、注水液が試料に吸収されて、表面上に液滴が見えなくなるまでの時間をストップウオッチで計測する。この値(秒)を吸収速度とする。
(4)吸収速度を測定してから5分経過後に、円筒を取り除く。
(5)濾紙(90mmφ)10枚を試料の上に載置し、更に鉄板製の荷重(90mmφ、0.7kg)(64cm×11g/cm)を載置する。
(6)5分後に荷重と濾紙を取り除く。
(7)濾紙の重さを測定し、試験前後の重さの差をウエットバック量(g)とする。
(8)表面シートを取り除き、セカンドシートにおける生理食塩水の拡散長さ(cm)をタテ・ヨコで測定する。
3.データの表示
各試料毎に3回ずつ試験し、その平均値で表す。
【0029】
実施例1
下層として、表面親水化処理された鞘PE(ポリエチレン)/芯PET(ポリエチレンテレフタレート)からなる熱接着性複合繊維(帝人ファイバー(株)製,1.7dt×5mm)を22g/mとなるよう、エアレイド法で捕集用ネット上に、ウェブ形成した。更に、この上に上層として、同様な親水化熱接着性複合繊維(帝人ファイバー株)製、4.4dt×5mm)を21g/mとなるよう、エアレイド法で形成した。次いで、この43g/mのエアレイド2層積層ウェブを熱オーブンで140℃で加熱し繊維間結合を生じさせて、厚さが1.1mmである、エアレイド不織布シートを得た。
市販の尿取りパッド(ピジョン社製、“快適パッド”フラットタイプ)の表面シートと吸収体の間にこのシートを上記上層が表面シートに接するように挿入して用いたところ、拡散長さがアップし,且つ逆戻りしにくいものであった。しかも、着用感として肌のサラッとした感じは良好で、肌触りにも影響が出ず、有用であった。
【0030】
実施例2
下層として、表面親水化処理された鞘PE(ポリエチレン)/芯PP(ポリプロピレン)からなる熱接着性複合繊維(チッソポリプロ繊維(株)製,1dt×3mm)を90重量%,粉砕パルプ(Weyerhaeuser社製、NF405)を10重量%の比率で混合し、20g/mとなるようエアレイド法で捕集用ネット上にウェブ形成した。更に、この上に上層として、同様に表面親水化処理された鞘PE(ポリエチレン)/芯PPからなる熱接着性複合繊維(チッソポリプロ繊維(株)製、5.5dt×5mm)を18g/mとなるようエアレイド法で形成した。次いで、この38g/mのエアレイド2層積層ウェブを熱オーブンで140℃で加熱し繊維間結合を生じさせて、厚さが1.1mmである、エアレイド不織布シートを得た。
実施例1と同様に、市販の尿取りパッドの表面シートと吸収体の間にこのシートを上記上層が表面シートに接するように挿入して用いたところ、拡散長さがアップし,且つ逆戻りしにくいものであった。
【0031】
比較例1
下層として、表面親水化処理された鞘PE(ポリエチレン)/芯PETからなる熱接着性複合繊維(帝人ファイバー(株)製,4.4dt×5mm)を18g/mとなるよう、エアレイド法で捕集用ネット上にウェブ形成した。更に、この上に上層として、表面親水化処理された鞘PE(ポリエチレン)/芯PPからなる熱接着性複合繊維(チッソポリプロ繊維(株)製,1dt×3mm)を75重量%,粉砕パルプ(Weyerhaeuser社製、NF405)を25重量%の比率で混合し、18g/mとなるようエアレイド法で形成した。次いで、この36g/mのエアレイド2層積層ウェブを熱オーブンで140℃で加熱し繊維間結合を生じさせて、厚さが0.9mmである、エアレイド不織布シートを得た。
繊度の構成が逆転(上層が太く、下層が細い)しており、しかも上層にパルプが25重量%も混在しているので、セカンドシート自身が保水してしまう現象を生じ、拡散性が悪く、且つウエットバック量が多かった。実施例1と同様にして用いたところ、肌のサラっとした感触は悪化した。
【0032】
比較例2
実施例1と全く同様にして2層のエアレイド不織布を得た。但し、使用した原料繊維はいずれもあらかじめ水/エタノール=50/50重量%の洗浄液で良く洗い、繊維表面の親水性油剤を除去したものを使用した。
吸収速度、ウエットバック量、拡散長さともに実施例よりも大きく悪化した。
【0033】
比較例3
上記実施例および比較例に用いた市販の尿取りパッドの表面シートと吸収体を一度剥がし、再度そのまま重ねて性能試験に供した。すなわち、この比較例3は、実施例1〜2に対し、本発明のセカンドシートがない場合である。
各実施例よりも性能は悪かった。
【0034】
実施例3
実施例1と同様にして不織布シートを得て、市販のおりものシート(P&G社製、“さらふわライナー”)の表面シートと吸収体の間に入れて試験した。ウエットバック、拡散長さ、吸収速度ともに良好な結果が得られた。ただし、下層の繊維(a)には2.2dt×5mmを用いて18g/mとし、上層4.4dt×5mmの層も18g/mとして、全体36g/m、厚さ0.9mmであった。
【0035】
実施例4
実施例1と同様にして不織布シートを作成した。ただし、下層は繊維(a)が90重量%、粉砕パルプ(Weyerhaeuser社製、ThinFlex)が10重量%の混合で、目付け18g/mとした。また、上層には表面親水化処理された、鞘が融点130℃の共重合ポリエステル/芯PETからなる熱接着性複合繊維(帝人ファイバー(株)製,4.4dt×5mm)を15g/mとした。
実施例3と同様にしておりものシートとしての評価をしたところ、同様に性能改良の効果が得られた。特に、パルプとして拡散性に優れるタイプであるThinFlexを用いたので、拡散長さが更に改良された。また上層にオールポリエステル系の熱接着性複合繊維を用いたので、実用上局部でもまれても形状保持しやすい効果も認められた。
【0036】
比較例4
比較例1の上層と同様な繊維構成で目付けを30g/mとし、下層なしで同様な加熱結合して単一構造の不織布シートを作製した。実施例3と同様にして、おりものシートとして性能評価したところ、セカンドシートとして必要な導水効果がなく、水分を保持してしまう傾向が強いので、ウエットバック、拡散長さなどは不良であり、肌の蒸れ感が強く感じられるものであった。
【0037】
比較例5
上記実施例3、4、比較例3に用いた市販のおりものシートの表面シートと吸収体を一度剥がし、再度そのまま重ねて性能試験に供した。すなわち、この比較例5は、実施例3〜4に対し、本発明のセカンドシートがない場合である。
各実施例よりも性能は悪かった。























【0038】
【表1】



【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の水分透過性不織布シートは、吸収性物品のセカンドシートとして用いられるほか、表面シート、ペット用シート、ワイパー、フィルターなどとしても有用である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面層(A)が、単糸繊度2〜6dtexの親水性の表面処理をした熱接着性複合繊維(a)100〜90重量%およびセルロース系繊維0〜10重量%を主成分とし、目付けが10〜35g/mの層からなり、別の片面層(B)が、単糸繊度0.5〜2.5dtexの親水性の表面処理をした熱接着性複合繊維(b)100〜70重量%およびセルロース系繊維0〜30重量%を主成分とし、目付けが5〜30g/mの層からなり、該複合繊維(a)の単糸繊度(a)(dtex)と該複合繊維(b)の単糸繊度(b)(dtex)は(a)(dtex)>(b)(dtex)であり、かつ全体目付けが15〜65g/mである、熱処理によって一体化されたエアレイド不織布であって、衛材用の表面シートと吸収体の間で、片面層(A)が表面シートに接するように用いる、2層以上の多層構造からなる、水分透過性不織布シート。
【請求項2】
熱接着性複合繊維(a)および(b)が、PET(ポリエチレンテレフタレート)/PE(ポリエチレン)系、PP(ポリプロピレン)/PE系、PET/低融点ポリエステル系のいずれかである、芯鞘型またはサイドバイサイド型の複合繊維からなる請求項1記載の水分透過性不織布シート。
【請求項3】
請求項1または2記載の水分透過性不織布シートを、表面シートと吸収体の間に用いてなる吸収性物品。

【公開番号】特開2010−106402(P2010−106402A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280741(P2008−280741)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(591196315)金星製紙株式会社 (36)
【Fターム(参考)】