説明

水切り手袋

【課題】 従来の手袋では、手を挿入する裾を弓形に拡大させて返したり、その折り目に腕カバーを折り目に沿い縫製してから表に返し、その腕カバーの上端にゴム紐を回したり、手袋の折り目に環状の芯材を入れ縫製してあるので、製造には色々な材料と多く手間や時間がかかる。 また、裾が弓形に拡大している部分で折り返しをすると、折り返し部の上方はラッパの口状には開くが、手袋の指の挿入方向に対して直角方向に180度までには、開くことができない。
【解決手段】 袋体の先端部に、指が挿入可能な指部を連接してなる柔軟性素材からなる手袋であって、前記袋体の後端側に形成された開口部に、開放時に略円形状となる張り出し部が手を挿入する方向に対して直交方向(略180度方向)に一体的に延設されて水切り部とした水切り手袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水仕事、農作業等一般家庭の園芸・機械の処理・炊事・洗濯・掃除用等の手袋において、仕事を能率的で容易に行え、使い勝手が良い水切り手袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の手袋は、肘の部分まで覆うことができる長さで、腕カバーを一体にしたものや手袋の開口部を折り曲げたもの、更に開口部に環状の芯材を入れ縫製して取り付けたもの等が提案されている。 又、水仕事や農作業用の手袋として、裾が弓形に拡大している手袋を手首で所定長さ折返し、その折り目に沿い縫製して手袋と腕カバーを一体にした水切り付防水手袋についての提案もある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3064777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載された従来の手袋では、手を挿入する裾を弓形に拡大させて返したり、その折り目に腕カバーを折り目に沿い縫製してから表に返し、その腕カバーの上端にゴム紐を回したり、手袋の折り目に環状の芯材を入れ縫製してあるので、製造には色々な材料と多く手間や時間がかかる。 また、特許文献1の図2に示す手袋では、裾が弓形に拡大している部分で折り返しをすると、折り返し部の上方はラッパの口状には開くが、手袋の指の挿入方向に対して直角方向に180度までには、開くことができない。
【0005】
そのため、特許文献1の図1に示す笠状風の折り返し部内側には手を持上げた時、水が落下して折り返し部に溜まり、溜まった水は再度落下させる必要があり、面倒で水切り効果が充分なものとはいえない。
また、折り返し部の開き角度は裾が弓形のため180度以下になり、水の飛び跳ねや飛び散り等の受け止め効果が不充分であった。 また、特許文献1の図3の様に手袋と腕カバーを一体に縫製して腕カバーを取り付けた場合、カバーは繊維生地と防水性素材からなり、腕周りが膨らみ、作業中に邪魔になる。 更に原材料を多く使用することにより、製品コストが上昇してしまうといった問題点があった。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点を解決しようとするものであり、水仕事、農作業等を能率的で容易に行えると共に、原材料の過剰使用や製造の別工程を不要とし容易に製造でき、コストが安値であると共に、使い勝手が便利で見栄えもよく、更にコンパクトであり携帯が好適な使い捨てタイプの水切り手袋を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、袋体の先端部に、指が挿入可能な指部を連接してなる柔軟性素材からなる手袋であって、前記袋体の後端側に形成された開口部に、開放時に略円形状となる張り出し部が手を挿入する方向に対して直交方向(略180度方向)に一体的に延設して水切り部とした水切り手袋を提供する。
これにより水切り手袋を手に装着したとき、水切り部を手袋の外側方向に略円形状に開けることによって、水切り部で広範囲に水などを受止めるためである。
【0008】
なお、水切り手袋は、5指を一本づつ入れる手袋や4指をまとめて入れるミトン形手袋、更には指部等に張られた水掻き模付の手袋なども用いることができる。 また、本発明で言う略円形の外縁とは、略正方形、略長方形、略楕円形、略花形、略菱形等も含む。
柔軟性素材等には、防水加工、合成樹脂、紙、布類材等も含み、それらを重ねて縫い合わせしてもよい。
前記柔軟性素材は、エンボス加工や抗菌性又は殺菌性を付与すると共に、着色又は模様(レース)類等を設けると見栄えもよく使い勝手が便利でコンパクトになり、使い捨ても可能で携帯にも好適である。
【0009】
前記張り出し部の外周辺端部には剛性を有する金属線材が取り付けられた水切り部としてもよい。 剛性を有する金属線材としては直径が0.1mm〜2.0mm程度のワイヤ、ハリガネ等を指し、水切り部の全周に亘って取り囲んで取り付けることで、その金属線の剛性(付勢力)によって水切り部は、手挿入方向に対して直交方向に略円形状の皿の様に拡張される。 なお、可動性を有するワイヤ、ハリガネ部材等の場合は、水切り部材の形状の変化も自由にできる。 又、剛性を有する金属線材の取り付け位置は、水切り部の端部に限らなくても良い。 そして、その本数も一本に限らなくて複数本でも良い。 更に、水切り部の外周辺に金属線材等の差し入れ部分を設けて、金属線材を取り外し可能にしても良い。
【0010】
更に、前記袋体の開口部近傍の内側に、曲線状持ち手部を設けても良い。 曲線状の持ち手部は、一対にしても良いし、片方のみでも良い。 袋体の内側に曲線状持ち手部が有る事で、持ち手部の中央部は曲線状になっているため掴み、持ち、握り、引っ張り易く、手の出し入れがし易い。 なお、持ち手部を引っ張り持つ事で、親指と小指が引っ張られて袋体全体が絞まり易く指部も固定され、簡単に裏返しができ袋体を閉塞することが出来る。
【0011】
なお、前記袋体の指部は、柔軟性素材を二枚重ねて裁断し、指が挿入可能な前記指部の周縁部を加熱溶着して横外方に張り出し部を設けて延設すると共に曲線状持ち手を備え付けて周縁部を加熱溶着して形成するとよい。 剛性を有した金属線材は加熱溶着又は接着剤類等で水切り部の端周辺部に接着してもよい。
【発明の効果】
【0012】
上述したように、本発明に係る水切り付き手袋は、袋体の先端部に各指が挿入可能な指部を連設された柔軟性素材からなる手袋(手袋の全長として指先から手のくるぶし付近を境目にした手袋等)であって、前記袋体の後端側に形成された開口部に開放時に略円形状となる、手の挿入方向に対して180度の直交横左右外方に張り出し部を一体的に延設した水切り手袋であるから、その略円形状に裁断した水切り部は、帽子で言うとシルクハットの鍔風に開いた状態(360度方向)を維持することが出来る。 なお、掌側や甲側の片方側のみを手の挿入方向に対して直交する横左右方向への開閉も可能なので、水切り部の片側だけを広げて使うことも出来る。
【0013】
そこで、本発明の手袋を手に装着して、水仕事などをしていると、水切り部が手袋の開口部全周に亘って形成されているので、腕側への水の飛散を防止することができる。
更に、水切り部は手袋と一体的になっているので、開口部はバランスがとれて円形状に開きやすくなるので、手の廻りが空気に触れて蒸れが少なく、手袋の内面と手との接触面積の減少により摩擦も減少する。 そのため、手袋への手の着脱もスムーズに行える。
また、水切り部は帽子の鍔の様に開いた状態を維持できるので、手袋を装着したままで下向きや上向きの作業姿勢をしても、砂、水等の飛び跳ね、飛び散り又滴り、かかり落ち等を受け止めて、肘や衣服の汚れることを防ぐことが出来る。
【0014】
又、水切り手袋の略円形状の張り出し部の外周辺端部に剛性を有する金属線材としてのワイヤ、ハリガネ等を取り付けた場合は、その付勢力によって水切り部は、水平方向に略円形状の皿の様に拡張され、更に固定状態を確実に維持することが出来る。 なお、可動性を有するワイヤ、ハリガネ部材等を用いた場合は、水切り部の形状は波状や凹凸状、花弁状等など自由自在に変化させることが出来る。 これにより、水切り部表面から下方に流れ落ちる水の勢いコントロールすることができ、流れ落ちる水の飛散を防止することができる。
【0015】
更に、手袋の開口部近傍の内側に曲線状持ち手部を設けると、袋体を引っ張り返すことで、手の出し入れが容易に行える。 又袋体の内側に曲線状持ち手部を設けると、油分、汚れ、汚物等で表面が汚れている手袋を手からはがす時、持ち手部を持って引けば良いので、素手に汚れが付着するのを気にする必要がない。 なお、持ち手部は曲線状の長さが長い程より結び易く又、持ち手を袋体の内側に備え付け引っ張ることで、親指と小指が引っ張られ手袋全体が絞まり指部も固定される。 曲線状持ち手部の中央に切り目線を設け切り離すことで結び紐にもなる。 便利で使い勝手がよくコンパクトになり携帯に好適であり、清潔に廃棄できる使い捨てが可能であるなど特有の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例となる水切り手袋の側面図(a)と斜面視図(b)。
【図2】本発明の曲線状持ち手部付水切り手袋の装着状況を示す説明図(a)と手袋を裏返して曲線状持ち手部を互いに結び合せて閉塞した状態を示す外観図(b)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を実施例を示す図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施例となる水切り手袋は、袋体が5指を入れる水切り手袋の例を示している。
袋体1の後端側に形成された開口部3に、開放時に略円形状となる張り出し部4を手袋の手を挿入する方向に対して直交方向(略180度方向)に一体的に延設して水切り部5とした。
【0019】
袋体1はポリエチレンやポリプロピレン、ポリエステル、塩化ビニール、ナイロンなどの合成樹脂、ゴム、紙、布類材等の厚さが0.01mm乃至0.10mm程度の柔軟性素材からなる袋体であって、この例では厚さ0.03mmのポリエステル樹脂シートを用いた。
【0020】
水切り手袋(以下、単に手袋と称することがある)の袋体1の開口部3に設けられた水切り部5は、図1(a)、(b)に示されるように、開口部3の全周に亘って形成した。 なお、水切り部5は袋対1と同様の柔軟性素材をもちいて作ることが好ましく、その厚さは袋体1よりも少し厚い方が剛性を増して好ましい。 これにより、水切り部5は、容易に折りたたむことが出来、手袋の掌側の領域及び手の甲側の領域のいずれの側にも開閉できるようなる。
この例では、水切り部5は、図1(a)に示すように手を挿入する開口部3に直交する横左右外方に長さ2cmの張り出し部4を厚さが0.05mm程度のポリエステル樹脂シートを用いて延設したので、 水切り部5の形状は、図1(b)に示すように中央に穴が開いたリング形状となった。
【0021】
水切り部5は、手を手袋に装着した状態で、手袋の外方に略円形に広がった状態になる。 つまり、手袋は、手に装着したとき、指部2とは反対の開口部3側が漏斗状に広がった状態になる。
そして、本実施例では、図1(b)に示される手袋の水切り部5の外周辺端部に剛性を有する金属線材6として直径が0.5mmのハリガネを取り付けた。 これにより、水切り部5は表面が外側に張り広げた状態が確実に維持された。 なお、金属線材6はワイヤ、ハリガネに限られるものではなく水切り部5の部分を張り広げることができる部材であればよい。 したがって、例えば強化部材としては、伸縮性のない線状の金、鉄、アルミ、合成樹脂あるいは帯状の部材でもよい。
【0022】
その手袋を手に装着する場合、金属線材6を取り付けた部分は持ち掴み易く、開閉が容易で水切り部5から手袋内に手を容易に挿入することができる。
水切り部5があれば、垂れ流れた水が袖口部や裾端部廻りに伝わってくっついたり、垂れて濡れたり、飛び跳ね水が手首、腕あるいは衣服にかかることを防止すると共に、手袋内への水の浸入を防止する。
【0023】
なお、可動性を有するワイヤ、ハリガネ等の金属線材6を用いた場合は、曲げ、絞め、折り返し、曲げ戻し等が自由自在であるため、水切り部5はスカートのフレア状風に見栄えも良く広がり、なだらかな傾斜表面を設けることもでき、水の飛び跳ね等や垂れ流れを防止する。
【0024】
図2(a)に示す、袋体1では、手の開口部3近傍で、袋体1の内側に一対の曲線状の持ち手部7を設けている。 持ち手部7の幅は1cm以上でその取り付け部分は横外方への張り出し部4の付根位置8上部が好ましい。 持ち手部7は直線から徐々に曲っているので掴み、握り、引っ張り返す時に、袋体1の付根位置8に負荷がかからないので強く、又手の出し入れが容易に行える。 そのため袋体1に油分や汚物等が付着して汚れても袋体1に素手で触る必要もない。更に汚物類等を掴んで拾い上げ手の内側に至るように曲線状持ち手部7を持って裏返すと、汚物Aは手袋の内側に収容できる。 開口部3を曲線状の持ち手部7で互いに結び合せれば図2(b)に示すごとく閉塞が完全に出来る。 又片方の場合は曲線状持ち手部7の中央部に切り目線を入れ、切り離すことで結び紐にもなる。
【0025】
本発明に係る手袋は、水仕事や一般家庭の園芸、ペンキ塗り、ワックス掛けや車の洗車、整備や修理又毛染め、パーマやペットの排便又病人介護の処理等として広範囲な用途にも対応することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 袋体
2 指部
3 袋体の開口部
4 張り出し部
5 水切り部(略円形状)
6 金属線材(ワイヤ、ハリガネ等)
7 持ち手部
8 付根位置
A 汚物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋体の先端部に、指が挿入可能な指部を連接してなる柔軟性素材からなる手袋であって、前記袋体の後端側に形成された開口部に、開放時に略円形状となる張り出し部が手を挿入する方向に対して直交方向に一体的に延設されて水切り部としたことを特徴とする水切り手袋。
【請求項2】
前記張り出し部の外周辺端部に剛性を有する金属線材が取り付けられて水切り部としたことを特徴とする請求項1記載の水切り手袋。
【請求項3】
前記袋体の開口部近傍の内側に、持ち手部が設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の水切り手袋。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−140720(P2011−140720A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294723(P2009−294723)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【特許番号】特許第4713666号(P4713666)
【特許公報発行日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(308030972)
【Fターム(参考)】