説明

水制

【課題】
砂浜や砂礫の浜辺の多くは河川から海へと流下した土砂によって形成されていますが、近年、それらの浜辺が減少したり消滅したりしています。河川から海へと流れ込んでいる土砂を制御する事によりそれらの浜辺を回復します。
【解決手段】
河川の河口において、流れに対して斜め方向に水制を設置して、急激な増水により岸辺から離れた海底にまで流れ込んでいた土砂の勢いを弱め、河口の岸辺近くに多くの土砂を堆積させる事を図ります。これによって、河川から海へと流れ込んだ土砂によって形成されていた砂浜や砂礫の浜辺を回復させます。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
河川から海へと水と共に移動する土砂を効果的に制御することによって、失われたり失われつつある砂浜や砂礫の浜を回復する水制の発明です。
【背景技術】
【0002】
自然状態の河川や海においては、水や海水が流下或いは移動する際に、その底にある土砂も一緒に移動しています。自然海岸における砂浜や砂礫の浜辺の多くは、この作用による河川からの土砂によって形成されています。
河川から水と共に海に流れ込む土砂のあるものは河口近くの海底に堆積します。またあるものは岸から離れた沖の海底にまで移動していきます。その中で、河口近くの海底に堆積した土砂は、その後に海流や波によって移動して砂浜や砂礫の浜を形成します。
【0003】
しかしながら近年、河川の水の流れ方が変化して、河川から海へと流入する土砂が河口の岸辺近くに留まることが少なくなりました。急激な増水や急激な減水の機会が昔に比べて増えたので、より多くの土砂が勢い良く海の底深くに落ち込んで行くようになっています。この事によって、海岸の砂浜や砂礫の浜辺に運ばれて行くはずの土砂が減少して、浜辺はその状態を維持することが出来なくなり、各地の砂浜や砂礫の浜辺が減少或いは消滅しています。
【0004】
消滅したり消滅しつつある砂浜や砂礫の浜辺を回復する試みは様々に行われていますが、河川から海へと流れ込む土砂に着目した方法は考えられていないようです。
これは特許文献に見られる様々な建設構造物の場合でも同様です。(例えば、特許文献1、2、3、4、参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4286415号
【特許文献2】特許第3028437号
【特許文献3】特開2009−155930号公報
【特許文献4】特開2002−4244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
河川より海へと流入して行く土砂の総量は、砂浜や砂礫の浜辺が減少或いは消滅するようになってからも、それ以前と比べてそれほど違わないと考えられます。ただ、海岸の岸辺近くに留まることなく海の底に落ち込んで行くことが問題なのです。河川の水の流れ方が現在のような状態であっても、河川から海に流入して行く土砂の内で、河口の海岸近くに留める土砂の量を増やす事が出来れば、砂浜や砂礫の浜辺を回復出来るようになります。
【0007】
河川の水の流れと共に海底に流れ込んで行く土砂の勢いを弱める、或いは土砂の移動する方向を少し変える事によって、それらの土砂のうちで河口の岸辺近くに留める量を増やす事が出来ます。つまり、河川から海へと流入して行く土砂を制御する水制を建設することによりそれが可能になります。
【0008】
水の移動に伴って移動している土砂は、水に比べて重量が大きいため常に水の底を移動しています。河川の増水時においてはそれらの土砂の中の小さな粒子や砂は舞うように流れています。しかし、大部分の土砂は増水時であっても水の流れの底を水の流れと一緒になって流れています。ですから、それらの土砂の移動を制御する場合では、従来と同じような方法による水制では必ずしも十分とは言えません。
【課題を解決するための手段】
【0009】
河川が海に流れ込む河口の水底に、水底の土砂を制御する塀状あるいは柱を並べた形状の水制を、河川からの水の流れの方向に対して斜め方向に設置します。その方向は、海底の土砂を移動させている海流が向かっている方向側に向けるものとします。
ここで言う河口とは、海に接続する河川の最下流部と、河川から流れ込む水流がある河川に接続した海の区域を言います。この河口は河川の水量や流れ込む土砂の量や海の海流や波や潮の干満などによってその区域を変化させています。
【0010】
ここで必要とされている土砂の制御は流れの中の全ての土砂のそれを要求するものではありません。したがって、水の流れ全体を制御する必要はありません。流れとその中の土砂の一部を制御すれば良いのです。
ですから、水制の高さは水面より低いものとします。また水制の長さはそれぞれの海岸の状況により決定します。
【発明の効果】
【0011】
斜めに設置した水制により、河川から海へと流入する水と土砂の一部がその方向を変えて海へ流れることになります。河川本来の流れはその方向を変えませんが、勢い良く真っ直ぐ流れていた水と土砂はその流れを弱めます。
岸辺を遠く離れた海底深くまで流れ込んでいた土砂はその勢いを減じて流れるようになり、岸辺に近く堆積するようになります。また、分流によりその方向を変えた水流による土砂も岸辺近くに堆積するようになります。
【0012】
河口近くの岸辺から遠く離れた海底にまで流れ込んでいた土砂の多くが、河口の岸辺近くに堆積するようになります。したがって、それら河口近くの土砂が移動することによって成り立っていた砂浜や砂礫の浜辺にも多くの土砂が供給されるようになり、砂浜や砂礫の浜辺も回復します。
【0013】
この場合の水制はその高さが低いので、通常の流れにおいても増水時においても、流水によって受ける力は少ないものです。したがって、その建設も比較的容易です。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の水制を建設した場合の実施例の平面図です。
【図2】本発明の水制を建設した場合の実施例の概略的斜視図です。
【図3】本発明の水制を建設した場合の実施例の平面図です。
【図4】本発明の水制を建設した場合の実施例の概略的斜視図です
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施例として、図1を説明します。
河川が海に流れ込む河口部の水底にコンクリート製で塀状の水制(4)を建設します。水制は、河川の流れ方向(5)に対して斜めに、また水面より低く建設して、その流れ(5)の一部を海流(7)の流れ方向に向けるようにします。これによって、河川による水と土砂の流れ(5)は弱められると同時に、その流れの一部が海流の流れと同じ方向に向かう新たな流れ(6)となります。
以上の効果により、海へ流れ込む水と土砂はその勢いを弱め、同時にその方向を分散させるので、河口の岸近くに堆積する土砂の量は増大します。
【0016】
本発明の実施例として、図2を説明します。
図1と同様の水制を建設した場合を斜め上流から見た概略的斜視図で、本発明による水制(4)と河川の流れによる水と土砂の流れ(5)、及び水制によって生じた新たな流れ(6)を表示しています。図中、中央の(5)は水制(4)の上を通過して流れる水流を表します。
【0017】
本発明の実施例として、図3を説明します。
河川が海に流れ込む河口部の水底に柱を並べた形状の水制(4)を2基建設します。水制は、河川の流れ方向(5)に対して斜めに、また水面より低く建設して、その流れ(5)の一部を海流(7)の流れ方向に向けるようにします。これによって、河川による水と土砂の流れ(5)は弱められると同時に、その流れの一部が海流の流れと同じ方向に向かう新たな流れ(6)となります。
流れに対して複数の水制を並列に設置することにより、新たな流れ(6)は砂浜近くにより多く生じますから、河口の岸近くに堆積する土砂を効率的に増大させることが出来ます。
【0018】
本発明の実施例として、図4を説明します。
図3と同様に柱を並べた形状の水制を建設した場合を斜め上流から見た概略的斜視図で、本発明による水制(4)と河川の流れによる水と土砂の流れ(5)、及び水制によって生じた新たな流れ(6)を表示しています。図中、中央の(5)は水制(4)の上を通過して流れる水流を表します。
【符号の説明】
【0019】
1 砂浜
2 河川
3 海
4 本発明による水制
5 河川の流れによる水と土砂の流れ
6 本発明による水制(4)によって新たに発生した水と土砂の流れ
7 海流の流れ




















【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と共に土砂が海に流れ込む河川の河口において、河川による流れのある場所の水底に流れに対して斜め方向に設置する、単独あるいは複数の水制。
【請求項2】
流れに対して斜め方向に設置する水制において、その高さを水面より低くする事を特徴とする請求項1に記載の水制。






























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−229542(P2012−229542A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97754(P2011−97754)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(309036737)
【Fターム(参考)】