説明

水加熱容器

【課題】転倒時にお湯の排出をできるだけ低減してなる水加熱容器を提供すること。
【解決手段】加熱容器20と、前記加熱容器20の開口部23に設けられる栓本体70と、加熱源と、注ぎ口と、前記注ぎ口44の反対側に設けられる取手68と、を備える水加熱容器であって、前記栓本体70は、前記加熱容器20の内外部を連通或いは遮断する弁部材90と、前記取手側に設けられる止水部材82を有し、前記止水部材82は、止水ボール82であり、傾斜面に沿って移動し、全体の重心は後方側にあり、転倒時、前記取手側が下になる水加熱容器の栓構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、水加熱容器、さらに詳しくは、例えば、電気ケトル等のようなお湯を沸かす水加熱容器の栓構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、水を入れ、電気で水をわかす器具として電気ケトルがある。このような電気ケトルの一例として図10に示すものがある。電気ケトル1は、水Wを入れる加熱容器2の底部にヒータ3を設け、ヒータ3で加熱容器2内の水Wを加熱するものであり、加熱容器2の側壁には取手4及び注ぎ口5が対向して設けられ、加熱容器2内の水が沸くと、取手4を持ち加熱容器2を持ち上げて傾け注ぎ口5からお湯をコップ等に注ぐものである。なお、加熱容器2の上方には、加熱容器2の上部開口部をカバーする蓋6が取手4側に設けられるヒンジを介して回動自在に設けられる。
【0003】
また、電気ケトル1は、取手4の上方にバイメタル等の温度感知部材7を有している。この温度感知部材7は、一種のスイッチであり、加熱容器2内の水が沸くと、発生する蒸気は、矢印1で示すように加熱容器2の後方上部の開口9から温度感知部材7を有する空間に導入し、温度感知部材7に当たる。すると該温度感知部材7は変形し、ヒータ3への通電をオフにする。
【0004】
電気ケトル1の使用形態の概略は次の通りである。即ち、加熱容器2内に水Wを入れ、取手4の上方に設けられる揺動スイッチ8をオンにする。するとヒータ3が発熱し、水Wを加熱する。水Wが沸騰すると蒸気は、矢印1で示すように加熱容器2の後方上部の開口9から温度感知部材7を有する空間に導入し、温度感知部材7に当たる。すると該温度感知部材7は変形し、ヒータ3への通電を自動的にオフにする。その後、取手4を持ち加熱容器2を持ち上げて傾け、お湯を注ぎ口5からコップ等に注ぐことになる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ところで、従来の電気ケトルは、転倒した場合の考慮が払われていなく、電気ケトルが転倒した場合、内部のお湯の多くが一気に外部に飛び散り、人に対し火傷等の思わぬ災害等を及ぼす弊害を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明の目的は、転倒時にお湯の排出をできるだけ低減してなる水加熱容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本願発明は以下の構成を採用する。
【0009】
請求項1に係る発明では、加熱容器と、前記加熱容器の開口部に設けられる栓本体と、加熱源と、注ぎ口と、前記注ぎ口の反対側に設けられる取手と、を備える水加熱容器であって、前記栓本体は、前記加熱容器の内外部を連通或いは遮断する弁部材と、前記取手側に設けられる止水部材を有し、前記止水部材は、止水ボールであり、傾斜面に沿って移動し、全体の重心は後方側にあり、転倒時、前記取手側が下になる構成。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、電気ケトルが転倒したとしても、前方側である注ぎ口側からの湯の流出を極力少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本願発明の水加熱容器の側断面図
【図2】図1のA−A線での断面図
【図3】本願発明の水加熱容器の閉弁状態を示す図1の栓本体の拡大断面図
【図4】本願発明の水加熱容器の開弁状態を示す図1の栓本体の拡大断面図
【図5】本願発明の水加熱容器の栓本体以外の部品の分解状態を示す斜視図
【図6】本願発明の水加熱容器の栓本体以外の部品であって、図5以外の部品の分解状態を示す斜視図
【図7】本願発明の水加熱容器の栓本体の一部の部品の分解状態を示す斜視図
【図8】本願発明の水加熱容器の栓本体の他の一部の部品の分解状態を示す斜視図
【図9】本願発明の水加熱容器の肩部材を後方から見た概略図
【図10】従来の水加熱容器の概略断面図
【実施例】
【0012】
図1乃至図9に本願発明の水加熱容器を示す。図1は全体の側断面図であり、図2は図1のA−A線での断面図であり、図3は弁部材の閉弁状態を示す栓本体の拡大断面図であり、図4は弁部材の開弁状態を示す栓本体の拡大断面図であり、図5は水加熱容器の栓本体以外の部品の分解状態を示す斜視図であり、図6は水加熱容器の栓本体以外の部品であって、図5以外の部品の分解状態を示す斜視図であり、図7は栓本体の一部の部品の分解状態を示す斜視図であり、図8は栓本体の他の一部の部品の分解状態を示す斜視図等である。なお、以下においては水加熱容器である電気ケトルを用いて説明をする。また、電気ケトルの注ぎ口側を前方或いは前方側とし、注ぎ口と反対の取手側を後方或いは後方側とし、前後方向に直交する側を左右方向とする。
【0013】
電気ケトル10は、加熱容器である内容器20、肩部材40、外ケース50、底ケース58、電源台60及び栓本体70からなる。内容器20は、下方に行くに従い断面積が大となる筒部材21と、該筒部材21の底部を密閉状に閉塞する底部材22とからなる上端に開口部23を有するステンレス製の容器であり、その内部に満水位置Mまで水Wが入れられ後記するヒータ31で加熱される。該内容器20の開口部23外周には、リング状部材24が溶接等により一体に取り付けられている。このリング状部材24は、外方に水平に突き出るとともに略等間隔に6個のビス穴26を有するフランジ25が形成される。また、このフランジ25の後方側になる箇所には1個のビス穴27aを有する突出部27が垂下されており、該ビス穴27aには、後記する取手取付板65を固定するためのビスb2が螺合する。
【0014】
また、内容器20の側面には、上下方向に水量表示部28が設けられる。水量表示部28は、樹脂製の内カバー28a及び外カバー28bを高周波溶着で一体化したもので、内容器20の上部及び下部を連通し、その外カバー28bは透明な樹脂部材で構成されており、後記する外ケース50に形成される表示部用嵌合穴56から外方に突き出る形態で取り付けられ、内容器20内の水量を表示する。また、図2に示されるように水量表示部28の上部には、通電ランプ29が取り付けられており、電気ケトル10の加熱時に点灯される。なお、内容器20の筒部材21の前方側には、図1に示すように内方へ略円弧状にへこんだ窪み30が設けられており、電気ケトル10を傾けお湯を注出する際、内容器20内の残りのお湯の注出を容易にしている。なお、組み立て時には、内容器20の先端の最小口部には、環状のシールパッキン35が取り付けられる。
【0015】
内容器20の底部材22の下面には、加熱源であるヒータ31が取り付けられている。また、ヒータ31の下方には、スイッチユニット32及び押動スイッチ33が設けられる。該押動スイッチ33は、図1に示すように電気ケトル10が後記する電源台60に載せられたときにその下動位置(破線位置)での固定が可能になるように構成されており、図1に示すように外方に略水平に突出する形態で取り付けられており、図1で破線で示すような位置に下動されたときにスイッチがオンし、ヒータ31への通電が行われる。
【0016】
また、スイッチユニット32は、スイッチ及び温度感知部材である2個のバイメタル片を有しており、1個の図示しないバイメタル片は内容器20の温度を検知し、内容器20が過熱状態になるとスイッチをオフする機能を有し、本願発明の温度感知部材である他のバイメタル片34は、図1に示すように薄い円盤状の部材で後記する蒸気パイプ64の下端近傍に配設され、蒸気パイプ64を介して一定温度以上の蒸気が当たると変形しスイッチをオフする機能を有している。なお、押動スイッチ33、スイッチ及び温度感知部材34は、例えば、特表2005−537050号公報にも開示されるように公知のスイッチ構造である。
【0017】
肩部材40は、内容器20の上方に位置する樹脂製の部材であり、その外周部41の上端は水平で、その下端は前方側から後方側にかけて下方に傾斜し、さらに上方から下方にかけて末広がり状になっている。その中央には、開口部42を有する筒状体43が下方に垂下する形態で設けられ、その前方側には外方に向かって先細り形状の注ぎ口44が、さらに後方側である注ぎ口44と反対側の外周部41には、図9に示すように後記する取手68が嵌合するU字状開口45を有している。
【0018】
また、前記U字状開口45側の筒状体43は、外方に円弧状にへこみ、後記する中栓71の弁室81が入ることになる凹部46が形成され、さらに該凹部46には図5に示すように穴47aが開口されるとともに、該穴47aは、U字状開口45より若干外方へ突出し、後記する蒸気パイプ64の一端が接続される筒状突起47に連通する。また、前記筒状体43の左右側には、後記する栓本体70の係止爪99bが係合する爪嵌合孔48を有し、さらに、外周部41の下端には、後記する外ケース50の係止溝52に嵌合する5個の係止片49が前方側及び前方側の両側面に垂下する形態で設けられる。なお、筒状突起47の下方には図9で示す2個のビスb1が螺合する2個のビス取付口47b(図3、4)が設けられる。
【0019】
前記外ケース50は、肩部材40の下方に位置する樹脂製の筒状の部材であり、その外周部50aの上端は前方側から後方側にかけて下方に傾斜し、その下端は水平で、さらに上方から下方にかけて末広がり状になっているとともに、その外周は円形状とされる。また、外周部50aの上端の前方側は、外方に向かって先細り形状の注ぎ口44と同形状にされ、その上端近傍にはリング部51が水平に一体に形成される。このリング部51には、肩部材40の5個の係止片49が嵌合する5個の係止溝52が設けられるとともに、内容器20のフランジ25に設けられる6個のビス穴26に一致する位置に6個のビス穴53を有し、組み立て時には図2に示すようにビスb3が螺合する。なお、組み立て時には、リング部51の上面には、6個のビス穴36aを有する図5に示す環状のケースリング36が取り付けられる。
【0020】
また、外ケース50の後方側には上下方向に貫通した平面視略矩形状の開口部54が形成されるとともに、該開口部54には、上下方向の2本のガイド突起55が対向する形態で一体に設けられており、このガイド突起55には後記する取手68のガイド溝68cが上方から嵌合する。さらに、外ケース50の一方の側面には、上下方向に表示部用嵌合穴56が形成されており、上述した水量表示部28の一部が外方に突出する形態で取り付けられる。なお、外ケース50を樹脂製にすることにより、その表面に色ないし模様等を施すことができるためデザイン性が向上する。また、外ケース50と内容器20との間に空間を設けているため、外ケース50が熱くならず安全性が向上する。
【0021】
前記底ケース58は、外ケース50の下方に位置する樹脂製の皿状部材であり、その底部には後記する電源台60の接続端子63が挿入する中央開口58aが設けられるとともに、該中央開口58aの外側には4個のビス穴58bが同心円状に等間隔に設けられる。さらに、底ケース58の後方側の側面には、上述した押動スイッチ33が外方に突出するためのスイッチ用開口58cが設けられる。
【0022】
前記電源台60は、底ケース58の下方に位置する樹脂製の部材であり、その本体部61は、断面逆皿状からなり、電気ケトル10を安定した状態で支持する。電源台60内にはコード巻き取り機構62が設けられており、さらに、その中央には円柱状の接続端子63が立設する形態で設けられる。通電時には、電源台60の上に電気ケトル10を乗せて電源台60のコード先端のプラグをコンセントに差し込み、押動スイッチ33を押し下げると接続端子63を介してヒータ31に通電される。
【0023】
符号64は蒸気パイプであり、該蒸気パイプ64は、内部に蒸気通路を有しており、電気ケトル10の後方側の内容器20と外ケース50との間に上下方向に設けられる。蒸気パイプ64の一方の上端接続部64aは、肩部材40の凹部46から後方に突出する筒状突起47に接続され、他方の下端接続部64bは、内容器20の下方に設けられるスイッチユニットの一部品である感熱部材である温度感知部材34近傍に接続され、内容器20で発生する蒸気の一部を温度感知部材34に送る。
【0024】
また、符号65は取手取付板であり、該取手取付板65は、図6、9に示すように2個の矩形状の水平部分66及び1個の矩形状の垂直部分67を有する。そして、水平部分66のそれぞれには1個の取手用ビス穴66aが設けられ、垂直部分67には上方に2個の肩部材用ビス穴67a及び1個の内容器用ビス穴67bが設けられる。
【0025】
取手68は、水平部短辺及び該水平部短辺の後方端から下方に垂下する垂直長辺からなる縦断面略鉤形状で、横断面略楕円状の樹脂製の部材で、重めに作られている。その根本部68aは略U字状で且つ肩部材40の外周部41のU字状開口45より若干小さく形成されており、取り付け時には該U字状開口45をカバーする。また、根本部68aの上面には、下方向に2個のビス穴68bが設けられ、前記取手取付板65の水平部分66の取手用ビス穴66aに螺合するビスが取り付けられる。さらに、根本部68aの両側面には、図6に示すようにガイド溝68cが形成され、取り付け時には外ケース50のガイド突起55に上方から嵌合する。
【0026】
以上説明した各部品の組み立てについて説明する。内容器20は、筒部材21、底部材22及びリング状部材24からなり、その底部にはスイッチユニット32及び押動スイッチ33が取り付けられ、その側面には水量表示部28及び通電ランプ29が取り付けられ、さらに後方側には蒸気パイプ64が取り付けられ、全体で1つのユニットを形成する。
【0027】
ユニット化された内容器20の上方から外ケース50を被せ、次いで外ケース50のリング部51の上面にケースリング36を乗せ、それぞれの6個のビス穴であるビス穴36aとビス穴26とを合わせ、図2に示すようにビスb3でケースリング36と外ケース50と内容器20とを一体的に固定し、ケースリング36より上方に突き出る内容器20の上端部にシールパッキン35を被せる。
【0028】
次いで、肩部材40を先に取り付けないとシールパッキンが落ちるから外ケース50を逆さにして底ケース58を取り付ける。その取り付けは、4個のビス穴58bから図示しないビスを螺合し、底ケース58を内容器20の底部に固定する。
【0029】
次いで、外ケース50を正立させ、その上方より肩部材40を取り付けるが、まず、肩部材40の筒状突起47の下方に形成される2個のビス取付口47bに対し、図9に示すようにビスb1で取手取付板65を取り付けておく。肩部材40の取付は、肩部材40の外周部41の下端に形成される5個の係止片49を外ケース50のリング部51の係止溝52に無理ばめすることによって行われる。その後、取手取付板65の1個の内容器用ビス穴67bにビスb2を取り付け、取手取付板65の下方を内容器20のリング状部材24の突出部27に固定する。その後、蒸気パイプ64の上端接続部64aを肩部材40の筒状突起47に嵌合し、蒸気通路を完成させる。蒸気パイプ64の上端接続部64a及び肩部材40の筒状突起47は、U字状開口45に位置することになるため、両者の取り付けを容易に行うことができる。なおこの例の場合、蒸気通路の先端は肩部材40の凹部46に開口する穴47aになる。
【0030】
次いで、取手68を取り付ける。その取り付けは、根本部68aの両側面に形成されるガイド溝68cを外ケース50のガイド突起55に上方から嵌合し、根本部68aにより肩部材40の外周部41のU字状開口45をカバーする形態で取り付けられる。その後、根本部68aの上面のビス穴68bから図示しないビスを挿入し、取手68を取手取付板65に固定する。このように、U字状開口45をカバーする形態で根本部68aを取り付けるため、蒸気パイプ64の上方をもカバーすることになり、見栄えを良くすることができるとともに、外ケースの形状に自由度を持たせることができる。
【0031】
このように組み立てられた電気ケトル10は、その外周が円形状(或いは楕円形状であってもよい。)であり、その後方側に取手68が設けられているため、重心が後方側になる。そのため、電気ケトル10が転倒した際、その転倒が例え前方側であっても最後は取手68が下になる状態で停止する。
【0032】
次に、前記栓本体70について説明する。栓本体70は、中栓71、弁部材90、レバー96、天蓋98等からなる。中栓71は、図3及び図8に示すように外周壁72及び底壁73を有する容器状の樹脂部材であり、その内部には、同じ高さの前円後方状の外側筒状体74と、外側筒状体74の前方側の円形部分の内側に位置し、その円形部分と同心で且つ円形状の内側筒状体75とが底壁73より立設し、両筒状体74、75間には中空室77が、該外側筒状体74と外周壁72との間には外部空間76が形成される。
【0033】
外部空間76は、お湯及び蒸気が流入しない空間で、その内部には、略等間隔で4個のビス穴76aが上下方向に設けられており、図2に示すようにビスb4を底壁73側から取り付けることにより、後記する天蓋98と一体に固定される。外部空間76の前方側には、軸受孔78aを有する2枚の板部材78が対向配置されており、該軸受孔78aには後記するレバー96の一端に設けられる軸96dが支持される。また、外周壁72には、外部空間76に開口する水平方向に細長い2つの係止爪嵌合穴79が径方向に対向して設けられており、後記する栓本体着脱部材であるロックレバー99の係止爪99bが嵌合する。
【0034】
前記内側筒状体75は、外部空間76と同様、お湯及び蒸気が流入しない空間で、その内部には、後記する弁部材90の棒状部92がスプリング95及びスプリング受け板94とともに上下動自在に収納される。
【0035】
前記外側筒状体74は、前円後方状であり、円形部分は中央に位置し、方形部分は後方側に位置し中栓71の外周壁72に達している。そして、円形部分と方形部分との間には外側筒状体74より背の低い隔壁80が設けられ、該方形部分に弁室81を形成している。この弁室81内には止水部材である止水ボール弁82が配設される。
【0036】
前記弁室81の底壁81aは、図3に示すように外周壁72に向かって上方に傾斜されており、外周壁72には、側部開口83が設けられる。そのため、電気ケトル10が転倒し、取手68が下側になると隔壁80近傍にある止水ボール弁82は直ちに側部開口83に移動する。側部開口83には、筒状パッキン84が設けられる。この筒状パッキン84の略中央外周に円周溝84aが設けられており、この円周溝84aに側部開口83の内周面を嵌合させることにより、筒状パッキン84を側部開口83に取り付ける。その結果、一方の端である先端部84bは、側部開口83より外方に突出するとともに、栓本体70の取り付け時には、該先端部84bは、肩部材40の凹部46に開口する穴47aの外周面に当接する。また、他方部の端である後端部84cには、電気ケトル10の転倒時等に止水ボール弁82が当接する。
【0037】
前記中空室77を形成する底壁73には、蒸気口85及び注湯口86が設けられる。蒸気口85は、栓本体70の取り付け時には、常時内容器20内に開口し内容器20内で発生する蒸気を白塗りの矢印5、6で示すように中空室77に導入するとともに、白塗りの矢印2で示すように弁室81にも導入する。注湯口86は、後記する弁部材90により閉鎖されており、弁部材90が解放された際、内容器20のお湯を黒塗りの矢印7、8で示すように注湯口86と注ぎ口44間に形成される液通路を介して注湯する。
【0038】
前円後方状の外側筒状体74の上端には中栓カバー88が取り付けられる。中栓カバー88は、外側筒状体74とほぼ同形状の前円後方状の樹脂部材であり、外側筒状体74の上端に超音波溶着等によって取り付けられる。その円形部88aには、内側筒状体75の内径と同径の中央開口88cを有し、円形部88aと方形部88bとの境界近傍の方形部88bには、その下面に円形部88aから方形部88bに向かって上方に傾斜する傾斜壁88eを有する形態の凹み88dが形成される。外側筒状体74の上端に中栓カバー88が取り付けられると、中空室77及び弁室81の上面を密閉し、蒸気及びお湯の上方への流出をなくする。また、傾斜壁88eは、弁室81の上方に位置し、傾斜した底壁81aとともに、止水ボール弁82の筒状パッキン84方向への移動を容易にする。
【0039】
環状パッキン89は、図8に示すような形態を有しており、中栓71の外周壁72に嵌合され、中栓71の外周と肩部材40の内周との間を密閉し、両者間からのお湯の流出を防止する。
【0040】
前記弁部材90は、弁板部91及び棒状部92を有する。弁板部91は、円の一部が直線状に欠けた形状をしており、直線状の部分が後方側に位置するように配置され、配置後には、中栓71の注湯口86は閉鎖するが、蒸気口85は開放状態になる。棒状部92は、弁板部91の中央に立設し、その略中間には環状のパッキン93が設けられ、その先端部92aは先細り形状とされ、さらに先端部92aとパッキン93との間には環状の係止溝92bが設けられる。
【0041】
弁部材90は、中栓71の下方から取り付けられる。その取り付けは、棒状部92を中栓71の内側筒状体75内に挿入し、内側筒状体75の上方からスプリング受け板94を無理ばめすることにより取り付けられる。スプリング受け板94は、図7に示すように円盤状の樹脂部材で、その中央には中央開口94aと、該中央開口94aの外周下面より下方に垂下する複数個の係止片94bとを有し、その外径は、内側筒状体75の内径より小さく、中央開口94aの径は棒状部92の先端部92aよりは大きくされている。
【0042】
弁部材90の取り付けは、棒状部92を中栓71の内側筒状体75内に挿入し、上方から内側筒状体75内にスプリング95を入れ、その後上方から内側筒状体75内にスプリング受け板94をスプリング95の力に抗して押し込み、スプリング受け板94の下方に形成される係止片94bを棒状部92の係止溝92bに嵌合させる。係止片94bを棒状部92の係止溝92bに嵌合させると、スプリング受け板94は、中栓カバー88とほぼ同じ高さに位置し、弁部材90の弁板部91は、中栓71の底壁73に当接し注湯口86を閉鎖する。また、棒状部92の先端部92aは、スプリング受け板94の中央開口94aより上方に突出する。そして、先端部92aが下方に押圧されると、弁板部91は注湯口86を解放し、押圧力がなくなるとスプリング95の力により元の閉鎖状態に戻される。取り付け後においては、棒状部92と底板73との間はパッキン93によりシールされる。なお、弁板部91の外周部にシールパッキンを設けることにより、シール力を高めることができる。
【0043】
レバー96は、操作部96a、支柱部96b及び軸部96cからなる。操作部96aは、指で操作する部分で、取り付け後においては取手68の上方に位置し、後記する天蓋98の切欠部98bから後方に突出される。支柱部96bは、操作部96aと軸部96cとをつなぐ部分であり、その略中央下面に弁部材90の先端部92aが当接する。軸部96cには、その両側面に左右方向に突き出た2個の軸96dを有しており、それら軸96dは、中栓71の2枚の板部材78に設けられる軸受孔78aに軸支される。
【0044】
なお、軸受孔78aに軸96dを軸支する際、一方の軸96dと軸受孔78aとの間に1個のレバー用スプリング97を介在させる。レバー用スプリング97は、引き出された一方端97a及び他方端97bを有しており、組み付け後においては、一方端97aは中栓カバー88の上面に当接し、他方端97bはレバー96の軸部96cの底面に当接する。するとレバー96の操作部96aは常に上動方向に力が付与される。このようにして中栓ユニットが完成する。
【0045】
中栓71の上面には、ロックレバー99を有する天蓋98が取り付けられる。天蓋98は、上方に円弧状に突き出た甲羅状の樹脂部材であり、前方側には舌状部98aを有し、後方側には切欠部98bを有し、さらに左右側にはロックレバー用開口98cを有し、その底部には図2で示すビスb3が螺合する4個のビス穴を有する。
【0046】
舌状部98aは、平面視略台形の形状からなり、前方側に突出し、注ぎ口44の上方略半分を覆う。切欠部98bは、逆U字状の形状からなり、取手68の上方に位置し、レバー96の操作部96aが外方に突出する。ロックレバー用開口98cは、左右側面にそれぞれ設けられる同形で且つ略楕円状の開口である。また、それぞれのロックレバー用開口98cの下端からは、内方向に向かって水平に張り出した板体98eを有する。この板体98eは中央が内側から外側に向かって矩形状に切り抜かれ、切り抜かれた対向する2つの辺を2本のガイドレール98dとして利用するものであり、このガイドレール98dにより後記するロックレバー99を左右水平方向にスライド可能に取り付ける。
【0047】
ロックレバー99は、天蓋98のロックレバー用開口98cに配置される略楕円状の樹脂製部材であり、指当て凹部99a、係止爪99b、ガイド溝99dを有する。指当て凹部99aは、ロックレバー用開口98cより若干小さい外表面上に設けられる内方に円弧状にくぼんだ凹部であり、組み立て後は図7に示すように矢印イ、ロの方向に指、例えば親指と中指とで内側に押圧して栓本体70との係合を解除する。
【0048】
また、係止爪99bは、下端から外方に突出し且つ水平方向に円弧状に形成されており、肩部材40の爪嵌合孔48に係合される。ガイド溝99dは、平行に対向して設けられる側壁99cの外側にそれぞれ設けられる水平な溝で、天蓋98のガイドレール98dに嵌合される。さらに、その上端部には、内方に突き出たスプリングを止めるための突起99eが設けられる。
【0049】
その取り付けは次のように行われる。天蓋98を逆向きにしてロックレバー99を取り付ける。その取り付けは、逆向きにした天蓋98の上に逆向きにしたロックレバー99をのせ、ロックレバー99のガイド溝99dを天蓋98の対向するガイドレール98dに合わせ、ロックレバー99を内側から外側に向かって押し込み、ロックレバー99のガイド溝99dを天蓋98の対向するガイドレール98dに完全に嵌合させる。すると、ロックレバー99の外表面上の指当て凹部99aは、天蓋98のロックレバー用開口98cを塞ぐ位置に達して止まる。反対側に同じように他のロックレバー99を嵌合する。すると、ロックレバー99のスプリングを止めるための突起99eは、対向する位置になるため、両突起99e間にスプリング100を図7に示す形態で取り付ける。
【0050】
両突起99e間にスプリング100が取り付けられると、両ロックレバー99は、スプリング100によりそれぞれ外方に押され、それぞれのロックレバー99の外表面上の指当て凹部99aは、天蓋98のロックレバー用開口98cを塞ぐ位置に達して止まる。このようにして天蓋ユニットが完成する。
【0051】
その後、該天蓋ユニットを上述した中栓ユニットに取り付ける。その取り付けは次のように行われる。中栓ユニットを置き、中栓ユニットの前後方向に合わせて中栓ユニットの上方に天蓋ユニットを置く。その場合、ロックレバー99の指当て凹部99aに例えば親指と中指を当て、両指が接近する方向に力を加えロックレバー99を押し込み、係止爪99bを内側に引っ込ませておく。
【0052】
次いで、天蓋ユニットを中栓ユニット内に押し込む。完全に押し込んだ後、ロックレバー99から指を離す。すると、係止爪99bは、中栓71の左右側に設けられる係止爪嵌合穴79に嵌合するとともに、係止爪99bの先端は所定長さ係止爪嵌合穴79より外方に突き出る。なお、レバー96は、レバー用スプリング97の作用により、切欠部98bの上端に当接しており、切欠部98bの高さだけ下方への押動が可能になる。また、中栓71の4個のビス穴76aと天蓋98に設けられる図示しない4個のビス穴とはほぼ一直線になる。
【0053】
その後、組み立てられた天蓋ユニット及び中栓ユニットを逆向きにし、中栓71の4個のビス穴76aにビスb3を挿入し、天蓋ユニットと中栓ユニットとを一体に取り付ける。その後、中栓71の外周部に環状パッキン89を取り付けることにより栓本体70が完成する。
【0054】
肩部材40への栓本体70の取り付けは次のように行われる。肩部材40の前後方向に合わせ、肩部材40の上方に栓本体70を置く。その場合、ロックレバー99の指当て凹部99aに例えば親指と中指を当て、両指が接近する方向に力を加えロックレバー99を押し込み、係止爪99bを内側に引っ込ませておく。
【0055】
次いで、栓本体70を肩部材40内に押し込む。完全に押し込んだ後、ロックレバー99から指を離す。すると、係止爪99bは、肩部材40の左右側に設けられる爪嵌合孔48に嵌合し、栓本体70は肩部材40に取り付けられる。この場合、中栓71の外周部に設けられる環状パッキン89は、肩部材40の筒状体43の内周面に当接し、この箇所からのお湯の流出を防止する。さらに、弁室81から外方に突出する筒状パッキン84の先端部84bは、肩部材40の凹部46の穴47aが開口される壁面に該穴47aを包囲する形態で当接し、弁室81を外部から遮蔽した状態で蒸気パイプ64に連通する。栓本体70を取り外す場合は、逆の動作、即ち係止爪99bと爪嵌合孔48との係合を解除して栓本体70を持ち上げて取り外すことになる。
【0056】
栓本体70を肩部材40に取り付けた状態では、注湯口86は、内容器20内に対し弁部材90により閉鎖されるが、蒸気口85は、内容器20内に対し中空室77を介して注ぎ口44と蒸気パイプ64に連通しており、内容器20内で発生する蒸気は、図3に示すように白抜き矢印1、5、6経て注ぎ口44から流出するとともに、白抜き矢印1、2、3、4のように流れ、温度感知部材34に送られる。
【0057】
注湯時には、レバー96が押し下げられるため、弁部材90は下方に押し下げられ、注湯口86は内容器20内に開放する。そのため図4に示すように、お湯は、黒塗りの矢印7、8のように流れ注ぎ口44から注湯される。
【0058】
電気ケトル10が前方側に転倒した場合、中栓71の外周には環状パッキン89が設けられ、蒸気口85は弁部材90より後方側の取手68近傍に設けられているため、中栓71の外周からお湯が流出することはなく、さらに蒸気口85は湯面よりも上方に位置する(図1で示す満水位置Mまで水を入れた場合)ため、蒸気口85からの流出もほとんどなくなる。
【0059】
また、電気ケトル10が後方側に転倒した場合、蒸気口85はお湯の中に位置しお湯は中空室77より弁室81に流入するが、弁室81の止水ボール弁82は直ちに筒状パッキン84の後端部84cに達し、該後端部84cに当接し蒸気通路を閉鎖する。なお、この場合傾斜する底壁81a及び中栓カバー88の傾斜壁88eにより止水ボール弁82の筒状パッキン84側への移動はより容易になる。そのため、後方側に転倒した場合にもお湯の流出は従来のものに比べ大幅に低減する。
【0060】
本願発明は、前記実施例の構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 電気ケトル 20 内容器
21 筒部材 22 底部材
23 開口部 24 リング状部材
25 フランジ 27 突出部
28 水量表示部 29 通電ランプ
30 窪み 31 ヒータ
32 スイッチユニット 33 押動スイッチ
34 温度感知部材 35 シールパッキン
36 ケースリング 40 肩部材
41 外周部 42 開口部
43 筒状体 44 注ぎ口
45 U字状開口 46 凹部
47 筒状突起 47a 穴
47b ビス取付口 48 爪嵌合孔
49 係止片 50 外ケース
50a 外周部 51 リング部
52 係止溝 54 開口部
55 ガイド突起 56 表示部用嵌合穴
58 底ケース 58a 中央開口
58c スイッチ用開口 60 電源台
61 本体部 62 コード巻き取り機構
63 接続端子 64 蒸気パイプ
64a 上端接続部 64b 下端接続部
65 取手取付板 66 水平部分
67 垂直部分 68 取手
68a 根本部 68c ガイド溝
70 栓本体 71 中栓
72 外周壁 73 底壁
74 外側筒状体 75 内側筒状体
76 外部空間 77 中空室
78 板部材 78a 軸受孔
79 係止爪嵌合穴 80 隔壁
81 弁室 81a 底壁
82 止水ボール弁 83 側部開口
84 筒状パッキン 85 蒸気口
86 注湯口 88 中栓カバー
88a 円形部 88b 方形部
88c 中央開口 88d 凹み
88e 傾斜壁 89 環状パッキン
90 弁部材 91 弁板部
92 棒状部 92a 先端部
92b 係止溝 93 パッキン
94 スプリング受け板 94a 中央開口
94b 係止片 95 スプリング
96 レバー 96a 操作部
96b 支柱部 96c 軸部
96d 軸 97 レバー用スプリング
98 天蓋 98a 舌状部
98b 切欠部 98c ロックレバー用開口
98d ガイドレール 98e 板体
99 ロックレバー 99a 指当て凹部
99b 係止爪 99c 側壁
99d ガイド溝 99e 突起
100 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱容器と、前記加熱容器の開口部に設けられる栓本体と、加熱源と、注ぎ口と、前記注ぎ口の反対側に設けられる取手と、を備える水加熱容器であって、
前記栓本体は、前記加熱容器の内外部を連通或いは遮断する弁部材と、前記取手側に設けられる止水部材を有し、
前記止水部材は、止水ボールであり、傾斜面に沿って移動し、
全体の重心は後方側にあり、転倒時、前記取手側が下になることを特徴とする水加熱容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−196469(P2012−196469A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−115445(P2012−115445)
【出願日】平成24年5月21日(2012.5.21)
【分割の表示】特願2007−52328(P2007−52328)の分割
【原出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000003702)タイガー魔法瓶株式会社 (509)
【Fターム(参考)】