説明

水吸収性ポリマー粒子を連続的に熱的に表面後架橋する方法

本発明は、水吸収性ポリマー粒子を連続的に熱的に表面後架橋する方法に関し、この場合後架橋剤は、適当なノズルにより水吸収性ポリマー粒子上に施こされ、およびノズルは、ノズルを含む装置部材と境を接しているグローブボックスの内部空間を介して交換されるかまたは清浄化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水吸収性ポリマー粒子を連続的に熱的に表面後架橋する方法に関し、この場合表面後架橋剤は、適当なノズルにより水吸収性ポリマー粒子上に施こされ、このノズルは、グローブボックスを使用しながら交換されるかまたは清浄化される。
【0002】
吸水性ポリマーは、おむつ、タンポン、生理帯および別の衛生用品を製造するために使用されるが、しかし、農業園芸における保水剤としても使用されている。
【0003】
この吸水性ポリマーの製造は、例えばモノグラフ"Modern Superabsorbent Polymer Technology", F.L.Buchholz und A.T.Graham, Wiley−VCH,1998, 第71〜103頁およびUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第6版、第35巻、第73〜93頁中に記載されている。
【0004】
水吸収性ポリマー粒子の性質は、例えば使用される架橋剤量により調節されることができる。架橋剤量が上昇すると、遠心分離保持能(CRC)は低下し、21.0g/m2の圧力下での吸収は、最大を突破する。
【0005】
おむつにおける使用特性、例えば膨潤されたゲルベッド(SFC)の透過率および49.2g/cm2またはそれ以上の圧力下での吸収率の改善のために、水吸収性ポリマー粒子は、通常、表面後架橋される。それによって、粒子表面の架橋度だけが上昇し、それにより遠心分離保持能(CRC)および49.2g/cm2の圧力下での吸収率は、少なくとも部分的にデカップルされうる。表面後架橋のために、特に乾燥され、粉砕され、および篩別された水吸収性ポリマー粒子(基礎ポリマー)は、表面後架橋剤で被覆され、および熱的に表面後架橋される。
【0006】
表面後架橋剤は、通常、溶液として適当なノズルにより連続的に基礎ポリマー上に吹き付けられる。このために使用されるノズルは、時間と共に汚染され、清浄化されなければならないかまたは交換されなければならない。この場合には、該当する装置部材が開放前に呼吸可能なダストを含まず、有機溶剤を使用する場合には、溶剤蒸気を含まないことを証明することができる。従って、連続的な表面後架橋を中断することは、必要である。更に、停止と関連した運転開始および運転中断は、最終製品中で品質の変動をまねく。
【0007】
本発明の課題は、吸水性ポリマー粒子を連続的に熱的に表面後架橋するための改善された方法を提供することであった。
【0008】
この課題は、表面後架橋された水吸収性ポリマー粒子を製造する方法であって、この場合水吸収性ポリマー粒子は、
a)少なくとも部分的に中和されていてよい、少なくとも1つのエチレン系不飽和酸基含有モノマー、
b)少なくとも1つの架橋剤、
c)少なくとも1つの開始剤、
d)場合によってはa)に記載されたモノマーと共重合可能な1つ以上のエチレン系飽和モノマーおよび
e)場合によっては1つ以上の水溶性ポリマーを含有するモノマー溶液またはモノマー懸濁液を重合することによって得られ、
少なくとも1つの表面後架橋剤は、少なくとも1つのノズルにより水吸収性ポリマー粒子上に施こされ、および水吸収性ポリマー粒子は、熱的に表面後架橋される、表面後架橋された水吸収性ポリマー粒子を製造する方法によって解決され、この方法は、少なくとも1つのノズルがノズルを含む装置部材と境を接しているグローブボックスを介して交換されるかまたは清浄化されることによって特徴付けられる。
【0009】
グローブボックス(glove box)は、包囲する作業空間に対して気密になるように遮断されている容器である。グローブボックスは、気密なグローブを用いての実施を示し、この実施は、グローブボックスの内部空間内での作業を可能にする。グローブボックスの内部空間は、窓によって見通すことができる。しかし、グローブボックスを完全に透明な材料、例えばポリメチルメタクリレートから完成させることも可能である。グローブボックスの内部空間は、特に、例えば工業用窒素で不活性化される。
【0010】
グローブボックスは、少なくとも1つのノズルを含む装置部材に直接接して存在する。グローブボックス中には、ノズルの清浄化または交換のために必要とされる作業装置が予め置かれていてよい。グローブボックスが包囲する作業空間に対して閉鎖された後で、装置部材は、開放することができ、汚染されたノズルは、清浄化されることもできるし、交換することもできる。即ち、グローブボックスは、装置内部空間と装置外部空間との間でロックとして使用される。
【0011】
少なくとも1つの表面後架橋剤は、有利に少なくとも1つの一対のノズルにより水吸収性ポリマー粒子上に施こされる。一対のノズルは、交換のために互いに分離される必要がない共通の供給管路を備えた2つのノズルである。
【0012】
本発明の1つの好ましい実施態様において、少なくとも2つのノズルまたは一対のノズルが使用され、この場合それぞれのノズルまたはそれぞれの一対のノズルは、別々の遮断装置を備えている。
【0013】
本発明による方法は、連続的な表面後架橋の完全な遮断なしにノズルの交換または清浄化を可能にする。単に交換すべきノズルまたは清浄化すべきノズルは、遮断されなければならない。例えば、2つのノズルを使用することは、可能であり、この場合には、第1のノズルの清浄化のために、第2のノズルに切り換えられる。しかし、表面後架橋剤の溶液を同時に複数のノズルを介して計量供給し、および清浄化すべきノズルの遮断中に別のノズルの計量供給量を相応して高めることも可能である。
【0014】
付加的になお少なくとも1つの多価陽イオンは、少なくとも1つのノズルまたは少なくとも1つの一対のノズルは、水吸収性ポリマー粒子上に施されてよい。特に、この多価陽イオンは、別々のノズルにより吹き付けられる。例えば、表面後架橋剤の溶液は、3つの一対のノズルにより水吸収性ポリマー粒子上に施されてよく、多価陽イオンの溶液は、1つの一対のノズルにより水吸収性ポリマー粒子上に施されてよい。
【0015】
本発明による方法は、連続生産の際にノズルの交換および清浄化を可能にする。意外なことに、ノズルの短時間の遮断にも拘わらず、連続生産の際に品質の変動は、連続的な表面後架橋の遮断を有する従来法の場合よりも僅かであることが見い出された。更に、表面後架橋の遮断によって引き起こされる通常の生産の停止は、回避される。
【0016】
水吸収性ポリマー粒子は、モノマー溶液またはモノマー懸濁液の重合によって製造され、通常、水不溶性である。
【0017】
モノマーa)は、特に水溶性であり、即ち23℃で水中での溶解性は、典型的には少なくとも1g/100g水、有利に少なくとも5g/100g水、特に有利に少なくとも25g/100g水、殊に有利に少なくとも35g/100g水である。
【0018】
適当なモノマーa)は、例えばエチレン系不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸およびイタコン酸である。特に有利なモノマーは、アクリル酸およびメタクリル酸である。殊に有利なのは、アクリル酸である。
【0019】
更に、適当なモノマーa)は、例えばエチレン系不飽和スルホン酸、例えばスチレンスルホン酸および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)である。
【0020】
不純物は、重合に対して重大な影響を及ぼしうる。従って、使用される原料は、できるだけ高純度をゆうするべきである。従って、モノマーa)を特に精製することは、しばしば好ましい。適当な精製法は、例えばWO 2002/055469A1、WO 2003/078378A1およびWO 2004/035514A1中に記載されている。適当なモノマーa)は、例えばWO 2004/035514A1の記載により精製された、アクリル酸99.8460質量%、酢酸0.0950質量%、水0.0332質量%、プロピオン酸0.0203質量%、フルフラール0.0001質量%、無水マレイン酸0.0001質量%、ジアクリル酸0.0003質量%およびヒドロキノンモノメチルエーテル0.0050質量%を有するアクリル酸である。
【0021】
モノマーa)の全量に対するアクリル酸および/またはその塩の割合は、有利に少なくとも50モル%、特に有利に少なくとも90モル%、とりわけ有利に少なくとも95モル%である。
【0022】
モノマーa)は、通常、重合抑制剤、特にヒドロキノン半エーテルを貯蔵安定剤として含有する。
【0023】
モノマー溶液は、それぞれ中和されていないモノマーa)に対して特に250質量ppmまで、有利に最大130質量ppm、特に有利に最大70質量ppm、有利に少なくとも10質量ppm、特に有利に少なくとも30質量ppm、殊に50質量ppmのヒドロキノン半エーテルを含有する。例えば、このモノマー溶液の製造のために、ヒドロキノン半エーテルを相応する量で含有するエチレン系不飽和酸基含有モノマーを使用することができる。
【0024】
好ましいヒドロキノン半エーテルは、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)および/またはα−トコフェロール(ビタミンE)である。
【0025】
適当な架橋剤b)は、架橋に適した少なくとも2個の基を有する化合物である。この種の基は、例えば重合体鎖中にラジカル的に重合導入することができるエチレン系不飽和基、およびモノマーa)の酸基との共有結合を形成することができる官能基である。更に、また、モノマーa)の少なくとも2個の酸基との配位結合を形成することができる多価金属塩は、架橋剤b)として適している。
【0026】
架橋剤b)は、特にポリマー網状組織中にラジカル的に重合導入することができる少なくとも2個の重合可能な基を有する化合物である。適当な架橋剤b)は、例えば欧州特許出願公開第0530438号明細書A1にはエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルアンモニウムクロリド、テトラアリルオキシエタンが、例えば欧州特許出願公開第0547847号明細書A1、欧州特許出願公開第0559476号明細書A1、欧州特許出願公開第0632068号明細書A1、WO 93/21237A1、WO 03/104299A1、WO 2003/104300A1、WO 2003/104301A1およびドイツ連邦共和国特許出願公開第10331450号明細書にはジアクリレートおよびトリアクリレートが、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第10331456号明細書A1およびドイツ連邦共和国特許出願公開第10355401号明細書A1にはアクリレート基と共にさらにエチレン系不飽和基を含有する混合アクリレートが、または例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第19543368号明細書A1、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19646484号明細書A1、WO 90/15830A1およびWO 02/32962A2には架橋剤混合物が記載されている。
【0027】
好ましい架橋剤b)は、ペンタエリトリットトリアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、メチレンビスメタクリルアミド、15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートおよびトリアリルアミンである。
【0028】
殊に有利な架橋剤b)は、例えばWO 2003/104301A1に記載されているような、アクリル酸またはメタクリル酸でジアクリレートまたはトリアクリレートにエステル化された、複数箇所エトキシル化されたおよび/またはプロポキシル化されたグリセリンである。3〜10箇所エトキシル化されたグリセリンのジアクリレートおよび/またはトリアクリレートが特に有利である。1〜5箇所エトキシル化および/またはプロポキシル化されたグリセリンのジアクリレートまたはトリアクリレートが特に有利である。3〜5箇所エトキシル化および/またはプロポキシル化されたグリセリンのトリアクリレートが最も有利である。
【0029】
架橋剤b)の量は、それぞれモノマーa)に対して特に0.05〜1.5質量%、特に有利に0.1〜1質量%、殊に有利に0.3〜0.6質量%である。架橋剤の含有量が上昇すると、遠心分離保持能(CRC)は低下し、21.0g/m2の圧力下での吸収は、最大を突破する。
【0030】
開始剤c)として、重合条件下でラジカル的に製造された全ての化合物、例えば熱的に開始剤、酸化還元開始剤、光開始剤が使用されてよい。適当な酸化還元開始剤は、ナトリウムペルオキソジスルフェート/アスコルビン酸、過酸化水素/アスコルビン酸、ナトリウムペルオキソジスルフェート/亜硫酸水素ナトリウムおよび過酸化水素/亜硫酸水素ナトリウムである。特に、熱的に開始剤と酸化還元開始剤との混合物、例えばナトリウムペルオキシジスルフェート/過酸化水素/アスコルビン酸が使用される。しかし、還元性成分として、特に2−ヒドロキシ−2−スルフィナト酢酸のナトリウム塩と2−ヒドロキシ−2−スルホナト酢酸の二ナトリウム塩と亜硫酸水素ナトリウムとからなる混合物が使用される。この種の混合物は、Brueggolite(登録商標)FF6およびBrueggolite(登録商標)FF7(Brueggemann Chemicals社; Heilbronn在;DE)として入手可能である。
【0031】
エチレン系不飽和酸基含有モノマーa)と共重合可能なエチレン系不飽和モノマーd)は、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジエチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートである。
【0032】
水溶性ポリマーe)として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、澱粉、澱粉誘導体、変性セルロース、例えばメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロース、ゼラチン、ポリグリコールまたはポリアクリル酸、特に澱粉、澱粉誘導体および変性セルロースを使用することができる。
【0033】
通常、モノマー水溶液が使用される。モノマー溶液の含水量は、特に40〜75質量%、特に有利に45〜70質量%、殊に有利に50〜65質量%である。また、モノマー懸濁液、即ち過剰量のモノマーa)を有するモノマー溶液、例えばナトリウムアクリレートを使用することが可能である。含水量が上昇すると、エネルギー費用は、引続く乾燥の際に上昇し、含水量が減少すると、重合熱的には、なお不十分にのみ導出されることができる。
【0034】
有利な重合抑制剤は、最適な作用のために溶解した酸素を必要とする。従って、前記モノマー溶液からは重合前に、不活性化、即ち不活性ガス、有利には窒素または二酸化炭素を用いた貫流により溶解した酸素が取り除かれてよい。有利には、前記モノマー溶液の酸素含量は、重合前に、1質量ppmより少なく、特に有利に0.5質量ppmより少なく、殊に有利に0.1質量ppmより少なく低下される。
【0035】
適した反応器は、ニーダー反応器またはベルト型反応器(Bandreaktor)である。ニーダー中で、モノマー水溶液またはモノマー懸濁液の重合の際に生じるポリマーゲルは、例えばWO 2001/038402A1に記載されているように、反転撹拌軸により連続的に粉砕される。ベルト上でのこの重合は、例えば、ドイツ連邦共和国特許出願公開第3825366号明細書A1および米国特許第6241928号明細書中に記載されている。重合の際にベルト型反応器中でポリマーゲルが生じ、これは、更なる方法工程、例えば押出機またはニーダー中で破砕されなくてはならない。
【0036】
得られたポリマーゲルの酸基は、通常、部分的に中和されている。この中和は、有利には、前記モノマーの工程で実施される。通常、中和は、中和剤を水溶液としてかまたは好ましくは固体として混入することによって行われる。中和度は、特に25〜95モル%、特に有利に30〜80モル%、殊に有利に40〜75モル%であり、この場合には、通常の中和剤、特にアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属炭酸水素塩ならびにこれらの混合物が使用されてよい。アルカリ金属塩の代わりに、アンモニウム塩が使用されてもよい。ナトリウムおよびカリウムは、アルカリ金属として特に有利であるが、しかしながら水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムならびにこれらの混合物が殊に有利である。
【0037】
しかし、中和を重合後に、重合で生じるポリマーゲルの段階で実施することも可能である。更に、中和剤の一部をモノマー溶液に既にモノマー溶液に添加することにより、重合前に酸基を40モル%まで、好ましくは10〜30モル%、特に好ましくは15〜25モル%中和することが可能であり、望ましい最終中和度は、重合の後に初めてポリマーゲルの段階で調節される。前記ポリマーゲルを少なくとも部分的に重合の後に中和する場合、前記ポリマーゲルは、有利に機械的に、例えば押出機を用いて粉砕され、この場合、中和剤は、吹き付けられるか、散布されるか、または注入され、次に入念に混合されることができる。そのために、得られたゲル材料は、なお数回均質化のために押出されうる。
【0038】
更に、ポリマーゲルは、特にベルト乾燥機を用いて、残留湿分が特に0.5〜15質量%、特に有利に1〜10質量%、殊に有利に2〜8質量%になるまで乾燥させることができ、この場合には、残留湿分は、EDANA(European Disposables and Nonwovens Association)によって推奨された試験法No.WSP230.2−05"湿分含量 Moisture Content"により測定される。残留湿分が高すぎる場合には、乾燥されたポリマーゲルは、低すぎるガラス転移温度Tgを有し、後加工が困難になる。残留湿分が低すぎる場合には、乾燥されたポリマーゲルは、脆すぎ、引続く粉砕工程において、低すぎる粒度("微細")を有する望ましくない大量のポリマー粒子が生じる。前記ゲルの固体含量は、乾燥前に特に25〜90質量%、特に有利に35〜70質量%、殊に有利に40〜60質量%である。しかしながら、選択的に、この乾燥のために、流動床乾燥機または加熱的にされた鋤刃型ミキサーを使用することもできる。
【0039】
乾燥したポリマーゲルは、この後で微粉砕されかつ分級され、この場合、微粉砕のために通常では1段階または多段階のロールミル、有利に2段階または3段階のロールミル、ピン付きミル、ハンマーミルまたはスイングミルを使用することができる。
【0040】
製品画分として分離されるポリマー粒子の平均粒度は、特に少なくとも200μm、特に有利に250〜600μm、殊に有利に300〜500μmである。製品画分の平均粒度は、EDANA(European Disposables and Nonwovens Association)によって推奨された試験法No.WSP220.2−05"粒径分布 Partikel Size Distribution"により算出されることができ、この場合篩画分の質量分は、累積されてプロットされ、平均粒度は、グラフにより測定される。この場合、平均粒度は、目開きの値であり、この値は、累積された50質量%をもたらす。
【0041】
少なくとも150μmの粒度を有する粒子の割合は、特に少なくとも90質量%、特に有利に少なくとも95質量%、殊に有利に少なくとも98質量%である。
【0042】
低すぎる粒度を有するポリマー粒子は、透過率(SFC)を低下させる。従って、小さすぎるポリマー粒子("微細")の割合は、僅かであるべきである。
【0043】
従って、小さすぎるポリマー粒子は、通常、分離され、および方法に返送される。これは、特に重合前、重合中または重合直後に、即ちポリマーゲルの乾燥前に行なわれる。小さすぎるポリマー粒子は、返送前または返送中に水および/または水性界面活性剤で湿潤されうる。
【0044】
重合のためにニーダー反応器を使用する場合には、小さすぎるポリマー粒子は、特に重合の最後の三分の一の間に添加される。
【0045】
小さすぎるポリマー粒子が極めて早期に、例えば既にモノマー溶液に添加された場合には、それによって得られた水吸収性ポリマー粒子の遠心分離保持能(CRC)は、低下される。しかし、これは、例えば使用量を架橋剤b)に適合させることによって補償されることができる。
【0046】
小さすぎるポリマー粒子が極めて後期に、例えば重合反応器に後接続された装置中、例えば押出機中で初めて添加された場合には、小さすぎるポリマー粒子は、得られたポリマーゲル中に混入させることが困難である。しかし、不十分に混入された、小さすぎるポリマー粒子は、粉砕中に再び乾燥されたポリマーゲルによって溶解し、したがって、分級の際に改めて分離され、返送すべき、小さすぎるポリマー粒子の量は、上昇する。
【0047】
最大850μmの粒度を有する粒子の割合は、特に少なくとも90質量%、特に有利に少なくとも95質量%、殊に有利に少なくとも98質量%である。
【0048】
大きすぎる粒度を有するポリマー粒子は、膨潤速度を低下させる。従って、大きすぎるポリマー粒子の割合は、同様に僅かであるべきである。
【0049】
従って、大きすぎるポリマー粒子は、通常分離され、乾燥されたポリマーゲルの粉砕に返送される。
【0050】
ポリマー粒子は、前記性質をさらに改善するために熱的に表面後架橋される。適当な表面後架橋剤は、ポリマー粒子の少なくとも2個のカルボキシラート基と共有結合を形成することができる基を含有する化合物である。適当な化合物は、例えば欧州特許出願公開第0083022号明細書A2、欧州特許出願公開第0543303号明細書A1および欧州特許出願公開第0937736号明細書A2に記載されているような多価アミン、多価アミドアミン、多価エポキシド、ドイツ連邦共和国特許出願公開第3314019号明細書A1、ドイツ連邦共和国特許出願公開第3523617号明細書A1および欧州特許出願公開第0450922号明細書A2に記載されているような二価アルコールまたは多価アルコール、またはドイツ連邦共和国特許出願公開第10204938号明細書A1および米国特許第6239230号明細書に記載されているようなβ−ヒドロキシアルキルアミドである。
【0051】
更に、ドイツ連邦共和国特許第4020780号明細書C1中には環式カルボナートが、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19807502号明細書A1中には2−オキサゾリドンおよびその誘導体、例えば2−ヒドロキシエチル−2−オキサゾリドンが、ドイツ連邦共和国特許第19807992号明細書中にはビス−2−オキサゾリジノンおよびポリ−2−オキサゾリジノンが、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19854573号明細書A1中には2−オキソテトラヒドロ−1,3−オキサジンおよびその誘導体が、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19854574号明細書A1中にはN−アシル−2−オキサゾリドンが、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10204937号明細書A1中には環式尿素が、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10334584号明細書A1中には二環式アミドアセタールが、欧州特許出願公開第1199327号明細書A2中にはオキセタンおよび環式尿素が、およびWO 2003/031482A1中にはモルホリン−2,3−ジオンおよびその誘導体が適当な表面後架橋剤として記載されている。
【0052】
好ましい表面後架橋剤は、エチレンカーボネート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリアミドとエピクロロヒドリンとの反応生成物およびプロピレングリコールと1,4−ブタンジオールとからなる混合物である。
【0053】
殊に好ましい表面後架橋剤は、2−ヒドロキシエチルオキサゾリジン−2−オン、オキサゾリジン−2−オンおよび1,3−プロパンジオールである。
【0054】
更に、ドイツ連邦共和国特許出願公開第3713601号明細書A1中に記載されているような、付加重合可能なエチレン系不飽和基を含有する表面後架橋剤が使用されてもよい。
【0055】
表面後架橋剤の量は、それぞれポリマー粒子に対して特に0.001〜2質量%、特に有利に0.02〜1質量%、殊に有利に0.05〜0.2質量%である。
【0056】
本発明の1つの好ましい実施態様において、熱的に表面後架橋前、熱的に表面後架橋中または熱的に表面後架橋後に付加的に多価陽イオンは、粒子表面上に施こされる。
【0057】
本発明による方法において使用することができる多価カチオンは、例えば二価のカチオン、例えば亜鉛、マグネシウム、カルシウム、鉄およびストロンチウムのカチオン、三価のカチオン、例えばアルミニウム、鉄、クロム、希土類およびマンガンのカチオン、四価のカチオン、例えばチタンおよびジルコニウムのカチオンである。対イオンとして塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、燐酸水素イオン、燐酸二水素イオンおよびカルボン酸イオン、例えば酢酸イオンおよび乳酸イオンが可能である。硫酸アルミニウムおよび乳酸アルミニウムは、好ましい。金属塩以外に、ポリアミンも多価陽イオンとして使用されることができる。
【0058】
多価陽イオンの使用量は、それぞれポリマー粒子に対して例えば0.001〜1.5質量%、特に0.005〜1質量%、特に有利に0.02〜0.8質量%である。
【0059】
表面後架橋は、通常、表面後架橋剤の溶液が乾燥したポリマー粒子上に吹き付けられることによって実施される。吹き付けに引続き、表面後架橋剤で被覆されたポリマー粒子は、熱的に表面後架橋される。
【0060】
表面後架橋剤の溶液の吹き付けは、有利に可動式混合器具を備えたミキサー中で、例えばスクリューミキサー、ディスクミキサー、鋤刃ミキサー及びブレードミキサ中で実施される。特に有利には、水平方向ミキサー、例えば鋤刃ミキサーおよびブレードミキサーであり、殊に好ましいのは、垂直方向ミキサーである。水平方向ミキサーと垂直方向ミキサーとは、混合軸の軸受けにより区別され、即ち水平方向ミキサーは、水平方向に支承された混合軸を有し、垂直方向ミキサーは、垂直方向に支承された混合軸を有する。適切なミキサーは、例えばLoedige(登録商標)ミキサー、Bepex(登録商標)ミキサー、Nauta(登録商標)ミキサー、Processall(登録商標)ミキサーおよびSchugi(登録商標)ミキサーである。しかし、表面後架橋溶液を渦動床中で吹き付けることも可能である。
【0061】
表面後架橋剤は、典型的には水溶液として使用される。ポリマー粒子中への表面後架橋剤の侵入深さは、非水溶性溶剤の含量または全溶剤量により調節されることができる。
【0062】
専ら水を溶剤として使用する場合には、有利に界面活性剤が添加される。それによって、湿潤挙動は、改善され、団塊化傾向は、減少される。しかし、特に溶剤混合物、例えばイソプロパノール/水、1,3−プロパンジオール/水およびプロピレングリコール/水が使用され、この場合混合物の質量比は、特に20:80〜40:60である。
【0063】
この加熱的に乾燥は、特に接触乾燥機、特に好ましくはパドル型乾燥機、殊に好ましくはディスク型乾燥機中で実施される。適当な乾燥機は、例えばBepex(登録商標)乾燥機およびNara(登録商標)乾燥機である。更に、流動床乾燥機も使用することができる。
【0064】
乾燥は、混合機それ自体中で、ジャケットの加熱的にまたは熱的に風の吹き込みによって行なうことができる。後接続された乾燥機、例えば箱形乾燥機、回転管炉かまたは加熱的に可能なスクリューは、同様に好適である。特に有利には、渦動床乾燥機中で混合され、および乾燥される。
【0065】
好ましい乾燥温度は、100〜250℃、有利に120〜220℃、特に有利に130〜210℃、殊に有利に150〜200℃の範囲内にある。反応ミキサーまたは乾燥器中での前記温度での好ましい滞留時間は、有利に少なくとも10分間、特に有利に少なくとも20分間、殊に有利に少なくとも30分間、通常最大60分間である。
【0066】
引続き、表面後架橋されたポリマー粒子は、再び分級され、その際に小さすぎるポリマー粒子および/または大きすぎるポリマー粒子は、分離され、方法に返送される。
【0067】
表面後架橋されたポリマー粒子は、前記性質をさらに改善するために被覆されてもよいし、後湿潤されてもよい。膨潤速度ならびに透過率(SFC)を改善するのに適した被覆は、例えば無機の不活性物質、例えば水不溶性金属塩、有機ポリマー、陽イオン性ポリマーならびに二価または多価金属陽イオンである。ダスト結合に適した被覆は、例えばポリオールである。ポリマー粒子の望ましくない焼き付き傾向に抗して適した被覆は、例えば熱的に分解法珪酸、例えばAerosil(登録商標)200、および界面活性剤、例えばSpan(登録商標)20である。
【0068】
本発明による方法により製造された水吸収性ポリマー粒子は、特に0〜15質量%、特に有利に0.2〜10質量%、殊に有利に0.5〜8質量%の湿分含量を有し、この場合、含水量は、EDANA(European Disposables and Nonwovens Association)によって推奨された試験法No.WSP230.2−05"湿分含量Moisture Content"により測定される。
【0069】
本発明による方法により得られる吸水性ポリマー粒子は、典型的には少なくとも15g/g、特に少なくとも20g/g、有利に少なくとも22g/g、特に有利に少なくとも24g/g、殊に有利に少なくとも26g/gの遠心分離保持容量(CRC)を有する。
【0070】
水吸収性ポリマー粒子の遠心分離保持能(CRC)は、通常、60g/g未満である。この遠心分離保持能(CRC)は、EDANA(European Disposables and Nonwovens Association)によって推奨された試験法No.WSP241.2−05"遠心分離保持能Centrifuge Retention Capadity"により測定される。
【0071】
本発明による方法により得られる吸水性ポリマー粒子は、49.2g/cm2の圧力下で、典型的には少なくとも15g/g、特に少なくとも20g/g、有利に少なくとも22g/g、特に有利に少なくとも24g/g、殊に有利に少なくとも26g/gの吸収量を有する。水吸収性ポリマー粒子の49.2g/cm2の圧力下での吸収量は、通常、35g/gである。49.2g/cm2の圧力下での吸収量は、EDANA(European Disposables and Nonwovens Association)によって推奨された試験法No.WSP242.2−05"圧力下での吸収Absorption under Pressure"と同様に測定され、この場合には、21.0g/cm2の圧力の代わりに、圧力は、49.2g/cm2に調節される。
【0072】
更に、本発明の対象は、本発明による方法を実施するための装置ならびにグローブボックスの本発明による使用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後架橋された水吸収性ポリマー粒子を連続的に製造する方法であって、この場合水吸収性ポリマー粒子は、
a)少なくとも部分的に中和されていてよい、少なくとも1つのエチレン系不飽和酸基含有モノマー、
b)少なくとも1つの架橋剤、
c)少なくとも1つの開始剤、
d)場合によってはa)に記載されたモノマーと共重合可能な1つ以上のエチレン系飽和モノマーおよび
e)場合によっては1つ以上の水溶性ポリマーを含有するモノマー溶液またはモノマー懸濁液を重合することによって得られ、
少なくとも1つの後架橋剤は、少なくとも1つのノズルにより水吸収性ポリマー粒子上に施こされ、および水吸収性ポリマー粒子は、熱的に表面後架橋される、後架橋された水吸収性ポリマー粒子を連続的に製造する方法において、少なくとも1つのノズルがノズルを含む装置部材と境を接しているグローブボックスを介して交換されるかまたは清浄化されることを特徴とする、後架橋された水吸収性ポリマー粒子を連続的に製造する方法。
【請求項2】
少なくとも1つの後架橋剤を垂直方向のミキサー中で水吸収性ポリマー粒子上に施こす、請求項1記載の方法。
【請求項3】
熱的に後架橋をディスク型乾燥機中で実施する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの後架橋剤を少なくとも1つの一対のノズルを用いて水吸収性ポリマー粒子上に施こす、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの後架橋剤を少なくとも2つのノズルまたは一対のノズルを用いて水吸収性ポリマー粒子上に施こし、少なくとも2つのノズルまたは一対のノズルの供給管路は、別々の遮断装置を備えている、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
さらに少なくとも1つの多価陽イオンを少なくとも1つのノズルを用いて水吸収性ポリマー粒子上に施こす、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの多価陽イオンを少なくとも1つの一対のノズルを用いて水吸収性ポリマー粒子上に施こす、請求項6記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの後架橋剤を一対のノズルを用いて水吸収性ポリマー粒子上に施こし、少なくとも1つの多価陽イオンを一対のノズルを用いて水吸収性ポリマー粒子上に施こす、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
水吸収性ポリマー粒子は、少なくとも15g/gの遠心分離保持能を有する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つのノズルおよび少なくとも1つのグローブボックスを含む、水吸収性ポリマー粒子を連続的に熱的に的後架橋する装置であって、グローブボックスが、ノズルを含む装置部材と境を接しており、ノズルがグローブボックスの内部空間を介して交換されうるかまたは清浄化されうる、前記の水吸収性ポリマー粒子を連続的に熱的に的後架橋する装置。
【請求項11】
水吸収性ポリマー粒子の連続的な熱的に的後架橋に対してノズルを交換するかまたは清浄化するためのグローブボックスの使用。

【公表番号】特表2011−522942(P2011−522942A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512968(P2011−512968)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057132
【国際公開番号】WO2009/150164
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】