説明

水和助触媒の存在下における3−ヒドロキシプロパナールの接触水素化による1,3−プロパンジオールの製造方法

(a)3−ヒドロキシプロパナールの水性混合物を調製する工程、(b)水性3−ヒドロキシプロパナール混合物を水素化帯に通す工程であって、水素化帯が、少なくとも二段階からなり、第一段階における水素化が、50〜130℃の範囲における温度で、固定床またはスラリー水素化触媒の存在下における水素化条件下で行われ、酸性助触媒が、後の段階の少なくとも1つにおいて添加されるか存在し、後の段階における水素化が、第一水素化段階の温度よりも高い温度でかつ70〜155℃の範囲における水素化条件下で行われて1,3−プロパンジオールの水溶液を形成する工程、および(c)前記1,3−プロパンジオールを回収する工程を含む、1,3−プロパンジオールの調製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−ヒドロキシプロパナールの1,3−プロパンジオールへの水素化方法に関する。更に詳しく言えば、本発明は、1,3−プロパンジオールに対する副生成物の水和および水素化を促進して方法の収率を改善する二成分触媒系を導入する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,3−プロパンジオール(PDO)は、3−ヒドロキシプロパナールの水溶液の水素化により調製することができる。3−ヒドロキシプロパナール(HPA)中間体溶液は、有機溶媒においてHPAの希釈混合物を形成するためのエチレンオキシドの触媒ヒドロホルミル化(合成ガス、H/COとの反応)とそれに続く、更に濃縮されたHPA溶液を形成するためのHPAの水抽出およびその後のHPAのPDOへの水素化を含む方法により調製することができる。
【0003】
参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5786524号明細書は、エチレンオキシドおよび合成ガスを、50〜100℃および500〜5000psig(約0.3〜3.4MPa・g)で、コバルトまたはロジウム触媒および触媒促進剤の存在下において接触させてHPAを含む中間体生成混合物を製造する方法を記載している。水はHPA混合物に添加され、殆どのHPAは水に抽出されて、高濃度のHPAを含む水性相および少なくとも一部の触媒を含む有機相を与える。水性相は有機相から分離され、次いで、1,3−プロパンジオールの水溶液で希釈される。次いで、この水溶液は固定床水素化触媒との接触において水素化帯に通され、PDOを含む水溶液を形成し、次いで、PDOが回収される。
【0004】
あるいはまた、参照として本明細書に組み込まれる米国特許第5015789号明細書に記載されているアクロレインの水和が、3−ヒドロキシプロパナールの水性中間体流を製造するために使用されてもよい。
【0005】
参照として本明細書に組み込まれる米国特許第5945570号明細書は、3−ヒドロキシプロパナールの水素化における使用のための新規な水素化触媒を記載している。触媒は、モリブデン、ならびにシリケートまたはケイ素、ジルコニウム、アルミニウム等の酸化物であることのできる結合材を含む促進ニッケル触媒である。触媒系は、上記で検討された米国特許第5786524号明細書に記載されている担持水素化触媒系等の従来の触媒系に対し、触媒系の粉砕強度強化により水素化反応環境における触媒寿命を延長したことによって特徴付けられる。
【0006】
水素化プロセスの間または水素化プロセスを進める工程において、かなりの濃度のHPAおよびPDOが共存する可能性がある。これらの成分は反応して熱力学的に有効な環状アセタールMW132を形成する。
【0007】
【化1】

更に環状アセタールの反応が生起して、更に副生成物種を生成する。
【0008】
逆反応、即ち、アセタールのPDOへの反応を水素化中に促進することができれば、これはPDOの収率を増加させるので極めて有利である。しかしながら、米国特許第5945570号明細書において記載されている触媒寿命の延長は、PDOおよびHPA(HPAは、次いで、PDOへ水素化される)へ戻るアセタールの転換を積極的に促進しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、空間時間収率を改善し、アセタール副生成物のPDOへの有効な転換を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(a)3−ヒドロキシプロパナールと反応副生成物との水性混合物を調製する工程、(b)水性3−ヒドロキシプロパナール混合物を水素化帯に通す工程であって、水素化帯が、少なくとも二段階からなり、第一段階における水素化が、50〜130℃の範囲における温度で、固定床またはスラリー水素化触媒の存在下における水素化条件下で行われ、酸性ゼオライト、酸性カチオン交換樹脂、酸性または両性金属酸化物、ヘテロポリ酸および可溶性酸からなる群から選択される酸性助触媒が、後続段階の少なくとも1つにおいて添加されるか存在し、前記後続段階における水素化が、1,3−プロパンジオールの水溶液を形成するために第一水素化段階よりも高い温度でかつ70〜155℃の範囲における水素化条件下で行われる工程、および(c)前記1,3−プロパンジオールを回収する工程を含む、1,3−プロパンジオールの調製方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
好ましい実施形態においては、水素化帯は、少なくとも三段階からなり、第二段階における水素化は、70〜155℃、好ましくは70〜140℃の範囲において第一段階の温度より高い温度で行われ、酸性助触媒は、水素化帯の最後の段階において添加されるか存在し、最後の段階における水素化は、第二段階の温度より高い温度でかつ120℃以上、好ましくは120℃〜155℃の水素化条件下で行われる。別の好ましい実施形態においては、スラリー水素化触媒および酸性カチオン交換樹脂が使用され、最終水素化段階における温度は100〜140℃である。
【0012】
エチレンオキシドおよび合成ガスから3−ヒドロキシプロパナールの水性混合物を調製するために使用することのできるヒドロホルミル化方法は、参照として本明細書に組み込まれる米国特許第5786524号明細書において詳細に記載されている。米国特許第5015789号明細書は、アクロレインの水和により調製される3−ヒドロキシプロパナールの同様の水性混合物を記載している。
【0013】
水素化域へ投入される水性流は、通常は水である水性液体の重量を基準にして3〜50重量%、好ましくは10〜40重量%の範囲内の濃度のHPAを含む水溶液である。固定床触媒が水素化に使用される場合、最初の水素化反応器への供給物のHPAの濃度を0.2〜15重量%、最も好ましくは0.5〜8重量%の値まで希釈することが望ましい。水を含めて、HPAの水素化を妨害しない任意の水性液体を、HPA溶液を所望の濃度まで希釈するのに使用することができるが、水素化工程からの生成物流の一部等の水性PDO含有溶液を使用することが好ましい。その様なPDO含有溶液での希釈は、系水におけるPDO濃縮を助け、したがって、希釈液として水単独使用に原因する高コスト、水からの希釈PDOの回収を回避する。好ましい希釈流は、PDOおよびHPAを20〜40重量%の範囲内の量で含む。希釈流は、好ましくは、一緒にされた流れの温度を固定床水素化の初期段階への投入にとって望ましい温度にするため、ヒドロホルミル化産出流と混合する前に冷却される。
【0014】
スラリー触媒が逆混合反応器において使用される場合、第一段階の反応範囲を、供給物の予備希釈を必要としないように、0.2〜15重量%、好ましくは0.5〜8重量%のHPAの同様の濃度範囲に調節してもよい。
【0015】
水素化方法は、1段階においてまたは2以上の順次温度段階において行うことができる。好ましい実施形態においては、水素化は、50〜130℃の範囲内の温度で行われ、引き続き、第二段階が第一段階の温度よりも高い温度でかつ70〜155℃の範囲内で行われ、次いで、場合によって、第三段階において、第二段階の温度よりも高い温度でかつ120℃以上、好ましくは120℃〜155℃の温度で行われる。この好ましい方法においては、水素化は、場合によって、2以上の別々の反応容器において行われる。
【0016】
アルデヒド官能基(HPAにおいて見出される)またはアセタールの転換により形成されるアルデヒドをアルコール官能基(PDOにおいて見出される)へ転換することにおいて有用な水素化触媒としては、ニッケル、コバルト、鉄、パラジウム、ロジウム、ルテニウムおよび白金等のVIII族金属が挙げられる。銅もまた活性があることが知られている。
【0017】
好ましいその様な水素化触媒は、参照として本明細書に組み込まれる米国特許第5945570号明細書に記載されている。好ましい水素化触媒は、主たる活性成分として、25〜60重量%、好ましくは30〜45重量%のニッケル(Niとして)を含む。活性触媒におけるニッケルは、主に還元状態にあるものである。触媒は、5〜20重量%、好ましくは6〜16重量%のモリブデン(Moとして)を含む。モリブデンは、金属および酸化物形態の両方において触媒中に存在する。モリブデンは結合機能を有し、また活性促進剤でもある。
【0018】
触媒の結合剤部分は、別々の成分を一緒に保持するために「膠」として作用し、触媒床の圧力低下を防ぐ粉砕抵抗を与える。結合剤は、触媒の30〜70重量%を構成し、ケイ素の酸化物およびシリケートならびに亜鉛、ジルコニウム、カルシウム、マグネシウムおよび/またはアルミニウムの酸化物で構成される。代表的には、触媒は、30〜70重量%、好ましくは35〜55重量%のケイ素、0〜2重量%、好ましくは0〜1重量%の亜鉛、および0〜2重量%のアルミニウムを含む。結合剤は、2重量%以下のカルシウムを含み、好ましくは0〜1重量%のカルシウムを含む。触媒の好ましい実施形態は、亜鉛またはカルシウムを本質的に含まない。水溶液における3−ヒドロキシプロパナールの1,3−プロパンジオールへの水素化の第一段階のための好ましい触媒組成物は、35重量%のニッケルおよび8〜12重量%のモリブデンを含み、残りは上述の結合材である。
【0019】
触媒は、固体バルク形態において、活性ニッケル成分、モリブデン成分および結合材を導入する任意の手順により調製することができる。好ましい触媒調製は、酸化ニッケル、アタパルガイト粘土等の結合材および三酸化モリブデン粉末を均質粉末に混合することを含む。次に、押出し可能な混合物を形成するために十分な水におけるコロイド状シリカの溶液が固体混合物中に攪拌混合される。次いで、湿潤混合物は、0.040〜0.070インチ(1.016〜1.778mm)直径孔を持つダイプレートを介して押し出される。押出し物は、水分含有量を5重量%未満まで減少させるのに十分な時間、100〜125℃で乾燥される。次いで、乾燥された押出し物は、所望の強度を持つようになるまで、450〜550℃で少なくとも3時間、空気中で焼成される。使用前に、触媒は、水素ガス下で、350〜450℃の範囲内の温度で、ニッケルの少なくとも60%の還元のために十分な時間還元される。還元触媒が直ぐに使用されない場合は、周囲温度まで冷却され、使用されるまで1,3−プロパンジオール等の保護媒体下で貯蔵される。
【0020】
本発明の一実施形態においては、酸性助触媒は、後段の水素化段階において添加される。酸性助触媒は、MW132アセタールをPDOおよびHPAに戻す水和反応を促進し、水素化プロセス全体のPDO収率を増加する。本発明において有用な酸性助触媒は、酸性ゼオライト、酸性カチオン交換樹脂、ヘテロポリ酸、使用される水素化触媒に比べ高められた酸性度を示す両性金属酸化物および可溶性酸から選択されてもよい。それらは、一般に、固定床またはスラリー水素化触媒との比として、1:5〜2:1の量で添加される。極めて好ましい実施形態においては、酸性助触媒は、水素化の第三段階において添加されかつ/または一次水素化の水性PDO生成物の後水素化において使用される。
【0021】
酸性助触媒は、また、すべての水素化段階において、固定床促進ニッケル水素化触媒と一緒に含まれてもよい。
【0022】
あるいはまた、酸性助触媒は、2〜5.5のpHを得るために添加されるか、プロセスの共生成物として生成される可溶性酸であってもよい。
【0023】
好ましいゼオライト触媒は、好ましくは酸性形態における1つまたは複数の変性ゼオライトを含む。これらのゼオライトは、アクリルまたは脂肪族化合物の入り込みを許容するのに十分大きい細孔直径を含むべきである。好ましいゼオライトとしては、例えば、構造タイプのMFI(例えば、ZSM−5)、MEL(例えば、ZSM−11)、FER(例えば、フェリエライトおよびZSM−35)、FAU(例えば、ゼオライトY)、BEA(例えば、ベータ)、MFS(例えば、ZSM−57)、NES(例えば、NU−87)、MOR(例えば、モルデナイト)、CHA(例えば、菱沸石)、MTT(例えば、ZSM−23)、MWW(例えば、MCM−22およびSSZ−25)、EUO(例えば、EU−1、ZSM−50およびTPZ−3)、OFF(例えば、オフレタイト)、MTW(例えば、ZSM−12)のゼオライトおよびITQ−1、ITQ−2、MCM−56、MCM−49、ZSM−48、SSZ−35、SSZ−39のゼオライトならびに混合結晶性相のゼオライト、例えば、ゼオライトPSH−3等が挙げられる。構造タイプおよび様々なゼオライトの合成に関わる参考文献は、「Atlas of Zeolite Structure Types」(国際ゼオライト協会の構造委員会のために刊行された)、by W.M.Meier、D.H.Olsonおよび Ch.Baerlocher、published by Butterworth−Heinemann、forth revised eddition、1996において見出すことができる。構造タイプおよび上述のゼオライトの関連文献は、www.iza−structure.orgにおけるワールドワイドウエブ上で利用できる。その様なゼオライトは、Zeolyst International,Inc.およびExxonMobil Corp.から市販されている。更に好ましくは、ゼオライトは、ホウ素含有量を高めるためにホウ素源を意図的に添加することなしに、原料から微量のホウ素を含むことのできる結晶性アルミノ−シリケートである。
【0024】
その他の適当な触媒としては、酸性カチオン交換樹脂が挙げられる。これらは、スルホン酸官能基が有機ポリマー主鎖に直接的にまたは間接的に結合されている、酸形態においてスルホン酸官能基を持つゲルタイプまたはマクロ網状(マクロ細孔)イオン交換樹脂を含む。例としては、ローム&ハース社のAMBERLITE(登録商標)またはAMBERLYST(登録商標)A200、A252、IR−118、IR120、A15、A35、A36、XN−1010、または均一粒径のA1200樹脂;Dow MSC−1またはDOWEX(登録商標)50系樹脂;SYBRON(登録商標)C−249、C−267、CFP−110樹脂;PUROLITE(登録商標)C−100またはC−150樹脂;RESINTECH(登録商標)CG8;IWT C−211;SACMP;IWT C−381;およびその他の類似の市販樹脂が挙げられる。これらのカチオン交換樹脂のその他の例は、NAFION(登録商標)(スルホン酸の酸性化ペルフルオロ化ポリマー)である。
【0025】
耐水性固体酸性触媒は、最近、オクハラにより検討された(T.Okuhara、in Chemical Reviews 2002、pp.3461−3665、published by The American Chemical Society)。ヘテロポリ酸は、2つ以上の異なるオキシアニオンから形成され、一般的には、四面体に配位されたシリカまたは6価のモリブデン、タングステン、ウラニウム、ニオブまたはタンタルで結合されたリンを含む。セシウム(Cs2.5)を伴う酸アニオンは、水の存在下において酸触媒化反応に対して高い活性を示す。
【0026】
両性または酸性酸化物としては、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、チタニア、ジルコニア、ならびに硫酸化ジルコニア、タングステン酸ジルコニウム、リン酸塩、モリブデン酸塩およびニオブ酸を含めたそれらの変形物が挙げられる。
【0027】
可溶性酸性助触媒としては、塩化、臭化、フッ化またはヨウ化水素等の無機酸および硝酸を挙げることができる。リン酸または酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸等の弱酸が使用されてもよい。
【0028】
固定床水素化触媒のための金属は、ニッケル、コバルト、ルテニウム、白金、パラジウム等のVIII族金属ならびに銅、亜鉛、クロムおよびこれらの混合物および合金であることができる。好ましい触媒は、米国特許第5945570号明細書において記載されている好ましい触媒等の、水安定性(例えば、セラミック)支持体上の粒状ニッケルベース組成物である。この触媒の粒径は、固定床操作と整合性が取れ、したがって、一般に、活性を犠牲にして低い圧力低下を与える大きな粒子を伴い、100ミクロン〜3ミリメートルの範囲である。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
共溶媒としてのエタノール(67重量%)で調製された、比較的に多い量(約5重量%)のMW132アセタールを含む水性PDO溶液を、500ミリリットルバッチオートクレーブ反応器において水素化し、MW132アセタールおよびその他の類似の不純物のPDOへの転換を評価した。
【0030】
米国特許第5945570号明細書において記載されている好ましい固定床促進ニッケル水素化触媒であった触媒は、7.8重量%の触媒(g−触媒/g−液体混合物)の使用にもかかわらず、150℃および1000psi(約6.9MPa)H5時間でアセタールの転換を示さなかった。反応を、合計11時間後に停止し、1.5重量%の酸性USYゼオライトを添加した。130℃まで20℃の温度低下にもかかわらず、MW132アセタールの75%が次の2時間でPDOに転換した。95%の最終アセタール転換率は、助触媒として酸性ゼオライトを伴い150℃で更に2.5時間後に得られた。結果は、MW132アセタールの転換速度に関してゼオライト助触媒の添加の有益な影響を明確に示している。
【0031】
(実施例2〜17)
一連のバッチ水素化実験を、31重量%のPDOにおける2.7重量%のMW132アセタールと残留溶媒を含む水との混合物240gを使用して、500mlオートクレーブにおいて1000psi水素下で行った(表1)。すべての場合において、合計4gの触媒を使用した。「ベースケースニッケル」では、米国特許第5945570号明細書において記載されている好ましい触媒4gが水素化触媒として使用された。助触媒が使用された場合は、水素化触媒の量を減少し(2g)、等量の助触媒を一緒にして合計4gの触媒として使用した。MW132アセタールの反応およびn−プロパノール(NPA)の形成、PDOへのアセタール転換の主な望ましくない副生成物を監視するために、ガスクロマトグラフィー分析用に3〜5時間にわたって定期的にサンプリングした。
【0032】
速度定数kは、MW132転換対時間の傾斜として計算され、所与の時間「t」に対して、
【0033】
【数1】

で表すことができる。Xは、MW132アセタールの分別転換率、即ち、
【0034】
【数2】

(式中、添字「0」は、初期濃度を表す)である。パラメーターfcatは、触媒の重量画分、すなわち合計触媒の重量(代表的には4g)割る液体溶液の合計質量(代表的には240g)を表す。
【0035】
望ましくないn−プロパノールに対する選択率は、また、転換した(主にPDOおよびn−プロパノールへ)MW132アセタールの質量に対して形成されるプロパノールの質量として定義される。
【0036】
良好な空間時間収率を与える最適な高温水素化触媒は、所望の生成物(PDO)に対する割合および選択率を最適化するものとして、生産性ファクター「P」は、プロパノールの選択率(望ましくない)で割られるMW132の反応速度の比として定義された。したがって、高いP値は、アセタールの高温転換に対する高い経済性を示す。
【0037】
表1における操作2および3は、ベースケースとなる助触媒が添加されていないNi触媒の反複である。操作3〜8(「A」シリーズ)においては、両性または酸性酸化物助触媒を、当量のベースニッケルの水素化触媒に代えて添加した。結果としては、助触媒の使用が、酸化物のジルコニア、チタニア、シリカ、アルミナおよびシリカ−アルミナについてはMW132アセタールの転換速度を高めたことが示された。操作#9(「A」シリーズ)に対しては、非常に酸性のNiO/WO/アルミナ助触媒を添加し、それはまた、酸性助触媒が添加されなかったベースケースに関してアセタール転換の速度を高めた。
【0038】
幾つかの固体酸化物助触媒の水性酸性度は、一晩中室温で(混合しながら)、0.1N水酸化または炭酸カリウムの水溶液を固体酸性助触媒と接触させ、次いで、残留KOHの量を評価するために0.1N HClで滴定するために上澄み液をサンプリングすることを伴う逆滴定法で評価された。この方法の結果は表2に示される。テストされた酸化物助触媒およびNiO/WO/アルミナ触媒は、ニッケルベースケース触媒よりもすべて実質的に酸性度が高く、MW132転換におけるその高活性を説明している。これらの実験に対して、塩基(水酸化または炭酸カリウム)の量は、固体酸化物の溶解を避けるために制限された。水性媒体における酸性度の決定のための固体酸化物の逆滴定は、H.P.Boehm、「Chemical Identification of Surface Groups」、in Advances in Catalysis、Vol.16、pp.179−273 (1968)に記載されている。
【0039】
表1の「A」シリーズにおける酸性助触媒の添加で、n−プロパノールの形成の増加が明らかであった。「B」シリーズでは130℃までの水素化温度の低下を試験したが、望ましくないn−プロパノール形成の量に減少をもたらし、かつ10℃高い140℃で操作されたベースケースに対してもMW132アセタールの転換速度の増加を与えた。温度減少の可能性は、水性環境における固定床水素化触媒の安定性が、温度によって不利な影響を受けることが知られているので、特に興味をそそるものである。本発明は、同じ空間時間転換に対してより低い温度で改善された速度を得ることを可能にし、それによって、高温水素化触媒の寿命を延ばすことができる。
【0040】
CおよびDシリーズ(表1)は、Ru/アルミナ触媒およびベースケースNi触媒に対する酸性助触媒として可溶性有機酸(3−ヒドロキシプロピオン酸)を試験する。両方の触媒に対して、MW132アセタールの転換は、反応混合物がpH調整によって更に酸性とされたので改善された。この結果は、アセタール転換が、pHで証明された様に、プロトン(H)濃度の関数であることを示す。高温水素化段階における低pH(2〜5)とよりpH耐性の触媒の組合せは、重質アセタールの転換を高める。ニッケル触媒に対する操作pH範囲は4〜7.5であるが、5.0より上、好ましくは5.2〜5.5に保持することが好ましく、さもないと、触媒の寿命が悪影響を受ける。4〜5の範囲の操作は、転換速度において大きな増加を与える。
【0041】
Eシリーズは、助触媒としてスルホン酸樹脂(ローム&ハース社のスルホン化ポリスチレンAmberlyst(登録商標)15)を使用、120℃の低温で操作されるラネーコバルトスラリー触媒(W.R.Grace #18659−21)を試験する。MW132アセタールの転換は、強酸性樹脂の助触媒の不存在下においてこの温度ではみられなかった。樹脂助触媒を使用すると、酸性助触媒なしのベースケース対照に対して20℃低い操作温度にもかかわらず、望ましくないn−プロパノール形成の量は半分で、速度は、ニッケルベースケースの2倍を超えた。低温は、アセタールをPDOに転換する能力を維持しながら触媒寿命を延ばすことを助ける。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
(実施例18)
2つの連続流動反応器を、150℃および1180psi(8135kPa)水素圧で、先の実施例において使用された別々のバッチの触媒2.0gで操作した。液体流量を、0.9〜1.3の平均重量時間空間速度(WHSV)となるように設定した:
WHSV=液体供給物のg/触媒のg/時間
水素を、出口のロータメーターで測定して標準温度圧力で設定8〜10ミリリットル/分の流量で反応器入口に一緒に供給し、固定床気泡塔反応器にとって望ましい三相形態(気体−液体−固体)における操作を準備した。MW132アセタール内容物のガスクロマトグラフィー(GC)分析のために流出液を定期的にサンプリングした。液体供給溶液は、水中27〜31重量%のPDOの混合物において2.2〜2.3重量%のMW132アセタールを含み、1N KOHの添加によって反応器「A」はpH4.9に、反応器「B」はpH5.5に調整した。この実施例は、最終の高温水素化段階に対する供給物を模擬するものである。アセタール転換に対する速度定数は上述の様に計算した。この実施例において使用された固定床触媒に対しては、fcat=1であった。
【0045】
1カ月の操作に対する結果を表3に示す。pH4.9の供給物を伴う反応器Aは、pH5.5の供給物で操作された反応器Bよりも、流出液におけるMW132が少ない。速度定数(上述の様に計算された)は、pH5.5の供給物で観察されたものに対して、pH4.9ではおよそ2倍の触媒活性であることを示した。この実験は、環状アセタールの転換速度を高めるための低pHでの操作の利点が、工業的連続操作中にも確かに維持されることを証明する。
【0046】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)3−ヒドロキシプロパナールの水性混合物を調製する工程、
(b)水性3−ヒドロキシプロパナール混合物を水素化帯に通す工程であって、水素化帯が、少なくとも二段階からなり、第一段階における水素化が、50〜130℃の範囲における温度で、固定床またはスラリー水素化触媒の存在下における水素化条件下で行われ、および酸性ゼオライト、酸性カチオン交換樹脂、酸性または両性金属酸化物、ヘテロポリ酸および可溶性酸からなる群から選択される酸性助触媒が、後の段階の少なくとも1つにおいて添加されるか存在し、前記後の段階における水素化が、第一水素化段階よりも高い温度でかつ70〜155℃の範囲における水素化条件下で行われて1,3−プロパンジオールの水溶液を形成する工程、および
(c)前記1,3−プロパンジオールを回収する工程
を含む、3−ヒドロキシプロパナールの水素化による1,3−プロパンジオールの調製方法。
【請求項2】
水素化帯が少なくとも三段階からなり、第二段階における水素化が、70〜155℃の範囲において、第一段階の温度よりも高い温度における水素化条件下で行われ、酸性助触媒が、水素化帯の最後の段階において添加されるか存在し、最後の段階における水素化が、第二段階の温度よりも高い温度でかつ120℃以上の水素化条件下で行われる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第二段階における温度が70〜140℃であり、最後の段階における温度が120〜155℃である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
酸性助触媒が、酸性ゼオライト、酸性カチオン交換樹脂、酸性または両性固体金属酸化物、ヘテロポリ酸および可溶性酸からなる群から選択される請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
pHが、工程(b)において5を超える請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
スラリー水素化触媒および酸性カチオン交換樹脂が使用され、最終水素化段階における温度が100〜140℃である請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
水素化帯に通される水性3−ヒドロキシプロパナール混合物が、水性溶媒の重量を基準にして3〜50重量%の濃度で3−ヒドロキシプロパナールを含む水溶液である請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
水素化帯に通される水性3−ヒドロキシプロパナール混合物が、水性溶媒の重量を基準にして10〜40重量%の濃度で3−ヒドロキシプロパナールを含む水溶液である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
固定床触媒が水素化のために使用され、水素化帯に通される水性3−ヒドロキシプロパナール混合物における3−ヒドロキシプロパナールの濃度が、水性溶媒の重量を基準にして0.2〜15重量%である請求項7に記載の方法。
【請求項10】
工程a)の水性3−ヒドロキシプロパナール混合物が、1,3−プロパンジオールの水溶液の添加によって、水性溶媒の重量を基準にして0.2〜15重量%まで希釈される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
希釈混合物における3−ヒドロキシプロパナールおよび1,3−プロパンジオールの合計量が、水性溶媒の重量を基準にして20〜40重量%である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
1,3−プロパンジオールの水溶液が、工程a)の水性3−ヒドロキシプロパナール混合物へのその添加前に冷却される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
固定床触媒が水素化のために使用され、水素化帯に通される水性3−ヒドロキシプロパナール混合物における3−ヒドロキシプロパナールの濃度が、水性溶媒の重量を基準にして0.5〜8重量%である請求項9に記載の方法。
【請求項14】
工程a)の水性3−ヒドロキシプロパナール混合物が、1,3−プロパンジオールの水溶液の添加によって、水性溶媒の重量を基準にして0.5〜8重量%まで希釈される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
希釈混合物における3−ヒドロキシプロパナールおよび1,3−プロパンジオールの合計量が、水性溶媒の重量を基準にして20〜40重量%である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
1,3−プロパンジオールの水溶液が、工程a)の水性3−ヒドロキシプロパナール混合物へのその添加前に冷却される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
固定床水素化触媒が使用され、酸性助触媒が、すべての水素化段階において水素化触媒と一緒に添加される請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2007−507545(P2007−507545A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534254(P2006−534254)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/032754
【国際公開番号】WO2005/037749
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】