説明

水和物スラリの水道発生防止方法および水和物スラリの払出し方法、並びに貯蔵タンク

【課題】水和物スラリの融解を防止すると共に、水和物スラリの円滑な払い出しを可能とする液と水和物スラリの貯蔵方法及び液と水和物スラリの貯蔵タンクを得る。
【解決手段】液102を貯蔵する液タンク1と水和物スラリ105を貯蔵するスラリタンク3を別々に設け、液タンク1に液受入ロ19および払出口21を、スラリタンク3にスラリ受入口23および払出口25をそれぞれ設けたものである。よって、液102と水和物スラリ105の接触が防止でき水和物スラリ105の液102による融解を防止できる。また、両者が同一のタンク内にある場合のように粘度の違いによる水道の形成による水和物スラリの払い出しが困難になるという問題も生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水和物スラリの水道発生防止方法および水和物スラリの払出し方法、並びに貯蔵タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
ビル空調や地域冷暖房において、氷スラリや水和物スラリ、冷水等の冷熱媒体を夜間に製造してタンクに貯蔵しておき、昼間に貯蔵タンクから取出して冷熱源として使用する方法が提案されている。
図26は従来の方法のうち冷熱媒体として水和物スラリを用いた冷熱媒体循環系の説明図である。水和物スラリを用いたものにおいては、図26に示すように、夜間にタンク101内の液102をポンプ103によってスラリ製造器104に移送して水和物スラリを製造し、製造された水和物スラリを再びタンク101に戻してタンク101内に蓄積する。
一方、昼間にはタンク101内の水和物スラリ105をポンプ106によって空調器107に移送する。空調器107に移送された水和物スラリ105は空気などの媒体と熱交換されて液となり、再びタンク101へ戻る。
【0003】
ここで、水和物スラリとは、例えば特開平11−264681号公報に示された包接水和物のことであり、水分子(ホスト分子)で構成された籠状の包接格子内に以下のようなゲスト分子が包み込まれて結晶化する化合物をいう。ゲスト分子として、テトラn−ブチルアンモニウム塩、テトラiso−アルミアンモニウム塩、テトラn−フォスフォニウム塩、トリiso−アルミサルフォニウム塩の例として、テトラn−ブチルアンモニウム塩としてフッ化テトラn−ブチルアンモニウム(n−C494NF),塩化テトラn−ブチルアンモニウム((n−C494NCl),臭化テトラn−ブチルアンモニウム((n−C494NBr)などがある。
【0004】
そして、このような水和物スラリは、熱交換効率が高いので、熱交換器をコンパクトにでき、さらにコストも安いという利点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図26に示した従来例においては、液102と水和物スラリ105を同一のタンク101内に貯蔵しているため、液102と水和物スラリ105が直接接触し、容易に熱交換して水和物スラリが融解する。その結果、蓄冷媒体である水和物スラリ105の量が減少するという問題があった。
【0006】
また、液102と水和物スラリ105が混在するタンク101から水和物スラリ105を払出す際、水和物スラリ105の粘度が液102と大きく異なる場合には流動性の良い液102のみが払出される傾向がある。すなわち、図27に示すように、水和物スラリ105内にスラリ払い出し用の配管109を挿入して水和物スラリ105を払い出そうとした際に、スラリ層内に水道111が形成されて液102のみが払い出され、水和物スラリ105をタンク101から払出せないという問題があった。
【0007】
本発明は係る問題点を解決するためになされたものであり、水和物スラリの融解を防止すると共に、水和物スラリの円滑な払い出しを可能とする、水和物スラリの水道発生防止方法および水和物スラリの払出し方法、並びに貯蔵タンクを得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る水和物スラリの水道発生防止方法は、水和物を生成し得る液から製造された水和物スラリが貯蔵されたスラリタンクから当該水和物スラリを払出す際に水道の発生を防止する、水和物スラリの水道発生防止方法であって、
前記スラリタンクとは別のタンクに前記液を貯蔵することを特徴とする。
【0009】
(2)本発明に係る水和物スラリの水道発生防止方法は、第1タンク及び第2タンクを備える貯蔵タンクに貯蔵されている水和物スラリを生成し得る液及び該液から生成された水和物スラリのうち、前記水和物スラリを前記貯蔵タンクから払出す際に水道の発生を防止する、水和物スラリの水道発生防止方法であって、
前記液及び前記水和物スラリをそれぞれ前記第1タンク及び前記第2タンクに貯蔵するとともに、前記第1タンク及び前記第2タンクを隣接して配置する、又は前記第1タンク内に前記第2タンクを設置することを特徴とする。
【0010】
(3)本発明に係る水和物スラリの払出し方法は、水和物を生成し得る液から生成された水和物スラリが貯蔵されたスラリタンクから前記水和物スラリを払い出す、水和物スラリの払出し方法であって、
前記スラリタンクとは別のタンクに前記液を貯蔵することを特徴とする。
【0011】
(4)本発明に係る貯蔵タンクは、水和物を生成し得る液及び該液から生成された水和物スラリをそれぞれ貯蔵する貯蔵タンクであって、
該貯蔵タンクが第1タンク及び第2タンクを備え、
前記第1タンクと前記第2タンクとが隣接している、又は前記第1タンク内に前記第2タンクが設置されているとともに、
前記第2タンクの上方又は下方に、前記水和物スラリの払出しを可能にするスラリ払出口が備えられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、液と水和物スラリをそれぞれ別のタンクに貯蔵し、あるいは貯蔵タンクが第1タンク及び第2タンクを備え、各タンクに別々に貯蔵するようにしたので、液と水和物スラリが接触することがなく水和物スラリの融解が防止でき、また、液と水和物スラリの粘度の違いに起因する水路の形成を防止して水和物スラリの円滑な払い出しを実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1の説明図であり、従来例を示した図26と同一部分又は相当する部分には同一の符号を付している。
この実施の形態1においては、図1に示すように、液102を貯蔵する液タンク1と水和物スラリ105を貯蔵するスラリタンク3を別々に設け、液タンク1に液受入ロ19および払出口21を、スラリタンク3にスラリ受入口23および払出口25をそれぞれ設けたものである。
このように、液タンク1とスラリタンク3を別々に設けることにより、液102と水和物スラリ105の接触が防止でき水和物スラリ105の液102による融解を防止できる。また、液102と水和物スラリ105をそれぞれ別タンクに貯蔵するので、両者が同一のタンク内にある場合のように粘度の違いによる水道の形成による水和物スラリの払い出しが困難になるという問題も生じない。
【0014】
実施の形態2.
図2は本発明の実施の形態2の説明図である。実施の形態2においては、液タンクとスラリタンクを別々に設けるのではなく、1つのタンク5の内部に隔壁(又は隔膜)7を設けることによりタンク5の内部を分割し、分割されたタンク内領域ABのそれぞれに液102または水和物スラリ105の受入口19,23および払出口21,25をそれぞれ設けたものである。
【0015】
隔壁(又は隔膜)7を断熱性の高い材質にすることにより、隔壁(又は隔膜)7の近傍における液102と水和物スラリ105の熱交換を低減することができ、蓄熱槽効率の低下を抑制することができる。この点は、隔壁又は隔膜あるいは分離板を設ける以下の実施の形態において共通である。
【0016】
実施の形態3.
図3は本発明の実施の形態3の説明図である。実施の形態3においては、タンク5内にタンク内を左右に分割すると共にタンク内壁に沿って左右に移動できる可動式分離板9を設けたものである。そして、可動式分離板9の周縁部にフレキシブルなシール部材11を設け、可動式分離板9とタンク内壁との間をシールしている。さらに、可動式分離板9の移動をスムーズにするために、可動式分離板9をガイドするガイドロッド13をタンク内に設けている。
【0017】
可動式分離板9及びシール部材11に断熱性の高い材質を選定することで、水和物スラリ105と液102の熱交換を低減することができ、水和物スラリ105の融解を抑制することができる。
また、可動式分離板9とシール部材11に不透水性の材質を選定することで、液領域から水和物スラリ領域への水道の形成を防止することができ、上記実施の形態2と同様に、水和物スラリ層内からの水和物スラリ払出が容易となる。
【0018】
なお、シール部材11はタンク内壁と可動式分離板9の隙間をシールして、領域AB間の液・水和物スラリ通過を遮断する目的で設けているが、領域AB間の液・水和物スラリ通過量が微小であり、水和物スラリの受入・払出サイクルが24時間程度であれば、水和物スラリ払出時に水道が形成されないため、領域AB間の液・水和物スラリ通過量を完全にゼロにする必要はなく、また、水和物スラリの状態(粘度)によってはシール部材は不要となる。この点は、同様の構成を有する以下の実施の形態においても同様である。
【0019】
本実施の形態においては、タンク内を移動できる可動式分離板9を設けることにより、液102と水和物スラリ105の量に応じてタンク内の容積を調整でき、タンクの容積を有効に活用することができる。
【0020】
実施の形態4.
図4は本発明の実施の形態4の説明図である。実施の形態4においては、図4に示すように、タンク5内にタンク内を上下に分割すると共にタンク内壁に沿って上下に移動できる可動式分離板15を設けたものである。可動式分離板15の周縁部にはフレキシブルなシール部材17を設け、可動式分離板15とタンク内壁との間をシールしている。
【0021】
可動式分離板15によって分離されたタンク内の各領域ABにそれぞれ液102、水和物スラリ105を貯蔵する。そして、領域Aに対して液102の受入口19および払出口21を設け、領域Bに対して水和物スラリ105の受入口23および払出口25を設けている。
【0022】
ここで空調システム可動時の動作について説明する。
領域A内に液102が貯蔵され、領域Bに水和物スラリは存在しない状態では可動式分離板15はタンク上部に位置している。
この状態から夜間の安価な電力を用いてポンプ103、スラリ製造器104(図1参照)を起動して水和物スラリを製造する。すなわち、領域Aの液払出口21から払い出された液102はスラリ製造器104によって水和物スラリとなり、スラリ受入口23から領域Bに受け入れられる。このとき、液払出量とスラリ受入量は等しく、領域Aの液減少量と等量の水和物スラリが領域Bに蓄積されていく。領域Aの液102が減少して領域Bの水和物スラリ105が増加するにしたがって可動式分離板15は除々に降下し、液102が全て払い出された状態では、可動式分離板15は最下位置になる。
このようにしてタンク5内は夜間に水和物スラリ105で満たされることになる。
【0023】
タンク5に貯蔵された水和物スラリ105の冷熱を活用する昼間には、領域Bの水和物スラリをポンプ106によって空調器107(図1参照)に移送して熱交換する。熱交換により冷熱を奪われた水和物スラリは液になり、液受入口19から領域Aに受け入れられる。
このとき、図4に示すように、タンク5内に液102と水和物スラリ105が存在することになるが、これらは断熱性能の高い可動式分離板15により仕切られているので、スラリ払出時に液部分から水道が形成されることはなく、また水和物スラリ105が融解することもない。
領域Bの水和物スラリ105がすべて払い出され、冷熱を奪われた液102が領域Aに受入られるにしたがって可動式分離板15は除々に上昇して、全ての水和物スラリ105が払い出されると最上位置である初期の状態に戻る。
【0024】
以上のように、夜間のスラリ製造時、昼間のスラリ消費時において、タンク5内の液・スラリの総量は変化せず、タンク5内の液・スラリの比率が変化するだけである。したがって、上記のように領域Aに液102、領域Bに水和物スラリ105を貯蔵する場合、水和物スラリ105と液102の密度がほぼ等しければ領域Bの液面レベルは変化しない。したがって、タンクの高さ、水和物スラリ払出口高さを適切に設計すれば、タンク上部から液が溢れ出すことはなく、水和物スラリ払出口25が水和物スラリ液面より上側に出てしまうこともない。
また、タンク5を上下に分割することで、タンク5の容量を有効に活用することができる。
【0025】
なお、可動式分離板15が上下動の際に傾くのを防止するために、図5に示すように、タンク5内に上下に延びるガイドロッド27を設け、可動式分離板15をガイドさせるようにしてもよい。
また、可動式分離板15の傾きを防止する他の手段として、図6に示すように、タンク上部に設置したワイヤ巻取装置29に接続したワイヤ31を可動式分離板15の周縁部に固定し、可動式分離板15が領域Bの液面とほぼ平行になるようにワイヤ長さを調節するようにしてもよい。
【0026】
また、領域Aの液102が微量になると、可動式分離板15が最下位置に移動して液受入口・払出口19,21が可動式分離板15によって閉塞することが考えられる。そこで、図7に示すように、液受入口・払出口19,21の上方に複数の棒材33の上端に板材35を設置した閉塞防止手段37を設け、可動式分離板15が閉塞防止手段37の板材35の位置よりも下降できなくなるようにしてもよい。
【0027】
ところで、タンク5の底に閉塞防止手段37を設けると、可動式分離板15が閉塞防止手段37に当接した位置よりも下降できなくなるため、タンクの内容積の有効利用が妨げられる。
そこで、図8に示すように、可動式分離板15における閉塞防止手段37と当接する中央部に開口部を設け、該開口部にフレキシブルなシート39を余裕をもって設置するようにしてもよい。これによって、可動式分離板15が下降した際に、シート39が閉塞防止手段37に当接した後も、シート39の余裕の分だけ可動式分離板15が下降できる。これによって、タンク5の内容積をより有効に活用できる。
なお、この閉塞防止手段37は可動式分離板15側に設けるようにしてもよい。また、特に、閉塞防止手段37のようなものを設けずに、領域Aに液102を少量残すような運用をしてもよい。
【0028】
実施の形態5.
水和物スラリの粘度が極めて高い場合に上方から吸い出すような方法では、図9に示すように、安息角が大きくなり、水和物スラリ105を払い出せなくなる場合がある。したがって、このような粘度が極めて高い水和物スラリ105は下から払出すようにする。
【0029】
この場合、図10に示すように、可動式分離板41を安息角以上の傾斜を有するホッパ状にすると共に、その中央部に水和物スラリ105の払出口25を設けるようにする。
このようにすることで、粘度の高い水和物スラリを効果的に払出すことができる。
また、図11に示すように、ホッパの傾斜角を可変式にして、水和物スラリの量が少ない場合には傾斜が大きくなるようにしてもよい。これによって、より効果的な水和物スラリの払い出しが可能となる。
【0030】
なお、ホッパ形状は図10、図11に示した円錐形の他に、図12に示すような角錐台の頭を切ったような形状のもので、頭の一端側に傾斜するような形状のものでもよい。
【0031】
ホッパ形状の傾斜角を大きくすると、領域Aにおける傾斜部の下方の部分が常に空領域となり、領域Aに液102が存在しない場合にも空間として存在しているためにタンク5の効率的な使用が妨げられることになる。
そこで、このような場合には、図13に示すように、ホッパ形状を複数設けて各ホッパ形状に水和物スラリの払出口25をそれぞれ設けるようにしてもよい。これによって、タンク5の効率的な使用を確保しつつ粘度の高い水和物スラリを効果的に払出すことができる。
【0032】
なお、ホッパの形状は特定ものに制限されるものではなく、またホッパを形成する材料についても硬質でもフレキシブル質でもよい。
【0033】
実施の形態6.
図14は本発明の実施の形態6の説明図である。この実施の形態6においては、図14に示すように、タンク5の内部に別の内タンク43を設け、内部に設けた内タンク43をスラリ用として、タンク5を液用として用いるようにしたものである。そして、液タンクとなるタンク5には液受入ロ19および払出口21を、スラリタンクとなる内タンク43にスラリ受入口23および払出口25をそれぞれ設けている。
【0034】
このように、タンクを2重構造にすることによって、タンク内を分離した上記の実施の形態と同様に、水和物スラリ105の液102による融解の防止、及び水路の形成による水和物スラリの払い出しが困難になるという問題の発生を防止できる。
【0035】
実施の形態7.
上記の実施の形態6のように、タンク5の中に剛体のタンク43を挿入した2重構造にすると、各タンクで液又は水和物スラリを全量貯蔵できるようにする必要があることから、タンク5,43の容積が大きくなるという問題がある。
そこで、タンクの内容積の有効活用するために本実施の形態7においては、図15に示すように、タンク5内にフレキシブルな袋状容器45を設け、袋状容器45の周縁部をタンク上部に固定し、袋状容器45によって分離された内部の領域B、及びタンク5内であって袋状容器45の外側の領域Bをそれぞれ大気開放させ、さらに領域A及びBに液あるいはスラリの受入口19,23および払出口21,25をそれぞれ設けたものである。
【0036】
フレキシブルな袋状容器45は、断熱性が高く不透水性の材質で形成している。これによって、水和物スラリ105の液102による融解の防止、及び水路の形成による水和物スラリの払い出しが困難になるという問題の発生を防止できる。
【0037】
本実施の形態の具体的な動作について説明する。
領域Aに液102のみが貯蔵されている状態においては、袋状容器45は収縮して領域Bの容積は微小になっている。
この状態から夜間の安価な電力を用いてポンプ103、スラリ製造器104(図1参照)を起動して水和物スラリを製造する。すなわち、領域Aの液払出口21から払い出された液102はスラリ製造器104によって水和物スラリとなり、スラリ受入口23から領域Bに受け入れられる。このとき、液払出量とスラリ受入量は等しく、領域Aの液減少量と等量の水和物スラリが領域Bに蓄積されていく。領域Aの液102が減少して領域Bの水和物スラリ105が増加するにしたがって袋状容器45は除々に膨らんでゆき、液102が全て払い出された状態では、袋状容器45は最も膨らんだ状態になって、タンク5内を満たすことになる。
このようにして夜間にタンク5内の袋状容器45は水和物スラリ105で満たされることになる。
【0038】
袋状容器45に貯蔵された水和物スラリ105の冷熱を活用する昼間においては、領域Bの水和物スラリをポンプ106によって空調器107(図1参照)に移送して熱交換する。熱交換により冷熱を奪われた水和物スラリは液となり、液受入口19から領域Aに受け入れられる。
このとき、図15に示すように、タンク5内に液102と水和物スラリ105が存在することになるが、これらは断熱性能の高い袋状容器45により仕切られているので、スラリ払出時に液部分から水道が形成されることはなく、また水和物スラリ105が融解することもない。
領域Bの水和物スラリ105がすべて払い出され、冷熱を奪われた液102が領域Aに受入られるにしたがって袋状容器45は除々に萎んでゆき、全ての水和物スラリ105が払い出されると最も萎んだ初期の状態に戻る。
【0039】
以上の一連の状態において、袋状容器45には領域Aの液102と領域Bの水和物スラリ105の圧力ヘッドが作用する。したがって、容器収縮に必要な力が無視できるほど小さく、水和物スラリ105と液102の密度差が微小であれば、領域ABの液面レベルはほぼ等しくなり、貯蔵タンク容量を有効に活用することができる。
また、液102や水和物スラリ105を受け入れる際、エアが混入する可能性があるが、領域ABはともに大気に開放されているため、タンク5及び袋状容器45内にエア溜りが形成されることはなく、エア溜りによる容積の有効利用が妨げられることもない。
【0040】
また、袋状容器45の底部に、図16に示すように、底板47を設け、この底板47が上下に可動できるようにしてもよい。こうすることによって、袋状容器45が一定の形状を保って膨張収縮できるので、袋状容器45内の水和物スラリ105を確実に払い出すことができる。
なお、上下動の際に底板47が傾くのを防止するために、図17に示すように、タンク5内に上下に延びるガイドロッド49を設け、底板47の上下動の際にガイドさせるようにして底板47が傾くのを防止するようにしてもよい。
また、あるいは図18に示すように、タンク5内に上下に延びるガイドレール51を設けると共に、底板47の周面にガイドローラ53を設け、上下動の際にガイドレール51上をガイドローラ53が移動するようにしてもよい。
【0041】
底板47の傾きを防止する他の手段として、図19に示すように、タンク上部に設置したワイヤ巻取装置55に接続したワイヤ49を底板15の周縁部に固定し、底板47がタンク5の底面とほぼ平行になるようにワイヤ長さを調節するようにしてもよい。
【0042】
また、領域Aの液102が微量になると、底板47が最下位置に移動して液受入口・払出口19,21が底板47によって閉塞することが考えられるが、この場合には図7で示した閉塞防止手段37を設けるようにすればよい。
【0043】
実施の形態8.
水和物スラリの粘度が極めて高い場合に上方から吸い出すような方法では、図20に示すように、安息角が大きくなり、水和物スラリ105を払出せなくなる場合がある。したがって、このような粘度が極めて高い水和物スラリ105は下から払出すようにする。
【0044】
この場合、図21に示すように、袋状容器45の底部59を安息角以上の傾斜を有するホッパ状にすると共に、その中央部に水和物スラリ105の払出口25を設けるようにする。
このようにすることで、粘度の高い水和物スラリを効果的に払出すことができる。
【0045】
また、図22に示すように、ホッパ状の底部59の払出口25をフレキシブルな配管60にすると共にホッパの傾斜角を可変式にして、水和物スラリの量が少ない場合には傾斜が大きくなるようにしてもよい。これによって、より効果的な水和物スラリの払い出しが可能となる。
なお、ホッパ形状としては、前述した図11、図12に示したものを使用することができる。
【0046】
ところで、ホッパ形状の傾斜角を大きくすると、領域Aにおける傾斜部の下方の部分が常に空領域となり、領域Aに液102が存在しない場合にも空間として存在しているためにタンク5の効率的な使用が妨げられることになる。
そこで、このような場合には、図23に示すように、ホッパ形状を複数設けて各ホッパ形状に水和物スラリの払出口25をそれぞれ設けるようにしてもよい。これによって、タンク5の効率的な使用を確保しつつ粘度の高い水和物スラリを効果的に払出すことができる。
【0047】
実施の形態9.
図24は実施の形態9の説明図である。この実施の形態9においては、袋状容器45の開口部をタンク5の側壁に固定して、袋状容器45がタンク5の幅方向に膨張・収縮するようにしたものである。なお、この場合にも、袋状容器45の上面に大気開放穴45aを設けている。
この実施の形態9においては、タンク5の下部であって袋状容器45の内部に通ずる位置に水和物スラリの払出口23、受入口25を設けることができる。したがって、袋状容器45の上部から水和物スラリを吸い上げて払い出す場合に比較してより確実な払い出しができる。
【0048】
なお、図25に示すように、袋状容器45の側面部に側板61を設け、タンク5の上下部に横方向に設けたガイドロッド63によって側板61をガイドするようにしてもよい。
これによって、袋状容器45の膨張・収縮をスムーズに行うことができる。
【0049】
なお、上記の実施の形態に示したタンク5の形状は直方体、円筒形、円錐形など様々なものが考えられ、適宜変更可能である。また、袋状容器45の形状について、上記の例では蛇腹状のものを示したがこれに限られず適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は以上であるから、液と水和物スラリが接触することがなく水和物スラリの融解が防止でき、また、液と水和物スラリの粘度の違いに起因する水路の形成を防止して水和物スラリの円滑な払い出しを実現するから、各種水和物スラリの払出し方法、および各種水和物スラリを払出す際の水道発生防止方法、並びに、水和物スラリを貯蔵する貯蔵タンクとして広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態1の説明図である。
【図2】本発明の実施の形態2の説明図である。
【図3】本発明の実施の形態3の説明図である。
【図4】本発明の実施の形態4の説明図である。
【図5】本発明の実施の形態4の他の態様の説明図である。
【図6】本発明の実施の形態4の他の態様の説明図である。
【図7】本発明の実施の形態4の他の態様の説明図である。
【図8】本発明の実施の形態4の他の態様の説明図である。
【図9】本発明の実施の形態5の解決すべき課題の説明図である。
【図10】本発明の実施の形態5の説明図である。
【図11】本発明の実施の形態5の他の態様の説明図である。
【図12】本発明の実施の形態5の他の態様の説明図である。
【図13】本発明の実施の形態5の他の態様の説明図である。
【図14】本発明の実施の形態6の説明図である。
【図15】本発明の実施の形態7の説明図である。
【図16】本発明の実施の形態7の他の態様の説明図である。
【図17】本発明の実施の形態7の他の態様の説明図である。
【図18】本発明の実施の形態7の他の態様の説明図である。
【図19】本発明の実施の形態7の他の態様の説明図である。
【図20】本発明の実施の形態8の解決すべき課題の説明図である。
【図21】本発明の実施の形態8の説明図である。
【図22】本発明の実施の形態8の他の態様の説明図である。
【図23】本発明の実施の形態8の他の態様の説明図である。
【図24】本発明の実施の形態9の説明図である。
【図25】本発明の実施の形態9の他の態様の説明図である。
【図26】従来例の説明図である。
【図27】従来例の課題の説明図である。
【符号の説明】
【0052】
1 液タンク
3 スラリタンク
5 タンク
7 隔壁(隔膜)
9,15,41 可動式分離板
43 内タンク
45 袋状容器
47 底板
59 底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水和物を生成し得る液から製造された水和物スラリが貯蔵されたスラリタンクから当該水和物スラリを払出す際に水道の発生を防止する、水和物スラリの水道発生防止方法であって、前記スラリタンクとは別のタンクに前記液を貯蔵することを特徴とする水和物スラリの水道発生防止方法。
【請求項2】
第1タンク及び第2タンクを備える貯蔵タンクに貯蔵されている水和物スラリを生成し得る液及び該液から生成された水和物スラリのうち、前記水和物スラリを前記貯蔵タンクから払出す際に水道の発生を防止する、水和物スラリの水道発生防止方法であって、
前記液及び前記水和物スラリをそれぞれ前記第1タンク及び前記第2タンクに貯蔵するとともに、前記第1タンク及び前記第2タンクを隣接して配置する、又は前記第1タンク内に前記第2タンクを設置することを特徴とする水和物スラリの水道発生防止方法。
【請求項3】
水和物を生成し得る液から生成された水和物スラリが貯蔵されたスラリタンクから前記水和物スラリを払い出す、水和物スラリの払出し方法であって、
前記スラリタンクとは別のタンクに前記液を貯蔵することを特徴とする水和物スラリの払出し方法。
【請求項4】
水和物を生成し得る液及び該液から生成された水和物スラリをそれぞれ貯蔵する貯蔵タンクであって、
該貯蔵タンクが第1タンク及び第2タンクを備え、
前記第1タンクと前記第2タンクとが隣接している、又は前記第1タンク内に前記第2タンクが設置されているとともに、
前記第2タンクの上方又は下方に、前記水和物スラリの払出しを可能にするスラリ払出口が備えられていることを特徴とする貯蔵タンク。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2007−51867(P2007−51867A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312786(P2006−312786)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【分割の表示】特願2000−118847(P2000−118847)の分割
【原出願日】平成12年4月20日(2000.4.20)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】