説明

水垢固着防止製品、及びその製造方法

【課題】水垢固定防止効果が高くかつその持続性が高く、付着した水垢を容易に除去できるコーティング膜を有する製品及びその製造方法の提供。
【解決手段】製品基体の表面に、Si含有成分とZr含有成分を含む塗布液を塗布し、熱処理してSi酸化物成分及びZr酸化物成分を有する被膜形成物質からなる第1層を形成し、その上にSi含有成分と、水に溶解若しくは分散するポリマー及び/又はモノマーから選ばれる有機物成分を含む塗布液を塗布し熱処理して、Si酸化物成分と前記有機物成分とを含む第2層を形成して、水垢固着防止コーティング層を有する製品を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水垢の固着が防止された水垢固着防止製品、及びその製造方法に関し、特に、水垢防止効果の持続性に優れ、水垢が製品基体表面に固着しても容易に取り除くことが可能な水垢固着防止製品、及びその製造方法に関するものである。
本発明において、「水垢の固着」とは、「水垢が各種の製品基体表面に付着し、付着した水垢が固化しても製品基体から容易に取り除くことができない」状態を意味する。また、本発明において、「水垢固着防止」とは、「固着した水垢を製品基体から容易に取り除くことができる」ことを意味する。
【背景技術】
【0002】
水垢の固着による汚れは、キッチン、バスルーム、トイレ、洗面所など水が付着し乾燥する条件のあらゆる場所で認められる。水垢は、水に溶解した無機成分が水の蒸発に伴い析出したものであり、特に長期的に放置された場合、これを取り除くことができなくなるほど強固に固化してしまう。薬品や研磨剤などを用いて固着した水垢を無理に取り除こうとすると、製品基体を傷めてしまうという不都合を生ずる。
【0003】
従来、水垢の固着防止を目的として、撥水性コーティング膜あるいは親水性コーティング膜を製品基体の表面に形成することが提案されている。
【0004】
例えば、前記の親水性コーティング膜を製品基体表面に形成した水垢固着防止製品として、特許文献1,2,3には、Li含有シリカ質膜中にポリアクリル酸またはポリアクリル酸モノマーを含む共重合体を含ませて、製品基体表面との接着性に優れた親水性膜を形成した水垢固着防止製品が開示されている。
【0005】
また、特許文献4には、酸性、中性、アルカリ性の各種洗剤及び薬剤に対して耐久性に優れた、Zr含有シリカ質膜中にポリエチレングリコールを含有する親水性コーティング膜が開示されており、これは水垢等の汚れ付着を防止しまた汚れが付着しても落ち易いとされている。
【0006】
更に、特許文献5,6には、製品基体表面に、二酸化珪素とジルコニアを含有する被膜を形成し、この被膜中にリチウムイオンを拡散させて、分散含有させることによって得られ、表面の耐アルカリ性に優れた親水性コーティング膜が開示されている。
【特許文献1】特開2003−301273
【特許文献2】特開2003−299606
【特許文献3】特開2002−302637
【特許文献4】特開2005−281443
【特許文献5】特開2002−019007
【特許文献6】特開2006−015754
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の背景技術に係る水垢固着防止コーティング膜にあっては、次のような問題点があった。
【0008】
即ち、撥水コーティング膜上で水は水玉となり、傾斜面ではこの水玉が転落するため水垢の固着は防止される。しかし、水平面では水玉は留まり、そのまま水が蒸発すると、水玉の跡が水垢となり、著しく水垢が目立った状態となって残ってしまう。さらに、長期間の放置で水玉発生・乾燥を繰り返しているとこの水垢が強固に固着し、取り除くことができなくなってしまう。
【0009】
一方、親水性コーティング膜では、コーティング上で水はうすく広がるため、これが乾燥して水垢が析出しても非常に目立ちにくくなる。しかし、長期間の放置で濡れ乾燥を繰り返していると、水垢が厚さを増し、やはり強固に固着して取り除くことが出来なくなってしまう。
上記の背景技術にあっては、いずれも、水垢汚れに対してある一定の効果は示すものの、長期間使用された場合、製品基体表面に強固に固着して取り除くことができなくなるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記の背景技術が有する問題点に鑑みてなされたものであり、水垢固着防止効果が長期間にわたって持続し、水垢固着防止効果に優れ、かつ付着した水垢を容易に取り除くことができる水垢固着防止コーティング膜を備えた水垢固着防止製品、及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意、検討したところ、珪素酸化物成分とジルコニウム酸化物成分とを有する被膜形成物質からなる第1層上に、水に溶解若しくは分散するポリマー及び/またはモノマーを含む有機物成分と珪素酸化物成分を含む被膜形成物質からなる第2層を形成することにより、水垢の固着防止効果に優れ、かつ付着した水垢を容易に除去することができる水垢固着防止コーティング膜が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明の水垢固着防止製品は、製品基体と、前記基体の表面に形成された水垢固着防止コーティング膜とを含み、
前記水垢固着防止コーティング膜は、珪素酸化物成分とジルコニウム酸化物成分とを有する被膜形成物質からなる第1層と、前記第1層上に形成され、かつ、珪素酸化物成分と、水に溶解若しくは分散するポリマー及び/又はモノマーから選ばれた少なくとも1種を含む有機物成分とを含む被膜形成物質からなる第2層とを含むことを特徴とするものである。
本発明の水垢固着防止製品において、前記第2層用有機物成分は、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、アクリル系ポリマーまたはモノマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びカルボキシメチルセルロースから選ばれた1種以上を含むことが好ましい。
【0013】
また、本発明の水垢固着防止製品の製造方法は、製品基体の表面上に、シリカゾル、シリコンアルコキシド及びその部分加水分解生成物、並びに珪酸塩から選ばれた少なくとも1種を含む珪素含有成分と、ジルコニアゾル、ジルコニウムアルコキシド及びその部分加水分解生成物、並びにジルコニウム塩から選ばれた少なくとも1種を含むジルコニウム含有成分とを含む塗布液を塗布し、熱処理してその熱処理により生成した熱処理生成物からなる第1層を形成し、
さらに、前記第1層上に、シリカゾル、シリコンアルコキシド及びその部分加水分解生成物、並びに珪酸塩から選ばれた少なくとも1種を含む珪素含有成分と、水に溶解若しくは分散するポリマー及び/又はモノマーから選ばれた少なくとも1種を含む有機物成分とを含む塗布液を塗布し、熱処理してその熱処理生成物からなる第2層を形成し、それによって水垢固着防止コーティング層を形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水垢固着防止製品は、優れた水垢固着防止効果が長期間にわたって持続し、水垢を簡単な操作で容易に取り除くことができる。このため固着した水垢を取り除くために強い薬品や、研磨剤は不要であり、労力を削減し、環境への負荷も小さいという効用を有する。
また、本発明の水垢固着防止製品の製造方法は、上記の効果を奏する水垢固着防止製品を簡便にかつ効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
「水垢固着防止製品」
まず、水垢固着防止製品の実施の形態について説明する。本発明の水垢固着防止製品の特徴は、製品基体の表面上に形成された第1層と、この第1層上に形成されて第2層とからなる2層構造の水垢固着防止コーティング層を有していることにある。
前記第1層は、珪素酸化物成分とジルコニウム酸化物成分とを有する被膜形成物質からなり、前記第2層は、珪素酸化物成分と、水に溶解若しくは分散するポリマー及び/又はモノマーの少なくとも1種を含む有機物成分とを有する被膜形成物質からなるものである。
前記製品基体には、格別の制限はなく、例えばガラス、陶磁器、セラミックス等の無機製品、プラスティック等の有機製品、ステンレススチール等の金属製品を包含する。
【0016】
前記第1層は、この第1層上に形成される第2層に高い耐水性を付与するためのものであり、珪素酸化物成分とジルコニウム酸化物成分とを含む被膜形成物質からなり、例えば、下記の(1)〜(4)のような被膜形成物質、またはその混合物質を包含する。
(1)珪素(Si)原子とジルコニウム(Zr)原子が酸素(O)原子を介して結合して、下記(式1)に示される構造を含み、例えば(式2)で示される化学結合を分子骨格中に有する珪素−ジルコニウム酸化物から構成され、これらの珪素−ジルコニウム酸化物が三次元網目構造を形成してなる被膜形成物質からなるもの。
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−Si−O−Zr−O− … (式1)
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−Si−O−Si−O−Zr−O− … (式2)
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【0017】
(2)珪素(Si)原子同士が酸素(O)原子を介して結合し、下記(式3)で示される化学結合を分子骨格中に有する珪素酸化物から構成され、これらの珪素酸化物が三次元網目構造が形成し、この三次元網目構造中に遊離ジルコニウム酸化物の微粒子が分散し閉じ込められた被膜形成物質からなるもの。
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−Si−O−Si−O− … (式3)
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(3)ジルコニウム(Zr)原子同士が酸素(O)原子を介して結合し、下記(式4)で示される化学結合を分子骨格中に有するジルコニウム酸化物から構成され、これらのジルコニウム酸化物が三次元網目構造を形成し、この網目構造中に、珪素酸化物の微粒子が分散し、閉じ込められた被膜形成物質からなるもの。
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−Zr−O−Zr−O− … (式4)
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(4)珪素酸化物とジルコニウム酸化物との微粒子が互に分散混合している被膜からなるもの。
本発明の水垢固着防止製品の第1層において、上記珪素−ジルコニウム酸化物構造(1)を有する化合物、珪素酸化物構造を有する化合物(2)及び(4)、並びにジルコニウム酸化物構造を有する化合物(3)及び(4)は、強固な一体の被膜を形成する。このような本発明の第1層被膜を本明細書において、「珪素酸化物成分とジルコニウム酸化物成分とを含む被膜形成物質からなる第1層」と記す。
【0018】
前記の第1層中に含まれる珪素(Si)とジルコニウム(Zr)の質量比率は、珪素(Si)を二酸化珪素(SiO2)に換算し、ジルコニウム(Zr)を酸化ジルコニウム(ZrO2)に換算した場合、1:9〜9:1の範囲内にあることが好ましい。前記第1層に含有される珪素(Si)とジルコニウム(Zr)の質量比率がこの範囲を外れると、前記第1層および第2層から構成される水垢固着防止コーティング膜の膜硬度及び、耐水性が不十分になることがある。
【0019】
また、前記第1層には、珪素(Si)とジルコニウム(Zr)と酸素(O)以外に、副成分としてMg,Ca,Zn,Al,P,Ti成分の1種以上が含有されていてもよい。これらの副成分が第1層中に含有される場合、前記第1層および第2層から構成される水垢固着防止コーティング膜の膜硬度、耐水性が更に向上したものとなる。
前記副成分の含有量は、珪素(Si)を二酸化珪素(SiO2)に換算し、ジルコニウム(Zr)を酸化ジルコニウム(ZrO2)に換算した場合の、二酸化珪素(SiO2)と酸化ジルコニウム(ZrO2)の合計量に対して、0.01質量%以上かつ10質量%以下の範囲内にあることが好ましい。前記の副成分の添加量が0.01質量%を下回ると副成分を添加する意味がなく、一方、10質量%を上回ると前記第1層および第2層から構成される水垢固着防止コーティング膜の膜強度、耐水性を低下させる虞がある。
【0020】
更に、前記第1層は、前記珪素−ジルコニウム酸化物成分及び/又は珪素酸化物成分及び/または前記ジルコニウム酸化物成分が、ゾル粒子を含むコーティング液から供給され、熱処理によって形成されたものであることが好ましい。
前記第1層が、ゾル粒子を含むコーティング液から形成されると、膜質が緻密となり、膜強度も大きく、更に、第1層が薄膜化されて透明となり製品基体の色相等の意匠性を、第1層が低下させることがなくなる或は少なくなるので好ましい。
【0021】
更に、前記第1層の膜厚には、格別の制限はないが、通常、0.01μm以上かつ2μm以下であることが好ましい。第1層の膜厚が0.01μm未満になると、第1層上に形成される第2層の耐水性の向上が充分でなく、一方、第1層の膜厚が2μmを超えると第1層被膜が剥離したり、白化したりすることがあるので好ましくない。
【0022】
前記第2層は、前記第1層上に形成され、かつ、珪素酸化物成分を含む被膜であり、かつ、この被膜中には、水に溶解若しくは分散するポリマー及び/又はモノマーから選ばれた1種以上を含む有機物成分を含有しており、直接水垢と接触する表面を形成している。
【0023】
水垢の固着メカニズムは、水に溶解した無機成分(珪酸成分、カルシウム成分、マグネシウム成分等)が析出し、長期間の放置によって蓄積、固化することによるものと考えられるが、無機成分中、珪酸成分の含有量が比較的多い場合は、析出物は珪酸質となり、これは酸やアルカリに対して容易には溶解しないため、極めて取り除くことが困難になる。
前記第2層の主成分は、水垢の主成分の1種である珪酸成分と同質であり、これ自体は水垢中の珪酸成分と容易に直接結合するため水垢が固着しやすいが、前記第2層中に水に溶解若しくは分散するポリマー及び/又はモノマーから選ばれた少なくとも1種の有機物成分が含まれると水垢の固着が緩和され、簡単に取り除くことができるようになる。
【0024】
前記の水に溶解若しくは分散するポリマー及び/またはモノマーの1種以上を含む有機物成分は、水に溶解若しくは分散するポリマー及び/またはモノマーであれば特に制限されるものではないが、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、アクリル系ポリマーまたはモノマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等を例示することができ、これらの化合物は特に水垢固着防止効果に優れているので、好適に使用できる。
【0025】
前記ポリアクリル酸、又はポリアクリル酸塩としては、重量平均分子量が1000〜100万のものは特に水垢固着防止効果に優れているので本発明に好適である。ポリアクリル酸の塩としては、ポリアクリル酸のナトリウム塩、カリウム塩等を例示することができる。
前記のアクリル系ポリマーまたはモノマーとしては、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチルが重合したポリマーが特に水垢固着防止効果に優れているので好適である。メタクリル酸−2−ヒドロキシエチルは、本発明の製造工程における熱処理中に容易に架橋反応を起こして、その全量または一部分量がポリマー化される。
前記のポリエチレングリコールとしては、重量平均分子量が200〜20000のものが特に水垢固着防止効果に優れているので好適である。
【0026】
前記第2層中における、珪素酸化物と、水に溶解若しくは分散するポリマー及び/またはモノマーから選ばれた少なくとも1種を含む有機物成分との比率は、珪素酸化物を二酸化珪素(SiO2)に換算した場合、この二酸化珪素(SiO2)に対して0.1質量%〜100質量%であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%〜50質量%である。前記有機物成分の添加量が0.1質量%未満であると充分な水垢固着防止効果が得られず、一方、前記有機物成分の添加量が100質量%を超えると前記第1層および第2層から構成される水垢固着防止コーティング膜が白化する虞があるので好ましくない。
【0027】
前記第2層には、珪素酸化物成分と、前記有機物成分に加えて、さらにLi,Na,K,Mg,Ca,Zn,Al,P,Zrの1種以上の化合物からなる添加成分が含まれていてもよい。これらの添加成分が第2層中に含有されることにより、水垢の固着防止効果が更に向上することがある。
本発明において、水垢の固着防止効果が向上する理由は必ずしも明確ではないが、これらの添加成分は一旦第2層中の珪素酸化物成分と結合し、直接水垢中の珪酸イオンが、第2層中の珪素酸化物成分と結合するのを阻止するためと考えられる。
【0028】
また、前記第2層の珪素酸化物成分が珪酸アルカリ水溶液あるいはシリカゾル粒子を含むシリカゾル液を含む塗布層の熱処理により、形成されたものであることが好ましい。
前記第2層の珪素酸化物成分が、酸化珪素のゾル粒子を含むコーティング液から形成されると、得られる第2層の膜質が緻密となり、膜強度も大きく、更に、第2層が薄膜化されて透明となると、製品基体の色相等の意匠性が、第2層により低下することがなくなり、或は少なくなる。
【0029】
更に、前記第2層の膜厚には、格別の制限はないが、通常、0.01μm以上かつ2μm以下であることが好ましい。第2層の膜厚が0.01μm未満になると、水垢固着防止効果が不十分になることがあり、また、第2層の膜厚が2μmを超えると、形成された第2層膜が第1層から剥離したり、白化することがあるので好ましくない。
【0030】
本発明の水垢固着防止製品の上記実施態様において、水垢固着防止効果を発現するのは上述のとおり第2層であるが、この層だけでは実用性に優れた水垢固着防止コーティング膜にはなりえない。その理由は、第2層のみから構成される水垢固着防止コーティング膜は、耐水性が不十分であるためである。一般に水垢汚れが付着する場所は、水と頻繁に接触するところであるから、高い耐水性が要求される。第2層の主成分は珪素酸化物成分であるが、これは耐水性に乏しく、特にお湯やアルカリ洗剤に対して十分な耐水性を有していない。また、水溶性樹脂の耐水性も十分でない。また、副成分中のMg,Ca,Zn,Al,P,Zrは第2層の耐水性を向上させる作用があるが、これらを用いても、その耐水性はまだ十分ではない。
【0031】
従って、第2層の耐水性不足を補うためには第1層が必要不可欠である。第1層は、組成として、珪素酸化物成分とジルコニウム酸化物成分とを含有するが、珪素酸化物成分にジルコニウム酸化物成分が加わることにより第2層の耐水性が飛躍的に向上する。第1層は単に自身の高耐水性だけでなく、第2層の耐水性の向上にも貢献している。これは第1層と第2層との間で化学的な相互反応があるためと考えられる。
【0032】
また、本発明の水垢固着防止製品の上記実施形態において、前記のとおり、製品基体の表面に形成された水垢固着防止コーティング膜が前記第1層と前記第2層から構成されてなるものであるが、製品基体表面と前記第1層との間に密着性を向上させるための各種のプライマー層を介在させてもよく、更に、前記第1層と前記第2層との間にも密着性を向上させるためのプライマー層が介在していてもよい。
製品基体表面と前記第1層との間のプライマー層としては、シランカップリング剤からなる膜を例示することができる。
前記の第1層と前記第2層との間のプライマー層としては、珪酸アルカリ例えば珪酸ナトリウム、珪酸カリウムなど、からなる膜を例示することができる。
【0033】
「水垢固着防止製品の製造方法」
本発明の水垢固着防止製品の製造方法は、製品基体の表面上に、シリカゾル、シリコンアルコキシド及びその部分加水分解生成物、並びに珪酸塩から選ばれた珪素含有成分と、ジルコニアゾル、ジルコニウムアルコキシド及びその部分加水分解生成物、並びにジルコニウム塩から選択されるジルコニウム含有成分とを含む塗布液を塗布し、熱処理し、この熱処理生成物からなる第1層を形成する工程と、
次いで、前記第1層上に、シリカゾル、シリコンアルコキシド及びその部分加水分解生成物、並びに珪酸塩から選択される珪素含有成分と、水中に溶解若しくは分散するポリマー及び/又はモノマーから選ばれた少なくとも1種を含む有機物成分とを含む塗布液を塗布し、熱処理し、この熱処理の生成物として、珪素酸化物成分と前記有機物成分とを含む第2層を形成する工程、
から構成されている。
【0034】
以下、本発明の水垢固着防止製品の製造方法について具体的に説明する。
まず、前記の製品基体に、密着性の向上のため、洗浄またはプライマー、フレーム、コロナ放電処理などの公知技術による塗装前処理を施すのが好適である。
必要に応じて塗装前処理を行った後、製品基体の表面に第1層を形成する。第1層を形成する塗布液としては、シリカ(SiO2)ゾル、シリコンアルコキシド及びその部分加水分解生成物、並びに珪酸塩から選択された1種以上を含む珪素含有成分と、ジルコニア(ZrO2)ゾル、ジルコニウムアルコキシド及びその部分加水分解生成物、並びにジルコニウム塩から選ばれた1種以上を含むジルコニウム含有成分と、必要に応じて分散媒を含む塗布液を用いる。
【0035】
前記の第1層を形成する塗布液では、それに含まれる珪素及び/又はジルコニウム酸化物成分のうちの少なくとも1種の成分がゾルであることが好ましい。例えばシリカ(SiO2)ゾル、及び/又はジルコニア(ZrO2)のゾルを用いると、硬度の大きい膜が得られるので、シリカおよび/またはジルコニアのコロイド粒子分散液、あるいは、シリコンアルコキシドおよび/またはジルコニウムアルコキシドに酸を触媒とし、水を加えた部分加水分解液を用いるのが好適である。また、ゾル粒子を含む塗布液であると、塗装しやすいだけでなく、塗膜の硬化性も良好となる。
前記の加水分解用の触媒として酸としては、硝酸、塩酸等の無機酸を例示することができる。
【0036】
前記の珪酸塩としては、珪酸ナトリウム、珪酸リチウム、珪酸カリウム、珪酸アンモニウム等を例示することができる。
また、前記のジルコニウム塩として、オキシ硝酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム等を例示することができる。
【0037】
前記第1層形成塗布液用分散媒は、前記珪素含有成分とジルコニウム含有成分を溶解または分散させるものであり、例えば、水および有機溶剤あるいはこれらの混合物の使用が可能である。前記の有機溶剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類等を例示することができる。
【0038】
前記第1層を形成する塗布液中に含まれる珪素(Si)とジルコニウム(Zr)の質量比率は、珪素(Si)を二酸化珪素(SiO2)に換算し、ジルコニウム(Zr)を酸化ジルコニウム(ZrO2)に換算して、1:9〜9:1の範囲内にあることが好適であり、この範囲外であると、得られる第1層の硬度の不足あるいは耐水性の不足が生じることがある。
また、前記第1層を形成する塗布液中の固形分量、即ち、被膜形成成分量は1質量%以上かつ10質量%以下の範囲が好適であり、この範囲外であると塗布量の不足あるいは過剰による膜欠陥が生じやすい。
更に、前記第1層を形成する塗布液に、副成分として添加するMg,Ca,Zn,Al,P,Ti成分は、分散媒である水や有機溶剤に溶解または分散するものでなければならない。具体的には各元素金属の塩が好適である。添加量は塗布液中の固形分量、即ち、被膜形成成分合計量に対して1質量%以上かつ100質量%以下の範囲が好適であり、この範囲外であると十分な効果が得られず、或は耐水性や硬度を低下させる虞がある。
【0039】
前記第1層形成用塗布液を製品基体の表面に塗布する。塗布方法としては、公知のスプレー法、ディップ法、ロール法などが適用可能であり、特に制限はない。
そして、塗布膜を乾燥し、熱処理する。熱処理温度、熱処理時間は、基材に悪影響を与えない範囲内で可能な限り高温で、長時間熱処理することが被膜の膜強度、及び被膜の耐水性が高くなるので好適であるが、乾燥程度の熱処理温度での短時間の熱処理でも十分である。
具体的な熱処理温度は、通常、製品基体がガラス等の無機製品のときは室温〜500℃の温度が好適であり、80〜500℃であることがより好ましく、製品基体がプラスティックのときは室温〜150℃の温度が好適であり、80〜130℃であることがより好ましく、製品基体が金属のときは室温〜300℃の温度が好適であり、80〜300℃であることがより好ましい。
熱処理時の雰囲気は、特に制限はないが、通常、空気雰囲気である。
【0040】
次に、前記第1層上に第2層を形成する。第2層を形成する塗布液としては、シリカ(SiO2)ゾル、シリコンアルコキシド及びその部分加水分解生成物、並びに珪酸塩から選ばれた1種以上を含む珪素含有成分と、水に溶解若しくは分散するポリマー及び/又はモノマーから選ばれた1種以上を含む有機物成分と、必要に応じて分散媒を含む塗布液を用いる。ここに、前記の水に溶解若しくは分散する有機物成分としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、アクリル系ポリマーまたはモノマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等を例示することができる。
【0041】
前記の分散媒は、前記の珪素含有成分と、前記有機物成分とを溶解または分散させるものであり、水、有機溶剤、または水と有機溶剤の混合物の使用が可能である。
前記の有機溶剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類等を例示することができる。
珪酸含有成分としてシリコンアルコキシドを用いるときは、加水分解用の触媒として酸を含有していてもよい。このような酸としては、硝酸、塩酸等の無機酸を例示することができる。
【0042】
前記第2層を形成する塗布液では、珪素含有成分として珪酸アルカリ化合物及び/又はシリカ(SiO2)ゾルを用いるのが好適である。珪酸アルカリ化合物としては、珪酸リチウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸アンモニウムがあり、種々のモル比の製品が市販されており、これらの市販品を用いることができる。
前記の珪酸アルカリ化合物においてアルカリの種類には特に制限はないが、珪酸(SiO2)/アルカリ(R2O)のモル比は7.5〜1の範囲内が好適である。この範囲外であると第2層の耐水性の不足、及び成膜性が悪化することがある。
【0043】
前記第2層を形成する塗布液中の珪素含有成分の固形分濃度、即ち、被膜形成成分濃度は1〜20質量%が好適である。この範囲外であると、塗膜厚さが十分得られず、逆に粘度が大きくなりすぎて塗布が困難になる恐れがある。ゾル粒子としてはコロイダルシリカあるいはアルコキシシランの加水分解物が好適である。
前記第2層形成用の塗布液には、前記有機物成分を添加する。前記有機物成分の添加量は、珪素(Si)含有成分を二酸化珪酸(SiO2)に換算し、この二酸化珪素(SiO2)に対して0.1〜100質量%の範囲が好適である。この範囲外であると、十分な水垢固着防止効果が得られない、あるいは、過量過ぎてコーティング膜が白化する虞がある。
【0044】
前記第2層形成用の塗布液には、添加成分としてLi,Na,K,Mg,Ca,Zn,Al,P,Zrを添加してもよい。Li,Na,K添加の場合は、それらの珪酸アルカリを使用すれば自動的に賄われる。Mg,Ca,Zn,Al,P,Zrについては各元素の塩、あるいはアルコキシドを用いることが好適である。
これらの添加成分の添加量は、珪素含有成分と反応して沈殿やゲル化が生じない範囲とする必要がある。具体的には、珪素含有成分に対して、0.1〜20質量%の範囲である。この範囲外であると、十分な水垢固着防止効果が得られない、あるいは、過量過ぎて沈殿あるいはゲル化が生じる虞がある。
【0045】
本発明方法において、前記第2層形成用塗布液を、前記第1層上に塗布する。塗布方法としては、公知のスプレー法、ディップ法、ロール法などが適用可能であり、特に制限はない。そして、形成された塗布膜を乾燥し、熱処理する。熱処理温度、熱処理時間は、基材に悪影響を与えない範囲内で可能な限り高温で、長時間熱処理することが被膜の膜強度、被膜の耐水性が大きくなるので好適であるが、乾燥程度の熱処理温度での短時間の熱処理でも十分である。
具体的な熱処理温度は、通常、製品基体がガラス等の無機製品のときは室温〜500℃の温度が好適であり、80〜500℃であることがさらに好ましく、製品基体がプラスティックのときは室温〜150℃の温度が好適であり、80〜130℃であることがさらに好ましく、製品基体が金属のときは室温〜300℃の温度が好適であり、80〜300℃であることがさらに好ましい。
熱処理時の雰囲気は特に制限はないが、通常、空気雰囲気である。
なお、第2層の成膜前に、第1層上にプライマー層形成用塗布液を塗布し熱処理してプライマー層を形成しておき、その後第2層を成膜してもよい。これによって、第1層と第2層との密着性を高めることが可能となる。
【実施例】
【0046】
本発明を、下記実施例と比較例とにより詳細に説明する。
【0047】
実施例1
ジルコニウムアルコキシド10質量部、イソプロピルアルコール79質量部、30質量%のシリカゾルを含有するシリカゾル液10質量部、60質量%の硝酸水溶液1質量部を混合して第1層形成用塗布液を調製した。この第1層形成用塗布液をステンレス鋼基板の表面に、熱処理後の膜厚が0.5μmになるようローラー塗布し、250℃の空気雰囲気中で30分間熱処理して、珪素酸化物成分とジルコニウム酸化物成分とを有する被膜からなる第1層を形成した。この第1層は、ステンレス基板に強固に結着した被膜であった。
次に、3号珪酸ナトリウム溶液50質量部、水49質量部、重量平均分子量が6000のポリアクリル酸ナトリウム1質量部を混合して第2層形成用塗布液を調製した。この第1層形成用塗布液を前記第1層上に、熱処理後の膜厚が0.5μmになるようローラー塗布し、250℃の空気雰囲気中で30分熱処理して、珪素酸化物とポリアクリル酸ナトリウムとが含有された第2層を形成して、実施例1の水垢固着防止製品を作製した。第2層は、第1層に強固に結着していた。
【0048】
比較例1
実施例1で用いたものと同一のステンレス基板の表面に、実施例1の前記第2層形成用塗布液のみを熱処理後の膜厚が0.5μmになるようローラー塗布し、以後、実施例1と同様に処理して、比較水垢固着防止製品を作製した。
【0049】
実施例2
メチルシリケート10質量部、イソプロピルアルコール80質量部、30質量%の硝酸ジルコニウムを含有する水溶液10質量部を混合して第1層形成用塗布液を調製した。この第1層形成用塗布液をアクリル樹脂基板に、熱処理後の膜厚が0.5μmになるようディップ塗布し、80℃の空気雰囲気中で30分間熱処理し、珪素酸化物成分とジルコニウム酸化物成分とを有する被膜からなる第1層を形成した。第1層被膜はアクリル樹脂板に強固に結着していた。
次に、前記第1層上にプライマー層形成用塗布液を塗布し自然乾燥してプライマー層を形成した。プライマー層形成用塗布液として、45番珪酸リチウム溶液(日本化学工業、製品名)1質量%水溶液を用いた。
次に、45番珪酸リチウム水溶液50質量部、1質量%の硝酸亜鉛を含む水溶液49質量部、ポリエチレングリコール(重量平均分子量1000)1質量部を混合して第2層形成用塗布液を調製した。この第2層形成用塗布液を前記プライマー層上に、熱処理後の膜厚が0.5μmになるようにディップ塗布し、80℃の空気雰囲気中で30分間熱処理し、珪素酸化物とポリエチレングリコールとが含有された第2層被膜を形成して、実施例2の水垢固着防止製品を作製した。第2層は第1層に強度に結合していた。
【0050】
比較例2
実施例2で用いたアクリル樹脂基板の表面に、実施例2の前記第2層形成用塗布液のみを熱処理後の膜厚が0.5μmになるようローラー塗布し、以後、実施例2と同様に処理して、比較水垢固着防止製品を得た。
【0051】
実施例3
エチルシリケート10質量部、イソプロピルアルコール79質量部、10質量%の硝酸を含む水溶液1質量部、30質量%のジルコニアゾルを含むジルコニアゾル液(イソプロピルアルコール溶媒分散)9質量部、硝酸カルシウム1質量部を混合して第1層形成用塗布液を調製した。この第1層形成用塗布液をガラス基板に、熱処理後の膜厚が0.5μmになるようスプレー塗布し、450℃の空気雰囲気中で30分間熱処理して熱処理生成物からなる第1層を形成した。この第1層は珪素酸化物成分とジルコニウム酸化物成分とを有し、ガラス基板に強固に結着した被膜であったものであった。
次に、前記第1層上にプライマー層形成用塗布液を塗布し、450℃の空気雰囲気中で30分間熱処理してプライマー層を形成した。プライマー層形成用塗布液としては、実施例2で用いたものを使用した。
次いで、エチルシリケート2質量部、イソプロピルアルコール89質量部、10質量%の硝酸水溶液1質量部、3質量%のジルコニアゾルを含むジルコニアゾル液(イソプロピルアルコール溶媒分散)6質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル0.1質量部を混合して第2層形成用塗布液を調製した。この第2層形成用塗布液を前記プライマー層上に、熱処理後膜厚0.5μmになるようスプレー塗布し、450℃の空気雰囲気中で30分間熱処理して、珪素酸化物と、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルが架橋して生成したポリマーが含有された被膜からなる第2層を形成して、水垢固着防止製品を得た。
【0052】
比較例3
実施例3で用いたものと同一のガラス板の表面に、実施例3に記載の第2層形成用塗布液のみを熱処理後の膜厚が0.5μmになるようローラー塗布し、以後、実施例3と同様にして処理して、比較水垢固着防止製品を作製した。
【0053】
実施例4
ジルコニウムアルコキシド10質量部、イソプロピルアルコール79質量部、30質量%のシリカゾルを含有するシリカゾル液10質量部、60質量%の硝酸水溶液1質量部を混合して第1層形成用塗布液を調製した。この第1層形成用塗布液をステンレス鋼基板の表面に、熱処理後の膜厚が0.5μmになるようスプレー塗布し、250℃の空気雰囲気中で10分間熱処理して、珪素酸化物成分とジルコニウム酸化物成分とを有する被膜からなる第1層を形成した。
次に、前記第1層上にプライマー層形成用塗布液を塗布し、250℃の空気雰囲気中で10分間熱処理してプライマー層を形成した。プライマー層形成用塗布液として、JIS3号珪酸ナトリウムの3倍希釈液を用いた。
次に45番珪酸リチウム水溶液50質量部、アクリル樹脂エマルジョン(日本触媒社製、エポスターMX050W)10重量部、水40重量部を混合して第2層形成用塗布液を調製した。この第2層形成用塗布液を前記プライマー層上に、熱処理後の膜厚が0.5μmになるようスプレー塗布し、250℃の空気雰囲気中で10分間熱処理し、珪素酸化物とアクリル樹脂とを含有する被膜からなる第2層を形成して、水垢固着防止製品を作製した。
【0054】
比較例4
実施例4で用いたものと同一のステンレス鋼板の表面に、実施例4に記載の前記第2層形成用塗布液のみを熱処理後の膜厚が0.5μmになるようローラー塗布し、以後、実施例3と同様に処理して、比較水垢固着防止製品を作製した。
【0055】
比較例5
実施例1で用いたものと同一のステンレス鋼基板の表面に、実施例1に記載の第1層形成用塗布液を熱処理後の膜厚が0.5μmになるようローラー塗布し、以後、実施例1と同様に処理して、比較水垢固着防止製品を作製した。
【0056】
「評価」
実施例1〜4、及び比較例1〜5の水垢固着防止製品の水垢固着防止コーティング膜の耐水性、水垢固着防止性能を、下記の方法により測定し評価した。評価結果を表1に示す。
(耐水性)
供試試料を沸騰水中に24時間浸漬し、試料の水垢固着防止コーティング膜の性状を目視観察し記録した。
(水垢固着防止性能)
実施例1〜4及び比較例5にあっては、耐水性試験終了後の水垢固着防止コーティング膜上に、また比較例1〜4にあっては耐水性試験終了後の製品基体の表面上に水道水10mlを滴下し、20℃の空気雰囲気中に30日間放置して、水垢を析出させた。この析出した水垢をスポンジで擦り、水垢の取り除き容易性を目視観察し記録した。
【0057】
【表1】

【0058】
表1に示された性能評価の結果から、実施例1〜4の水垢固着防止製品は、比較例1〜5の水垢固着防止製品に比較して、水垢固着防止効果に優れ、かつ水垢を簡単な方法で容易に取り除くことができることが確認された。
また、実施例1〜4の水垢固着防止製品の水垢固着防止コーティング膜は、耐水性にも優れており、従って、水垢固着防止効果が長期間にわたり持続することも確認された。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の水垢固着防止製品は、優れた水垢固着防止効果を長期間にわたり維持することができ、かつ、水垢が付着しても容易に除去することができるので、実用性の高いものであり、またその製造方法も上記性能を有する水垢固着防止製品を簡単に効率よく製造することができるから、ともに、産業上有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品基体と、前記基体の表面に形成された水垢固着防止コーティング膜とを含み、
前記水垢固着防止コーティング膜は、珪素酸化物成分と、ジルコニウム酸化物成分とを有する被膜形成物質からなる第1層と、前記第1層上に形成され、かつ、珪素酸化物成分と、水に溶解若しくは分散するポリマー及び/又はモノマーから選ばれた少なくとも1種を含む有機物成分とを含む被膜形成物質からなる第2層とを含むことを特徴とする水垢固着防止製品。
【請求項2】
前記第2層用有機物成分が、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、アクリル系ポリマーまたはモノマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びカルボキシメチルセルロースから選ばれた1種以上を含む、請求項1に記載の水垢固着防止製品。
【請求項3】
製品基体の表面上に、シリカゾル、シリコンアルコキシド及びその部分加水分解生成物、並びに珪酸塩から選ばれた少なくとも1種を含む珪素含有成分と、ジルコニアゾル、ジルコニウムアルコキシド及びその部分加水分解生成物、並びにジルコニウム塩から選ばれた少なくとも1種を含むジルコニウム含有成分とを含む塗布液を塗布し、熱処理して、その熱処理生成物からなる第1層を形成し、
さらに前記第1層上に、シリカゾル、シリコンアルコキシド及びその部分加水分解生成物、並びに珪酸塩から選ばれた少なくとも1種を含む珪素含有成分と、水に溶解若しくは分散するポリマー及び/又はモノマーから選ばれた少なくとも1種を含む有機物成分とを含む塗布液を塗布し、熱処理して、その熱処理生成物からなる第2層を形成し、それによって水垢固着防止コーティング層を形成することを特徴とする水垢固着防止製品の製造方法。

【公開番号】特開2008−50402(P2008−50402A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225473(P2006−225473)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】