説明

水変色性積層体

【課題】 多孔質層の下層に配置した着色層が鮮明であり、しかも、繰り返し水を適用しても着色層による鮮明且つ明瞭な像を視認できる機能を損なうことなく、水の適用による良好な変色性を永続して発現可能な実用性に富む水変色性積層体を提供する。
【解決手段】 支持体2上に、着色剤を含む着色層3、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、吸液状態と非吸液状態で透明性が異なる多孔質層4を設けた水変色性積層体であって、前記着色層中に含まれる着色剤が水不溶性分散染料又は油溶性染料のいずれかである水変色性積層体1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水変色性積層体に関する。更に詳細には、繰り返し水を適用しても明瞭且つ鮮明な像を視認できる水変色性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、支持体上に着色層、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、吸液状態と非吸液状態で透明性が異なる多孔質層を設けた変色性積層体に関して幾つかの提案が開示されている(例えば、特許文献1乃至3参照)。
前記積層体は、多孔質層が乾燥状態(非吸液状態)においては下層の着色層が隠蔽され、多孔質層に水を吸液させると透明化して着色層の色調を視認できるものであり、意外性と変化性を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−198271号公報
【特許文献2】特開平11−198272号公報
【特許文献3】特開2003−127314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記水変色性積層体の水を適用した際に視認される着色層による像がより鮮明であり、且つ、繰り返しの使用によって着色層が不明瞭になることなく、耐水性に優れた水変色性積層体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、支持体上に、着色剤を含む着色層、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、吸液状態と非吸液状態で透明性が異なる多孔質層を設けた水変色性積層体であって、前記着色層中に含まれる着色剤が水不溶性分散染料又は油溶性染料のいずれかである水変色性積層体を要件とする。
更には、前記水不溶性分散染料又は油溶性染料が昇華性を有する染料であること、前記着色層が多色の絵柄又は図柄により形成されてなること等を要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、多孔質層の下層に配置した着色層が鮮明であり、しかも、繰り返し水を適用しても着色層による鮮明且つ明瞭な像を視認できる機能を損なうことなく、水の適用による良好な変色性を永続して発現可能な実用性に富む水変色性積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明水変色性積層体の一実施例の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
前記支持体は印刷適性を備えた基材であれば全て有効であり、例えば、紙、合成紙、織物、編物、組物、不織布等の布帛、天然又は合成皮革、プラスチック、ガラス、陶磁器、金属、木材、石材等が用いられる。又、形状としては平面状のものが好ましいが、凹凸状の形態であってもよい。
【0009】
前記支持体上に設けられる着色層は、着色剤を含むバインダー樹脂により形成されてなる。
前記着色剤としては、水不溶性分散染料又は油溶性染料のいずれかを用いることができ、鮮明な着色層を形成できると共に、耐水性に優れるため繰り返しの使用によって着色層が不明瞭になることなく、良好な変色性を永続して発現させることができる。
更に、水不溶性分散染料又は油溶性染料として昇華性を有する染料を用いると、基材として平滑な紙やフィルムに印刷した着色層(転写層)を加熱ロール等により布帛等の支持体表面に圧着して転写することができ、直接印刷して着色層を設ける系と比較して明瞭な着色層を形成することができる。
前記水不溶性分散染料としては、水への溶解度性が1.0mg/L以下のものが好ましく、具体的には、C.I.ディスパースイエロー1、3、4、5、7、8、9、16、23、31、33、39、41、42、49、50、51、54、56、60、61、64、66、77、78、79、116、201、231、C.I.ディスパースオレンジ1、3、5、11、13、20、21、30、32、41、43、46、50、51、C.I.ディスパースレッド1、4、5、6、7、11、12、15、17、43、50、53、55、59、60、65、72、73、74、75、76、82、83、84、90、91、92、97、99、100、101、103、104、111、116、117、122、125、126、127、128、129、C.I.ディスパースバイオレット1、4、8、10、18、23、24、26、28、30、31、33、37、38、C.I.ディスパースブルー3、5、6、7、14、19、20、24、26、27、44、52、54、55、56、58、60、61、62、64、72、75、79、81、85、87、88、90、99、108、241、354、C.I.ディスパースブラック1、2、10、26、27、28、30、31等を例示できる。
前記油溶性染料としては、C.I.ソルベントイエロー2、6、14、16、30、33、56、77、80、93、116、179、ソルベントオレンジ1、2、14、45、C.I.ソルベントレッド1、3、8、9、19、23、24、25、27、49、100、121、C.I.ソルベントバイオレット13、C.I.ソルベントブルー2、24、36、63、55、73、83、105、C.I.ソルベントグリーン3、C.I.ソルベントブラウンの3、5、C.I.ソルベントブラック3、5、7、23等を例示できる。
前記着色剤はバインダー樹脂を結合剤として含むビヒクル中に含有されたインキや塗料を支持体に塗布した後、揮発分を乾燥させて着色層を形成する。
前記バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリルポリオール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、メラミン樹脂、及び前記各樹脂エマルジョン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
前記着色層は、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等により支持体上に形成される。
また、予め別の基材上に着色剤をバインダー樹脂を結合剤として含むビヒクル中に含有されたインキや塗料を塗布して転写層を設け、前記転写層を支持体上に転写して着色層を設けることもできる。
なお、前記着色層を多色の絵柄又は図柄とすることにより、繰り返し水を適用しても着色層によるカラフルな柄を永続して視認できるため、商品性を高めることができる
【0010】
前記着色層上に設けられる多孔質層は、低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた層であり、乾燥状態と吸液状態で透明性が異なる層である。
前記低屈折率顔料としては、珪酸及びその塩、バライト粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、タルク、アルミナホワイト、炭酸マグネシウム等が挙げられ、これらは屈折率が1.4〜1.8の範囲にあり、水を吸液すると良好な透明性を示すものである。
なお、前記珪酸の塩としては、珪酸アルミニウム、珪酸アルミニウムカリウム、珪酸アルミニウムナトリウム、珪酸アルミニウムカルシウム、珪酸カリウム、珪酸カルシウム、珪酸カルシウムナトリウム、珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウムカリウム等が挙げられる。
又、前記低屈折率顔料は2種以上を併用することもできる。
前記低屈折率顔料の粒径は特に限定されるものではないが、0.03〜10.0μmのものが好適に用いられる。
尚、好適に用いられる低屈折率顔料としては珪酸が挙げられる。
前記珪酸は、乾式法により製造させる珪酸であってもよいが、湿式法により製造される珪酸(以下、湿式法珪酸と称する)が特に効果的であり、この点を説明すると、珪酸は非晶質の無定形珪酸として製造され、その製造方法により、四塩化ケイ素等のハロゲン化ケイ素の熱分解等の気相反応を用いる乾式法によるもの(以下、乾式法珪酸と称する)と、ケイ酸ナトリウム等の酸による分解等の液相反応を用いる湿式法によるものとに大別され、乾式法珪酸と湿式法珪酸とでは構造が異なり、前記乾式法珪酸は珪酸が密に結合した三次元構造を形成するのに対して、湿式法珪酸は、珪酸が縮合して長い分子配列を形成した、所謂、二次元構造部分を有している。
従って、前記乾式法珪酸と比較して分子構造が粗になるため、湿式法珪酸を多孔質層に適用した場合、乾式法珪酸を用いる系と比較して乾燥状態における光の乱反射性に優れ、よって、常態での隠蔽性が大きくなるものと推察される。
又、前記多孔質層においては、水を吸液させるものであるから、湿式法珪酸は乾式法珪酸に比べて粒子表面にシラノール基として存在する水酸基が多く、親水性の度合いが大であり、好適に用いられる。
尚、前記多孔質層の常態での隠蔽性と吸液状態での透明性を調整するために、湿式法珪酸と共に、他の低屈折率顔料を併用することもできる。
【0011】
前記多孔質層中の低屈折率顔料は、粒子径、比表面積、吸油量等の性状に左右されるが、常態での隠蔽性と吸液状態での透明性を共に満足するためには、塗布量が1〜30g/mであることが好ましく、より好ましくは、5〜20g/mである。1g/m未満では、常態で十分な隠蔽性を得ることが困難であり、又、30g/mを越えると吸液時に十分な透明性を得ることが困難である。
前記低屈折率顔料はバインダー樹脂を結合剤として含むビヒクル中に分散され、着色層上に塗布した後、揮発分を乾燥させて多孔質層を形成する。
前記バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリルポリオール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、メラミン樹脂、及び前記各樹脂エマルジョン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
前記低屈折率顔料とこれらのバインダー樹脂の混合比率は、低屈折率顔料の種類及び性状に左右されるが、好ましくは、低屈折率顔料1質量部に対してバインダー樹脂固形分0.5〜2質量部であり、より好ましくは、0.8〜1.5質量部である。低屈折率顔料1質量部に対してバインダー樹脂固形分が0.5質量部未満の場合には、前記多孔質層の実用的な皮膜強度を得ることが困難であり、2質量部を越える場合には、前記多孔質層内部への水の浸透性が損なわれる。
前記多孔質層は、一般的な塗膜と比較して着色剤に対するバインダー樹脂の混合比率が小さいため、十分な皮膜強度が得られ難い。そこで、耐擦過強度を高めるために、前記のバインダー樹脂のうち、ナイロン樹脂又はウレタン系樹脂を用いると効果的である。
前記ウレタン系樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂等があり、2種以上を併用することもできる。又、前記樹脂が水に乳化分散したウレタン系エマルジョン樹脂や、イオン性を有するウレタン樹脂(ウレタンアイオノマー)自体のイオン基により乳化剤を必要とすることなく自己乳化して、水中に溶解乃至分散したコロイド分散型(アイオノマー型)ウレタン樹脂を用いることもできる。
尚、前記ウレタン系樹脂は水性ウレタン系樹脂又は油性ウレタン系樹脂のいずれを用いることもできるが、本発明においては水性ウレタン系樹脂、殊に、ウレタン系エマルジョン樹脂やコロイド分散型ウレタン系樹脂が好適に用いられる。
前記ウレタン系樹脂は単独で用いることもできるが、皮膜に必要とされる性能に応じて、他のバインダー樹脂を併用することもできる。ウレタン系樹脂以外のバインダー樹脂を併用する場合、実用的な皮膜強度を得るためには、前記多孔質層のバインダー樹脂中にウレタン系樹脂を固形分質量比率で30%以上含有させることが好ましい。
前記バインダー樹脂において、架橋性のものは任意の架橋剤を添加して架橋させることにより、さらに皮膜強度を向上させることができる。
前記バインダー樹脂には、水との親和性に大小が存在するが、これらを組み合わせることにより、多孔質層中への浸透時間、浸透度合い、浸透後の乾燥の遅速を調整することができる。更には、適宜分散剤や界面活性剤を添加して前記調整をコントロールすることができる。
【0012】
前記多孔質層は、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等により着色層上に形成できる。
【0013】
前記水変色性積層体に水を付着させる手段としては、先端部に筆穂や繊維ペン体等を有する筆記又は塗布具、容器内に水を収容し、且つ、容器内の水を導出する繊維体や刷毛を設けた筆記具又は塗布具、ローラー形態の塗布具、スタンプ具等の水付着具を用いることができる。
なお、好ましい水付着具としては、容器内に水を収容し、且つ、容器内の水を導出する連続気孔を有するプラスチック多孔体又は繊維加工体をペン先部材として適用した筆記具又は塗布具であり、筆跡を簡便に形成でき、実用性を高めることができる。
前記における連続気孔を有するプラスチック多孔体又は繊維加工体は、水を適宜量、吸収し、吐出させるものであればよく、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、その他各種プラスチックの連続気孔体や繊維を集束させた毛筆状のもの、繊維の樹脂加工又は熱溶着加工によるもの、フェルト、不織布形態のものを挙げることができ、形状、寸法は目的に応じて任意に設定できる。
【実施例】
【0014】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、実施例中の部は質量部を示す。
実施例1(図1参照)
水変色性積層体の作製
基材として剥離紙(目付量60g/m)上に、昇華性を有する水不溶性分散染料(C.I.ディスパースイエロー42)をバインダー樹脂を含むビヒクルに含有させたグラビアインキと、昇華性を有する水不溶性昇華性染料(C.I.ディスパースレッド17)をバインダー樹脂を含むビヒクルに含有させたグラビアインキ及び昇華性を有する水不溶性昇華性染料(C.I.ディスパースブルー3)をバインダー樹脂を含むビヒクルに含有させたグラビアインキを用いて、グラビア印刷機でプロセス印刷して鮮明な虹柄の熱転写層を設けて熱転写シートを得た。
次いで、支持体2として白色のポリエステルトロピカル生地(目付量100g/m)上に、前記熱転写シートの熱転写層側を配置し、180℃に加熱されたロールを圧接させて熱転写層を転写させ、水不溶性の着色層3を形成した。
前記着色層上に、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE−200、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW−930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面にベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層4を形成して水変色性積層体1(水変色性布帛)を得た。
前記水変色性積層体は多孔質層が乾燥状態では白色を呈しているが、水の適用により多孔質層が透明化すると着色層による黄色、赤色、青色の鮮明な虹柄が視認される。水が付着した状態では前記様相を呈していたが、乾燥するにつれて徐々に薄くなり、完全に乾燥した状態では再び元の白色に戻った。
前記着色層による虹柄は、繰り返し水を付着させても滲むことなく、鮮明な虹柄の像を維持することができた。
【0015】
水変色性積層体セットの作製
前記水変色性積層体と、水付着手段として先端部に砲弾型の繊維ペン体(ナイロン樹脂製、直径7mm)を有し、軸筒内に水を収容可能に構成したペンとを組み合わせて水変色性積層体セットを得た。
前記水変色性積層体セットは、水付着具を用いて水変色性積層体の多孔質層に筆記すると5〜6mm幅の筆跡が形成される。水が付着した状態では前記様相を呈していたが、乾燥するにつれて徐々に淡くなり、完全に乾燥した状態では再び元の白色に戻った。前記着色層による虹柄は、繰り返し筆記しても滲むことはなく、鮮明な虹柄の像を維持することができた。
【0016】
実施例2
水変色性積層体の作製
基材としてPETフィルム(厚さ4μm)上に、昇華性を有する油溶性染料(C.I.ソルベントイエロー33)をバインダー樹脂を含む油性ビヒクルに含有させたグラビアインキ、昇華性を有する油溶性染料(C.I.ソルベントレッド23)をバインダー樹脂を含む油性ビヒクルに含有させたグラビアインキ及び昇華性を有する油溶性染料(C.I.ソルベントブルー24)をバインダー樹脂を含む油性ビヒクルに含有させたグラビアインキを用いて、グラビア印刷機でプロセス印刷して鮮明な花柄の熱転写層を設けて熱転写シートを得た。
次いで、支持体として白色のポリエステルサテン生地(目付量130g/m)上に前記熱転写シートの熱転写層側を配置し、200℃に加熱されたロールを圧接させて熱転写層を転写させ、水不溶性の着色層を形成した。
前記着色層上に、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE−200、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW−930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面にベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層を形成して水変色性積層体(水変色性布帛)を得た。
前記水変色性積層体は多孔質層が乾燥状態では白色を呈しているが、水の適用により多孔質層が透明化すると着色層による黄色、赤色、青色の鮮明な花柄が視認される。水が付着した状態では前記様相を呈していたが、乾燥するにつれて徐々に薄くなり、完全に乾燥した状態では再び元の白色に戻った。
前記着色層による花柄は、繰り返し水を付着させても滲むことなく、鮮明な花柄の像を維持することができた。
【0017】
水変色性積層体セットの作製
前記水変色性積層体と、水付着手段として先端部に砲弾型の繊維ペン体(ナイロン樹脂製、直径7mm)を有し、軸筒内に水を収容可能に構成したペンとを組み合わせて水変色性積層体セットを得た。
前記水変色性積層体セットは、水付着具を用いて水変色性積層体の多孔質層に筆記すると5〜6mm幅の筆跡が形成される。水が付着した状態では前記様相を呈していたが、乾燥するにつれて徐々に淡くなり、完全に乾燥した状態では再び元の白色に戻った。前記着色層による花柄は、繰り返し筆記しても滲むことはなく、鮮明な花柄の像を維持することができた。
【0018】
実施例3
水変色性積層体の作製
基材としてポリエステルタフタ生地上に、青色の油溶性染料(C.I.ソルベントイエロー6)をバインダー樹脂を含む油性ビヒクルに含有させたグラビアインキ、赤色の油溶性染料(C.I.ソルベントレッド9)をバインダー樹脂を含む油性ビヒクルに含有させたグラビアインキ及び青色の油溶性染料(C.I.ソルベントブルー55)をバインダー樹脂を含む油性ビヒクルに含有させたグラビアインキを用いてグラビア印刷し鮮明な着色層(ストライプ柄)を設けた。
前記着色層上に、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE−200、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW−930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面にベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層を形成して水変色性積層体(水変色性布帛)を得た。
前記水変色性積層体は多孔質層が乾燥状態では白色を呈しているが、水の適用により多孔質層が透明化すると着色層による黄色、赤色、青色の鮮明なストライプ柄が視認される。水が付着した状態では前記様相を呈していたが、乾燥するにつれて徐々に薄くなり、完全に乾燥した状態では再び元の白色に戻った。
前記着色層によるストライプ柄は、繰り返し水を付着させても滲むことなく、鮮明なストライプ柄を維持することができた。
【0019】
水変色性積層体セットの作製
前記水変色性積層体と、水付着手段として先端部に砲弾型の繊維ペン体(ナイロン樹脂製、直径7mm)を有し、軸筒内に水を収容可能に構成したペンとを組み合わせて水変色性積層体セットを得た。
前記水変色性積層体セットは、水付着具を用いて水変色性積層体の多孔質層に筆記すると5〜6mm幅の筆跡が形成される。水が付着した状態では前記様相を呈していたが、乾燥するにつれて徐々に淡くなり、完全に乾燥した状態では再び元の白色に戻った。前記転写層によるストライプ柄は、繰り返し筆記しても滲むことはなく、鮮明なストライプ柄を維持することができた。
【符号の説明】
【0020】
1 水変色性積層体
2 支持体
3 着色層
4 多孔質層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、着色剤を含む着色層、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、吸液状態と非吸液状態で透明性が異なる多孔質層を設けた水変色性積層体であって、前記着色層中に含まれる着色剤が水不溶性分散染料又は油溶性染料のいずれかである水変色性積層体。
【請求項2】
前記水不溶性分散染料又は油溶性染料が昇華性を有する染料である請求項1記載の水変色性積層体。
【請求項3】
前記着色層が多色の絵柄又は図柄により形成されてなる請求項1又は2記載の水変色性積層体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−236332(P2012−236332A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106785(P2011−106785)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】