説明

水変色性粒状体及びそれを用いた水変色性積層体

【課題】 乾燥状態では電子供与性呈色性有機化合物によるカラフル且つ鮮明な色調が視認され、吸水状態では顕色性無機質粒子による色調が視認されると共に、繰り返しの使用によっても電子供与性呈色性有機化合物が発色した時の色濃度を満足させることのできる実用性に富む水変色性粒状体及びそれを用いた水変色性積層体を提供する。
【解決手段】 電子供与性呈色性有機化合物と、前記電子供与性呈色性有機化合物を呈色させる平均粒子径が0.1〜20μm、且つ、平均細孔径が1〜50nmの顕色性無機質粒子とからなり、前記顕色性無機質粒子表面に電子供与性呈色性有機化合物を吸着させてなる水変色性粒状体、支持体2上に、前記水変色性粒状体とバインダー樹脂とからなる乾燥状態で発色し、吸水状態で消色する水変色層3を設けてなる水変色性積層体1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水変色性粒状体及びそれを用いた水変色性積層体に関する。更に詳細には、水の適用により消色する水変色性粒状体及びそれを用いた水変色性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水の適用により色変色する粒状体としては、塩化コバルトをシリカゲルに含浸させた粒状体や、フェノールフタレイン、クレゾールレッド、チモールブルーから選ばれるpH指示薬を二酸化ケイ素や酸化アルミニウム等の無機酸化物に含浸した粒状体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
前記粒状体は、含浸させる色素として塩化コバルトを用いた系は安全性に乏しく利用が制限されることがある。また、pH指示薬を用いる系は水の適用によりpH指示薬が水中に溶出し易く、乾燥状態と吸水状態の繰り返しの使用によって粒状体が色濃度を保持し難い。更に、いずれの粒状体も吸水状態の色調に制約があり、吸水状態においてカラフルな粒状体が得られないため、商品価値の乏しいものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−185317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、この種の水の適用により色変化する粒状体について更に追求し、乾燥状態ではカラフル且つ鮮明な色調を視認でき、吸水状態では消色する水変色性粒状体及びそれを用いた水変色性積層体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、電子供与性呈色性有機化合物と、前記電子供与性呈色性有機化合物を呈色させる平均粒子径が0.1〜20μm、且つ、平均細孔径が1〜50nmの顕色性無機質粒子とからなり、前記顕色性無機質粒子表面に電子供与性呈色性有機化合物を吸着させてなる水変色性粒状体を要件とする。
更には、前記顕色性無機質粒子が下記式(1)を満たすこと、
平均細孔径(nm)/平均粒子径(μm)>1.7 (1)
前記無機質粒子が、珪酸及び/又はその塩、バライト粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、タルク、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、酸化チタンから選ばれること、顕色性無機質粒子と電子供与性呈色性有機化合物の重量比が1:0.0001〜1:10であること等を要件とする。
更には、支持体上に、前記水変色性粒状体とバインダー樹脂とからなる乾燥状態で発色し、吸水状態で消色する水変色層を設けてなる水変色性積層体を要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、乾燥状態では電子供与性呈色性有機化合物によるカラフル且つ鮮明な色調が視認され、吸水状態では顕色性無機質粒子による色調が視認されると共に、繰り返しの使用によっても電子供与性呈色性有機化合物が発色した時の色濃度を満足させることのできる実用性に富む水変色性粒状体及びそれを用いた水変色性積層体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の水変色性積層体の一実施例を示す縦断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、電子供与性呈色性有機化合物を呈色させる機能を有する顕色性無機質粒子と、電子供与性呈色性有機化合物とからなり、前記顕色性無機質粒子表面に、電子供与性呈色性有機化合物を吸着させてなる。
前記顕色性無機質粒子表面に電子供与性呈色性有機化合物を吸着させた状態の水変色性粒状体は発色した状態であり、該粒状体に水分子が付着すると、無機質粒子表面にある電子供与性呈色性有機化合物と結合する官能基に水分子が結合することにより、電子供与性呈色性有機化合物と官能基の結合は外れて電子供与性呈色性有機化合物は消色状態になる。その後、水分子が蒸発等により消失すると、再び無機質粒子表面の官能基と電子供与性呈色性有機化合物とが結合し、発色する機能を有する。
更に、本発明者は、無機質粒子が有する細孔内で電子供与性呈色性有機化合物と水分子の結合が、種々の要因、例えば、バインダー樹脂等の添加剤によって妨げられることなく、優先的に反応することによって、良好な発消色機能を示すことを見出した。
【0009】
前記電子供与性呈色性有機化合物としては、ジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類等が挙げられる。
以下にこれらの化合物を例示する。
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、
3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、
3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、
3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、
3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、
3−〔2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、
3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−フタリド、
3,6−ジフェニルアミノフルオラン、
3,6−ジメトキシフルオラン、
3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、
2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、
3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、
2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、
2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、
2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、
1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、
2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、
1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、
1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、
2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、
スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン、
2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、
3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、
3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、
3´,6´−ビス〔フェニル(2−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(3−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(3−エチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン等を挙げることができる。
更には、蛍光性の黄色乃至赤色の発色を発現させるのに有効な、ピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を挙げることができる。
【0010】
前記顕色性無機質粒子としては、珪酸及び/又はその塩、バライト粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、タルク、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン等が挙げられる。
なお、前記珪酸の塩としては、珪酸アルミニウム、珪酸アルミニウムカリウム、珪酸アルミニウムナトリウム、珪酸アルミニウムカルシウム、珪酸カリウム、珪酸カルシウム、珪酸カルシウムナトリウム、珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウムカリウム等が挙げられる。
前記顕色性無機質粒子は平均粒子径が0.1〜20μm、且つ、平均細孔径が1〜50nmの顕色性無機質粒子が用いられ、水を吸液すると良好な消色性を示す。
前記顕色性無機質粒子の平均粒子径は、0.1〜20μm、好ましくは0.5〜15μm、より好ましくは1〜15μmのものが用いられる。
また、前記顕色性無機質粒子の平均細孔径は、1〜50nm、好ましくは5〜40nm、より好ましくは10〜30nmのものが用いられる。
前記無機質粒子の平均粒子径はコールターカウンター法により測定した。
平均細孔径は、公知の方法、即ち、窒素吸着等温線より算出される。具体的には、公知のBJH法、BET法、t法、DFT法等により算出される。なお、平均細孔径が直接測定できない場合は、次式で算出した数値を平均細孔径とした。
平均細孔径(nm)=4×(細孔容積(ml/g))/(比表面積(m/g))×10
ここで、顕色性無機質粒子として屈折率が1.4〜1.8の範囲の粒子を用いると、水を吸液した際に良好な透明性を示すことができる。
顕色性無機質粒子が前記平均粒子径と平均細孔径を満たすことにより、印刷インキや樹脂加工への適用時に生じる粒状体とバインダー樹脂との影響を少なくすることができる。
更に、前記顕色性無機質粒子として式(1)を満たす粒子を用いると、乾燥状態における高濃度の発色と、吸水状態における良好な消色性を満足させることができる。
尚、好適に用いられる顕色性無機質粒子としては珪酸が挙げられる。
前記珪酸は、乾式法により製造される珪酸(以下、乾式法珪酸と称する)であってもよいが、湿式法により製造される珪酸(以下、湿式法珪酸と称する)が好適である。
この点を以下に説明する。
珪酸は非晶質の無定形珪酸として製造され、その製造方法により、四塩化ケイ素等のハロゲン化ケイ素の熱分解等の気相反応を用いる乾式法によるものと、ケイ酸ナトリウム等の酸による分解等の液相反応を用いる湿式法によるものとに大別される。
乾式法珪酸と湿式法珪酸とでは構造が異なり、前記乾式法珪酸は珪酸が密に結合した構造であるのに対して、湿式法珪酸は、珪酸が縮合して長い分子配列を形成した構造部分を有している。
従って、湿式法珪酸は乾式法珪酸と比較して分子構造が粗になるため、湿式法珪酸を適用した場合、乾式法珪酸を用いた系と比較して細孔が多く、本発明の電子供与性呈色性有機化合物の発消色機能に適した形状を備えているものと推察される。
又、水を吸液させるものであるから、湿式法珪酸は乾式法珪酸に比べて粒子表面にシラノール基として存在する水酸基が多く、親水性の度合いが大であり、電子供与性呈色性有機化合物に対する呈色性も高いことから、好適に用いられる。
尚、前記湿式法珪酸と他の顕色性無機質粒子を併用することもできる。
前記顕色性無機質粒子と電子供与性呈色性有機化合物の混合比率は、顕色性無機質粒子1重量部に対して電子供与性呈色性有機化合物0.0001〜10重量部であり、より好ましくは、0.0005〜5重量部である。顕色性無機質粒子1重量部に対して電子供与性呈色性有機化合物が0.0001重量部未満では乾燥状態において十分な発色を示し難くなり、顕色性無機質粒子1重量部に対して電子供与性呈色性有機化合物が10重量部を超えると、発色濃度もうすくなり、且つ変色感度が悪くなり、水が付着しても早期に変色し難くなる。
【0011】
前記のようにして得られる水変色性粒状体をバインダー樹脂中に固着して支持体上に水変色層を設けて水変色性積層体を得ることができる。
前記水変色性積層体は、乾燥状態で水変色性粒状体が発色しているため、鮮明な色調の水変色層が視認され、吸水状態では水変色性粒状体が消色して無機質粒子の色調が視認されたり、或いは、支持体の色調が視認される。
前記水変色性積層体は、水変色層が乾燥した状態と吸水した状態における明度差が0.1以上であることが好ましく、乾燥状態と吸液状態での色変化を明瞭に視認できる。
【0012】
前記バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリルポリオール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、メラミン樹脂、及び前記各樹脂エマルジョン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、フェノール樹脂等のバインダー樹脂が挙げられる。
前記顕色性無機質粒子とこれらのバインダー樹脂の混合比率は、1重量部に対してバインダー樹脂固形分0.5〜2重量部であり、より好ましくは、0.8〜1.5重量部である。顕色性無機質粒子1重量部に対してバインダー樹脂固形分が0.5重量部未満の場合には、形成される塗膜の実用的な皮膜強度を得ることが困難であり、2重量部を越える場合には、前記塗膜内部への水の浸透性が悪くなる。
前記塗膜は、一般的な塗膜と比較して着色剤に対するバインダー樹脂の混合比率が小さいため、十分な皮膜強度が得られ難い。そこで、前記のバインダー樹脂のうち、ナイロン樹脂又はウレタン系樹脂を用いて耐擦過強度を高めることが好ましい。
前記ウレタン系樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂等があり、2種以上を併用することもできる。又、前記樹脂が水に乳化分散したウレタン系エマルジョン樹脂や、イオン性を有するウレタン樹脂(ウレタンアイオノマー)自体のイオン基により乳化剤を必要とすることなく自己乳化して、水中に溶解乃至分散したコロイド分散型(アイオノマー型)ウレタン樹脂を用いることもできる。
尚、前記ウレタン系樹脂は水性ウレタン系樹脂又は油性ウレタン系樹脂のいずれを用いることもできるが、水性ウレタン系樹脂、殊に、ウレタン系エマルジョン樹脂やコロイド分散型ウレタン系樹脂が好適に用いられる。
前記ウレタン系樹脂は単独で用いることもできるが、支持体の種類や皮膜(水変色層)に必要とされる性能に応じて、他のバインダー樹脂を併用することもできる。ウレタン系樹脂以外のバインダー樹脂を併用する場合、実用的な皮膜強度を得るためには、前記塗膜のバインダー樹脂中にウレタン系樹脂を固形分比率で30重量%以上含有させることが好ましい。
前記バインダー樹脂において、架橋性のものは任意の架橋剤を添加して架橋させることにより、さらに皮膜強度を向上させることができる。
前記バインダー樹脂には、水との親和性に大小が存在するが、これらを組み合わせることにより、塗膜中への浸透時間、浸透度合い、浸透後の乾燥の遅速を調整することができる。
【0013】
前記支持体としては、紙、合成紙、織物、編物、組物、不織布等の布帛、合成皮革、レザー、プラスチック、ガラス、陶磁器、金属、木材、石材等が挙げられ、すべて有効である。
【0014】
前記水変色層は、公知の手段、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等により形成できる。
【0015】
前記水変色性積層体は平面状に限らず、線状、凹凸状、立体状等、様々な形態が有効である。
前記した積層構造において、水変色層は必要により文字、記号、図形等の像であってもよい。又、必要により水変色層上に非変色像を設けて複雑な様相変化を示す構成とすることもできる。
更に、支持体と水変色層の間には非変色層を設けることもできる。
前記水変色性積層体の具体的な実施形態としては、例えば、ぬいぐるみ、人形、レインコート等の人形用衣装、傘や鞄等の人形用付属品、水鉄砲の標的、車や船を模した模型、人間と人形の手形や足形等の形跡を現すボード等の玩具類、水筆紙、水筆シート等の教習具類、文房具類、ドレス、水着、レインコート等の衣類、雨靴等の靴類、防水加工を施した本、カレンダー等の印刷物類、スタンプカード、パズル、各種ゲーム等の娯楽用具類、ウェットスーツ、浮袋、水泳用浮板等の遊泳又は潜水用具類、コースター、コップ等の台所用具類、その他、傘、造花、当りくじ等が挙げられる。
又、各種インジケーターとして適用することもでき、例えば、配管、パイプ、水槽、タンク等の液洩れ検知、禁水性薬品の輸送や保管場所での水濡れ検知、結露、降雨等の検知、使い捨ておむつの尿の検知、各種容器やプールの液量、水深検知、土壌中の水分検知等が挙げられる。
【0016】
前記水変色性積層体に水を付着させる手段としては、直接水中に浸漬したり、手や指を水で濡らして接触させる他、水付着具を適用することもできる。
前記水付着具としては、水鉄砲や噴霧機のような液体を吹き付ける装置、先端部に筆穂や繊維ペン体等を有する筆記又は塗布具、容器内に水を収容し、且つ、容器内の水を導出する繊維体や刷毛を設けた筆記又は塗布具、スタンプ等が挙げられる。
なお、前記水付着具と、水変色性積層体を組み合わせて水変色性積層体セットを構成することもできる。
【実施例】
【0017】
以下に実施例を記載するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
尚、実施例中の部は重量部である。
実施例1
水変色性粒状体の調整
電子供与性呈色性有機化合物として、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン0.1部を酢酸エチル100部に溶解し、その溶液中に顕色性無機質粒子として珪酸〔商品名:ニップジェルBY−200、東ソー・シリカ製、平均粒子径1.7μm、平均細孔径10nm、平均細孔径/平均粒子径=5.88)10部を投入し、乾燥させて水変色粒状体を得た。
【0018】
以下の表に各実施例の水変色性粒状体の組成を示す。実施例2乃至9は実施例1と同様の方法により水変色性粒状体を調製した。
なお、表中の括弧内の数字は重量部を示す。
【0019】
【表1】

【0020】
以下の表に比較例1乃至5の水変色性粒状体の組成物を組成を示す。
なお、表中の括弧内の数字は重量部を示す。
【0021】
【表2】

【0022】
試験試料の作製
前記各実施例、比較例の水変色性粒状体1部、アクリル樹脂エマルジョン3部、水5部を均一に分散し得た液状組成物を用いて、バーコーターにて支持体2上として白色合成紙(明度値9.2)に塗工して水変色層3を設け、乾燥させて試験試料(水変色性積層体1)を得た。
【0023】
色濃度試験
色差計(東京電色株式会社製、TC−3600色差計)を用いて、試験試料が乾燥した状態と、水を付着させて吸液した状態での試験試料のY値を測定し、明度値を換算した。
明度値より、数字が高い程色濃度がうすく、低い数字程色濃度が濃い。
以下の表に試験試料の発色状態(乾燥状態)の色調、発色時(乾燥状態)の明度値、消色時(吸液時)の明度値、明度差(消色時の明度値−発色時の明度値)、明度差の評価を示す。
明度差の評価の記号は以下のとおり。
◎:明度差が大きく、発色時と消色時の変化性に富む。
○:明度差がやや小さいものの、発色時と消色時の変化性を識別可能。
×:明度差が小さく、発色時と消色時の変化性を識別し難い。
【0024】
【表3】

【0025】
応用例1
実施例2で得た水変色粒状体30部、アクリル樹脂エマルジョン90部、粘度調整剤2部、水90部、消泡剤1部を均一に分散混合して、水変色性インキを作製した。
前記インキを白色ポリエステル生地(支持体)上の全面に印刷して水変色層を設けて水変色性布帛を得た。
前記水変色性布帛を裁断、縫製して人形用衣装を作製した。
前記人形用衣装は乾燥状態では全面が黒色を呈し、スプレーを用いて水を付着させると水変色層が吸液により透明化して白色になった。白色になった箇所は乾燥させると黒色に戻り、この様相変化は繰り返し行うことができた。
【0026】
応用例2
実施例6で得た水変色粒状体20部、アクリル樹脂エマルジョン90部、粘度調整剤2部、水90部、消泡剤1部を分散混合して、水変色性インキを作製した。
前記インキを白色合成紙(支持体)上の全面に印刷して水変色層を設けて水変色性筆記シートを作製した。
前記水変色性筆記シートと、軸筒内に水を収容し、且つ、軸筒内の水を導出する繊維体を設けた筆記具を組み合わせて筆記具セットを得た。
前記描画セットは乾燥状態では全面がピンク色であったが、筆記具を用いて水を付着させるとその部分の水変色層が吸液により透明化して白色になった。白色になった箇所は乾燥させるとピンク色に戻り、この様相変化は繰り返し行うことができた。
【0027】
応用例3
実施例2で得た水変色粒状体30部、アクリル樹脂エマルジョン90部、粘度調整剤2部、水90部、消泡剤1部を分散混合して、水変色性インキを作製した。
合成紙(支持体)上に、非変色黒インキで1+1=2の数字と記号(非変色像)を印刷し、2の数字上に前記水変色性インキを用いて水変色層を設けて、水変色性知育具を得た。
前記水変色性知育具と、軸筒内に水を収容し、且つ、軸筒内の水を導出する繊維体を設けた筆記具を組み合わせて知育具セットを得た。
前記知育具の答えの箇所は水変色層が乾燥状態では黒色を呈して隠蔽されているが、筆記具を用いて水を付着させると水変色層が吸液により透明化して非変色像(答え)が視認される。
非変色像は水変色層が乾燥して黒色になると隠蔽されて視認されなくなり、この様相変化は繰り返し行うことができた。
【0028】
応用例4
実施例4で得た水変色粒状体20部、アクリル樹脂エマルジョン90部、粘度調整剤2部、水90部、消泡剤1部を分散混合して、水変色性インキを作製した。
厚さ200μmの合成紙(支持体)上に非変色青色インキを用いて数字の2を印刷して非変色像を設けた。次いで、前記非変色像上に、前記水変色性インキを用いてスクリーン印刷にてスペードの形の水変色層を設けて水変色性カードを得た。
前記カードは乾燥状態では白地に青色のスペードの像が視認されるが、水を付着させると水変色層が吸液により透明化して非変色像が視認される。
非変色像は水変色層が乾燥して青色になると隠蔽されて視認されなくなり、この様相変化は繰り返し行うことができた。
【符号の説明】
【0029】
1 水変色性積層体
2 支持体
3 水変色層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子供与性呈色性有機化合物と、前記電子供与性呈色性有機化合物を呈色させる平均粒子径が0.1〜20μm、且つ、平均細孔径が1〜50nmの顕色性無機質粒子とからなり、前記顕色性無機質粒子表面に電子供与性呈色性有機化合物を吸着させてなる水変色性粒状体。
【請求項2】
前記顕色性無機質粒子が下記式(1)を満たす請求項1記載の水変色性粒状体。
平均細孔径(nm)/平均粒子径(μm)>1.7 (1)
【請求項3】
前記無機質粒子が、珪酸及び/又はその塩、バライト粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、タルク、酸化アルニミウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、酸化チタンから選ばれる請求項2記載の水変色性粒状体。
【請求項4】
顕色性無機質粒子と電子供与性呈色性有機化合物の重量比が1:0.0001〜1:10である請求項1乃至3記載いずれかに記載の水変色性粒状体。
【請求項5】
支持体上に、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の水変色性粒状体とバインダー樹脂とからなる乾燥状態で発色し、吸水状態で消色する水変色層を設けてなる水変色性積層体。
【請求項6】
水変色層の乾燥状態と吸水状態の明度差が0.1以上である請求項5記載の水変色性積層体。

【図1】
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【公開番号】特開2011−16872(P2011−16872A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160812(P2009−160812)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】