説明

水害時用避難所

【課題】避難者の避難が容易であると共に、設置場所を有効活用することができ、また、全体の構成が従来に比べて比較的簡単である水害時用避難所を得る。
【解決手段】避難者を収容する板体状の避難台2と、該避難台2に取付けられた、鉛直方向に延びる複数の柱体部材3と、地中4に埋設され、内部にこれら柱体部材3を昇降自在に各々収容する、鉛直方向に延びる筒状に形成された複数の固定筒部材5とを備え、各柱体部材3を、いずれも、内部が中空状とし、これらの全柱体部材3によって上記避難台2を水面10に浮かせることが可能な浮力を備えたものとし、上記固定筒部材5を、上端側の開口5cから水害時の水を内部に流入可能であると共に、内部に上記柱体部材3を収容した状態で水が流入可能な流入空間11を備えたものとして、該内部に水を流入させることにより、各柱体部材3を上方にガイドしながら浮上させる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洪水や津波等の水害発生時において、水害の水による水面上昇に関わらず避難者を安全に収容する水害時用避難所に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洪水や津波等の水害が発生した場合には海や川の水面が上昇し、場合によっては家屋が浸水あるいは破壊されるだけでなく、人命が危険に晒される可能性がある。
水害発生時に海や川の近くにいる者は、押し寄せる水から身を守るため、山や高強度且つ高層の建物等、近くの高台に速やかに避難する必要があるが、体力のない高齢者や子供、各種障害者は、移動自体がきわめて大変であり、安全な場所への早期の避難が困難である場合がある。また、高台が少ない平野部の場合や、あっても距離的に離れている場合もあり、地理的な問題で速やかな避難が困難である場合も少なくない。
そのため、近年では、このような水害時における避難対策あるいは安全対策として種々のものが考えられている。
【0003】
例えば特許文献1には、地上に複数本立設された支柱の高い位置に避難ステージが設けられたタワータイプの避難所が記載されている。しかしながら、この避難所の場合、避難ステージへは階段を登らなければならず、避難に時間がかかるという欠点がある。しかも、避難ステージが地上から所定の高さ位置にあるため、平時においては避難所上空を専有し、周囲の景観を崩したり、設置に制約が生じたりする可能性がある。さらに、避難ステージの高さは固定されているため、水害時に押し寄せる水の高さが想定外、つまり避難ステージの高さ以上となった場合には、非常に危険である。
また特許文献2には、地中に打ち込まれた外筒と、該外筒の下部筒部の内周面に沿って上下に昇降する内筒とからなる支柱と、外筒の上部筒部と内筒に固定された避難台とを備えた避難所が記載されている。この特許文献2のものは、上空を専有することがないため、周囲の景観を崩したり設置場所の制約を受けたりしにくく、また、水害時には水面を浮遊して、水の高さに適応して上昇あるいは下降するため、水の高さの影響を受けにくいという利点がある。しかしながらが、避難台2自体に浮力確保のためのフロートを別途取付ける必要があるため、避難台の構成が複雑で大掛かりとなる上、フロート設置により避難台全体が高くなるため、やはり階段等で昇降する必要があるという欠点があった。
特許文献3には、建築物の下に浮体を設けると共に、建築物の基礎を、該浮体を収容するプール型の基礎とし、該浮体をアンカーポールによって該プール型の基礎に連結した構成のものが記載されている。しかしながら、この特許文献3のものは、プール型の基礎を建設するのに大規模な工事が必要である上、全体の構成が複雑である。
特許文献4には、下端部が地中に固定された1本のポールと、該ポールが挿通された、ドーナツ状に形成された避難者収容用の浮体とを備えた避難所が記載されている。しかしながら、この特許文献4のものは、ポールが上空を専有するため、設置場所の制約を受ける場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−339920号公報
【特許文献2】特開2006−112089号公報
【特許文献3】特開2006−249915号公報
【特許文献4】特開2008−174919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
如上に鑑み、本発明の技術的課題は、避難者の避難が容易であると共に、上空を専有することなく設置場所を有効活用することができ、また、全体の構成が従来に比べて比較的簡単である水害時用の避難所を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の水害時用避難所は、水害発生時における避難所であって、避難者を収容する板体状の避難台と、該避難台に取付けられた、鉛直方向に延びる複数の柱体部材と、地中に埋設され、内部にこれら柱体部材を昇降自在に各々収容する、鉛直方向に延びる筒状に形成された複数の固定筒部材とを備え、上記各柱体部材は、いずれも内部が中空状に形成されていて、これらの全柱体部材によって上記避難台を水面に浮かせることが可能な浮力を有し、上記固定筒部材は、上端側の開口から水害時の水を内部に流入可能であると共に、内部に上記柱体部材を収容した状態で水が流入可能な流入空間を備えていて、該内部に水が流入させることにより、各柱体部材を上方にガイドしながら浮上させる構成であることを特徴とするものである。
【0007】
本発明においては、上記各柱体部材は、中空の円柱状にそれぞれ形成されていると共に、上記各固定筒部材は、内部に収容される柱体部材の外周径よりも大径の内周径を有する円筒状に形成されていることが好ましい。
【0008】
また、本発明においては、上記避難台の下面に、水害時の水を固定筒部材の上端側の開口から該固定筒部材内に流入させるための空間を確保するためのスペーサ部材が配設されているものとすることができる。
【0009】
さらに、本発明においては、上記避難台は、平時において、該避難台の上面が地上面と同じ高さとなるように掘り込まれたピット内に収容されていて、上記固定筒部材は、該ピットの底部の地中に配設されているものとすることができる。
【0010】
本発明においては、上記柱体部材と固定筒部材との間に、該柱体部材が固定筒部材から抜け出ることを防止する抜止め手段が設けられているものとしてよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、地中に埋設した固定筒部材内に、避難台に浮力を発生させる中空状の柱体部材を昇降自在に収容し、水害時の水を固定筒部内に流入させることにより、各柱体部材を上方にガイドしながら浮上させる構成であるため、全体としての構成が従来に比べて比較的簡単である上、上空を専有することなく設置場所のスペースを生かして設置することが可能である。また、水害時に押し寄せる水の高さに応じて浮上するため、水害の規模に対応して避難者の安全を確保することができる。
さらに、柱体部材が避難台の浮力となるため、従来のように避難台に別途浮力を付与する部材を必要とせず、これにより、避難台の高さを抑えて避難者が階段を昇降する手間を排除することでき、避難を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る水害時用避難所の一実施の形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】同断面図である。
【図3】同平面図である。
【図4】図2の要部拡大図である。
【図5】本発明における柱体部材が固定筒部材の内部空間を水平方向に移動した状態をしめす斜視図である。
【図6】本発明に係る水害時用避難所における避難台が水面上に浮上した状態を模式的に示す斜視図である。ただし、水面は省略している。
【図7】同断面図である。
【図8】抜止め手段を設けない場合において、水害時の水の水面が想定以上の高さになった際に各柱体部材が固定筒部材から完全に抜け、避難台が水面を浮遊した状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1〜図7は本発明に係る水害時用避難所の一実施の形態を示すもので、この実施の形態の避難所1は、水害発生時における避難所であって、避難者を収容する避難台2と、該避難台2に取付けられた、鉛直方向に延びる複数の柱体部材3と、地中4に埋設され、鉛直方向に延びる筒状に形成された複数の固定筒部材5とを備えている。
【0014】
上記避難台2は、平坦な板体状のもので、避難者を収容しても変形等を生じない剛性を備えたもの、例えば高さ10cm程度の鋼製桁または鋼製箱や、避難台として必要な剛性を有する鋼板等が用いられる。
また、この避難台2の上面には、その周縁に、避難者の落下防止に供する柵5が、該避難台2の上面の周囲を取り囲むように立設されており、該柵6の複数個所には、避難台2上への出入りに使用する出入口6aが設けられている
この実施の形態においては、上記避難台2として、平面視略矩形状のものが採用されており、この避難台2の四方を取り囲むように上記柵6が配設されている。
【0015】
また、上記避難台2は、図1及び図2、図4に示すように、平時(この発明においては、水害時の水が押し寄せる前の状態)において、該避難台2の上面が地上面7とほぼ同じ高さとなるように掘り込まれたピット8内に収容されている。
上記ピット8は、図1及び図3に示すように、平面視において、上記避難台2の平面形状と同形で、且つ、図1〜図4に示すように、該ピット8の内周壁8aと避難台2の周面との間に、水害時に押し寄せた水を避難台2の下面側の空間に流入させることできる程度の隙間9が形成されるよう、避難台2よりも若干大きな矩形状に形成されている。
これにより、上記避難台2は、上面側が地上面7と同じ高さになって段差がなくなるため、高齢者や子供、障害者等、体力がない避難者であっても、容易且つ迅速に避難させることができるという利点がある。
なお、上記ピット8の内周壁8aと避難台2の周面との隙間9は、例えば、避難台2への出入口6aにあたる部分については狭く、その他の部分については比較的広くする等、避難者の避難に大きな影響を与えないようにすることが好ましい。
【0016】
上記各柱体部材3は、いずれも、内部が中空の円柱状に形成された、相互に同形同大のもので、上端側が上記避難台2の下面側に位置不動に固定されていると共に、内部の中空部3aには空気等の気体が気密に封入されている。
これらの柱体部材3は、水害時において水が押し寄せた際には、図6及び図7に示すように、上記避難台2に浮力を付与して該避難台2を水面10上に浮上させるものであり、この実施の形態においては、6本の柱体部材3が、2列にわたって3本ずつ等間隔に配設されたものとしている。そして、これらの各柱体部材3は、6本すべての柱体部材3により、上記避難台2を水面10上にバランス良く浮上させることができる浮力を十分に得ることができる大きさ、特に中空部3aの体積が確保されたものとなっている。
また、各柱体部材3の軸線方向(即ち鉛直方向)の長さについては、水害時において想定される押し寄せる水の高さに応じて設定されるが、少なくとも想定される水の高さ以上の長さに設定しておく必要がある。
【0017】
上記各固定筒部材5は、上端側が上記ピット8の底部8aにおいて開口するように該ピット8の底部8aにおける地中4に埋設された、上下端が開口する円筒状のもので、この実施の形態においては、この固定筒部材5は、上記柱体部材3の本数と同数の6本が、柱体部材と同様に、2列にわたって3本ずつ等間隔に配設されたものとなっている。
そして、上記各固定筒部材5は、その軸線方向長さ(鉛直方向長さ)が上記各柱体部材3の軸線方向よりも十分長く形成されていて、各固定筒部材5の内部空間5aには、上記柱体部材3が、鉛直方向に昇降自在に1本ずつ収容されている。
これらの各固定筒部材5は、水害時に水が押し寄せ来た場合に、各内部空間5aにその水を流入、充填させることにより、収容されている各柱体部材3に浮力を発生させ、その浮力によってこれらの柱体部材3を、各固定筒部材5の内周面5bに沿うように上方(略鉛直上方向)にガイドしながら浮上させるものである。これによって、各柱体部材3は、避難台の上面が略水平に保たれるように、全体がバランス良く浮上することとなる。
なお、この固定筒部材5としては、例えば、鋼管杭やPHC(Prestressed
High-strength Concrete)杭等の既成杭が用いられ、これらの既成杭を地中に打設し、内部掘削により内部空間5aが形成されたものとなっている。
【0018】
また、上記各固定筒部材5は、いずれも、内周径が上記柱体部材3の外周径よりも大径の、相互に同形同大に形成されたもので、図2〜図4に示すように、各固定筒部材5の内部空間5aには、その内周径と柱体部材3の外周径との径差により、該固定筒部材5の内周面5bと、内部空間5aに収容されている柱体部材3の外周面3bとの間に、上端側の開口5cから水害時の水を内部空間5aに流入させ、且つ上記柱体部材3を収容した状態において水を内部空間5aに流入させることが可能な流入空間11が形成された構成となっている。
これにより、水害時において上記ピット8内に流入した水が、上端側の開口5c、さらには流入空間11を通じて、各固定筒部材5の内部空間5aに安定的に流入するようになっている。
なお、上記各固定筒部材5の内周径と、各柱体部材3の外周径とは、少なくとも20cm程度の半径差を確保することが好ましい。
【0019】
さらに、上記各固定筒部材5は、平時において、各固定筒部材5の軸線と、内部に収容されている柱体部材3の軸線とが相互に一致した位置、即ち、図3に示すように、平面視において、柱体部材が3固定筒部材5の内部空間5aの中央に位置するようにそれぞれ配設されている。
したがって、各固定筒部材5の内部空間5aに収容されている柱体部材3は、該固定筒部材5の内部空間5a内に水が流入して浮上が始まった際には、その水の流れに応じ、固定筒部材5の内周径と柱体部材3の外周径との径差内において、水平方向に移動可能となっている。例えば、固定筒部材5の内周径と柱体部材3の外周径の半径差が20cmの場合は、各柱体部材3は、固定筒部材5の内部空間5aを水平方向に40cm程度移動可能となる。
これにより、図5に示すように、すべての柱体部材3が、各固定筒部材5の内部空間5aにおいて、押し寄せる水の流れ(図5中の白抜きの矢印の方向)の力によって下流方向に同時に押し流されて移動するため、該固定筒部材5の内周面5bと柱体部材3の外周面3bとの間の流入空間11が、水を流入させ易い状態、つまり押し寄せる水の上流方向側の空間が大きく拡がる。この結果、水を固定筒部材5の内部空間5a内に一層効率良く流入させることが可能となる。
【0020】
ここで、上記各固定筒部材5の内周面5b及び各柱体部材3の外周面3bは、それぞれが相互に接触した場合であっても、柱体部材3がスムーズに上昇できるように、ステンレス等の取付けによる滑面が形成されたものとなっており、各周面5b,3bの相互の滑りを良くして、各固定筒部材5が柱体部材3を鉛直方向に滑らか且つ安定的にガイドしながら上昇させることが可能となっている。
【0021】
さらに、この実施の形態においては、上記各固定筒部材5と各柱体部材3との間に、該柱体部材3が固定筒部材5の内部空間5aから完全に抜け出ることを防止する、図示しない抜止め手段が設けられていて、避難台2を水の高さに合わせてその場で昇降させるようにしている。
この抜止め手段としては、例えば、柱体部材3と固定筒部材5とを連結する鎖やロープ等を用いたり、固定筒部材5の内周面5bの上端側と柱体部材3の下端側とに、相互に係合し合う係合突起をそれぞれ設けたりする等、任意の手段を用いることができる。
【0022】
また、上記避難台2は、該避難台2の下面に、水害時の水を固定筒部材5の上端側の開口5cから該固定筒部材の内部空間5aに流入させるための空間を確保するためのスペーサ部材12を備えている。
この実施の形態においては、上記スペーサ部材12は、上記避難台2の下面とピット8の底部8bとの間に設けられていて、平時において、固定筒部材5の上端側が避難台2の下面に接触しないように該避難台2を支持している。
これにより、固定筒部材5の上端側の開口5cは常時開放された状態が維持されるため、押し寄せた水を、上端側の開口5cを通じて固定筒部材の内部空間5aに流入させるための空間が常に確保されることとなる。
なお、この実施の形態の場合、避難台2が浮上した場合には、上記スペーサ部材12は該避難台2と共に浮上するようにしている。また、上記スペーサ部材12は、避難台2の下面と固定筒部材5の上端側の開口5cとの間に、10cm程度の空間が形成される程度の大きさであることが好ましい。
【0023】
上記構成を有する水害時用避難所1は、水害が発生した際には、事前に避難台2上に避難者を避難させ、該避難台2に水が押し寄せてきた場合には、図4に示すように、避難台2の周縁とピット8の内周壁8aとの間の隙間9を通じて、その水を避難台2の下面の空間に流入させると共に、該水を、各固定筒部材5の上端側の開口5a及び流入空間11を通じて、各固定筒部材5の内部空間5aにそれぞれ流入させる。
このとき、上記避難台2の下面には、中空状に形成されて該避難台2の浮力を付与する複数の柱体部材3が取付けられているため、各固定筒部材5の内部空間5aに水が充填されると、これらの各柱体部材3が、自身が有している浮力によって固定筒部材5の内部空間5aを浮上し始める。一方で、各固定筒部材5は、内部空間5aに収容されている柱体部材3を鉛直上方向にガイドしながら、それらの柱体部材3を浮上させる。
これにより、図6及び図7に示すように、避難台2を、その上面が略水平に保たれた状態で、押し寄せてきた水の水面10上まで安定的に浮上させることが可能となる。
【0024】
なお、水が引いた際には、各固定筒部材5の内部空間5aの水も排水されるため、その排水状態に応じて、各柱体部材3が各固定筒部材5の内周面5bに沿って内部空間5aを降下し、避難台2も平時の位置に戻り、避難者を該避難台2から降ろすことができる。
【0025】
このように、地中4に埋設した固定筒部材5の内部空間5aに、避難台2に浮力を発生させる中空状の柱体部材3を昇降自在に収容し、水害時の水を固定筒部材5の内部空間5aに流入させることにより、発生した浮力により浮上する各柱体部材3を、各固定筒部材5によって上方にガイドしながら浮上させる構成であるため、水害時用の避難所全体としての構成が従来に比べて簡単で、設置も容易である上、避難台2を安全且つ安定的に水面上に浮上させることができる。
また、固定筒部材5によって鉛直方向にガイドされる柱体部材3が避難台2の浮力となるため、従来のように避難台に別途浮力を付与する部材を必要とせず、これにより、避難台2の高さを抑えて避難者が階段を昇降する手間を排除することができ、避難を容易に行うことが可能となる。
さらに、水害時に押し寄せる水の高さに応じて避難台2が浮上するため、水害の規模に対応して避難者の安全を確保することができる。
しかも、避難台2を押し寄せた水の高さに応じて浮上させるための構成、即ち、柱体部材3や固定筒部材5は地中に収容されているため、上空を専有することなく、設置場所のスペースを有効に生かして設置することが可能である。
【0026】
上記実施の形態においては、固定筒部材5と柱体部材3とを6本ずつ備えてものとしているが、柱体部材は、避難台をバランスよく水面に浮かすことができれば、2本〜5本、あるいは7本以上の複数本設けることができ、避難台の大きさや規模によって任意に設定することができ、固定筒部材も柱体部材に数に合わせて設けることができる。
【0027】
また、上記実施の形態においては、上記各柱体部材3は円柱状に、各固定筒部材5は円筒状にそれぞれ形成されているが、各柱体部材は、固定筒部材内に昇降自在に収容されるものであれば円柱状以外、例えば角柱状等であってもよく、また固定筒部材も、柱体部材を昇降自在に収容できるものであれば円筒状以外、例えば角筒状等であってもよい。しかしながら、水害時の水がどの方向から押し寄せても、各柱体部材をスムーズに固定筒部材内を昇降させることができるよう、できるだけ各柱体部材は円柱状に、固定筒部材は円筒状にするのが好ましい。
【0028】
さらに、上記実施の形態においては、上記避難台2の下面とピット8の底部8bとの間に、水害時の水を固定筒部材5の上端側の開口5cから該固定筒部材の内部空間5aに流入させるための空間を確保するためのスペーサ部材12が設けられているが、このスペーサ部材は、水を固定筒部材の上端側の開口から該固定筒部材の内部空間に流入させるための空間を確保することができれば、例えば、該避難台の下面側と固定筒部材の上端側との間等、避難台の下面の任意の場所に設けることができる。
【0029】
また、上記実施の形態においては、上記避難台2を、避難台2の上面が地上面と同じ高さとなるように掘り込まれたピット8内に収容させているが、避難台の上面と地上面との段差が、避難者の避難に影響を与えない程度の小さいものである場合など、このピットは必ずしも設ける必要がなく、必要に応じて設けるようにしてもよい。
【0030】
さらに、上記ピットの内周壁及び底部、並びに該ピット8の周辺の地上面、あるいはピットがない場合の地上面については、凹凸や地盤崩れの発生によって、水害時の水が流入口を介して固定筒部材の開口に流れ込むことを妨げる恐れがある場合には、コンクリート製またはモルタル吹きつけ等によって形成した堅固な構造とするのが望ましい。
【0031】
さらに、上記実施の形態においては、上記柱体部材3と固定筒部材5との間に、該柱体部材3が固定筒部材5の内部空間5aから抜け出ることを防止する抜止め手段が設けられているが、この抜止め手段は必ずしも設ける必要はなく、例えば、図8に示すように、水害時の水の水面10が想定以上の高さになった場合に、各柱体部材3が固定筒部材5の内部空間5aから完全に抜けて避難台2が水面を浮遊できるように、この抜止め手段を敢えて設けないようにしてもよい。
なお、図8に示す避難所は、抜止め手段以外の構成は、実質的に上記実施の形態と同様であり、また同等の作用・効果を奏するため、上記実施の形態と同様の符号を付して詳細な説明は省略する。
【符号の説明】
【0032】
1 避難所
2 避難台
3 柱体部材
3a 中空部
3b 外周面
4 地中
5 固定筒部材
5a 内部空間
5b 内周面
5c 開口
7 地上面
8 ピット
8a 内周面
8b 内周壁
9 流入口
10 水面
11 流入空間
12 スペーサ部材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
水害発生時における避難所であって、避難者を収容する板体状の避難台と、該避難台に取付けられた、鉛直方向に延びる複数の柱体部材と、地中に埋設され、内部にこれら柱体部材を昇降自在に各々収容する、鉛直方向に延びる筒状に形成された複数の固定筒部材とを備え、
上記各柱体部材は、いずれも、内部が中空状に形成されていて、これらの全柱体部材によって上記避難台を水面に浮かせることが可能な浮力を有し、
上記固定筒部材は、上端側の開口から水害時の水を内部に流入可能であると共に、内部に上記柱体部材を収容した状態で水が流入可能な流入空間を備えていて、該内部に水を流入させることにより、各柱体部材を上方にガイドしながら浮上させる構成であることを特徴とする水害時用避難所。
【請求項2】
上記各柱体部材は、中空の円柱状にそれぞれ形成されていると共に、上記各固定筒部材は、内部に収容される柱体部材の外周径よりも大径の内周径を有する円筒状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の水害時用避難所。
【請求項3】
上記避難台の下面に、水害時の水を固定筒部材の上端側の開口から該固定筒部材内に流入させるための空間を確保するためのスペーサ部材が配設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水害時用避難所。
【請求項4】
上記避難台は、平時において、該避難台の上面が地上面と同じ高さとなるように掘り込まれたピット内に収容されていて、上記固定筒部材は、該ピットの底部の地中に配設されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の水害時用避難所。
【請求項5】
上記柱体部材と固定筒部材との間に、該柱体部材が固定筒部材から抜け出ることを防止する抜止め手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の水害時用避難所。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−86648(P2013−86648A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228682(P2011−228682)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)