説明

水密材、水密型絶縁電線およびその製造方法、並びに電力ケーブル

【課題】架橋ポリオレフィン(系)廃材を水密型絶縁電線の水密材として再利用し、電気的特性、機械的特性および水密性を満足する水密型絶縁電線の製造方法を提供する。
【解決手段】高密度ポリエチレン等からなる群から選ばれる樹脂の架橋処理物の廃材である架橋ポリオレフィン(系)廃材を再生処理してゲル分率10%以下の再生材とし、該再生材を、エチレン−酢酸ビニル共重合体等からなる群から選ばれるポリオレフィン系樹脂と、全樹脂量に対し前記再生材を30質量%以下で混合して再生材混合樹脂を得、該再生材混合樹脂を用いて導体を相互に接合し、かつ導体の外周に該再生材混合樹脂を被覆し、さらに被覆された再生材混合樹脂に接触するように外周に絶縁被覆層を形成する水密型絶縁電線の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水密型絶縁電線およびその製造方法、並びに電力ケーブルに関するものであり、更に詳しくはゲル分率10%以下の再生材を利用して得られる水密型絶縁電線およびその製造方法、並びにその電線を線心として用いた電力ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
架橋されたポリエチレンやエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体で絶縁被覆された絶縁電線のリサイクル技術として、例えば、特許文献1に記載の技術がある。この技術は、架橋ポリエチレン等の廃材を、ゲル分率40%以下のゲル分を含む再生材に再生処理し、該再生材を50質量%以下で混合した再生材混合樹脂とし、これを絶縁電線の絶縁被覆層として用いる技術である。
この特許文献1に記載の技術によって、電線に使用された架橋ポリエチレン廃材を、電気特性および強度・伸びに優れた電線被覆材としてリサイクルするという目標は基本的に実現できた。
【0003】
しかし、架橋ポリエチレン等の廃材等のリサイクル用途を更に広めることが求められている。
そこで、本発明者らは、新たに、水密型絶縁電線の水密材に架橋ポリエチレン等の廃材を適用する研究開発を行ない、本発明を完成した。
なお、水密型絶縁電線は、導体の腐食等を防止する目的で、導体の長手方向に雨水等の水分が侵入しない様にしたもので、導体をなす素線間および導体と絶縁被覆層間に、これらの間を接着する様に水密材を挿入したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−66262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、架橋ポリエチレン等の廃材を水密型絶縁電線や電力ケーブルの水密材として再利用可能とし、その上前記廃材の再生材を使用しても、電気的特性、機械的特性、水密性および皮はぎ性を満足する水密型絶縁電線およびその製造方法、並びに電力ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は下記手段によって達成された。
(1)導体上に絶縁被覆層を有する水密型絶縁電線の製造方法であって、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を架橋したものの廃材(以下、架橋ポリオレフィン(系)廃材という。)を再生処理してゲル分率10%以下のゲル分を含む再生材とし、該再生材と、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂とを、全樹脂量に対し前記再生材が30質量%以下となる範囲で混合して再生材混合樹脂を得、該再生材混合樹脂を前記導体をなす素線間に充填し、かつ導体と前記絶縁被覆層との間に該再生材混合樹脂からなる層を介在させることを特徴とする水密型絶縁電線の製造方法。
(2)前記架橋ポリオレフィン(系)廃材の再生処理を、処理温度250℃〜400℃、剪断速度200sec−1以上で行うことを特徴とする(1)項に記載の水密型絶縁電線の製造方法。
(3)被覆された前記再生材混合樹脂を架橋処理することを特徴とする(1)または(2)項に記載の水密型絶縁電線の製造方法。
(4)前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の方法で製造された水密型絶縁電線。
(5)(4)項に記載の水密型絶縁電線を線心として用いた電力ケーブル。
(6)前記架橋ポリオレフィン(系)廃材を再生処理してゲル分率10%以下の再生材とし、該再生材と、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂とを、全樹脂量に対し前記再生材が30質量%以下となる範囲で混合した、水密材。
なお、電力ケーブルは、1本または複数本の線心にシースなどを被覆したものであり、線心は絶縁電線と同じ構造のものが用いられる。すなわち、絶縁電線を電力ケーブルに用いた場合、線心と呼称される。従って、本発明において、「絶縁電線」という用語には「線心」を含む意味で用いている。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、架橋ポリオレフィン(系)廃材をゲル分率10%以下の再生材に再生処理後、ポリオレフィン系樹脂に前記再生材を全樹脂量に対し30質量%以下で混合するので、再生材を水密型絶縁電線の水密材の成分として再利用することができる。この水密材は再架橋させることができる。この水密材は、水密型絶縁電線に要求される、電気的特性および機械的特性をはじめ、水密特性に優れ、さらに皮剥性も良好な電線を得ることを可能とする。
なお、水密型絶縁電線で皮剥性が要求される理由は、次の通りである。すなわち、電線経路を構成するために2本の絶縁電線を接続する場合があるが、接続作業時には絶縁被覆層を剥ぎ取る必要がある。一方、水密型絶縁電線の場合には、電線の要求性能である水密性能を満足させるため、導体の素線相互間及び導体と絶縁被覆層との間を水密材により接着させる必要ある。しかし、導体と絶縁体間を強固に接着させてしまうと、絶縁体の皮剥ぎができないと言う問題が生じる。そのため水密型絶縁電線の場合には、電線の要求性能である水密性能と、絶縁体の剥ぎ取り性能(皮剥性)の両者を満足させる必要がある。
また、本発明によれば、電線の絶縁被覆層などに用いた架橋物のリサイクル用途を水密材に拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の絶縁電線の1例の断面図である。
【図2】本発明の電力ケーブルの1例の断面図である。
【図3】皮剥試験の方法を示す説明図である。
【図4】皮剥試験の結果の良否判断についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の水密型絶縁電線およびその製造方法では、架橋ポリオレフィン(系)廃材を再生処理し、ゲル分率10%以下にした再生材を、再生材ではないポリオレフィン系樹脂と、全樹脂量に対し再生材を30質量%以下で混合したものを使用する。
【0010】
本発明における架橋ポリオレフィン(系)廃材とは、その発生源については限定されるものではないが、例えば、電線被覆廃材などの配線材の被覆廃材や、一般廃棄物として廃棄される給水用、給湯用、屋内暖房用のパイプ、または各種発泡体などが挙げられる。
本発明の水密型絶縁電線に用いられる架橋ポリオレフィン(系)廃材はどのような架橋処理を行ったものでもよく、例えば、有機過酸化物やシラン化合物、電子線などによって架橋されたもの(架橋体)を使用することができる。また回収された廃材の使用年数は関係なく、極端に劣化が進んだものでも支障はない。
本発明に使用される架橋ポリオレフィン(系)廃材は、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンから選ばれるポリオレフィン樹脂並びにエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体から選ばれるポリオレフィン系樹脂から選ばれた樹脂の架橋体の廃材である。これらは1種もしくは2種以上の混合物であっても良い。
【0011】
本発明における水密型絶縁電線の水密材には、上記の架橋ポリオレフィン系廃材を再生処理した再生材を使用する。
再生処理の方法は、架橋ポリオレフィン(系)廃材の架橋を切断し、ゲル分率10%以下の再生材を製造できる方法であれば特に制限はないが、例えば、同方向噛み合い型二軸押出機で適切な条件のもと熱可塑化処理方法などが利用できる。
【0012】
前記押出機で処理する際の再生処理条件は、上記の再生材のゲル分率10%以下となるように適宜調整できるが、好ましい処理温度は250℃〜400℃、好ましい剪断速度は200sec−1以上である。なお、本発明における剪断速度とは、押出機のスクリューエレメント最外周部の周速度(mm/s)をスクリューとバレルとのクリアランス(mm)で除した数値をいう。
【0013】
本発明に用いる再生材は、ゲル分を含んでおり、かつそのゲル分率は10%以下である。ゲル分率が高いと水密性が低下する。
なお、本発明は、再生材のゲル分率が上限10%を超えなければ、水密型絶縁電線の水密材に再利用可能であることを見出して完成したものであり、ゲル分率は低いほど好ましいが、再生材のゲル分率を0.1%未満にすると著しく経済性を悪化させ、再生・再利用による環境負荷低減と言う意義を損なう可能性がある。
【0014】
前記再生材は、再生材ではないポリオレフィン系樹脂(架橋処理に供されたことのない樹脂)と混合して組成物(本発明において、これを「再生材混合樹脂」という。)とすることができる。当該ポリオレフィン系樹脂としては、一度も成形されたことのない樹脂、いわゆるバージン材を用いることがより好ましい。
本発明において、再生材に混合する「ポリオレフィン系樹脂」とは、通常水密絶縁電線の水密材に使用している、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体から選ばれるポリオレフィン系樹脂をいう。また、これらは1種もしくは2種以上を混合して用いてもよい。
【0015】
再生材混合樹脂の調製における再生材とポリオレフィン系樹脂との混合比は、全樹脂量(再生材とポリオレフィン系樹脂との合計量)に対し、前記再生材が30質量%以下(ただし、0は含まない)となるようにする。
なお、本発明は、再生材の配合量が上限30質量%を超えなければ、水密型絶縁電線の水密材に再利用可能であることを見出して完成したものである。再生材の配合量は低いほど好ましいが、再生材の配合量は10質量%以下でもよい。しかし、リサイクルの効率及び経済性の観点から0.1質量%が好ましく、その配合量が少なすぎると再生・再利用による環境負荷低減と言う意義を損なう可能性がある。
【0016】
本発明の水密型絶縁電線製造における、再生材混合樹脂を水密材として導体を構成する素線の相互間及び導体と絶縁被覆層の間への充填や、絶縁被覆層の形成には押出機を使用することが出来る。ここで素線相互間とは、複数本の素線よりなる導体においてそれが撚り合わせられているか否かや、その間隙の大きさにかかわらず素線間に生じる空隙をいう。
また本発明の水密型絶縁電線の水密材となる再生材混合樹脂には、通常この種の樹脂に添加される酸化防止剤などの添加剤や、着色剤を適宜添加することができる。これら酸化防止剤や着色剤の添加方法として、(1)直接樹脂に所定量添加する方法、(2)予め高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンから選ばれるポリオレフィン樹脂に高濃度に着色剤等を配合したマスターバッチを作成しておき、これを樹脂に混合する方法がある。本発明では、何れの添加方法を利用しても良い。
【0017】
次に図面を参照して本発明の好ましい実施態様の1例を示す。
図1は本発明の水密型絶縁電線の1例の断面図であり、複数本の素線を撚り合わせてなる導体1の周囲を上記再生材混合樹脂からなる水密材2で包囲し、その周りに絶縁被覆層3が形成されている。また、導体1を構成する複数の素線1aで囲まれた間隙にも水密材2が充填されている。水密材2は、導体1の素線1a相互間および導体1と絶縁被覆層3とを接着し、これらの間に水が浸入するのを妨害する作用を有する。
【0018】
さらに本発明の水密型絶縁電線の水密材は架橋処理されてもよい。架橋方法としては通常の架橋方法を適宜選択すればよく、特に限定しないが、例えば、有機過酸化物を添加した組成物を電線に被覆したのち加熱処理する「過酸化物架橋方法」、シラン化合物と架橋助剤を添加した組成物を電線に被覆したのち水分により架橋させる「シラン架橋方法」などが挙げられる。
【0019】
本発明の水密型絶縁電線の導体としては、従来、絶縁電線に用いられている任意の導体を用いることができる。また、本発明の水密型絶縁電線の絶縁被覆層としては、従来、絶縁電線に用いられている任意の樹脂、例えばポリエチレン、架橋ポリエチレン、ポリ塩化ビニル樹脂を被覆することにより形成することができる。なお絶縁被覆層は、前記材料等の組み合わせにより、複数層で形成させることもできる。
【0020】
図2は、本発明の電力ケーブルの好ましい実施態様の1例を示す断面図である。この電力ケーブルは、3本の線心11の周囲を介在12、押えテ−プ13、シース14で順に被覆したものである。一般に、電力ケーブルの線心と絶縁電線とは同じものである。図2の電力ケーブルの線心11には、図1の水密型絶縁電線と同様の構造のものが用いられている。すなわち、線心11として、導体21の素線の間、および導体と絶縁被覆層23との間に上記再生材混合樹脂からなる水密材22が配された水密型絶縁電線が用いられている。
【実施例】
【0021】
以下に本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
下記の架橋ポリオレフィン(系)廃材、その再生材及びポリオレフィン系樹脂を使用した。
〔架橋ポリオレフィン(系)廃材〕
有機過酸化物により架橋された屋外用架橋ポリエチレン絶縁電線の絶縁被覆層を剥ぎ取り、10mm以下のサイズに粉砕した架橋ポリエチレンの廃材を準備した。
なお、屋外用架橋ポリエチレン絶縁電線としては、撤去された絶縁電線の中から絶縁被覆層が有機過酸化物により架橋されたものを選別したが、わずかにこの方法以外で架橋されたものも混入しており、この影響で、後述する再生材のゲル分率にバラツキが生じる。
〔再生材〕
上記の架橋ポリエチレン廃材を同方向噛み合い型二軸押出機を用い、処理温度は300℃、剪断速度は2200〜2300sec−1として再生処理を行ってゲル分率5%、10%、15%の再生材を得た。なお、ゲル分率の測定方法は以下の方法で測定した。
(ゲル分率)
ゲル分率は、定法に従って、加温したキシレンに試料を入れ、溶解せずに残った試料の質量を測定し、これと試験前の試料の質量との比をゲル分率(%)とした。具体的な方法は、JIS C 3005中の「4.25架橋度」によった。
〔ポリオレフィン系樹脂〕
エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(EEA)であるNUC6070(ダウ・ケミカル(株)製)を用いた。
【0023】
(水密型絶縁電線の製造)
水密材としては、再生材およびNUC6070の混合比を、それぞれ実施例1〜3、および比較例1、2において、表1のとおりとした。
上記の樹脂をホッパーから投入し、直径50mm単軸押出機を用いて断面積150mmの銅のより線導体間に充填するように、かつ導体の周囲を覆うように押出し、その後に別の単軸押出機を用いて厚さ2.5mmの肉厚となる様にポリエチレン樹脂(過酸化物架橋剤等を含む新材)を押出して、被覆された水密型絶縁電線を製造した。製造された水密型絶縁電線は、前記ポリエチレン樹脂の被覆後に加熱処理し、「過酸化物架橋」を行った。
【0024】
【表1】

【0025】
(評価方法)
実施例1〜3および比較例1、2で製造した水密型絶縁電線の評価は電力用規格C−107屋外用架橋ポリエチレン絶縁電線(OC)に準拠し以下の方法により測定した。なお、水密電線用の水密材自体の特性値の規格値および性能については規定されていないため、製造した絶縁電線について水密性能と皮剥性能を評価した。
規格値
絶縁体の引張り強さ 9.81MPa以上
絶縁体伸び 350%
加熱試験 引張伸び、強さとも加熱前の値の80%以上
耐加熱変形試験 厚さの減少率40%以下
耐トラッキング 噴霧回数101回においても、0.5A以上の電流が
試料表面を流れないか、または燃え上がらないこと
耐電圧 12,000Vの試験電圧に1分間耐えること
評価方法
〔引張試験〕
JIS C3005による。引張速さは200mm/minで行なう。
〔加熱試験〕
JIS C3005による。加熱温度は120±3℃、96hrで行う。
〔耐加熱変形試験〕
JIS C3005による。加熱温度は120±3℃、加える荷重は20Nで行う。
〔耐トラッキング性試験〕
JIS C3005による。噴霧回数は101回で行なう。
〔耐電圧試験〕
JIS C3005による。
〔水密試験〕
製造した絶縁電線(完成品)より2mの試料を取り、試料の片端より試料の1mまでに0.5気圧の水圧を印加し、24時間放置後に試料の解体を行い、水の浸入長を測定する。なお、浸水長は30cm以下を良とした。
〔皮剥試験〕
製造した絶縁電線(完成品)を切断して長さ30cmの試料を作成し、片端を万力等で固定した後に、図3に示す回転式皮剥工具(泉精機社製NP400型)を用いて絶縁被覆の皮剥ぎを10cm行った。図4に示すように、水密材2が導体1の素線1a間を跨いで残存した状態を不良(×)、跨いで残存していない状態を良(○)とした。この皮剥試験は、絶縁電線の温度を−20℃、23℃、60℃にして、それぞれ行なった。
図3に示した皮剥工具は、ハンドル30の中央部に、絶縁電線31を挟持するツメ部32a、32bが、それらの間隔を調整できるように設けられたものである。一方のツメ部32aには、絶縁電線31が入る三角形状の窪み33が設けられている。他方のツメ部32bには、刃部34が設けられている。刃部34は、支点34aを中心に揺動可能に設けられており、絶縁電線31をツメ部32a、32b間に挟み、ハンドル30を持って、この工具を図3において右回転すると、刃部34が絶縁電線31の絶縁層3に食い込むようになっている。刃部34が絶縁層3に食い込む深さは予め設定できるようになっている。この刃部34の食い込み深さは、刃部34が導体1に当たらない深さで、できるだけ深い寸法に設定する。
絶縁電線31を挟んでこの工具を右回転すると、予め設定した深さまで刃部34が絶縁層3に食い込み、その後、さらに工具を右回転すると絶縁層3をめくり上げるように、絶縁層31を剥す。絶縁層31は、幅0.5cm程度の幅でらせん状にはがされて行く。
(評価結果)
各項目の評価の結果は表2のとおりである。
表2中、水密試験の欄で( )内の数字は、電線内の浸水長であり、水圧を加えた側の端部からの長さである。
【0026】
【表2】

【0027】
ゲル分率10%以下の再生材を30質量%以下配合した再生材混合樹脂を用いた実施例1〜3の水密型絶縁電線は、何れも水密性能および皮剥ぎ性能を満足する結果である。
一方、ゲル分率が高い再生材を用いた比較例1のものは、皮剥ぎ性能は満足するものの、導体素線間または導体素線と絶縁被覆層間の接着が良好でないため水密性能が良好でなかった。また再生材の配合量が多い比較例2のものは、同様の理由により水密性能が劣っていた。比較例2のものは、その上、23℃、60℃の皮剥ぎ性能も満足しないとの結果である。
なお、実施例1〜3の絶縁電線は、機械特性、耐熱性、耐電圧性、および耐トラッキング性能の面でも問題なかった。
【符号の説明】
【0028】
1 導体
1a 素線
2 水密材(再生材混合樹脂)
3 絶縁被覆層
11 線心
12 介在
13 押えテ−プ
14 シース
21 導体
22 水密材
23 絶縁被覆層
30 ハンドル
31 絶縁電線
32a,32b ツメ部
33 窪み
34 刃部
34a 支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体上に絶縁被覆層を有する水密型絶縁電線の製造方法であって、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を架橋したものの廃材(以下、架橋ポリオレフィン(系)廃材という。)を再生処理してゲル分率10%以下のゲル分を含む再生材とし、
該再生材と、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂とを、全樹脂量に対し前記再生材が30質量%以下となる範囲で混合して再生材混合樹脂を得、該再生材混合樹脂を前記導体を構成する素線間に充填し、かつ導体と前記絶縁被覆層との間に該再生材混合樹脂からなる層を介在させることを特徴とする水密型絶縁電線の製造方法。
【請求項2】
前記架橋ポリオレフィン(系)廃材の再生処理を、処理温度250℃〜400℃、剪断速度200sec−1以上で行うことを特徴とする請求項1に記載の水密型絶縁電線の製造方法。
【請求項3】
被覆された前記再生材混合樹脂を架橋処理することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水密型絶縁電線の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法で製造された水密型絶縁電線。
【請求項5】
請求項4に記載の水密型絶縁電線を線心として用いた電力ケーブル。
【請求項6】
高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を架橋したものの廃材である架橋ポリオレフィン(系)廃材を再生処理してゲル分率10%以下の再生材とし、
該再生材と、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂とを、全樹脂量に対し前記再生材が30質量%以下となる範囲で混合した、水密材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−161040(P2010−161040A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4040(P2009−4040)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】