説明

水平移動式サーフェイス・センター併用ワインダー

【課題】 表面の摩擦係数が小さい軟質及び半硬質のシート・フィルムを一定の巻取張力で巻き取ることができるワインダーを提供する。
【解決手段】 巻取開始時は、サーフェイスロール上に保持装置によって保持、配置された巻芯にシート・フィルムの巻き取りを行い、次いで、サーフェイスロールによる巻き取りを継続しつつ、該巻芯にシート・フィルムがいくらか巻き取られた巻取ロールを移動装置で水平面上に移動させてサーフェイスロールによるシート・フィルムの巻き取りを行う水平移動式サーフェイス巻取機構と、上記巻取ロールが水平面上に移動した後、駆動装置に連結された駆動軸を上記巻芯に接続して、該駆動装置により該駆動軸を通じて上記巻芯を回転させてシート・フィルムを巻き取るセンター巻取機構とを有し、上記巻取ロールが水平面上に移動した後、水平移動式サーフェイス巻取機構とセンター巻取機構が協働してシート・フィルムの巻き取りを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カレンダー、押出機(Tダイ)、ラミネーターなどによる加工工程が終了したシート・フィルムをロール状に巻き取るための水平移動式サーフェイス・センター併用ワインダーに関する。
【背景技術】
【0002】
加工済みのシート・フィルムは、通常、ワインダー(巻取機)によって巻芯に巻き取られるが、その場合、一般にサーフェイスワインダー(表面駆動巻取機)またはセンターワインダー(中心軸駆動巻取機)が使用される。
サーフェイスワインダーには、縦型サーフェイスワインダーと水平移動式サーフェイスワインダーとがあり、縦型サーフェイスワインダーは、多軸のサーフェイスロール上に巻取ロールが乗り加圧することにより、サーフェイスロールと巻取ロールが連れ回る原理を応用したもので、巻き取られたシート・フィルムが常にサーフェイスロール上に保持されているので、肉厚が薄く、径の小さい巻芯でも使用することができ、また、駆動装置が簡単であるという利点がある。
【0003】
しかしながら、縦型サーフェイスワインダーには、巻取ロールの径(巻径)が大きくなるに従って、次第にその重量が重くなり、最終的にサーフェイスロールに掛かる巻取ロールの重量は、巻き取りを開始したときの何倍にもなるため、巻取張力が増大し、硬巻き化が進み、空気の巻き込みや巻き締りを起す欠点がある。
【0004】
縦型サーフェイスワインダーの上記欠点を解消したものが、水平移動式サーフェイスワインダーである。水平移動式サーフェイスワインダーは、巻取ロールを水平面上に配置させてシート・フィルムを巻き取る方式のワインダーであり、縦型サーフェイスワインダーとは異なり、巻取ロールの自重がサーフェイスロールに掛からず、サーフェイスロールに巻取ロールがプレス部材による所定のプレス圧で接するだけであるので、巻径が大きくなっても、サーフェイスロールの表面に掛かる重量は、縦型サーフェイスワインダーのように増加しないという特徴がある。
【0005】
これらのサーフェイスワインダーは、低張力で、シート・フィルムを引き伸ばすことなく、かつ、巻取軸の軸ぶれを生じることなく、均一にシート・フィルムを巻き取ることができ、しかも、センターワインダーに比べると設備の導入費用が安価であることから広く利用されている。
【0006】
このように、サーフェイスワインダーは、サーフェイスロールとの面接触によってシート・フィルムの巻き取りを行うものであるため、サーフェイスロールとシート・フィルムとの間に、ある一定の摩擦力がなくては巻き取ることができない。したがって、サーフェイスワインダーは、主として、生地にクッション性があり、サーフェイスロールとの面接触性が良好である広幅の軟質シート・フィルムを巻き取る場合に使用される。
【0007】
一方、センターワインダーは、巻芯自体を回転させ、シート・フィルムをロールに接触させることなく巻き取るワインダーであり、巻径が大きくなるに従い、回転力(トルク)を変化させ、一定の張力で巻き取れるように工夫されていることから、軟らかい巻き取りが可能で、厚さの変動があるシート・フィルムでも容易に巻き取ることができるという利点がある。その一方、細い巻芯が使えないこと、幅の広いシート・フィルムを巻き取る場合は、巻芯がベンドする傾向があるなどの欠点がある。したがって、センターワインダーは、通常、幅が狭く、短尺の硬質・半硬質シート・フィルムを巻き取る場合に使用される。
【0008】
サーフェイスワインダーやセンターワインダーに関する技術文献は多数認められる。例えば、特許文献1には、巻取時にウェブ材の引張力及び圧縮力を制御し、ウェブ材を自動的に切断し、巻取ロール材を搬出して新しいロールへの巻き取りを開始するようになっているワインダーが開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開平7−144801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、印刷技術が格段に進歩し、現在では細密印刷及びハイスピード印刷に対する需要が高まっている。そして、それに伴い、それらの印刷に適応できるよう、1)シート・フィルム表面の高平滑性、2)シート・フィルムの低収縮率性、3)シート・フィルム表面のノンブリード性、がシート・フィルムに要求されるようになってきた。
しかしながら、これらの特性を満足させることは、従来のサーフェイスワインダーの巻取機能を低下させる方向に作用し、その結果、従来のサーフェイスワインダーでは、顧客の要望に応えるシート・フィルムの巻き取りが困難となってきている。
【0011】
また、水平移動式サーフェイスワインダーは、縦型サーフェイスワインダーとは異なり、巻取ロールの自重は、サーフェイスロールへの接圧から完全に開放され、サーフェイスロールへの接圧は、通常、プレス部材によるプレス圧のみとなる。そのため、硬質のシート・フィルムや表面が平滑で摩擦係数の小さなシート・フィルムは、サーフェイスロールとの摩擦力が小さく、水平移動式サーフェイスワインダーで巻き取ることは困難である。
【0012】
また、シート・フィルムは、一定の巻取張力で巻き取らないと、蛇行や片面ズレといった巻取不良現象を招きやすいが、従来の水平移動式サーフェイスワインダーを用いてシート・フィルムを一定の巻取張力で巻き取るには、巻取ロールの巻径が大きくなるに従い、巻芯の回転力を大きくする必要がある。そして、そのためには、プレス部材によるプレス圧を巻径に比例して大きくするなどの調整機能が必要となる。
しかしながら、プレス圧の調整には、製品の硬さ、肉厚、密度、摩擦係数などの諸々の製品特性が複雑に関係することから、プレス圧の調整は非常に難しいのが現状である。
【0013】
そこで、本発明は、上記問題をすべて解決したワインダー、すなわち、表面の摩擦係数が小さい軟質及び半硬質のシート・フィルムを一定の巻取張力で巻き取ることができるワインダーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、従来の水平移動式サーフェイスワインダーにおいて、巻取ロールが水平面上に移行した時点で、駆動軸を巻芯に接続し、該駆動軸を回転させて巻き取りを行うセンター巻取機構を取り入れることを見出し、かかる知見に基づき研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、巻取開始時は、サーフェイスロール上に保持装置によって保持、配置された巻芯にシート・フィルムの巻き取りを行い、次いで、サーフェイスロールによる巻き取りを継続しつつ、該巻芯にシート・フィルムがいくらか巻き取られた巻取ロールを移動装置で水平面上に移動させてサーフェイスロールによるシート・フィルムの巻き取りを行う水平移動式サーフェイス巻取機構と、上記巻取ロールが水平面上に移動した後、駆動装置に連結された駆動軸を上記巻芯に接続して、該駆動装置により該駆動軸を通じて上記巻芯を回転させてシート・フィルムを巻き取るセンター巻取機構とを有し、上記巻取ロールが水平面上に移動した後、水平移動式サーフェイス巻取機構とセンター巻取機構が協働してシート・フィルムの巻き取りを行う水平移動式サーフェイス・センター併用ワインダーである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の水平移動式サーフェイス・センター併用ワインダーは、上記構成を有することにより、以下の効果を奏する。
1.軟質のシート・フィルム(硬さ(ASTM試験法D785により測定):ショアーA 50〜100)に加えて、従来のサーフェイスワインダーでは巻き取りが困難であった半硬質のシート・フィルム(硬さ(ASTM試験法D785により測定):ショアーD45〜70)も巻き取ることができる。
2.広幅(1500mm以上)、長尺(1000〜4000m)のシート・フィルムでも巻き取ることができる。
3.巻取軸がぶれることなく、安定した巻き取りを行うことができ、シート・フィルムの材質や厚みに応じた最適かつ一定の巻取張力で巻き取ることができる。したがって、蛇行や片面ズレなどの巻取不良現象を抑えることができる。
4.軟質薄肉シート・フィルムの巻き取りに際し、サーフェイスロールに対する巻取ロールの接圧(押付力)を自由に調整することにより、空気を巻き込むことなく巻き取りすることができる。
5.一般的なセンターワインダーに必要とされる、ターレット機構などの複雑で大型の装置が不要であることから、構造的に簡単で製造が容易であり、また、設置スペースを節約することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の水平移動式サーフェイス・センター併用ワインダーについて詳細に説明する。
本発明の水平移動式サーフェイス・センター併用ワインダーは、前記したように、水平移動式サーフェイス巻取機構と、センター巻取機構とを有し、巻取開始時は水平移動式サーフェイス巻取機構によって巻き取りを行い、巻取ロールがサーフェイスロール上から水平面上に移動した後は、水平移動式サーフェイス巻取機構とセンター巻取機構が協働してシート・フィルムの巻き取りを行うものである。
図1は、本発明の水平移動式サーフェイス・センター併用ワインダーによる巻取動作の1例を示す概略説明図である。この水平移動式サーフェイス・センター併用ワインダーは、シート・フィルムの巻き取りを、以下のようにして行う。すなわち、成形機、繰出機など(図示せず)から繰り出された巻き取りの対象であるシート・フィルム1は、巻取張力を検知するテンションロール2、シート・フィルムを引っ張るガイドロール3、シート・フィルムのしわを取るエキスパンダーロール4などの各種ロールを介して、図1に示した矢印の方向に運ばれる。そして、ローダーアーム5によって保持されている巻き取り前の待機している巻芯6は、プリドライブローラー7で回転させられ、この回転させられた巻芯6は、ローダーアーム5が下降することにより、水平移動式サーフェイスワインダー用モーター12により回転駆動しているサーフェイスロール8上に乗り、これにより、巻芯6の周りにシート・フィルム1が巻き取られ、水平移動式のサーフェイスワインダー方式による巻き取りが開始する。そして、サーフェイスワインダー方式による巻き取りを行いつつ、いくらかのシート・フィルム1が巻芯6に巻き取られた巻取ロールは、移動装置(図示せず)により、サーフェイスロール上から、サーフェイスロールと接しながら、水平面である巻取ロール支持レール13上のA点に移動する。A点に移動した時点で、巻取ロール9の巻芯6には、駆動軸10が接続され、この駆動軸10は、センターワインダー用モーター11によって回転し、巻取ロール9は回転しながら、図1中の矢印方向に移動して、センターワインダー方式による巻き取りが行われる。すなわち、巻取ロールが水平面上に移動した時点で、それまでの水平移動式のサーフェイスワインダー方式に加えて、センターワインダー方式による巻き取りが開始する。以後、水平移動式のサーフェイスワインダー方式とセンターワインダー方式の両方式が協働して、所定量のシート・フィルムを巻き取ることにより巻き取りが完了する。
【0017】
水平移動式サーフェイス巻取機構は、従来の水平移動式サーフェイスワインダーに採用されている、シート・フィルムの巻き取りを行う機構と同様であり、水平移動式のサーフェイスワインダー方式による巻き取りを実現するのに必要な部材で構成される。具体的には、巻取ロール(巻き取り開始時は巻芯)と面接触するサーフェイスロール、巻芯を保持すると共に、サーフェイスロール上に巻芯を配置させる保持装置、巻き取り開始前の巻芯に回転を付与する装置、巻取ロールを移動させる移動装置、サーフェイスロールに回転力を伝達する駆動装置のほか、適宜の部材で構成される。
【0018】
水平移動式サーフェイス巻取機構は、巻取開始時においては、サーフェイスロール上に保持装置によって保持、配置された巻芯にシート・フィルムの巻き取りを行う。巻き取り初期は、巻取ロールの回転力は、巻取ロールの径が小さいことから、サーフェイスロールの回転力に比べて圧倒的に小さく、また、巻芯の自重がサーフェイスロールとの接圧を高めることから、サーフェイスロールの回転力を巻芯は充分に受けることができる。そのため、巻芯にシート・フィルムをしっかり巻き取ることができる。
【0019】
保持装置は、水平移動式のサーフェイスワインダー方式による巻き取りを行うために、巻芯をサーフェイスロール上に保持、配置するものである。図2に保持装置の1例として、ローダーアーム22を示す。このローダーアーム22は、鉤状の構造物であり、巻芯21をその両端部で保持し、また、図2に示した矢印方向(下方)に動くことによって、巻き取り開始前の待機している巻芯をサーフェイスロール上に配置する。なお、24はローダーアーム用空気シリンダーである。
【0020】
巻き取り開始前の巻芯をサーフェイスロール上に配置する場合、巻芯をサーフェイスロールの周速度と同じ速度で回転させた状態にしてからサーフェイスロール上に配置すると、巻芯の周りにシート・フィルムの最初の巻き付けが、きれいに行われるので、本発明においては、巻き取り開始前の巻芯に回転を付与する装置を設けることが好ましい。巻き取り開始前の巻芯を回転させるための装置の1例を図2に示す。図2に示した該装置は、巻芯21を回転させるプリドライブローラー23、プリドライブローラー23を上下に昇降させるプリドライブローラー用空気シリンダー25で構成される。ローダーアーム22に保持された巻き取り開始前の待機している巻芯21は、巻き取り開始時において、回転するプリドライブローラー23が図2中の矢印方向に下降して巻芯21と接することにより回転させられ、この回転させられた巻芯21は、サーフェイスロールと同速の周速度になったところで、ローダーアームが下降し、サーフェイスロール26上に配置されて水平移動式のサーフェイスワインダー方式による巻き取りが開始する。
【0021】
次いで、上記巻芯にシート・フィルムがいくらか巻き取られた巻取ロールは、移動装置によってサーフェイスロール上から水平面上に移動される。その間、水平移動式のサーフェイスワインダー方式による巻き取りは、中断することなく継続される。図3に移動装置の1例を示す。図3に示した移動装置は、チャックアーム31、チャックシリンダー32、チャックアームフレーム33で構成される。図3に示した例では、チャックアーム31は、ローダーアーム(図示せず)の脇にセットされ、図3に示した矢印方向に移動して、巻き取り開始を待つ巻芯34をボールベアリング36の間にチェックし、シート・フィルムの巻き取りが始まった巻芯34を、サーフェイスロール35上に沿って、水平面上に移動させる。
【0022】
一方、本発明を構成するセンター巻取機構は、巻取ロールが水平面上に移動した後、駆動装置に連結された駆動軸を上記巻芯に接続して、該駆動装置により該駆動軸を通じて巻芯を回転させてシート・フィルムを巻き取る機構であり、センターワインダー方式による巻き取りを実現するための部材で構成される。具体的には、巻芯を回転させる駆動軸、駆動軸に回転を伝達するサーボモーターなどの駆動装置のほか、適宜の部材で構成される。
図4にセンター巻取機構による巻き取り動作の具体的な1例を示す。紙管43に巻取軸44がチャックした巻芯45には、サーフェイスロール41により、シート・フィルム42が巻き取られるが、巻取ロールが水平面上、すなわち、巻取ロール支持レール50上に移動すると、水平移動式のサーフェイスワインダー方式による巻き取りを継続した状態で、巻芯45に駆動軸46が接続され、この駆動軸46は駆動装置47によって回転してセンターワインダー方式による巻き取りが行われる。駆動軸46及び駆動装置47は、例えば、図4に示すように、片側3本のリニアーウェイ48によって架台49に固定される。このように、本発明のワインダーは、巻取ロールがサーフェイスロール上から水平面上に移動した後、水平移動式サーフェイス巻取機構とセンター巻取機構が協働してシート・フィルムの巻き取りを行う。
【0023】
センター巻取機構の駆動軸の位置を決定させるシステムとしては、例えば、ボールネジゲージ機構が挙げられる。図5はボールネジゲージ機構の1例を示す説明図である。図5に示したボールネジゲージ機構は、筒状固定部51、ナット部52、ボールネジ軸53からなり、ボールネジ軸53の回転によりセンター巻取機構駆動部の架台58を前後する機構となっている。このボールネジゲージ機構では、架台58の前後に固定されている筒状固定部51は、ボールネジ軸53の回転に対してフリーな状態にあり、また、ボールネジ軸53と一体となるナット部52はボールネジ軸53の回転により架台58を前後させる機構となっている。なお、55は駆動装置、56はナット部のスライド軸、57は接圧調整用ロードセルである。
【0024】
巻芯に駆動軸を接続させるシステムについては、例えば、巻芯がセンターワインダー方式による巻き取りを開始する水平面上に移動した瞬間をセンサーで感知するようにし、その感知後、直ちに駆動軸を油圧シリンダーで巻芯の巻取軸に接圧し、巻芯をチャックする機構が挙げられる。
【0025】
上記駆動軸には、ラチェットを設けることが好ましい。図6はラチェットを設けた駆動軸の1例を示す説明図である。ラチェット61は、スプライン駆動軸62の回転数が、駆動軸ヘッド63の回転数以上になると、駆動装置(図示せず)のトルクを駆動軸ヘッド63に伝動する機構である。ラチェットを設けた駆動軸の動作について説明すると、ラチェットを設けた駆動軸は、駆動モーターの停止した状態で待機し、駆動軸ヘッド63の回転がフリーの状態で、回転している巻芯に油圧シリンダー65が作動して巻芯に接続される。ラチェットを設けた駆動軸が巻芯に接続すると、駆動モーターが始動し、スプライン駆動軸62の回転数を次第に高め、やがて巻芯の回転に同期する。そして、巻芯の回転数は漸減状況にあることから、駆動装置のトルク伝動が働いて巻取張力に連動した駆動軸に所定の回転が付与される。なお、図6中、64はプーリーである。
駆動軸を巻芯に接続させる場合、巻芯は既に水平移動式サーフェイス巻取機構によって回転しているが、その回転数は、巻取ロールの径に依存し、時間と共に変動(漸減)する。常に回転数が変動する巻芯と駆動軸の回転を同期させることは容易ではないが、上記したように、駆動軸にラチェットを設けることにより、巻芯の回転と駆動軸の回転を容易かつ速やかに同期させることが可能となる。そして、その結果、巻芯と駆動軸の回転を同期させた後、所定の巻取張力に短時間で調整することができる。
【0026】
本発明の水平移動式サーフェイス・センター併用ワインダーにおいては、繰り出されたシート・フィルムの巻取張力を張力測定装置で測定し、該装置で測定した測定値をセンター巻取機構の駆動装置にフィードバックして、該測定値に基づいて駆動軸の回転速度を制御・調整する巻取張力調整機構を設けることが好ましい。巻取張力調整機構は、張力測定装置、測定値に基づいて駆動軸の回転速度を制御・調整する駆動装置のほか、繰り出されたシート・フィルムの巻取張力を所定値に制御するために必要な適宜の部材によって構成される。張力測定装置の例としては、図1で示したテンションロール2、上記駆動装置の例としては、トルクモーターが挙げられる。このテンションロールで測定されたシート・フィルムの巻取張力は、トルクモーターにフィードバックして、その測定値に基づいて駆動軸の回転速度が制御・調整される。その結果、巻取張力は所定値に制御され、シート・フィルムの蛇行や片面ズレなどの巻取不良現象を完全に防止することができる。
【0027】
本発明の水平移動式サーフェイス・センター併用ワインダーにおいては、サーフェイスロールに対する巻取ロールの接圧を圧力測定装置で測定し、該測定値をセンター巻取機構にフィードバックして、該測定値に基づいて、巻取ロールの接圧を所定の値に制御・調整する接圧調整機構を有することが好ましい。接圧調整機構は、圧力測定装置のほか、該測定値に基づいて巻取ロールの接圧を制御・調整するために必要な適宜の部材で構成される。接圧調整機構を設けて、サーフェイスロールに対する巻取ロールの接圧を所定の値に制御することにより、広幅製品であっても、巻取軸のぶれの無い均一な巻き取りを確実に行うことができる。また、接圧を自由に設定できるため、巻取時の空気の巻き込みを確実に防止することができる。
この接圧調整機構における圧力測定装置の例としては、図5に示した接圧調整用ロードセル57が挙げられる。この例では、サーフェイスロールに対する巻取ロールの接圧を、筒状固定部51の後側に取り付けた接圧調整用ロードセル57で測定し、該測定値をボールネジ軸53の回転にフィードバックし、サーフェイスロールと巻取ロールとの接圧をコントロールする。その機構は、接圧調整用ロードセル57の測定値に基づいてボールネジ軸53が回転し、ナット部52をサーフェイスロール側に前進させることから、センター巻取機構をサーフェイスロールに一定の圧力で押し付けることができる。なお、接圧調整用ロードセル57の測定値は、サーフェイスロールと巻取ロールとの接圧を表し、接圧調整用ロードセル57がナット部52を押し付ける圧力を接圧調整用ロードセル57で測定したものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の水平移動式サーフェイス・センター併用ワインダーによる巻取り動作の1例を示す説明図である。
【図2】保持装置の1例を示す説明図である。
【図3】移動装置の1例を示す説明図である。
【図4】センター巻取機構の1例を示す説明図である。
【図5】ボールネジゲージ機構の1例を示す説明図である。
【図6】ラチェットを設けた駆動軸の1例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0029】
1、42…シート・フィルム
2…テンションロール
3…ガイドロール
4…エキスパンダーロール
5、22…ローダーアーム
6、21、34、45…巻芯
7、23…プリドライブローラー
8、26、35、41…サーフェイスロール
9…巻取ロール
10、46、54…駆動軸
11…センターワインダー用モーター
12…水平移動式サーフェイスワインダー用モーター
13、50…巻取ロール支持レール
24…ローダーアーム用空気シリンダー
25…プリドライブローラー用空気シリンダー
31…チャックアーム
32…チャックシリンダー
33…チャックアームフレーム
36…ボールベアリング
43…紙管
44…巻取軸
47、55…駆動装置
48…リニアーウェイ
49…架台
51…筒状固定部
52…ナット部
53…ボールネジ軸
56…ナット部のスライド軸
57…接圧調整用ロードセル
58…センター巻取機構駆動部の架台
61…ラチェット
62…スプライン駆動軸
63…駆動軸ヘッド
64…プーリー
65…油圧シリンダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取開始時は、サーフェイスロール上に保持装置によって保持、配置された巻芯にシート・フィルムの巻き取りを行い、次いで、サーフェイスロールによる巻き取りを継続しつつ、該巻芯にシート・フィルムがいくらか巻き取られた巻取ロールを移動装置で水平面上に移動させてサーフェイスロールによるシート・フィルムの巻き取りを行う水平移動式サーフェイス巻取機構と、上記巻取ロールが水平面上に移動した後、駆動装置に連結された駆動軸を上記巻芯に接続して、該駆動装置により該駆動軸を通じて上記巻芯を回転させてシート・フィルムを巻き取るセンター巻取機構とを有し、上記巻取ロールが水平面上に移動した後、水平移動式サーフェイス巻取機構とセンター巻取機構が協働してシート・フィルムの巻き取りを行う水平移動式サーフェイス・センター併用ワインダー。
【請求項2】
センター巻取機構の駆動軸にラチェットが設けられている請求項1に記載の水平移動式サーフェイス・センター併用ワインダー。
【請求項3】
繰り出されたシート・フィルムの巻取張力を張力測定装置で測定し、該測定値をセンター巻取機構の駆動装置にフィードバックして、該測定値に基づいて駆動軸の回転速度を制御・調整する巻取張力調整機構を有する請求項1または2に記載の水平移動式サーフェイス・センター併用ワインダー。
【請求項4】
繰り出されたシート・フィルムが、成形機から繰り出されたシート・フィルムである請求項3に記載の水平移動式サーフェイス・センター併用ワインダー。
【請求項5】
サーフェイスロールに対する巻取ロールの接圧を圧力測定装置で測定し、該測定値をセンター巻取機構にフィードバックして、該測定値に基づいて巻取ロールの接圧を制御・調整する接圧調整機構を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の水平移動式サーフェイス・センター併用ワインダー。
【請求項6】
センター巻取機構の駆動装置がトルクモーターである請求項1〜5のいずれか1項に記載の水平移動式サーフェイス・センター併用ワインダー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−199405(P2006−199405A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−11453(P2005−11453)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(593157091)株式会社タツノ化学 (4)
【Fターム(参考)】