説明

水底マウンドの締固め工法及び締固め装置

【課題】砂杭造成船を用いた水底マウンドの締固めの際に、水底マウンドに加える締固め押力を随時把握する。
【解決手段】バイブロハンマー16により駆動される系(砂杭造成用中空管12、タンパー14)の重量と、バイブロハンマー16を駆動する電動モーター46の出力(電流値及び/又は電圧値)と、タンパー14の打込み速度とを考慮して、演算装置54において、砂杭造成船10のバイブロハンマー16の動作による水底マウンドMの締固め押力Ruが随時求められる。そして、この締固め押力Ruが、作業者の判断により若しくは自動制御により、適宜制御されることで、水底マウンドMに付与する締固め押力Ruが、水底マウンドMの全体にわたり最適化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂杭造成船を用いた水底マウンドの締固め工法及び締固め装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大型コンテナバース、海面処分場、人工空港島等の建設のために、港湾構造物の沖合への大規模展開化が進んでいるが、大水深海域に築造された防波堤や護岸構造物等は、大水深かつ大層厚の、多くが捨石を構成部材とする混成堤であるマウンド(以下、「水底マウンド」ともいう。)上に構築されている。この、人工的に造成されたマウンド上に構築される護岸構造物等には、より一層の耐震性、耐久性の向上が求められており、その改善のために水底マウンドの締固めを行い、大変形に耐え得るよう高規格マウンド化を図ることが必要不可欠である。
【0003】
従来は潜水士により実施されていた水底マウンドの締固めは、作業効率や安全性をより向上させる観点から、近年では機械式均しへと移行している。しかしながら、機械式均しの導入当初は、コンクリートブロックや重錘等をクレーン船で吊り上げ、水底に自然落下させることにより締固めを行っていたため、重錘等に加わる水抵抗、浮力、着底時のウォータクッション作用等により、締固めエネルギーが大幅に減少し、更には、重錘等に位置ズレ等を生じ、十分なマウンドの締固め効果が得られないことが指摘されていた。この問題の解決のため、水底マウンドの機械均しに、図8、図9に示される砂杭造成船10を導入し、砂杭造成船10の砂杭造成用中空管12の下端部にタンパー(突固め板)14を装着して、中空管頭部に設置されたバイブロハンマー16の上下振動により水底マウンドMの造成を行うことで、密で堅牢な水底マウンドMを得ることが可能となっている(例えば、特許文献1、2、3参照)。なお、図9中、符号Igで示す部分は地盤沈下の抑制が図られた改良地盤であり、この改良地盤Ig上に、砂杭造成船10の砂杭造成用中空管12によって、水底マウンドMが増築されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2663021号公報
【特許文献2】特許第2689002号公報
【特許文献3】特許第2791913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、水底マウンドの多くが捨石による混成堤であることから、水底マウンドの機械均しによる締固めの際のマウンドの挙動は単純ではなく、その沈下による変形特性の把握も容易ではない。例えば、ケーソン重量等の、上部荷重で支える水底マウンドの全体を考えた場合において、平板載荷試験で水底マウンドの地盤反力を簡易に測定することが可能であれば好ましいが、そのための、水中のマウンド全体を測定する載荷試験装置は現実的ではない。仮に、載荷用ブロックを製作して、上部荷重を上回る荷重を強制的に付与する態様の測定試験を想定しても、その実施には、載荷用ブロックの製作、荷重試験、沈下測定の過程を踏まえて、初めて沈下量等に基づく水底マウンドの判定が可能となるものであり、多大な工数や費用が必要となる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、砂杭造成船を用いた水底マウンドの締固めの際に、水底マウンドに加える締固め押力を随時把握し、締固め押力を適宜制御することを可能とし、捨石マウンドの沈下抑制を図り、経験と勘のみに頼ることなく、常に均質で堅牢な高規格の水底マウンドの施工管理を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための、本発明に係る水底マウンドの締固め工法は、砂杭造成船の、砂杭造成用の中空管下端に装着したタンパーを水底地盤に築造したマウンドに押し当て、前記中空管頭部に設置されたバイブロハンマーにより前記タンパーを振動させて、前記マウンドの締固めを行う工法であって、締固め作業中に得られる各部測定値と、事前に把握される値とに基づき、締固め作業中、随時前記マウンドの締固め押力を求め、該締固め押力を適宜制御して、前記マウンドの締固めを行うものである。
又、上記課題を解決するための、本発明に係る水底マウンドの締固め装置は、砂杭造成船の、砂杭造成用の中空管下端に装着されたタンパーと、前記中空管頭部に設置されたバイブロハンマーと、該バイブロハンマーを駆動する電動モーターと、前記マウンドの締固め押力を求める演算装置とを具備し、該演算装置では、締固め作業中に得られる各部測定値と、事前に把握される値とに基づき、締固め作業中、随時前記マウンドの締固め押力が求められ、該締固め押力を適宜制御して、前記マウンドの締固めを行うものである。
【0008】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
(1)砂杭造成船の、砂杭造成用の中空管下端に装着したタンパーを水底地盤に築造したマウンドに押し当て、前記中空管頭部に設置されたバイブロハンマーにより前記タンパーを振動させて、前記マウンドの締固めを行う工法であって、前記バイブロハンマーにより駆動される系の重量と、前記バイブロハンマーを駆動する電動モーターの出力と、前記タンパーの打込み速度とを考慮して、前記マウンドの締固め押力を求め、該締固め押力を適宜制御して、前記マウンドの締固めを行うことを特徴とする水底マウンドの締固め工法(請求項1)。
本項に記載の水底マウンドの締固め工法は、事前に把握可能な、バイブロハンマーにより駆動される系の重量と、適宜計測可能な、バイブロハンマーを駆動する電動モーターの出力と、諸条件に基づき把握可能な、タンパーの打込み速度とを考慮して、砂杭造成船のバイブロハンマーの動作によるマウンドの締固め押力を随時求め、この締固め押力を適宜制御することにより、マウンドに付与する締固め押力を、水底マウンドの全体にわたり最適化するものである。
【0009】
(2)上記(1)項において、前記マウンドの締固め押力を求める際に、前記タンパーの締固め面の面積を考慮する水底マウンドの締固め工法。
本項に記載の水底マウンドの締固め工法は、マウンドの締固め押力を求める際に、タンパーの締固め面の面積を考慮することで、水底マウンドの施工状態の如何に関わらず、水底マウンドに付与する締固め押力を、単位面積毎に最適化し、以って、水底マウンドの全体にわたり締固め押力を最適化するものである。
【0010】
(3)上記(2)項において、前記マウンドの締固め押力を求める際に、前記マウンドの構成部材の大きさを考慮する水底マウンドの締固め工法。
本項に記載の水底マウンドの締固め工法は、マウンドの締固め押力を求める際に、事前に把握可能な、マウンドの構成部材の大きさを考慮することで、マウンドの構成部材の如何に関わらず、水底マウンドに付与する締固め押力を、水底マウンドの全体にわたり最適化するものである。
【0011】
(4)上記(3)項において、前記マウンドの締固め押力Ruを、
Ru=10.2×Pw/(α・A・v+β)×1/Ta×γ ‥‥(I)
に基づき求める水底マウンドの締固め工法。
本項に記載の水底マウンドの締固め工法は、(I)式に基づき、砂杭造成船のバイブロハンマーの動作によるマウンドの締固め押力を随時求め、この締固め押力を適宜制御することにより、マウンドに付与する締固め押力を、水底マウンドの全体にわたり最適化するものである。
【0012】
(5)砂杭造成船の、砂杭造成用の中空管下端に装着されたタンパーと、前記中空管頭部に設置されたバイブロハンマーと、該バイブロハンマーを駆動する電動モーターと、前記バイブロハンマーにより駆動される系の重量、前記バイブロハンマーを駆動する電動モーターの出力、及び、前記タンパーの打込み速度を考慮して、前記マウンドの締固め押力を求める演算装置とが含まれる水底マウンドの締固め装置(請求項5)。
本項に記載の水底マウンドの締固め装置は、事前に把握可能な、バイブロハンマーにより駆動される系の重量と、適宜計測可能な、バイブロハンマーを駆動する電動モーターの出力と、諸条件に基づき把握可能な、タンパーの打込み速度とを考慮して、演算装置において、砂杭造成船のバイブロハンマーの動作によるマウンドの締固め押力が随時求られる。そして、この締固め押力が、作業者の判断により若しくは自動制御により、適宜制御されることで、マウンドに付与する締固め押力が、水底マウンドの全体にわたり最適化されるものである。
【0013】
(6)上記(5)項において、前記演算装置には、前記マウンドの締固め押力を求める際に、前記タンパーの締固め面の面積を考慮する制御ロジックが含まれる水底マウンドの締固め装置(請求項6)。
本項に記載の水底マウンドの締固め装置は、演算装置によりマウンドの締固め押力を求める際に、タンパーの締固め面の面積が考慮されることで、水底マウンドの施工状態の如何に関わらず、水底マウンドに付与する締固め押力が、単位面積毎に最適化され、以って、水底マウンドの全体にわたり締固め押力が最適化されるものである。
【0014】
(7)上記(6)項において、前記演算装置には、前記マウンドの締固め押力を求める際に、前記マウンドの構成部材の大きさを考慮する制御ロジックが含まれる水底マウンドの締固め装置(請求項7)。
本項に記載の水底マウンドの締固め装置は、演算装置によりマウンドの締固め押力を求める際に、事前に把握可能な、マウンドの構成部材の大きさが考慮されることで、マウンドの構成部材の如何に関わらず、水底マウンドに付与される締固め押力が、水底マウンドの全体にわたり最適化されるものである。
【0015】
(8)上記(7)項において、前記演算装置には、
Ru=10.2×Pw/(α・A・v+β)×1/Ta×γ ‥‥(I)
に基づき、前記マウンドの締固め押力Ruを求める制御ロジックが含まれる水底マウンドの締固め装置(請求項8)。
本項に記載の水底マウンドの締固め工法は、演算装置によりマウンドの締固め押力を求める際に、(I)式に基づき、砂杭造成船のバイブロハンマーの動作によるマウンドの締固め押力が随時求められ、この締固め押力が適宜制御されることにより、マウンドに付与する締固め押力が、水底マウンドの全体にわたり最適化されるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明はこのように構成したので、砂杭造成船を用いた水底マウンドの締固めの際に、水底マウンドに加える締固め押力を随時把握し、締固め押力を適宜制御することが可能となる。よって、捨石マウンドの沈下抑制を図り、経験と勘のみに頼ることなく、常に均質で堅牢な高規格の水底マウンドの施工管理を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る水底マウンドの締固め装置の、特徴部分を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る水底マウンドの締固め装置による締固め作業のフローチャートである。
【図3】図2のフローチャートの、締固め押力を求めるステップにおいて実行される演算式の説明図である。
【図4】図2のフローチャートの、締固め押力を求めるステップにおいて得られる、タンパー打込み速度と締固め押力との関係を例示するものであり、(a)はこの関係を異なる均し深度毎に示した図表、(b)は同グラフである。
【図5】本発明の実施の形態に係る水底マウンドの締固め装置を構成する砂杭造成船の、砂杭造成用中空管と、その下端に装着されたタンパーとを示す模式図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る水底マウンドの締固め装置により、水底マウンドの天端面の締固め作業を、タンパーの位置を移動させながら行う手順を一般化して示す説明図である。
【図7】(a)は、図6に丸付き数字1で示された時点の水底マウンド及びタンパーの状態を模式的に例示する水底マウンドの断面図及び平面図であり、(b)は、図6に丸付き数字4で示された時点の同断面図及び平面図である。
【図8】従来の、砂杭造成船を用いた水底マウンドの締固め作業の様子を示す模式図である。
【図9】従来の、砂杭造成船を用いた水底マウンドの締固め作業の様子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分若しくは相当する部分については、同一符号を付して、詳しい説明を省略する。
本発明の実施の形態に係る水底マウンドの締固め装置は、砂杭造成船10を用いて水底マウンドMの締固めを行うものである。砂杭造成船10は、図1(図8、図9も参照)に示されるように、砂杭造成用中空管12の頭部に、ホッパー18と、バイブロハンマー16とが固定されている。又、バイブロハンマー16が、ウインチによって巻取り、繰出される釣り索22に釣り下げられることで、砂杭造成用中空管12は、鉛直に延びるリーダー20に沿って昇降自在となっている。そして、これら砂杭造成用中空管12及びその周辺設備は、平行に一定間隔を空けて三組設けられている。
なお、砂杭造成用中空管12の頭部のホッパー18は、砂杭造成時に構成部材を砂杭造成用中空管12へと投入するためのものであるが、水底マウンドの締固め作業の際にも、追加的に水底マウンド上に石材等を投入する必要がある場合にも用いられる。このような場合には、砂杭造成時と同様に、サンドビン24(図9参照)に投入された石材等がベルトコンベヤ26、リーダー20内を昇降するバケット(図示省略)を介して、ホッパー18へと投入される。
【0019】
又、図5にも示されるように、各々の砂杭造成用中空管12(12A、12B、12C)の下端部には、タンパー14(14A、14B、14C)が固定されている。タンパー14は方形箱状をなし、その中央部には、複数のリブ28によって補強された筒体30が立設されている。そして、筒体30と砂杭造成用中空管12の下端部とが、ボルト等を用いて着脱自在に固定されている。なお、水底マウンドの締固め作業の際に、追加的に石材等を投入する場合には、タンパー14の底面(締固め面)に筒体30の貫通孔を有するものを用い、砂杭造成用中空管12及び筒体30を介して、この貫通孔から石材等を放出する。
なお、本発明の実施の形態では、図7に示されるように、各砂杭造成用中空管12A、12B、12Cは5.4mの間隔を空けて設けられている。又、各タンパー14A、14B、14Cは一片が3mの方形をなしている。
【0020】
又、砂杭造成船10には、ロープ32に垂下されたフロート重錘34が着水するように設けられており、ロープ32の巻取り装置36に設けられた、いわゆるセルシン発信器等のセンサー38により、ロープ32の繰出し量に基づき喫水値を把握することができる。又、砂杭造成用中空管12にもロープ40が連結され、ロープ40の巻取り装置42に設けられたセルシン発信器等のセンサー44により、ロープ40の繰出し量に基づき深度値を把握することができる。更に、バイブロハンマー16を駆動する電動モーター46の電流値を検出するセンサー48を備えている、なお、砂杭造成船10には、潮位値を測るセンサー50も設けられている。
【0021】
又、砂杭造成船10の操船室52には、マウンドMの締固め押力を求めることが可能な演算装置54が設けられている。この演算装置54は、パーソナルコンピュータ等の演算処理装置56を含み、センサー38、44、48、50により得られた検知信号を、A/D変換部58を介して受取り、なおかつ、初期設定、パラメータ入力、タイマーのカウントを勘案して、計算、表示、記録、異常警報等を出力するものである。そして、モニター等の表示部60に、初期設定値、パラメータ、時間等の各データと共に、追って詳述する手法により得られる、水底マウンドMの締固め押力Ruを表示するものである。なお、表示部60の符号62で示される表示領域は、タンパー14の深度を視覚的に表すものである。
【0022】
そして、本発明の実施の形態に係る水底マウンドの締固め装置を用いた、水底マウンドMの締固め作業は、図6、図7に例示される手順で行われる。図6は、タンパー14の位置を移動させながら、水底マウンドMの締固め作業を行う手順を一般化して示したものであり、水底マウンドMの天端面を、説明の便宜上複数の枡に区分けして示したものである。そして、各枡内の丸付き数字1〜12は、同一の数字の部分が、三組のタンパー14A、14B、14Cによって同時に締固めされることを意味している。
【0023】
具体的には、まず丸付き数字1で示される部分(A行:101列、103列、105列)の締固めを行い、次に砂杭造成船10を移動させて丸付き数字2で示される部分(A行:102列、104列、106列)の締固めを行い、続いて丸付き数字3で示される部分(B行:102列、104列、106列)、丸付き数字4で示される部分(B行:101列、103列、105列)‥‥、といった作業を、水底マウンドの全体に渡って行うものである。
なお、本実施の形態では、各砂杭造成用中空管12A、12B、12Cの間隔と、各タンパー14A、14B、14Cの一片の長さとの関係から、図7(a)、(b)に示されるように、隣接する枡同士が一部重なるように、締固め作業が行われる。
【0024】
この際、演算装置54では、バイブロハンマーにより駆動される系、すなわち、砂杭造成用中空管12及びタンパー14(必要に応じホッパー18も含む)の重量、バイブロハンマー16を駆動する電動モーター46の出力、及び、タンパーの打込み速度等を考慮して、水底マウンドMの締固め押力Ruを求め、該締固め押力を適宜制御して、前記マウンドの締固めを行うものである。その具体的手順について、以下に、図1〜図3、図5を参照しながら説明する。
【0025】
(S0)タンパー14の位置が、水底マウンドMの締固め作業の施工位置(最初は図6の丸付き数字1で例示される位置)となるように砂杭造成船10を移動させ、碇等によって砂杭造成船10を位置固定する。そして、必要な初期設定値を演算装置54に入力する。
(S10)締固め作業を行う際のタンパー下降測深を、センサー38、44、50の測定結果を考慮しつつ、ロープ40の繰出し量により求める。
(S20)バイブロハンマー16を作動させる。
(S30)S10で得られたタンパー下降測深に基づき、タンパー14を水底マウンドMの天端面に当接するように下降させて、転圧均しを行う。
【0026】
(S40)演算装置54において、センサー38、44、48、50から、バイブロハンマー電流値(電動モーター46の電流値)、深度値、喫水値、潮位値を取得する。併せて、タイマーカウントを取得する。
(S50)演算装置54において、センサー48からバイブロハンマー電流値を取得し、打ち込み速度vを求める。打ち込み速度vとは、タンパー14が水底マウンドMの天端面に当接した地点から規定深度までの移動距離とそれに要する時間を意味し、移動距離を時間で除して求めることができる。
【0027】
(S60)演算装置54において、水底マウンドMの締固め押力Ruを求める。具体的には、演算装置54の演算処理装置56において、図3に示される数式
Ru=10.2×Pw/(α・A・v+β)×1/Ta×γ ‥‥(I)
に沿った演算を行うことにより、水底マウンドMの締固め押力Ruを求めるものである。
この(I)式は、港湾構造物の基礎杭の支持力管理を目的としてバイブロハンマー工法技術研究会が推奨する、杭の支持力を算出する式を基礎に、本発明者らの鋭意実験・検討の結果、水底マウンドMの締固め押力Ruを正確に得ることを可能としたものである。締固め押力Ruは、エネルギーの釣り合いから求められるものであり、概説すれば、バイブロハンマーの特性によりエネルギーを放出する時間単位を取り入れ、加えた仕事量と加えられたタンパーの運動エネルギー(打ち込み速度)との関係からRuが求められるものである。
なお、水底マウンドMの締固め押力Ruは、タンパー14A、14B、14Cの各々について求められるものである。
【0028】
ところで、(I)式において、1/Taを掛けているのは、本発明の実施の形態で用い垂れている一片が3mのタンパー14の、締固め面の面積Ta=3(m)×3(m)=9(m)を考慮することにより、単位面積当りの締固め押力Ruを得るためである。又、水底マウンドMの構成部材である石の大きさを考慮して、係数γを掛けている。石の大きさは、例えば、施工地の石材調達場所等によっても異なるものであり、一個当り50kg以下から300kg以上まで、様々な大きさとなる。(I)式では、図3に示すようにγ値を0.27から0.35の範囲で設定することで、石の大きさの違いを締固め押力Ruに正確に反映することが可能となる。なお、これら1/Ta及びγの値は、必要に応じ適宜考慮されるものである。
(I)式で適用可能な打止め時の電流値Iの範囲は、電動モーター46の定格電流値の150%以内とする。ここでの用語「打止め時」は、目標とする締固め押力以上で尚かつ規定深度を満足することを意味するものである。又、振動周波数を考慮した貫入速度係数αは、バイブロハンマーの性能と先端抵抗による速度の関係を意味し、バイブロハンマーの振動数を使用する発電機の周波数で除することによって求め、係数化したものである。
【0029】
(S70)演算装置54において、水底マウンドMの締固め押力Ruを、予め設定された目標締固め押力と比較する。S60で得られた水底マウンドMの締固め押力Ruは、図1に示されるように、表示部60に表示されるので、締固め押力Ruが目標値を下回る場合には、作業者の操作により必要な設定変更を行い、あるいは、演算装置54の演算処理装置56に設定変更ロジックを予め組み込んでおくことにより、自動的に必要な設定変更を行い、S30〜S70を繰り返す。
(S80)S70において、締固め押力Ruが目標値を以上と判断された場合には、その時点でのタンパー14の位置(均し深度)が規定深度であるか否かを、演算装置54においてセンサー44の深度値から把握する。そして、タンパー14の深度値は、図1に示されるように、表示部60に表示されるので、深度値が規定深度ではない場合には、作業者の操作により各部の設定変更を行い、あるいは、演算装置54の演算処理装置56に設定変更ロジックを予め組み込んでおくことにより、自動的に各部の設定変更を行い、S30〜S80を繰り返す。
【0030】
(S90)S80において、タンパー14の位置(均し深度)が規定深度にあると判断された場合には、その時点での締固め押力Ruの値を、演算装置54の演算処理装置56に記録する。
(S100)釣り索22を巻き上げて砂杭造成用中空管12を上昇させ、タンパー巻上げを行う。
(S110)バイブロハンマー16を停止させる。
以降、水底マウンドMの締固め施工位置を、図6、図7に例示した手順で変更し、S0〜S110を繰り返し、水底マウンドMの全体にわたり締固め作業を行う。
【0031】
図4には、図2のS60において求められる、水底マウンドMの締固め押力Ruが、タンパー打込み速度vとの関係で例示されている。具体的には、バイブロハンマー16に300kw仕様(偏心モーメントK=3920N・m)が用いられ、水底マウンドMの構成部材である石の大きさが99kg/個以下(係数γ=0.35)である場合を、異なる均し深度毎に示したものである。傾向として、均し深度の如何にかかわらず、タンパー打込み速度vが遅いほど締固め押力Ruは大きくなり、又、均し深度が深い程締固め押力Ruは増加することが把握される。上述の水底マウンドMの締固め作業では、このようにして把握される締固め押力Ruを、適宜制御して、水底マウンドMの締固めを進めるものである。
【0032】
さて、上記構成をなす、本発明の実施野形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。
すなわち、発明の実施の形態に係る水底マウンドの締固め装置は、事前に把握可能な、バイブロハンマー16により駆動される系(砂杭造成用中空管12、タンパー14)の重量と、適宜計測可能な、バイブロハンマー16を駆動する電動モーター46の出力(電流値)と、諸条件に基づき把握可能な、タンパー14の打込み速度vとを考慮して、演算装置54において、砂杭造成船10のバイブロハンマー16の動作による水底マウンドMの締固め押力Ruが随時求められる(S60)。そして、この締固め押力Ruが、作業者の判断により若しくは自動制御により、適宜制御されることで、水底マウンドMに付与する締固め押力Ruが、水底マウンドMの全体にわたり最適化されるものである。
【0033】
又、本発明の実施の形態では、演算装置54により水底マウンドMの締固め押力Ruを求める際に、タンパーの締固め面の面積Taが考慮されることで、水底マウンドMの施工状態の如何に関わらず、水底マウンドMに付与する締固め押力Ruが、単位面積毎に最適化され、以って、水底マウンドMの全体にわたり締固め押力Ruが最適化されるものである。
更に、演算装置54により水底マウンドMの締固め押力Ruを求める際に、事前に把握可能な、水底マウンドMの構成部材の大きさが考慮されることで(係数γ)、水底マウンドMの構成部材の如何に関わらず、水底マウンドMに付与される締固め押力Ruが、水底マウンドMの全体にわたり最適化されるものである。
【符号の説明】
【0034】
10:砂杭造成船、12:砂杭造成用中空管、14:タンパー、16:バイブロハンマー、 38、44、48、50:センサー、46:電動モーター、54:演算装置、56:演算処理装置、M:水底マウンド、Ru:締固め押力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂杭造成船の、砂杭造成用の中空管下端に装着したタンパーを水底地盤に築造したマウンドに押し当て、前記中空管頭部に設置されたバイブロハンマーにより前記タンパーを振動させて、前記マウンドの締固めを行う工法であって、
前記バイブロハンマーにより駆動される系の重量と、前記バイブロハンマーを駆動する電動モーターの出力と、前記タンパーの打込み速度とを考慮して、前記マウンドの締固め押力を求め、該締固め押力を適宜制御して、前記マウンドの締固めを行うことを特徴とする水底マウンドの締固め工法。
【請求項2】
前記マウンドの締固め押力を求める際に、前記タンパーの締固め面の面積を考慮することを特徴とする請求項1記載の水底マウンドの締固め工法。
【請求項3】
前記マウンドの締固め押力を求める際に、前記マウンドの構成部材の大きさを考慮することを特徴とする請求項2記載の水底マウンドの締固め工法。
【請求項4】
前記マウンドの締固め押力Ruを、
Ru=10.2×Pw/(α・A・v+β)×1/Ta×γ
Pw:タンパー打止め時のモーター実出力
Pw=1.3×I×E×10−3
:打止め時の最大電流値
E:打止め時の最低電圧値
α:バイブロハンマーの振動周波数を考慮した貫入速度係数
f:振動周波数
A:計算振幅
A=(K/g)/(Wν+Wp)×10
K:偏心モーメント
g:重力加速度
Wν:バイブロハンマーの振動重量
Wp:浮力を考慮した中空管重量
v:タンパー打込み速度
β:振動による抵抗の低減率を考慮した係数
Ta:タンパーの締固め面の面積
γ:マウンドの構成部材の大きさを考慮した係数
に基づき求めることを特徴とする請求項4記載の水底マウンドの締固め工法。
【請求項5】
砂杭造成船の、砂杭造成用の中空管下端に装着されたタンパーと、前記中空管頭部に設置されたバイブロハンマーと、該バイブロハンマーを駆動する電動モーターと、
前記バイブロハンマーにより駆動される系の重量、前記バイブロハンマーを駆動する電動モーターの出力、及び、前記タンパーの打込み速度を考慮して、前記マウンドの締固め押力を求める演算装置とが含まれることを特徴とする水底マウンドの締固め装置。
【請求項6】
前記演算装置には、前記マウンドの締固め押力を求める際に、前記タンパーの締固め面の面積を考慮する制御ロジックが含まれることを特徴とする請求項5記載の水底マウンドの締固め装置。
【請求項7】
前記演算装置には、前記マウンドの締固め押力を求める際に、前記マウンドの構成部材の大きさを考慮する制御ロジックが含まれることを特徴とする請求項6記載の水底マウンドの締固め装置。
【請求項8】
前記演算装置には、
Ru=10.2×Pw/(α・A・v+β)×1/Ta×γ
Pw:タンパー打止め時のモーター実出力
Pw=1.3×I×E×10−3
:打止め時の最大電流値
E:打止め時の最低電圧値
α:バイブロハンマーの振動周波数を考慮した貫入速度係数
f:振動周波数
A:計算振幅
A=(K/g)/(Wν+Wp)×10
K:偏心モーメント
g:重力加速度
Wν:バイブロハンマーの振動重量
Wp:浮力を考慮した中空管重量
v:タンパー打込み速度
β:振動による抵抗の低減率を考慮した係数
Ta:タンパーの締固め面の面積
γ:マウンドの構成部材の大きさを考慮した係数
に基づき、前記マウンドの締固め押力Ruを求める制御ロジックが含まれることを特徴とする請求項7記載の水底マウンドの締固め装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−127287(P2011−127287A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284207(P2009−284207)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000172961)あおみ建設株式会社 (21)
【Fターム(参考)】