説明

水引およびその製造方法

【課題】接着剤を用いないで製造できて、外観美麗な水引の提供。
【解決手段】紙撚芯21a等からなる芯材21と、該芯材21の表面に巻き付けられ、巻き付け後に加熱されることによって形状が保持される合成樹脂からなる保形用線状体32とを有する水引11。芯材21の表面に、上記保形用線状体32と必要な装飾用線状体33,34を巻き付けた後、これらを、保形用線状体32が溶けない温度で加熱して保形用線状体32の巻き付け状態を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば慶弔や装飾、手芸等において用いられる水引に関する。
【背景技術】
【0002】
水引は、古くはこよりに糊を引いてかためてから染めて製造されていた。しかし、装飾効果を高めるため、こより等の芯材の表面に糸やテープを巻き付けて構成されるようになった。このような水引として下記特許文献1〜5の開示されているようなものがある。
【0003】
特許文献1の水引は、水引芯に、蒸着プラスチックフィルムや絹様糸からなる色分けされた巻き付け糸が、接着剤を用いて、密あるいは粗に巻き付けられたものである。
【0004】
特許文献2の水引は、紙撚芯に、蒸着プラスチックフィルムまたは金属箔の細長片が接着剤層を介して隙間なく巻付けられ、人造絹またはナイロン糸が隙間をあけて巻付けられたものである。
【0005】
特許文献3の水引は、任意の色をした紙芯に、金属箔または蒸着プラスチックフィルムの細長片をあらく巻付け、その上に透明なフィルムの細長片を密に巻きつけたものである。いずれのフィルムの細長片も接着剤を用いて巻付けられる。
【0006】
特許文献4の水引は、紙撚芯の外周に、金属蒸着層を積層した箔状物のスリット糸を、金属蒸着層を外側にして巻付けたものである。巻付けは接着剤によって行われる。
【0007】
特許文献5の水引は、可塑性の樹脂線状体を芯にして、その外周面を溶解性の接着剤を介して耐水性の装飾テープ箔で被包したものである。
【0008】
このように、水引は、芯や巻付ける糸等に工夫がなされ、装飾性を高める工夫がなされている。また、たとえば特許文献5の水引においては、加工形状の保持性能が良好で、耐久性も高いという、機能面での工夫もなされている。
【0009】
しかし、上記いずれの水引においても、糸やテープの巻付けは、接着剤を用いて行うものである。このため、接着剤のはみ出し等により外観が損なわれたり、接着不良が発生したりすることがある。また、接着剤を用いずに糸やテープの巻付けが行われた水引はなかった。
【0010】
【特許文献1】実開昭57−1894号公報
【特許文献2】実公昭60−21427号公報
【特許文献3】実開昭58−176989号公報
【特許文献4】実公昭61−20065号公報
【特許文献5】実公昭62−45022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、この発明は、接着剤を用いずに製造できるようにすることを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そのための手段は、芯材と、該芯材の表面に巻き付けられ、巻き付け後に加熱されることによって形状が保持された合成樹脂からなる線状体とを有する水引である。すなわち、水引は、芯材の表面に合成樹脂からなる線状体を巻き付けた後、これら芯材と線状体を、線状体が溶けない温度で加熱して線状体の巻き付け状態を保持することによって製造される。
【0013】
つまり、水引は、接着剤を用いずに製造することができるので、接着剤のはみ出し等により外観が損なわれることはなく、また、部分的に接着不良が発生したりすることもない。さらに、線状体は熱により形状が固定されているので、製造後に、剥がれたりするようなこともない。
【0014】
そのうえ、製造に際しては、芯材に対して線状体を巻き付けてからそのまま加熱工程に移行すればよいので、製造は容易に行える。
【0015】
上記線状体には、たとえばポリエチレン等の適宜の構成樹脂からなるモノフィラメント糸やテープヤーンなどが使用できる。また、それ自体が肉眼で視認可能な太さと色などの装飾を有したものであるも、肉眼では容易に視認不可能な太さのものであるも、適宜使用される。
【0016】
特に後者の場合には、線状体の下または上に、合成樹脂からなる装飾用線状体が巻き付けられるとよい。装飾用線状体としては、たとえば、テープヤーンや無撚糸、撚糸等が好適に使用できる。
【0017】
また、線状体自体が芯材に巻き付いた状態を維持するので、芯材には、紙撚芯のほかに、たとえば各種の糸や伸縮可能な糸もしくは紐状のゴムなどを使用することもできる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、この発明によれば、水引を容易に製造できる上に、線状体自らの形状保持能力により巻付け状態が保持されるので、従来のように接着剤によって巻付け状態を保持していた場合に比して、汚れによる外観の損傷、接着不良、製造後の剥がれなどの不都合が解消できる。
このため、外観美麗で装飾効果の高い水引を得ることができる。
【0019】
また、線状体自体が芯材に対する巻き付き状態を維持するので、芯材がたとえば伸縮するものであっても剥がれたりすることはなく、伸縮等の機能を有する水引を得ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、水引11の概略構造を示す斜視図であり、この図に示すように水引11は、芯材21の周囲に、被覆材31を被覆して構成されている。
【0021】
また、図2は、水引11の製造方法を示す概略説明図であり、この図に示すように水引11は、巻付け工程(a),(b)、加熱工程(c)を経て製造される。すなわち、一直線に伸ばした芯材21に対して、被覆材31を構成するための線状の部材を巻き付ける。次に、これらを加熱して、被覆材31の巻付け状態を保持する。図中41は、ヒータである。この後は、必要に応じて切断等の必要な後処理がなされる。
【0022】
上記芯材21には、紙撚芯のほか、糸、金属製や合成樹脂製の線材、伸縮性を有する紐または糸状のゴム等が適宜使用される。
【0023】
上記被覆材31を構成するための線状の部材は、得ようとする外観に応じて適宜選択され組み合わされるが、少なくとも保形用線状体を有する。保形用線状体は、芯材21の表面に巻き付けられ、巻付け後に加熱されることによって形状が保持される合成樹脂製のものである。
【0024】
この保形用線状体には、たとえばポリエチレンなどからなるモノフィラメント糸等が好適に用いられる。好ましくは、生分解性の材料からなるものであると、使用後の処理が容易で、環境に負担をかけないのでよい。
【0025】
保形用線状体のほかには、必要に応じて、合成樹脂等からなる装飾用線状体が使用される。この装飾用線状体には、たとえば蒸着やその他の適宜手段より色彩、模様、光沢、透光性等を有する合成樹脂フィルムを細幅テープ状にカットして得られるテープヤーンや、無撚糸、撚糸などが使用できる。
【0026】
図3、図4、図5が、被覆材31を構成するための線状の部材、すなわち保形用線状体、または保形用線状体と装飾用線状体の組合せの例を示している。なお、図3では、芯材21に紙撚芯21aを用いた水引11の例を示し、図4、図5、図6では、芯材21にゴム芯21bを用いた水引11の例を示す。
【0027】
図3は、ポリエチレンまたはポリエステルからなるモノフィラメント糸(好ましくは生分解性のもの)を保形用線状体32として用いた例を示す。この場合の保形用線状体32は、肉眼で視認可能な太さを有し、適宜の色・柄等を呈する円形断面ものが使用される。つまり、保形用線状体32は装飾の機能も有する。紙撚芯21aが直径1mm程であるのに対して、保形用線状体32は、たとえば200〜350デニール、好ましくは280デニールほどのものが好適に使用できる。
【0028】
図3(a)は、上記のような保形用線状体32を巻付け工程において密に巻き付けた例である。加熱工程を経ることによって、保形用線状体32は紙撚芯21aに対して巻き付いた形に保持されるとともに、巻付け時の力によって紙撚芯21aに対して食い込む様に巻き付くので、保形用線状体32が引っ張られても容易に外れるようなことはない。また、上述のように密に巻きつけると、保形用線状体32が円形断面を有するので、表面に微妙な凹凸ができ、落ち着いた感じの美麗な外観を呈する。しかも、結んだ時に滑りにくく、結ぶ時の作業性も良好な水引が得られる。
【0029】
なお、加熱工程での加熱温度は、保形用線状体32が溶けずに形状保持ができる温度、たとえば100〜150度くらいに設定するとよい。以下、同様である。
【0030】
図3(b)は、上記のような保形用線状体32を巻付け工程において粗に巻き付けるとともに、保形用線状体32の間の隙間に、装飾用線状体としてのテープヤーン33を巻き付けた例である。テープヤーン33は、保形用線状体32とは異なる適宜の色・柄を有するものであって、特に、金銀あるいは光沢を有するものを使用するのを使用するのが好ましい。保形用線状体32とテープヤーン33の巻き付けは、それぞれ別々に行うこともできるもが、同時に行う方が工程を少なくできるのでよい。保形用線状体32と装飾用線状体としてのテープヤーン33との組合せにより美麗な外観が得られる。また、結んだ時には保形用線状体32同士が噛み合うので滑りにくく、結ぶ時の作業性も良好である。
【0031】
図3(c)は、巻付け工程において、保形用線状体32を粗に巻き付けるとともに、保形用線状体32を覆うように、装飾用線状体としてのテープヤーン33を巻き付けた例である。
【0032】
図4も、ポリエチレンまたはポリエステルからなるモノフィラメント糸(好ましくは生分解性のもの)を保形用線状体32として用いた例を示し、この場合の保形用線状体32も、肉眼で視認可能な太さを有し、適宜の色・柄等を呈するものが使用される。つまり、保形用線状体32は装飾の機能も有する。ゴム芯21bが直径1mm程であるのに対して、保形用線状体32は、たとえば200〜350デニール、好ましくは280デニール程度のものが好適に使用できる。
【0033】
図4(a)は、図3(a)の場合と同様に、巻付け工程において保形用線状体32を密に巻き付けた例である。保形用線状体32は加熱工程を経ることによって、ゴム芯21bに巻き付いたときの形状に保持されるので、不測に外れることはなく、ゴム芯21bの伸縮を阻害することもない。
【0034】
図4(b)は、巻付け工程において保形用線状体32を密に巻き付けるとともに、装飾用線状体としての無撚糸34を、保形用線状体32の上に密に巻き付けた例である。保形用線状体32は加熱工程を経ることによって、ゴム芯21bに巻き付いたときの形状に保持され、この上に位置する無撚糸34は、端部が引っ張られると水引11の径方向に縮もうとするので、保形用線状体32間に食い込もうとする。この結果、無撚糸34が解けることはない。なお、無撚糸34と保形用線状体32の配置は逆であるもよい。
【0035】
図5も、ポリエチレンまたはポリエステルからなるモノフィラメント糸(好ましくは生分解性のもの)を保形用線状体として用いた例を示すが、この場合の保形用線状体32,33は、肉眼で視認可能な太さを有し、適宜の色・柄等を呈し、装飾の機能も有する保形用線状体(第1保形用線状体32a)と、肉眼では容易に視認困難な太さを有し、透明に近い外観を呈して、装飾の機能を有しない保形用線状体(第2保形用線状体32b)が使用される。第2保形用線状体32bには、芯材が直径1mm程であるのに対して、たとえば10〜30デニール、好ましくは15〜20デニールのものが好適に使用できる。
【0036】
すなわち、図5は、巻付け工程において、第1保形用線状体32aをゴム芯21bに対して密に巻き付けるとともに、この第1保形用線状体32aの上に、装飾用線状体としてのテープヤーン33を密にまたは粗に巻き付ける。巻付けに際しては、第1保形用線状体32aの巻く方向と、テープヤーン33の巻く方向を逆に設定すると、水引11に歪が発生しないのでよい。そして、これらの上に、上記第2保形用線状体32bを巻き付ける。
【0037】
このように第1保形用線状体32aとテープヤーン33と第2保形用線状体32bとからなる水引11では、加熱工程を経ることによって、第1保形用線状体32aと第2保形用線状体32bの形状が巻き付き状態に保たれる。このため、第2保形用線状体32bがテープヤーン33を上から押えることになるため、テープヤーン33の巻き付き状態が保持されるとともに、テープヤーン33が引っ張られたときには、テープヤーン33は水引11の径方向に縮もうとするので、第1保形用線状体32a間に食い込んで、解けるようなことはない。
【0038】
図6は、上記第2保形用線状体32bと同様の、細く、装飾性を有しない保形用線状体32のみを用いた例を示す。
【0039】
すなわち、図6(a)は、巻付け工程において、装飾用線状体としての無撚糸34とテープヤーン33とをそれぞれ粗に巻き付けるとともに、これらの上に、2本の線状体32,32をS撚り方向およびZ撚り方向に巻き付けている。2本の保形用線状体32,32が無撚糸34とテープヤーン33とを覆うように巻き付き、その形状が保持される。しかも、保形用線状体32,32が引っ張られたときには、保形用線状体32,32は、径方向に縮もうとするため、解けるようなことはない。
【0040】
図6(b)は、装飾用線状体を無撚糸34のみで構成した例を示す。保形用線状体32は、ゴム芯21bに対して密に巻き付けた無撚糸34の上から粗に巻付けられる。
【0041】
上記図3〜図6に例示したように、保形用線状体32のみ、または保形用線状体32と装飾用線状体を適宜組み合わせて巻き付け、加熱処理するだけで製造できるので、従来のように接着剤が必要なことはない。このため、接着剤の過不足による接着不良や接着ムラ、汚れ等の不都合を回避し、製造を容易にし、生産効率を上げることもできる。また、接着剤が不要であるため、接着される芯材および被覆材と接着剤の相性に関わりなく水引の製造ができる。
【0042】
これらの結果、所望の美麗な外観やバリエーションに富んだ外観、所望の機能を得ることができ、水引の利用範囲を格段に広げ、さまざまな分野において使用される水引を得ることができる。
【0043】
その一例として、芯材を伸縮可能なゴム芯で構成した場合には、外観美麗であるとともに、伸縮性を有する。しかも、保形用線状体が芯材に対する巻付け状態を維持するので、芯材がゴム芯21bであっても剥がれたりすることはなく、伸縮等の機能に支障はない。このため、編織物で被覆されて構成されていた従来のゴム紐にとって代わる機能を有した水引とすることができる。
【0044】
この発明の構成と、上記一形態の構成との対応において、
この発明の芯材は、上記紙撚芯21a、ゴム芯21bに対応し、
同様に、
線状体は、保形用線状体32、第1保形用線状体32a、第2保形用線状体32bに対応し、
装飾用線状体は、テープヤーン33、無撚糸34に対応するも、
この発明は、上記一形態の構成のみに限定されるものではなく、その他の形態を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】水引の概略構造を示す斜視図。
【図2】水引の製造工程を示す説明図。
【図3】水引の構造を示す説明図。
【図4】水引の構造を示す説明図。
【図5】水引の構造を示す説明図。
【図6】水引の構造を示す説明図。
【符号の説明】
【0046】
11…水引
21…芯材
21a…紙撚芯
21b…ゴム芯
32…保形用線状体
32a…第1保形用線状体
32b…第2保形用線状体
33…テープヤーン
34…無撚糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、該芯材の表面に巻き付けられ、巻き付け後に加熱されることによって形状が保持された合成樹脂からなる線状体とを有する
水引。
【請求項2】
前記線状体の下または上に、合成樹脂からなる装飾用線状体が巻き付けられた
請求項1に記載の水引。
【請求項3】
前記芯材が、伸縮可能なゴムからなる
請求項1または請求項2に記載の水引。
【請求項4】
前記線状体が、200〜350デニールのモノフィラメント糸である
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の水引。
【請求項5】
前記線状体が、10〜30デニールのモノフィラメント糸である
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の水引。
【請求項6】
芯材の表面に合成樹脂からなる線状体を巻き付けた後、これら芯材と線状体を、線状体が溶けない温度で加熱して線状体の巻き付け状態を保持する
水引の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−2038(P2008−2038A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−174914(P2006−174914)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(000153982)株式会社さん・おいけ (5)
【Fターム(参考)】