説明

水性インキ組成物

【課題】 防黴効果があり、長期保管しても安定な水性インキ組成物を提供する。
【解決手段】 水と着色剤と、防腐・防黴剤として2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンを400ppm〜800ppm、及び2−ピリジンチオール−1−オキサイド・ナトリウム塩を600ppm〜1,300ppmとからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性インキ組成物に関する。更に詳しくは、防黴効果があり、保存安定性にも優れる水性インキ組成物。
【背景技術】
【0002】
従来、水性インキ組成物は、水可溶性の直接染料、酸性染料及び塩基性染料を水性媒体中に溶解し、湿潤剤、pH調整剤、防黴剤等の添加剤を加えてなることが知られている(非特許文献1参照)。
特許文献1の水性インキの実施例4には黒色直接染料であるC.I.ダイレクトブラック19を8重量%と防黴剤としての2−ピリジンチオール−1−オキサイド・ナトリウム塩を10000ppm使用した水性インキが開示されている。
特許文献2の筆記具用水性インキ組成物の実施例4には黒色直接染料であるC.I.ダイレクトブラック19を8重量%と防黴剤として1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンを10%含有するプロキセルXL−2を0.8%を使用したことより、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンを800ppm使用したインキが開示されている。
更には、特許文献3の筆記具用水性インキ組成物には、抗菌性物質として1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンと2−ピリジンチオール−1−オキサイド・ナトリウム塩を1:0.3〜1:3の配合比で併用し、200ppm〜900ppm添加して、不完全真菌であるペシロミセスsp.への抗菌性を得ることが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】(社)有機合成化学協会 編「染料便覧」丸善(株)、1957年7月20日(第237頁〜第239頁)
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2769838号公報
【特許文献2】特開2007−217592号公報
【特許文献3】特開2011−046893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、着色剤として黒色直接染料を用いた水性染料インキ組成物は、インキ吸蔵体である中綿を用いた筆記具に於いてはカスレ等の筆記不良を起こしてしまうといった問題点があるため、使用量を抑えなくてはならないが、使用量を抑えると防黴効果を有する染料中のオルトフェニルジアミン基の量が少なくなる為に、防黴効果が得られなくなるといった問題点がある。
そこで、特許文献1に開示されているように、2−ピリジンチオール−1−オキサイド・ナトリウム塩を大量に使用すると、防黴効果は得られるものの、時間経過とともに色味を変化させてしまうという問題点を有している。
また、特許文献2に開示されているように1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンを大量に使用しても時間経過とともに直接染料に吸着されてしまい、防黴効果が弱くなってしまう。
更に、特許文献3に開示されているような、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンと2−ピリジンチオール−1−オキサイド・ナトリウム塩との配合比率や配合量では、例えばJIS指定黴のAspergillus niger FERM S−1、Aspergillus niger FERM S−2、Aspergillus niger FERM S−3、Eurotium tonophilum FERM S−4、Penicillium citrinum FERM S−5、Penicillium funiculosum FERM S−6、Cladosporium Cladosporioides FERM S−8、Aureobasidium pullulans FERM S−9、Gliocladium virens FERM S−10、Chaetomium globosum FERM S−11、Fusarium proliferatum FERM S−12、Mirothecium verrucaria FERM S−13等への十分な防黴効果を得ることはできない。
本発明は、防黴効果を有し、保存安定性にも優れる水性インキ組成物とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水と、着色剤と、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンが400ppm〜800ppmと、2−ピリジンチオール−1−オキサイド・ナトリウム塩が600ppm〜13000ppmである水性インキ組成物を要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水性インキ組成物は、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンを400ppm〜800ppm使用することにより初期における防黴効果を得ることはできるが、時間経過とともに黒色直接染料に吸着されてしまい防黴効果が弱まってしまう。そこで更に2−ピリジンチオール−1−オキサイド・ナトリウム塩を600ppm〜13000ppm添加することにより時間の経過による防黴性の低下を補うことができるのである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に使用する着色剤は、従来の水性インキに用いられる染料及び顔料が使用可能である。染料では酸性染料、直接染料、塩基性染料等のいずれも用いることができる。その一例を挙げれば、ジャパノールファストブラックDコンク(C.I.ダイレクトブラック17)、ウォーターブラック100L(同19)、ウォーターブラックL−200(同19)、ダイレクトファストブラックB(同22)、ダイレクトファストブラックAB(同32)、ダイレクトディープブラックEX(同38)、ダイレクトファストブラックコンク(同51)、カヤラススプラグレイVGN(同71)、カヤラスダイレクトブリリアントエローG(C.I.ダイレクトエロー4)、ダイレクトファストエロー5GL(同26)、アイゼンプリムラエローGCLH(同44)、ダイレクトファストエローR(同50)、アイゼンダイレクトファストレッドFH(C.I.ダイレクトレッド1)、ニッポンファストスカーレットGSX(同4)、ダイレクトファストスカーレット4BS(同23)、アイゼンダイレクトローデュリンBH(同31)、ダイレクトスカーレットB(同37)、カヤクダイレクトスカーレット3B(同39)、アイゼンプリムラピンク2BLH(同75)、スミライトレッドF3B(同80)、アイゼンプリムラレッド4BH(同81)、カヤラススプラルビンBL(同83)、カヤラスライトレッドF5G(同225)、カヤラスライトレッドF5B(同226)、カヤラスライトローズFR(同227)、ダイレクトスカイブルー6B(C.I.ダイレクトブルー1)、ダイレクトスカイブルー5B(同15)、スミライトスプラブルーBRRコンク(同71)、ダイボーゲンターコイズブルーS(同86)、ウォーターブルー#3(同86)、カヤラスターコイズブルーGL(同86)、カヤラススプラブルーFF2GL(同106)、カヤラススプラターコイズブルーFBL(同199)等の直接染料や、アシッドブルーブラック10B(C.I.アシッドブラック1)、ニグロシン(同2)、スミノールミリングブラック8BX(同24)、カヤノールミリングブラックVLG(同26)、スミノールファストブラックBRコンク(同31)、ミツイナイロンブラックGL(同52)、アイゼンオパールブラックWHエクストラコンク(同52)、スミランブラックWA(同52)、ラニルブラックBGエクストラコンク(同107)、カヤノールミリングブラックTLB(同109)、スミノールミリングブラックB(同109)、カヤノールミリングブラックTLR(同110)、アイゼンオパールブラックニューコンク(同119)、ウォーターブラック187−L(同154)、カヤクアシッドブリリアントフラビンFF(C.I.アシッドエロー7:1)、カヤシルエローGG(同17)、キシレンライトエロー2G140%(同17)、スミノールレベリングエローNR(同19)、ダイワタートラジン(同23)、カヤクタートラジン(同23)、スミノールファストエローR(同25)、ダイアシッドライトエロー2GP(同29)、スミノールミリングエローO(同38)、スミノールミリングエローMR(同42)、ウォーターエロー#6(同42)、カヤノールエローNFG(同49)、スミノールミリングエロー3G(同72)、スミノールファストエローG(同61)、スミノールミリングエローG(同78)、カヤノールエローN5G(同110)、スミノールミリングエロー4G200%(同141)、カヤノールエローNG(同135)、カヤノールミリングエロー5GW(同127)、カヤノールミリングエロー6GW(同142)、スミトモファストスカーレットA(C.I.アシッドレッド8)、カヤクシルクスカーレット(同9)、ソーラールビンエクストラ(同14)、ダイワニューコクシン(同18)、アイゼンボンソーRH(同26)、ダイワ赤色2号(同27)、スミノールレベリングブリリアントレッドS3B(同35)、カヤシルルビノール3GS(同37)、アイゼンエリスロシン(同51)、カヤクアシッドローダミンFB(同52)、スミノールレベリングルビノール3GP(同57)、ダイアシッドアリザリンルビノールF3G200%(同82)、アイゼンエオシンGH(同87)、ウォーターピンク#2(同92)、アイゼンアシッドフロキシンPB(同92)、ローズベンガル(同94)、カヤノールミリングスカーレットFGW(同111)、カヤノールミリングルビン3BW(同129)、スミノオールミリングブリリアントレッド3BNコンク(同131)、スミノールミリングブリリアントレッドBS(同138)、アイゼンオパールピンクBH(同186)、スミノールミリングブリリアントレッドBコンク(同249)、カヤクアシッドブリリアントレッド3BL(同254)、カヤクアシッドブリリドブリリアントレッドBL(同265)、カヤノールミリングレッドGW(同276)、ミツイアシッドバイオレット6BN(C.I.アシッドバイオレット15)、ミツイアシッドバイオレットBN(同17)、スミトモパテントピュアブルーVX(C.I.アシッドブルー1)、ウォーターブルー#106(同1)、パテントブルーAF(同7)、ウォーターブルー#9(同9)、ダイワ青色1号(同9)、スプラノールブルーB(同15)、オリエントソルブルブルーOBC(同22)、スミノールレベリングブルー4GL(同23)、ミツイナイロンファストブルーG(同25)、カヤシルブルーAGG(同40)、カヤシルブルーBR(同41)、ミツイアリザリンサフィロールSE(同43)、スミノールレベリングスカイブルーRエクストラコンク(同62)、ミツイナイロンファストスカイブルーB(同78)、スミトモブリリアントインドシアニン6Bh/c(同83)、サンドランシアニンN−6B350%(同90)、ウォーターブルー#115(同90)、オリエントソルブルブルーOBB(同93)、スミトモブリリアントブルー5G(同103)、カヤノールミリングウルトラスカイSE(同112)、カヤノールミリングシアニン5R(同113)、アイゼンオパールブルー2GLH(同158)、ダイワギニアグリーンB(C.I.アシッドグリーン3)、アシッドブリリアントミリンググリーンB(同9)、ダイワグリーン#70(同16)、カヤノールシアニングリーンG(同25)、スミノールミリンググリーンG(同27)等の酸性染料、アイゼンカチロンイエロー3GLH(C.I.ベーシックイエロー11)、アイゼンカチロンブリリアントイエロー5GLH(同13)、スミアクリルイエローE−3RD(同15)、マキシロンイエロー2RL(同19)、アストラゾンイエロー7GLL(同21)、カヤクリルゴールデンイエローGL−ED(同28)、アストラゾンイエロー5GL(同51)、アイゼンカチロンオレンジGLH(C.I.ベーシックオレンジ21)、アイゼンカチロンブラウン3GLH(同30)、ローダミン6GCP(C.I.ベーシックレッド1)、アイゼンアストラフロキシン(同12)、スミアクリルブリリアントレッドE−2B(同15)、アストラゾンレッドGTL(同18)、アイゼンカチロンブリリアントピンクBGH(同27)、マキシロンレッドGRL(同46)、アイゼンメチルバイオレット(C.I.ベーシックバイオレット1)、アイゼンクリスタルバイオレット(同3)、アイゼンローダミンB(同10)、アストラゾンブルーG(C.I.ベーシックブルー1)、アストラゾンブルーBG(同3)、メチレンブルー(同9)、マキシロンブルーGRL(同41)、アイゼンカチロンブルーBRLH(同54)、アイゼンダイヤモンドグリーンGH(C.I.ベーシックグリーン1)、アイゼンマラカイトグリーン(同4)、ビスマルクブラウンG(C.I.ベーシックブラウン1)等の塩基性染料が挙げられる。
【0009】
顔料ではアゾ系顔料、ニトロソ系顔料、ニトロ系顔料、塩基性染料系顔料、酸性染料系顔料、建て染め染料系顔料、媒染染料系顔料、及び天然染料系顔料等の有機系顔料、黄土、バリウム黄、紺青、カドミウムレッド、硫酸バリウム、酸化チタン、弁柄、鉄黒、カーボンブラック等の無機顔料等が挙げられ、これらは単独あるいは混合して使用することが出来る。具体例を挙げるとアニリンブラック(C.I.50440)、シアニンブラック、ナフトールエローS(C.I.10316)、ハンザエロー10G(C.I.11710)、ハンザエロー5G(C.I.11660),ハンザエロー3G(C.I.11670)、ハンザエローG(C.I.11680),ハンザエローGR(C.I.11730)、ハンザエローA(C.I.11735)、ハンザエローRN(C.I.11740)、ハンザエローR(C.I.12710)、ピグメントエローL(C.I.12720)、ベンジジンエロー(C.I.21090)、ベンジジンエローG(C.I.21095)、ベンジジンエローGR(C.I.21100)、パーマネントエローNCG(C.I.20040)、バルカンファストエロー5G(C.I.21220)、バルカンファストエローR(C.I.21135)、タートラジンレーキ(C.I.19140)、キノリンエローレーキ(C.I.47005)、アンスラゲンエロー6GL(C.I.60520)、パーマネントエローFGL、パーマネントエローH10G、パーマネントエローHR、アンスラピリミジンエロー(C.I.68420)、スダーンI(C.I.12055)、パーマネントオレンジ(C.I.12075)、リソールファストオレンジ(C.I.12125)、パーマネントオレンジGTR(C.I.12305)、ハンザエロー3R(C.I.11725)、バルカンファストオレンジGG(C.I.21165)、ベンジジンオレンジG(C.I.21110)、ペルシアンオレンジ(C.I.15510)、インダンスレンブリリアントオレンジGK(C.I.59305)、インダンスレンブリリアントオレンジRK(C.I.59105)、インダンスレンブリリアントオレンジGR(C.I.71105)、パーマネントブラウンFG(C.I.12480)、パラブラウン(C.I.12071)、パーマネントレッド4R(C.I.12120)、パラレッド(C.I.12070)、ファイヤーレッド(C.I.12085)、パラクロルオルトアニリンレッド(C.I.12090)、リソールファストスカーレット、ブリリアントファストスカーレット(C.I.12315)、ブリリアントカーミンBS、パーマネントレッドF2R(C.I.12310)、パーマネントレッドF4R(C.I.12335)、パーマネントレッドFRL(C.I.12440)、パーマネントレッドFRLL(C.I.12460),パーマネントレッドF4RH(C.I.12420)、ファストスカーレットVD、バルカンファストルビンB(C.I.12320)、バルカンファストピンクG(C.I.12330),ライトファストレッドトーナーB(C.I.12450)、ライトファストレッドトーナーR(C.I.12455)、パーマネントカーミンFB(C.I.12490)、ピラゾロンレッド(C.I.12120)、リソールレッド(C.I.15630)、レーキレッドC(C.I.15585)、レーキレッドD(C.I.15500)、アンソシンB(C.I.18030)、ブリリアントスカーレットG(C.I.15800)、リソールルビンGK(C.I.15825)、パーマネントレッドF5R(C.I.15865)、ブリリアントカーミン6B(C.I.15850)、ピグメントスカーレット3B(C.I.16105)、ボルドー5B(C.I.12170)、トルイジンマルーン(C.I.12350)、パーマネントボルドーF2R(C.I.12385)、ヘリオボルドーBL(C.I.14830)、ボルドー10B(C.I.15880)、ボンマルーンライト(C.I.15825)、ボンマルーンメジウム(C.I.15880)、エオシンレーキ(C.I.45380)、ローダミンレーキB(C.I.45170)、ローダミンレーキY(C.I.45160)、アリザリンレーキ(C.I.58000)、チオインジゴレッドB(C.I.73300)、チオインジゴマルーン(C.I.73385)、パーマネントレッドFGR(C.I.12370)、PVカーミンHR、ワッチングレッド,モノライトファストレッドYS(C.I.59300)、パーマネントレッドBL、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ(C.I.42535)、ジオキサジンバイオレット、アルカリブルーレーキ(C.I.42750A、C.I.42770A)、ピーコックブルーレーキ(C.I.42090)、ピーコックブルーレーキ(C.I.42025)、ビクトリアブルーレーキ(C.I.44045)、フタロシアニンブルー(C.I.74160)、ファストスカイブルー(C.I.74180)、インダンスレンブルーRS(C.I.69800)、インダンスレンブルーBC(C.I.69825)、インジゴ(C.I.73000)、ピグメントグリーンB(C.I.10006)、ナフトールグリーンB(C.I.10020)、グリーンゴールド(C.I.12775)、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ(C.I.42000)、フタロシアニングリーン等が挙げられる。これらの着色剤の使用量は、インキ全量に対して0.5〜30重量%が好ましい。
【0010】
着色剤に顔料を用いた場合は顔料を安定に分散させるために分散剤を使用することは差し支えない。分散剤として従来一般に用いられている水溶性樹脂もしくは水可溶性樹脂や、アニオン系もしくはノニオン系の界面活性剤などの、顔料の分散剤として用いられるものが使用できる。一例として、高分子分散剤として、リグニンスルホン酸塩、セラックなどの天然高分子、ポリアクリル酸塩、スチレン−アクリル酸共重合物の塩、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合物の塩、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、リン酸塩、などの陰イオン性高分子やポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの非イオン性高分子などが挙げられる。また、界面活性剤として、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、N−アシルメチルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、アルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩などの陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。これら水可溶性樹脂及び界面活性剤は、その1種または2種以上を選択し、併用しても使用できる。その使用量は、顔料10重量部に対し0.05〜20重量部が好ましい。
【0011】
顔料の場合は、更に、水性媒体に分散した水性インキベースを用いることは、顔料インキ製造上有利なことである。具体的には、FujiSP Black8031、同8119、同8167、同8276、同8381、同8406、Fuji SP Red 5096、同5111、同5193、同5220、FujiSP Bordeaux 5500、Fuji SP Blue 6062、同6133、同6134、同6401、Fuji SP Green 7051、Fuji SPYellow 4060、同4178、Fuji SP Violet 9011、Fuji SP Pink 9524、同9527、Fuji SP Orange 534、FUjiSP Brown 3074、FUJI SP RED 5543、同5544(以上、富士色素(株)製)、Emacol Black CN、Emacol Blue FBB、同FB、同KR、EmacolGreen LXB、Emacol Violet BL、Emacol Brown 3101、EmacolCarmmine FB、Emacol Red BS、EmacolOrange R、Emacol Yellow FD、同IRN、同3601、同FGN、同GN、同GG、同F5G、同F7G、同10GN、同10G、Sandye SuperBlack K、同C、Sandye Super Grey B、Sandye Super Brown SB、同FRL、同RR、SandyeSuper GreenL5G、同GXB、Sandye Super Navy Blue HRL、同GLL、同HB、同FBL−H、同FBL−160、同FBB、Sandye Super VioletBL H/C、同BL、Sandye Super Bordeaux FR、Sandye Super Pink FBL、同F5B、Sandye Super RubineFR、Sandye super Carmmine FB、SandyeSuper Red FFG、同RR、同BS、Sandye SuperOrange FL、同R、同BO、SandyeGoldYellow5GR、同R、同3R、Sandye Ywllow GG、同F3R、同IRC、同FGN、同GN、同GRS、同GSR−130、同GSN−130、同GSN、同10GN(以上、山陽色素(株)製)、RioFast BlackFx 8012、同8313、同8169、Rio Fast Red Fx8209、同8172、Rio Fast Red S Fx 8315、同8316、RioFast Blue Fx 8170、Rio FastBlue FX 8170、Rio Fast Blue S Fx 8312、Rio Fast Green SFx 8314(以上、東洋インキ(株)製)、NKW−2101、同2102、同2103、同2104、同2105、同2106、同2107、同2108、同2117、同2127、同2137、同2167、同2101P、同2102P、同2103P、同2104P、同2105P、同2106P、同2107P、同2108P、同2117P、同2127P、同2137P、同2167P、NKW−3002、同3003、同3004、同3005、同3007、同3077、同3008、同3402、同3404、同3405、同3407、同3408、同3477、同3602、同3603、同3604、同3605、同3607、同3677、同3608、同3702、同3703、同3704、同3705、同3777、同3708、同6013、同6038、同6559(以上、日本蛍光(株)製)、コスモカラーS1000Fシリーズ(東洋ソーダ(株)製)、ビクトリアエローG−11、同G−20、ビクトリアオレンジ G−16、同G−21、ビクトリアレッドG−19、同G−22、ビクトリアピンク G−17、同G−23、ビクトリアグリーンG−18、同G−24、ビクトリアブルー G−15、同G−25(以上、御国色素(株)製)、ポルックスPC5T1020、ポルックスブラックPC8T135、ポルックス レッドIT1030等のポルックスシリーズ(以上、住化カラー(株)製)などが挙げられるものであり、これらは1種又は2種以上選択して併用できるものである。
【0012】
本発明の骨子である黴が生育するエネルギーを獲得する呼吸機能を阻害する1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン及び黴の細胞壁を構成しているペプチドグルカンをグルコースアミンなどから合成する細胞壁合成機能、黒色直接染料に吸着されない規則的に重合し酵素蛋白、細胞構成蛋白質やペプチドの合成を行う蛋白質合成機能等の合成機能を阻害する2−ピリジンチオール1−オキサイド・ナトリウム塩は、防黴剤として用いるものである。これらの物質は、黒色水性染料インキ組成物に併用して用いることによって、充分な防黴性を示すことができる。1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンの具体例としては、プロクセルGXL(S)(アーチ・ケミカルズ・ジャパン(株)製)、サンアイバックFX(三愛石油(株)製)、トップサイド600((株)パーマケム・アジア)等が挙げられる。2−ピリジンチオール−1−オキサイド・ナトリウム塩の具体例としては、サンアイバックソジウムオマジン(三愛石油(株)製)等が挙げられる。また、1.2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン及び2−ピリジンチオール1−オキサイド・ナトリウム塩を併用したサンアイバックP−100(三愛石油(株)製)等を用いることもできる。その使用量は、防黴効果及び使用量による黒色染料インキ組成物の粘度上昇を考慮すると、黒色水性染料インキ組成物全量に対して1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンは350ppm〜850ppm、より好ましくは400ppm〜800ppmである。更に2−ピリジンチオール1−オキサイド・ナトリウム塩は、多く添加すると黒色直接染料を時間経過とともに変色させてしまうため、560ppm〜1310ppm、より好ましくは600ppm〜1300ppmである。
【0013】
低温時でのインキの凍結防止、染料の可溶化剤、顔料の分散媒等、インキの種々の品質を担うインキ溶媒として、従来公知の水溶性有機溶媒が使用できる。具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3−ブチレングリコール、チオジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。これらの水溶性有機溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。
【0014】
着色剤を紙面に定着させるためなどで各種樹脂を併用することもできる。例えば、セラック、スチレン−マレイン酸共重合体及びその塩、スチレン−アクリル酸共重合体及びその塩、Α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体及びその塩、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアセタール、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルキルエーテル、クマロン−インデン樹脂、ロジン系樹脂やその水素添加物、ケトン樹脂、ポリアクリル酸ポリメタクリル酸共重合物などが挙げられる。
【0015】
インキのpHを調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、アミノメチルプロパンジオールなどの塩基性物質や、硫酸などの酸性物質を添加してもよい。
【0016】
以上に示した成分以外に必要に応じて、ペン先乾燥防止剤、消泡剤、可塑剤、各種活性剤、樹脂の溶解性を妨げない程度の有機溶剤など、種々の添加剤を適宣選択して使用することができる。
【0017】
本発明の黒色水性染料インキ組成物の製造方法は、上記せる各成分を必要量混合し、プロペラ撹拌機、ホモミキサー、ラボミキサー等の高速撹拌機等の撹拌機にて混合・分散することにより容易に得ることができる。
【実施例】
【0018】
以下、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0019】
(実施例1)
WATER BLACK L−200(精製したC.I.ダイレクトブラック19を20%含む水溶液、オリエント化学工業(株)製) 40.0部
ダイワレッドNo.103 WB(C.I.アシッドレッド87、ダイワ化成(株)製) 0.1部
サンアイバックP−100(1.2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン及び2−ピリジンチオール1−オキサイド・ナトリウム塩を1:1.7の割合で含有する防黴剤、有効成分19%、三愛石油(株)製) 1.05部
エチレングリコール 5.0部
チオジグリコール 8.0部
エチレン尿素 10.0部
ノイゲンP(ポリオキシエチレンアルキルエーテル水溶液、第一工業製薬(株)製) 0.2部
水 35.65部
上記成分をホモミキサーにて1時間撹拌して、黒色水性染料インキ組成物を得た。
【0020】
(実施例2)
ダイワブルーNo.1WB(C.I.アシッドブルー9、ダイワ化成(株)製) 3.5部
ダイワレッドNo.106WB(C.I.アシッドレッド52、ダイワ化成(株)製) 0.8部
プロクセルGXL(S)(1.2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンを含む腐防黴剤、有効成分20%、アーチ・ケミカル・ジャパン(株)製) 0.2部
サンアイバックソジウムオマジン(2−ピリジンチオール1−オキサイド・ナトリウム塩を含有する防黴剤、有効成分40%、三愛石油(株)製) 0.2部
エチレングリコール 9.0部
ジエチレングリコール 8.0部
プロピレングリコール 10.0部
ノイゲンP(前述) 0.2部
水 68.1部
上記成分をホモミキサーにて1時間撹拌して、青色水性染料インキ組成物を得た。
【0021】
(実施例3)
ダイワレッドNo.103WB(C.I.アシッドレッド87、ダイワ化成(株)製)
3.5部
WATER YELLOW #6(C.I.アシッドイエロー42、オリエント化学工業(株)製 3.5部
プロクセルGXL(S)(前述) 0.4部
サンアイバックソジウムオマジン(前述) 0.15部
エチレングリコール 10.0部
グリセリン 10.0部
ノイゲンP(前述) 0.2部
水 72.25部
上記成分をホモミキサーにて1時間撹拌して、赤色水性染料インキ組成物を得た。
【0022】
(実施例4)
FUJI SP BLACK 8922(カーボンブラックを分散した水性顔料分散液、冨士色素(株)製) 20.0部
プロクセルGXL(S)(前述) 0.4部
サンアイバックソジウムオマジン(前述) 0.325部
エチレングリコール 15.0部
グリセリン 15.0部
ジョンクリル734(スチレンアクリル共重合物、BASFジャパン(株)製 1.0部
水 48.275部
上記成分をホモミキサーにて1時間撹拌して、黒色水性顔料インキ組成物を得た。
【0023】
(実施例5)
WATER BLACK 187−LM(精製したC.I.ダイレクトブラック154を15%含む水溶液、オリエント化学工業(株)製) 60.0部
プロクセルGXL(S)(前述) 0.2部
サンアイバックソジウムオマジン(前述) 0.325部
エチレングリコール 7.0部
ジエチレングリコール 7.0部
プロピレングリコール 10.0部
ノイゲンP(前述) 0.2部
水 15.275部
上記成分をホモミキサーにて1時間撹拌して、黒色水性染料インキ組成物を得た。
【0024】
(実施例6)
FUJI SP BLUE 6401(フタロシアニンブルーを分散した水性顔料分散液、冨士色素(株)製) 26.0部
ジョンクリル734(前述) 1.0部
サンアイバックP−100(前述) 0.5部
プロクセルGXL(S)(前述) 0.2部
エチレングリコール 10.0部
グリセリン 10.0部
水 52.3部
上記成分をホモミキサーにて1時間撹拌して、青色水性顔料インキ組成物を得た。
【0025】
(実施例7)
WATER BLACK 191−L(精製したC.I.ダイレクトブラック19を15%含む有水溶液、オリエント化学工業(株)製) 50.0部
食用黄色4号(C.I.フードイエロー4、ダイワ化成(株)製) 0.2部
プロクセルGXL(S)(前述) 0.25部
サンアイバックソジウムオマジン(前述) 0.25部
エチレングリコール 8.0部
ジチレングリコール 8.0部
プロピレングリコール 8.0部
ノイゲンP(前述) 0.2部
水 25.1部
上記成分をホモミキサーにて1時間撹拌して、黒色水性染料インキ組成物を得た。
【0026】
(実施例8)
ルミコールNKW−3902E(C.I.ベーシックイエロー40とC.I.ベーシックブルー3とスチレン・アクリルニトリル共重合体とを混合分散した水性蛍光顔料分散液、
日本蛍光化学(株)製) 40.0部
サンアイバックP−100(前述) 0.6部
プロピレングリコール 5.0部
グリセリン 20.0部
ノイゲンP(前述) 0.2部
水 34.2部
上記成分をホモミキサーにて1時間撹拌して、緑色水性顔料インキ組成物を得た。
【0027】
(実施例9)
FUJI SP RED 5657(C.I.ピグメントレッド170を分散した水性顔料分散液、冨士色素(株)製) 25.0部
プロクセルGXL(S)(前述) 0.4部
サンアイバックソジウムオマジン(前述) 0.15部
ジョンクリル734(前述) 1.0部
エチレングリコール 12.0部
グリセリン 13.0部
水 48.45部
上記成分をホモミキサーにて1時間撹拌して、赤色水性顔料インキ組成物を得た。
【0028】
(比較例1)
実施例1のサンアイバックP−100(前述)1.05部を0.3部に、水35.65部を36.4部に変えた以外は、実施例1と同様にして、黒色水性染料インキ組成物を得た。
【0029】
(比較例2)
実施例2サンアイバックP−100(前述)0.2部を0.35部に、水59.1部を58.9部に変えた以外は、実施例2と同様にして、青色水性染料インキ組成物を得た。
【0030】
(比較例3)
実施例3のサンアイバックP−100(前述)0.55部を1.1部に、水66.55部を66.0部に変えた以外は、実施例3と同様にして、黒色水性染料インキ組成物を得た。
【0031】
実施例1〜実施例9及び比較例1〜比較例3にて作成したインキを用いたかび抵抗性試験、色調変化試験を行った。その結果を表1に示す。
【0032】
かび抵抗性試験1(初期)
実施例1〜実施例9、及び比較例1〜比較例6にて作成した黒色水性染料インキ組成物を、日本工業規格(JIS Z 2911 かび抵抗性試験方法)に記載された方法に従ってかび抵抗性試験を行い評価が○のものを良品とした。
評価基準
○:阻止円有り
△:僅かな阻止円有り
×:阻止円無し。黒色水性染料インキ組成物中に黴が発生。
【0033】
かび抵抗性試験2(経時)
実施例1〜実施例9、及び比較例1〜比較例6にて作成した黒色水性染料インキ組成物を容量50mlのガラス瓶に入れ蓋をして、50℃30%恒温槽に3ヶ月放置後、日本工業規格(JIS Z 2911 かび抵抗性試験方法)に記載された方法に従って、かび抵抗性試験を行い、評価が○のものを良品とした。尚、以下に記す12種類のJIS指定の黴の胞子を採取して1%オクチルフェノールポリ(エチレングリコールエーテル)水溶液にて混合分散した懸濁水溶液を用いた。
使用したJIS指定の黴
Aspergillus niger FERM S−1、Aspergillus niger FERM S−2、Aspergillus niger FERM S−3、Eurotium tonophilum FERM S−4、Penicillium citrinum FERM S−5、Penicillium funiculosum FERM S−6、Cladosporium Cladosporioides FERM S−8、Aureobasidium pullulans FERM S−9、Gliocladium virens FERM S−10、Chaetomium globosum FERM S−11、Fusarium proliferatum FERM S−12、Mirothecium verrucaria FERM S−13
評価基準
○:阻止円有り、
△:僅かな阻止円有り
×:阻止円無し。黒色水性染料インキ組成物中に黴が発生。
【0034】
色調変化(ΔE)
実施例1〜実施例9、及び比較例1〜比較例6にて作成した黒色水性染料インキ組成物を初期及び、容量50mlのガラス瓶に入れ蓋をして、50℃30%恒温槽に3ヶ月放置後に、筆記用紙(坪量50〜100g/、白色度75%以上)に縦横各1回均一にアクリル製のインキ吸収体でインキを塗り、乾燥後、分光式差計NF777(日本電色工業(株)製)にて、初期と放置後の色差(ΔE)を測定した。ΔEの値が1.5以内であると、目視でも色の差は認められないが、それ以上になると目視でも色の差が認められるので、ΔEが1.5以内のものを良品とした。
【0035】
実施例1〜実施例9及び比較例1〜実施例6にて作成したインキをポリウレタン製ペン先とアクリル繊維製のインキ吸収体を用いた筆記具(SF−15、ぺんてる(株)製)に充填し筆記試験をおこなった。
【0036】
【表1】

【0037】
実施例1〜実施例9では、水と黒色直接染料と防黴剤とからなる黒色水性染料インキ組成物において、防黴剤として1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンを400ppm〜800ppm、及び2−ピリジンチオール−1−オキサイド・ナトリウム塩を600ppm〜1,300ppmとすることにより、防黴効果を得られると共に、経時による色味の変化もなくなる。
比較例1は、腐防黴剤の量が少ない為に、防黴剤の効果は得られない。
比較例2は、防黴効果は得られるものの、2−ピリジンチオール−1−オキサイド・ナトリウム塩の使用量が多いために、経時で色味が変化しやすい。
比較例3は、
1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンの量を多くしても、2−ピリジンチオール−1−オキサイド・ナトリウム塩の量が少ない為に、経時における防黴性の効果が得られない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、着色剤と、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンが400ppm〜800ppmと、2−ピリジンチオール−1−オキサイド・ナトリウム塩が600ppm〜13000ppmである水性インキ組成物。

【公開番号】特開2013−14647(P2013−14647A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146831(P2011−146831)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】