説明

水性インク用顔料

【課題】水性インク媒体中で沈降しにくく、かつ隠蔽性が良好な塗膜を形成しうる水性インク用顔料、水性インク組成物を提供する。
【解決手段】(A)波長589.3nm(Na−D線)における屈折率が1.8以上である金属酸化物を主体とするマトリックス中に50%体積粒径が10〜300nmであり水系媒体に分散可能な有機ポリマー粒子が分散されている有機無機複合体、及び/又は(B)波長589.3nm(Na−D線)における屈折率が1.8以上である金属酸化物を主体とするマトリックス中に平均細孔径が10〜300nmの細孔が分散されている金属酸
化物多孔体を含有する水性インク用顔料、それを含む水性インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散安定性に優れた水性インク用顔料、それを含有する水性インク組成物およびその画像、印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
透明フィルムなどの基材に、文字、絵、図柄などの画像を形成する方法として、近年、インクジェット印刷が注目されている。インクジェット印刷は、インクの小滴を飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて印刷を行う印刷方法である。そのような基材に印刷をする場合、印刷物の発色をよくするために、下地を隠蔽する必要がある。下地を隠蔽するためには、隠蔽性の高い白色インクを用いることが一般的であり、その顔料としては無機顔料、特に二酸化チタンを用いられることが多い。しかし、二酸化チタンを始めとする無機顔料は比重が高いため、低粘度であるインクジェット用インクに用いる場合、顔料沈降の抑制が課題となる。顔料が沈降すると、インクジェットノズルからの吐出時に目詰まりを起したり、インクの貯蔵安定性が悪くなるなどの問題がある。顔料沈降を抑制するために、二酸化チタンの粒径を小さくすると、沈降は軽減することができるが、白色の発色性が低下してしまうため、隠蔽性も低下して、白色インクの隠蔽力が格段に落ちるという問題がある。特許文献1には、二酸化チタンより比重の小さなシリカを使用することで、白色度を保ち、貯蔵安定性を確保することができることが開示されている。しかし、シリカは二酸化チタンに比べて、白色度、隠蔽性ともに劣るため、二酸化チタンを併用する必要があり、結果として貯蔵安定性の確保が難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−174100
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、水性インク媒体中で沈降しにくく、かつ白色の発色性が良好な水性インク用顔料、それを含む水性インク組成物、当該水性インク組成物を用いて得られる画像、印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
[1](A)波長589.3nm(Na−D線)における屈折率が1.8以上である金属酸化物を主体とするマトリックス中に50%体積粒径が10〜300nmであり水系媒体に分散可能な有機ポリマー粒子が分散されている有機無機複合体、
及び/又は
(B)波長589.3nm(Na−D線)における屈折率が1.8以上である金属酸化物を主体とするマトリックス中に平均細孔径が10〜300nmの細孔が分散されている金属酸化物多孔体
からなる水性インク用顔料。
[2]前記(A)有機無機複合体及び/又は(B)金属酸化物多孔体の粒径が0.1μm〜5μmである[1]に記載の水性インク用顔料。
[3]金属酸化物が二酸化チタンである[1]又は[2]に記載の水性インク用顔料。
[4]金属酸化物が表面を二酸化ジルコニウムで被覆された二酸化チタンナノ粒子から形成されることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の水性インク用顔料。
[5]前記(B)金属酸化物多孔体は前記(A)有機無機複合体から有機ポリマー粒子を除去することにより得られたものである[1]〜[4]のいずれかに記載の水性インク用顔料。
[6]金属酸化物中に分散している有機ポリマー粒子及び/又は細孔がキュービック相構造である[1]〜[5]のいずれかに記載の水性インク用顔料。
[7]有機ポリマー粒子が、ポリオレフィン系、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系、ポリスチレン系、ポリウレタン系、ポリアクリロニトリル系、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリ酢酸ビニル系及びポリブタジエン系から選ばれる少なくとも1種の非水溶性ポリマー粒子である[1]〜[6]のいずれかに記載の水性インク用顔料。
[8]有機ポリマー粒子が、下記一般式(1)で表される数平均分子量が2.5×10以下の末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子である[1]〜[7]のいずれかに記載の水性インク用顔料:
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、Aはポリオレフィン鎖を表す。RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。XおよびXは、同一または相異なり、直鎖または分岐のポリアルキレングリコール基を有する基を表す。)。
【0008】
[9]一般式(1)で表される末端分岐型共重合体において、XおよびXが、同一または相異なり、一般式(2)
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、Eは酸素原子または硫黄原子を表す。Xはポリアルキレングリコール基、または下記一般式(3)
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、Rはm+1価の炭化水素基を表す。Gは同一または相異なり、−OX、−NX(X〜Xはポリアルキレングリコール基を表す。)で表される基を表す。mは、RとGとの結合数であり1〜10の整数を表す。)で表される基を表す。)
または、一般式(4)
【0013】
【化4】

【0014】
(式中、X,Xは同一または相異なり、ポリアルキレングリコール基または上記一般式(3)で表される基を表す。)であることを特徴とする[8]に記載の水性インク用顔料。
【0015】
[10]前記末端分岐型共重合体が下記一般式(1a)または一般式(1b)で表される[8]又は[9]に記載の水性インク用顔料:
【0016】
【化5】

【0017】
(式中、RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。RおよびRは、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子であり、RおよびRは、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。l+mは2以上450以下の整数を表す。nは、20以上300以下の整数を表す。)。
【0018】
【化6】

【0019】
(式中、RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。RおよびRは、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子であり、RおよびRは、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子であり、R10およびR11は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。l+m+oは3以上450以下の整数を表す。nは、20以上300以下の整数を表す。)。
【0020】
[11]有機ポリマー粒子が(メタ)アクリル酸エステル系重合体粒子である[1]〜[7]のいずれかに記載の水性インク用顔料。
[12][1]〜[11]のいずれかに記載の水性インク用顔料を含有する水性インク組成物。
[13]インクジェット印刷用である[12]に記載の水性インク組成物。
[14][12]又は[13]記載の水性インク組成物により記録された文字、絵、図柄等の画像。
[15]基材上に[12]又は[13]の水性インク組成物を用いて印刷した印刷物。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば金属酸化物より比重の低い水系媒体に分散可能な有機ポリマー粒子を金属酸化物とコンポジットする、あるいは金属酸化物を多孔質化することにより嵩比重が低くなり、沈降しにくく、白色度の優れた水性顔料を提供することができる。本発明の水性顔料を含む水性インク組成物は貯蔵安定性に優れ、該組成物から得られる塗膜は白色度及び/又は隠蔽性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の水性インク用顔料、水性インク組成物、当該水性インク組成物から得られる画像、印刷物について順に説明する。
【0023】
1.水性インク用顔料
本発明の水性インク用顔料は、(A)有機無機複合体及び/又は(B)金属酸化物多孔質体からなる。
【0024】
1−1 (A)有機無機複合体
本発明の(A)有機無機複合体は、特定の屈折率の金属酸化物を主体とするマトリックス中に特定の粒径の有機ポリマー粒子が分散されている。
【0025】
(金属酸化物)
本来透明である物質の粉体が白く見える原理は、粉体粒子表面で光が乱反射することによるものである。白色顔料としてより白く見せるためには、粒子表面での乱反射の効率を高めれば良く、より屈折率の高い材料を素材として選択すれば良い。屈折率の高い材料としては二酸化チタン等の波長589.3nm(Na−D線)における屈折率が1.8以上の金属酸化物の粒子が挙げられる。波長589.3nm(Na−D線)における屈折率が1.8以上の金属酸化物としては、具体的には、二酸化チタン(TiO:2.2〜2.7)、二酸化ジルコニウム(ZrO:2.1)、イットリア安定化ジルコニウム(YSZ:2.1〜2.2)、酸化インジウム(In:2.0)、酸化亜鉛(ZnO:2.35)、酸化アンチモン(Sb:2.0)、酸化スズ(SnO:1.9)、チタン酸バリウム(BaTiO:2.4)が挙げられる。また、二酸化ジルコニウムで表面を被覆した二酸化チタンを用いると、二酸化チタンの光触媒活性を抑制することができ、得られる塗膜の耐光性が向上するので好ましい。
【0026】
さらに、これらの金属酸化物をインクジェットの顔料として用いる場合には、インクジェットノズルから目詰まりを起こさず安定的に吐出させ、かつ塗膜の白色度、隠蔽性を保つために、顔料の粒径が100nm〜5μm、特に200nm〜1μmで、貯蔵安定性が確保されていることが好ましい。しかしながら二酸化チタン等の金属酸化物の比重は一般的に高いため、その粒径範囲では、インク中で顔料が沈降し凝集してしまう現象がみられる。本発明においては、特定の粒径の有機ポリマー粒子を金属酸化物中に分散させてコンポジット化することによって嵩比重が低くなり、沈降しにくい水性顔料を形成することができる。
【0027】
(有機ポリマー粒子)
本発明の有機ポリマー粒子の50%体積粒径は10〜300nmであり、好ましくは10〜200nmである。
【0028】
本発明の有機ポリマー粒子の含有量は特に制限されるものではないが、例えば有機ポリマー粒子/金属酸化物(重量比)を10/90〜90/10、好ましくは20/80〜80/20とすることができる。
【0029】
有機ポリマー粒子は金属酸化物を主体とするマトリックス中にキュービック相構造を呈して分散していることが好ましい。キュービック相構造をとることにより、ヘキサゴナル相構造、ランダム(無秩序)構造に比べて強度が高くなることが期待できる。
【0030】
本発明の有機ポリマー粒子としては、水系媒体に分散可能なものであればよい。例えばポリオレフィン系、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系、ポリスチレン系、ポリウレタン系、ポリアクリロニトリル系、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリ酢酸ビニル系及びポリブタジエン系から選ばれる少なくとも1種の非水溶性ポリマー粒子を挙げることができる。水系媒体とは、水および/または水と親和性を有する有機溶媒である。
【0031】
粒径10〜30nmの粒子が分散した有機無機複合体は、例えば水系媒体に分散したポリオレフィン系末端分岐型共重合体粒子を用いることにより安定的に製造することができる。また30nmを超え300nm以下の粒子が分散した有機無機複合体は、例えば水系媒体に分散したポリ(メタ)アクリル酸エステル系重合体粒子を用いることにより安定的に製造することが出来る。
【0032】
まず、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体粒子について説明する。
[ポリオレフィン系末端分岐型共重合体]
本発明で用いる重合体粒子を構成するポリオレフィン系末端分岐型共重合体は、下記の一般式(1)で表される構造を有する。
【0033】
【化7】

【0034】
(式中、Aはポリオレフィン鎖を表す。RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基でありかつ少なくともどちらか一方は水素原子であり、XおよびXは、同一または相異なり、直鎖または分岐のポリアルキレングリコール基を有する基を表す。)
【0035】
一般式(1)で表される末端分岐型共重合体の数平均分子量は2.5×10以下、好ましくは5.5×10〜1.5×10、より好ましくは8×10〜4.0×10である。その数平均分子量は、Aで表されるポリオレフィン鎖の数平均分子量とXおよびXで表されるポリアルキレングリコール基を有する基の数平均分子量とR,RおよびCH分の分子量の和で表される。
【0036】
ポリオレフィン系末端分岐型共重合体の数平均分子量が上記範囲にあると、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体を分散質とした際の分散液中の粒子の安定性、水および/または水と親和性を有する有機溶媒への分散性が良好となる傾向があり、かつ分散液の調製が容易になるため好ましい。
【0037】
一般式(1)のAであるポリオレフィン鎖は、炭素数2〜20のオレフィンを重合したものである。炭素数2〜20のオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィンが挙げられる。本発明においては、これらのオレフィンの単独重合体又は共重合体であってもよく、特性を損なわない範囲で他の重合性の不飽和化合物と共重合したものであってもよい。これらのオレフィンの中でも特にエチレン、プロピレン、1−ブテンが好ましい。
【0038】
一般式(1)中、Aで表されるポリオレフィン鎖の、GPCにより測定された数平均分子量は、400〜8000であり、好ましくは500〜4000、さらに好ましくは500〜2000である。ここで数平均分子量はポリスチレン換算の値である。
【0039】
Aで表されるポリオレフィン鎖の数平均分子量が上記範囲にあると、ポリオレフィン部分の結晶性が高く、分散液の安定性が良好になる傾向があり、かつ溶融粘度が低く分散液の調製が容易になる傾向があるため好ましい。
【0040】
一般式(1)においてAで表されるポリオレフィン鎖の、GPCにより測定された重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、すなわち分子量分布(Mw/Mn)は、特に制限はなく、通常1.0〜数十であるが、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.0以下である。
【0041】
一般式(1)においてAで表される基の分子量分布(Mw/Mn)が上記範囲にあると、分散液中の粒子の形状や粒子径の均一性などの点で好ましい。
【0042】
GPCによる、Aで表される基の数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、ミリポア社製GPC−150を用い以下の条件の下で測定できる。
分離カラム:TSK GNH HT(カラムサイズ:直径7.5mm,長さ:300mm)
カラム温度:140℃
移動相:オルトジクロルベンゼン(和光純薬社製)
酸化防止剤:ブチルヒドロキシトルエン(武田薬品工業社製)0.025質量%
移動速度:1.0ml/分
試料濃度:0.1質量%
試料注入量:500マイクロリットル
検出器:示差屈折計。
【0043】
なお、Aで表されるポリオレフィン鎖の分子量は、後述の、一方の末端に不飽和基を有するポリオレフィンの分子量を測定し、末端の分子量相当を差し引くことで測定できる。
【0044】
,Rとしては、Aを構成するポリオレフィンの2重結合に結合した置換基である水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基であり、好ましくは水素原子または炭素数1〜18のアルキル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。
【0045】
一般式(1)において、X,Xは同一または相異なり、直鎖または分岐の数平均分子量がそれぞれ50〜10000のポリアルキレングリコール基を有する基を表す。分岐アルキレングリコール基の分岐態様は、多価の炭価水素基あるいは窒素原子を介した分岐等である。例えば、主骨格の他に2つ以上の窒素原子または酸素原子または硫黄原子に結合した炭化水素基による分岐や、主骨格の他に2つのアルキレン基と結合した窒素原子による分岐等が挙げられる。
【0046】
ポリアルキレングリコール基を有する基の数平均分子量が上記範囲にあると、分散液の分散性が良好になる傾向があり、かつ溶融粘度が低く分散液の調製が容易になるため好ましい。
【0047】
一般式(1)のX,Xが上記の構造を有することにより、界面活性剤を用いることなく、体積50%平均粒子径が10nmから30nmの粒子径を有する、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体からなる重合体粒子が安定的に得られる。
【0048】
一般式(1)において、XおよびXの好ましい例としては、それぞれ同一または相異なり、一般式(2)、
【0049】
【化8】

【0050】
(式中、Eは酸素原子または硫黄原子を表し、Xはポリアルキレングリコール基、または下記一般式(3)
【0051】
【化9】

【0052】
(式中、Rはm+1価の炭化水素基を表し、Gは同一または相異なり、−OX、−NX(X〜Xはポリアルキレングリコール基を表す。)で表される基を表し、mはRとGとの結合数であり1〜10の整数を表す。)で表される基を表す。)
または、一般式(4)
【0053】
【化10】

【0054】
(式中、X,Xは同一または相異なり、ポリアルキレングリコール基または上記一般式(3)で表される基を表す。)で表される基である。
【0055】
一般式(3)において、Rで表される基としては、炭素数1〜20のm+1価の炭化水素基である。mは1〜10であり、1〜6が好ましく、1〜2が特に好ましい。
【0056】
一般式(1)の好ましい例としては、一般式(1)中、X、Xのどちらか一方が、一般式(4)で表される基であるポリオレフィン系末端分岐型共重合体が挙げられる。さらに好ましい例としては、X、Xのどちらか一方が一般式(4)で表され、他方が、一般式(2)で表される基であるポリオレフィン系末端分岐型共重合体が挙げられる。
【0057】
一般式(1)の別の好ましい例としては、一般式(1)中、XおよびXの一方が、一般式(2)で表される基であり、さらに好ましくはXおよびXの両方が一般式(2)で表される基であるポリオレフィン系末端分岐型共重合体が挙げられる。
一般式(4)で表されるXおよびXのさらに好ましい構造としては、一般式(5)
【0058】
【化11】

【0059】
(式中、X、X10は同一または相異なり、ポリアルキレングリコール基を表し、Q、Qは同一または相異なり、それぞれ2価の炭化水素基を表す。)で表される基である。
【0060】
一般式(5)においてQ,Qで表される2価の炭化水素基は、2価のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜20のアルキレン基であることがより好ましい。炭素数2〜20のアルキレン基は、置換基を有していてもいなくてもよく、例えば、エチレン基、メチルエチレン基、エチルエチレン基、ジメチルエチレン基、フェニルエチレン基、クロロメチルエチレン基、ブロモメチルエチレン基、メトキシメチルエチレン基、アリールオキシメチルエチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられる。好ましいアルキレン基としては、炭化水素系のアルキレン基であり、特に好ましくは、エチレン基、メチルエチレン基であり、さらに好ましくは、エチレン基である。Q,Qは1種類のアルキレン基でもよく2種以上のアルキレン基が混在していてもよい。
一般式(2)で表されるXおよびXのさらに好ましい構造としては、一般式(6)
【0061】
【化12】

【0062】
(式中、X11はポリアルキレングリコール基を表す。)で表される基である。
【0063】
〜X11で表されるポリアルキレングリコール基とは、アルキレンオキシドを付加重合することによって得られる基である。X〜X11で表されるポリアルキレングリコール基を構成するアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、メチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの中で、好ましくは、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシドである。より好ましくはプロピレンオキシド、およびエチレンオキシドであり、特に好ましくは、エチレンオキシドである。X〜X11で表されるポリアルキレングリコール基としては、これらのアルキレンオキシドの単独重合により得られる基でもよいし、もしくは2種以上の共重合により得られる基でもよい。好ましいポリアルキレングリコール基の例としては、ポリエチレングリコール基、ポリプロピレングリコール基、またはポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドの共重合により得られる基であり、特に好ましい基としては、ポリエチレングリコール基である。
【0064】
一般式(1)においてX、Xが上記構造を有すると、本発明のポリオレフィン系末端分岐型共重合体を分散質とした際の水および/または水と親和性を有する有機溶媒への分散性が良好となるため好ましい。
【0065】
本発明で用いることができるポリオレフィン系末端分岐型共重合体としては、下記一般式(1a)または(1b)で表される重合体を用いることが好ましい。
【0066】
【化13】

【0067】
式中、RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。アルキル基としては、炭素数1〜9のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がさらに好ましい。
【0068】
およびRは、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。RおよびRは、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。
l+mは2以上450以下、好ましくは5以上200以下の整数を表す。
nは、20以上300以下、好ましくは25以上200以下の整数を表す
【0069】
【化14】

【0070】
式中、RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。アルキル基としては、炭素数1〜9のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がさらに好ましい。
【0071】
およびRは、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。RおよびRは、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。R10およびR11は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。
l+m+oは3以上450以下、好ましくは5以上200以下の整数を表す。
nは、20以上300以下、好ましくは25以上200以下の整数を表す。
【0072】
一般式(1b)で表される重合体としては、下記一般式(1c)で表される重合体を用いることがさらに好ましい。
【0073】
【化15】

【0074】
式中、l+m+o、nは一般式(1b)と同様である。
ポリエチレン鎖のエチレンユニット数(n)は、一般式(1)におけるポリオレフィン基Aの数平均分子量(Mn)をエチレンユニットの分子量で割ることにより算出できる。また、ポリエチレングリコール鎖のエチレングリコールユニット総数(l+mもしくはl+m+o)は、ポリエチレングリコール基付加反応時の重合体原料と使用したエチレンオキシドとの重量比が、重合体原料とポリエチレングリコール基の数平均分子量(Mn)との比に同じであると仮定して算出できる。
【0075】
また、n、l+mもしくはl+m+oはH−NMRによっても測定することができる。例えば本発明の実施例で用いたポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)およびそれを含む分散系粒子においては、一般式(1)におけるポリオレフィン基Aの末端メチル基(シフト値:0.88ppm)の積分値を3プロトン分とした際の、ポリオレフィン基Aのメチレン基(シフト値:1.06−1.50ppm)の積分値およびPEGのアルキレン基(シフト値:3.33−3.72ppm)の積分値から算出することできる。
【0076】
具体的には、メチル基の分子量は15、メチレン基の分子量は14、エチレンオキサイド基の分子量は44であることから、各積分値の値よりポリオレフィン基Aおよびアルキレン基の数平均分子量が計算できる。ここで得られたポリオレフィン基Aの数平均分子量をエチレンユニットの分子量で割ることによりnを、アルキレン基の数平均分子量をエチレングリコールユニットの分子量で割ることで、PEG鎖のエチレングリコールユニット総数(l+mもしくはl+m+o)を算出することができる。
【0077】
ポリオレフィン基Aがエチレン―プロピレン共重合体よりなる場合は、IR、13C−NMRなどで測定できるプロピレンの含有率と、H−NMRにおける積分値の両者を用いることでnおよびl+mもしくはl+m+oを算出することができる。H−NMRにおいて、内部標準を用いる方法も有効である。
【0078】
[ポリオレフィン系末端分岐型共重合体の製造方法]
ポリオレフィン系末端分岐型共重合体は、次の方法によって製造することができる。
【0079】
最初に、目的とするポリオレフィン系末端分岐型共重合体中、一般式(1)で示されるAの構造に対応するポリマーとして、一般式(7)
【0080】
【化16】

【0081】
(式中、Aはポリオレフィン鎖を表わし、RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基でありかつ少なくともどちらか一方は水素原子を表す。)で示される、片末端に二重結合を有するポリオレフィンを製造する。
【0082】
このポリオレフィンは、以下の方法によって製造することができる。
(1)特開2000−239312号公報、特開2001−2731号公報、特開2003−73412号公報などに示されているようなサリチルアルドイミン配位子を有する遷移金属化合物を重合触媒として用いる重合方法。
(2)チタン化合物と有機アルミニウム化合物とからなるチタン系触媒を用いる重合方法。
(3)バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなるバナジウム系触媒を用いる重合方法。
(4)ジルコノセンなどのメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン)とからなるチーグラー型触媒を用いる重合方法。
【0083】
上記(1)〜(4)の方法の中でも、特に(1)の方法によれば、上記ポリオレフィンを収率よく製造することができる。(1)の方法では、上記サリチルアルドイミン配位子を有する遷移金属化合物の存在下で、前述したポリオレフィンを重合または共重合することで上記片方の末端に二重結合を有するポリオレフィンを製造することができる。
【0084】
(1)の方法によるポリオレフィンの重合は、溶解重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれによっても実施できる。詳細な条件などは既に公知であり上記特許文献を参照することができる。
【0085】
(1)の方法によって得られるポリオレフィンの分子量は、重合系に水素を存在させるか、重合温度を変化させるか、または使用する触媒の種類を変えることによって調節することができる。
【0086】
次に、上記ポリオレフィンをエポキシ化して、すなわち上記ポリオレフィンの末端の二重結合を酸化して、一般式(8)で示される末端にエポキシ基を含有する重合体を得る。
【0087】
【化17】

【0088】
(式中、A、RおよびRは前述の通り。)
【0089】
かかるエポキシ化方法は特に限定されるものではないが、以下の方法を例示することができる。
(1)過ギ酸、過酢酸、過安息香酸などの過酸による酸化
(2)チタノシリケートおよび過酸化水素による酸化
(3)メチルトリオキソレニウム等のレニウム酸化物触媒と過酸化水素による酸化
(4)マンガンポルフィリンまたは鉄ポルフィリン等のポルフィリン錯体触媒と過酸化水素または次亜塩素酸塩による酸化
(5)マンガンSalen等のSalen錯体と過酸化水素または次亜塩素酸塩による酸化
(6)マンガン−トリアザシクロノナン(TACN)錯体等のTACN錯体と過酸化水素による酸化
(7)タングステン化合物などのVI族遷移金属触媒と相間移動触媒存在下、過酸化水素による酸化
上記(1)〜(7)の方法の中でも、活性面で特に(1)および(7)の方法が好ましい。
【0090】
また、例えばMw400〜600程度の低分子量の末端エポキシ基含有重合体はVIKOLOXTM(登録商標、Arkema社製)を用いることができる。
【0091】
上記方法で得られた一般式(8)で表される末端エポキシ基含有重合体に種々の反応試剤を反応させることにより、一般式(9)で表されるようなポリマー末端のα、β位に様々な置換基Y、Yが導入された重合体(重合体(I))を得ることが出来る。
【0092】
【化18】

【0093】
(式中、A、R,Rは前述の通り。Y、Yは同一または相異なり水酸基、アミノ基、または下記一般式(10a)〜(10c)を表す。)
【0094】
【化19】

【0095】
【化20】

【0096】
【化21】

【0097】
(一般式(10a)〜(10c)中、Eは酸素原子または硫黄原子を表し、Rはm+1価の炭化水素基を表し、Tは同一または相異なり水酸基、アミノ基を表し、mは1〜10
の整数を表す。)
【0098】
例えば、一般式(8)で表される末端エポキシ基含有重合体を加水分解することにより、一般式(9)においてY、Yが両方とも水酸基である重合体が得られ、アンモニアを反応させることによりY、Yの一方がアミノ基、他方が水酸基の重合体が得られる。
【0099】
また、一般式(8)で表される末端エポキシ基含有重合体と一般式(11a)で示される反応試剤Aとを反応させることにより、一般式(9)においてY、Yの一方が一般式(10a)に示される基で他方が水酸基の重合体が得られる。
【0100】
【化28】

【0101】
(式中、E、R、T、mは前述の通りである。)
【0102】
また、末端エポキシ基含有重合体と一般式(11b)、(11c)で示される反応試剤Bを反応させることにより、一般式(9)においてY、Yの一方が一般式(10b)または(10c)に示される基で他方が水酸基の重合体が得られる。
【0103】
【化22】

【0104】
【化23】

【0105】
(式中、R、T、mは前述の通りである。)
【0106】
一般式(11a)で示される反応試剤Aとしては、グリセリン、ペンタエリスリトール、ブタントリオール、ジペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼン等を挙げることができる。
【0107】
一般式(11b)、(11c)で示される反応試剤Bとしては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノフェノール、ヘキサメチレンイミン、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジエチレントリアミン、N−(アミノエチル)プロパンジアミン、イミノビスプロピルアミン、スペルミジン、スペルミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン等を挙げることができる。
【0108】
エポキシ体とアルコール類、アミン類との付加反応は周知であり、通常の方法により容易に反応が可能である。
【0109】
一般式(1)は一般式(9)で示される重合体(I)を原料として、アルキレンオキシドを付加重合することにより製造することができる。アルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、メチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは2種以上併用してもよい。これらの中で、好ましくは、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシドである。より好ましくはプロピレンオキシド、およびエチレンオキシドである。
【0110】
触媒、重合条件などについては、公知のアルキレンオキシドの開環重合方法を利用することができ、例えば、大津隆行著,「改訂高分子合成の化学」,株式会社化学同人,1971年1月,p.172−180には、種々の単量体を重合してポリオールを得る例が開示されている。開環重合に用いられる触媒としては、上記文献に開示されたように、カチオン重合向けにAlCl、SbCl、BF、FeClのようなルイス酸、アニオン重合向けにアルカリ金属の水酸化物またはアルコキシド、アミン類、フォスファゼン触媒、配位アニオン重合向けにアルカリ土類金属の酸化物、炭酸塩、アルコキシドあるいは、Al、Zn、Feなどのアルコキシドを用いることができる。ここで、ホスファゼン触媒としては、例えば、特開平10−77289号公報に開示された化合物、具体的には市販のテトラキス[トリス(ジメチルアミノ)フォスフォラニリデンアミノ]フォスフォニウムクロリドのアニオンをアルカリ金属のアルコキシドを用いてアルコキシアニオンとしたものなどが利用できる。
【0111】
反応溶媒を使用する場合は、重合体(I)、アルキレンオキシドに対して不活性なものが使用でき、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジオキサン等のエーテル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
【0112】
触媒の使用量はホスファゼン触媒以外については原料の重合体(I)の1モルに対して、0.05〜5モルが好ましく、より好ましくは0.1〜3モルの範囲である。ホスファゼン触媒の使用量は、重合速度、経済性等の点から、重合体(I)の1モルに対して1×10−4〜5×10−1モルが好ましく、より好ましくは5×10−4〜1×10−1モルである。
【0113】
反応温度は通常25〜180℃、好ましくは50〜150℃とし、反応時間は使用する触媒の量、反応温度、ポリオレフィン類の反応性等の反応条件により変わるが、通常数分〜50時間である。
【0114】
一般式(1)の数平均分子量は、前述の通り一般式(8)で示される重合体(I)の数平均分子量と、重合させるアルキレンオキシドの重量から計算する方法や、NMRを用いる方法により算出することができる。
【0115】
[重合体粒子]
このようなポリオレフィン系末端分岐型共重合体からなる本発明の重合体粒子は、一般式(1)のAで表されるポリオレフィン鎖部分が、内方向に配向した構造を有し、このポリオレフィン鎖部分が結晶性を有するリジットな粒子である。
【0116】
本発明の重合体粒子は、ポリオレフィン鎖部分が結晶性を有するため、分散液の乾燥による粒子の取り出し後も再度溶媒等の液体中に分散することが可能である。本発明の重合体粒子は、粒子が含むポリオレフィン鎖部分の融点が好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上のリジッドな粒子である。
【0117】
ポリオレフィン鎖部分の融点が上記の範囲にあると、結晶性が良好なリジッドな粒子となり、より高温で加熱した場合においても粒子の崩壊が抑制される。
【0118】
このため、後述する各種用途における製造工程や使用場面において、粒子の崩壊が抑制されるので、本発明の重合体粒子が有する特性を失うことがなく、製品の歩留まりや製品の品質がより安定する。
【0119】
本発明の重合体粒子は、溶媒等に分散させたとしても、希釈濃度によらず粒子径が一定である。つまり、再分散性および均一な分散粒子径を有することから、液体中に分散しているミセル粒子とは異なるものである。
【0120】
[ポリオレフィン系末端分岐型共重合体粒子分散液]
本発明の分散液は前記ポリオレフィン系末端分岐型共重合体を分散質に含み、該分散質を水および/または水と親和性を有する有機溶媒に粒子として分散している。
【0121】
本発明において、分散液とは、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体粒子が分散されてなる分散液であり、
(1)ポリオレフィン系末端分岐型共重合体粒子を製造する際に得られた、該重合体粒子を含む分散液、
(2)ポリオレフィン系末端分岐型共重合体粒子を製造する際に得られた該重合体粒子を含む分散液に、さらに他の分散質や添加剤等を分散または溶解してなる分散液、
(3)ポリオレフィン系末端分岐型共重合体粒子を水や水と親和性を有する有機溶媒に分散させるとともに、他の分散質や添加剤等を分散または溶解してなる分散液、
の何れをも含む。
【0122】
本発明の分散液における前記ポリオレフィン系末端分岐型共重合体の含有割合は、全分散液を100質量%としたときに、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは1〜40質量%、さらに好ましくは1〜20質量%である。
【0123】
ポリオレフィン系末端分岐型共重合体の含有割合が上記範囲にあると、分散液の実用性が良好であり、かつ粘度を適正に保つことができ、取り扱いが容易になるため好ましい。
また、本発明の分散液中の粒子の体積50%平均粒子径は好ましくは10nm以上30nm以下である。
【0124】
粒子の体積50%平均粒子径は、前記ポリオレフィン系末端分岐型共重合体のポリオレフィン部分の構造および末端分岐部分の構造を変えることにより調節可能である。
【0125】
なお、本発明における体積50%平均粒子径とは、全体積を100%としたときの累積体積が50%時の粒子の直径をいい、動的光散乱式粒子径分布測定装置やマイクロトラック粒度分布測定装置を使用して測定することができる。
【0126】
また、その形状は、例えばリンタングステン酸によりネガティブ染色を施した後、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察することができる。
【0127】
本発明における分散液は、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体を水および/または水と親和性を有する有機溶媒に分散化することにより得られる。
【0128】
本発明における分散化は、機械的せん断力によりポリオレフィン系末端分岐型共重合体を水および/または水と親和性を有する有機溶媒に物理的に分散化する方法で行なうことができる。
【0129】
分散化方法としては特に限定されるものではないが、各種の分散化方法を利用することができる。具体的に言えば、一般式(1)で表されるポリオレフィン系末端分岐型共重合体と水および/または水と親和性を有する有機溶媒とを混合した後、溶融状態にして高圧ホモジナイザー、高圧ホモミキサー、押出混練機、オートクレーブ等で分散化する方法、高圧で噴射粉砕する方法、細孔より噴霧させる方法が挙げられる。また、前記ポリオレフィン系末端分岐型共重合体を水以外の溶媒に予め溶解した後、水および/または水と親和性を有する有機溶媒とを混合して高圧ホモジナイザー、高圧ホモミキサー等により分散化する方法も可能である。この際、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体の溶解に使用する溶媒は、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体が溶解するのであれば特に限定されないが、トルエン、シクロヘキサンや前記の水と親和性を有する有機溶媒などが挙げられる。水以外の有機溶媒が分散液に混入することが好ましくない場合には、蒸留等の操作により除去することが可能である。
【0130】
さらに具体的には、例えば、せん断力をかけることが可能な撹拌機付きのオートクレーブ中、100℃以上、好ましくは120〜200℃の温度でせん断力をかけながら加熱撹拌することによって分散液を得ることができる。
【0131】
上記温度範囲にあると、前記ポリオレフィン系末端分岐型共重合体が溶融状態にあるため分散化が容易であり、かつ前記ポリオレフィン系末端分岐型共重合体が加熱により劣化しにくいため好ましい。
【0132】
分散化に要する時間は、分散化温度やその他の分散化条件によっても異なるが、1〜300分程度である。
【0133】
上記の撹拌時間では分散化を十分に行うことができ、かつ前記ポリオレフィン系末端分岐型共重合体が劣化しにくいため好ましい。反応後は、分散液中の温度が100℃以下になるまで、好ましくは60℃以下になるまでせん断力をかけた状態を保つことが好ましい。
【0134】
本発明に用いる分散液の製造において、界面活性剤の添加は不可欠ではないが、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤などを共存させても良い。
【0135】
アニオン界面活性剤として、例えば、カルボン酸塩、単純アルキル・スルフォネート、変性アルキル・スルフォネート、アルキル・アリル・スルフォネート、アルキル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸エステル、硫酸化脂肪酸モノグリセライド、硫酸化アルカノール・アミド、硫酸化エーテル、アルキル燐酸エステル塩、アルキル・ベンゼン・フォスフォン酸塩、ナフタレンスルホン酸・ホルマリン縮合物などが挙げられる。
【0136】
カチオン界面活性剤として、例えば、単純アミン塩、変性アミン塩、テトラアルキル第4級アンモニウム塩、変性トリアルキル第4級アンモニウム塩、トリアルキル・ベンジル第4級アンモニウム塩、変性トリアルキル・ベンジル第4級アンモニウム塩、アルキル・ピリジニウム塩、変性アルキル・ピリジニウム塩、アルキル・キノリニウム塩、アルキル・フォスフォニウム塩、アルキル・スルフォニウム塩などが挙げられる。
【0137】
両性界面活性剤として、例えば、ベタイン、スルフォベタイン、サルフェートベタインなどが挙げられる。
【0138】
ノニオン界面活性剤として、例えば、脂肪酸モノグリセリン・エステル、脂肪酸ポリグリコール・エステル、脂肪酸ソルビタン・エステル、脂肪酸蔗糖エステル、脂肪酸アルカノール・アミド、脂肪酸ポリエチレン・グリコール縮合物、脂肪酸アミド・ポリエチレン・グリコール縮合物、脂肪酸アルコール・ポリエチレン・グリコール縮合物、脂肪酸アミン・ポリエチレン・グリコール縮合物、脂肪酸メルカプタン・ポリエチレン・グリコール縮合物、アルキル・フェノール・ポリエチレン・グリコール縮合物、ポリプロピレン・グリコール・ポリエチレン・グリコール縮合物などが挙げられる。
これら界面活性剤は、単独または2種以上を併用することができる。
【0139】
本発明に用いる分散液の製造にあたっては、異物などを除去する目的で、工程中に濾過工程を設けてもよい。このような場合には、たとえば、300メッシュ程度のステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)を設置し、加圧濾過(空気圧0.2MPa)をおこなえばよい。
【0140】
上記の方法で得られる分散液は、各種の酸や塩基、例えば塩酸、硫酸、リン酸などの酸や、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどの塩基を添加することによりpHを1から13まで変化させても、凝集、沈殿を起こさない。また、この分散液を常圧下で加熱還流もしくは凍結解凍を繰り返すような、幅広い温度範囲においても凝集、沈殿を起こさない。
【0141】
上記方法における水については特に制限されず、蒸留水、イオン交換水、市水、工業用水などを使用可能であるが、蒸留水やイオン交換水を使用することが好ましい。
【0142】
また、上記方法における水と親和性を有する有機溶媒は、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体粒子、界面活性剤等の分散質が分散可能なものであれば特に限定されないが、例えばエチレングリコール、テトラエチレングリコール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノンなどが挙げられる。分散液中への有機溶媒の混入が好ましくない場合には、該分散質を含有した分散液を調製した後、蒸留等により、前記有機溶媒を除去することが可能である。
【0143】
本発明における分散液は、前記ポリオレフィン系末端分岐型共重合体を100質量部としたときに、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体以外の分散質を0.001質量部〜20質量部、好ましくは0.01質量部〜10質量部、さらに好ましくは0.1質量部〜5質量部含有することができる。
【0144】
該分散質の含有量が上記範囲にあると、分散液の物性が実用面で良好であり、且つ分散液が凝集、沈殿を生じにくいため好ましい。
30nmを超え300nm以下の有機ポリマー粒子が分散した有機無機複合体は、例えば水系媒体に分散したポリ(メタ)アクリル酸エステル系重合体粒子を用いることにより安定的に製造することが出来る。
【0145】
次に、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系重合体粒子について説明する。
[(メタ)アクリル酸エステル系重合体粒子水分散液]
ポリ(メタ)アクリル酸エステル系重合体はアクリル酸エステル及び/又はメタアクリル酸エステル由来の繰り返し単位を有する単独重合体または共重合体である。
ポリ(メタ)アクリル酸エステル系重合体粒子の水分散液は一般的にアクリルエマルジョンと呼ばれ、公知の乳化重合法により得ることができる。例えば、不飽和単量体(不飽和ビニルモノマー等)を重合開始剤、及び界面活性剤を存在させた水中において乳化重合することによって得ることができる。
【0146】
アクリル酸エステルの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−へキシルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、グリシジルアクリレート等が挙げられる。
【0147】
メタアクリル酸エステルの具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0148】
本発明のポリ(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル以外の不飽和単量体が共重合されていてもよい。
【0149】
併用できる不飽和単量体としては、酢酸ビニル等のビニルエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物類;塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン化単量体類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、4−t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体類;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;ブタジエン、クロロプレン等のジエン類;ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルピロリドン等のビニル単量体類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N’−ジメチルアクリルアミド等のアクリルアミド類;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の水酸基含有単量体類等が挙げられ、これらを単独または二種以上混合して使用することができる。
【0150】
また、重合可能な二重結合を二つ以上有する架橋性単量体も使用することができる。重合可能な二重結合を二つ以上有する架橋性単量体の例としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロピロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジアクリレート化合物、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート等のトリアクリレート化合物、ジトリメチロールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等のテトラアクリレート化合物、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のヘキサアクリレート化合物、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリブチレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジメタクリレート化合物、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート等のトリメタクリレート化合物、メチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン等が挙げられ、これらを単独または二種以上混合して使用することができる。
【0151】
また、乳化重合の際に使用される重合開始剤及び界面活性剤の他に、連鎖移動剤、さらには中和剤等も常法に準じて使用してよい。特に中和剤としては、アンモニア、無機アルカリの水酸化物、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等が好ましい。
ポリ(メタ)アクリル酸系重合体粒子の粒径は水中での分散安定性の観点から、その平均粒子径が30nmを超え300nm以下が好ましく、40〜250nmがより好ましく、特に50〜200nmであることが好ましい。
【0152】
また、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体粒子としては、単相構造及び複相構造(コアシェル型)の何れのものも使用できる。
【0153】
なお、「アクリルエマルジョン」というときは、ディスパージョン、ラテックス、サスペンジョンと呼ばれる固/液の分散体をも包含したものを意味するものとする。
アクリルエマルジョンは、例えば、次のようにして製造される。
【0154】
〔アクリルエマルジョンの製造方法例〕
滴下装置、温度計、水冷式還流コンデンサー及び攪拌機を備えた反応容器に、イオン交換水100部を入れ、窒素雰囲気下、温度70℃で攪拌しながら、重合開始剤0.2部を添加する。これに、別途調製したモノマー溶液を滴下し重合反応させて、1次物質を調製する。その後、温度70℃で、該1次物質に、重合開始剤の10%水溶液2部を添加して攪拌し、更に別途調製した反応液を添加し攪拌して重合反応させ、重合反応物を得る。該重合反応物はそのまま用いても良いし、中和剤で中和してpHが8〜8.5になるように調整しても良い。その後フィルターでろ過し粗大粒子を除去して、樹脂粒子を分散質とするアクリルエマルジョンを得る。
【0155】
重合開始剤としては、通常のラジカル重合に用いられるものと同様のものが用いられ、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジブチル、過酢酸、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロキシパーオキシド、パラメンタンヒドロキシパーオキシド等が挙げられる。特に、前述の如く、重合反応を水中で行う場合には、水溶性の重合開始剤が好ましい。
また、重合反応で用いられる乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムの他、一般にアニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤又は両性界面活性剤として用いられているもの等が挙げられる。
【0156】
また、重合反応で用いられる連鎖移動剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、キサントゲン類であるジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソブチルキサントゲンジスルフィド、ジペンテン、インデン、1,4−シクロヘキサジエン、ジヒドロフラン、キサンテン等が挙げられる。
アクリルエマルジョンは、溶剤として、水以外に、有機溶剤を併用することもできる。このような有機溶剤としては、水と相溶性を有するものが好ましく、例えば、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテルなどのグリコールエーテル類、2−ピロリドン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0157】
1―2 (B)金属酸化物多孔質体
本発明の(B)金属酸化物多孔質体は、波長589.3nm(Na−D線)における屈折率が1.8以上である金属酸化物を主体とするマトリックス中に平均細孔径が10〜300nmの細孔が分散されている。
【0158】
(金属酸化物)
金属酸化物としては、前記(A)で例示した金属酸化物を挙げることができる。
本発明においては、金属酸化物中に特定の細孔径の細孔が分散していることによって嵩比重が低くなり、沈降しにくい水性顔料を形成することができる。
【0159】
(細孔)
(B)金属酸化物多孔質体中の細孔の平均細孔径は10〜300nmであり、好ましくは10〜200nmである。平均細孔径を10〜300nmとするためには、水系媒体に分散可能で体積50%平均粒子径が10から300nmである有機ポリマー粒子を鋳型として用い、二酸化チタン等の金属酸化物からなる有機無機複合体を形成後、有機ポリマー粒子を焼成除去すれば良い。
【0160】
多孔質材料の細孔特性は窒素吸着によって求めることができる。粒子の窒素吸脱着測定から、比表面積をBET(Brunauer−Emmett−Teller)法で、全細孔容積をBJH(Barrett−Joyner−Halenda)法により算出することが出来る。さらに空孔率は全細孔容積から算出することが出来る。
空孔率は特に制限されるものではないが、20〜90%が好ましく、30〜85%がより好ましい。
【0161】
細孔は金属酸化物を主体とするマトリックス中にキュービック相構造を呈して分散していることが好ましい。キュービック相構造をとることにより、ヘキサゴナル相構造、ランダム(無秩序)構造に比べて強度が高くなることが期待できる。
【0162】
1-3 水性インク用顔料の製造方法
以下、前記に説明した(A)有機無機複合体及び/又は(B)金属酸化物多孔質体からなる水性インク用顔料の製造方法について説明する。
【0163】
本発明の(A)有機無機複合体は、有機ポリマー粒子と金属酸化物を複合化することにより得られる。(B)金属酸化物多孔質体は該(A)有機無機複合体から鋳型である有機ポリマー粒子を除去することにより製造される。
【0164】
具体的には、以下の工程(a)、(b)及び(c)を含む。好ましくはさらに工程(d)を含む。
工程(a):(a−1)あるいは(a−2)を行う。
工程(a−1)上述の非水溶性有機ポリマー粒子の存在下で、金属酸化物前駆体のゾル−ゲル反応を行う
工程(a―2)上述の非水溶性有機ポリマー粒子、金属酸化物ナノ粒子及び水系媒体を含有する混合液を調製する。
工程(b):前記工程(a)において得られた混合液を乾燥し有機無機複合体を得る。
工程(c):前記有機無機複合体から有機ポリマー粒子を除去し、金属酸化物多孔質体を調製する。
工程(d):前記工程(b)で得られた有機無機複合体、及び/または前記工程(c)で得られた金属酸化物多孔質体を所望の粒径に湿式粉砕し、水中への分散化を行い、水系ディスパージョンを得る。
【0165】
以下、各工程を順に説明する。
[工程(a)]
[工程(a−1)]
工程(a−1)においては、前記非水溶性有機ポリマー粒子(X)、金属酸化物前駆体(Y)、水および/または水の一部または全部を任意の割合で溶解する溶媒(Z)を混合して混合組成物を調製するとともに、前記金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解縮合物のゾル−ゲル反応を行う。なお、混合組成物には、金属アルコキシドの加水分解・重縮合反応を促進させる目的で、ゾル−ゲル反応用触媒(W)を含んでいてもよい。
【0166】
混合組成物は、さらに具体的には、成分(Y)または成分(Y)を「水および/または水の一部または全部を任意の割合で溶解する溶媒(Z)」に溶解した溶液に、「ゾル−ゲル反応用触媒(W)」、さらに必要に応じて水を添加して攪拌混合して、成分(Y)のゾル−ゲル反応を行い、このゾル−ゲル反応を継続させながら非水溶性有機ポリマー粒子(X)を添加することにより調製される。非水溶性共有機ポリマー粒子(X)は水性分散液として添加することができる。
【0167】
また、成分(Y)または成分(Y)を前記溶媒(Z)に溶解した溶液に、非水溶性有機ポリマー粒子(X)の水性分散液を添加して攪拌混合した後に、触媒(W)、さらに必要に応じて水を添加して攪拌混合することで調製することもできる。
【0168】
[金属酸化物前駆体(Y)]
金属酸化物前駆体としては、金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解縮合物、金属ハロゲン化物、金属アセテート、金属硝酸塩、金属硫化塩が挙げられる。
【0169】
本発明における金属アルコキシドは、下記式(12)で表されるものを指す。
(R)xM(OR)y (12)
式中、Rは、水素原子、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、アリール基(フェニル基、トリル基など)、炭素−炭素二重結合含有有機基(アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基など)、ハロゲン含有基(クロロプロピル基、フルオロメチル基などのハロゲン化アルキル基など)などを表す。Rは、炭素数1以上6以下、好ましくは炭素数1以上4以下の低級アルキル基を表す。xおよびyは、x+y=4かつ、xは2以下となる整数を表す。
【0170】
Mとしては、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、セレン(Se)、アンチモン(Sb)、スズ(Sn)、イットリウム(Y)希土類金属等が挙げられ、屈折率の観点から、チタン、ジルコニウム、イットリウムなどが好ましく用いられ、それらを組み合わせて使ってもよい。
【0171】
金属アルコキシドとしては、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタン-n-プロポキシド、チタン-i-プロポキシド、チタン-n-ブトキシド、チタン-t-ブトキシド、ジルコニウムメトキシド、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウム-n-プロポキシド、ジルコニウム-i-プロポキシド、ジルコニウム-n-ブトキシド、ジルコニウム-t-ブトキシド、インジウムメトキシド、インジウムエトキシド、インジウム-n-プロポキシド、インジウム-i-プロポキシド、インジウム-n-ブトキシド、インジウム-t-ブトキシド、亜鉛メトキシド、亜鉛エトキシド、亜鉛-n-プロポキシド、亜鉛-i-プロポキシド、亜鉛-n-ブトキシド、亜鉛-t-ブトキシド、セレンメトキシド、セレンエトキシド、セレン-n-プロポキシド、セレン-i-プロポキシド、セレン-n-ブトキシド、セレン-t-ブトキシド、アンチモンメトキシド、アンチモンエトキシド、アンチモン-n-プロポキシド、アンチモン-i-プロポキシド、アンチモン-n-ブトキシド、アンチモン-t-ブトキシド、スズメトキシド、スズエトキシド、スズ-n-プロポキシド、スズ-i-プロポキシド、スズ-n-ブトキシド、スズ-t-ブトキシド、イットリウムメトキシド、イットリウムエトキシド、イットリウム-n-プロポキシド、イットリウム-i-プロポキシド、イットリウム-n-ブトキシド、イットリウム-t-ブトキシドが挙げられる。
【0172】
金属アルコキシドの部分加水分解縮合物は、これらの1種以上の金属アルコキシドにゾル−ゲル反応用触媒(W)を用いて部分的に加水分解されたものが、重縮合することにより得られる化合物であり、たとえば金属アルコキシドの部分加水分解重縮合化合物である。
【0173】
本発明において、金属アルコキシドの部分加水分解縮合物としては、アルコキシチタンの縮合物、アルコキシジルコニウムの縮合物の縮合物が好ましい。
【0174】
本発明における金属ハロゲン化物としては、下記式(13)で表されるものを用いることができる。
(R)xMZy (13)
式中、Rは、水素原子、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基など)、アリール基(フェニル基、トリル基など)、炭素−炭素二重結合含有有機基(アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基など)、ハロゲン含有基(クロロプロピル基、フルオロメチル基などのハロゲン化アルキル基など)などを表す。ZはF、Cl、Br、Iを表す。xおよびyは、x+y≦4かつ、xは2以下となる整数を表す。チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、セレン(Se)、アンチモン(Sb)、スズ(Sn)、希土類金属等が挙げられ、屈折率の観点から、チタン、ジルコニウム、イットリウムなどが好ましく用いられ、それらを組み合わせて使ってもよい。
【0175】
具体例を挙げると、ハロゲン化チタン、ハロゲン化ジルコニウム、ハロゲン化インジウム、ハロゲン化亜鉛、ハロゲン化セレン、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化イットリウム及びそれらの水和物が挙げられる。
【0176】
金属アセテートとしては、酢酸チタン、酢酸ジルコニウム、酢酸インジウム、酢酸亜鉛、酢酸セレン、酢酸アンチモン、酢酸スズ、酢酸イットリウムあるいはそれらの水和物が挙げられる。
【0177】
金属硝酸塩としては、硝酸チタン、硝酸ジルコニウム、硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸セレン、硝酸アンチモン、硝酸スズ、硝酸イットリウムあるいはそれらの水和物が挙げられる。
【0178】
金属硫酸塩としては、硫酸チタン、硫酸ジルコニウム、硫酸インジウム、硫酸亜鉛、硫酸セレン、硫酸アンチモン、硫酸スズ、硫酸イットリウムあるいはそれらの水和物が挙げられる。
【0179】
また、チタン酸バリウム等の複合金属酸化物を得たい場合は、複数の金属酸化物前駆体を用いることができる。
【0180】
[水および/または水の一部または全部を任意の割合で溶解する溶媒(Z)」
本発明の組成物において、成分(Z)は、金属酸化物前駆体(Y)を、さらに加水分解させる目的で添加される。
【0181】
また、成分(Z)は、非水溶性有機ポリマー粒子を用いて水性分散液を得るときに使用する溶媒と、水性分散液、成分(Y)および後述するゾル−ゲル反応用触媒(W)(以下、「成分W」ということもある)を混合するときに使用する溶媒の両方を含む。
【0182】
水については特に制限されず、蒸留水、イオン交換水、市水、工業用水などを使用可能であるが、蒸留水やイオン交換水を使用することが好ましい。
【0183】
水の一部または全部を任意の割合で溶解する溶媒としては、水と親和性を有する有機溶媒であって、非水溶性有機ポリマー粒子が分散可能なものであれば特に限定されないが、例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、エチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−メトキシエタノール(メチルセルソルブ)、2−エトキシエタノール(エチルセルソルブ)、酢酸エチルなどが挙げられる。中でも、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサンは、水との親和性が高いため、好ましい。
【0184】
水を用いる場合、添加する水の量は、通常は前記成分(Z)および前記成分(W)の混合物100重量部に対し、例えば1重量部以上1000000重量部以下の範囲であり、好ましくは10重量部以上10000重量部以下の範囲である。
【0185】
水の一部または全部を任意の割合で溶解する溶媒としては、添加する溶媒の量は、通常は前記成分(Z)および前記成分(W)の混合物100重量部に対し、例えば1重量部以上1000000重量部以下の範囲であり、好ましくは10重量部以上10000重量部以下の範囲である。
【0186】
また、金属アルコキシド類の加水分解重縮合時の好ましい反応温度は、1℃以上100℃以下であり、より好ましくは20℃以上60℃以下であり、反応時間は10分以上72時間以下であり、より好ましくは1時間以上24時間以下である。
【0187】
[ゾル−ゲル反応用触媒(W)]
本発明で用いる混合組成物において、金属アルコキシドの加水分解・重縮合反応における反応を促進させる目的で、以下に示すような加水分解・重縮合反応の触媒となりうるものを含んでいてもよい。
【0188】
金属アルコキシドの加水分解・重縮合反応の触媒として使用されるものは、「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作製技術」(平島碩著、株式会社総合技術センター、29頁)や「ゾル−ゲル法の科学」(作花済夫著、アグネ承風社、154頁)等に記載されている一般的なゾル−ゲル反応で用いられる触媒である。
【0189】
触媒(W)としては、酸触媒、アルカリ触媒、有機スズ化合物、チタニウムテトライソプロポキシド、ジイソプロポキシチタニウムビスアセチルアセトナート、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトナート、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリスエチルアセトナート、トリメトキシボランなどの金属アルコキシド等が挙げられる。
【0190】
これら触媒の中でも、酸触媒、アルカリ触媒が好適に使用される。具体的には、酸触媒では塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、蓚酸、酒石酸、トルエンスルホン酸等の無機および有機酸類、アルカリ触媒では、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム水酸化物、アンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、モルホリン、ピリジン、ピペリジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン類などが挙げられる。
【0191】
反応性の観点から、比較的穏やかに反応が進行する塩酸、硝酸等、酸触媒を使用することが好ましい。好ましい触媒の使用量は、前記成分(Y)の金属アルコキシド1モルに対して0.001モル以上0.05モル以下、好ましくは0.001モル以上0.04モル以下、さらに好ましくは0.001モル以上0.03モル以下の程度である。
【0192】
工程(a−1)における混合組成物は、例えば、触媒(W)の存在下、溶媒(Z)を除去しないでゾル−ゲル反応させることによって得られるゾル−ゲル反応物の形態で使用することができる。
【0193】
[工程(a−2)]
工程(a−2)においては、金属酸化物ナノ粒子の水分散体を調整し、上述の非水溶性有機ポリマー粒子の水分散液と混合、あるいは反応させ液を調製する。
【0194】
本発明において選ばれる金属酸化物ナノ粒子は、具体的には、二酸化チタン(TiO)、二酸化ジルコニウム(ZrO)、イットリア安定化ジルコニウム(YSZ)、酸化インジウム(In)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アンチモン(Sb)、酸化スズ(SnO)、チタン酸バリウム(BaTiO)を1成分以上含有する金属酸化物ナノ粒子が挙げられる。
【0195】
2成分以上含有する金属酸化物ナノ粒子とは、具体的には1種類の無機超微粒子の表面に他の無機物を1種類以上被覆した構造(コアーシェル構造)、2種類以上の成分により結晶構造を形成するものなどである。
【0196】
金属酸化物ナノ粒子の粒子径は、好ましくは1〜50nm、より好ましくは1〜20nm、さらに好ましくは1〜10nmである。この範囲であるとナノ粒子としての性質が保たれ、かつ、得られる多孔質体の細孔の規則性が良好であり好ましい。
【0197】
また金属酸化物ナノ粒子の製造方法として、大きくは粉砕法と合成法に分けられる。さらに合成法としては蒸発凝縮法、気相反応法などの気相法、コロイド法、均一沈殿法、水熱合成法、マイクロエマルション法などの液相法などがある。
【0198】
本発明に用いる金属酸化物ナノ粒子の製造法は特に制限されるものではないが、粒径、組成の均一性、不純物などの点から、合成法により製造したものが好ましい。
それぞれの金属酸化物ナノ粒子は、水などにコロイド状あるいはスラリー状に分散するのが好ましく、分散を安定に保つため、γ−グリシドオキシプロピルトリメトキシシランやメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、カルボン酸などの有機酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニールアルコールなどの高分子を添加、またはそれらを微粒子表面に化学的結合(表面修飾)させるなどの方法により分散安定化しても構わない。
【0199】
金属酸化物ナノ粒子を分散させる水性媒体としては、水および/または水の一部または全部を任意の割合で溶解する溶媒が挙げられる。
【0200】
水については特に制限されず、蒸留水、イオン交換水、市水、工業用水などを使用可能であるが、蒸留水やイオン交換水を使用することが好ましい。
【0201】
水の一部または全部を任意の割合で溶解する溶媒としては、水と親和性を有する有機溶媒であって、非水溶性有機ポリマー粒子が分散可能なものであれば特に限定されないが、例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、エチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−メトキシエタノール(メチルセルソルブ)、2−エトキシエタノール(エチルセルソルブ)、酢酸エチルなどが挙げられる。中でも、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサンは、水との親和性が高いため、好ましい。
金属酸化物ナノ粒子の水分散体は、前記非水溶性有機ポリマー粒子と混合され、混合組成物の形態で使用することが出来る。
【0202】
[工程(b)]
工程(b)においては、前記工程(a−1)において得られた反応溶液、あるいは(a−2)において得られた混合組成物を乾燥して有機無機複合体を得る。
【0203】
複合体粒子の製造方法としては、本発明の反応溶液、混合組成物を所定温度で加熱乾燥し水または溶媒を除去した後、得られた固体を粉砕や分級等の処理により成形する方法、あるいは凍結乾燥法のように低温度で水または溶媒除去して乾燥した後、さらに所定の温度で加熱乾燥させ、得られた固体を粉砕や分級の処理により成形する方法、さらには10μm以下の複合体微粒子を噴霧乾燥装置(スプレードライヤー)により噴霧し、溶媒を揮発させることにより粉体を得る方法などがある。
【0204】
前記工程(a−1)で得られた反応溶液を用いる場合は、加熱乾燥することによりゾル−ゲル反応が完結し、成分(Y)より金属酸化物が得られ、この金属酸化物を主とするマトリックスが形成される。ゾル−ゲル反応を完結させるための加熱温度は室温以上300℃以下であり、より好ましくは80℃以上200℃以下である。有機無機複合体は、このマトリックス中に、前記した有機ポリマー粒子が分散した構造となる。
【0205】
なお、ゾル-ゲル反応が完結した状態とは、理想的には全てがM−O−Mの結合を形成した状態であるが、一部アルコキシル基(M−OR)、M−OH基を残すものの、固体(ゲル)の状態に移行した状態を含むものである。
【0206】
前記工程(a−2)で得られた混合組成物を用いる場合、加熱乾燥することにより金属酸化物ナノ粒子が凝集結合し金属酸化物を主とするマトリックスが形成される。金属酸化物ナノ粒子の凝集結合を促進させるための加熱温度は室温以上300℃以下であり、より好ましくは80℃以上200℃以下である。有機無機複合体は、このマトリックス中に、前記した有機ポリマー粒子が分散した構造となる。
【0207】
[工程(c)]
工程(c)においては、工程(b)で得られた有機無機複合体から有機ポリマー粒子を除去し、金属酸化物多孔質体を調製する。
【0208】
有機ポリマー粒子を除去する方法としては、焼成により分解除去する方法、VUV光(真空紫外光)、遠赤外線、マイクロ波、プラズマを照射して分解除去する方法、溶剤や水を用いて抽出除去する方法などが挙げられる。焼成により分解除去する場合、好ましい温度は300℃〜2000℃、より好ましくは400℃〜1000℃、さらに好ましくは500℃〜800℃焼成温度が低すぎる場合、有機ポリマー粒子が除去されず、一方高すぎる場合、結晶子サイズが増大し、細孔径より大きくなるため構造の規則性が失われたり、金属酸化物の融点に近くなるため細孔が崩れる場合がある。焼成は、一定温度で行っても良いし、室温から除々に昇温しても構わない。焼成の時間は、温度に応じて変えられるが、1時間から24時間の範囲で行うのが好ましい。焼成は空気中で行ってもよいし、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中で行ってもよい。また、減圧下、または真空中で行っても構わない。VUV光を照射して分解除去する場合、VUVランプ、エキシマレーザー、エキシマランプを使用することが出来る。空気中でVUV光を照射する際に発生するオゾン(O)の酸化作用を併用しても構わない。マイクロ波としては、2.45GHzまたは28GHzの周波数いずれでも構わない。マイクロ波の出力は特に制限されず非水溶性有機ポリマー粒子が除去される条件が選ばれる。
【0209】
溶剤や水を用いて抽出を行う場合、例えば、溶剤としてはエチレングリコール、テトラエチレングリコール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、シクロヘキサン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、キシレン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタンなどを使用することができる。抽出の操作は、加温下で行っても良い。また超音波(US)処理を併用しても良い。なお、抽出操作を行った後は細孔に残存する水分、溶剤を取り除くため減圧下、熱処理を行うのが好ましい。
【0210】
このようにして得られる本発明の金属酸化物多孔質粒子は、均一な細孔を有し、その平均孔径が10〜300nm、好ましくは10〜200nmである。本発明の金属酸化物多孔質体はメソポーラス構造体であり、キュービック構造を有することが好ましい。
【0211】
なお、本発明における非水溶性有機ポリマー粒子を鋳型として用いることにより、細孔がキュービック相構造を形成している金属酸化物多孔質体が得られる理由については明らかでないが、以下のように推察される。
【0212】
上述した「金属酸化物多孔質体の製造方法」の工程(a)において、金属酸化物前駆体のゾル−ゲル反応を行いながら、複数の非水溶性有機ポリマー粒子を添加すると、複数の非水溶性有機ポリマー粒子は所定の表面電荷により互いに反発し合い、所定の距離をおいた熱力学的に安定した状態、すなわちFm3mなどのキュービック構造に分散される。同様に金属酸化物ナノ粒子の水分散体に複数の非水溶性有機ポリマー粒子を添加すると、複数の非水溶性有機ポリマー粒子は所定の表面電荷により互いに反発し合い、所定の距離をおいた熱力学的に安定した状態、すなわちFm3mなどのキュービック構造に分散される。
【0213】
よって、このように分散された有機ポリマー粒子を焼成により除去することで形成される金属酸化物多孔質粒子の細孔は、キュービック相を形成する。
【0214】
[工程(d)]
工程(d)では前記工程(b)で得られた有機無機複合体、または前記工程(c)で得られた金属酸化物多孔質体を所望の粒径に湿式粉砕し、水中への分散化を行い、水系ディスパージョンを得る。
【0215】
所望の粒径の顔料を有する水系ディスパージョンを作成することを目的として、ビーズミル、ジェットミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーターミル、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、オングミル等の粉砕・分散機を用いることができる。上記の粉砕・分散機に充填する前に、乳鉢によるプレ粉砕を行ってもよい。またプレミックス用のミキサーを用いてもよい。次の工程に対して、水性ディスパージョンをそのまま使うことができるが、微量の粗大粒子を除去するため、遠心分離、加圧濾過、及び減圧濾過などを用いることもできる。
【0216】
分散安定化させるために、界面活性剤の添加は不可欠ではないが、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤などを粉砕・分散処理時に共存させても良い。
【0217】
アニオン界面活性剤として、例えば、カルボン酸塩、単純アルキル・スルフォネート、変性アルキル・スルフォネート、アルキル・アリル・スルフォネート、アルキル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸エステル、硫酸化脂肪酸モノグリセライド、硫酸化アルカノール・アミド、硫酸化エーテル、アルキル燐酸エステル塩、アルキル・ベンゼン・フォスフォン酸塩、ナフタレンスルホン酸・ホルマリン縮合物などが挙げられる。
【0218】
カチオン界面活性剤として、例えば、単純アミン塩、変性アミン塩、テトラアルキル第4級アンモニウム塩、変性トリアルキル第4級アンモニウム塩、トリアルキル・ベンジル第4級アンモニウム塩、変性トリアルキル・ベンジル第4級アンモニウム塩、アルキル・ピリジニウム塩、変性アルキル・ピリジニウム塩、アルキル・キノリニウム塩、アルキル・フォスフォニウム塩、アルキル・スルフォニウム塩などが挙げられる。
【0219】
両性界面活性剤として、例えば、ベタイン、スルフォベタイン、サルフェートベタインなどが挙げられる。
【0220】
ノニオン界面活性剤として、例えば、脂肪酸モノグリセリン・エステル、脂肪酸ポリグリコール・エステル、脂肪酸ソルビタン・エステル、脂肪酸蔗糖エステル、脂肪酸アルカノール・アミド、脂肪酸ポリエチレン・グリコール縮合物、脂肪酸アミド・ポリエチレン・グリコール縮合物、脂肪酸アルコール・ポリエチレン・グリコール縮合物、脂肪酸アミン・ポリエチレン・グリコール縮合物、脂肪酸メルカプタン・ポリエチレン・グリコール縮合物、アルキル・フェノール・ポリエチレン・グリコール縮合物、ポリプロピレン・グリコール・ポリエチレン・グリコール縮合物などが挙げられる。
【0221】
これら界面活性剤は、単独または2種以上を併用することができる。
粉砕・分散化時の泡立ちを抑えるために、消泡剤を添加しても良い。消泡剤として、例えば、シリコーン系、ポリエーテル系、アルコール類などが挙げられる。これら消泡剤は、単独または2種以上を併用することができる。
【0222】
粉砕・分散後の顔料の粒子径は、動的光散乱式ナノトラック粒度分析計「マイクロトラックUPA-EX150(日機装株式会社製)」にて測定した場合、好ましくは0.1μm〜5μm、より好ましくは0.2μm〜1μmである。
【0223】
2.水性インク組成物
本発明の水性インク組成物は前記の水性インク用顔料、水を含んでいる。さらに水溶性有機溶剤、潤滑剤、高分子分散剤、界面活性剤、他の着色剤、その他各種添加剤を含むことができる。
【0224】
本発明による水性インク用顔料の添加量は、インク全体に対して1〜40質量%程度の範囲が好ましく、より好ましくは3〜30質量%である。本発明においては、このような高顔料濃度の場合であっても、顔料粒子の分散性や目詰まり信頼性に優れるとともに、インク中の顔料濃度を高くすることによって、隠蔽力の高い画像が得られる。
【0225】
本発明による水性インク組成物の溶媒は水または水と水溶性有機溶媒の混合溶媒が挙げられる。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることができる。また、紫外線照射、または過酸化水素添加などにより滅菌した水を用いることにより、インク組成物を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。また、水溶性有機溶媒は、好ましくは低沸点有機溶剤であり、その例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ブタノール、n−ペンタノールなどが挙げられる。特に一価アルコールが好ましい。
低沸点有機溶剤は、インクの乾燥時間を短くする効果がある。低沸点有機溶剤の添加量は水性インク組成物の0.5〜10質量%が好ましく、より好ましくは1.5〜6質量%の範囲である。
【0226】
本発明よる水性インク組成物は、さらに高沸点有機溶媒などの湿潤剤を含んでなることが好ましい。湿潤剤の好ましい例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルなどの多価アルコールのアルキルエーテル類、尿素、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが挙げられる。
【0227】
これら湿潤剤の添加量は、水性インク組成物の0.5〜40質量%が好ましく、より好ましくは2〜20質量%の範囲である。
【0228】
本発明による水性インク組成物は、高分子分散剤を含んでいるのが好ましい。高分子分散剤としては、天然高分子が挙げられる。具体的には、にかわ、ゼラチン、ガゼイン、アルブミンなどのタンパク質類、アラビアゴム、トラガントゴムなどの天然ゴム類、サボニンなどのグルコシド類、アルギン酸およびアルギン酸プロピレングリコールエステルアルギン酸トリエタノールアミン、アルギン酸アンモニウムなどのアルギン酸誘導体、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロースなどのセルロース誘導体などが挙げられる。さらに、高分子分散剤の好ましい例として合成高分子が挙げられ、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸/アクリロニトリル共重合体、アクリル酸カリウム/アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸/アクリル酸エステル共重合体などのアクリル酸系樹脂、スチレン/アクリル酸共重合体、スチレン/メタクリル酸共重合体、スチレン/メタクリル酸/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/α−メチルスチレン/アクリル酸共重合体、スチレン/α−メチルスチレン/アクリル酸/アクリル酸エステル共重合体などのスチレン−アクリル樹脂、スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン/アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン/マレイン酸共重合体、および酢酸ビニル/エチレン共重合体、酢酸ビニル/脂肪酸ビニル/エチレン共重合体、酢酸ビニル/マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、酢酸ビニル/アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体およびそれらの塩が挙げられる。これらの中で、特に疎水性基を持つモノマーと親水性基を持つモノマーとの共重合体、および疎水性基と親水性基を分子構造中に併せ持ったモノマーからなる重合体、例えばスチレン/アクリル酸共重合体、スチレン/メタクリル酸共重合体等が好ましい。
【0229】
本発明によるインク組成物は、さらに界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤としては、工程(d)で例示した界面活性剤を挙げることができる。これらは単独使用または二種以上を併用することができる。その他、必要に応じて、pH調整剤、防腐剤、防かび剤、酸化防止剤等を添加しても良い。
【0230】
また、本発明においては、本発明による水性インク用顔料以外の顔料および/または染料を適当量添加することにより淡色系のインクとすることもできる。
【0231】
本発明によるインク組成物は、上記の各成分を適当な方法により分散、混合することによって製造することができる。各インク成分を加えた溶液を調製し、充分に撹拌した後に、目詰まりの原因となる粗大粒子および異物を除去するために濾過を行って目的のインク組成物を得ることができる。例えば前記工程(d)で得られた水性ディスパージョンに必要に応じ添加剤等を適宜添加することに製造することができる。
【0232】
本発明の水性インク組成物の用途としては、例えばインクジェット印刷用、オフセット印刷用、グラビア印刷などが挙げられるが、特にインクジェットプリンタでの印刷に適している。
【0233】
3.画像、印刷物
本発明の水性インク組成物を用いて基材(被印刷体)に印刷することにより画像、印刷物が得られる。基材としては、例えば紙、繊維製品、プラスチック、ガラス、セラミックス、金属等が挙げられる。
【0234】
本発明の水性インク組成物は下地を良好に隠蔽することができる。さらに本発明の水性インク組成物が白色インクである場合は、白色度が高い画像、印刷物が得られる。また、本発明の水性インク組成物での印刷後、各種色インクを用いて印刷を行うことで色インクの良好な発色性を得ることができる。
また、二酸化ジルコニウムで表面を被覆した二酸化チタンを用いて得られた水性顔料を含む水性インク組成物から得られる画像、印刷物は耐光性が良好である。
【実施例】
【0235】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0236】
<非水溶性有機ポリマー粒子−1>
<ポリオレフィン系末端分岐型共重合の合成>
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)はGPCを用い、本文中に記載した方法で測定した。また、融点(Tm)はDSCを用い、測定して得られたピークトップ温度を採用した。なお、測定条件によりポリアルキレングリコール部分の融点も確認されるが、ここでは特に断りのない場合ポリオレフィン部分の融点のことを指す。H−NMRについては、測定サンプル管中で重合体を、ロック溶媒と溶媒を兼ねた重水素化−1,1,2,2−テトラクロロエタンに完全に溶解させた後、120℃において測定した。ケミカルシフトは、重水素化−1,1,2,2−テトラクロロエタンのピークを5.92ppmとして、他のピークのケミカルシフト値を決定した。分散液中の粒子の粒子径はマイクロトラックUPA(HONEYWELL社製)にて、体積50%平均粒子径を測定した。分散液中の粒子の形状観察は、試料を200倍から500倍に希釈し、リンタングステン酸によりネガティブ染色した後、透過型電子顕微鏡(TEM/日立製作所製H−7650)で100kVの条件にて行なった。
【0237】
(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)の合成)
以下の手順(例えば、特開2006−131870号公報の合成例2参照)に従って、末端エポキシ基含有エチレン重合体(E)を合成した。
【0238】
充分に窒素置換した内容積2000mlのステンレス製オートクレーブに、室温でヘプタン1000mlを装入し、150℃に昇温した。続いてオートクレーブ内をエチレンで30kg/cmG加圧し、温度を維持した。MMAO(東ソーファインケム社製)のヘキサン溶液(アルミニウム原子換算1.00mmol/ml)0.5ml(0.5mmol)を圧入し、次いで下記式の化合物のトルエン溶液(0.0002mmol/ml)0.5ml(0.0001mmol)を圧入し、重合を開始した。エチレンガス雰囲気下、150℃で30分間重合を行った後、少量のメタノールを圧入することにより重合を停止した。得られたポリマー溶液を、少量の塩酸を含む3リットルのメタノール中に加えてポリマーを析出させた。メタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、片末端二重結合含有エチレン系重合体(P)を得た。
【0239】
【化24】

【0240】
500mlセパラブルフラスコに上記片末端二重結合含有エチレン系重合体(P)100g(Mn850として,ビニル基108mmol)、トルエン300g、NaWO0.85g(2.6mmol)、CH(nC17NHSO0.60g(1.3mmol)、およびリン酸0.11g(1.3mmol)を仕込み、撹拌しながら30分間加熱還流し、重合物を完全に溶融させた。内温を90℃にした後、30%過酸化水素水37g(326mmol)を3時間かけて滴下した後、内温90〜92℃で3時間撹拌した。その後、90℃に保ったまま25%チオ硫酸ナトリウム水溶液34.4g(54.4mmol)を添加して30分撹拌し、過酸化物試験紙で反応系内の過酸化物が完全に分解されたことを確認した。次いで、内温90℃でジオキサン200gを加え、生成物を晶析させ、固体をろ取しジオキサンで洗浄した。得られた固体を室温下、50%メタノール水溶液中で撹拌、固体をろ取しメタノールで洗浄した。更に当該固体をメタノール400g中で撹拌して、ろ取しメタノールで洗浄した。室温、1〜2hPaの減圧下乾燥させることにより、末端エポキシ基含有エチレン重合体(E)の白色固体96.3gを得た(収率99%,ポリオレフィン転化率100%)。
【0241】
得られた末端エポキシ基含有エチレン重合体(E)は、Mw=2058、Mn=1118、Mw/Mn=1.84(GPC)であった。(末端エポキシ基含有率:90mol%)
1H-NMR : δ(C2D2Cl4) 0.88(t, 3H, J = 6.92 Hz), 1.18 - 1.66 (m), 2.38 (dd,1H, J = 2.64, 5.28 Hz), 2.66 (dd, 1H, J = 4.29, 5.28 Hz), 2.80-2.87 (m, 1H)
融点(Tm) 121℃
Mw=2058、Mn=1118、Mw/Mn=1.84(GPC)
【0242】
1000mLフラスコに、末端エポキシ基含有エチレン重合体(E) 84重量部、ジエタノールアミン39.4重量部、トルエン150重量部 を仕込み、150℃にて4時間撹拌した。その後、冷却しながらアセトンを加え、反応生成物を析出させ、固体を濾取した。得られた固体をアセトン水溶液で1回、更にアセトンで3回撹拌洗浄した後、固体を濾取した。その後、室温にて減圧下乾燥させることにより、重合体(I)(Mn=1223、一般式(9)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mn=1075)、R=R=水素原子、Y、Yの一方が水酸基、他方がビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ基)を得た。
1H-NMR : δ(C2D2Cl4) 0.88 (t, 3H, J = 6.6 Hz), 0.95-1.92 (m), 2.38-2.85 (m, 6H), 3.54-3.71 (m, 5H)
融点 (Tm) 121℃
【0243】
窒素導入管、温度計、冷却管、撹拌装置を備えた500mLフラスコに、重合体(I)20.0重量部、トルエン100重量部を仕込み、撹拌しながら125℃のオイルバスで加熱し、固体を完全に溶解した。90℃まで冷却後、予め5.0重量部の水に溶解した0.323重量部の85%KOHをフラスコに加え、還流条件で2時間混合した。その後、フラスコ内温度を120℃まで徐々に上げながら、水及びトルエンを留去した。さらに、フラスコ内にわずかな窒素を供給しながらフラスコ内を減圧とし、さらに内温を150℃まで昇温後、4時間保ち、フラスコ内の水及びトルエンをさらに留去した。室温まで冷却後、フラスコ内で凝固した固体を砕き、取り出した。
【0244】
加熱装置、撹拌装置、温度計、圧力計、安全弁を備えたステンレス製1.5L加圧反応器に、得られた固体のうち18.0重量部及び脱水トルエン200重量部を仕込み、気相を窒素に置換した後、撹拌しながら130℃まで昇温した。30分後、エチレンオキシド9.0重量部を加え、さらに5時間、130℃で保った後、室温まで冷却し、反応物を得た。得られた反応物より溶媒を乾燥して除き、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)(Mn=1835、一般式(1)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mn=1075)、R=R=水素原子、X、Xの一方が一般式(6)で示される基(X11=ポリエチレングリコール基)、他方が一般式(5)で示される基(Q=Q=エチレン基、X=X10=ポリエチレングリコール基))を得た。
1H-NMR : δ(C2D2Cl4) 0.88(3H, t, J= 6.8 Hz), 1.06 - 1.50 (m), 2.80 - 3.20 (m), 3.33 - 3.72 (m)
融点(Tm) −16℃(ポリエチレングリコール)、116℃
【0245】
<ポリオレフィン系末端分岐型共重合体水性分散体の調製例>
(10重量%ポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)水性分散液の調製)
前記合成例で得られたポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)10重量部と蒸留水40重量部を100mlのオートクレーブに装入し、140℃、800rpmの速度で30分間加熱撹拌の後、撹拌を保ったまま室温まで冷却した。得られた分散系の体積50%平均粒子径は18nmであった。(体積10%平均粒子径14nm、体積90%平均粒子径22nm)得られた分散系の透過型電子顕微鏡観察結果から測定した粒子径は15〜30nmであった。更に、この(T)水性分散液(固形分20重量%)75重量部に対して蒸留水75重量部を加えることで10重量%ポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)水性分散液を得た。
【0246】
<非水溶性有機ポリマー粒子−2>
ポリメタアクリル酸エステル系共重合体の水性分散体(アクリルエマルジョン)として、三井化学社製PAN−6(動的光散乱式ナノトラック粒度分析計「マイクロトラックUPA-EX150(日機装株式会社製)」にて測定した体積50%平均粒子径:90−130nm、濃度:45.89重量%)を用いた。
【0247】
<金属酸化物ナノ粒子分散液の調製>
<二酸化チタンナノ粒子の合成と分散液の調製>
オキシ塩化チタン・塩酸水溶液(Fluka試薬 塩酸:38〜42%、Ti:約15%)を7.5ml(Ti:0.036mol相当)をイオン交換水1000mlに溶解させた。70℃の温度にて攪拌した。5時間後、青みを帯びた二酸化チタンコロイド水溶液を得た。
【0248】
イオン透析によりコロイド水溶液のpHを2.5付近まで調節し、固形分濃度10重量%の二酸化チタンの水分散体を得た。得られた水分散液の一部をメッシュに滴下し、電子顕微鏡観察試料を作成し、観察したところ、平均粒子径が3nmの二酸化チタン結晶であることが確かめられた。
【0249】
<二酸化ジルコニウム被覆二酸化チタン超微粒子の合成と水分散体の調製>
二酸化チタンナノ粒子の合成と同様に青みを帯びた二酸化チタンコロイド溶液を得た。
そのコロイド溶液にオキシ塩化ジルコニウム8水和物を6.4重量部(Zr:0.02mol相当)添加し、反応液の温度を70℃に保ち、2時間攪拌を行った。その結果、青白色を帯びたスラリー状のゾル液が得られた。イオン透析によりコロイド水溶液のpHを2.5付近まで調節し、固形分濃度10重量%の二酸化ジルコニウム被覆二酸化チタンの水分散体を得た。得られた水分散液の一部をメッシュに滴下し、電子顕微鏡観察試料を作成し、観察したところ、平均粒子径が3nmの二酸化チタン結晶であることが確かめられた。平均粒子径が3nmの二酸化チタン結晶格子間隔を示す二酸化チタン結晶の周辺に無定形被覆層が認められた。また、この無定形層被覆二酸化チタンはモル比1:1のTiとZrからなっていることがわかった。
【0250】
さらにX線回折スペクトル測定より、二酸化チタンにアモルファス二酸化ジルコニウムが重畳していることが確認できた。
【0251】
(実施例1)
(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/TTIP脱水縮合物溶液の調製)
チタンテトライソプロポキシド(TTIP)2.0重量部に触媒の塩酸水溶液(37%)1.32重量部を滴下した後、室温で10分間攪拌し、TTIPの脱水縮合物を得た。
得られたTTIPの脱水縮合物に、さらにポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)の水性分散体(固形分10重量%)を2.4重量部滴下し、室温で攪拌し、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/TTIP脱水縮合物溶液を調製した。(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/TiO2=30/70 重量比)
【0252】
(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/二酸化チタン複合粒子の形成)
この組成物をスプレードライヤー装置に流し込み、ノズル出口温度190℃で加圧(0.2MPa)し、噴霧することで、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/二酸化チタンの複合微粒子を得た。
【0253】
(二酸化チタン多孔質粒子の形成)
得られたポリオレフィン系末端分岐型共重合体/二酸化チタン複合粒子を、電気炉を用いて、室温から600℃まで毎分5℃の速度で昇温し、さらに600℃で2時間焼成することによってポリオレフィン系末端分岐型共重合体を除去して二酸化チタン多孔質粒子を得た。
【0254】
(水系ディスパーションの調製)
ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/二酸化チタンの複合微粒子および二酸化チタン多孔質粒子を、湿式型ビーズミルを用いて水中にて粉砕・分散処理を行った。動的光散乱式ナノトラック粒度分析計「マイクロトラックUPA-EX150(日機装株式会社製)」にて粒度を確認しながら粉砕を行い、粒度分布が0.2〜1μmになった時点でディスパーションを回収した。
【0255】
(実施例2)
(ポリメタアクリル酸エステル共重合体/TTIP脱水縮合物溶液の調製)
チタンテトライソプロポキシド(TTIP)2.0重量部に触媒の塩酸水溶液(37%)1.32重量部を滴下した後、室温で10分間攪拌し、TTIPの脱水縮合物を得た。
得られたTTIPの脱水縮合物に、さらに、ポリメタアクリル酸エステル系共重合体(アクリルエマルション)PAN−6を0.52重量部(固形分:0.24重量部)、さらに水1.9重量部で希釈し、室温で攪拌し、ポリメタアクリル酸エステル共重合体/TTIP脱水縮合物溶液を調製した。(ポリメタアクリル酸エステル共重合体/TiO2=30/70 重量比)
【0256】
(ポリメタアクリル酸エステル共重合体/二酸化チタン複合粒子の形成)
この組成物をスプレードライヤー装置に流し込み、ノズル出口温度190℃で加圧(0.2MPa)し、噴霧することで、ポリメタアクリル酸エステル共重合体/二酸化チタンの複合粒子を得た。
【0257】
(二酸化チタン多孔質粒子の形成)
得られたポリメタアクリル酸エステル共重合体/二酸化チタン複合粒子を、電気炉を用いて、室温から600℃まで毎分5℃の速度で昇温し、さらに600℃で2時間焼成することによってポリメタアクリル酸エステル共重合体を除去して二酸化チタン多孔質粒子を得た。
【0258】
(水系ディスパーションの調製)
ポリメタアクリル酸エステル共重合体/二酸化チタンの複合微粒子および二酸化チタン多孔質粒子を、湿式型ビーズミルを用いて水中にて粉砕・分散処理を行った。粒度を確認しながら粉砕を行い、粒度分布が0.2〜1μmになった時点でディスパーションを回収した。
【0259】
(実施例3)
(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/二酸化チタンナノ粒子混合液の調製)
前述の二酸化チタンナノ粒子分散液(固形分濃度10重量%)を50重量部(固形分5.0重量部)に攪拌しながら、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)の水性分散体(固形分10重量%)を27重量部(固形分:2.7重量部)、さらに水77.0重量部で希釈し、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/TiO2ナノ粒子混合液を調製した。
【0260】
(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/TiO2=35/65 重量比)
(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/二酸化チタン複合粒子の形成)
この組成物をスプレードライヤー装置に流し込み、ノズル出口温度190℃で加圧(0.2MPa)し、噴霧することで、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/二酸化チタンの複合粒子を得た。
【0261】
(二酸化チタン多孔質粒子の形成)
得られたポリオレフィン系末端分岐型共重合体/二酸化チタン複合粒子を、電気炉を用いて、室温から600℃まで毎分5℃の速度で昇温し、さらに600℃で2時間焼成することによってポリオレフィン系末端分岐型共重合体を除去して二酸化チタン多孔質粒子を得た。
【0262】
(水系ディスパーションの調製)
ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/二酸化チタンの複合微粒子および二酸化チタン多孔質粒子を、湿式型ビーズミルを用いて水中にて粉砕・分散処理を行った。粒度を確認しながら粉砕を行い、粒度分布が0.2〜1μmになった時点でディスパーションを回収した。
【0263】
(実施例4)
(ポリメタアクリル酸エステル共重合体/二酸化チタンナノ粒子混合液の調製)
前述の二酸化チタンナノ粒子分散液(固形分濃度10重量%)を50重量部(固形分5.0重量部)に攪拌しながら、ポリメタアクリル酸エステル系共重合体(アクリルエマルション)PAN−6を5.87重量部(固形分:2.7重量部)、さらに水96.3重量部で希釈し、ポリメタアクリル酸エステル系共重合体/TiO2ナノ粒子混合液を調製した。(ポリメタアクリル酸エステル系共重合体/TiO2=35/65 重量比)
【0264】
(ポリメタアクリル酸エステル共重合体/二酸化チタン複合粒子の形成)
この組成物をスプレードライヤー装置に流し込み、ノズル出口温度190℃で加圧(0.2MPa)し、噴霧することで、ポリメタアクリル酸エステル共重合体/二酸化チタンの複合粒子を得た。
【0265】
(二酸化チタン多孔質粒子の形成)
得られたポリメタアクリル酸エステル共重合体/二酸化チタン複合粒子を、電気炉を用いて、室温から600℃まで毎分5℃の速度で昇温し、さらに600℃で2時間焼成することによってポリメタアクリル酸エステル共重合体を除去して二酸化チタン多孔質粒子を得た。
【0266】
(水系ディスパーションの調製)
ポリメタアクリル酸エステル共重合体/二酸化チタンの複合微粒子および二酸化チタン多孔質粒子を、湿式型ビーズミルを用いて水中にて粉砕・分散処理を行った。粒度を確認しながら粉砕を行い、粒度分布が0.2〜1μmになった時点でディスパーションを回収した。
【0267】
(実施例5)
(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/二酸化ジルコニウム被覆二酸化チタンナノ粒子混合液の調製)
前述の二酸化ジルコニウム被覆二酸化チタンナノ粒子分散液(固形分濃度10重量%)を67.2重量部(固形分6.72重量部)に攪拌しながら、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)の水性分散体(固形分10重量%)を32.8重量部(固形分:3.28重量部)、さらに水77.0重量部で希釈し、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/TiO2ナノ粒子混合液を調製した。(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/TiO2=32.8/67.2 重量比)
【0268】
(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/二酸化チタン系複合粒子の形成)
この組成物をスプレードライヤー装置に流し込み、ノズル出口温度190℃で加圧(0.2MPa)し、噴霧することで、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/二酸化チタン系の複合粒子を得た。
【0269】
(二酸化チタン系多孔質粒子の形成)
得られたポリオレフィン系末端分岐型共重合体/二酸化チタン系複合粒子を、電気炉を用いて、室温から600℃まで毎分5℃の速度で昇温し、さらに600℃で2時間焼成すことによってポリオレフィン系末端分岐型共重合体を除去して二酸化チタン系多孔質粒子を得た。
【0270】
(水系ディスパーションの調製)
ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/二酸化チタン系複合微粒子および二酸化チタン系多孔質粒子を、湿式型ビーズミルを用いて水中にて粉砕・分散処理を行った。粒度を確認しながら粉砕を行い、粒度分布が0.2〜1μmになった時点でディスパーションを回収した。
【0271】
(実施例6)
(ポリメタアクリル酸エステル共重合体/二酸化ジルコニウム被覆二酸化チタンナノ粒子混合液の調製)
前述の二酸化ジルコニウム被覆二酸化チタンナノ粒子分散液(固形分濃度10重量%)を67.2重量部(固形分6.72重量部)に攪拌しながら、ポリメタアクリル酸エステル共重合体の水性分散体(固形分10重量%)を32.8重量部(固形分:3.28重量部)、さらに水77.0重量部で希釈し、ポリメタアクリル酸エステル共重合体/二酸化ジルコニウム被覆二酸化チタンナノ粒子混合液を調製した。(ポリメタアクリル酸エステル共重合体/TiO2系=32.8/67.2 重量比)
【0272】
(ポリメタアクリル酸エステル共重合体/二酸化チタン系複合粒子の形成)
この組成物をスプレードライヤー装置に流し込み、ノズル出口温度190℃で加圧(0.2MPa)し、噴霧することで、ポリメタアクリル酸エステル共重合体/二酸化チタン系の複合粒子を得た。
【0273】
(二酸化チタン系多孔質粒子の形成)
得られたポリメタアクリル酸エステル共重合体/二酸化チタン系複合粒子を、電気炉を用いて、室温から600℃まで毎分5℃の速度で昇温し、さらに600℃で2時間焼成することによってポリメタアクリル酸エステル共重合体を除去して二酸化チタン系多孔質粒子を得た。
【0274】
(水系ディスパーションの調製)
ポリメタアクリル酸エステル共重合体/二酸化チタン系複合微粒子および二酸化チタン系多孔質粒子を、湿式型ビーズミルを用いて水中にて粉砕・分散処理を行った。粒度を確認しながら粉砕を行い、粒度分布が0.2〜1μmになった時点でディスパーションを回収した。
【0275】
(実施例7)
(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/YSZナノ粒子混合液の調製)
YSZナノ粒子分散液(日産化学社製超微粒子ジルコニアゾル#1、粒子径5nm 固形分濃度10重量%)を28.4重量部(固形分2.84重量部)に攪拌しながら、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)の水性分散体(固形分10重量%)を11.6重量部(固形分:1.16重量部)、さらに水40.0重量部で希釈し、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/YSZナノ粒子混合液を調製した。(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/YSZ=29/71 重量比)
【0276】
(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/YSZ複合粒子の形成)
この組成物をスプレードライヤー装置に流し込み、ノズル出口温度190℃で加圧(0.2MPa)し、噴霧することで、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/YSZの複合微粒子を得た。
【0277】
(YSZ多孔質粒子の形成)
得られたポリオレフィン系末端分岐型共重合体/YSZ複合粒子を、電気炉を用いて、室温から600℃まで毎分5℃の速度で昇温し、さらに600℃で2時間焼成することによってポリオレフィン系末端分岐型共重合体を除去してYSZ多孔質粒子を得た。
【0278】
(水系ディスパーションの調製)
ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/YSZ複合微粒子およびYSZ多孔質粒子を、湿式型ビーズミルを用いて水中にて粉砕・分散処理を行った。粒度を確認しながら粉砕を行い、粒度分布が0.2〜1μmになった時点でディスパーションを回収した。
【0279】
(実施例8)
(ポリメタアクリル酸エステル共重合体/Ba(CHCOO)/TTIP脱水縮合物溶液の調製)
酢酸20.8重量部に酢酸バリウム8.09重量部を加え、60℃で攪拌し溶解させた。
さらに、チタンテトライソプロポキシド(TTIP)9.1重量部を加え室温で攪拌し、ポリメタアクリル酸エステル系共重合体(アクリルエマルション)PAN−6を10.24g(固形分:4.7g)、さらに水83.76重量部で希釈し、ポリメタアクリル酸エステル系共重合体/Ba(CHCOO)/TTIP脱水縮合物溶液を調製した。(ポリメタアクリル酸エステル系共重合体/BaTiO=30/70 重量比)
【0280】
(ポリメタアクリル酸エステル共重合体/チタン酸バリウム複合粒子の形成)
この組成物をスプレードライヤー装置に流し込み、ノズル出口温度190℃で加圧(0.2MPa)し、噴霧することで、ポリメタアクリル酸エステル共重合体/チタン酸バリウムの複合微粒子を得た。
【0281】
(チタン酸バリウム多孔質粒子の形成)
得られたポリメタアクリル酸エステル共重合体/チタン酸バリウム複合粒子を、電気炉を用いて、室温から600℃まで毎分5℃の速度で昇温し、さらに600℃で2時間焼成することによってポリメタアクリル酸エステル共重合体を除去してチタン酸バリウム多孔質粒子を得た。
【0282】
(水系ディスパーションの調製)
ポリメタアクリル酸エステル共重合体/チタン酸バリウムの複合微粒子およびチタン酸バリウム多孔質粒子を、湿式型ビーズミルを用いて水中にて粉砕・分散処理を行った。粒度を確認しながら粉砕を行い、粒度分布が0.2〜1μmになった時点でディスパーションを回収した。
【0283】
(比較例1)
(TTIP脱水縮合物溶液の調製)
チタンテトライソプロポキシド(TTIP)2.0重量部に触媒の塩酸水溶液(37%)1.32重量部を滴下した後、室温で10分間攪拌し、TTIPの脱水縮合物を得た。
【0284】
(二酸化チタン粒子の形成)
この脱水縮合物をスプレードライヤー装置に流し込み、ノズル出口温度190℃で加圧(0.2MPa)し、噴霧することで、二酸化チタン粒子を得た。
【0285】
(二酸化チタン粒子の形成)
得られた二酸化チタン粒子を、電気炉を用いて、室温から600℃まで毎分5℃の速度で昇温し焼成処理した。
【0286】
(水系ディスパーションの調製)
焼成処理前後の二酸化チタン粒子を、湿式型ビーズミルを用いて水中にて粉砕・分散処理を行った。粒度を確認しながら粉砕を行い、粒度分布が0.2〜1μmになった時点でディスパーションを回収した。
【0287】
(比較例2)
(二酸化チタン粒子の形成)
前述の二酸化チタンナノ粒子分散液(固形分濃度10重量%)をスプレードライヤー装置に流し込み、ノズル出口温度190℃で加圧(0.2MPa)し、噴霧することで二酸化チタン粒子を得た。さらに電気炉を用いて、室温から600℃まで毎分5℃の速度で昇温し焼成処理した。
【0288】
(水系ディスパーションの調製)
焼成処理前後の二酸化チタン粒子を、湿式型ビーズミルを用いて水中にて粉砕・分散処理を行った。粒度を確認しながら粉砕を行い、粒度分布が0.2〜1μmになった時点でディスパーションを回収した。
【0289】
(比較例3)
(YSZ粒子の形成)
YSZナノ粒子分散液(日産化学社製超微粒子ジルコニアゾル#1、粒子径5nm 固形分濃度10重量%)をスプレードライヤー装置に流し込み、ノズル出口温度190℃で加圧(0.2MPa)し、噴霧することでYSZ粒子を得た。さらに電気炉を用いて、室温から600℃まで毎分5℃の速度で昇温し焼成処理した。
【0290】
(水系ディスパーションの調製)
焼成処理前後のYSZ粒子を、湿式型ビーズミルを用いて水中にて粉砕・分散処理を行った。粒度を確認しながら粉砕を行い、粒度分布が0.2〜1μmになった時点でディスパーションを回収した。
【0291】
(比較例4)
(Ba(CHCOO)/TTIP脱水縮合物溶液の調製)
酢酸20.8重量部に酢酸バリウム8.09重量部を加え、60℃で攪拌し溶解させた。
【0292】
さらに、チタンテトライソプロポキシド(TTIP)9.1重量部を加え室温で攪拌し、さらに水83.76重量部で希釈し、Ba(CHCOO)/TTIP脱水縮合物溶液を調製した。この脱水縮合物をスプレードライヤー装置に流し込み、ノズル出口温度190℃で加圧(0.2MPa)し、噴霧することで、チタン酸バリウム粒子を得た。
【0293】
(チタン酸バリウム粒子の形成)
得られたチタン酸バリウム粒子を、電気炉を用いて、室温から600℃まで毎分5℃の速度で昇温し焼成処理した。
【0294】
(水系ディスパーションの調製)
焼成処理前後のチタン酸バリウム粒子を、湿式型ビーズミルを用いて水中にて粉砕・分散処理を行った。粒度を確認しながら粉砕を行い、粒度分布が0.2〜1μmになった時点でディスパーションを回収した。
【0295】
(比較例5)
二酸化チタンの粉末(石原産業製TTO−51(A))を、湿式型ビーズミルを用いて 水中にて粉砕・分散処理を行った。粒度を確認しながら粉砕を行い、粒度分布が0.2μmになった時点でディスパーションを回収した。
以上のように実施例 比較例で得られた水系ディスパーションについて、以下の評価を行った。
【0296】
(1.比表面積、細孔容積、細孔径分布)
実施例1〜8の多孔質粒子水系ディスパーション、比較例1〜5の水系ディスパーションを乾燥処理して粉体を回収し、オートソーブ3(カンタクローム社製)を使用し、液体窒素温度下(77K)における窒素ガス吸着法にて、比表面積(BET法)、細孔容積、及び細孔分布(BJH 法)の測定を行った。なお、信頼性のある細孔容積の値が得られない場合は「測定不可」とし、細孔分布が検出限界以下(<2nm)であり細孔分布の測定上、明確な値が得られない場合は「特定できない」とした。結果を表1、表2、表3に載せた。
【0297】
(2.結晶構造)
水系ディスパーションを乾燥処理して粉体を回収し、粉末X線解析装置(Rigaku MultiFrex、CuKα線:1.5418Å)のより測定し、結晶構造を調べた。結果を表1、表2、表3に載せた。
【0298】
(3.分散性)
水系ディスパーションを静置し、粒子の沈降状態を評価した。
評価基準は以下のとおりである。結果を表1、表2、表3に載せた。
◎:1週間放置後も沈降なし
○:徐々に沈降、振ると直ぐに分散
×:直ちに沈降し、水層と沈殿物が完全に分離
【0299】
(4.水系組成物の評価)
水系ディスパーションの乾燥重量90重量部に対して、定着用樹脂としてアクリルエマルジョン(アルマテックス)の乾燥重量が10重量部になるように添加した水系組成物を、ワイヤーバーを用いてPETフィルム表面に3μm厚、15μm厚になるようにコートし、以下の評価を行った。結果を表1、表2、表3に載せた。
【0300】
(4.1.水系組成物の性状・塗布状態)
評価基準は以下の通りである。
◎:組成物はゲル化せず、コート膜に平滑性に問題なし
△:組成物はゲル化しないが、コート膜が平滑ではない
×:沈降物があり
【0301】
(4.2.白色度)
水系ディスパーションの乾燥重量90重量部に対して、定着用樹脂としてアクリルエマルジョン(アルマテックス)の乾燥重量が10重量部になるように添加した水系組成物を、ワイヤーバーを用いてPETフィルム表面に3μm厚になるようにコートし、その白色度を測定した。測定は標準黒色板の上に乗せて、分光色彩・白度計( PF-10, 日本電色工業)を用いて色を測定した。このとき得られた明度(L*)を白色度の指標とした。白色度の評価基準は、以下のとおりである。結果を表1、表2、表3に載せた。
【0302】
<白色度の評価基準>
AA:L*が75以上
A :L*が72以上75未満
B :L*が68以上72未満
C :L*が65以上68未満
D :L*が65未満
− :測定可能なコート膜が作成できない。
【0303】
(5.耐光性)
実施例3、実施例5の多孔質粒子水系ディスパーションを用い、評価4.2と同様の方法で作成したPETフィルム表面に作成したコート膜についてソーラーシュミレーターを用いて照射し、膜面の変化を調べた。
実施例3は120時間照射まで膜面が脆化しなかった。実施例5は500時間照射しても膜面に黄色変や脆化がなかった。
【0304】
(6.細孔構造)
収束イオンビーム(FIB)加工によって粒子の断面切片を切り出し、その断面の形状を、透過型電子顕微鏡(TEM/日立製作所製H−7650)を用い200kVの条件にて観察した。その結果実施例1〜8は細孔が規則構造(キュービック相構造)を呈し配列していた。
【0305】
【表1】

【0306】
【表2】

【0307】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)波長589.3nm(Na−D線)における屈折率が1.8以上である金属酸化物を主体とするマトリックス中に50%体積粒径が10〜300nmであり水系媒体に分散可能な有機ポリマー粒子が分散されている有機無機複合体、
及び/又は
(B)波長589.3nm(Na−D線)における屈折率が1.8以上である金属酸化物を主体とするマトリックス中に平均細孔径が10〜300nmの細孔が分散されている金属酸化物多孔体
からなる水性インク用顔料。
【請求項2】
前記(A)有機無機複合体及び/又は(B)金属酸化物多孔体の粒径が0.1μm〜5μmである請求項1に記載の水性インク用顔料。
【請求項3】
金属酸化物が二酸化チタンである請求項1又は2に記載の水性インク用顔料。
【請求項4】
金属酸化物が表面を二酸化ジルコニウムで被覆された二酸化チタンナノ粒子から形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水性インク用顔料。
【請求項5】
前記(B)金属酸化物多孔体は前記(A)有機無機複合体から有機ポリマー粒子を除去することにより得られたものである請求項1〜4のいずれかに記載の水性インク用顔料。
【請求項6】
金属酸化物中に分散している有機ポリマー粒子及び/又は細孔がキュービック相構造である請求項1〜5のいずれかに記載の水性インク用顔料。
【請求項7】
有機ポリマー粒子が、ポリオレフィン系、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系、ポリスチレン系、ポリウレタン系、ポリアクリロニトリル系、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリ酢酸ビニル系及びポリブタジエン系から選ばれる少なくとも1種の非水溶性ポリマー粒子である請求項1〜6のいずれかに記載の水性インク用顔料。
【請求項8】
有機ポリマー粒子が、下記一般式(1)で表される数平均分子量が2.5×10以下の末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子である請求項1〜7のいずれかに記載の水性インク用顔料:
【化1】

(式中、Aはポリオレフィン鎖を表す。RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。XおよびXは、同一または相異なり、直鎖または分岐のポリアルキレングリコール基を有する基を表す。)。
【請求項9】
一般式(1)で表される末端分岐型共重合体において、XおよびXが、同一または相異なり、一般式(2)
【化2】

(式中、Eは酸素原子または硫黄原子を表す。Xはポリアルキレングリコール基、または下記一般式(3)
【化3】

(式中、Rはm+1価の炭化水素基を表す。Gは同一または相異なり、−OX、−NX(X〜Xはポリアルキレングリコール基を表す。)で表される基を表す。mは、RとGとの結合数であり1〜10の整数を表す。)で表される基を表す。)
または、一般式(4)
【化4】

(式中、X,Xは同一または相異なり、ポリアルキレングリコール基または上記一般式(3)で表される基を表す。)であることを特徴とする請求項8に記載の水性インク用顔料。
【請求項10】
前記末端分岐型共重合体が下記一般式(1a)または一般式(1b)で表される請求項8又は9に記載の水性インク用顔料:
【化5】

(式中、RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。RおよびRは、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子であり、RおよびRは、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。l+mは2以上450以下の整数を表す。nは、20以上300以下の整数を表す。)。
【化6】

(式中、RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。RおよびRは、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子であり、RおよびRは、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子であり、R10およびR11は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。l+m+oは3以上450以下の整数を表す。nは、20以上300以下の整数を表す。)。
【請求項11】
有機ポリマー粒子が(メタ)アクリル酸エステル系重合体粒子である請求項1〜7のいずれかに記載の水性インク用顔料。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の水性インク用顔料を含有する水性インク組成物。
【請求項13】
インクジェット印刷用である請求項12に記載の水性インク組成物。
【請求項14】
請求項12又は13記載の水性インク組成物により記録された文字、絵、図柄等の画像。
【請求項15】
基材上に請求項12又は13の水性インク組成物を用いて印刷した印刷物。

【公開番号】特開2012−233148(P2012−233148A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242587(P2011−242587)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】