説明

水性インク組成物

【課題】 保湿性と分散性とを併せ持つ多鎖多親水基型化合物を含有してなる経時安定性と吐出安定性に優れた水性インク組成物の提供。
【解決手段】 水、顔料および分子内にアシル基と親水基とを2個以上づつ有する多鎖多親水基型化合物の1種以上を含有することを特徴とする水性インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多鎖多親水基型化合物を含有してなる経時安定性と吐出安定性に優れた水性インク組成物に関し、筆記具用、記録計用、プリンター用、塗料用等として好適に使用できる水性インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、筆記具用、プリンター用、塗料などの水性インク組成物の着色剤として染料の代わりに顔料が多く用いられてきている。こうした顔料は、水等の媒体に分散させた状態で使用されることが多いが、顔料を水中に分散させるために、界面活性剤や分散剤の添加をしたり顔料表面を修飾することが行われている。また、一般に水性インクは、インク中の水分が蒸発することにより、インクが増粘したり、顔料が析出したりしてしまい、その結果、吐出性が悪化してインクの詰まりやかすれが発生することが多々ある。そこでインク中の水分の蒸発を防ぎインクの詰まりやかすれを防止するために、顔料分散液中には必要に応じ、保湿剤等の添加が試みられている。
【0003】
例えば特開平11−43637号公報では、かすれ等の発生しない水性インクを提供する方法として、着色剤とトリメチルグリシンと水とを少なくとも含む水性インク組成物が開示されている。しかしながら、経時安定性、筆記時の安定性等まだ不十分である。
このように水性インク組成物の性能に対する要求はますます厳しいものになっており、更に高性能なものが要求され、例えば、保湿性と分散性を併せ持つような多機能な原料への要求が高まっている。またインキとしての製品の特性上、印字された後に人体との接触も多いため、人体に対する安全性も高い分散剤による水性インク組成物の開発が熱望されてきた。
【特許文献1】特開平11−43637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、保湿性とともに分散安定性を有し、さらには安全性の高い分散剤を用いてなる安定性に優れた水性インク組成物の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、保湿性と分散性を併せ持つ特定の化合物、即ち、分子内に長鎖疎水基と親水基とを2個以上づつ有する化合物(多鎖多親水基型化合物)を用いることで、顔料を水中に安定に分散でき、かつ吐出時における目詰まり等の問題発生もなく吐出安定性にも優れる水性インク組成物となることを突き止めた。
即ち本発明は、下記の通りである。
1.顔料、水および分子内にアシル基と親水基とを2個以上ずつ有する多鎖多親水基型化合物の1種以上を含有することを特徴とする水性インク組成物。
2.多鎖多親水基型化合物の少なくとも1種が、分子内にアミノ酸残基を有するものであることを特徴とする1.に記載の水性インク組成物。
3.多鎖多親水基型化合物の少なくとも1種が、一般式(1)に示す化合物であることを特徴とする1.〜2.のいずれかに記載の水性インク組成物。
【0006】
【化1】

【0007】
(一般式(1)において、Xはm個の官能基、およびそれ以外の置換基を有していてもよい分子量100万以下の直鎖または分枝鎖または環状鎖または芳香族炭化水素鎖であるスペーサーを示す。Xに結合しているn(m≧n)個のQは、一般式(2)で表される置換基であり、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。一般式(2)において、ZはXの有する官能基に由来する結合部であり、RCOは炭素原子数2〜20の飽和または不飽和の脂肪酸から誘導される長鎖アシル基を示し、Rは水素であるか、またはヒドロキシル基またはカルボキシル基が置換していてもよい炭素原子数1〜3の低級アルキル基を示し、Yはカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基またはそれらの塩の内のいずれかを示す。j、kはそれぞれ独立に0,1,2のいずれかであり、かつj、kは同時に0ではない。nは2〜20の整数を示す。また、mはm≧nの整数を示す。)
【0008】
【化2】

【0009】
4.さらに、保湿剤および/またはポリヒドロキシル化合物を含有することを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の水性インク組成物。
5.前記1.〜4.のいずれかに記載の水性インク組成物によって記録されたことを特徴とする記録物。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、保湿性と分散安定性とに優れ、且つ安全性の高い多鎖多親水基型化合物を含有する安定性に優れた水性インク組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について、特にその好ましい形態を中心に、具体的に説明する。
本発明でいう水性インク組成物は、水と顔料と分子内に長鎖疎水基と親水基とを2個以上づつ有する多鎖多親水基型化合物の1種または2種以上とからなる組成物である。
本発明の水性インク組成物において、多鎖多親水基型化合物としては、長鎖疎水基としてはそれぞれ独立に、炭素数8〜20個の飽和または不飽和の直鎖、分枝鎖、環状鎖からなる疎水基を有し、この構造であればよく、これまで公知になっている化合物でよい。また親水基としてはそれぞれ独立に、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸残基、リン酸残基またはそれらの塩等、あるいはオキシアルキレン基、ポリエチレングリコール基等、またはアミノ基、4級アンモニウム基、ピリジニウム基、スルホニウム基またはそれらの塩等を有するものである。
【0012】
例えば、多鎖多親水基型化合物の長鎖疎水基としては、例えば、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−ノナデシル、n−エイコシル等の各残基とこれらの分枝鎖異性体、ならびにこれらに対応した、1カ所、2カ所または3カ所に不飽和部分を有する不飽和残基等が挙げられる。
また、多鎖多親水基型化合物の長鎖疎水基としては、炭素原子数8〜20の飽和または不飽和の脂肪酸から誘導される長鎖アシル基であり、例えばカプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸のような直鎖脂肪酸;
【0013】
2−ブチル−5−メチルペンタン酸、2−イソブチル−5−メチルペンタン酸、ジメチルオクタン酸、ジメチルノナン酸、2−ブチル−5−メチルヘキサン酸、メチルウンデカン酸、ジメチルデカン酸、2−エチル−3−メチルノナン酸、2,2−ジメチル−4−エチルオクタン酸、メチルドコサン酸、2−プロピル−3−メチルノナン酸、メチルトリデカン酸、ジメチルドデカン酸、2−ブチル−3−メチルノナン酸、メチルテトラデカン酸、エチルトリデカン酸、プロピルドデカン酸、ブチルウンデカン酸、ペンチルデカン酸、ヘキシルノナン酸、2−(3−メチルブチル)−3−メチルノナン酸、2−(2−メチルブチル)−3−メチルノナン酸、ブチルエチルノナン酸、メチルペンタデカン酸、エチルテトラデカン酸、プロピルトリデカン酸、ブチルドデカン酸、ペンチルウンデカン酸、ヘキシルデカン酸、ヘプチルノナン酸、ジメチルテトラデカン酸、ブチルペンチルヘプタン酸、トリメチルトリデカン酸、メチルヘキサデカン酸、エチルペンタデカン酸、プロピルテトラデカン酸、ブチルトリデカン酸、ペンチルドデカン酸、ヘキシルウンデカン酸、ヘプチルデカン酸、メチルヘプチルノナン酸、ジペンチルヘプタン酸、メチルヘプタデカン酸、エチルヘキサデカン酸、エチルヘキサデカン酸、プロピルペンタデカン酸、ブチルテトラデカン酸、ペンチルトリデカン酸、ヘキシルドデカン酸、ヘプチルウンデカン酸、オクチルデカン酸、ジメチルヘキサデカン酸、メチルオクチルノナン酸、メチルオクタデカン酸、エチルヘプタデカン酸、ジメチルヘプタデカン酸、メチルオクチルデカン酸、メチルノナデカン酸、メチルノナデカン酸、ジメチルオクタデカン酸、ブチルヘプチルノナン酸のような分岐脂肪酸;
【0014】
オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、カプロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、トウハク酸、ラウロレイン酸、トリデセン酸、ツズ酸、ミリストレイン酸、ペンタデセン酸、ヘキセデセン酸、パルミトレイン酸、ヘプタデセン酸、オクタデセン酸、オレイン酸、ノナデセン酸、ゴンドイン酸のような直鎖モノエン酸;メチルヘプテン酸、メチルノネン酸、メチルウンデセン酸、ジメチルデセン酸、メチルドデセン酸、メチルトリデセン酸、ジメチルドデセン酸、ジメチルトリデセン酸、メチルオクタデセン酸、ジメチルヘプタデセン酸、エチルオクタデセン酸のような分岐モノエン酸;リノール酸、リノエライジン酸、エレオステアリン酸、リノレン酸、リノレンエライジン酸、プソイドエレオステアリン酸、パリナリン酸、アラキドン酸のようなジまたはトリエン酸;
【0015】
オクチン酸、ノニン酸、デシン酸、ウンデシン酸、ドデシン酸、トリデシン酸、テトラデシン酸、ペンタデシン酸、ヘプタデシン酸、オクタデシン酸、ノナデシン酸、ジメチルオクタデシン酸のようなアセチレン酸;メチレンオクタデセン酸、メチレンオクタデカン酸、アレプロール酸、アレプレスチン酸、アレプリル酸、アレプリン酸、ヒドノカルプン酸、ショールムーグリン酸、ゴルリン酸、α−シクロペンチル酸、α−シクロヘキシル酸、α−シクロペンチルエチル酸のような環状酸から誘導されるアシル基等があげられる。
【0016】
また、天然油脂から得られる脂肪酸由来のアシル基でも良く、上記の炭素原子数8〜20の飽和または不飽和脂肪酸を80%以上含む混合脂肪酸由来のアシル基であれば良い。例えば、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、ツバキ油脂肪酸、菜種油脂肪酸、パーム核油脂肪酸等から誘導されるアシル基等が挙げられる。
本発明の水性インク組成物において、多鎖多親水基型化合物の例を挙げると、構造的には分子内に少なくとも1個以上の疎水基と親水基とを有する化合物を適当なスペーサーで連結した構造のものであり、この構造であればよく、これまで公知になっている化合物でよい。スペーサーとしては、置換基を有していてもよい分子量100万以下の直鎖または分枝鎖または環状鎖または芳香族炭化水素鎖が好ましい。より好ましくは、炭素数1〜40の直鎖または分枝鎖または環状鎖または芳香族炭化水素鎖であるスペーサーがよい。
【0017】
本発明の水性インク組成物において、多鎖多親水基型化合物の親水基はそれぞれ独立に、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基またはそれらの塩であることが好ましい。ここで塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、塩基性アミノ酸塩等が挙げられ、具体的には、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、亜鉛等の金属、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の有機アミン、アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸等から任意に選ばれる1種または2種以上との塩である。これらの中でも、ナトリウム塩、カリウム塩、有機アミン塩、塩基性アミノ酸塩が特に好ましい。
【0018】
本発明の水性インク組成物において、多鎖多親水基型化合物の少なくとも1種が、分子内にアミノ酸残基を有する化合物であることが、生分解性の点、また安全性の点から好ましい。さらには、多鎖多親水基型化合物の少なくとも1種が一般式(1)で示される化合物であることが、さらに好ましい。
一般式(1)中、RCOで示される長鎖アシル基は独立して、すなわち、それぞれ異なっても同一でもよく、上記したように炭素原子数8〜20の飽和または不飽和の脂肪酸から誘導されるものであれば何でも良く、直鎖、分岐、環状を問わない。また、分子中のRCOは、同一であるのが反応条件等からみても好ましい。
【0019】
一般式(1)中、Rは水素であるか、またはヒドロキシル基またはカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基またはそれらの塩等が置換していてもよい炭素原子数1〜3の低級アルキル基を示し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシ(イソ)プロピル基、ジヒドロキシ(イソ)プロピル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、スルホエチル基等が挙げられる。
一般式(1)中、Xに付くn個の置換基(式(2))は独立して、すなわち、それぞれ異なっても同一でもよい。また、式(2)は、いわゆる酸性アミノ酸がN−アシル化されたものを示すものであり、それらは光学異性体例えばD−体、L−体、ラセミ体であるかは問わない。
【0020】
酸性アミノ酸は、分子中に存在するカルボキシル基とアミノ基の数がそれぞれ2個と1個のモノアミノジカルボン酸であり、アミノ基はN−メチル基またはN−エチル基でもかまわない。また光学異性体例えばD−体、L−体、ラセミ体であるかは問わない。酸性アミノ酸としては、例えばグルタミン酸、アスパラギン酸、ランチオニン、β−メチルランチオニン、シスタチオニン、ジエンコール酸、フェリニン、アミノマロン酸、β−オキシアスパラギン酸、α−アミノ−α−メチルコハク酸、β−オキシグルタミン酸、γ−オキシグルタミン酸、γ−メチルグルタミン酸、γ−メチレングルタミン酸、γ−メチル−γ−オキシグルタミン酸、α−アミノアジピン酸、α−アミノ−γ−オキシアジピン酸、α−アミノピメリン酸、α−アミノ−γ−オキシピメリン酸、β−アミノピメリン酸、α−アミノスベリン酸、α−アミノセバシン酸、パントテン酸等が挙げられる。
【0021】
Xに付くn個の置換基(式(2))は、酸性アミノ酸がL−酸性アミノ酸分子である場合が、生分解性に優れることから好ましい。それらの中でも、置換基は同一である方が好ましい。
一般式(1)中、Xに付くn個のZは、Xに置換したm個(m≧n、かつ、2〜20の整数)の官能基(ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基)に由来する結合部(−O−、−NR−、−S−)であり、それぞれ独立で、すなわち、同一でも異なっていてもよい。
ここで、Rは水素、または炭素原子数1〜10のアルキル基またはアルケニル基またはアリール基またはアルキルアリール基である。
【0022】
一般式(1)中、Xはヒドロキシル基、アミノ基、チオール基から選ばれる1種または2種以上からなるm個の官能基を有する分子量100万以下の直鎖または分枝鎖または環状鎖または芳香族炭化水素鎖であるスペーサーであり、Xは、前記ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基以外の置換基を有していてもよい。
一般式(1)中、Xは好ましくはヒドロキシル基、アミノ基、チオール基から選ばれる1種または2種以上の官能基をm個有する分子量100万以下のm価の化合物の残基であって、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基以外の置換基を有していてもよい化合物残基である。ここで、m価の上記化合物は、m個の官能基に由来する結合を作りうることを意味する。それらは光学異性体例えばD−体、L−体、ラセミ体であるかは問わない。
【0023】
このようなm価の化合物としては、例えば、セリン、トレオニン、システイン、シスチン、シスチンジスルホキシド、シスタチオニン、メチオニン、アルギニン、リジン、チロシン、ヒスチジン、トリプトファン、オキシプロリン等のアミノ酸類;アミノエタノール、アミノプロパノール、アミノブタノール、アミノペンタノール、アミノヘキサノール、アミノプロパンジオール、アミノエチルエタノールアミン、アミノエチルアミノエタノール、アミノクレゾール、アミノナフトール、アミノナフトールスルホン酸、アミノヒドロキシ安息香酸、アミノヒドロキシブタン酸、アミノフェノール、アミノフェネチルアルコール、グルコサミン等の分子内にアミノ基とヒドロキシル基を有する化合物類;メルカプトエタノール、メルカプトフェノール、メルカプトプロパンジオール、グルコチオース等の分子内にチオール基とヒドロキシル基を有する化合物類;アミノチオフェノール、アミノトリアゾールチオール等の分子内にチオール基とアミノ基を有する化合物類;が挙げられる。また、タンパク質やペプチド等、またはそれらを加水分解したもの等でも良い。
【0024】
Xはこのような化合物の残基の中でも、炭素数1〜40の場合が好ましい、さらに好ましくは、Xは炭素数1〜20である。特に好ましいのは炭素数1〜10である。さらには、Xが分子内にヒドロキシル基、アミノ基、チオール基以外の置換基として、少なくとも1個以上のそれぞれ独立なカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基またはそれらの塩等を含有する場合、一般式(1)で示される多鎖多親水基型化合物が弱酸性での溶解性に優れる点で好ましい。また、Xは天然に存在する型である場合の方が、生分解性に優れるという点で好ましい。
また、一般式(1)中、Xは好ましくはヒドロキシル基以外の置換基を有していてもよい分子量100万以下のm価(m≧n)のポリヒドロキシル化合物残基である。ここで、m価のポリヒドロキシル化合物は、m個のエステル結合を作りうることを意味する。それらは光学異性体例えばD−体、L−体、ラセミ体であるかは問わない。
【0025】
このようなm価のポリヒドロキシル化合物としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ジメチロールシクロヘキサン、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、イソプレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ソルバイト、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ダイマージオール、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、酒石酸、ジヒドロキシ酒石酸、メバロン酸、3,4−ジヒドロキシけい皮酸、3,4−ジヒドロキシヒドロけい皮酸、ヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシフェニルアラニン等およびこれらの各異性体等の2価ヒドロキシル化合物;
【0026】
グリセリン、トリオキシイソブタン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、2−メチル−2,3,4−ブタントリオール、2−エチル−1,2,3−ブタントリオール、2,3,4−ペンタントリオール、2,3,4−ヘキサントリオール、4−プロピル−3,4,5−ヘプタントリオール、2,4−ジメチル−2,3,4−ペンタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリヒドロキシステアリン酸等の3価ポリヒドロキシル化合物;ペンタエリスリトール、エリスリトール、1,2,3,4−ペンタンテトロール、2,3,4,5−ヘキサンテトロール、1,2,4,5−ペンタンテトロール、1,3,4,5−ヘキサンテトロール、ジグリセリン、ソルビタン等の4価ポリヒドロキシル化合物;アドニトール、アラビトール、キシリトール、トリグリセリン等の5価ポリヒドロキシル化合物;ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、イノシトール、ダルシトール、タロース、アロース等の6価ポリヒドロキシル化合物;またはこれらの脱水縮合物、ポリグリセリン等が挙げられる。
【0027】
また、糖類、例えばエリスロース、スレオース、エリスルロース等のテトロース;
リボース、アラビノース、キシロース、リクソース、キシルロース、リブロース等のペントース;アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ギューロース、イドース、ガラクトース、タロース、フラクトース、ソルボース、プシコース、タガトース等のヘキソース等の単糖類;マルトース、イソマルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、メリビオース、ラクトース、ツラノース、トレハロース、サッカロース、マンニトリオース、セロトリオース、ゲンチアノース、ラフィノース、メレチトース、セロテトロース、スタキオース等のオリゴ糖類が挙げられる。
【0028】
また、その他の糖類、例えばヘプトース、デオキシ糖、アミノ糖、チオ糖、セレノ糖、アルドン糖、ウロン酸、糖酸、ケトアルドン酸、アンヒドロ糖、不飽和糖、糖エステル、糖エーテル、グリコシド等の残基でもよく、デンプン、グリコーゲン、セルロース、キチン、キトサン等の多糖類またはそれらを加水分解したものでもよい。
Xはこのような化合物の残基の中でも、炭素数1〜40の場合が好ましい、さらに好ましくはXは炭素数1〜20である。特に好ましいのは炭素数1〜10である。
さらには、Xが、置換基として少なくとも1個以上のそれぞれ独立なカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基またはそれらの塩等を含有する場合、一般式(1)で示される多鎖多親水基型化合物が弱酸性での溶解性に優れる点で好ましい。また、Xは天然に存在する型である場合の方が、生分解性に優れるという点で好ましい。
【0029】
また、一般式(2)中、Xは好ましくはアミノ基以外の置換基を有していてもよい分子量100万以下のm価のポリアミノ化合物残基である。ここで、m価のポリアミノ化合物は、m個の酸アミド結合を作りうることを意味する。それらは光学異性体例えばD−体、L−体、ラセミ体であるかは問わない。
このようなm価のポリアミノ化合物としては、例えばN,N’−ジメチルヒドラジン、エチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノヘプタン、ジアミノオクタン、ジアミノノナン、ジアミノデカン、ジアミノドデカン、ジアミノアジピン酸、ジアミノプロパン酸、ジアミノブタン酸およびこれらの各異性体等の脂肪族ジアミン類;ジエチレントリアミン、トリアミノヘキサン、トリアミノドデカン、1,8−ジアミノ−4−アミノメチル−オクタン、2,6−ジアミノカプリン酸−2−アミノエチルエステル、1,3,6−トリアミノヘキサン、1,6,11−トリアミノウンデカン、ジ(アミノエチル)アミンおよびこれらの各異性体等の脂肪族トリアミン類;ジアミノシクロブタン、ジアミノシクロヘキサン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、トリアミノシクロヘキサン等の脂環族ポリアミン類;ジアミノベンゼン、ジアミノトルエン、ジアミノ安息香酸、ジアミノアントラキノン、ジアミノベンゼンスルホン酸、ジアミノ安息香酸、およびこれらの各異性体等の芳香族ポリアミン類;ジアミノキシレン、ジ(アミノメチル)ベンゼン、ジ(アミノメチル)ピリジン、ジ(アミノメチル)ナフタレン、およびこれらの各異性体等の芳香脂肪族ポリアミン類;ジアミノヒドロキシプロパンおよびこれらの各異性体等のヒドロキシル基が置換したポリアミン類等が挙げられる。
【0030】
Xはこのような化合物の残基の中でも、炭素数1〜40の場合が好ましい、さらに好ましくはXは炭素数1〜20である。特に好ましいのは炭素数1〜10である。
さらには、Xが置換基として少なくとも1個以上のそれぞれ独立なカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基またはそれらの塩等を含有する場合、一般式(1)で示される化合物が弱酸性での溶解性に優れる点で好ましい。また、Xは天然に存在する型である場合の方が、生分解性に優れるという点で好ましい。
また、一般式(1)中、Xは好ましくはチオール基以外の置換基を有していてもよい分子量100万以下のm価のポリチオール化合物残基である。ここで、m価のポリチオール化合物は、m個のチオエステル結合を作りうることを意味する。それらは光学異性体例えばD−体、L−体、ラセミ体であるかは問わない。
【0031】
このようなm価のポリチオール化合物としては、例えば、ジチオエチレングリコール、ジチオエリトリトール、ジチオトレイトール等のジチオール化合物類等が挙げられる。Xはこのような化合物の残基の中でも、炭素数1〜40の場合が好ましい、さらに好ましくはXは炭素数1〜20である。特に好ましいのは炭素数1〜10である。
さらには、Xが置換基として1〜10個のそれぞれ独立なカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基またはそれらの塩等を含有する場合、一般式(1)で示される多鎖多親水基型化合物が弱酸性での溶解性に優れる点で好ましい。また、Xは天然に存在する型である場合の方が、生分解性に優れるという点で好ましい。
【0032】
一般式(2)中、Yで示されるカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基およびX中に含まれうるカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基等は、種々の塩基性物質との間に塩を形成し得る。
かかる塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、塩基性アミノ酸塩等が挙げられ、具体的には、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、亜鉛等の金属、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の有機アミン、アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸等から任意に選ばれる1種または2種以上との塩である。これらの中でも、ナトリウム塩、カリウム塩、有機アミン塩、塩基性アミノ酸塩が好ましい。
【0033】
このような一般式(1)で示される多鎖多親水基型化合物の製造方法としては、一般式(3)で示されるN−長鎖アシル酸性アミノ酸無水物と分子内にヒドロキシル基、アミノ基、チオール基から選ばれる1種または2種以上のm個の官能基を有する化合物とを、水および/または水と有機溶媒との混合溶媒中で反応させることによって得ることができる。
【0034】
【化3】

【0035】
あるいは、一般式(1)で示される多鎖多親水基型化合物は、一般式(3)で示されるN−長鎖アシル酸性アミノ酸無水物とポリヒドロキシル化合物またはポリアミノ化合物またはポリチオール化合物、または分子内にヒドロキシル基、アミノ基、チオール基のうちいずれか2種または3種を有する化合物とをいずれかの融点以上の温度で、またはテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、四塩化炭素、クロロホルム、アセトン等の不活性溶媒を使用して−5〜200℃で混合することで得ることができる。
【0036】
または、一般式(1)で示される多鎖多親水基型化合物は、N−長鎖アシル酸性アミノ酸モノ低級エステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル)とポリヒドロキシル化合物またはポリアミノ化合物またはポリチオール化合物、または分子内にヒドロキシル基、アミノ基、チオール基のうちいずれか2種または3種を有する化合物とをジメチルホルムアミド等の適当な溶媒中に溶解し、炭酸カリウム等の触媒を加え、減圧下に−5℃〜250℃で加熱反応させた後反応溶媒を除去することで得ることができる。あるいは、無溶媒で加熱溶融し、水酸化ナトリウム等の触媒を加えて室温〜250℃でエステル交換反応させて本発明で用いる多鎖多親水基型化合物を得ることができる。
【0037】
本発明の水性インク組成物における多鎖多親水基型化合物の配合量は特に制限はないが、、固形分量が顔料に対して0.1重量%以上が好ましく、より好ましくは0.5重量%以上であり、さらに好ましくは1重量%以上がよい。多鎖多親水基型化合物の量は他に問題がなければ多いほうが安定性は向上するが、500重量%を超えると用途によっては、例えばインクの耐水性が低下する等の問題が発生することがある。
本発明において使用可能な顔料としては、特に制限はなく、筆記具、記録計、プリンター等の印刷インキ、塗料、化粧品、繊維、セメント分野等に使用される、無機顔料および/または有機顔料を使用できる。
【0038】
例えば、無機顔料としては、黄土、バリウム黄、紺青、カドミウムレッド、硫酸バリウム、ベンガラ、タルク、(微粒子)酸化チタン、チタン白、チタン黒、チタン、マイカ、アルミナ、ベントナイト、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、群青、コバルトブルー、クロムグリーン、酸価クロム、カーボンブラック(コンタクト法、ファーネス法、サーマル法)、酸化亜鉛、酸化クロム、、酸化鉄、カオリン、セリサイト、クレー、炭酸カルシウム、シリカ、コバルトブルー、クロムグリーン、無水ケイ酸、ケイ酸アルミン酸マグネシウム塩等が挙げられる。
【0039】
また、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等)、多環式顔料(フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等)、染料キレート(塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、紅花色素、コチニール等が挙げられる。
【0040】
その他の顔料として、植物の実の皮を粉末状にしたもの、ヒノキを粉末状にしたもの、ポリエチレン末、ポリメチルシルセスキオキサン末、ハンザエロー、ベンジジンエロー、パーマネントエロー、タートラジンレーキ、キノリンエロー、スダーン1、パーマネントオレンジ等の有機顔料;ブロンズパウダー等の金属粉顔料;硫化亜鉛、ケイ酸亜鉛、硫酸亜鉛カドミウム、硫化カルシウム、硫化ストロンチウム、タングステン酸カルシウム等の無機蛍光顔料、その他公知の有機蛍光顔料等が挙げられる。本発明の水性インク組成物における顔料の使用量は、用途によっても異なるが組成物全量に対し0.1〜50重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜30重量%である。さらに好ましくは、0.5〜15重量%である。
【0041】
本発明の水性インク組成物において水は媒体として用いるもので、通常イオン交換水、蒸留水、限外ろ過水、逆浸透水等の純水または超純水等を好ましく用いることができ、その使用量は、用途によって異なるが組成物全量に対し、10〜95重量%が好ましい。
また、本発明の分散剤組成物においては、本発明の目的が損なわれない限り、例えば筆記具、記録計、インクジェットインク等の印刷分野で用いられる各種の基材と併用することができる。
【0042】
具体的には、アラビアゴム、トラガントゴム等の天然ゴム類、サポニン等のグルコシド類、メチルセルロース、カルボキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、リグニンスルホン酸塩、セラック等の天然高分子、ポリアクリル酸塩、スチレン−アクリル酸共重合物の塩、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合物の塩、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、リン酸塩などの陰イオン性高分子やポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等のノニオン性高分子等の分散剤;高級脂肪酸塩(石鹸);疎水基部の炭素数8〜20の高級脂肪酸またはそれらの塩、N−アシルアミノ酸型アニオン界面活性剤;アシル基としては、炭素数8〜20のもので前記したようなものが挙げられ、構成アミノ酸としては、グルタミン酸やアスパラギン酸等の前記した酸性アミノ酸類、またはグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、メチオニン、システイン、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、オキシプロリン、β−アミノプロピオン酸、γ−アミノ酪酸、アントラニル酸、m−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、等のアミノ酸等;アルキルエーテルカルボン酸塩、アミドエーテルカルボン酸塩等、アルキル硫酸エステル塩(AS)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(AES)、アルキルエーテル硫酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸塩、高級脂肪酸アルキロールアミドの硫酸塩、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩、アルファ−オレフィンスルホン酸塩(AOS)、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩(SAS)、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルファースルホン化脂肪酸塩、アルカンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、アルファースルホン化脂肪酸塩、高級脂肪酸アミドのスルホン酸塩、N−アシル−N−アルキルタウリン塩、N−アシル−N−メチルタウリン塩、アルキルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩、ナフタリンスルフォン酸塩ホルマリン縮合物などのアニオン性界面活性剤;
【0043】
アルキルベタイン類、アルキルアミドベタイン類、アルキルスルホベタイン類、イミダゾリニウムベタイン類、レシチン類などの両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル(AE)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド、ポリオキシアルキレン硬化ひまし油、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、等の酸化エチレン縮合型、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステル、アルキルポリグルコシド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ等脂肪酸エステル等の多価アルコールエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミド、アセチレングリコール系等のノニオン性界面活性剤;脂肪酸アルカノールアミド、糖アミンアシル化物、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアミンオキサイド;
【0044】
第1〜第3級脂肪アミン塩、塩化アルキルアンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルヒドロキシエチルイミダゾリニウム塩、ジアルキルモルフォリニウム塩、アルキルイソキノリウム塩、ベンゼトニウム塩、ベンザルコニウム塩などのカチオン性界面活性剤;アルギン酸ナトリウム、デンプン誘導体、トラガントゴムなどの高分子界面活性剤;レシチン、ラノリン、コレステロール、サポニンなどの天然界面活性剤;アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ油、ゴマ油、サフラワー油、大豆油、椿油、パーシック油、ひまし油、ミンク油、綿実油、モクロウ、ヤシ油、卵黄油、パーム油、パーム核油、合成トリグリセライド、ホホバ油等の油脂;流動パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、イソパラフィン等の炭化水素;ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナバロウ、キャンデリラロウおよびその誘導体等のロウ;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、ラノリン脂肪酸、硬質ラノリン脂肪酸、軟質ラノリン脂肪酸等の高級脂肪酸;ラウリルアルコール、セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、水添ラノリンアルコール、へキシルデカノール、オクチルドデカノール等の高級アルコール;ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル等のその他のエステル油;金属石鹸、ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、メチルフェニルポリシロキサン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、揮発性シリコーン等のシリコーン類等の揮発性および不揮発性の油分;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ブタノール、n−ペンタノール等の一価アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ソルビタン、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジグリセリン、ポリグリセリン、1,3−ブタンジオール、プロパンジオール等、先にも記載したポリヒドロキシ化合物等;
【0045】
ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールのエーテル類;マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトン、マルトース等の糖類等;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、エチレン尿素等の尿素類;ε−カプロラクタム等のラクタム類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のピロリドン類;トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類;βーアラニン、L−プロリン、ε―アミノカプロン酸、α―アミノ酪酸、8−アミノ−カプリル酸等のアミノ酸またはその塩類;
【0046】
N−メチルグリシン、N,N−ジメチルグリシン、N,N,N−トリメチルグリシン、N−エチルグリシン、グリシルベタイン等のアルキルグリシン類、ソルビトール、ラフィノース、ピロリドンカルボン酸塩類、乳酸塩類、ヒアルロン酸塩類、セラミド類などの湿潤剤または保湿剤;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、メチルデンプン、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸塩、グアーガム、ローカストビンガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、カードラン、ヒアルロン酸、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体、両性メタクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム、ポリアクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、シリコーンレジン等の水溶性および油溶性高分子;カチオン化セルロース誘導体、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム誘導体、ジアリル第4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合体、4級化ポリビニルピロリドン誘導体、4級化ビニルピロリドン/ビニルイミダゾールポリマー、ポリグリコール/アミン縮合物、4級化コラーゲンポリペプチド、ポリエチレンイミン、カチオン性シリコーンポリマー、アジピン酸/ジメチルアミノヒドロキシプロピルジエチレントリアミンコポリマー、ポリアミノポリアミド、カチオン性キチン誘導体、4級化ポリマー等のカチオン性高分子;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルメチルグリコシド、テトラデセンスルホン酸塩等の増粘、増泡成分;シリコーン系等の消泡剤;エチレンジアミン四酢酸およびその塩類、ヒドロキシエチレンジアミン3酢酸およびその塩類、リン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルコン酸、ポリリン酸塩類、メタリン酸塩、ヒノキチール類などの金属イオン封鎖剤;
【0047】
パラオキシ安息香酸エステル類、安息香酸およびその塩類、フェノキシエタノール、ヒノキチール、クロロメチルフェノール系等の防腐剤;クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等のpH調整剤;ベンゾフェノンとその誘導体、パラアミノ安息香酸誘導体、パラメトキシ桂皮酸誘導体、サリチル酸誘導体、ベンゾトリアゾール、シアノアクリレート等の紫外線吸収剤、その他の紫外線吸収剤;亜硫酸塩等の酸素吸収剤、
高分子シリコーン、環状シリコーン等のシリコーン系物質、トコフェロール類、BHA、BHT、没食子酸、NDGAなどの酸化防止剤;等を含むことができる。
【0048】
また、その他、防腐剤、防錆剤、アルカリ剤、香料、光沢付与剤等種々の添加剤等の添加剤を単独または組み合わせて用いることができる。
この中でも、保湿剤および/またはポリヒドロキシ化合物との併用は、水性インク組成物の保湿性、浸透性を向上させる上で好ましい。
本発明の水性インク組成物は、前記成分を慣用の適当な方法で分散し、混合することで製造することができる。好ましくは、有機溶剤および揮発性の成分を除いた混合物を適当な分散機、例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル、フローミル、ダイノーミル、アトライザー、アジテーターミル、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、ジェットミル、オングミル、ホモキキサー、(超音波)ホモジナイザー、高速ディスパー等公知の撹拌機で撹拌混合し、均質にしてから有機溶剤および揮発性の成分を添加するのが好ましい。さらにその後、必要に応じてろ過、遠心処理等の方法で顔料の粗大粒子を除去することが好ましい。
【0049】
本発明の水性インク組成物を用いることで、該水性インク組成物を記録媒体に付着させて印字する方法、例えば、インクジェット等のようにインクを吐出して記録する方法、ペン等による筆記による記録方法、その他印刷による記録方法等が提供される。
また本発明は、生分解性と低刺激性に優れた多鎖多親水基型化合物を含有した水性インク組成物を用いて記録された記録物をも提供するものである。
以下で、本発明を実施例等を用いてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等により何ら限定させるものではない。
【実施例】
【0050】
本発明の実施例等で用いる評価手段などは以下の通りである。
(皮膚刺激性)
健常男子5人のパネラーの前腕屈曲部皮膚に、多鎖多親水基型化合物の5wt%ナトリウム塩水溶液試料0.1gを直径1cmのパッチテスト用絆創膏で24時間貼付後、皮膚刺激性の有無を評価した。判定結果は、下記の評価で(±)以上となった人数で示す。
紅斑、浮腫、水疱 (+++)
紅斑、浮腫 (++)
紅斑 (+)
軽微な紅斑 (±)
無紅斑、無浮腫 (−)
【0051】
(生分解)
JIS生分解度試験方法K−3363に準じて実施した。評価基準を以下に記す。
分解率 70%以上 ○
分解率 40%以上、70%未満 △
分解率 40%未満 ×
(静置安定性評価)
各水性インク組成物を40℃で1月間静置し、沈降状態を下記の基準で評価した。
○ : 全く沈降物がないか、微量にあっても軽く振動させるとなくなる
△ : やや沈降物がある
× : 沈降物が多い
【0052】
(吐出安定性評価)
各インク組成物について、インクジェットプリンター「PX−V700」(商標、セイコーエプソン(株)製)を用いて、印刷を行い印字品質を下記の基準で評価した。
○ : かすれがない
△ : ややかすれがある
× : かすれがひどい、または吐出が不安定である
【0053】
(多鎖多親水基型化合物の製造例1)
L−リジン塩酸塩9.1g(0.05mol)を水57gと混合した。この液を25%水酸化ナトリウム水溶液でpH範囲を10〜11に調整しながら、また反応温度を5℃に維持しながら、攪拌下にN−ラウロイル−L−グルタミン酸無水物31.1g(0.1mol)を2時間を要して添加し、反応を実施した。さらに30分攪拌を続けた後、ターシャリーブタノールを液中濃度20重量%となるように添加した後、75%硫酸を滴下して液のpH値を2に、また液の温度を65℃に調整した。滴下終了後、攪拌を停止し、20分間65℃で静置すると有機層と水層とに分層し、これから有機層を分離した。分離した有機層にターシャリーブタノールおよび水を添加して、温度を65℃にして20分攪拌した。攪拌停止後、静置すると有機層と水層とに分層した。得られた有機層に対して、同じ水洗操作をくり返した後、得られた有機層から溶媒を除去し、水酸化ナトリウムで固形分30重量%、pH7(25℃)の水溶液に中和調製した後乾燥して、式(4)に示す多鎖多親水基型化合物を含有する組成物を得た。
【0054】
【化4】

【0055】
(多鎖多親水基型化合物の製造例2)
製造例1において、N−ラウロイル−L−グルタミン酸無水物31.1gをN−ココイル−L−グルタミン酸無水物とし、固形分30重量%、pH7(25℃)に調製した以外は、製造例1の方法と同じ条件で実施し、多鎖多親水基型化合物を含有する組成物を得た。
【0056】
(参考例1〜2)
製造例1〜2で得た多鎖多親水基型化合物について、皮膚刺激性と生分解性を評価した。
結果を表1に示す。
【0057】
[実施例1〜5、比較例1〜3]
表2の各成分組成に調整したものをボールミルで分散処理後、ろ過して水性インク組成物を得た。カーボンブラックは、平均一次粒径24nm、比表面積112m/g、吸油量60cc/100gのものを、2酸化チタンはアルミナ処理ルチル型、平均一次粒径40nmのものを使用した。表2に静置安定性評価、吐出安定性評価の結果を示す。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の水性インク組成物は経時安定性と吐出安定性に優れることから、筆記具用、記録計用、プリンター用、塗料用等の分野で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、水および分子内にアシル基と親水基とを2個以上ずつ有する多鎖多親水基型化合物の1種以上を含有することを特徴とする水性インク組成物。
【請求項2】
多鎖多親水基型化合物の少なくとも1種が、分子内にアミノ酸残基を有するものであることを特徴とする請求項1記載の水性インク組成物。
【請求項3】
多鎖多親水基型化合物の少なくとも1種が、一般式(1)に示す化合物であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の水性インク組成物。
【化1】

(一般式(1)において、Xはm個の官能基、およびそれ以外の置換基を有していてもよい分子量100万以下の直鎖または分枝鎖または環状鎖または芳香族炭化水素鎖であるスペーサーを示す。Xに結合しているn(m≧n)個のQは、一般式(2)で表される置換基であり、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。一般式(2)において、ZはXの有する官能基に由来する結合部であり、RCOは炭素原子数2〜20の飽和または不飽和の脂肪酸から誘導される長鎖アシル基を示し、Rは水素であるか、またはヒドロキシル基またはカルボキシル基が置換していてもよい炭素原子数1〜3の低級アルキル基を示し、Yはカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基またはそれらの塩の内のいずれかを示す。j、kはそれぞれ独立に0,1,2のいずれかであり、かつj、kは同時に0ではない。nは2〜20の整数を示す。また、mはm≧nである整数を示す。)
【化2】

【請求項4】
さらに、保湿剤および/またはポリヒドロキシル化合物を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水性インク組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の水性インク組成物によって記録されたことを特徴とする記録物。

【公開番号】特開2006−16546(P2006−16546A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197261(P2004−197261)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】