説明

水性インク

【課題】高い印字品質が得られ、且つ定着性および吐出安定性に優れる水性インクを提供する。
【解決手段】着色剤をポリマーで包含して水に分散可能にした分散体を含む水性インクであって、該ポリマー中の芳香環の量が該ポリマーの20重量%以上70重量%以下であり、さらに下記式で表される化合物を含有することを特徴とし、該化合物における、EOとSiのモル%比(EO/Si)が0.8〜1.5であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性インクに関し、特に、普通紙、再生紙あるいはコート紙、及び光沢メディアに対して高い印字品質が得られ、且つ定着性、吐出安定性に優れる水性インクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年来、水性インクジェットプリンタ用水性インクに求められる特性としては、印刷画像の耐水性や耐光性等の堅牢性が良好であること、また、印刷媒体種によらずに不規則な水性インクの流れや付着した水性インク小滴より大きく広がること(以下これを"にじみ"とする)等の不具合が無いこと、更に印刷媒体種によらずに印刷画像濃度・色再現性が高いことが挙げられる。
【0003】
こうした目的のうち、印刷画像の堅牢性確保に対しては、染料の代わりに堅牢性に優れる顔料を利用することが検討されてきている。顔料は、染料と異なり水への溶解性がないため、顔料を水中に微粒子状態で分散することが必要であるが、この分散状態を安定して保つことが非常に困難である。そのために、顔料を水中に安定して分散させる技術が種々提案されており、その手段として分散性界面活性剤を用いる方法(例えば、特許文献1参照。)、または疎水部と親水部を有する分散ポリマーを用いる方法(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。また、着色剤の表面を高分子で被覆する方法として、水性インクジェットプリンタ用水性インクとして、染料水性インクを内包したマイクロカプセルを用いる方法(例えば、特許文献3参照。)、水に不溶な溶媒に色素を溶解または分散させこれを分散性界面活性剤で水中に乳化したマイクロカプセル化色素を用いる方法(例えば、特許文献4参照。)、水、水溶性溶媒並びにポリエステルの少なくとも1種に昇華性分散染料を溶解または分散させた内包物を含むマイクロカプセルを記録液に使用する方法(例えば、特許文献5参照。)、着色された乳化重合粒子と水性材料からなるインキ組成物(例えば、特許文献6参照。)、転相乳化反応や酸析法による方法(例えば、特許文献7参照。)が提案されている。
【0004】
また、色再現性の良好な印刷画像の実現に対しては、特定の顔料を水溶性樹脂にて分散させたイエロー水性インク、マゼンタ水性インク、シアン水性インク、ブラック水性インクを組み合わせて画像形成を行う方法(例えば、特許文献8及び9参照。)、顔料を水溶性樹脂にて分散させたイエロー水性インク、マゼンタ水性インク、シアン水性インク、ブラック水性インク、グリーン水性インク、レッド水性インクを組み合わせて画像形成を行なう方法(例えば、特許文献10参照。)が提案されている。
【0005】
しかしながら、従来の分散体は不安定であり、界面活性剤やグリコールエーテル等の親水部と疎水部を有する物質が存在すると、吸脱着が起こりやすくなり、その水性インクの保存安定性が劣るという課題がある。通常の水性インクは紙に対するにじみを低減させるため、界面活性剤やグリコールエーテル等の親水部と疎水部を有する物質が必要である。これらの物質を用いない水性インクでは紙に対する浸透性が不十分となり、均一な印字を行なうためには紙種が制限され、印字画像の低下を引き起こしやすくなるという課題があった。
【0006】
さらに、従来の分散体に本発明で用いるような添加剤(アセチレングリコール、アセチレンアルコール、シリコーン系界面活性剤、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルまたは1,2−アルキレングリコールまたはこれらの混合物)を用いると長期の保存安定性が得られず、水性インクの再溶解性が悪いため水性インクが乾燥して水性インクジェットヘッドのノズルや筆記具のペン先等で詰まり易くなるという課題を有していた。
【0007】
また、このような分散剤により分散された顔料は分散剤の残存物が水性インク系中に残り、分散剤が十分に分散に寄与せず顔料から脱離して粘度が高いものになってしまうという課題があった。粘度が高くなると顔料等の色材の添加量が制限され特に普通紙において十分な画質が得られない。
そこで本発者らは、上記の課題を解決するため、具体的には、普通紙上ではにじみが少なく高発色であり、専用紙上では十分な発色に加えて定着性を有する水性インクを作成可能であり、水性インクジェット記録にあってはさらに吐出安定性が優れる水性インクを作成可能とする分散体を含む水性インクを提供することを目的とし、芳香環の量が20〜70重量のポリマーで着色剤を包含して水に分散可能にした分散体を含む水性インクを開示した(例えば、特許文献11参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平1−301760号公報
【特許文献2】特公平5−64724号公報
【特許文献3】特開昭62−95366号公報
【特許文献4】特開平1−170672号公報
【特許文献5】特開平5−39447号公報
【特許文献6】特開平6−313141号公報
【特許文献7】特開平10−140065号公報
【特許文献8】特開平5−155006号公報
【特許文献9】特開平10−52925号公報
【特許文献10】特開2001−354886号公報
【特許文献11】国際公開第03/033602号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献11に開示のものは、定着性、吐出安定性等が満足できるものではなかった。
本発明は上記従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、高い印字品質が得られ、且つ定着性および吐出安定性に優れる水性インクを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、特定の構造のエチレンオキシ変性シリコーンを消泡剤として添加することにより、定着性、吐出安定性が向上することを見出し、本発明を成すに至った。
即ち、本発明は、以下の通りである。
【0011】
(1)着色剤をポリマーで包含して水に分散可能にした分散体を含む水性インクであって、該ポリマー中の芳香環の量が該ポリマーの20重量%以上70重量%以下であり、さらに下記式で表される化合物を含有することを特徴とする、水性インク。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、Rは2価の有機基を、POはプロピレンオキシ基を、EOはエチレンオキシ基を表し、x,y,a,bはそれぞれ繰り返し単位数であって、xは1〜200の数を、yは1〜50の数を、aは1〜30の数を、bは0〜20の数を表す。)
(2)前記式で表される化合物における、EOとSiのモル%比(EO/Si)が0.8〜1.5であることを特徴とする、前記(1)の水性インク。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水性インクは、特定の構造のエチレンオキシ変性シリコーンを消泡剤として含有することにより、高い印字品質が得られ、且つ定着性および吐出安定性が優れたものとなった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の水性インクについて詳細に説明する。
本発明の水性インクは、着色剤をポリマーで包含して水に分散可能にした分散体を含むものであって、該ポリマー中の芳香環の量が該ポリマーの20重量%以上70重量%以下であり、さらに下記式で表される化合物を消泡剤として含有することを特徴とするものである。
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、Rは2価の有機基を、POはプロピレンオキシ基を、EOはエチレンオキシ基を表し、x,y,a,bはそれぞれ繰り返し単位数であって、xは1〜200の数を、yは1〜50の数を、aは1〜30の数を、bは0〜20の数を表す。)
【0018】
式中のRは、2価の有機基であれば特に限定されず、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヘテロ原子を含む有機基であってもよい。その中でも炭素数1〜10のアルキレン基が好ましい。
−Si(CH32−O−成分および側鎖基(PO)b−(EO)a−R−を有するシロキサン成分は、上記式で表される化合物(以下、単に変性シリコーン又は消泡剤とも称する)の分子中において、存在の順序は問わず、ランダムであってもブロックであってもよい。
また、上記側鎖基において、EOおよびPOは、存在の順序は問わず、ランダムであってもブロックであってもよい。
【0019】
上記変性シリコーンにおいて、EO付加モル数は、特に限定されないが、3モル以上が好ましく、より好ましくは14モル以上であり、さらに好ましくは20モル以上である。
また、上記変性シリコーンにおいて、EOとSiのモル%比(EO/Si)は、特に限定されないが、0.1〜5.0が好ましく、より好ましくは0.8〜1.5であり、さらに好ましくは0.9〜1.4である。上記の範囲にあれば、本発明の水性インクの吐出安定性がさらに向上する。
【0020】
上記変性シリコーンの分子量としては、特に限定されないが、平均分子量として200〜200,000が好ましく、より好ましくは500〜20,000であり、さらに好ましくは1000〜10,000である。
また、上記変性シリコーンのHLB値としては、特に限定されないが、13以下が好ましく、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは3〜8である。
【0021】
上記変性シリコーンの具体的な製品名としては、例えば、SH−3771M、SH−3772M、SH−3773M、SH−3775M、SH−3719(以上いずれも東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)、KF−6017、KF−6028、KF−352A(以上いずれも信越化学工業株式会社製)、Form Ban MS-500、Form Ban MS-525、Form Ban MS-550、Form Ban MS-575(以上いずれもUltra Addives Inc.製)等を挙げることができる。
これらの消泡剤は、インクジェット用インク組成物として、信頼性(目詰まりや吐出安定性等)をより有効に得る観点から0.0001〜0.1重量%の範囲で本発明のインク組成物中に含有されることが好ましく、より好ましくは0.0004〜0.05重量%の範囲である。
【0022】
次に、本発明の水性インクに含有される、着色剤をポリマーで包含して水に分散可能にした分散体について説明する。
該分散体において、着色剤を包含するポリマーとしては、該ポリマー中の芳香環の量がそのポリマーの20%以上70%以下であることを特徴とする。
芳香環の量がポリマーの20%以上であることで、そのポリマーは疎水性表面の着色剤に好適に吸着することが可能となる。また、その吸着したポリマーは本発明で好適に用いる添加剤を添加しても安定なものとなる。また、芳香環の量が70%を超えると分散が難しくなり、逆に安定性が得られなくなる。より好ましくは25%以上50%以下である。
【0023】
また、本発明の分散体において、着色剤とは、いわゆる有色の分子を有する物質をいい、顔料、および染料を含めたものをいう。そして、前述の着色剤としては有機顔料または無機顔料を好適に用いることができる。
【0024】
(顔料)
顔料として用いることのできる無機顔料または有機顔料として、以下に例示する。
ブラック用の無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、若しくはチャネルブラック等のカーボンブラック(C.l.ピグメントブラック7)類を挙げることができる。
有機顔料としては、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、縮合アゾ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、アントラキノン顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ペリレン顔料等を使用することができる。
【0025】
具体的には、例えばイエロー用の有機顔料としては、C.l.ピグメントイエロー1(ハンザイエローG),2,3(ハンザイエロー10G),4,5(ハンザイエロー5G),6,7,10,11,12(ジスアゾイエローAAA),13,14,16,17,24 (フラバントロンイエロー),55(ジスアゾイエローAAPT),61,61:1,65,73,74(ファストイエロー5GX),75,81,83(ジスアゾイエローHR),93(縮合アゾイエロー3G),94(縮合アゾイエロー6G),95(縮合アゾイエローGR),97(ファストイエローFGL),98,99(アントラキノン),100,108(アントラピリミジンイエロー),109(イソインドリノンイエロー2GLT),110(イソインドリノンイエロー3RLT),113,117,120(ベンズイミダゾロンイエローH2G),123(アントラキノンイエロー),124,128(縮合アゾイエロー8G),129,133,138(キノフタロンイエロー),139(イソインドリノンイエロー),147,151(ベンズイミダゾロンイエローH4G),153(ニッケルニトロソイエロー),154(ベンズイミダゾロンイエローH3G),155,156(ベンズイミダゾロンイエローHLR),167,168,172,173(イソインドリノンイエロー6GL),180(ベンズイミダゾロンイエロー)などを挙げることができる。
【0026】
また、マゼンタ水性インク用の有機顔料としては、C.l.ピグメントレッド1(パラレッド),2,3(トルイジンレッド),4,5(lTR Red),6,7,8,9,10,11,12,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38(ピラゾロンレッドB),40,41,42,88(チオインジゴボルドー),112(ナフトールレッドFGR),114(ブリリアントカーミンBS),122(ジメチルキナクリドン),123(ペリレンバーミリオン),144,146,149(ペリレンスカーレッド),150,166,168(アントアントロンオレンジ),170(ナフトールレッドF3RK),171(ベンズイミダゾロンマルーンHFM),175(ベンズイミダゾロンレッドHFT),176(ベンズイミダゾロンカーミンHF3C),177,178(ペリレンレッド),179(ペリレンマルーン),185(ベンズイミダゾロンカーミンHF4C),187,188,189(ペリレンレッド),190(ペリレンレッド),194(ペリノンレッド),202(キナクリドンマゼンタ),209(ジクロロキナクリドンレッド),214(縮合アゾレッド),216,219,220(縮合アゾ),224(ペリレンレッド),242(縮合アゾスカーレット),245(ナフトールレッド),又は、C.I.ピグメントバイオレット19(キナクリドン),23(ジオキサジンバイオレット),31,32,33,36,38,43,50などを挙げることができる。
【0027】
更に又、シアン用の有機顔料としては、C.l.ピグメントブルー15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6(以上いずれもフタロシアニンブルー),16(無金属フタロシアニンブルー),17:1,18(アルカリブルートナー),19,21,22,25,56,60(スレンブルー),64(ジクロロインダントロンブルー),65 (ビオラントロン),66(インジゴ)等を挙げることができる。
又、ブラック用の有機顔料としては、アニリンブラック(C.l.ピグメントブラック1)等の黒色有機顔料を用いることができる。
【0028】
更に又、イエロー、シアン、又はマゼンタ水性インク以外のカラー水性インクに用いる有機顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ1,2,5,7,13,14,15,16(バルカンオレンジ),24,31(縮合アゾオレンジ4R),34,36(ベンズイミダゾロンオレンジHL),38,40(ピラントロンオレンジ),42(イソインドリノンオレンジRLT),43,51,60(ベンズイミダゾロン系不溶性モノアゾ顔料),62(ベンズイミダゾロン系不溶性モノアゾ顔料),63;C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン),10(グリーンゴールド),36(塩臭素化フタロシアニングリーン),37,47(ビオラントロングリーン);あるいはC.I.ピグメントブラウン1,2,3,5,23(縮合アゾブラウン5R),25(ベンズイミダゾロンブラウンHFR),26(ペリレンボルドー),32(ベンズイミダゾロンブラウンHFL)等を挙げることができる。
本発明で用いる水性インクにおいては、前記の顔料を1種で又は2種以上を混合して使用することもできる。
【0029】
使用する顔料は、ポリマーで内包してマイクロカプセル(分散体を意味する)化する以前に予め粉砕処理をして微粒化してあることが望ましい。顔料の粉砕処理はジルコニアビーズ、ガラスビーズ、無機塩等の粉砕メディアを使用して、湿式粉砕あるいは乾式粉砕により実施することができ、粉砕装置としてはアトライター、ボールミル、振動ミル等を挙げることができる。
顔料を粉砕処理により微粒化する場合、少なからず粉砕メディア(ビーズ)の成分が顔料中に混入することが考えられる。具体的には、粉砕メディアにガラスビーズを使用すれば顔料中にSiの混入が、ジルコニアビーズの場合はZrの混入が考えられる。更に、粉砕装置の部材からの混入も考えられ、ステンレス部材から構成される粉砕装置を使用した場合には、Fe、Cr、Ni等の混入が考えられる。従って、粉砕処理後は顔料の洗浄、限外ろ過等により粉砕メディアや粉砕装置から発生するコンタミ成分を除去することが望ましい。
【0030】
粉砕メディアに水溶性の無機塩(NaCl、BaCl2、KCl、Na2SO4等)を用いて粉砕処理をする方法(ソルトミリング法)もあり、この場合、理論上はイオン交換水等による洗浄で混入した粉砕メディア成分を除去できる。但し、表面積の大きい顔料と上記のような無機塩を混合する方法でもあるので、粉砕処理後の洗浄が不十分の場合、分散メディアである無機塩が多量に残留する可能性もあり注意が必要である。
分散方法は超音波分散、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ジェットミルその他の公知の分散方法を用いることができる。
水性インク中でも水性インクジェットに用いる場合これらの顔料としての添加量は、0.5〜30%が好ましいが、1.0〜12%がさらに好ましい。これ以下の添加量では、印字濃度が確保できなくなり、またこれ以上の添加量では、水性インクの粘度増加や粘度特性に構造粘性が生じ、水性インクジェットヘッドからの水性インクの吐出安定性が悪くなる傾向になる。
また、顔料の粒経は5μm以下が好ましく、より好ましくは0.3μm以下の粒子からなる顔料を、さらに好ましくは0.01〜0.15μmの粒子からなる顔料が好ましい。
【0031】
(分散ポリマー)
本発明の水性インクに使用する分散ポリマーは、前記顔料を包含してそれを水中に分散可能とし、かつ分散ポリマー中の芳香環の量がその分散ポリマーの20%以上70%以下である。分散ポリマーを形成する物質の疎水基が少なくともアルキル基、シクロアルキル基または芳香環から選ばれた1種以上であることが好ましいが、芳香環の量を上記の範囲にすることが好ましい。アルキル基、シクロアルキル基においては炭素数が4以上のアルキル基が好ましい。芳香環を分散ポリマー中に含ませる場合は、アリール基(具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基等)及び/またはそれらの誘導体、その他の芳香環、ヘテロ環及び/またはそれらの誘導体の形態で含ませることができる。また、前記分散ポリマーを形成する物質中に親水性官能基を有しているのが好ましく、その親水性官能基は少なくともカルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基及びそれらの塩基であることが好ましい。それら分散ポリマーを形成する物質の具体例として2重結合を有するアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基あるいはアリル基を有するモノマーやオリゴマー類を用いることができる。
【0032】
また、前述の顔料を包含するポリマーが、ポリアクリル酸エステル、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマーからなる群から選ばれた1種以上を成分とすることが好ましい。本発明で用いるアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上からなる物質は通常の分散剤分散に用いる分散剤と吸脱着反応を起こすため、脱離した分散剤が水性インク中に浮遊し、それが原因で印字が乱れるという現象を生じやすい。しかし、上記のポリマーを用いて好適な分散を行なうことでポリマーが安定に着色剤を包含しているので吸脱着を起こしにくいので好ましい。
【0033】
さらに、前述の顔料をポリマーで包含した着色剤が少なくとも重合性基を有する分散剤と共重合性モノマーとの共重合体で該顔料を包含したものであることが好ましい。ここで、重合性基を有する分散剤とは少なくとも疎水基、親水基および重合性基を有するもので、重合性基はアクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基あるいはビニル基などであり、共重合性基も同じくアクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基あるいはビニル基などである。水性インクジェット記録用水性インクとしては粒径が比較的そろっていた方が目詰まりや吐出の安定性の観点から好ましいので、顔料をポリマーで包含した着色剤は、乳化重合または転相乳化法によって製造されることが好ましい。また、ポリマー中の芳香環が本発明の範囲にあり、好適な分散剤による好適な分散により、堅固なポリマーになり、本発明でよいとするアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上からなる物質の添加によっても分散安定性が得られ、長期に安定性が得られるので好ましい。
【0034】
前述の顔料をポリマーで包含した着色剤は、重合性基を有する分散剤で該顔料を分散させた後、該分散剤と共重合可能なモノマーと重合開始剤を用いて水中で乳化重合されたものまたは顔料をポリマーが覆うように水中への転相乳化であることが好ましい。
【0035】
本発明の水性インクに使用する、分散ポリマーのモノマーとしては、具体的には、芳香環を分散ポリマー中に含ませるには、例えばスチレン、(α、2、3または4)−アルキルスチレン、(α、2、3または4)−アルコキシスチレン、3,4−ジメチルスチレン、α−フェニルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、スチレンマクロマー、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAまたはFのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート等を用いることができる。またその他のモノマーとしては、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ブチルメタクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他アルキル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基のジエチレングリコールまたはポリエチレングリコールの(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、その他含フッ素、含塩素、含珪素(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、(メタ)アクリル酸等を用いることができる。また上記の一官能基モノマーの他に、分散ポリマー中に架橋構造を導入する場合は(モノ、ジ、トリ、テトラ、ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール及び1,10−デカンジオール等の(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ、トリ)(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のアクリル基やメタクリル基を有する化合物を用いることができる。
【0036】
また、芳香環を含むポリマーとしてスチレン−アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリイミドと、その他のポリマーとしてポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、含珪素分散ポリマー、含硫黄分散ポリマーからなる群から選ばれた1種以上を主成分とするようにこれらの分散ポリマーを添加しながら作成することもできる。
重合開始剤は過硫酸カリウムや過硫酸アンモニウムの他に、過硫酸水素やアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジブチル、過酢酸、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロキシパーオキシド、パラメンタンヒドロキシパーオキシドなどラジカル重合に用いられる一般的な開始剤を用いることができる。
本発明の水性インクに使用する、分散ポリマーは、乳化重合で調製することもでき、その際には連鎖移動剤を用いることもできる。例えば、t−ドデシルメルカプタンの他にn−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、キサントゲン類であるジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソブチルキサントゲンジスルフィド、あるいはジペンテン、インデン、1,4−シクロヘキサジエン、ジヒドロフラン、キサンテンなどが挙げられる。
【0037】
本発明の水性インクは、顔料とその分散ポリマーとの重量比が10:90〜90:10の範囲であることを特徴とする。この範囲であれば、分散体及びこれを用いた水性インクの分散安定性に優れ、またこの分散体を水性インクジェットプリンタ用水性インクに用いた場合、普通紙のみならず光沢メディア(例えば光沢紙)等の専用紙上の印字画像が定着性・発色性・光沢性に優れたものとなる。
【0038】
また、前記顔料と前記分散ポリマーの重量比が、前記顔料として黒色系顔料を用いる場合は40:60〜90:10、黄色系顔料の場合は50:50〜90:10、赤色系顔料の場合は50:50〜90:10、青色系顔料の場合は30:70〜70:30の範囲である。各々の顔料において上記の範囲にあれば、分散体及びこれを用いた水性インクの分散安定性に優れ、また水性インクジェット記録において普通紙のみならず光沢メディア上で発色性・定着性・光沢性が優れた鮮明な印字画像が得られる。ここで、上記範囲内でも顔料に対して分散ポリマー量が少ないと、この分散体を水性インクジェット記録用水性インクに用いた場合、分散体を比較的多く水性インク中に添加しても水性インク中の固形分濃度を低くできるため、ノズル先端での水性インク乾燥による目詰まりが発生しにくく、特に普通紙上において発色性に優れた水性インクを調製しやすいが、光沢メディア上での光沢性・定着性が得られにくい場合がある。また反対に、顔料に対して分散ポリマー量が多いと、普通紙上の発色性を高める目的で分散体を比較的多く水性インク中に添加した場合水性インク中の固形分濃度が高くなるため、ノズル先端での水性インク乾燥による目詰まりが発生しやすくなるが、光沢メディア上での光沢性・定着性が得られやすい。そのため、双方のバランスをみた場合、前記顔料として黒色系顔料を用いる場合は50:50〜70:30、黄色系顔料の場合は60:40〜80:20、赤色系顔料の場合は60:40〜90:10、青色系顔料の場合は40:60〜70:30の範囲がより好ましい。このように各々の顔料によって、好適な顔料と分散ポリマーの重量比の範囲が異なっている理由は、詳細には不明であるが、各々の顔料ではその粒子の表面状態が異なっており、それが分散ポリマーの吸着状態や分散体の表面状態に影響しているためと推定している。但しこの推定は本発明において限定されるものではない。
【0039】
以上述べた顔料と分散ポリマーを構成要素とした分散体を用いることによって、保存安定性に優れた水性インクジェット印刷に好適な水性インクとすることができる。更に、本発明の水性インクにおいて、後述する等の水溶性有機溶剤を含むことにより、普通紙や光沢メディア等の印刷媒体種によらずに、にじみが少なく定着性・色再現性の良好な画像を形成することができる。また、前述の分散体を筆記具用水性インクにも好適に用いることができる。
【0040】
また、前述の顔料をポリマーで包含した着色剤が少なくとも重合性基を有する分散剤と共重合性モノマーとの共重合体で該顔料を包含したものであることが好ましい。ここで、重合性基を有する分散剤とは少なくとも疎水基、親水基および重合性基を有するもので、重合性基はアクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基あるいはビニル基などであり、共重合性基も同じくクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基あるいはビニル基などになる。
【0041】
水性インクジェット記録用水性インクとしては粒径が比較的そろっていた方が目詰まりや吐出の安定性の観点から好ましいので、顔料をポリマーで包含した着色剤は、乳化重合または転相乳化法によって製造されることが好ましい。また、ポリマー中のベンゼン環が本発明の範囲にあり、好適な分散剤による好適な分散により、堅固なポリマーになり、分散安定性が得られ、長期に安定性が得られるので好ましい。
前述の顔料をポリマーで包含した分散体は、重合性基を有する分散剤で該顔料を分散させた後、該分散剤と共重合可能なモノマーと重合開始剤を用いて水中で乳化重合されたものであることが好ましい。
【0042】
(水性インク)
また、本発明の水性インクは、水性インクの記録媒体である紙等の記録メディアに対する浸透性を高める目的で浸透剤を添加する場合があり、更にその放置安定性の確保、水性インク吐出ヘッドからの安定吐出達成等をさらに向上させる目的で保湿剤、溶解助剤、浸透制御剤(浸透剤)、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防黴剤、腐食防止剤、分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート等種々の添加剤を添加する場合がある。
【0043】
(浸透剤)
浸透剤はその添加により印字物の乾燥性が向上し、連続して印刷しても前の印字部分が次の媒体の裏面に転写されることがなくなるため、特に印字記録の高速化を可能とする。更に水性インクジェットプリンタ用水性インクとして使用する場合、泡立ちが少ないこと、水性インクジェットヘッドのノズル内で乾燥し難い特性を有するものが特に好適である。
このような浸透剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、グリコールエーテル類、アルキレングリコール類から選ばれた1種又は2種以上であることが好ましい。これらの浸透剤を用いることで普通紙上のにじみを低減でき、光沢メディア上での線幅を適当な程度に調整することができる。
【0044】
浸透剤として好適に使用できるアセチレングリコール系界面活性剤、又はアセチレンアルコール系界面活性剤の具体的な製品名として、例えば、サーフィノールTG、サーフィノール104、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485、サーフィノール61、サーフィノール82(以上いずれもエアープロダクツ株式会社製)、もしくはオルフィンE1010、オルフィンE1004、オルフィンSTG(以上いずれも日信化学工業株式会社製)、あるいはアセチレノールE00、アセチレノールE40、アセチレノールE100(以上いずれも川研ファインケミカル株式会社製)等を挙げることができる。
【0045】
浸透剤として好適に使用できるグリコールエーテル類としてはとしては、ジエチレングリコールモノ(炭素数4〜8のアルキル)エーテル、トリエチレングリコールモノ(炭素数4〜8のアルキル)エーテル、プロピレングリコールモノ(炭素数3〜6のアルキル)エーテル、及びジプロピレングリコールモノ(炭素数3〜6のアルキル)エーテル等を挙げることができ、具体例としてジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノブチルエーテル等を挙げることができる。
【0046】
浸透剤として使用できるアルキレングリコールとしては、1,2−(炭素数4〜10のアルキル)ジオール、1,3−(炭素数4〜10のアルキル)ジオール1,5−(炭素数4〜10のアルキル)ジオール、1,6−(炭素数4〜10のアルキル)ジオール等を挙げることができ、具体例としては1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−プタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等を挙げることができる。
【0047】
前記のグリコールエーテル類及び/又はアルキレングリコール類は、これらの添加により印字の乾燥性が向上し、連続して印刷しても前の印字部分が次の媒体の裏面に転写されることがなくなるため、特に水性インクジェット記録にあっては高速印字が可能となる。また、前記のグリコールエーテル類及び/又はアルキレングリコール類は浸透剤としての効果を有する他、他の難溶性の水性インク添加剤に対する溶解助剤としての特性も備える。例えば前述のアセチレングリコール類のうち単独では水への溶解性が低い化合物を使用する場合、グリコールエーテル類を併用して添加することでアセチレングリコール類の溶解性を高めその添加量を増やすことできる。
【0048】
更にまた、グリコールエーテル類、及び/又はアルキレングリコール類は少なからず殺菌・防菌作用を有する為、水性インク中に3〜5%程度含有することで、微生物、菌類等の発生を抑えることができるという効果も有する。
本発明の水性インクにおいては、浸透剤として前述のアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、グリコールエーテル類、アルキレングリコール類を、単独又は併用して使うことができ、水性インクに対する添加量は、0.01〜30重量%が好ましいが、0.1〜10重量%がより好ましい。添加量が0.01%未満では印字品質向上の効果が低くなり、30重量%を越えると水性インク吐出ヘッドのノズル周りを不均一に濡らし、安定吐出が困難になる。
【0049】
前述のアセチレングリコール系界面活性剤およびアセチレンアルコール系界面活性剤から選ばれた1種以上を0.1%以上5%以下含むことが好ましい。5%を超えると印字品質の効果が頭打ちであり、添加しても粘度が上昇して使いづらくなり、ヘッドの先端に水性インクが付着しやすくなり、印字が乱れやすくなる。0.1%未満では印字品質向上の効果が低くなる。より好ましい添加量は0.15〜2%である。
【0050】
そして、少なくとも前述のアセチレングリコール系界面活性剤およびアセチレンアルコール系界面活性剤から選ばれた1種以上と、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上とを同時に添加してなることが好ましい。アセチレングリコールおよび/またはアセチレンアルコール系界面活性剤と、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上と、は同時に用いる方が印字品質が向上する。
【0051】
そして、前述のアセチレングリコール系界面活性剤およびアセチレンアルコール系界面活性剤から選ばれた1種以上が0〜0.5%であり、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上が1%以上であることが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤およびアセチレンアルコール系界面活性剤から選ばれた1種以上は少量で浸透性を向上させる効果がある。従って、0.5%以下であり、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上は1%以上であることで印字品質がさらに向上する。
その他、本発明の水性インクの浸透剤としては、同様に、前述のアルコール類、ノニオン性界面活性剤、水溶性有機溶剤、その他の界面活性剤を使用することができる。
【0052】
本発明で用いる水性インクにおいては、これら前記の浸透剤を、1種で又は2種以上を組み合わせて、使用することができる。
特に、前述のアルキレングリコールモノアルキルエーテルが繰り返し単位10以下のアルキレングリコールであって、炭素数3〜10のアルキルエーテルであることが好ましい。その中でも、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエ−テル、及び/又は(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルであることが好まく、前述の1,2−アルキレングリコールが1,2−ヘキサンジオール、及び/又は1,2−ペンタンジオールであることが好ましい。
また、前述のジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上からなる物質の添加量が0.5%以上30%以下であることが好ましい。より好ましくは1%以上15%以下である。
【0053】
そして、少なくとも前述のアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤から選ばれた1種以上と、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上を同時に添加することが印字品質上好ましい。
そして、前述のアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤から選ばれた1種以上が0.01〜1.0%で、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上が1%以上であることが好ましい。アセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤から選ばれた1種以上は少量で浸透性を向上させる効果がある。従って、1.0%以下の添加量であっても、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上は1%以上添加されていることで印字品質がさらに向上する。
【0054】
前述の1,2−アルキレングリコールが炭素数4〜10の1,2−アルキレングリコールであり、添加量が10%以下であることが好ましい。しかし、筆記具用としてはこれに限定されない。より好ましくは1%以上8%以下である。
又、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテルとはジエチレングリコールモノブチルエーテルおよび/またはトリエチレングリコールモノブチルエーテルを示すが、印字品質改良のための浸透性の必要レベルとして、20%以下の添加が好ましい。より好ましくは0.5〜10%である。
【0055】
本発明の水性インクにおいては、前記浸透剤の助剤として、水性インクの浸透性を制御し、更にノズルの耐目詰まり性、水性インクの保湿性、あるいは浸透剤の溶解性を向上する目的で前述もしくは他の界面活性剤、並びに、高沸点低揮発性の多価アルコール類、あるいはそれらのモノエーテル化物、ジエーテル化物、若しくはエステル化物等の親水性高沸点低揮発性溶媒等を、1種で又は2種以上を組合せて、使用することができる。より好ましくは1%以上8%以下である。
【0056】
前述の1,2−アルキレングリコールが炭素数4〜10の1,2−アルキレングリコールであり、添加量が10%以下であることが好ましい。10%を超えると粘度上昇により水性インクジェット用としては使いづらくなり、それ以上添加しても印字品質向上の効果がない。しかし、筆記具用としてはこれに限定されない。
【0057】
また、前述の1,2−アルキレングリコールが1,2−ペンタンジオールまたは1,2−ヘキサンジオールであることが好ましい。1,2−ペンタンジオールは3〜10%以下が好ましい。3%未満のものは浸透性の向上の効果が低く、そのためにじみの発生が多い。炭素数が10を超えると粘度が高くなり本発明のような水溶性水性インクには使用しづらい。1,2−ヘキサンジオールは0.5〜10%が好ましい。0.5%未満のものは浸透性の向上の効果が低く、炭素数が10を超えると水溶性が低いので本発明のような水溶性水性インクには使用しづらい。前述のアセチレングリコールおよび/またはアセチレンアルコール系界面活性剤の添加量が0.5%以上のときはその1,2−アルキレングリコールとの比が1:0〜1:50の間が印字品質の観点から好ましく、1,2−アルキレングリコールがアセチレングリコールおよび/またはアセチレンアルコール系界面活性剤の50倍を超えると印字品質の向上効果が頭打ちでありそれ以上添加しても効果が低く、逆に粘度上昇の弊害を生じる。
【0058】
そして、前述の(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルを10%以下含むことが好ましい。10%を超えると印字品質向上の効果が頭打ちであり、逆に粘度上昇の弊害と水溶性が低いので溶解助剤の添加が必要になってくる。より好ましくは0.5〜5%である。
前述のアセチレングリコールおよび/またはアセチレンアルコール系界面活性剤と(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルの比が1:0〜1:10であることが好ましい。(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルがアセチレングリコールおよび/またはアセチレンアルコール系界面活性剤の10倍を超えると印字品質の向上効果が頭打ちでありそれ以上添加しても効果が低く、逆に粘度上昇の弊害を生じる。
【0059】
前述のジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテルを20%以下含むことが好ましい。20%を超えると粘度上昇により使いづらくなり、それ以上添加しても印字品質向上の効果がない。より好ましくは1%以上15%以下である。
ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテルとはジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGmBE)および/またはトリエチレングリコールモノブチルエーテル(TEGmBE)を示すが、印字品質改良のための浸透性の必要レベルとして、20%以下の添加が好ましい。20%を超えると印字品質向上の効果が頭打ちであり、逆に粘度上昇の弊害が生じる。より好ましくは0.5〜10%である。
【0060】
前述のアセチレングリコールおよび/またはアセチレンアルコール系界面活性剤の添加量が0.5%以上であり、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテルとの比が1:0〜1:50であることが好ましい。アセチレングリコールおよび/またはアセチレンアルコール系界面活性剤の50倍まで添加することが印字品質の観点から好ましい。ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテルはアセチレングリコール系の界面活性剤の溶解性を向上させることと印字品質の向上に役立つが、50倍を超える添加量ではそれらの効果が頭打ちになるので水性インクジェット用としては使用しにくくなる。
【0061】
(保湿剤)
水性インクジェットのノズル面やペン先で乾燥を抑えるために水溶性のあるグリコール類としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、チオジグリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール、及び、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンチオール等がある。
【0062】
又、本発明においてはノズル前面で水性インクが乾燥して詰まることを抑制するために、多くの種類の糖類を用いることもできる。単糖類および多糖類があり、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ラクトース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトース、マルトース、セロビオース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の他にアルギン酸およびその塩、シクロデキストリン類、セルロース類を用いることができる。そしてその添加量は0.05%以上で30%以下がよい。一般的な糖類である単糖類および多糖類のグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ラクトース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトース、マルトース、セロビオース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等のより好ましい添加量は3〜20%である。アルギン酸およびその塩、シクロデキストリン類、セルロース類は水性インクにしたときの粘度が高くなり過ぎない程度の添加量にする必要がある。
【0063】
その他に水と相溶性を有し、水性インクに含まれる水との溶解性の低いグリコールエーテル類や水性インク成分の溶解性を向上させ、さらに被記録体たとえば紙に対する浸透性を向上させ、あるいはノズルやペン先の目詰まりを防止するために用いることのできるものとして、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1から4のアルキルアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルなどのグリコールエーテル類、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホランなどがあり、これらを適宜選択して使用することができる。
【0064】
(その他の添加剤)
本発明における水性インクジェット記録用水性インクは、その放置安定性の確保、水性インク吐出ヘッドからの安定吐出達成等の目的で保湿剤、溶解助剤、浸透制御剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防黴剤、腐食防止剤、分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート等種々の添加剤を添加する場合がある。以下、それらを例示する。
【0065】
水性インクジェットのノズル面や筆記具のペン先で乾燥を抑えるために水溶性のあるグリコール類を添加することが好ましく、その例としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトールなどがある。
また、本発明においてはノズル前面で水性インクが乾燥して詰まることを抑制するために、多くの種類の糖類を用いることもできる。単糖類および多糖類があり、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ラクトース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトース、マルトース、セロビオース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の他にアルギン酸およびその塩、シクロデキストリン類、セルロース類を用いることができる。そしてその添加量は0.05%以上で30%以下がよい。0.05%未満では水性インクがヘッドの先端で乾燥して詰まる目詰まり現象を回復させる効果は少なく、30%を超えると水性インクの粘度が上昇して適切な印字ができなくなる。一般的な糖類である単糖類および多糖類のグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ラクトース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトース、マルトース、セロビオース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等のより好ましい添加量は3〜20%である。アルギン酸およびその塩、シクロデキストリン類、セルロース類は水性インクにしたときの粘度が高くなり過ぎない程度の添加量にする必要がある。
【0066】
その他に水と相溶性を有し、水性インクに含まれる水との溶解性の低いグリコールエーテル類や水性インク成分の溶解性を向上させ、さらに被記録体たとえば紙に対する浸透性を向上させ、あるいはノズルやペン先の目詰まりを防止するために用いることのできるものとして、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1から4のアルキルアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルなどのグリコールエーテル類、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホランなどがあり、これらを適宜選択して使用することができる。
【0067】
また、本発明による水性インクにはさらに紙や特殊紙等の媒体への浸透性を制御するため、他の界面活性剤を添加することも可能である。添加する界面活性剤は本発明の水性インク系との相溶性のよい界面活性剤が好ましく、界面活性剤のなかでも浸透性が高く安定なものがよい。その例としては、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などがあげられる。両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシンその他イミダゾリン誘導体などがある。非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル)などのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系、その他フッ素アルキルエステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩などの含フッ素系界面活性剤などがある。
【0068】
また、pH調整剤、溶解助剤あるいは酸化防止剤としてジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、モルホリンなどのアミン類およびそれらの変成物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどの無機塩類、水酸化アンモニウム、4級アンモニウム水酸化物(テトラメチルアンモニウムなど)、炭酸(水素)カリウム、炭酸(水素)ナトリウム、炭酸(水素)リチウムなどの炭酸塩類その他燐酸塩など、あるいはN−メチル−2−ピロリドン、尿素、チオ尿素、テトラメチル尿素などの尿素類、アロハネート、メチルアロハネートなどのアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類など、L−アスコルビン酸およびその塩などがある。また、市販の酸化防止剤、紫外線吸収剤なども用いることができる。その例としてはチバガイギーのTinuvin328、900、1130、384、292、123、144、622、770、292、Irgacor252、153、Irganox1010、1076、1035、MD1024など、あるいはランタニドの酸化物などがある。
【0069】
さらに、粘度調整剤としては、ロジン類、アルギン酸類、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、アラビアゴムスターチなどがある。
pH調整剤は、ヘッド部材の耐久性と水性インクの安定性の観点から、水性インクのpH値が約7〜10になる量であることが好ましい。
【0070】
又、本発明の顔料分散液、これを含有する水性インクは、必要に応じて、その他の添加剤、例えば、防カビ剤、防腐剤、又は防錆剤として、安息香酸、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、ソルビン酸、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン、3,4−イソチアゾリン−3−オン、もしくは4、4−ジメチルオキサゾリジン等のオキサゾリジン系化合物、あるいはアルキルイソチアゾロン、クロルアルキルイソチアゾロン、ベンズイソチアゾロン、ブロモニトロアルコールおよび/またはクロルキシレノール等を含むことができる。更に、ノズル乾燥防止の目的で、尿素、チオ尿素、及び/又はエチレン尿素等を含むこともできる。
【0071】
(水性インク物性)
本発明の水性インクの諸物性は適宜制御することができるが、好ましい態様によれば、水性インクの粘度は10mPa・秒以下であるのが好ましく、より好ましくは5mPa・秒以下(20℃)である。この粘度範囲の水性インクは、水性インク吐出ヘッドから安定に吐出される。また、水性インクの表面張力も適宜制御することができるが、25〜50mN/m(20℃)であるのが好ましく、より好ましくは30〜40mN/m(20℃)である。
【0072】
(水性インクのエージング処理)
本発明の水性インクに前述の界面活性剤や水溶性有機溶剤を添加した場合、添加後の各物性値が安定化する迄に時間を要する場合がある。このような場合、必要に応じてインクに加熱等のエージング処理を実施しても良い。
このようなエージング処理を実施する場合の加熱温度は室温(25℃)以上で100℃以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは40℃以上80℃以下である。エージング処理を実施する時間は数分程度から数日程度の範囲であることが好ましく、より好ましくは数時間以上24時間以下の範囲である。但し、このようなエージングの処理条件は使用する顔料や樹脂の種類によっても異なる為、必要な効果が得られれば、エージング処理条件は特に限定はしない。
例えば、加熱温度を70℃、処理時間を12〜24時間程度のエージング処理を実施することで、インク各物性を安定化することができる。
【0073】
また、本発明における水性インクのゼータ電位は、分散体濃度が0.001〜0.01重量%になるようにイオン交換水で希釈した希釈液として測定した場合の、20℃、pH8〜pH9における分散体のゼータ電位の絶対値が40mV以上であることが好ましい。より好ましくは45mV以上であり、更により好ましいゼータ電位の絶対値は50mV以上である。ゼータ電位の絶対値が20mV以下の分散体の場合、水性インクの保存安定性が低下する。
【実施例】
【0074】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
本実施例で得られた各測定値(芳香環量、顔料:ポリマー比、平均粒径、表面張力)は、以下の方法で測定した。
【0075】
「芳香環量の測定」
各実施例、又は比較例で得た分散ポリマー溶液の一部を取り出し、溶媒成分を留去してポリマー成分のみを取り出し、DMSO−d6に溶解させ、13C−NMR及び1H−NMR(ブルカー社(ドイツ)製AMX400)を使用して、ポリマー中の芳香環量を測定した。
「顔料:ポリマー比の測定」
各実施例、又は比較例で得た分散液の一部を取り出し、0.1mol/l濃度HClを添加して分散体のみを酸析後、乾燥重量を測定した。次に、アセトンを用いたソックスレー抽出法で分散ポリマーのみを取り出し、乾燥重量を測定することで、顔料:ポリマーの重量比を算出した。
【0076】
「平均粒径の測定」
各実施例、又は比較例で得た水性インクの分散体濃度が0.001〜0.01重量%に(インクにより測定時の最適濃度が若干異なる為)なるようにイオン交換水で希釈し、その分散粒子の20℃における平均粒径を粒度分布計(大塚電子社製DLS−800)で測定した。
【0077】
(実施例1)
(1)分散液の製造:分散液1
本実施例1に用いる分散液1の製造には無機顔料であるカーボンブラック顔料のカラーブラックS170(デグサ・ヒュルス社製)を用いた。
まず、攪拌機、温度計、還流管および滴下ロートをそなえた反応容器を窒素置換した後、スチレン22部、α−メチルスチレン5部、ブチルメタクリレート15部、ラウリルメタクリレート10部、アクリル酸2.5部、t−ドデシルメルカプタン0.3部を入れて70℃に加熱し、別に用意したスチレン150部、アクリル酸15部、ブチルメタクリレート50部、t−ドデシルメルカプタン1部、メチルエチルケトン20部およびアゾビスイソブチロニトリル3部を滴下ロートに入れて4時間かけて反応容器に滴下しながら分散ポリマーを重合反応させた。次に、反応容器にメチルエチルケトンを添加して40%濃度の分散ポリマー溶液を作成した。
この分散ポリマー溶液の一部と取り出し、溶媒成分を留去後、全重量に対する芳香環の割合を前述の「芳香環量の測定」に記載の方法で測定したところ、分散ポリマー全重量に対する芳香環量は58%であった。
【0078】
上記分散ポリマー溶液40部とカーボンブラック顔料であるカラーブラックS170(デグサ・ヒュルス社製)30部、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100部、メチルエチルケトン35部を混合し、ホモジナイザーで30分以上分散処理し、イオン交換水を350部添加して、さらに1時間分散する。そして、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部を留去後、ブフナー漏斗で濾別と洗浄を繰り返す。次に濾別された顔料内包樹脂分散体に、イオン交換水、及び中和剤として水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら適宜加えてpH7.5に調整してから、平均孔径0.5μmのフィルターで濾過することで、分散体1(カーボンブラック顔料を芳香環量が58%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液1を得た。
分散液1における顔料:ポリマー比は、前記「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した結果、80:20であった。
【0079】
(2)インクの調整
本実施例1では、前記実施例1(1)で得た分散液1、EO変性シリコーンであるSH−3771M(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製;HLB値=13)、アセチレングリコール系界面活性剤であるオルフィンE1010(日信化学工業株式会社製)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルであるジエチレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2−アルキレングリコールである1,2−ペンタンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
なお、<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体1の平均粒径(単位:nm)を示す。
また、下記本実施例1のインク組成中の「残量」として添加されるイオン交換水には、インクの腐食防止のためプロキセルXL−2(アビシア社製)、インクジェットヘッド部材の腐食防止のためベンゾトリアゾール、及びインク系中の金属イオンの影響を低減するためにEDTA・2Na塩を、それぞれインク全重量に対して0.05%、0.02%、0.04%となるように添加したものを用いた。
【0080】
分散体1<120> 8.0 %
SH−3771M 0.01 %
オルフィンE1010 0.6 %
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0 %
1,2−ペンタンジオール 2.5 %
ジエチレングリコール 3.0 %
グリセリン 10.0 %
トリメチロールプロパン 6.0 %
トリプロパノールアミン 0.3 %
イオン交換水 残量
【0081】
(3)印字品質評価
印字品質評価には圧電素子(ピエゾ素子)を使用したインクジェットヘッドによりインクを吐出するインクジェットプリンタPX−V700(セイコーエプソン株式会社製)を使用して、前記実施例1(2)で調整したインクの印字評価を実施した。
評価紙として、ヨーロッパ、アメリカおよび日本の市販されている普通の紙を使用した。具体的には(a)Conqueror紙、(b)Reymat紙、(c)Mode Copy紙、(d)Rapid Copy紙、(e)Xerox P紙、(f)Xerox 4024紙、(g)Xerox 10紙、(h)Neenha Bond紙、(i)Ricopy 6200紙、及び(j)Hammer mill Copy Plus紙を使用した。
なお、評価は目視により行い、以下の評価基準に基づいて行った。印字品質評価の結果を表2に示す。
【0082】
A:全てのポイントの文字において、にじみがわからない。
B:5ポイント以下の文字で、わずかににじみが認められる。
C:にじみのため、5ポイント以下の文字が太く見える。
D:にじみが著しく、5ポイント以下の文字が判別できない。
【0083】
(4)定着性評価
前記実施例1(3)と同様のプリンタ、及びインクを使用して、光沢メディアへに対する定着性の評価を実施した。
評価用の光沢メディアとして、ヨーロッパ、アメリカ及び日本の市販されている光沢メディアを使用した。具体的には、1)フォトプリント紙2、2)MC写真用紙( 1)、2)とも商品名、セイコーエプソン株式会社製)、3)Ink Jet Paper Photo Glossy Paper Super Photo Grade、4)Ink Jet Paper Photo Paper High Grade( 3)、4)とも商品名、富士写真フィルム株式会社製)、5)Ink Jet Photographic Quality Paper Photo Weight(商品名、コダック社製)、6)Photo like QP QP20A4GH(商品名、コニカ株式会社製)を使用した。
評価は、印刷後30分間20〜25℃/40〜60%RH下で乾燥させた印刷物を用い、指で擦った後の文字のずれ・かすれ状態を目視で観察する事により行なった。以下に評価判断基準を示す。定着性評価の結果を表3に示す。
【0084】
A:ずれ、かすれが認められない。
B:わずかにずれが認められるが、実用上問題ないレベル。
C:ずれ、あるいはかすれが認められる。
D:ずれ、かすれが甚だしく、文字が判読し難い。
【0085】
(5)吐出安定性評価
前記実施例1(4)と同様のプリンタ、及びインクを使用して、35℃/20%の環境下でA4版Xerox P紙に100ページ連続印字して、印刷の乱れ具合を観察することで吐出安定性を評価した。
なお、評価は目視により行い、以下の評価基準に基づいて行った。吐出安定性評価の結果を表4に示す。
【0086】
A:全く印刷乱れが発生しない。
B:印刷乱れが見られたが10箇所未満である。
C:10箇所以上100箇所未満の範囲で印刷乱れがある。
D:100箇所以上印刷乱れが発生した。
【0087】
(6)保存安定性評価
前記実施例1(2)で調整したインクをガラス瓶に入れ密閉後、それぞれ60℃/1週間、−20℃/1週間放置して、放置前後におけるインクの発生異物と物性値変動(粘度)について評価した。
なお、評価は以下の評価基準に基づいて行った。保存安定性評価結果を表4に示す。
【0088】
A:60℃あるいは−20℃放置後の異物量・物性値と放置前のそれとの比が、0.99〜1.01の範囲内である。
B:比が0.95〜0.99、あるいは1.01〜1.05の範囲内である(実用レベル)。
C:比が0.90〜0.95、あるいは1.05〜1.10の範囲内である。
D:比が0.90未満、あるいは1.10より大きい。
【0089】
(実施例2)
(1)分散液の製造:分散液2
本実施例2に用いる分散液2の製造には、有機顔料である不溶性モノアゾイエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー74)を用いた。それ以外は、前記実施例1(1)に記載と同様であるが、ポリマーの合成条件等を若干変更した方法により、分散体2(不溶性モノアゾイエロー顔料を芳香環量が25%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液2を得た。
分散液2における顔料:ポリマー比は、実施例1(1)と同様に、前述の「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した結果、75:25であった。
【0090】
(2)インクの調整
本実施例2では、前記実施例2(1)で得た分散液2、EO変性シリコーンであるSH−3772M(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製;HLB値=6)、アセチレングリコール系界面活性剤であるサーフィノール440(エアープロダクツ株式会社製)とオルフィンSTG(日信化学工業株式会社製)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルであるトリエチレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2−アルキレングリコールである1,2−ヘキサンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
【0091】
なお、<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体2の平均粒径(単位:nm)を示す。
また、下記本実施例2のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2(アビシア社製)を0.05%、ベンゾトリアゾールを0.02%、及びEDTA・2Na塩を0.04%となるように添加したものを用いた。
【0092】
分散体2<100> 8.0 %
SH−3772M 0.005%
サーフィノール440 0.4 %
オルフィンSTG 0.1 %
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0 %
1,2−ヘキサンジオール 2.0 %
2−ピロリドン 3.0 %
グリセリン 10.0 %
トリメチロールエタン 3.0 %
トリプロパノールアミン 0.1 %
イオン交換水 残量
【0093】
(3)印字品質評価
前記実施例1(3)と同様にインクジェットプリンタPX−V700(セイコーエプソン株式会社製)を使用して、前記実施例2(2)で調整したインクについて、前記実施例1(3)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(3)と同様の評価基準により印字品質評価を行った。なお、評価の結果は表2に示す。
(4)定着性評価
前記実施例2(3)と同様のプリンタ、及びインクを使用して、前記実施例1(4)と同様の光沢メディアを用いて、前記実施例1(4)と同様の評価基準により定着性評価を行った。なお、評価の結果は表3に示す。
【0094】
(5)吐出安定性評価
前記実施例2(4)と同様のプリンタ、及びインクを使用して、前記実施例1(5)と同様の評価方法で、前記実施例1(5)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、評価の結果は表4に示す。
(6)保存安定性評価
前記実施例2(2)で調整したインクについて、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、評価の結果は表4に示す。
【0095】
(実施例3)
(1)分散液の製造:分散液3
本実施例3に用いる分散液3の製造には、有機顔料であるキナクリドンマゼンタ顔料(C.I.ピグメントマゼンタ122)を用いた。それ以外は、前記実施例1(1)に記載と同様であるが、ポリマーの合成条件等を若干変更した方法により、分散体3(キナクリドンマゼンタ顔料を芳香環量が25%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液3を得た。
分散液3における顔料:ポリマー比は、実施例1(1)と同様に、前述の「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した結果、75:25であった。
【0096】
(2)インクの調整
本実施例3では、前記実施例3(1)で得た分散液3、EO変性シリコーンであるSH−3773M(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製;HLB値=8)、アセチレングリコール系界面活性剤であるサーフィノール104(エアープロダクツ株式会社製)、及び1,2−アルキレングリコールである1,2−ヘキサンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
なお、<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体3の平均粒径(単位:nm)を示す。
また、下記本実施例3のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2(アビシア社製)を0.05%、ベンゾトリアゾールを0.02%、及びEDTA・2Na塩を0.04%となるように添加したものを用いた。
【0097】
分散体3<100> 7.4 %
SH−3773M 0.005%
サーフィノール104 0.16 %
1,2−ヘキサンジオール 3.5 %
2−ピロリドン 2.0 %
グリセリン 13.0 %
トリメチロールプロパン 8.0 %
イオン交換水 残量
【0098】
(3)印字品質評価
前記実施例1(3)と同様にインクジェットプリンタPX−V700(セイコーエプソン株式会社製)を使用して、前記実施例3(2)で調整したインクについて、前記実施例1(3)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(3)と同様の評価基準により印字品質評価を行った。なお、評価の結果は表2に示す。
(4)定着性評価
前記実施例3(3)と同様のプリンタ、及びインクを使用して、前記実施例1(4)と同様の光沢メディアを用いて、前記実施例1(4)と同様の評価基準により定着性評価を行った。なお、評価の結果は表3に示す。
【0099】
(5)吐出安定性評価
前記実施例3(4)と同様のプリンタ、及びインクを使用して、前記実施例1(5)と同様の評価方法で、前記実施例1(5)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、評価の結果は表4に示す。
(6)保存安定性評価
前記実施例3(2)で調整したインクについて、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、評価の結果は表4に示す。
【0100】
(実施例4)
(1)分散液の製造:分散液4
本実施例4に用いる分散液4の製造には、有機顔料であるフタロシアニンブルー顔料(C.I.ピグメントブルー15:4)を用いた。それ以外は、前記実施例1(1)に記載と同様であるが、ポリマーの合成条件等を若干変更した方法により、分散体4(フタロシアニンブルー顔料を芳香環量が25%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液4を得た。
分散液4における顔料:ポリマー比は、実施例1(1)と同様に、前述の「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した結果、50:50であった。
【0101】
(2)インクの調整
本実施例4では、前記実施例4(1)で得た分散液4、EO変性シリコーンであるSH−3775M(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製;HLB値=5)、アセチレングリコール系界面活性剤であるサーフィノール104(エアープロダクツ株式会社製)、及び1,2−アルキレングリコールである1,2−ペンタンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
なお、<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体4の平均粒径(単位:nm)を示す。
また、下記本実施例4のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2(アビシア社製)を0.05%、ベンゾトリアゾールを0.02%、及びEDTA・2Na塩を0.04%となるように添加したものを用いた。
【0102】
分散体4<100> 7.4 %
SH−3775M 0.001%
サーフィノール104 0.16 %
1,2−ペンタンジオール 3.5 %
2−ピロリドン 2.0 %
グリセリン 13.0 %
トリメチロールプロパン 6.0 %
イオン交換水 残量
【0103】
(3)印字品質評価
前記実施例1(3)と同様にインクジェットプリンタPX−V700(セイコーエプソン株式会社製)を使用して、前記実施例4(2)で調整したインクについて、前記実施例1(3)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(3)と同様の評価基準により印字品質評価を行った。なお、評価の結果は表2に示す。
(4)定着性評価
前記実施例4(3)と同様のプリンタ、及びインクを使用して、前記実施例1(4)と同様の光沢メディアを用いて、前記実施例1(4)と同様の評価基準により定着性評価を行った。なお、評価の結果は表3に示す。
【0104】
(5)吐出安定性評価
前記実施例4(4)と同様のプリンタ、及びインクを使用して、前記実施例1(5)と同様の評価方法で、前記実施例1(5)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、評価の結果は表4に示す。
(6)保存安定性評価
前記実施例4(2)で調整したインクについて、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、評価の結果は表4に示す。
【0105】
(実施例5)
(1)分散液の製造:分散液5
本実施例5に用いる分散液5の製造には、有機顔料であるペリノンオレンジ顔料(C.I.ピグメントオレンジ43)を用いた。それ以外は、前記実施例1(1)に記載と同様であるが、ポリマーの合成条件等を若干変更した方法により、分散体5(ペリノンオレンジ顔料を芳香環量が25%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液5を得た。
分散液5における顔料:ポリマー比は、実施例1(1)と同様に、前述の「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した結果、75:25であった。
【0106】
(2)インクの調整
本実施例5では、前記実施例5(1)で得た分散液5、EO変性シリコーンであるKF−6017(信越化学工業株式会社製;HLB値=4.5)、アセチレングリコール系界面活性剤であるサーフィノール420(エアープロダクツ株式会社製)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルであるトリエチレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2−アルキレングリコールである1,2−ヘキサンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
なお、<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体5の平均粒径(単位:nm)を示す。
また、下記本実施例5のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2(アビシア社製)を0.05%、ベンゾトリアゾールを0.02%、及びEDTA・2Na塩を0.04%となるように添加したものを用いた。
【0107】
分散体5<100> 7.4 %
KF−6017 0.001%
サーフィノール420 0.14 %
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0 %
1,2−ヘキサンジオール 2.5 %
2−ピロリドン 2.0 %
グリセリン 13.0 %
トリメチロールプロパン 3.0 %
イオン交換水 残量
【0108】
(3)印字品質評価
前記実施例1(3)と同様にインクジェットプリンタPX−V700(セイコーエプソン株式会社製)を使用して、前記実施例5(2)で調整したインクについて、前記実施例1(3)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(3)と同様の評価基準により印字品質評価を行った。なお、評価の結果は表2に示す。
(4)定着性評価
前記実施例5(3)と同様のプリンタ、及びインクを使用して、前記実施例1(4)と同様の光沢メディアを用いて、前記実施例1(4)と同様の評価基準により定着性評価を行った。なお、評価の結果は表3に示す。
【0109】
(5)吐出安定性評価
前記実施例5(4)と同様のプリンタ、及びインクを使用して、前記実施例1(5)と同様の評価方法で、前記実施例1(5)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、評価の結果は表4に示す。
(6)保存安定性評価
前記実施例5(2)で調整したインクについて、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、評価の結果は表4に示す。
【0110】
(実施例6)
(1)分散液の製造:分散液6
本実施例6に用いる分散液6の製造には、有機顔料であるフタロシアニングリーン顔料(C.I.ピグメントグリーン7)を用いた。それ以外は、前記実施例1(1)に記載と同様であるが、ポリマーの合成条件等を若干変更した方法により、分散体6(フタロシアニングリーン顔料を芳香環量が25%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液6を得た。
分散液6における顔料:ポリマー比は、実施例1(1)と同様に、前述の「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した結果、60:40であった。
【0111】
(2)インクの調整
本実施例6では、前記実施例6(1)で得た分散液6、EO変性シリコーンであるKF−352A(信越化学工業株式会社製;HLB値=7)、アセチレングリコール系界面活性剤であるサーフィノールTG(エアープロダクツ株式会社製)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルであるトリエチレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2−アルキレングリコールである1,2−ペンタンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
なお、<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体6の平均粒径(単位:nm)を示す。
また、下記本実施例6のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2(アビシア社製)を0.05%、ベンゾトリアゾールを0.02%、及びEDTA・2Na塩を0.04%となるように添加したものを用いた。
【0112】
分散体6<100> 6.5 %
KF−352A 0.05 %
サーフィノールTG 0.15 %
1,2−ペンタンジオール 3.0 %
2−ピロリドン 3.0 %
グリセリン 15.0 %
トリメチロールエタン 3.0 %
トリエタノールアミン 0.1 %
イオン交換水 残量
【0113】
(3)印字品質評価
前記実施例1(3)と同様にインクジェットプリンタPX−V700(セイコーエプソン株式会社製)を使用して、前記実施例6(2)で調整したインクについて、前記実施例1(3)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(3)と同様の評価基準により印字品質評価を行った。なお、評価の結果は表2に示す。
(4)定着性評価
前記実施例6(3)と同様のプリンタ、及びインクを使用して、前記実施例1(4)と同様の光沢メディアを用いて、前記実施例1(4)と同様の評価基準により定着性評価を行った。なお、評価の結果は表3に示す。
【0114】
(5)吐出安定性評価
前記実施例6(4)と同様のプリンタ、及びインクを使用して、前記実施例1(5)と同様の評価方法で、前記実施例1(5)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、評価の結果は表4に示す。
(6)保存安定性評価
前記実施例6(2)で調整したインクについて、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、評価の結果は表4に示す。
【0115】
(実施例7)
(1)分散液の製造:分散液7
本実施例7に用いる分散液7の製造には、有機顔料であるベンズイミダゾロンブラウン顔料(C.I.ピグメントブラウン32)を用いた。それ以外は、前記実施例1(1)に記載と同様であるが、ポリマーの合成条件等を若干変更した方法により、分散体7(ベンズイミダゾロンブラウン顔料を芳香環量が25%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液7を得た。
分散液7における顔料:ポリマー比は、実施例1(1)と同様に、前述の「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した結果、75:25であった。
【0116】
(2)インクの調整
本実施例7では、前記実施例7(1)で得た分散液7、EO変性シリコーンであるSH−3773MおよびKF−3017、アセチレングリコール系界面活性剤であるサーフィノール420(エアープロダクツ株式会社製)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルであるトリエチレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2−アルキレングリコールである1,2−ヘキサンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
なお、<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体7の平均粒径(単位:nm)を示す。
また、下記本実施例7のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2(アビシア社製)を0.05%、ベンゾトリアゾールを0.02%、及びEDTA・2Na塩を0.04%となるように添加したものを用いた。
【0117】
分散体7<100> 6.4 %
SH−3773M 0.003%
KF−3017 0.002%
サーフィノール420 0.14 %
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 1.0 %
1,2−ヘキサンジオール 2.5 %
2−ピロリドン 2.0 %
グリセリン 8.0 %
トリメチロールプロパン 10.0 %
イオン交換水 残量
【0118】
(3)印字品質評価
前記実施例1(3)と同様にインクジェットプリンタPX−V700(セイコーエプソン株式会社製)を使用して、前記実施例7(2)で調整したインクについて、前記実施例1(3)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(3)と同様の評価基準により印字品質評価を行った。なお、評価の結果は表2に示す。
(4)定着性評価
前記実施例7(3)と同様のプリンタ、及びインクを使用して、前記実施例1(4)と同様の光沢メディアを用いて、前記実施例1(4)と同様の評価基準により定着性評価を行った。なお、評価の結果は表3に示す。
【0119】
(5)吐出安定性評価
前記実施例7(4)と同様のプリンタ、及びインクを使用して、前記実施例1(5)と同様の評価方法で、前記実施例1(5)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、評価の結果は表4に示す。
(6)保存安定性評価
前記実施例7(2)で調整したインクについて、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、評価の結果は表4に示す。
【0120】
(実施例8)
(1)分散液の製造:分散液8
本実施例8に用いる分散液8の製造には、有機顔料であるキナクリドンバイオレット顔料(C.I.ピグメントバイオレット19)を用いた。それ以外は、前記実施例1(1)に記載と同様であるが、ポリマーの合成条件等を若干変更した方法により、分散体8(キナクリドンバイオレット顔料を芳香環量が25%であるポリマーにより包含した分散体)を20%含有する分散液8を得た。
分散液8における顔料:ポリマー比は、実施例1(1)と同様に、前述の「顔料:ポリマー比の測定」に記載の方法で測定した結果、80:20であった。
【0121】
(2)インクの調整
本実施例8では、前記実施例8(1)で得た分散液8、EO変性シリコーンを約8%含有するFormBan MS−575(Ultra Addives Inc.製;含有EO変性シリコーンのHLB値=5)、アセチレングリコール系界面活性剤であるサーフィノール104(エアープロダクツ株式会社製)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルであるトリエチレングリコールモノブチルエーテル、及び1,2−アルキレングリコールである1,2−ヘキサンジオールを使用した。具体的な組成を以下に示す。
なお、<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体8の平均粒径(単位:nm)を示す。
また、下記本実施例8のインク組成中において「残量」として添加されるイオン交換水には、実施例1(2)と同様に、インク全重量に対してプロキセルXL−2(アビシア社製)を0.05%、ベンゾトリアゾールを0.02%、及びEDTA・2Na塩を0.04%となるように添加したものを用いた。
【0122】
分散体8<100> 7.5 %
FormBan MS−575 0.005%
サーフィノール104 0.16 %
1,2−ヘキサンジオール 3.0 %
2−ピロリドン 2.0 %
グリセリン 15.0 %
トリメチロールプロパン 5.0 %
イオン交換水 残量
【0123】
(3)印字品質評価
前記実施例1(3)と同様にインクジェットプリンタPX−V700(セイコーエプソン株式会社製)を使用して、前記実施例8(2)で調整したインクについて、前記実施例1(3)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(3)と同様の評価基準により印字品質評価を行った。なお、評価の結果は表2に示す。
(4)定着性評価
前記実施例8(3)と同様のプリンタ、及びインクを使用して、前記実施例1(4)と同様の光沢メディアを用いて、前記実施例1(4)と同様の評価基準により定着性評価を行った。なお、評価の結果は表3に示す。
【0124】
(5)吐出安定性評価
前記実施例8(4)と同様のプリンタ、及びインクを使用して、前記実施例1(5)と同様の評価方法で、前記実施例1(5)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、評価の結果は表4に示す。
(6)保存安定性評価
前記実施例8(2)で調整したインクについて、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、評価の結果は表4に示す。
【0125】
(比較例1)
(1)インクの調整
本比較例1では、EO変性シリコーンであるSH−3771Mを除いた以外は、実施例1と同様の成分を使用した。具体的な組成を以下に示す。
なお、<>内の値は前記「平均粒径の測定」に記載の方法により測定した分散体1の平均粒径(単位:nm)を示す。
【0126】
分散体1<120> 8.0 %
オルフィンE1010 0.6 %
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0 %
1,2−ペンタンジオール 2.5 %
ジエチレングリコール 3.0 %
グリセリン 10.0 %
トリメチロールプロパン 6.0 %
トリプロパノールアミン 0.3 %
イオン交換水 残量
【0127】
(2)印字品質評価
前記実施例1(3)と同様にインクジェットプリンタPX−V700(セイコーエプソン株式会社製)を使用して、前記比較例1(1)で調整したインクについて、前記実施例1(3)と同様の評価紙を用いて、前記実施例1(3)と同様の評価基準により印字品質評価を行った。なお、評価の結果は表2に示す。
(3)定着性評価
前記比較例1(2)と同様のプリンタ、及びインクを使用して、前記実施例1(4)と同様の光沢メディアを用いて、前記実施例1(4)と同様の評価基準により定着性評価を行った。なお、評価の結果は表3に示す。
【0128】
(4)吐出安定性評価
前記比較例1(3)と同様のプリンタ、及びインクを使用して、前記実施例1(5)と同様の評価方法で、前記実施例1(5)と同様の評価基準により吐出安定性評価を行った。なお、評価の結果は表4に示す。
(5)保存安定性評価
前記比較例1(1)で調整したインクについて、前記実施例1(6)と同様の評価方法で、前記実施例1(6)と同様の評価基準により保存安定性評価を行った。なお、評価の結果は表4に示す。
【0129】
なお、本実施例および比較例に用いた変性シリコーン化合物の詳細を下記表1に示す。
【0130】
【表1】

【0131】
【表2】

【0132】
【表3】

【0133】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤をポリマーで包含して水に分散可能にした分散体を含む水性インクであって、該ポリマー中の芳香環の量が該ポリマーの20重量%以上70重量%以下であり、さらに下記式で表される化合物を含有することを特徴とする、水性インク。
【化1】

(式中、Rは2価の有機基を、POはプロピレンオキシ基を、EOはエチレンオキシ基を表し、x,y,a,bはそれぞれ繰り返し単位数であって、xは1〜200の数を、yは1〜50の数を、aは1〜30の数を、bは0〜20の数を表す。)
【請求項2】
前記式で表される化合物における、EOとSiのモル%比(EO/Si)が0.8〜1.5であることを特徴とする、請求項1に記載の水性インク。

【公開番号】特開2011−236426(P2011−236426A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114818(P2011−114818)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【分割の表示】特願2004−250774(P2004−250774)の分割
【原出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】