説明

水性エアゾール塗料原液及び水性エアゾール塗料組成物

【課題】VOC量を十分に低下できるとともに保存安定性及び塗膜性能に優れる水性エアゾール塗料組成物を提供する。
【解決手段】樹脂固形分で15質量%以上45質量%以下の平均粒子径が10nm以上100nm以下であるディスパージョン樹脂と、40質量%以上80量%以下の水と、を含有する塗料原液100質量部に対し、噴射剤を50質量部以上200質量部以下含有する、水性エアゾール塗料組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性エアゾール塗料原液及び水性エアゾール塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然環境等への影響から有機溶剤型のエアゾール塗料から水性エアゾール塗料が主流となってきている。水性エアゾール塗料は、塩素系有機溶剤やフロン系噴射剤の配合を抑制又は回避して、水溶性樹脂又は水分散性樹脂を水と混和する溶剤を用いて調製されている。しかしながら、水性エアゾール塗料は、乾燥性、霧化性、保存安定性及び耐水性等の塗膜特性に問題があることが多かった。そこで、こうした問題を解決するために、種々の水性エアゾール塗料が開発されている。
【0003】
例えば、塩素系でないグリコールエーテル系の有機溶剤と水とを溶剤として用い、フロン以外の噴射剤を用いることが提案されている(特許文献1)。また、アミノ基を有する水溶性樹脂に対して、炭酸ガスを噴射剤として用いることで、同時に水溶性樹脂との混和性を確保することが提案されている(特許文献2)。さらに、O/Wエマルジョン樹脂に対してグリコールエーテル系水溶性溶剤とアミン系化合物とを用いることも提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−70713号公報
【特許文献2】特開2000−44839号公報
【特許文献3】特開2004−137428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記いずれの提案によっても、VOC量を十分低下させると同時にゲル化を抑制して保存安定性を確保することは困難であった。また、これらに加えて耐水性等の塗膜性能も十分ではなかった。すなわち、特許文献1では、相当量のグリコールエーテル系溶媒を使用することになってしまい、特許文献2によれば、炭酸ガスを溶解するために完全水溶性樹脂を用いるため耐水性等、十分な塗膜性能を得るのが困難である。さらに、特許文献3によれば、噴射剤とエマルジョン樹脂との混和によりゲル化を起こらないようにするためには、グリコールエーテル系溶媒をやはり多く用いることになる。
【0006】
そこで、本明細書の開示は、これらの従来の課題に鑑み、VOC量を十分に低下できるとともに保存安定性及び塗膜性能に優れる水性エアゾール塗料原液及び水性エアゾール塗料組成物を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、バインダー樹脂に着目して検討した。ディスパージョン樹脂をバインダーとして用いることで水溶性有機溶剤の使用を抑制又は回避できるとともに噴射剤との混和性も調整して安定なエアゾールを作製できることを見いだした。さらに、こうして得られる水性エアゾール塗料による塗膜が優れた塗膜性能を有することも見いだした。本明細書の開示によれば、以下の手段が提供される。
【0008】
本明細書の開示によれば、樹脂固形分で15質量%以上45質量%以下の平均粒子径が10nm以上100nm以下であるディスパージョン樹脂と、40質量%以上80量%以下の水と、を含有する、水性エアゾール塗料原液が提供される。
【0009】
本明細書の開示によれば、樹脂固形分で15質量%以上45質量%以下の平均粒子径が10nm以上100nm以下であるディスパージョン樹脂と、40質量%以上80量%以下の水と、を含有する塗料原液100質量部に対し、噴射剤を50質量部以上200質量部以下含有する、水性エアゾール塗料組成物が提供される。前記ディスパージョン樹脂は、20質量%以上40質量%以下であることが好ましい。また、前記ディスパージョン樹脂は、ことが好ましい。さらに、前記組成物は、実質的に水溶性有機溶剤を含有しないものであってもよく、水溶性有機溶剤を5質量%以下含有するものであってもよい。さらにまた、20質量%以下の顔料を含有するものであってもよい。また、アミン化合物を含有するものであってもよい。
【0010】
本明細書の開示によれば、樹脂固形分で25質量%以上60質量%以下のディスパージョン樹脂と、30質量%以上60質量%以下の水と、1質量%以上30質量%以下の顔料とを含有する塗料原液に、少なくとも水を加えて水性エアゾール塗料原液を調製する工程と、前記水性エアゾール塗料原液に噴射剤を加えて水性エアゾール塗料組成物を調製する工程と、を備える、水性エアゾール塗料組成物の製造方法が提供される。前記水性エアゾール塗料原液の調製工程は、アミン化合物を用いて前記顔料を分散させる工程を含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書の開示は、水性エアゾール塗料原液、水性エアゾール塗料組成物及びその製造方法に関する。本明細書に開示される水性エアゾール塗料原液及び水性エアゾール塗料組成物によれば、ディスパージョン樹脂をバインダー樹脂として用いることで、水溶性有機溶剤の使用を回避又は十分に抑制できる。また、所定の平均粒子径のディスパージョン樹脂を用いることで、噴射剤との混合時においてゲル化を抑制できる。さらに、このため、水溶性有機溶剤の使用を回避又は十分に抑制できる。さらにまた、ディスパージョン樹脂によれば、良好な性能の塗膜を得ることができる。
【0012】
ディスパージョン樹脂は、水溶性樹脂及びエマルション樹脂とともに水系塗料のバインダー樹脂として知られている。ディスパージョン樹脂は、水溶性樹脂とエマルション樹脂との中間の性質を有している。ディスパージョン樹脂にあっては、使用する水溶性有機溶剤を低減できる可能性があるものの、噴射剤との混合時におけるゲル化や顔料の分散性が低下するなどの問題のために、水系エアゾール塗料には用いられていなかった。本発明者らは、一定の平均粒子径のディスパージョン樹脂を用いるとともに、噴射剤との混和時の顔料分散性の低下に備えて、原液のpHを調整することによって、や噴射剤とのゲル化の問題があってエアゾール塗料に使用するのが困難であった。以下、本明細書の開示の各種実施形態について詳細に説明する。
【0013】
(水性エアゾール塗料原液)
本明細書に開示される水性エアゾール塗料組成物は、ディスパージョン樹脂をバインダー樹脂として含有している。ディスパージョン樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体などのアクリル系樹脂;スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体などのスチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂;ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体;ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体;酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂;ポリビニルブチラールなどのポリオール樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;スチレン−ブタジエン樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン樹脂;イソプレン樹脂;クロロプレン樹脂;ポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらのディスパージョン樹脂は、その1種を単独で用いても良く、またそれら2種以上を組み合わせて用いても良い。ディスパージョン樹脂の中でもアクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、ポリウレタン樹脂を用いることができる。
【0014】
ディスパージョン樹脂の平均粒子径は、10nm以上100nm以下であることが好ましい。この範囲であると、噴射剤との混和時においてゲル化を回避することができる。好ましくは、平均粒子径は、50nm以上100nm以下である。なお、こうした平均粒子径は、動的光散乱法により測定することができる。こうした平均粒子径は、具体的には、ナノトラック粒度分布測定装置 UPA(日機装社製)を用いて測定することができる
【0015】
水性エアゾール塗料原液においては、こうしたディスパージョン樹脂を、樹脂固形分で15質量%以上45質量%以下含有することが好ましい。この範囲であると、許容量の噴射剤と混合したときにおいて適切な樹脂含有量、すなわち、15質量%以上45質量%以下、好ましくは20質量%以上40質量%以下の樹脂含有量の水性エアゾール塗料組成物を得ることができる。
【0016】
水性エアゾール塗料原液は、40質量%以上80量%以下の水を含有することができる。この範囲で水を含有することにより、ディスパージョン樹脂の分散性を確保しつつ溶性有機溶剤の使用量を低減できる。また、塗膜の乾燥性を確保できる。より好ましくは、50質量%以上80質量%以下であり、さらに好ましくは、50質量%以上75質量%以下である。
【0017】
水性エアゾール塗料原液は、実質的に水溶性有機溶剤を含んでいないことが好ましい。ディスパージョン樹脂を用いるため、グリコールエーテル系の水溶性有機溶剤を用いなくても樹脂分散性を確保することができる。なお、水性エアゾール塗料原液は、5質量%以下含有していてもよい。5質量%以下であれば、労働環境及び自然環境においても有機溶媒の影響が十分に抑制される。水溶性有機溶剤としては、グリコールエーテル系水溶性溶剤が挙げられる。例えば、エチレングリコールモノメチルエ一テル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル等が挙げられる。これらのグリコールエーテル類のうち、乾燥性をより良くするためには、エチレングリコールモノメチルエーテルおよびエチレングリコールモノエチルエーテルが望ましく、安全衛生上の点からは、エチレングリコールモノイソブチルエーテルが望ましい。このグリコールエーテル類は、1種のみを用いてもよいし、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、そのほかの水溶性有機溶剤としては、例えば、n−ブタノール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、オクチルアルコール等の高級アルコール類等が挙げられる。
【0018】
水性エアゾール塗料原液は、顔料を含んでいてもよいし、あるいは、含んでいなくてもよい。顔料を含む場合、その含有量は、30質量%以下であることが好ましい。30質量%を超えると高光沢の塗膜が得られにくくなるからである。より好ましくは、20質量%以下である。顔料としては、一般のエアゾール塗料に使用されている顔料をほとんど制約なしに用いることができる。特に限定されないが、たとえば、チタン白(酸化チタン)、カーボンブラック、ベンガラ等の無機顔料、シアニンブルー、シアニングリーン、パーマネントレッド等の有機顔料、炭酸カルシウム、タルク、クレー等の体質顔料、ウレタンビーズ等の粒子状ビーズ顔料、パール顔料、各種染料等が挙げられる。顔料は、1種のみ用いてもよいし、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
水性エアゾール塗料原液が顔料を含有する場合において、この水性エアゾール塗料原液と噴射剤とを混合して水性エアゾール塗料組成物を調製する際、顔料の種類等によっては顔料の分散性が低下する場合がある。こうした顔料を用いる場合には、塗料原液において酸やアルカリなどのpH調整剤を用いてpHを調整することが好ましい。pH調整剤としては、無機酸、有機酸などの各種酸やNaOH等の無機アルカリや各種アミン化合物が挙げられる。顔料の種類にもよるが、アミン系化合物などが好ましく用いられる。このアミン系化合物としては、特に限定しないが、たとえばアンモニア、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミンなどが挙げられる。
【0020】
調整するpHの範囲は顔料の種類や量に応じて異なる。適正なpH範囲は、ある顔料を含有し各種pHの水性エアゾール塗料原液を調製し、これらと一定量の噴射剤とを混合して、エアゾール化状態を目視等にして観察することで取得できる。したがって、予め、各顔料につき、水性エアゾール塗料組成物を得るのに適正な水性エアゾール塗料原液のpH範囲を取得しておくことで、確実に顔料凝集のない水性エアゾール塗料組成物を得ることができる。例えば、二酸化チタンの場合、pH7.9以上pH10.2以下の範囲で噴射剤混合時においても良好な分散性を確保できる。また、カーボンブラックについては、必ずしもpH調整は必要でなく、pH調整することなく得られたpH7.3以上7.6以下の範囲の水性エアゾール塗料原液を噴射剤と混ぜることで良好にカーボンブラックが分散した塗料組成物を得ることができる。
【0021】
水性エアゾール塗料原液は、従来の水性エアゾール塗料組成物に使用されている分散剤、消泡剤、造膜助剤、レベリング剤、界面活性剤等の添加剤を適宜含んでいてもよい。こうした添加剤については、特に限定しないで用いることができる。この水性エアゾール塗料原液はこのまま、あるいは希釈剤(溶剤)により粘度調整した後スプレー塗布などによる塗布するための水性塗料組成物として用いることができる。
【0022】
水性エアゾール塗料原液は、例えば、以下の方法で調製することができる。すなわち、まず、樹脂固形分で25質量%以上60質量%以下のディスパージョン樹脂と、30質量%以上60質量%以下の水と、必要に応じて1質量%以上30質量%以下の顔料、さらに、必要に応じて、造膜助剤、レベリング剤等の添加剤、さらには必要に応じて水溶性有機溶剤を含有する塗料原液を準備する。この塗料原液に対して、少なくとも水を加えて混合し、必要に応じてpH調整剤によりpH調整を行って、水性エアゾール塗料原液を得ることができる。
【0023】
(水性エアゾール塗料組成物)
本明細書に開示される水性エアゾール塗料組成物は、こうした水性エアゾール塗料原液に対して噴射剤を混合して調製される。噴射剤としては、特に限定はされないが、たとえばジメチルエーテル等の親水性(水可溶性)噴射剤や、液化石油ガス(LPG)、炭化水素等の疎水性噴射剤を用いることができる。これらを1種又は2種以上組み合わせて用いることができるが、好ましくは、親水性噴射剤を用い、より好ましくは親水性噴射剤のみを用いる。噴射剤は、塗料原液100質量部に対し、50質量部以上200質量部以下含有されていることが好ましい。より好ましくは、50質量部以上100重量部以下である。
【0024】
本明細書に開示される水性エアゾール塗料組成物は、上記した塗料原液に少なくとも水、必要に応じてpH調整剤を加えて水性エアゾール塗料原液とし、この水性エアゾール塗料原液に噴射剤を加えて水性エアゾール塗料組成物を調製してもよい。また、本明細書に開示される水性エアゾール塗料組成物は、すでに説明したように、例えば、以下の方法でも調製することができる。すなわち、ディスパージョン樹脂及び水の一部又は全部に対して顔料を加えて、ディスパー等で撹拌混合した後に、サンドグラインドミルで分散させる。必要に応じて、ディスパージョン樹脂及び水の残量を加えて、消泡剤等の添加剤を添加した後、ディスパーで均一に撹拌混合することによって水性エアゾール塗料原液を得る。この水性エアゾール塗料原液と噴射剤とを所定の混合比でエアゾールスプレー缶に充填することによって、水性エアゾール塗料組成物を得ることができる。
【0025】
以下、本明細書の開示を、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0026】
本実施例では、表1に示す各種の塗料原液を調製するとともに、この塗料原液に水、消泡剤及び必要に応じてpH調整剤(25質量%アンモニア水)を加えて、混合して、水性エアゾール塗料原液とした。この水性エアゾール塗料原液に同じく表1に示す比率でジメチルエーテル(DME)を添加して、実施例1〜6及び比較例1〜4の各種水性エアゾール塗料組成物を得た。アクリルディスパージョン樹脂としては、平均粒子径が50nm以上100nm以下のものを用いた。なお、表1中、消泡剤は、サンノプコ製シリコーン系消泡剤SNデフォーマー381を用いた。なお、塗料原液、水性エアゾール塗料原液及び水性エアゾール塗料組成物は、常法に従い調製した。
【0027】
【表1】

【0028】
最終的に得られた水性エアゾール塗料組成物につき、以下の項目について評価した。これらの結果も併せて表1に示す。
【0029】
(1)エアゾール化
噴射剤との混合時の状態を目視にて観察し、顔料の凝集がないものを○とした。
(2)塗膜外観
試験片(SPCC−SB鋼板(JIS G3141)に水性エアゾール塗料組成物を乾燥塗膜が5μm〜10μmとなるようにエアゾール塗布し、室温23℃、湿度50%RH以下で4日間乾燥して試料を調製した。この試料につき、JISK5600−1−1に準じた基準で外観を評価した。
<判定基準>
○:はじきやたれがなく、レベリングが良好
×:はじきやたれがあり、レベリングが不良
(3)付着性(クロスカット法)
(2)と同様にして調製した試料につき、JIS K5600−5−6(カットの間隔:1mm、マス目:100個)に準じて評価した。
<判定基準>(残ったマス目の数)
○:100/100
△:90〜99/100
×:90/100未満
(4)耐湿性(連続結露法)
(2)と同様にして調製した試料につき、JIS K5600−7−2(温度50℃、湿度95%、72時間)に準じて評価した。
<判定基準>
○:塗膜に劣化無し
×:塗膜に劣化有り
(5)耐水性(耐液体性(水浸漬法))
(2)と同様にして調製した試料につき、JIS K5600−6−2(23℃、3日間)に準じて評価した。
<判定基準>
○:塗膜に劣化無し
×:塗膜に劣化有り
【0030】
表1に示すように、実施例1〜6に示す水性エアゾール塗料組成物においては、エアゾール化、塗膜性能について、いずれも良好な結果が得られた。すなわち、ディスパージョン樹脂を用いた場合、水溶性有機溶剤の使用を回避又は抑制(塗料原液中4質量%以下、水性エアゾール塗料原液中3質量%以下)できて、実質的に完全水性エアゾール塗料組成物を提供できる。また、樹脂のゲル化も回避でき保存安定性に優れており、水性であっても塗膜物性に優れた塗膜を得ることができた。これに対して、比較例1、2によれば、カーボンブラックについては、水性エアゾール塗料原液において適正なpH範囲が確保されない場合には、エアゾール化や塗膜物性に問題が生じてしまった。また、ディスパージョン樹脂の含有量が水性エアゾール塗料原液において46質量%以上又は13質量%以下では、塗膜物性が低下してしまうことがわかった。したがって、水性エアゾール塗料原液においては、ディスパージョン樹脂は、15質量%以上45質量%以下が好ましいことがわかった。より好ましくは20質量%以上40質量%以下であることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂固形分で15質量%以上45質量%以下のディスパージョン樹脂と、
40質量%以上80量%以下の水と、
を含有する、水性エアゾール塗料原液。
【請求項2】
樹脂固形分で15質量%以上45質量%以下のディスパージョン樹脂と、
40質量%以上80量%以下の水と、
を含有する塗料原液100質量部に対し、噴射剤を50質量部以上200質量部以下含有する、水性エアゾール塗料組成物。
【請求項3】
前記ディスパージョン樹脂は、20質量%以上40質量%以下である、請求項2に記載の水性エアゾール塗料組成物。
【請求項4】
前記ディスパージョン樹脂は、平均粒径が10nm以上100nm以下の粒子を含有する、請求項2又は3に記載の水性エアゾール塗料組成物。
【請求項5】
水溶性有機溶剤を5質量%以下含有する、請求項2〜4のいずれかに記載の水性エアゾール塗料組成物。
【請求項6】
実質的に水溶性有機溶剤を含有しない、請求項2〜4のいずれかに記載の水性エアゾール塗料組成物。
【請求項7】
さらに、20質量%以下の顔料を含有する、請求項2〜6のいずれかに記載の水性エアゾール塗料組成物。
【請求項8】
さらに、pH調整剤を含有する、請求項7に記載の水性エアゾール塗料組成物。
【請求項9】
前記噴射剤は、親水性噴射剤である、請求項2〜8のいずれかに記載の水性エアゾール塗料組成物。
【請求項10】
水性エアゾール塗料組成物の製造方法であって、
樹脂固形分で25質量%以上60質量%以下のディスパージョン樹脂と、30質量%以上60質量%以下の水と、1質量%以上30質量%以下の顔料とを含有する塗料原液に、少なくとも水を加えて水性エアゾール塗料原液を調製する工程と、
前記水性エアゾール塗料用組成物に噴射剤を加えて水性エアゾール塗料組成物を調製する工程と、を備える、方法。
【請求項11】
前記水性エアゾール塗料原液の調製工程は、pH調整剤を用いて前記顔料を分散させることを含む工程である、請求項10に記載の方法。


【公開番号】特開2011−219629(P2011−219629A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90453(P2010−90453)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000150774)株式会社槌屋 (56)
【出願人】(300003743)槌屋ケミカル株式会社 (5)
【Fターム(参考)】