説明

水性エアゾール塗料組成物

【課題】 対象物に噴射すると雪状物あるいはフォームを形成し、長期間にわたって噴射時の質感やボリュームを維持することができる水性エアゾール塗料組成物を提供すること。
【解決手段】 ガラス転移温度の異なる少なくとも2種の熱可塑性樹脂とアルコールとを含有する水性塗料組成物と、噴射剤とから構成される水性エアゾール塗料組成物であって、前記夫々の熱可塑性樹脂のガラス転移温度の算術平均が5〜65℃であり、対象物に対して噴射すると雪状又はフォーム状を呈する噴射形成物を形成し、前記噴射形成物の比重が0.1以下であることを特徴とする水性エアゾール塗料組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性エアゾール塗料組成物に関し、より詳しくは、熱可塑性樹脂とアルコールとを含んでなる水性エアゾール塗料組成物であり、対象物に対して噴射して使用すると雪状物又はフォームを形成する水性エアゾール塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
容器から噴射した際に泡沫や雪状物、フォームを形成するエアゾール組成物が知られている。
上記した中で、雪状物を形成するエアゾール組成物は、例えばクリスマスツリーや映像効果等において疑似人工雪を作るために使用される。また、フォームを形成するエアゾール組成物は、例えば毛髪用フォームや化粧用フォーム等の疑似品として使用される。いずれのエアゾール組成物においても、対象物に対して噴射した際に本物の雪や化粧料等の質感を現すことが求められている。
従来より知られている雪状物を形成するエアゾール組成物はパラフィンが主成分であり、一方フォームを形成するエアゾール組成物は界面活性剤が主成分である。
パラフィン、あるいは界面活性剤を主成分としたエアゾール組成物により形成される雪状物やフォームは、形成直後は本物のような雪の質感や嵩(ボリューム)であったとしても、経時的にボリュームが低下したり、質感が低下するという問題があった。つまり、対象物に噴射されて発泡状態にあるパラフィン、あるいは界面活性剤が消泡して次第に泡同士がくっついて固化し、ついにはひび割れてしまう虞があった。
従って、対象物に対して厚く塗装した場合に、長期にわたって所望の質感やボリュームを維持することが困難であった。
【0003】
特許文献1には、耐水性の蓄光顔料と分散剤と水が配合されたエアゾール組成物が開示されており、対象物に吹き付けることで疑似人工雪を得る技術が開示されている。
特許文献1の開示技術を用いると、微細且つ均一に発泡した泡沫から形成される疑似人工雪を得ることができる。
しかし、特許文献1に開示される技術を用いたとしても、長期間にわたって雪状を維持することができるエアゾール組成物を得ることは困難であった。つまり、特許文献1の開示技術で使用される分散剤は界面活性剤であるため、水等が蒸発するにつれて泡沫が消失し、次第に膜状となり固化してしまう虞があった。そのため、雪状物を厚く堆積させて質感やボリュームを長期間にわたって本物の雪のように保つことが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−292945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、対象物に噴射すると雪状物あるいはフォームを形成し、長期間にわたって噴射時の質感やボリュームを維持することができる水性エアゾール塗料組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、ガラス転移温度の異なる少なくとも2種の熱可塑性樹脂とアルコールとを含有する水性塗料組成物と、噴射剤とから構成される水性エアゾール塗料組成物であって、前記夫々の熱可塑性樹脂の下式(数1)により算出されるガラス転移温度の算術平均が5〜65℃であり、対象物に対して噴射すると雪状又はフォーム状を呈する噴射形成物を形成し、前記噴射形成物の比重が0.1以下であることを特徴とする水性エアゾール塗料組成物に関する。
(数1)


但し、n≧2
Tg:ガラス転移温度の算術平均値
Tg(ai):熱可塑性樹脂aiのガラス転移温度
Ai:熱可塑性樹脂固形分全重量に対する熱可塑性樹脂aiの固形分の重量(%)
【0007】
請求項2に係る発明は、前記ガラス転移温度の算術平均が5〜15℃であり、前記噴射形成物がフォーム状を呈することを特徴とする請求項1記載の水性エアゾール塗料組成物に関する。
【0008】
請求項3に係る発明は、前記アルコールの含有量が前記水性塗料組成物の全量に対して1〜5重量%であることを特徴とする請求項2記載の水性エアゾール塗料組成物に関する。
【0009】
請求項4に係る発明は、前記ガラス転移温度の算術平均が15〜65℃であり、前記噴射形成物が雪状を呈することを特徴とする請求項1記載の水性エアゾール塗料組成物に関する。
【0010】
請求項5に係る発明は、前記アルコールの含有量が前記水性塗料組成物の全量に対して5〜15重量%であることを特徴とする請求項4記載の水性エアゾール塗料組成物に関する。
【0011】
請求項6に係る発明は、起泡剤及び/又は整泡剤を含むことを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の水性エアゾール塗料組成物に関する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、ガラス転移温度の異なる少なくとも2種の熱可塑性樹脂とアルコールとを含有する水性塗料組成物と、噴射剤とから構成される水性エアゾール塗料組成物であって、前記夫々の熱可塑性樹脂のガラス転移温度の算術平均が5〜65℃であり、対象物に対して噴射すると雪状又はフォーム状を呈する噴射形成物を形成し、前記噴射形成物の比重が0.1以下であることにより、きめ細かい泡沫からなる雪状又はフォーム状の噴射形成物を得ることができるとともに、雪状物又はフォームに含まれる水分が減少(蒸発)しても、形状の収縮を防止して噴射時の形状を維持することができる。即ち、使用する熱可塑性樹脂の中でガラス転移温度の高い樹脂が雪状物又はフォームを形成する泡沫の骨格となり、ガラス転移温度の低い樹脂が被膜化しクッション材の役割を担うこととなり、雪状物又はフォームの形状を維持しつつ、少しの衝撃での粉化を防ぐことができる。
従って、対象物に対して厚く塗った場合でも長期間にわたって質感や嵩(ボリューム)を維持することができる雪状物あるいはフォームを得ることができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、前記ガラス転移温度の算術平均が5〜15℃であり、前記噴射形成物がフォーム状を呈することにより、経時的な水分の減少(蒸発)によるフォームの融着が生じにくいため、収縮することが少なく、噴射時の形状を維持することができる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、前記アルコールの含有量が前記水性塗料組成物の全量に対して1〜5重量%であることにより、微細な泡沫からなるフォームを得ることができる。更に、厚く(嵩高く)塗った場合にも泡が消え膜状化することなく形状を維持することができる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、前記ガラス転移温度の算術平均が15〜65℃であり、前記噴射形成物が雪状を呈することにより、経時的な水分の減少(蒸発)による収縮と粉化が生じにくい雪状物とすることができる。つまり、水分が減少することで泡沫が潰れ、膜状化して固まり、更にはひび割れることのない雪状物を得ることができる。
【0016】
請求項5に係る発明によれば、前記アルコールの含有量が前記水性塗料組成物の全量に対して5〜15重量%であることにより、微細な泡沫からなる雪状物を得ることができる。更に、厚く塗った場合にも泡沫が潰れないため、本物のような雪状物とすることができる。
【0017】
請求項6に係る発明によれば、起泡剤及び/又は整泡剤を含むことにより、泡沫が形成されやすくなるとともに、形成された泡沫の安定化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る水性エアゾール塗料組成物について詳細に説明する。
本発明に係る水性エアゾール塗料組成物は、塗装対象となる対象物に対して噴射して使用される。対象物に対して噴射することにより形成される噴射形成物は、雪状又はフォーム状である。
【0019】
ここで、本発明における雪状物、フォームとは、比重が0.1以下である噴射形成物と定義される。比重は、比重カップ(JIS K 5600−2−4)に噴射形成物を充填して質量を測定して算出したものである。尚、上記比重は、温度20℃、相対湿度50%の条件下で形成された噴射形成物に対して算出したものである。
【0020】
比重が0.1以下の噴射形成物(雪状物又はフォーム)は、以下の加速乾燥試験を行っても、噴射形成直後の嵩高さ及び質感に略変化が見られず、その形状を維持することができる。
この場合の加速乾燥試験とは、温度20℃、相対湿度50%において、一辺が3cmの立方体(以下、3cm立方と称する)の紙製の枡内に噴射形成物(雪状物又はフォーム)を充填し、1日後の嵩高さ(紙製の枡内における噴射形成物の残存高さ)を測定することである。
尚、紙製の枡を使用することで、噴射形成物中の水分除去が促進される。このときの乾燥速度は、吸水性でない対象物(例えば金属、樹脂板、植物等)に噴射形成物を形成した場合のおよそ3倍(20℃において)である。
噴射形成物が雪状物の場合、1日後の嵩高さは2.5〜3cmであり、一方、フォームの場合、1日後の嵩高さは2.8〜3cmである。
【0021】
本発明に係る水性エアゾール塗料組成物は、水性塗料組成物と噴射剤とから構成される。
【0022】
<水性塗料組成物について>
先ず、本発明に係る水性エアゾール塗料組成物に使用される水性塗料組成物について詳述する。
本発明に係る水性エアゾール塗料組成物に使用される水性塗料組成物は、熱可塑性樹脂とアルコールから構成される。熱可塑性樹脂は少なくとも2種使用される。使用される熱可塑性樹脂は2種以上であってもよく、3種、4種あるいはそれ以上の樹脂を使用してもよい。熱可塑性樹脂の組み合わせは特に限定されないが、ガラス転移温度の異なるもの同士が組み合わされて使用される。尚、本発明において、ガラス転移温度が異なる場合、同種の樹脂であっても種類が異なる樹脂とみなす。
【0023】
熱可塑性樹脂の種類は特に限定されず、後述の噴射剤と混合した場合に粘度が増加しない樹脂が選択される。本発明において、以下に示す熱可塑性樹脂を予めエマルション(水性塗料)としたものが使用される。
本発明において好適に使用される熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂等が例示される。また、スチレン含有アクリル樹脂(アクリルスチレン樹脂)、アクリルシリコン樹脂、塩化ビニル−アクリル樹脂等の複合系(共重合体)の樹脂を使用することもできる。
【0024】
ここで、合成樹脂及び天然樹脂はガラス転移温度を有する。ガラス転移温度は、固体の剛性が失われて粘度が低下し流動性が急激に増す温度であり、夫々の樹脂に固有のものである。
【0025】
上記したように、2種の熱可塑性樹脂を使用する場合、夫々異なるガラス転移温度を有する樹脂が使用される。つまり、ガラス転移温度に差が生じるように樹脂が選択される。
また、3種以上の熱可塑性樹脂を使用する場合は、ガラス転移温度が全て異なる樹脂を選択してもよいが、少なくとも2種の樹脂においてガラス転移温度に差が生じるものが選択される。
【0026】
上記したように、熱可塑性樹脂は、少なくとも2種間でガラス転移温度の差が生じるような組み合わせとなるように選択される。より好ましくは、ガラス転移温度の差が大きくなるような組み合わせである。つまり、ガラス転移温度の比較的高いもの(例えば50〜100℃程度)と、比較的低いもの(例えば−50〜30℃程度)のものが選択される。
ガラス転移温度の比較的高いものは、例えば20〜30℃の室温付近では硬い性状を呈する(以下、硬い樹脂と称する)。一方、ガラス転移温度の比較的低いものは、上記した室温付近の温度では流動性が増して軟らかい性状を呈する(以下、軟らかい樹脂と称する)。
【0027】
選択された2種あるいは複数種の熱可塑性樹脂は、混合(ポリマーブレンド)して使用される。
上記した硬い樹脂、軟らかい樹脂をブレンドすることにより、エアゾールとして対象物に噴射塗布すると質感とボリューム感に優れた嵩高の噴射形成物(雪状物又はフォーム)を得ることができる。
硬い樹脂と軟らかい樹脂を混合することで、硬い樹脂が軟らかい樹脂でつなげられた状態となる。つまり、硬い樹脂同士が軟らかい樹脂を介して接着された状態となる。そうすることで、対象物に対して噴射した際に液状ではなく、雪状やフォーム状の嵩高い噴射形成物とすることができる。言い換えると、硬い樹脂を疑似的に芯物質としてその周りを軟らかい樹脂が取り囲む状態となる。軟らかい樹脂だけで構成されると噴射形成物の形状(質感、ボリューム)は形成直後から崩れ始めてしまい、次第に対象物の形に沿うように膜状となる虞がある。
【0028】
本発明において混合される熱可塑性樹脂の混合比率(重量比)は特に限定されないが、雪状物を得る場合は、軟らかい樹脂と硬い樹脂は同じ重量比で混合するか、あるいは硬い樹脂よりも軟らかい樹脂を多く含有することが好ましい。上記した比率で軟らかい樹脂と硬い樹脂を混合することで、柔らかな質感の雪状物とすることができる。
一方、フォームを得る場合は、軟らかい樹脂よりも硬い樹脂を多く含有することが好ましい。硬い樹脂を軟らかい樹脂よりも多く配合することで、上記した疑似的な芯物質が多くなり、軟らかい樹脂を支えることができる。従って、嵩高い形状を維持することができるとともに、弾力性に優れるフォームとすることができる。
【0029】
熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂の夫々のガラス転移温度の算術平均が5〜65℃となるように混合される。
ガラス転移温度の算術平均が5℃未満であると、噴射形成物中の水分が失われるにつれて形成物を形作っている微細な泡沫同士がくっつきやすくなり、泡沫が消えやすくなる。
一方、65℃を超えると対象物に噴射しても、混合した樹脂全体のガラス転移温度が高いため柔らかな質感の噴射形成物を得ることができず、固化して粉状となってしまう虞がある。つまり、噴射塗布直後から水分が蒸発するに伴って、固化してひび割れた状態となり、少しの衝撃であっても形状を維持することができずに雪状物又はフォームが壊れる虞がある。
【0030】
ガラス転移温度の算術平均が上記した温度範囲であると、通常使用される環境下、例えば温度20℃、相対湿度50%において3ヶ月以上の長期間にわたって嵩高い雪状やフォーム状を維持可能な噴射形成物を得ることができる。つまり、上述した3cm立方の紙製の枡内に噴射形成物を充填した状態で、雪状物は2.5〜3cm、フォームは2.8〜3cmの嵩高さを維持することができる。
【0031】
上記したガラス転移温度の算術平均は、以下に示す式(数1)により算出される。尚、(数1)においてTgはガラス転移温度の算術平均値、Tg(ai)は熱可塑性樹脂aiのガラス転移温度、Aiは熱可塑性樹脂固形分全重量に対する熱可塑性樹脂aiの固形分の重量(%)である。尚、nは2以上の整数である。
【0032】
【数1】


但し、n≧2
【0033】
例えば2種の熱可塑性樹脂を混合する場合、硬い樹脂のガラス転移温度をTg(H)、軟らかい樹脂のガラス転移温度をTg(L)とし、夫々の樹脂固形分の混合比率をA(H):A(L)とすると、以下の式(数2)によりガラス転移温度の算術平均(Tg)が算出される。
【0034】
【数2】

【0035】
本発明において使用されるアルコールは特に限定されず、種々のアルコールを使用することができるが、1価アルコールを使用することが好ましい。アルコールは1種のみを使用してもよいし、2種以上を混合して使用することもできる。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が例示され、これらが好適に使用される。特に、エタノールを使用すると上記した樹脂が分散されやすくなり、且つ臭いが弱く人体にとって安全であるため好適である。アルコールの含有量は、後述するように所望の噴射形成物(雪状物、フォーム)により適宜変更される。
【0036】
熱可塑性樹脂のガラス転移温度の算術平均値、熱可塑性樹脂の含有量、アルコールの含有量は、所望の噴射形成物によって夫々異なる。以下に雪状物とフォームの夫々の場合について述べる。
【0037】
<フォームの場合について>
フォームを得る場合、熱可塑性樹脂のガラス転移温度の算術平均は5〜15℃、より好ましくは8〜10℃とされる。
また、熱可塑性樹脂は、上述した樹脂の中で特にアクリル樹脂、ウレタン樹脂が好適に使用される。
熱可塑性樹脂の含有量は、水性塗料組成物の全量に対して樹脂固形分で20〜50重量%とされる。20重量%未満であると、樹脂成分が少ないため十分な量の泡沫を形成することができず、弾力性に優れるフォームを形成することができない。一方、50重量%を超えると噴射塗布直後は弾力性に優れるフォームとすることができるが、塗布直後から固化してしまい柔らかな質感を維持することが困難となる。
アルコールの含有量は、水性塗料組成物の全量に対して1〜5重量%である。1重量%未満であると、対象物に対して噴射した際に泡沫が出来にくく、嵩高い噴射形成物とすることができない。一方、5重量%を超えると嵩高く且つ弾力を有するフォームを得ることができない。
フォームを得る場合、少なくとも上記したガラス転移温度の算術平均値の範囲であることを満たしていれば良いが、更に上記のアルコール含有量であることが好ましい。そうすることで、経時的な水分の減少(蒸発)によるフォームの固化が生じにくくなるとともに、収縮することが少ないため、噴射塗布直後の形状や質感(弾力)を維持することができる。
【0038】
更に、噴射塗布前の水性塗料組成物の粘度、つまり水性エアゾール塗料組成物として容器に収容されている状態での水性塗料組成物の粘度は、200〜1000cpsであることが好ましい。粘度が200cps未満であると、噴射した際に泡沫同士がくっつきやすくなって、嵩が低くなってしまいフォームを形成することができず、一方、粘度が1000cpsを超えると、噴射した際に質感の柔らかなフォームとすることができないため、いずれの場合も好ましくない。
【0039】
<雪状物の場合について>
雪状物を得る場合、熱可塑性樹脂のガラス転移温度の算術平均は、15〜65℃、より好ましくは20〜35℃とされる。
また、熱可塑性樹脂は、上述した樹脂の中で特にアクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル−アクリル共重合樹脂、スチレン含有アクリル樹脂(アクリルスチレン樹脂)が好適に使用される。
熱可塑性樹脂の含有量は、水性塗料組成物の全量に対して樹脂固形分で10〜40重量%とされる。10重量%未満であると、噴射した際に樹脂固形分が少ない為、水分の蒸発に伴って噴射形成物の嵩が減少し、細かな泡沫から形成される雪状物を得ることができない。一方、40重量%を超えると水性塗料組成物の粘度が高くなり、噴射塗布の際に組成物を霧化し、泡沫形成することが困難となる。つまり、組成物が液状のまま噴射される。従って、噴射した際に細かな泡沫とすることができず、本物の雪が降るような状態とすることができない。
アルコールの含有量は、水性塗料組成物の全量に対して5〜15重量%である。5重量%未満であると、対象物に堆積させた場合に凹凸感のない平面的な仕上がりになる虞がある。一方、15重量%を超えるとアルコールが消泡効果を発揮するため、形成された泡沫が噴射塗布直後から液状化してしまい、雪状物を形成することができない、いわゆる雪が溶けるような現象が生じ塗布対象物に雪状物を堆積させることが困難となる。
【0040】
更に、噴射塗布前の水性塗料組成物の粘度、つまり水性エアゾール塗料組成物として容器に収容されている状態での水性塗料組成物の粘度は、50cps以下であることが好ましい。粘度が50cpsを超えると、噴射した際に効率的に噴射することができない。つまり、水性エアゾール塗料組成物が霧化されにくくなり、質感の柔らかな泡沫の噴射物とすることができないため、いずれの場合も好ましくない。
【0041】
本発明における雪状物又はフォームは、比重0.1以下である。比重を0.1以下とすることで、極め細かく、且つ長期間においても質感及び形状が略変化しない安定した雪状物又はフォームとすることができる。
【0042】
本発明に係る水性エアゾール塗料組成物に使用される水性塗料組成物にはテキサノール、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート等の成膜助剤(造膜助剤)は含有されない。
成膜助剤は樹脂を柔らかくする作用や消泡性を有する。そのため、本発明に係る水性エアゾール塗料組成物に成膜助剤が含まれていると、成膜助剤の消泡性が作用して雪状物又はフォームの形状を維持することができない。更に、噴射形成物(雪状物又はフォーム)中の水分が蒸発すると、次第に形成物が溶けたような状態、つまり噴射形成物を構成するエマルション樹脂(水性塗料組成物)の樹脂成分同士がくっついて、ついには膜状となる。
【0043】
また、水性塗料組成物には起泡剤や整泡剤を配合してもよい。
起泡剤、整泡剤ともに、公知のものを使用することができる。
起泡剤としてはヤシ油脂肪酸系が挙げられ、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウムが例示されるがこれに限定されない。起泡剤は、組成物の全量に対して3〜10重量%含有されることが好ましい。起泡剤を前述の範囲とすることで泡沫が形成されやすくなり、更に形成された泡沫を安定化することができる。
また、整泡剤としては脂肪酸ジエタノールアミン塩やステアリン酸系(ステアリン酸アンモニウム)等が挙げられるがこれらに限定されない。整泡剤は、組成物の全量に対して3〜10重量%含有されることが好ましい。整泡剤を前述の範囲とすることで泡沫の大きさを均一にすることができて、起泡剤と同様に泡沫を安定化することができる。
本発明では、起泡剤、整泡剤のどちらか一方のみを配合してもよいが、両方配合することが好ましい。そうすることで、泡沫が形成されやすくなるとともに、泡沫の安定化を図ることができて質感とボリューム感に優れた雪状物又はフォームを形成することができる。
【0044】
更に、水性塗料組成物には顔料や染料等の着色剤、香料、難燃剤、防腐剤、防錆剤を配合してもよい。その場合、消泡性を発揮しない程度の配合量とするか、あるいは消泡性のないものを選択することが好ましい。
【0045】
水性塗料組成物を容器に収容し、特に空気やその他のガスを予め混合しなくても雪状物やフォームを対象物上に形成することも可能であるが、本発明においては噴射剤を含有させることで水性エアゾール塗料組成物とされる。
【0046】
<水性エアゾール塗料組成物について>
本発明に係る水性エアゾール塗料組成物について説明する。
上記したように、本発明に係る水性エアゾール塗料組成物は、上述の水性塗料組成物と噴射剤とから調製される。
含有される噴射剤は特に限定されず、公知のものを使用することができるが、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)が好適である。
【0047】
水性エアゾール塗料組成物を調製する際の水性塗料組成物と噴射剤(LPG、DME)の配合比は、87〜83vol%:13〜17vol%であることが好ましい。尚、組成物と噴射剤の夫々の比率の和は100vol%であり、整数比に限られない。
上記した配合比とすることで、水性エアゾール塗料組成物を噴射した際に効率的に泡沫を形成して雪状物又はフォームを形成することができる。
【0048】
水性エアゾール塗料組成物を容器に収容した状態の容器内の雰囲気は、25℃で内圧は0.4〜0.5MPaである。また、水性エアゾール塗料組成物を容器外に噴射する噴射口(ノズル)の口径は直径0.2〜1.0mmに設定される。
雪状物を得る場合は、内圧0.4〜0.5MPa(25℃)且つノズル径0.2〜0.6mmに設定される。一方、フォームを得る場合は、内圧0.4〜0.5MPa(25℃)に設定され、ノズルは例えば正立用スパウト等が好適に使用される。
上記した内圧且つノズル径の範囲に設定することで、対象物に対して該組成物を噴射塗布した際に所望の形状、つまり雪状物又はフォームを形成することとなる。尚、雪状物、フォームのいずれを所望するかによって、上述の水性塗料組成物のいずれかが適宜選択される。
【0049】
<用途について>
本発明に係る水性エアゾール塗料組成物を噴射することにより得られる雪状物又はフォームの使用用途について以下に述べる。
雪状物は装飾用として好適である。具体的には、クリスマスツリーのように、冬期に使用されるディスプレイに対して本物の雪のような装飾を施すことができる。また、映像や舞台等において、降雪の際の疑似人工雪としても使用することができる。
本発明に係る水性エアゾール塗料組成物を使用することにより、本物のような雪状物を得ることができる。また、長期間の装飾を必要とするときも、雪状の外観(質感、ボリューム)を損なうことがない。更に、使用終了時には、水洗や吸引(掃除機等)により容易に対象物から雪状物を取り除くことができて残存することがなく、対象物を元通りの状態とすることが可能である。
【0050】
フォームも雪状物と同様に装飾用として好適である。具体的には、毛髪用、化粧用のフォーム剤、ムース状の食品等の疑似品やオブジェとして使用することができる。また、窓や戸等の隙間に目張りして虫の忌避剤としても使用することができる。更に、本発明で得られるフォームは微細な泡沫から形成されるため、梱包の際の緩衝材や断熱材としても使用することができ、臭いを低減するために臭いの元となる物質を被覆し消臭剤として使用することも可能である。
【実施例】
【0051】
以下、本発明に係る水性エアゾール塗料組成物に関する実施例を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
(実施例)
<試験方法>
ガラス転移温度の異なる樹脂を2種組み合わせた2成分系において、以下に示す夫々の配合比で水性エアゾール塗料組成物を調製した。
得られた水性エアゾール塗料組成物を3cm立方の紙製の枡を満たすように噴射塗布し、噴射塗布直後、1時間後、3時間後、24時間後における噴射形成物の残存高さ(cm)を測定した。また、20×20cmのアルミホイル上に噴射塗布し、1時間後、3時間後、24時間後における外観(質感、ボリューム)を噴射塗布直後のものと比較した。
尚、実施例1〜3の噴射形成物は雪状物、実施例4,5の噴射形成物はフォームである。
噴射形成物の外観は目視及び触感により、以下の基準に基づいて評価した。
◎:質感(柔らかさ)が噴射塗布直後と略変わらない。
○:やや質感が低下(固く)している。
△:やや質感が低下(固く)し、やや膜状化している。
×:固化して柔らかさが失われ、膜状化している。
試験は、温度20℃、相対湿度50%の環境で行った。
【0053】
実施例1
樹脂として塩化ビニル−アクリル共重合樹脂(日信化学工業(株)製、ビニブラン701)(Tg73℃)とアクリル樹脂(ヘンケルテクノロジーズジャパン(株)製、ヨドゾールAD180)(Tg−20℃)を使用し、50:50の重量比で混合(ブレンド)した。
この混合樹脂にエタノールを10重量%添加し、更に起泡剤(N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム)6重量%及び整泡剤(ステアリン酸アンモニウム水分散液)6重量%を添加して水性塗料組成物を得た。
尚、この組成物のガラス転移温度の算術平均は26.5℃である。
得られた組成物にLPGを添加し、水性エアゾール塗料組成物を調製した。水性塗料組成物とLPGの体積比は、87:13である。
水性エアゾール塗料組成物をエアゾール容器に充填し、噴射塗布して雪状物を得た。
【0054】
実施例2
樹脂としてアクリル樹脂(ニチゴ・モビニール(株)製、モビニール972)(Tg100℃)とウレタン樹脂(DIC(株)製、ハイドランAPX501)(Tg−13℃)を使用し、60:40の重量比で混合(ブレンド)した。
この混合樹脂にメタノールを6重量%添加し、更に起泡剤(N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム)6重量%及び整泡剤(ステアリン酸アンモニウム水分散液)7重量%を添加して水性塗料組成物を得た。
尚、この組成物のガラス転移温度の算術平均は54.8℃である。
得られた組成物にLPGを添加し、水性エアゾール塗料組成物を調製した。水性塗料組成物とLPGの体積比は、85:15である。
水性エアゾール塗料組成物をエアゾール容器に充填し、噴射塗布して雪状物を得た。
【0055】
実施例3
樹脂として塩化ビニル−アクリル共重合樹脂(日信化学工業(株)製、ビニブラン902)(Tg60℃)とアクリル樹脂(ヘンケルテクノロジーズジャパン(株)製、ヨドゾールAA180)(Tg−40℃)を使用し、62:38の重量比で混合(ブレンド)した。
この混合樹脂にメタノールを14重量%添加し、更に起泡剤(N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム)10重量%及び整泡剤(ステアリン酸アンモニウム水分散液)6重量%を添加して水性塗料組成物を得た。
尚、この組成物のガラス転移温度の算術平均は22.0℃である。
得られた組成物にLPGを添加し、水性エアゾール塗料組成物を調製した。水性塗料組成物とLPGの体積比は、83:17である。
水性エアゾール塗料組成物をエアゾール容器に充填し、噴射塗布して雪状物を得た。
【0056】
実施例4
樹脂としてアクリル樹脂(ニチゴ・モビニール(株)製、モビニール972)(Tg100℃)とウレタン樹脂(DIC(株)製、ハイドランAPX601)(Tg−13℃)とを使用し、20:80の重量比で混合(ブレンド)した。
この混合樹脂にエタノールを3重量%添加し、更に起泡剤(N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム)6重量%及び整泡剤(ステアリン酸アンモニウム水分散液)6重量%を添加して水性塗料組成物を得た。
尚、この組成物のガラス転移温度の算術平均は9.60℃である。
得られた組成物にLPGを添加し、水性エアゾール塗料組成物を調製した。水性塗料組成物とLPGの体積比は、87:13である。
水性エアゾール塗料組成物をエアゾール容器に充填し、噴射塗布してフォームを得た。
【0057】
実施例5
樹脂としてアクリル樹脂(ニチゴ・モビニール(株)製、モビニール972)(Tg100℃)とウレタン樹脂(DIC(株)製、ウォーターゾールCD915)(Tg−50℃)とを使用し、37:63の重量比で混合(ブレンド)した。
この混合樹脂にメタノールを4重量%添加し、更に起泡剤(N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム)6重量%及び整泡剤(ステアリン酸アンモニウム水分散液)7重量%を添加して水性塗料組成物を得た。
尚、この組成物のガラス転移温度の算術平均は5.50℃である。
得られた組成物にLPGを添加し、水性エアゾール塗料組成物を調製した。水性塗料組成物とLPGの体積比は、85:15である。
水性エアゾール塗料組成物をエアゾール容器に充填し、噴射塗布してフォームを得た。
【0058】
(比較例)
2成分系において、ガラス転移温度の算術平均が5〜65℃の範囲以外あるいは比重が0.1を超えるエアゾール組成物を調製し、比較例とした。
このエアゾール組成物に対して、上記した実施例と同じ方法により評価した。
【0059】
比較例1
樹脂としてアクリル樹脂(ニチゴ・モビニール(株)製、モビニール972)(Tg100℃)とアクリル樹脂(ヘンケルテクノロジーズジャパン(株)製、ヨドゾールAD180)(Tg−20℃)を使用し、80:20の重量比で混合(ブレンド)した。
この混合樹脂にメタノールを13重量%添加し、更に起泡剤(N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム)6重量%及び整泡剤(ステアリン酸アンモニウム水分散液)6重量%を添加して水性塗料組成物を得た。
尚、この組成物のガラス転移温度の算術平均は76℃である。
得られた組成物にLPGを添加し、エアゾール組成物を調製した。水性塗料組成物とLPGの体積比は、87:13である。
エアゾール組成物をエアゾール容器に充填し、噴射塗布した。
【0060】
比較例2
樹脂としてアクリル樹脂(ヘンケルテクノロジーズジャパン(株)製、ヨドゾールAD176)(Tg70℃)とウレタン樹脂(DIC(株)製、ウォーターゾールCD915)(Tg−50℃)を使用し、44:56の重量比で混合(ブレンド)した。
この混合樹脂にメタノールを4重量%添加し、更に起泡剤(N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム)6重量%及び整泡剤(ステアリン酸アンモニウム水分散液)7重量%を添加して水性塗料組成物を得た。
尚、この組成物のガラス転移温度の算術平均は2.8℃である。
得られた組成物にLPGを添加し、エアゾール組成物を調製した。水性塗料組成物とLPGの体積比は、85:15である。
エアゾール組成物をエアゾール容器に充填し、噴射塗布した。
【0061】
比較例3
樹脂として塩化ビニル−アクリル共重合樹脂(日信化学工業(株)製、ビニブラン701)(Tg73℃)とアクリル樹脂(ヘンケルテクノロジーズジャパン(株)製、ヨドゾールAD180)(Tg−20℃)を使用し、50:50の重量比で混合(ブレンド)した。
この混合樹脂にエタノールを10重量%添加し、更に起泡剤(N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム)2重量%及び整泡剤(ステアリン酸アンモニウム水分散液)1重量%を添加して水性塗料組成物を得た。
尚、この組成物のガラス転移温度の算術平均は26.5℃である。
得られた組成物にLPGを添加し、エアゾール組成物を調製した。水性塗料組成物とLPGの体積比は、85:15である。
エアゾール組成物をエアゾール容器に充填し、噴射塗布した。
【0062】
上記実施例1〜5及び比較例1〜3に対する試験結果を表1に示す。また、実施例1〜5及び比較例1〜3の比重を表2に示す。尚、比重は、比重カップ(JIS K 5600−2−4)に噴射塗布して得られた噴射形成物の質量を計測し、その質量と体積から算出したものである。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
表1の結果より、実施例1〜5では、噴射塗布直後から24時間後も嵩高さの減少は見られなかった。実施例1〜3における24時間後の雪状物の嵩(残存高さ)は、噴射塗布直後の約93%、90%、87%であった。この雪状物の嵩は1ヶ月後も略変わらないことが確認された。一方、実施例4,5における24時間後のフォームの嵩(残存高さ)は、いずれも噴射塗布直後の約90%であった。このフォームの嵩は1ヶ月後も略変わらないことが確認された。
また、実施例1〜5のいずれの外観も噴射塗布直後と略変わらず、柔らかな質感が維持されており、雪状物の粉化あるいはフォームのひび割れ等が生じていないことが確認された。塗布直後から24時間後までの夫々の時間において、実際に雪状物又はフォームに触れてみたところ、柔らかな触感が得られた。
表2の結果より、実施例1〜5の雪状物又はフォームの比重は夫々0.1を大きく下回っており、実施例1〜5の雪状物又はフォームは、きめ細かな泡沫から形成されていることが確認された。
【0066】
一方、比較例1〜3では、噴射塗布直後から24時間後まで、その質感や形状が維持されていないことがわかる。
比較例1の噴射形成物は、噴射塗布直後は柔らかな質感の雪状を呈しており、24時間後も嵩は塗布直後の約90%であったが、時間経過とともに固化し、少しの衝撃で粉化することが確認された。
比較例2,3の噴射形成物は、噴射塗布直後から収縮して質感の低下が確認された。1時間後には、比較例2,3ともに雪状を呈しておらず、膜状化した。比較例2においては、ガラス転移温度の算術平均が低いため、水分が蒸発して乾燥するにつれて泡沫同士がくっついてしまったと考えられる。また、比較例3においては、比重が0.4と大きいため、きめ細かな泡沫が形成されず、噴射直後の水分の蒸発が著しく、即座に消泡してしまったためと考えられる。
【0067】
以上の結果より、使用した熱可塑性樹脂のガラス転移温度の算術平均が5〜65℃の範囲であり、且つ比重が0.1以下であると、嵩(ボリューム)が低下せず、粉化やひび割れが生じない柔らかな質感を維持できる雪状物又はフォームが得られることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、クリスマスツリー等の冬期の装飾用、映像、舞台等の装飾効果、化粧品類や食品類の疑似品等に好適に利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度の異なる少なくとも2種の熱可塑性樹脂とアルコールとを含有する水性塗料組成物と、噴射剤とから構成される水性エアゾール塗料組成物であって、前記夫々の熱可塑性樹脂の下式(数1)により算出されるガラス転移温度の算術平均が5〜65℃であり、対象物に対して噴射すると雪状又はフォーム状を呈する噴射形成物を形成し、前記噴射形成物の比重が0.1以下であることを特徴とする水性エアゾール塗料組成物。
(数1)


但し、n≧2
Tg:ガラス転移温度の算術平均値
Tg(ai):熱可塑性樹脂aiのガラス転移温度
Ai:熱可塑性樹脂固形分全重量に対する熱可塑性樹脂aiの固形分の重量(%)
【請求項2】
前記ガラス転移温度の算術平均が5〜15℃であり、前記噴射形成物がフォーム状を呈することを特徴とする請求項1記載の水性エアゾール塗料組成物。
【請求項3】
前記アルコールの含有量が前記水性塗料組成物の全量に対して1〜5重量%であることを特徴とする請求項2記載の水性エアゾール塗料組成物。
【請求項4】
前記ガラス転移温度の算術平均が15〜65℃であり、前記噴射形成物が雪状を呈することを特徴とする請求項1記載の水性エアゾール塗料組成物。
【請求項5】
前記アルコールの含有量が前記水性塗料組成物の全量に対して5〜15重量%であることを特徴とする請求項4記載の水性エアゾール塗料組成物。
【請求項6】
起泡剤及び/又は整泡剤を含むことを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の水性エアゾール塗料組成物。

【公開番号】特開2012−36352(P2012−36352A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180637(P2010−180637)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(593192058)ターナー色彩株式会社 (3)
【Fターム(参考)】