説明

水性エポキシ樹脂系

水性エポキシ樹脂系(ABC)であって、平均して、1分子当たり少なくとも1つのエポキシ基を有する水性分散エポキシ樹脂(A)と、少なくとも1つの第一級アミノ基及び少なくとも1つの第二級アミノ基を有するアミン(B1)とポリアルキレンエーテルポリオール(B21)及びエポキシド成分(B22)の付加物(B2)との反応生成物を含む水溶性又は水分散性硬化剤(B)と、質量分率が少なくとも0.1%のスルホネート基又はスルホン酸基を有するアミノプラスト化合物(C)とを含む、水性エポキシ樹脂系(ABC);厚層塗工のための被覆組成物(ABCD)であって、当該水性エポキシ樹脂系(ABC)と、タルク、マイカ、石英、二酸化チタン、二酸化アルミニウム、炭酸カルシウム及びドロマイトから成る群より選択される少なくとも1つの粒状充填材(D)とを含む、厚層塗工のための被覆組成物(ABCD);並びにこのような被覆組成物を用いて無機物又はコンクリート系の基体又は床面を被覆する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性エポキシ樹脂系に関し、特に無機物系の基体の床張り材(floorings)又は他の被覆剤(covering)に使用することができる水性エポキシ樹脂系に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂用の水性硬化剤は、一つには欧州公開特許第0 000 605A1に記載されている。これらは、少なくとも1つのポリアミンと、多官能性エポキシ化合物及びポリオキシアルキレンポリエーテルポリオールのエポキシ官能性付加物との反応生成物を含み、反応性エポキシ基よりもアミン系水素基が2〜10倍過剰に存在する。
【0003】
改良形態は、一つにはドイツ登録特許第198 48 113C2に記載されており、ここでは、過剰なポリアミンを蒸留除去して反応生成物を単離しなければならない。このような特異的に単離されたアミン付加物は、エポキシ樹脂及び水とともに水性被覆剤に処方されると、それらの可使時間の終わりを示すと報告されている。
【0004】
本発明を導く実験中、従来技術により既知であるエポキシ樹脂系は、厚層塗工に使用される際、依然として納得のゆくものではないことが分かった。特に床張り用途に関して、次の層を塗工する前にそれぞれ個々の層を乾燥及び硬化する必要がある多層を塗工するよりも、想定される厚みをもたらす被覆層を1層のみ塗工し得ることが望ましい。収縮並びにその結果生じる間隙及び亀裂の形成の問題から通常、1回の被覆工程において塗工することのできる層厚は制限される。
【特許文献1】欧州公開特許第0 000 605A1
【特許文献2】ドイツ登録特許第198 48 113C2
【特許文献3】米国特許第4,133,843号
【特許文献4】欧州公開特許第0 192 106A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、乾燥時の収縮により亀裂を形成することなく、乾燥時の層厚が少なくとも4mmで1回の被覆工程で塗工することができる水性エポキシ樹脂被覆系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、水性エポキシ樹脂系ABCであって、平均して、1分子当たり少なくとも1つのエポキシ基を有する水性分散エポキシ樹脂Aと;少なくとも1つの第一級アミノ基及び少なくとも1つの第二級アミノ基を有するアミンB1と、ポリアルキレンエーテルポリオールB21及びエポキシド成分B22の付加物B2との反応生成物を含む水溶性又は水分散性硬化剤Bと;質量分率が少なくとも0.1%のスルホネート基又はスルホン酸基を有するアミノプラスト化合物Cとを含む、水性エポキシ樹脂系ABCによって達成される。
【0007】
本発明はまた、水溶性又は水分散性硬化剤組成物BCであって、少なくとも1つの第一級アミノ基及び少なくとも1つの第二級アミノ基を有するアミンB1と、ポリアルキレンエーテルポリオールB21及びエポキシド成分B22の付加物B2との反応生成物と;質量分率が少なくとも0.1%のスルホネート基又はスルホン酸基を有するアミノプラスト化合物Cとの混合物を含む、水溶性又は水分散性硬化剤組成物BCに関する。
【0008】
本発明はまた、厚層塗工のための被覆組成物ABCDであって、平均して、1分子当たり少なくとも1つのエポキシ基を有する水性分散エポキシ樹脂Aと、少なくとも1つの第一級アミノ基及び少なくとも1つの第二級アミノ基を有するアミンB1とポリアルキレンエーテルポリオールB21及びエポキシド成分B22の付加物B2との反応生成物を含む水溶性又は水分散性硬化剤Bと、質量分率が少なくとも0.1%のスルホネート基又はスルホン酸基を有するアミノプラスト化合物Cとを含む、水性エポキシ樹脂系ABCと;タルク、マイカ、石英、二酸化チタン、二酸化アルミニウム、炭酸カルシウム及びドロマイトから成る群より選択される少なくとも1つの粒状充填材Dとを含む、厚層塗工のための被覆組成物ABCDに関する。
【0009】
本発明はさらに、コンクリート又は他の無機物系の基体、特に床面を被覆する方法であって、少なくとも1つの第一級アミノ基及び少なくとも1つの第二級アミノ基を有するアミンB1とポリアルキレンエーテルポリオールB21及びエポキシド成分B22の付加物B2との反応生成物を含む水溶性又は水分散性硬化剤Bと、質量分率が少なくとも0.1%のスルホネート基又はスルホン酸基を有するアミノプラスト化合物Cとを混合すること;混合物を水中に分散させること;タルク、マイカ、石英、二酸化チタン、二酸化アルミニウム、炭酸カルシウム及びドロマイトから成る群より選択される少なくとも1つの粒状充填材Dを添加すること;この組成物の使用を開始する前に、1分子当たり少なくとも1つのエポキシ基を有するエポキシド化合物を含むエポキシ樹脂Aをこれに添加すること;及びその後、このようにして得られた混合物をコンクリート又は他の無機物系の基体又は床面に塗工することを含む、コンクリート又は他の無機物系の基体を被覆する方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
水溶性又は水分散性硬化剤Bは、少なくとも1つの第一級アミノ基及び少なくとも1つの第二級アミノ基を有するアミンB1と、ポリアルキレンエーテルポリオールB21及びエポキシド成分B22の付加物B2との反応生成物を含む。
【0011】
アミンB1は好ましくは、純粋な脂肪族アミン、すなわち、直鎖、分岐鎖又は環状であってもよい脂肪族有機基のみが分子中に存在するアミンである。好ましい脂肪族アミンは、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、高級ジアミノポリエチレンイミン、1−(2−アミノエチル)ピペリジン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、及びN,N−ビス(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミンである。特に好ましいものは、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びそれらの混合物である。
【0012】
ポリエーテルポリオールB21は好ましくは、多官能性アルコール又はそれらの混合物へのアルキレン酸化物の付加生成物であり、例えば、ジオールエチレン及びプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、グリセロール等のトリオール、及びペンタエリスリトール又はソルビトール等の高級多官能性アルコールである。また、このような多価(すなわち、三官能性又は高級)アルコールの質量分率が全アルコールの質量の10%以下であることが好ましい。特に好ましいものは、ポリエチレングリコール、及びオキシエチレン部位とオキシプロピレン部位とを含むコポリマーであり、この場合、少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%の質量分率がオキシエチレン基から成る。
【0013】
エポキシ化合物B22は好ましくは、二価のアルコール若しくはフェノールのグリシジルエーテル、又はノボラック、又はジカルボン酸のグリシジルエステルである。フェノールのうち、レゾルシノール、ヒドロキノン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA)、ジヒドロキシジフェニルメタンの異性体の混合物(ビスフェノールF)、テトラブロモビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、2,2−ビス−[4−(2’−ヒドロキシプロポキシ)−フェニル]−プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−イソブタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)−プロパン、ビス−(2−ヒドロキシナフチル)−メタン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、並びに上記の化合物のハロゲン化物及び水和物である。ビスフェノールAをベースにしたエポキシ樹脂が特に好ましい。
【0014】
エポキシ化合物B22は好ましくは、0.5〜10mol/kg、さらに好ましくは1.0〜7.0mol/kgの比エポキシ基含有量(エポキシ化合物B22の質量で徐したエポキシ基を有する物質の量)を有する。エポキシ化合物B22は、置換されていても、非置換でもよく、脂肪族化合物及び脂肪族−芳香族混合化合物であってもよく、平均して、1分子当たり少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのエポキシ基を有し得る。エポキシ化合物B22はまた、その分子中にヒドロキシル基を有していてもよい。また、ジオレフィンのエポキシ化によって生成されるジエポキシアルカンを使用することもできる。特に好ましいものは、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(BADGE)及びビスフェノールFのジグリシジルエーテル、並びにBADGE及びビスフェノールAの発達産物(advancement products)をベースにしたエポキシ樹脂である。これらのBADGE系樹脂は通例、それらの重合度に応じてタイプ1、タイプ5、タイプ7等の樹脂で表わされる。BADGEとタイプ1エポキシ樹脂との混合物を使用することが特に好ましい。
【0015】
付加物は、三フッ化ホウ素等のルイス酸及びエーテル又はアミンを含むそれらの錯体から成る群より選択される触媒の存在下で、ポリエーテルポリオールB21とエポキシ化合物B22とを反応させることによって生成される。
【0016】
エポキシ樹脂Aは、非改質又は親水性改質エポキシ樹脂であってもよく、B22に記載したのと同じ群から選択される。エポキシ樹脂の親水性改質は、一般的な手法に従って、B2として記載されているような付加物を乳化剤としてエポキシ樹脂に添加し、この混合物を分散させることによって、又は非改質エポキシ樹脂を乳化剤の水性分散体に分散させることによって成される。
【0017】
本発明の硬化剤の特徴的な利点は、非改質エポキシ樹脂もこの硬化剤で効果的に乳化することができるため、親水性改質を用いる必要がないことである。この場合、質量分率が20%までのモノエポキシド等の反応性希釈剤、好ましくはグリシジルアルコールと脂肪族一価アルコール又は単官能性フェノールとのエーテルを添加することにより、エポキシ樹脂の粘度を低減させることが好ましい。BADGE自体等の液状エポキシ樹脂、及び改質された液状又は固形エポキシ樹脂を使用することが好ましく、これらの樹脂は、ブチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル及びクレジルグリシジルエーテル又はそれらの混合物から成る群より選択される反応性希釈剤と混合する。
【0018】
質量分率が少なくとも0.1%のスルホネート基又はスルホン酸基を有するアミノプラスト化合物Cは好ましくは、それらの構造中、質量分率が1%〜20%、好ましくは2%〜10%のスルホンアミド部位を含み、ここでは、ホルムアルデヒド、並びに、メラミン;尿素;アセトグアナミン、ベンゾグアナミン及びカプリノグアナミン等のグアナミン;チオ尿素;グリコールウリル;並びにエチレン尿素から成る群より選択されるアミノプラスト構成物と、アミノ官能性スルホン酸又はそれらの誘導体を共縮合することによって、スルホン酸基又はスルホネート基がアミノプラスト樹脂に組み込まれる。このようなスルホンアミド改質メラミン樹脂は、米国特許第4,133,843号及び欧州公開特許第0 192 106A1で詳細に記載されており、これらは参照により援用される。本発明よるアミノプラスト化合物Cを生成するための縮合に用いられ得るスルホンアミド化合物は好ましくは、アミドスルホン酸自体;アミノエタンスルホン酸;それらのアミド及び塩;並びにベンゼンスルホンアミド、トルエンスルホンアミド及びジフェニルスルホンアミド等のアリールスルホンアミドから成る群より選択される。これらの化合物はN−メチロール化合物の形成によって組み込まれ、このN−メチロール化合物はその後さらなるホルムアルデヒド及びアミノプラスト構成物と反応する。
【0019】
本発明の水性エポキシ樹脂系は好ましくは多段階法で製造され、当該多段階法は、
第1の工程として、ルイス酸又はその錯塩を触媒として用いて、ポリアルキレンエーテルポリオールB21及びエポキシ樹脂又はエポキシ化合物B22の付加物B2を調製すること、
B2のエポキシ基と、好ましくはB2の少なくとも90%のエポキシ基、より好ましくは少なくとも95%のエポキシ基、さらに好ましくは少なくとも98%のエポキシ基を消費して反応するアミンB1を添加すること、
必要に応じて、ポリカルボン酸B3を添加することであって、当該ポリカルボン酸B3が、残存するアミンB1と高温で反応してポリアミド又はアミドオリゴマーを形成する、添加すること、
上記の反応で生成された水を、好ましくは共沸蒸留によって除去すること、
必要に応じて、モノエポキシ化合物又はモノエポキシ化合物の混合物B4を添加すること、及び
必要に応じて、ポリアミン、好ましくはジアミンB5を添加すること、
必要に応じて、得られる生成物を酸で中和することであって、それにより少なくとも20%のアミノ基をそれぞれカチオンに変換する、中和すること、
必要に応じて中和された反応生成物を水中に分散させること、及び最後に、
スルホンアミド改質アミノプラスト樹脂Cを添加すること、及び必要に応じて、
さらなる水を添加することであって、それにより固体の質量分率を50%〜70%に調整する、さらなる水を添加すること
を含む。
【0020】
ポリカルボン酸、好ましくはジカルボン酸B3を添加して、残存するアミドを消費する。驚くべきことに、この反応で生成するポリアミド又はアミドオリゴマーのごく一部が、本発明の水性エポキシ樹脂系の特性を改良する。酸B3は好ましくは、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、それらの混合物、及びまた、C7〜C12酸等の他のジカルボン酸、並びに炭素数が50までの脂肪酸二量体から成る群より選択される。
【0021】
残存するアミン、またアミドオリゴマーを、モノエポキシドB4、例えば、ブチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、また芳香族モノエポキシ化合物(例えばクレジル若しくはキシレニルグリシジルエーテル)との反応により消費させる反応工程を含むことが有益であることも分かった。
【0022】
中和の1つ前の工程で、さらなる第一級アミンB5、特にジアミンを添加して、生成する反応生成物の親水性を改良することも好ましい。このようなジアミンは好ましくは、2つの第一級アミノ基を有するジアミン、すなわち、イソホロンジアミン等の脂環式ジアミン、トリメチルへキサンジアミン異性体等等の分岐鎖脂肪族アミン、並びに、メタ−キシリレンジアミン及びテトラメチルキシリレンジアミン等の、脂肪族炭素原子と結合するアミノ基を有する芳香族−脂肪族混合アミンから選択される。
【0023】
ポリカルボン酸B3を添加する工程、モノエポキシドB4を添加する工程、及びさらなるアミンB5を添加する工程を必要に応じて少なくとも1つ含むことが好ましい。
【0024】
好ましくは上記の方法に従って製造される本発明の水性エポキシ樹脂系は、任意のエポキシ樹脂系被覆剤(coatings)に使用することができる。このような水性系が、乾燥時の被覆層の厚みが1mmを超え、且つ2mm〜5mm又はそれ以上の層厚であっても乾燥時に亀裂を形成しない被覆層を得る厚層塗工に特に好適であることが分かった。この有益な特性は、明らかにアミノ硬化剤とスルホンアミド改質アミノプラスト樹脂添加剤との組み合わせによるものである。同一アミノ硬化剤と、改質アミノプラスト樹脂ではなく、エポキシ樹脂との類似の組み合わせを用いると、同じ塗工層厚みで亀裂が形成するのに対し、本発明による被覆系では亀裂は観察されない。
【実施例】
【0025】
本発明を以下の実施例でさらに例証する。
【0026】
[実施例1]
6kgのポリエチレングリコール600(平均モル質量600g/mol)、10.3kgのBADGE及び1.2kgのタイプ1エポキシ樹脂((登録商標)Epikote1001、Resolution BV)を混合し、30gの三フッ化ホウ素アミン錯体((登録商標)Anchor1040)を添加し、この混合物を80℃に加熱して透明な塊を得た。次に、温度を170℃まで上げて、窒素ブランケット下で5時間攪拌した後、エポキシ基含有量が一定値となった。4kgのキシレンを添加して、冷却した後、この添加物を10kgのトリエチレンテトラミンに徐々に添加した。その後、キシレンを部分的に蒸留除去し、1kgのアジピン酸を添加した。この工程で生成した水を、残存するキシレンとの共沸蒸留により除去した。
【0027】
[実施例2]
実施例1の反応混合物を、1.2kgのクレジルグリシジルエーテルと0.86kgのブチルグリシジルエーテルとの混合物で処理した。熱の発生が止まった後、1.3kgのメタキシレンジアミンを添加し、この混合物を2時間以上攪拌した。
【0028】
[実施例3]
900gの酢酸を、実施例1の生成物に(実施例3.1)、別の方法では実施例2の生成物に(実施例3.2)攪拌下で徐々に添加し、この反応混合物を14kgの脱イオン水中に高速攪拌下で注いだ。それぞれの場合で透明な溶液を得た。
【0029】
[実施例4]
実施例3.2の溶液の半分は変化させず(「CA0」と称する)、残りの半分を、70%強度の水溶液形態で、5kgのアミドスルホン酸ナトリウム塩改質メラミン樹脂と混合した。さらに500gの脱イオン水を添加することで粘度を調製し、66%強度の分散体を得た(硬化剤「CA1」と称する)。
【0030】
[実施例5]
以下の製法に従って、床張り用の被覆組成物を実施例3.2の硬化剤CA0から調製した。
【0031】
成分5.1:
8.6kgの硬化剤CA0を、6.7kgの脱イオン水、1.2kgのポリエーテル改質酸基含有湿潤剤兼分散剤((登録商標)Additol VXW 6208;Surface Specialties Austria GmbH)の60%強度溶液、0.6kgのシリコーン系消泡添加剤((登録商標)Efka 2527)、3.7kgの二酸化チタン顔料((登録商標)Kronos 2059、Kronos Titan GmbH)、5.7kgのマイカ((登録商標)Plastorit 000;Naintsch Mineralwerke)、34.8kgの石英微粉末(Quarzmehl W3、Quarzwerk Frechen)とともに所定の順序で混合し、溶解機中10分間、約4,000min−1で十分に分散させ、均質混合物を得た。混合中の温度は35℃未満に維持した。脱イオン水を別途(3.9kg)添加し、その後20.9kgのケイ砂(直径部分は0.1mm〜0.5mm)と、0.3mm〜0.9mmの直径範囲を有する13.9kgのケイ砂とを混合した。この混合物を約4分間2,000min−1で均質化した。
【0032】
成分5.2:
(登録商標)Beckopox EP 128(反応性希釈剤を含む液状エポキシ樹脂、比エポキシ基含有量5.1mol/kg、23℃における粘度1,100mPa・s;Surface Specialties Germany GmbH & Co. KG)。
【0033】
被覆組成物5:
9.7kgの成分5.2を成分5.1に添加し、均質に混合し、86%の固体質量分率及び約5.2:1の顔料対結合剤の質量比を有する被覆組成物を得た。混合物中の水の質量分率は約13%であった。エポキシ樹脂に対する硬化剤の化学量論比は90%であった。
【0034】
[実施例6]
以下の製法に従って、床張り用のさらなる被覆組成物を実施例4の硬化剤CA1から調製した。
【0035】
成分6.1
9.6kgの硬化剤CA1を6.5kgの脱イオン水、1.2kgの(登録商標)Additol VXW 6208湿潤剤兼分散剤、0.6kgの(登録商標)Efka 2527消泡剤、3.7kgの(登録商標)Kronos 2059二酸化チタン顔料、5.6kgの(登録商標)Plastorit 000タルク、34.5kgの石英微粉末(Quarzmehl W 3)とともに所定の順序で混合し、溶解機中10分間、4,000min−1で分散させた。その後、3.9kgの脱イオン水、0.1mm〜0.5mmの直径範囲を有する20.6kgのケイ砂、及び0.3mm〜0.9mmの直径範囲を有する13.8kgのケイ砂を添加し、約4分間2,000min−1で均質化した。
【0036】
成分6.2
(登録商標)Beckopox EP 128(反応性希釈剤を含む液状エポキシ樹脂、比エポキシ基含有量5.1mol/kg、23℃における粘度1,100mPa・s;Surface Specialties Germany GmbH & Co. KG)。
【0037】
被覆組成物6:
8.7kgの成分6.2を成分6.1に添加し、均質に混合し、86%の固体質量分率及び約5.2:1の顔料対結合剤の質量比を有する被覆組成物を得た。混合物中の水の質量分率は約13%であった。エポキシ樹脂に対する硬化剤の化学量論比は90%であった。
【0038】
[実施例7]
7mmの厚み及び90mmの直径を有する試験パネルに、被覆組成物5及び被覆組成物6をそれぞれ塗工した。この被覆層を40℃で2週間乾燥させ、同一条件下、湿度50%の標準的な相対湿度で室温(23℃)まで冷まし目視により検査した。被覆組成物6の場合には亀裂は形成しなかったが(図1の写真の右部)、被覆組成物5の場合には亀裂の形成が顕著であった(図1の写真の左部)。このことは添付の写真(図1)からも明らかである。より大きい面積を被覆すると、亀裂の形成はさらに明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例7における、被覆組成物5及び6を塗工した試験パネルの図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性エポキシ樹脂系(ABC)であって、
平均して、1分子当たり少なくとも1つのエポキシ基を有する水性分散エポキシ樹脂(A)と、
少なくとも1つの第一級アミノ基及び少なくとも1つの第二級アミノ基を有するアミン(B1)と、ポリアルキレンエーテルポリオール(B21)及びエポキシド成分(B22)の付加物(B2)との反応生成物を含む水溶性又は水分散性硬化剤(B)と、
質量分率が少なくとも0.1%のスルホネート基又はスルホン酸基を有するアミノプラスト化合物(C)と
を含む、水性エポキシ樹脂系。
【請求項2】
前記水性エポキシ樹脂系(ABC)であって、
前記硬化剤(B)が、請求項1に記載の前記成分(B1)と前記成分(B2)との前記反応生成物と、ポリカルボン酸(B3)、モノエポキシド(B4)及び第一級アミン(B5)から成る群より選択される少なくとも1つのさらなる成分とを含む、請求項1に記載の水性エポキシ樹脂系。
【請求項3】
水溶性又は水分散性硬化剤組成物(BC)であって、
少なくとも1つの第一級アミノ基及び少なくとも1つの第二級アミノ基を有するアミン(B1)と、ポリアルキレンエーテルポリオール(B21)及びエポキシド成分(B22)の付加物(B2)との反応生成物と;質量分率が少なくとも0.1%のスルホネート基又はスルホン酸基を有するアミノプラスト化合物(C)との混合物を含む、水溶性又は水分散性硬化剤組成物。
【請求項4】
請求項の水溶性又は水分散性硬化剤組成物(BC)を製造する方法であって、
第1の工程として、ルイス酸又はその錯塩を触媒として用いて、ポリアルキレンエーテルポリオール(B21)及びエポキシ樹脂又はエポキシ化合物(B22)の付加物(B2)を調製する工程と、
第2の工程として、(B2)のエポキシ基と、好ましくは(B2)の少なくとも90%のエポキシ基を消費して反応するアミン(B1)を添加する工程と、
第3の工程として、必要に応じて、得られた生成物を酸で中和する工程であって、それにより少なくとも20%の前記アミノ基をそれぞれカチオンに変換する、中和する工程と、
第4の工程として、必要に応じて中和された前記反応生成物を水中に分散させる工程と、最後に、
第5の工程として、スルホンアミド改質アミノプラスト樹脂(C)を添加する工程と
を含む、水溶性又は水分散性硬化剤組成物(BC)を製造する方法。
【請求項5】
前記第2の工程の後に、ポリカルボン酸(B3)を添加する工程であって、該ポリカルボン酸(B3)が、残存するアミン(B1)と高温で反応してポリアミド又はアミドオリゴマーを形成する、添加する工程と、その後、
前記反応で生成された水を、好ましくは共沸蒸留によって除去する工程と
をさらに含む、請求項4に記載の水溶性又は水分散性硬化剤組成物(BC)を製造する方法。
【請求項6】
前記第2の工程の後に、モノエポキシ化合物又はモノエポキシ化合物の混合物(B4)を添加する工程をさらに含む、請求項4に記載の水溶性又は水分散性硬化剤組成物(BC)を製造する方法。
【請求項7】
前記第2の工程の後に、第一級ポリアミン(B5)を添加する工程をさらに含む、請求項4に記載の水溶性又は水分散性硬化剤組成物(BC)を製造する方法。
【請求項8】
厚層塗工のための被覆組成物(ABCD)であって、
請求項1に記載の水性エポキシ樹脂系(ABC)と、
タルク、マイカ、石英、二酸化チタン、二酸化アルミニウム、炭酸カルシウム及びドロマイトから成る群より選択される少なくとも1つの粒状充填材(D)と
を含む、厚層塗工のための被覆組成物。
【請求項9】
厚層塗工のための被覆組成物(ABCD)であって、
請求項2に記載の水性エポキシ樹脂系(ABC)と、
タルク、マイカ、石英、二酸化チタン、二酸化アルミニウム、炭酸カルシウム及びドロマイトから成る群より選択される少なくとも1つの粒状充填材(D)と
を含む、厚層塗工のための被覆組成物。
【請求項10】
コンクリート又は他の無機物系の床面を被覆する方法であって、
少なくとも1つの第一級アミノ基及び少なくとも1つの第二級アミノ基を有するアミン(B1)と、ポリアルキレンエーテルポリオール(B21)及びエポキシド成分(B22)の付加物(B2)との反応生成物を含む水溶性又は水分散性硬化剤(B)と、質量分率が少なくとも0.1%のスルホネート基又はスルホン酸基を有するアミノプラスト化合物(C)とを混合すること、
該混合物を水中に分散させること、
タルク、マイカ、石英、二酸化チタン、二酸化アルミニウム、炭酸カルシウム及びドロマイトから成る群より選択される少なくとも1つの粒状充填材(D)を添加すること、
該組成物の使用を開始する前に、1分子当たり少なくとも1つのエポキシ基を有するエポキシド化合物を含むエポキシ樹脂(A)をこれに添加すること、及びその後、
このようにして得られた混合物をコンクリート又は無機物系の床面に塗工すること
を含む、コンクリート又は他の無機物系の床面を被覆する方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−516061(P2008−516061A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536036(P2007−536036)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010564
【国際公開番号】WO2006/040024
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(505456584)サイテク サーフェィス スペシャルティーズ オーストリア ゲーエムベーハー (16)
【Fターム(参考)】