説明

水性エマルジョン接着剤

【課題】接着後に耐熱クリープ性が早期に発現する水性エマルジョン接着剤を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)エチレン−酢酸ビニル共重合体、(B)ポリウレタン樹脂、(C)ガラス転移温度が40〜120℃、重量平均分子量が3万以上100万以下であり、かつ、熱流動中点温度が160℃以上300℃以下である熱可塑性樹脂、及び(D)可塑剤を含有する水性エマルジョン接着剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水性エマルジョン接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の大気汚染、作業環境改善、資源等の有効活用の観点から、有機溶剤型の接着剤等の代わりに水性の接着剤等が使用されてきている。
【0003】
しかし、水性接着剤は、有機溶剤型接着剤に比べて初期接着性が十分でない場合がある。この場合、基材へ表装シートを貼付する場合に上記水性接着剤を用いると、表装シートの浮き上がり等の外観不良をもたらすことがある。
【0004】
また、接着剤を塗布して乾燥させた後、加熱等により接着力を回復させて相手材と接着させるドライ接着性については、有機溶剤型及び水性接着剤のいずれも、接着不良を起こす場合があった。
【0005】
これに対し、初期接着性及びドライ接着性に優れた水性接着剤として、特許文献1に開示された接着剤が提案されている。この水性接着剤は、所定のウレタン樹脂エマルジョン及び所定のエチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョンを含有する組成物である。
【0006】
ところで、このような水性接着剤を用いた場合であっても、ドライ接着において、初期接着性を十分に発揮できない場合や、耐熱クリープ性が不足して、加熱時に接着剤の流れや被着材のずり落ちが生じる場合がある。
【0007】
これに対し、耐熱クリープ性を向上させた水性接着剤として、所定のエチレン−酢酸ビニル共重合体及び水性ポリウレタンを含む水性エマルジョン接着剤(特許文献2)や、所定の(メタ)アクリル系重合体、ポリウレタン、及び架橋剤を含有する水性エマルジョン接着剤(特許文献3)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−140126号公報
【特許文献2】特開平11−209722号公報
【特許文献3】特開2004−067803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の特許文献2や3に記載の水性エマルジョン接着剤は、接着後、耐熱クリープ性が十分発現するまでに時間を要する。このため、これらの水性エマルジョン接着剤を用いた後、早期に使用することが困難となっている。
【0010】
そこで、この発明は、接着後に耐熱クリープ性が早期に発現する水性エマルジョン接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、(A)エチレン−酢酸ビニル共重合体、(B)ポリウレタン樹脂、(C)ガラス転移温度が40〜120℃、重量平均分子量が3万以上100万以下であり、かつ、熱流動中点温度が160℃以上300℃以下である熱可塑性樹脂、及び(D)可塑剤を含有する水性エマルジョン接着剤を用いることにより、上記の課題を解決したのである。
【発明の効果】
【0012】
エチレン−酢酸ビニル共重合体((A)成分)、ポリウレタン樹脂((B)成分)、所定の熱可塑性樹脂((C)成分)、及び可塑剤((D)成分)を用いて、水性エマルジョン接着剤とすることにより、接着後に耐熱クリープ性を早期に発現させることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例における熱流動中点温度(1/2法溶融温度)の測定用グラフ
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明にかかる水性エマルジョン接着剤は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、「(A)成分」と略する。)、ポリウレタン樹脂(以下、「(B)成分」と略する。)、所定の熱可塑性樹脂(以下、「(C)成分」と略する。)、及び可塑剤(以下、「(D)成分」と略する。)を含有する接着剤である。
【0015】
[(A)成分]
(A)成分である上記エチレン−酢酸ビニル共重合体は、エチレンと酢酸ビニルとからなる共重合体であり、必要に応じて、エステル部分が部分的に又は全体的に加水分解されたものであってもよい。
【0016】
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体中のエチレン含有量は、50重量%以下がよく、30重量%以下が好ましい。50重量%より多いと、耐熱クリープ性が不足する傾向となる。一方、エチレン含有量の下限は、5重量%がよく、10重量%が好ましい。5重量%より少ないと、接着性が低下する傾向となる。
【0017】
また、上記エチレン−酢酸ビニル共重合体の重量平均分子量は、20万〜100万がよく、50万〜85万が好ましい。20万より小さいと、耐熱性が不足する傾向となる。一方、100万より大きいと、密着性が低下し、低温接着性が悪化する場合がある。
【0018】
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体には、必要に応じて、他のモノマーを共重合させてもよい。このようなモノマーとしては、アクリル酸2─エチルヘキシル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステル;バーサチック酸ビニル等のビニルエステル、塩化ビニル等があげられる。また、アクリル酸、メタクリル酸のようにカルボキシル基を含有するモノマーの他、スルホン酸基、水酸基、エポキシ基、メチロール基、アミノ基、アミド基等の官能基を含有する各種モノマーも用いることができる。
【0019】
上記(A)成分は、水に酢酸ビニル、乳化剤及び重合触媒を添加し、次いでこの系にエチレンガスを所定量加えて加温し、乳化重合を行うことによりエマルジョン状態として得ることができる。このときの温度、圧力等の条件、重合触媒等は通常使用される条件や重合触媒を使用することができる。さらに、上記乳化剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤があげられ、これらは単独で用いられても、二種以上が併用されてもよい。また、上記界面活性剤に加えて、反応性の二重結合を有する反応性界面活性剤や、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と略する。)、デンプン等の水溶性高分子を併用することもできる。
【0020】
このようなエチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョンの好ましい具体例としては、住友化学工業(株)製スミカフレックスS−201HQ、S−305、S−305HQ、S−400HQ、S−401HQ、S−408HQE、S−450HQ、S−455HQ、S−456HQ、S−460HQ、S−467HQ、S−470HQ、S−480HQ、S−510HQ、S−520HQ、S−752、S−755、昭和高分子(株)製ポリゾールAD−2、AD−5、AD−6、AD−10、AD−11、AD−14、AD−56、AD−70、AD−92、(株)クラレ製パンフレックスOM−4000、OM−4200、OM−28、OM−5000、OM−5010、OM−5500などがあげられる。
【0021】
この(A)成分を含む水性エマルジョンの固形分濃度は、40〜70重量%、さらには45〜65重量%であるのが、接着剤使用時の作業性、機械的安定性、初期接着性、接着物の仕上がり性などの点から好ましい。
【0022】
前記(A)成分を含む水性エマルジョンは、プラスチックフィルムとの接着性、とくに耐水接着性、耐熱クリープ性を維持するために使用される成分であり、従来からプラスチックフィルムオーバーレイ用接着剤に使用されているエマルジョンであれば、とくに限定なく使用しうる。
【0023】
[(B)成分]
(B)成分である上記ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネートとポリオールとの重縮合体であり、水性エマルジョンにすることができれば、特に限定なく使用できる。
【0024】
上記ポリウレタン樹脂の水性エマルジョンの固形分濃度は、接着剤使用時の作業性、機械的安定性の点から、20〜60%がよく、さらには35〜55%が好ましい。
【0025】
上記ポリウレタン樹脂の水性エマルジョンの好ましい具体例としては、住化バイエルウレタン(株)製、ディスパコールU−42、U−53、U−54、U−56、大日本インキ化学工業(株)製ハイドランHW−311、HW−333、HW−350、HW−337、HW−375、AP−20、AP−60LM、AP−80、三洋化成工業(株)製サンプレンUXA−3005、UX−312、第一工業製薬(株)製スーパーフレックス107M、110、126、130、150、160、300、361、370、410、420、460、500、700、750、820などがあげられる。
【0026】
[(C)成分]
(C)成分の熱可塑性樹脂としては、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物を主成分とするスチレン系重合体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等の(メタ)アクリル酸系単量体を主成分とする(メタ)アクリル系重合体、(メタ)アクリルアミド類を主成分とするポリ(メタ)アクリルアミド系重合体、(メタ)アクリロニトリル等のニトリル系単量体を主成分とするニトリル系重合体や、その共重合体があげられ、その中で、所定のガラス転移温度、所定の重量平均分子量、所定の熱流動中点温度の条件を有する樹脂が用いられる。これらの条件を有する熱可塑性樹脂を用いるので、初期接着性及び耐熱性に優れているという特徴を発揮することができる。
【0027】
上記ガラス転移温度は、40℃以上が必要で、60℃以上が好ましい。40℃より低いと、耐熱クリープ性が低下するという問題点を有する。一方、上限は120℃であり、100℃が好ましい。120℃より高いと、被着体との密着性が低下するという問題点を有する。
【0028】
上記重量平均分子量は、3万以上が必要で、20万以上が好ましい。3万より小さいと、耐熱クリープ性が低下するという問題点を有する。一方、上限は100万であり、40万が好ましい。100万より大きいと、被着体との密着性が低下するという問題点を有する。
【0029】
上記熱流動中点温度とは、フローテスター(例えば、(株)島津製作所製:CFT−500)を用いて、30kgの荷重下、毎分3℃の昇温速度で測定された、1/2法における溶融温度をいう。この熱流動中点温度は、160℃以上が必要で、200℃以上が好ましい。160℃より低いと、耐熱クリープ性が低下するという問題点を有する。一方、上限は300℃であり、250℃が好ましい。300℃より高いと、被着体との密着性が低下するという問題点を有する。
【0030】
上記の中でも、ガラス転移温度や熱流動中点温度の調整のしやすさや、入手の利便性等の観点から、(メタ)アクリル酸系重合体及びスチレン系重合体から選ばれ得る少なくとも1種の樹脂で、上記の各条件を満たす熱可塑性樹脂が好ましい。
【0031】
上記(C)成分は、所定の単量体を単独重合又は共重合することにより製造されるが、この重合形態としては、乳化重合が好ましい。乳化重合することにより、(C)成分の水性エマルジョンが得られ、これを用いることにより、この発明にかかる接着剤組成物を水性にすることが容易になる。
【0032】
上記(C)成分の乳化重合としては、公知の方法を採用することができる。乳化重合における重合温度、重合開始剤等は、公知の種類、条件を用いることができる。また、保護コロイド剤としては、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸やスチレン−マレイン酸共重合体等のカルボキシル基含有重合体のアルカリ金属塩等の水溶性樹脂や、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン等を用いることができる。この保護コロイド剤の中でも、ポリビニルアルコールを用いると、混合安定性の点で好ましい。
【0033】
上記乳化重合に用いられる乳化剤としては、公知のアニオン系、ノニオン系、カチオン系等の両性系の乳化剤を特に限定することなく使用できるが、中でも、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレン硫酸エステルナトリウム塩等のアニオン性界面活性剤、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドブロック共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のノニオン性界面活性剤が好ましく用いられる。
【0034】
[(D)成分]
(D)成分として用いられる上記可塑剤は、接着剤塗膜の低温での造膜性改良や、柔軟性付与及びフィルム等の被着体への濡れ性付与の目的で使用される。この目的に適合する可塑剤としては、アジピン酸メチル、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールイソブチレート等があげられる。これらの中でも、アジピン酸メチル、コハク酸ジメチル及びグルタル酸ジメチルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物は、造膜性や揮発性有機化合物(VOC)の点で好ましく、また、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールイソブチレートは、塗膜の柔軟性やVOCの点で好ましい。
【0035】
[各成分の混合]
上記(B)成分の含有量は、上記(A)成分100重量部(固形分)あたり、固形分で2重量部以上がよく、3重量部以上が好ましい。2重量部より少ないと、被着体への密着性が低下することがある。一方、上限は、50重量部がよく、30重量部が好ましい。50重量部より多いと、耐熱クリープ性が悪化する傾向がある。
【0036】
さらに、上記(C)成分の含有量は、上記(A)成分100重量部(固形分)あたり、固形分で5重量部以上がよく、10重量部以上が好ましい。5重量部より少ないと、耐熱クリープ性が悪化することがある。一方、上限は、30重量部がよく、25重量部が好ましい。30重量部より多いと、被着体への密着性が低下することがある。
【0037】
また、上記(D)成分の含有割合は、上記の(A)成分に対して、5重量%以上がよく、10重量%以上が好ましい。5重量%より少ないと、造膜性改良効果が十分得られないおそれがある。一方、上限は、50重量%がよく、40重量%が好ましい。50重量%より多いと、生成塗膜が過度に柔軟となり、接着層の凝集力が低下したり、耐熱クリープ性が悪化することがある。
【0038】
上記の(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の混合物の熱流動中点温度は、160℃以上がよく、180℃以上が好ましい。160℃より低いと、耐熱クリープ性が悪化するという問題点を有する。一方、上限は210℃がよく、200℃が好ましい。210℃より高いと、被着体への密着性が低下するという問題点を有する。
【0039】
[(E)成分]
この発明にかかる水性エマルジョン接着剤は、上記の(A)成分〜(D)成分に、さらに、(E)成分として、多価イソシアネート化合物を含有させてもよい。この(E)成分を用いることにより、接着層内、又は接着層と被着体との間での架橋反応による接着層の凝集力の増大や、接着強度の向上が可能となる。
【0040】
上記(E)成分の含有割合は、上記の(A)成分、(B)成分及び(C)成分の固形分合計量を100重量%としたとき、0.5重量%以上がよく、5重量%以上が好ましい。0.5重量%より少ないと、添加による効果が十分得られない傾向がある。一方、上限は30重量%がよく、15重量%が好ましい。30重量%より多いと、接着層が硬くなって、接着力が低下したり、脆くなることがある。
【0041】
[その他の添加物]
この発明にかかる水性エマルジョン接着剤は、必要に応じて、この発明の目的効果を阻害しない範囲で、フィラー、熱安定剤、酸化防止剤、粘度調整剤等の添加剤を添加することができる。
【0042】
[水性エマルジョン接着剤の製造]
この発明にかかる水性エマルジョン接着剤は、それぞれ製造した(A)成分〜(D)成分、上記した割合で混合し、さらに、必要に応じて、上記(E)成分を含むその他の成分を混合することにより製造することができる。
【実施例】
【0043】
以下、この発明を、実施例を用いてより具体的に示す。なお、この発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
<物性測定・評価方法>
[不揮発分の測定]
JIS K6828−1996に記載の方法にしたがって測定した。
【0045】
[重量平均分子量の測定]
試料20mgを30mlのバイアル瓶に採取し、安定剤としてBHT(3,5−ジブチル−4−ヒドロキシトルエン)を0.04重量%含有するオルトジクロロベンゼン20gを添加した。135℃に加熱したオイルバスを用いて試料を溶解させた後、孔径3μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルターにて熱濾過を行い、ポリマー濃度0.1重量%の試料溶液を調製した。
次に、カラムとしてTSKgel GM H−HT(30cm×4本)及びRI検出器を装着したウォーターズ(Waters)社製GPC150CVを使用し、GPC測定を行い、ポリスチレン換算で、重量平均分子量を算出した。
測定条件としては、試料溶液のインジェクション量:500μl、カラム温度:135℃、溶媒:オルトジクロロベンゼン、流量:1.0ml/minを採用した。
【0046】
[ガラス転移温度(Tg)]
ビニル重合体中の各構成単量体a,b,…の構成重量分率をWa,Wb,…とし、各構成単位a,b,…の単独重合体のガラス転移温度をTga,Tgb,…としたとき、下記に示すFOXの式で、共重合であるビニル重合体のTgの値を求めた。
1/Tg=Wa/Tga+Wb/Tgb+…
【0047】
[熱流動中点温度(1/2法の溶融温度)の測定]
まず、後述する基材上に、測定対象の試料1gをアプリケーターで塗布し、23℃×50%RHで7日間処理し、サンプル皮膜を作成した。
次いで、フローテスター((株)島津製作所製:島津フローテスター(CFT−500D))にて、1mmφ×1mmLのダイを用い、荷重30kg、ホールド時間を600秒として、3℃/分の割合で60℃から300℃まで昇温した際の、プランジャーが降下量と温度(時間)との関係を記録し、そのグラフから熱流動中点温度(1/2法の溶融温度)を算出した。上記グラフからの具体的な算出方法は、下記の通りである。
上記グラフは、一般的に図1に示すようなグラフとなる。温度上昇に対して、プランジャーの降下は、2度停滞するが、一度目に停滞したときのプランジャーの降下量、すなわちプランジャーのピストンストローク量をSmin、二度目のプランジャーの降下量、すなわちプランジャーのピストンストローク量をSmaxとしたとき、SminとSmaxの中間点Yは、下記の式で算出される。
Y=(Smin+Smax)/2
そして、上記グラフから、ピストンストローク量がYのときの温度Aを上記グラフから読み取る。この温度Aが、熱流動中点温度(1/2法の溶融温度)となる。
【0048】
[耐熱クリープの測定]
試料を合板にアプリケーターで塗布量が固形分で35g/mとなるように塗工し、ポリオレフィンシート((株)トッパン・コスモ製:エコシート)を貼り合わせ、低温(5℃)で5時間養生してPO化粧板を得た。
また、試料を合板にアプリケーターで塗布量が固形分で35g/mとなるように塗工し、ポリエチレンテレフタレートシート(大日本印刷(株)製:コンサート)を貼り合わせ、低温(5℃)で3日間養生してPET化粧板を得た。
得られたPO化粧板及びPET化粧板を70℃雰囲気中に配し、各化粧板に貼った各シートに、500g/25mmの静荷重を90度角方向にかけ、24時間後の剥離の長さを測定することにより、耐熱クリープを求めた。
【0049】
<原材料>
[(A)成分]
・エチレン−酢酸ビニル重合体…住友化学(株)製:S−455HQ、以下、「S−455HQ」と称する。
【0050】
[(B)成分]
・ウレタン樹脂…三洋化成工業(株)製:UXA−3005、以下、「UXA−3005」と称する。
【0051】
[(C)成分]
(単量体)
・スチレン…三菱化学(株)製、以下、「SM」と称する。
・メタクリル酸メチル…三菱レイヨン(株)製、以下、「MMA」と称する。
・アクリル酸…三菱化学(株)製、以下、「AA」と称する。
・アクリル酸ブチル…三菱化学(株)製、以下、「BA」と称する。
・アクリルアマイド…ダイヤニトリックス(株)製、以下、「AAm」と称する。
・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル…(株)日本触媒製、以下、「HEMA」と称する。
【0052】
(乳化剤)
・ポリビニルアルコール…日本合成化学工業(株)製:ゴーセランL−3266、以下、「L−3266」と称する。
・アニオン乳化剤…互応化学工業(株)製:ノイボールE−150C、以下、「E−150C」と称する。
・アニオン乳化剤…三洋化成工業(株)製:エレミノールES−70、以下、「ES−70」と称する。
・アニオン乳化剤…三洋化成工業(株)製:エレミノールCLS−20、以下、「CLS−20」と称する。
・ノニオン乳化剤…三洋化成工業(株)製:ノニポール200、以下、「ノニポール200」と称する。
・ノニオン乳化剤…三洋化成工業(株)製:ノニポール400、以下、「ノニポール400」と称する。
(その他)
・重合開始剤…(株)ADEKA製:過硫酸カリウム、以下、「KPS」と称する。
・還元剤(反応促進剤)…大盛化工(株)製:25%アンモニア水、以下、「25%AM」と称する。
【0053】
[(D)成分]
・可塑剤…インビスタジャパン(株)製:DBE(コハク酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチルの混合物)、以下、「DBE」と称する。
【0054】
[(E)成分]
・多価イソシアネート…中央理化工業(株)製:ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)三量体、以下、「BA−11B」と称する。
【0055】
<(C)成分の製造>
[製造例1、2、4、比較製造例1]
撹拌機、還流冷却器及び原料投入口を備えたフラスコに、単量体100重量部あたり、水100重量部及び保護コロイド剤としてL−3266、CLS−20を表1に示す量を投入して、75℃に昇温した。その後、KPS0.25重量部、25%AM0.25重量部及びこれに水を加えて1.65重量部とした溶液を添加した後、表1に示す量の単量体の混合液を3時間かけて滴下して乳化重合を行い、反応終了後、冷却して共重合体分散液を得た。
【0056】
[製造例3]
撹拌機、還流冷却器及び原料投入口を備えたフラスコに、単量体100重量部あたり、水100重量部及び乳化剤として、E−150C及びノニポール400を表1に示す量を投入して、75℃に昇温した。その後、KPS0.25重量部、25%AM0.25重量部、及びこれに水を加えて1.1重量部とした溶液を添加した後、表1に示す量の単量体の混合液を2.5時間かけて滴下して乳化重合を行い、反応終了後、冷却して共重合体分散液を得た。
【0057】
[比較製造例2]
撹拌機、還流冷却器及び原料投入口を備えたフラスコに、単量体100重量部あたり、水100重量部、及び乳化剤としてES−70及びノニポール200を表1に示す量を投入して75℃に昇温した。その後、KPS0.4重量部に水を加えて3.6重量部とした溶液を添加した後、表1に示す量の単量体の混合液を4時間かけて滴下して乳化重合を行い、反応終了後、冷却して共重合体分散液を得た。
【0058】
【表1】

【0059】
<接着剤の製造>
[実施例1〜5、比較例1〜3]
表1に記載の各共重合分散液を、表2に記載の重量割合で混合し、接着剤組成物を作製した。得られた接着剤を用いて、上記<物性測定・評価方法>に記載の方法にしたがって評価した。その結果を表2に示す。
【0060】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチレン−酢酸ビニル共重合体、(B)ポリウレタン樹脂、(C)ガラス転移温度が40〜120℃、重量平均分子量が3万以上100万以下であり、かつ、熱流動中点温度が160℃以上300℃以下である熱可塑性樹脂、及び(D)可塑剤を含有する水性エマルジョン接着剤。
【請求項2】
上記(A)成分100重量部(固形分)あたり、上記(B)成分を2〜50重量部(固形分)、及び上記(C)成分を5〜30重量部(固形分)含有し、かつ、上記の(A)成分に対して、上記(D)成分を5〜50重量%含有する請求項1に記載の水性エマルジョン接着剤。
【請求項3】
上記(C)成分は、(メタ)アクリル酸系重合体及びスチレン系重合体から選ばれ得る少なくとも1種である請求項1又は2に記載の水性エマルジョン接着剤。
【請求項4】
上記(C)成分は、保護コロイド剤として、ポリビニルアルコールを用いたものである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水性エマルジョン接着剤。
【請求項5】
上記(D)成分は、アジピン酸メチル、コハク酸ジメチル及びグルタル酸ジメチルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水性エマルジョン接着剤。
【請求項6】
上記(D)成分は、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールイソブチレートである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水性エマルジョン接着剤。
【請求項7】
上記の(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の混合樹脂の熱流動中点温度が160℃以上210℃以下である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の水性エマルジョン接着剤。
【請求項8】
さらに、(E)成分として、多価イソシアネート化合物を含有する請求項1乃至7のいずれか1項に記載の水性エマルジョン接着剤。
【請求項9】
上記(E)成分は、上記の(A)成分、(B)成分及び(C)成分の固形分合計量100重量%としたとき、0.5〜30重量%である請求項8に記載の水性エマルジョン接着剤。

【図1】
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【公開番号】特開2012−149103(P2012−149103A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292106(P2010−292106)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000211020)中央理化工業株式会社 (65)
【Fターム(参考)】