説明

水性ゲル状化粧料

【課題】 肌にはり感を与える効果に優れ、化粧料塗布中のぬめり感や、化粧料塗布後のべたつき感が抑制された、優れた使用性の水性ゲル状化粧料を提供するものである。
【解決手段】 水中に微粒化された固形油粉末が分散している水性ゲル状化粧料。また、水中にガス中蒸発法により微粒化された固形油粉末が分散している水性ゲル状化粧料。また、前記固形油粉末の平均粒径が100nm〜1μmであることを特徴とする前記水性ゲル状化粧料。そして、前記固形油粉末の融点が40〜80℃であることを特徴とする前記水性ゲル状化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中に微粒化された固形油粉末が分散している水性ゲル状化粧料に関するものであり、肌にはり感を与える効果に優れ、化粧料塗布中のぬめり感や、化粧料塗布後のべたつき感が抑制された、優れた使用性の水性ゲル状化粧料に関するものである。また、水中にガス中蒸発法により微粒化された固形油粉末が分散している水性ゲル状化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水性ゲル状化粧料とは、アニオン性やノニオン性等の水溶性高分子や水膨潤性粘土鉱物等のゲル化剤により水をゲル化させた化粧料であり、みずみずしい使用感に優れた剤型として、様々な化粧料に汎用されている。
【0003】
一方、化粧料において、たるんだ肌を引っ張り、肌にはり感を与えることにより、外見的にも内面的(心理的)にも若返ったように感じさせる化粧料が開発されている。従来、このような肌にはり感を与える化粧料は、皮膜形成性の水溶性高分子を配合したり、固形油を粉末状態で分散するのではなく水中油型乳化化粧料の内油相中に配合する等により具現化されていた。
【0004】
しかし、皮膜形成性の水溶性高分子を配合することにより、はり感を付与する化粧料では、化粧料塗布時にぬめり感を感じる場合があり、消費者から好まれていなかった。
【0005】
また、固形油を粉末状態で分散するのではなく水中油型乳化化粧料の内油相中に配合することことにより、はり感を高めた化粧料では、肌上に油膜が形成されるため、化粧料塗布後にべたつき感を感じる場合があり、同様に消費者からこのまれていなかった。
【0006】
このため、水性ゲル状化粧料の使用中のぬめり感や使用後のべたつき感を抑えるため、種々の検討がなされている。例えば、特定HLBのポリグリセリンイソステアリン酸エステルを配合する技術(例えば、特許文献1参照。)、架橋型ポリアクリル酸等の吸水性ポリマーを配合する技術(例えば、特許文献2参照。)等が挙げられる。
【0007】
【特許文献1】特開平11−152205号公報(第1頁−第9頁)
【特許文献2】特開2000−327516号公報(第1頁−第6頁)
【0008】
しかしながら、これらの方法では、十分なはり感を維持しつつ、使用中のぬめり感や使用後のべたつき感を抑制することはできなかった。このため、肌にはり感を与える効果に優れ、化粧料塗布中のぬめり感や、化粧料塗布後のべたつき感が抑制された、優れた使用性の水性ゲル状化粧料の開発が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者は、上記実状に鑑み鋭意検討を重ねた結果、水中に微粒化された固形油粉末を分散して得られる水性ゲル状化粧料が、前記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。また、前記微粒化されて固形油粉末として、ガス中蒸発法により微粒化された固形油粉末を用いることにより、優れた水性ゲル状化粧料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち本発明は、水中に微粒化された固形油粉末が分散していることを特徴とする水性ゲル状化粧料を提供するものである。
また、前記固形油粉末の平均粒径が100nm〜1μmであることを特徴とする前記水性ゲル状化粧料を提供するものである。
【0011】
そして、前記固形油粉末の融点が40〜80℃であることを特徴とする前記何れかの水性ゲル状化粧料を提供するものである。
【0012】
更に、前記固形油粉末の配合量が0.01〜5質量%であることを特徴とする前記何れかの水性ゲル状化粧料を提供するものである。
【0013】
そして更に、前記固形油粉末が、ガス中蒸発法により微粒化された固形油粉末であることを特徴とする前記何れかの水性ゲル状化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水性ゲル状化粧料は、肌にはり感を与える効果に優れ、化粧料塗布中のぬめり感や、化粧料塗布後のべたつき感が抑制された、優れた使用性の水性ゲル状化粧料に関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のゲル状化粧料に用いられる固形油粉末は、固形油を微粒化した粉末であり、平均粒径は、100nm〜1μmが好ましい。この範囲であれば水性ゲル状化粧料に、より優れたはり感を付与することができる。尚、本発明において、平均粒径の測定方法は、レーザー散乱式粒度分布測定法にて測定した値である。
【0016】
固形油の微粒化方法としては、(1)ジェットマイザー等の機械的粉砕方法、(2)固形油を溶媒に溶解し、これを噴霧乾燥する方法、(3)固形油をマイクロエマルション化してこれを乾燥する方法、(4)液中で固形油を粒子状に析出させる方法、(5)ガス中蒸発法等がある。これら従来の方法の中でも、平均粒径を1μm以下にすることに適しているのは、(5)ガス中蒸発法である。また、(5)ガス中蒸発法により得られる粒子は、形状が粒子が丸みを帯びているため、水性ゲル状化粧料に配合した場合に、はり感付与する効果がより優れ、使用中のぬめり感や使用後のべたつき感を抑制する効果にも優れていた。
【0017】
ガス中蒸発法とは、不活性ガスを導入した真空容器内で固形油を加熱し、蒸発させ、得られた蒸気を前記不活性ガス中で冷却・凝結させることにより、固形油粉末を得る方法である。この方法には、その加熱方法により、抵抗加熱法、プラズマジェット加熱法、誘導加熱法、電子ビーム加熱法、レーザービーム加熱法、スパッタリング法等が知られている。前記ガス中蒸発法に用いられる不活性ガスとは、ヘリウム、アルゴン、窒素等が挙げられる。また、前記ガス中蒸発法における真空度は、10Torr以下が好ましい。
【0018】
ガス中蒸発法における固形油粉末の粒径は、真空容器内の圧力に影響されるので、これを制御することにより、目的とする粒径の粉末を得ることができる。また、粒径と圧力の関係を物質ごとに予め測定しておき、これに基づく検量線を得ておくことが好ましい。一般に不活性ガス圧力が0.01Torr〜10Torrの範囲内で得られる固形油粉末の粒径は約50〜4000nmの範囲で変化し、不活性ガス圧力が小さい(すなわち、真空度が高い)程、粒径が小さい粉末を得ることができる。
【0019】
また、ガス中蒸発法により微粒化された固形油粉末は、固形油をその融点により精製できるという効果も有している。化粧料において、配合成分中の不純物は、経時的な酸化反応の進行による変色や変臭、皮膚への刺激等の好ましくない現象を引き起こすため、できるだけ除去するのが好ましい。本ガス中蒸発法では、加熱条件の制御により、好ましくない融点範囲の物質を除去することが可能となり、微粒化された固形油粉末も精製される。
【0020】
本発明において、微粒化に用いられる固形油は、通常の化粧料に配合される室温で固形を呈する油剤である。具体的には、パルミチン酸セチル、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、エチレンプロピレンコポリマー、合成炭化水素ワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、セラック、鯨ロウ、合成ゲイロウ、ミツロウ、モンタンワックス、オゾケライト、セレシンワックス、パラフィンワックス、ステアリン酸、ベヘン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、シリコーンワックス、ステアリン酸コレステリル、含フッ素ワックス等が挙げられ、これらより一種又は二種以上用いることができる。本発明においては、これら油剤の中でも、フィッシャートロプシュワックス、合成炭化水素ワックス、鯨ロウ、合成ゲイロウ、キャンデリラワックス、パラフィンワックス、ステアリン酸、ベヘン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、シリコーンワックス、マイクロクリスタリンワックスから選ばれる融点が40〜80℃の固形油を用いることにより、肌上でののび広がりとはり感に優れた水性ゲル状化粧料を得ることができる。
【0021】
本発明の水性ゲル状化粧料における、前記微粒化された固形油粉末の配合量は、0.001〜10質量%(以下、単に「%」と略す。)が好ましく、0.1〜5%がより好ましい。固形油粉末の配合量がこの範囲であると、肌に速やかに展開・付着し、より優れたはり感を付与することができる。
【0022】
本発明の水性ゲル状化粧料は、水をゲル化剤でゲル化し、前記微粒化された固形油粉末を分散したものである。
【0023】
本発明に用いられるゲル化剤としては、アラビアゴム、トラガカント、ガラクタン、キャロブガム、グアーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、クインスシード(マルメロ種子エキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、アルゲコロイド、トラントガム、ローカストビーンガム等の植物系水溶性高分子、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系水溶性高分子、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系水溶性高分子、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等の加工デンプン系高分子、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末のセルロース系水溶性高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系水溶性高分子、カルボキシビニルポリマー等のビニル系水溶性高分子、ポリオキシエチレン系水溶性高分子、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体系水溶性高分子、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド等のアクリル系水溶性高分子、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ラポナイト、ヘクトライト等の粘土鉱物等が挙げられる。
【0024】
本発明の水性ゲル状化粧料におけるゲル化剤の配合量は、水をゲルするのに十分な量であり、好ましくは0.01〜10%である。
【0025】
本発明の水性ゲル状化粧料における、ゲルとは、25℃における粘度(ブルックフィールド型回転粘度計による測定値)が、1000mPa・s以上であることが好ましい。
【0026】
本発明の水性ゲル状化粧料には、前記成分の他に、界面活性剤、油剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、保湿剤、防腐剤、香料、各種美容成分、色素等を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0027】
本発明の水性ゲル状化粧料は、美容液、マッサージ料、パック料、洗顔料等の基礎化粧品として用いることができる。
【実施例】
【0028】
次に実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0029】
固形油粉末の製造例1:
融点45〜50℃のパルミチン酸セチル(NIKKOL N−SP:日光ケミカルズ社製)をTaヒーターを巻きつけた石英製のルツボに入れ、ヘリウムガス1Torrの雰囲気中で150〜240℃に加熱し、蒸発したワックスをルツボ上に設置したアルミホイルに付着させ、これを回収することにより平均粒径300nm(レーザー散乱式粒度分布測定法)の固形油粉末を得た。尚、この固形油粉末の粒子は、電子顕微鏡観察により、均一で丸みを帯びていた。
【0030】
固形油粉末の製造例2:
前記製造例1と同様にして、融点50〜70℃のパラフィン(PRACERA256:PARAMELT社製)を加熱条件170〜300℃として、平均粒径600nm(レーザー散乱式粒度分布測定法)の固形油粉末を得た。尚、この固形油粉末の粒子は、電子顕微鏡観察により、均一で丸みを帯びていた。
【0031】
固形油粉末の製造例3:
融点45〜50℃のパルミチン酸セチル(NIKKOL N−SP:日光ケミカルズ社製)をシングルトラックジェットミルにて微粉砕し、平均粒径10μm(レーザー回折式粒度分布測定法)の固形油粉末を得た。尚、この固形油粉末の粒子は不定形であった。
【0032】
実施例1〜9及び比較例1〜3:美容液
下記表1〜3に示す組成の美容液を下記記載の製法により製造し、「肌にはり感を与える効果」、「化粧料塗布中のぬめり感」、「化粧料塗布後のべたつき感」について、以下に示す評価方法及び判断基準により評価し、結果を併せて表1〜3に示した。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
(製法)
A:成分5〜10及び成分16を均一に混合する。
B:Aに、成分1〜4及び成分11〜15を添加して均一に分散混合し、美容液を得た。
【0037】
〔評価方法〕
化粧品評価専門パネル20名に前記実施例及び比較例の美容液を使用してもらい、「肌にはり感を与える効果」、「化粧料塗布中のぬめり感」、「化粧料塗布後のべたつき感」について、各自が以下の基準に従って5段階評価し、美容液毎に評点を付し、更に全パネルの評点の平均点を以下の判定基準に従って判定した。
評価基準:
[評価結果] :[評 点]
非常に良好 : 5点
良好 : 4点
普通 : 3点
やや不良 : 2点
不良 : 1点
判定基準:
[評点の平均点] :[判 定]
4.5以上 : ◎
3.5以上〜4.5未満 : ○
1.5以上〜3.5未満 : △
1.5未満 : ×
【0038】
表1〜3の結果から明らかなように、本発明の実施品である実施例1〜9の美容液は、「肌にはり感を与える効果」、「化粧料塗布中のぬめり感」、「化粧料塗布後のべたつき感」の全ての項目に優れた水性ゲル状化粧料であった。一方、固形油粉末を配合していない比較例1では、「肌にはり感を与える効果」がなく、水溶性高分子に由来する「化粧料塗布中のぬめり感」が生じていた。また、本発明に係わる微粒化された固形油粉末の替わりに、多孔質無水ケイ酸を配合した比較例2では、「化粧料塗布中のぬめり感」や「化粧料塗布後のべたつき感」は、多少抑制されるが、「肌にはり感を与える効果」がなかった。更に、本発明に係わる微粒化された固形油粉末の替わりに、シリコーン樹脂粉末を配合した比較例3では、「化粧料塗布中のぬめり感」や「化粧料塗布後のべたつき感」は、抑制されるが、「肌にはり感を与える効果」がなかった。
【0039】
実施例10:マッサージ料
(成分) (%)
1.多孔質無水ケイ酸 1
2.ナイロンパウダー 1
3.ポリオキシプロピレン(9モル)ジグリセリルエーテル 3
4.カルボキシビニルポリマー 0.3
5.クインスシードエキス 5
6.水酸化ナトリウム水溶液(1%) 6
7.エタノール 20
8.モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタン 0.1
9.製造例1の固形油粉末 8
10.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
11.精製水 残量
【0040】
(製法)
A:成分3〜8及び成分10〜11を均一に混合する。
B:Aに、成分1〜2及び成分9を添加して均一に分散混合し、マッサージ料を得た。
実施例10のマッサージ料は、「肌にはり感を与える効果」、「化粧料塗布中のぬめり感」、「化粧料塗布後のべたつき感」の全ての項目に優れた水性ゲル状化粧料であった。
以 上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に微粒化された固形油粉末が分散していることを特徴とする水性ゲル状化粧料。
【請求項2】
前記固形油粉末の平均粒径が100nm〜1μmであることを特徴とする請求項1記載の水性ゲル状化粧料。
【請求項3】
前記固形油粉末の融点が40〜80℃であることを特徴とする請求項1又は2記載の水性ゲル状化粧料。
【請求項4】
前記固形油粉末の配合量が0.01〜5質量%であることを特徴とする請求項1〜3の何れかの項記載の水性ゲル状化粧料。
【請求項5】
前記固形油粉末が、ガス中蒸発法により微粒化された固形油粉末であることを特徴とする請求項1〜4の何れかの項記載の水性ゲル状化粧料。

【公開番号】特開2006−199602(P2006−199602A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−10984(P2005−10984)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】