説明

水性ゲル芳香剤の製造方法

【課題】logPが1〜4の香料素材を一定量以上含有する香料を含む香料含有液状混合物を速やかに吸水性樹脂に吸収させることができる水性ゲル芳香剤の製造方法を提供する。また、香り持続性に優れた水性ゲル芳香剤を提供する。
【解決手段】(a1)一般式(1)で表される特定のポリオキシアルキレンアルキルアミン型非イオン界面活性剤0.1〜20質量%、(a2)logPが1〜4の香料素材を30〜100質量%含有する香料1〜10質量%及び水を含む香料含有液状混合物(A)を、吸水性樹脂(B)に含浸させる工程を有する水性ゲル芳香剤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ゲル芳香剤の製造方法及び水性ゲル芳香剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水性ゲルを用いた芳香剤(以下、水性ゲル芳香剤ということもある)は、容器から液がこぼれる心配がないことや意匠性に優れるという点から据え置き型の芳香剤などに幅広く取り入れられている。特に、粉末状や球状にした吸水性樹脂(以下、当該吸水性樹脂ということもある)に香料などの芳香成分を分散した溶液を吸収させて調製する水性ゲル芳香剤は、ゲルの表面積が大きいため、芳香成分の揮発が促進され、広い空間においても十分に強い香りを充満させることができるということで非常に優れた形態である。
【0003】
この時、香料などの芳香成分が分散、乳化又は溶解した水(以下香料含有液状混合物という)を吸収する粉末状や球状の吸水性樹脂は、親水性ポリマーを架橋して調製された吸水性樹脂である。水性ゲル芳香剤に使用される吸水性樹脂としては、ノニオン型ポリオキシアルキレンオキシドを含む吸水性樹脂、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体を含む吸水性樹脂、ポリアクリル酸(塩)を含む吸水性樹脂、アクリルアミド−アクリル酸(塩)共重合体を含む吸水性樹脂などがある。
【0004】
香料含有液状混合物を架橋型吸収性樹脂に吸収させて調製した水性ゲル芳香剤については、水性ゲルの意匠性や吸水性に関して検討が進められている(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−291145号公報
【特許文献2】特開平9−183884号公報
【特許文献3】特開2007−270100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、使用者の嗜好性の多様化に伴い、芳香剤についても香りが異なる多様な製品への要望が高まっている。logPが1〜4の範囲にある香料素材は、種類が多く、香調を変えるための香料素材の選択肢が増えるため、多様な香りの製品を調製するには好適である。しかし、logPが1〜4の香料素材を一定量含有する香料を多量に含有する液状混合物を、吸水性樹脂に接触させても、短時間では、香料含有液状混合物が吸水性樹脂に充分に含浸されないことが判明した。
【0007】
また、香りの持続性の点から、一般に、香料を多量に含有する液状混合物を吸水性樹脂に含浸させることが有利である。しかし、logPが1〜4の香料素材を一定量以上含有する香料を多量に含有する香料含有液状混合物を吸水性樹脂に含浸させたゲル状芳香剤は、使用初期の香りは強いが、すぐに弱くなり、香りの強さが持続しない課題があることが見い出された。
【0008】
特許文献1は、油性の機能性成分を含有する含水ゲルに関するものであるが、logPが1〜4の香料素材を一定量以上含有する香料を用いる場合の吸収性や吸収時間の課題については記載も示唆されていない。特許文献2は、香料を含有したときの吸水性ゲルへの香料含有液状混合物の吸収性の課題について記載がなく、3時間で香料溶液を吸収させた実施例が示されているが、そこで用いられている香料は水溶性香料である。しかし、水溶性香料は、logPが1〜4の香料素材を一定量以上含有する香料を用いる場合のような吸収性や吸収時間の課題は生じない。また、水溶性香料は香りの持続性が低い。特許文献3にも、logPが1〜4の香料素材を一定量以上含有する香料を用いた香料含有液状混合物で吸水性樹脂を膨潤させるときの吸収速度についての課題は示唆がない。
【0009】
本発明の課題は、logPが1〜4の香料素材を一定量以上含有する香料を含む香料含有液状混合物を速やかに吸水性樹脂に吸収させることができる水性ゲル芳香剤の製造方法を提供することにある。また、香り持続性に優れた水性ゲル芳香剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(a1)下記一般式(1)で表される非イオン界面活性剤〔以下、(a1)成分という〕0.1〜20質量%、(a2)logPが1〜4の香料素材を30〜100質量%含有する香料〔以下、(a2)成分という〕1〜10質量%及び水を含む香料含有液状混合物(A)と、吸水性樹脂(B)とを接触させて、前記香料含有液状混合物(A)を前記吸水性樹脂(B)に含浸させる工程を有する水性ゲル芳香剤の製造方法に関する。
【0011】
【化1】

【0012】
[式中、R1は炭素数8〜22の炭化水素基を示し、R2、R3は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜3の炭化水素基又は(R4O)m−R5であるが、少なくとも1つは(R4O)m−R5である。R4は炭素数2〜3のアルキレン基を示し、R5は水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基を示す。mは2〜30の数である。]
【0013】
また、本発明は、上記(a1)成分、(a2)成分、及び吸水性樹脂(B)を含有する水性ゲル芳香剤に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、logPが1〜4の香料素材を一定量以上含有する香料を含む香料含有液状混合物を速やかにを吸水性樹脂に吸収させることができる水性ゲル芳香剤の製造方法が提供される。また、香りの持続性に優れた水性ゲル芳香剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<香料含有液状混合物(A)>
〔(a1)成分〕
本発明の(a1)成分は下記一般式(1)で表される非イオン界面活性剤であり、単独で用いても2種類以上を組み合わせてもよい。
【0016】
【化2】

【0017】
[式中、R1は炭素数8〜22の炭化水素基を示し、R2、R3は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜3の炭化水素基又は(R4O)m−R5であるが、少なくとも1つは(R4O)m−R5である。R4は炭素数2〜3のアルキレン基を示し、R5は水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基を示す。mは2〜30の数である。]
【0018】
一般式(1)中のR1は、香料含有液状混合物を効率よく吸水性樹脂に含浸させる点と、香料含有液状混合物を調製する時の容易性の観点から、炭素数8〜20が好ましく、12〜18が更に好ましい。より好ましくはラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基であり、最も好ましくはラウリル基である。。R2、R3はいずれも(R4O)m−R5であることが好ましい。R4基はエチレン基が好ましい。R5は水素原子が好ましい。また、一般式(1)中、香料含有液状混合物を効率良く吸水性樹脂に含浸させる観点からmは3〜60、更に4〜40、特に6〜20が好ましい。
【0019】
〔(a2)成分〕
本発明の(a2)成分として表す香料とは、logPが1〜4の香料素材そのもの又はこれを1種以上含有する組成物を意味する。吸水性樹脂に含浸しにくい香料を多量に含む液状混合物の含浸促進、及び水性ゲル芳香剤の香り立ちの観点から、香料中のlogPが1〜4の香料素材の含有量は、30〜100質量%であり、好ましくは40〜100質量%、より好ましくは50〜100質量%である。logPが1〜4の範囲外の香料素材を含む場合は、logPが1〜4の範囲外の香料素材中logPが4を超える香料素材が70質量%以上であることが、香料含有液状混合物が吸水性樹脂に速やかに吸収できる点でこのましい。本発明は、logPが1〜4の香料素材を30〜100質量%含有する香料を用いて、香料含有液状混合物の吸水性樹脂への吸収が速やかで、且つ香りの持続性に優れた水性ゲル芳香剤が得られるため、技術的意義が大きい。
【0020】
ここで、「logP」とは、化合物の1−オクタノール/水の分配係数の対数値であり、1−オクタノールと水の2液相の溶媒系に化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡において、それぞれの溶媒中での溶質の平衡濃度の比を意味し、底10に対する対数「logP」の形で一般的に示される。すなわち、logPは親油性(疎水性)の指標であり、この値が大きいほど疎水的であり、値が小さいほど親水的である。
【0021】
logPについては、例えば、Daylight Chemical Information Systems, Inc.(Daylight CIS)等から入手し得るデータベースに掲載されているlogPを実測値として参照することができる。また、実測値がない場合には、プログラム“CLOGP”(Daylight CIS)等で計算することができ、中でもプログラム“CLOGP”により計算することが、信頼性も高く好適である。
【0022】
プログラム“CLOGP”においては、Hansch, Leoのフラグメントアプローチにより算出される「計算logP(ClogP)」の値が、logPの実測値がある場合にはそれと共に出力される。フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、原子の数及び化学結合のタイプを考慮している(A.Leo, Comprehensive Medicinal Chemistry, Vol.4, C.Hansch, P.G.Sammens, J.B.Taylor and C.A.Ramsden, Eds., p.295, Pergamon Press, 1990)。このClogPは現在最も一般的で信頼できる推定値であるため、化合物の選択に際してlogPの実測値がない場合に、ClogPを代わりに用いることが好適である。本発明においては、logPの実測値、又はプログラム“CLOGP”により計算したClogPのいずれを用いてもよいが、実測値がある場合には実測値を用いることが好ましい。
【0023】
特に限定されるものではないが、ClogPが1〜4の香料素材の具体例を以下に示す。( )内の数字はClogPの値である(以下同様)。
【0024】
ラズベリーケトン(1.1)、ヘリオトロピン(1.1)、2−フェニルエチルアルコール(1.2)、バニリン(1.3)、ヘリオナール(1.4)、シンナミックアルコール(1.4)、クマリン(1.4)、ヘリオトロピン(1.1)、アニスアルデヒド(1.8)、カロン(1.8)、エチルバニリン(1.8)、インドール(2.1)、酢酸フェニルエチル(2.1)、スチラリルアセテート(2.3)、メチルジヒドロジャスモネート(2.4)、オイゲノール(2.4)、イソオイゲノール(2.6)、シス−ジャスモン(2.6)、リナロール(2.6)、ネロール(2.8)、ジヒドロミルセノール(3.0)、シトラール(3.1)、シトロネロール(3.3)、リナリルアセテート(3.5)、テトラヒドロゲラニオール(3.7)、アンブリノール(3.8)、アルデヒド C−14ピーチ(3.8)、リリアール(3.9)、テトラヒドロムゴール(3.5)、β−ヨノン(3.8)、酢酸ゲラニル(3.7)、3−メチル−3−フェニルグリシド酸エチル(2.7)、δ−ダマスコン(3.6)、ヘプタン酸アリル(3.4)、γ−ウンデカラクトン(3.8)。
【0025】
本発明においては、任意ではあるがlogPが1〜4の香料素材以外の香料素材を使用することができる。例えば、エチルアセテート(0.71)、エチルアセトアセテート(0.33)、エチルマルトール(0.47)、マルトール(−0.062)、アセチルセドレン(4.2)、アンブロキサン(5.3)、アミルシンナミックアルデヒド(4.3)、β−ダマスコン(4.7)、ベンジルサリシレート(4.2)、シクロヘキシルサリシレート(4.5)、ダマセノン(4.3)、ジフェニルオキサイド(4.2)、リモネン(4.4)、エチレンブラシレート(4.6)、フロラマット(4.5)、γ−ターピネン(4.4)、ヘキシルシンナミックアルデヒド(4.9)、ヘキシルサリシレート(5.1)、イソ−アミルサリシレート(4.4)、ネロリドール(4.6)、p−シメン(4.9)、ガラクソライド(6.1)、アセチルセドレン(4.2)、酢酸シトロネリル(4.2)、サリチル酸ヘキシル(5.1)、酢酸ミラディル(4.9)、γ−ドデカラクトン(4.4)、シトロネリルニトリル(4.4)、ドデカヒドロ−3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1−b]フラン(5.3)などが挙げられる。
【0026】
本発明に係る香料含有液状混合物(A)は(a1)成分、(a2)成分及び水を含有する組成物、更に水溶液の形態が好ましい。水は、水中に存在する金属を除去したイオン交換水を用いることが好ましい。
【0027】
香料含有液状混合物(A)中の(a1)成分の含有量は、0.1〜20質量%であり、本発明の効果をより享受できる点から、0.3〜15質量%が好ましく、0.5〜12質量%が好ましく、特に好ましくは1〜10質量%が更に好ましい。0.1質量%以上であれば香りの持続性が良好となり、20質量%以下であれば吸水性樹脂の吸収性が良好となる。また、香料含有液状混合物(A)中の(a2)成分の含有量は1〜10質量%であり、本発明の効果をより享受できる点から1.5〜8質量%が好ましく、より好ましくは2〜6質量%であり、特に好ましくは2.5〜5質量%である。1質量%以上あれば香りの強さが適切になり、10質量%以下であれば香料含有液状混合物(A)が吸水性樹脂(B)に速やかに含浸し、香料含有液状混合物(A)と吸水性樹脂(B)とを一定時間接触させることで速やかに香料含有液状混合物(A)が吸水性樹脂(B)に充分に含浸し、液流れを起こさない水性ゲル芳香剤が得られる。また、(a1)成分と(a2)成分を併用することで香り持続性に優れた水性ゲル芳香剤が得られる。
【0028】
香り持続性の観点から、(a1)成分と(a2)成分の質量比率は、(a1)成分/(a2)成分=10/1〜1/10が好ましく、より好ましくは9/1〜1/9、更に好ましくは8/1〜1/8、最も好ましくは7/1〜1/7である。
【0029】
本発明に係る香料含有液状混合物(A)の20℃におけるpHは好ましくは3〜8、特に好ましくは4〜7であり、このようなpHで高い香りの持続性を得ることができる。
【0030】
[(a3)成分]
(a2)成分を香料含有液状混合物(A)中に少ない界面活性剤量で均一に分散又は可溶化させ、且つ香料含有液状混合物(A)を吸水性樹脂(B)に効率よく含浸させる観点、又は香りの持続性を更に高める観点から、香料含有液状混合物(A)は、(a3)成分として、下記一般式(2)で表される化合物及び一般式(3)で表される化合物から選ばれる化合物を含有することが好ましい。
【0031】
【化3】

【0032】
(式中、R6は炭素数7〜19の炭化水素基を表し、R7、R8はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3ヒドロキシアルキル基から選ばれる基を表し、eは2〜5の数を表す。)
【0033】
【化4】

【0034】
(式中、R7、R8はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基から選ばれる基を表し、R9は炭素数8〜20の炭化水素基を表す。)
【0035】
一般式(2)中、R6は、炭素数7〜19の炭化水素基を表す。香りの持続性の点から、好ましくは炭素数11〜15の炭化水素基、より具体的にはヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基及びノナデシル基から選ばれる基であり、好ましくはウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基及びヘプタデシル基から選ばれる基である。より好ましくはウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基及びペンタデシル基から選ばれる基である。最も好ましくはウンデシル基及び/又はトリデシル基である。eは2〜5の数であり、好ましくは3である。
【0036】
一般式(3)中、R9は、炭素数8〜20の炭化水素基を表す。香りの持続性の点から、好ましくは炭素数10〜16の炭化水素基、より具体的にはオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基である。より好ましくはデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基である。最も好ましくはドデシル基及び/又はテトラデシル基である。
【0037】
(a3)成分の含有量は、吸水性樹脂(B)への香料含有液状混合物(A)の吸収性及び香りの持続性の観点から、香料含有液状混合物(A)中、0.1〜10質量%、更に0.2〜8質量%、より更に0.3〜6質量%が好ましい。また、香りの持続性の観点から、(a1)成分と(a3)成分の比は質量比で、(a1)成分/(a3)成分=20/1〜1/15が好ましく、より好ましくは15/1〜1/13であり、更に好ましくは13/1〜1/10であり、最も好ましくは10/1〜1/9である。
【0038】
〔その他の成分〕
本発明に係る香料含有液状混合物(A)には、その他の成分として、据え置き型水性ゲル芳香剤等に一般的に添加される溶剤、油剤、硫酸ナトリウムやN,N,N−トリメチルグリシン等の塩、pH調整剤、酸化防止剤、キレート剤、防腐剤、殺菌剤・抗菌剤、色素、紫外線吸収剤等を添加することができる。
【0039】
<吸水性樹脂(B)>
本発明では、上述の香料含有液状混合物(A)を、吸水性樹脂(B)に含浸させる。吸水性樹脂(B)は、20℃の環境条件下において、該吸水性樹脂1gあたり、20℃のイオン交換水の吸水量が10〜300g、好ましくは10〜250g、より好ましくは20〜200gであるものが好適である。この吸水量が10g以上であれば、吸水性樹脂(B)が香料含有液状混合物(A)を吸収、膨潤して得られる水性ゲル芳香剤の意匠性がより良好となり、また、300g以下であれば水性ゲル芳香剤の強度がより充分になる。
【0040】
吸水性樹脂(B)としては、カルボン酸基及び/又はカルボン酸塩基を構成単位として含む重合体を含む吸水性樹脂が好ましく、例えば、デンプン−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、デンプン−アクリル酸エステル共重合体の(部分)中和物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物及び部分ケン化物、アクリロニトリル共重合体もしくはアクリルアミド共重合体の加水分解物、ポリビニルアルコール変性物、部分中和ポリアクリル酸塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸塩架橋体、アクリル酸(塩)−アクリルアミド共重合物架橋体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合物架橋体等が挙げられ、使用に際しては、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。なお、アクリル酸(塩)は、アクリル酸及び/又はアクリル酸塩を意味する。
【0041】
好ましい吸水性樹脂(B)は、ポリアクリル酸塩架橋体、アクリル酸(塩)−アクリルアミド共重合物架橋体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合物架橋体であり、特に離水性の点、及び香りの持続性の点からアクリル酸(塩)−アクリルアミド共重合物架橋体が好適である。
【0042】
ポリアクリル酸塩架橋体としては、例えば特開平8−337726号公報、特開平8−127725号公報などに記載されているものを用いることができる。また、イソブチレン−無水マレイン酸共重合物架橋体は例えば、特開2000−212354号公報、特開2006−167202号公報に記載されている吸水性樹脂を用いることができる。更に、アクリル酸(塩)−アクリルアミド共重合物架橋体としては特開2007−291145号公報、特開2007−291146号公報、特開2007−270100号公報に記載の吸水性樹脂を用いることができる。
【0043】
吸水性樹脂(B)の形態は球状が好ましい。該吸水性樹脂が容器につめられた場合、球状であれば、樹脂同士で密着する面積が少なく間隙が多くなるため、空気との接触面積が大きくなり匂い立ちの点から良好となる。また、香料含有液状混合物(A)を接触させる前の乾燥状態での平均粒子径は500〜4,000μmが好適である。平均粒子径は、JIS試験用ふるい規格のふるい〔例えばNo.5〜No.35(公称目開きで4mm〜500μm)〕を用いたふるい分けにより測定することができる。
【0044】
吸水性樹脂(B)としては、特に制限されるものではないが、例えばアクリル酸(塩)架橋体としては日本触媒製のアクアリックCA、住友精化製のアクアキープ、三洋化成製のサンフレッシュ、アクアパール、アクリルアミド−アクリル酸(塩)共重合架橋体としてはAK Chemtech Co., Ltd.製のHISOBEAD、イソブチレン−無水マレイン酸共重合架橋体としてはクラレケミカル製のアクアビーズ、ポリオキシアルキレンオキシド架橋体としては住友精化製のアクアコークなどが挙げられる。
【0045】
<水性ゲル芳香剤の製造方法>
本発明では、香料含有液状混合物(A)と吸水性樹脂(B)とを接触させて、香料含有液状混合物(A)を吸水性樹脂(B)に含浸させる。接触時の吸水性樹脂(B)の水分含有率は20質量%以下が好ましく、10質量%以下が香りの持続性が高い水性ゲル芳香剤が得られる点でより好ましい。香料含有液状混合物(A)と吸水性樹脂(B)とを接触させる際、香料含有液状混合物(A)又は吸水性樹脂(B)の温度は、それぞれ0〜40℃の範囲が好適である。香料含有液状混合物(A)と吸水性樹脂(B)を接触させる時は、静置してもよく、吸水性樹脂が損傷しないように、弱い攪拌を加えても良い。製造の簡便性の点から静置しておくだけでも通常は十分香料含有液状混合物(A)が該吸水性樹脂の内部に浸透、保持できる点で本発明の製造方法は好適である。この製造方法で、香料含有液状混合物(A)中の(a2)成分を吸水性樹脂(B)に担持させた水性ゲル芳香剤が得られる。香料含有液状混合物(A)と吸水性樹脂(B)の混合比率は、吸水性樹脂(B)の吸水能にもよるが、質量比で、香料含有液状混合物(A)/吸水性樹脂(B)=100/1〜5/1、更に50/1〜10/1の条件下で製造できる。
【0046】
本発明により製造された水性ゲル芳香剤は、(a1)成分、(a2)成分、吸水性樹脂(B)、及び水を含有する。本発明により製造された水性ゲル芳香剤はそのまま芳香剤として使用することもできるが、当該水性ゲル芳香剤を含んで構成される据え置き型芳香剤とすることができる。例えば、自立可能な容器等に収容して据え置き型芳香剤とすることもできる。
【0047】
上記水性ゲル芳香剤が収容される容器は、水性ゲル芳香剤を収容可能であって、開放部を有し、この開放部から水性ゲル芳香剤中の芳香成分〔(a2)成分〕を揮散させ得るものであれば、その形状や構造に特に制限はなく、開放部が上部にあるものの他、側部など他部にあるものも使用可能である。
【0048】
上記容器としては、プラスチック、ガラス、金属などを用いることができるが、ゲル状成型物の収縮を目視できる、透明又は半透明な材質や、スリットや開口部から内部を視認できるものが使用できる。更には、従来から芳香・消臭剤に用いられているプラスチック容器、具体的にはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどの容器が使用される。
【0049】
上記水性ゲル芳香剤を容器内に収容、設置する際、組成物の設置量は特に限定されず、使用する場所や使用期間、容器形状などの特性に応じてその使用量を適宜選定することができ、また、同一容器に互いに異なる色調及び/又は香調を有する水性ゲル芳香剤を収容、設置してもよい。
【0050】
本発明の水性ゲル芳香剤は、(a1)成分を0.1〜20質量%、更に1〜10質量%含有することが好ましく、(a2)成分を1〜10質量%、更に2.5〜5質量%含有することが好ましく、吸水性樹脂(B)を1〜15質量%、更に2〜10質量%含有することが好ましい。また、(a3)の含有量は、0.1〜10質量%、更に0.3〜6質量%が好ましい。本発明の水性ゲル芳香剤は、本発明に係る香料含有液状混合物(A)と吸水性樹脂(B)とを接触させてなるものが好ましい。本発明に係る香料含有液状混合物(A)を吸水性樹脂(B)に吸収させることで、(a1)成分と(a2)成分、更には(a3)と、吸水性樹脂(B)とが一体化した水性ゲル芳香剤が得られる。本発明の製造方法により得られる水性ゲル芳香剤は、香りの持続性に優れる。従って、本発明の水性ゲル芳香剤は、本発明の製造方法により得られるものが好ましい。
【実施例】
【0051】
実施例及び比較例で用いた成分を示す。(a2)成分について( )内の数字は各香料素材のClogPの値を示す。
<(a1)成分>
(a1−1):ポリオキシエチレン(平均付加モル数8)ラウリルアミン
(a1−2):ポリオキシエチレン(平均付加モル数12)ラウリルアミン
【0052】
<(a1’)成分:比較化合物>
(a1’−1):ポリオキシエチレン(平均付加モル数8)ラウリルエーテル
(a1’−2):ポリオキシエチレン(平均付加モル数12)ラウリルエーテル
【0053】
<(a2)成分>
(a2−1):2−フェニルエチルアルコール(1.2)25質量%、シトロネロール(3.3)8質量%、酢酸フェニルエチル(2.1)8質量%、テトラヒドロムゴール(3.5)5質量%、β−ヨノン(3.8)5質量%、酢酸ゲラニル(3.7)3質量%、テトラヒドロゲラニオール(3.7)2.5質量%、3−メチル−3−フェニルグリシド酸エチル(2.7)2質量%、δ−ダマスコン(3.6)0.5質量%、ヘプタン酸アリル(3.4)0.5質量%、γ−ウンデカラクトン(3.8)0.5質量%、リモネン(4.4)20質量%、ガラクソライド(6.1)8質量%、アセチルセドレン(4.2)3質量%、酢酸シトロネリル(4.2)3質量%、サリチル酸ヘキシル(5.1)3質量%、酢酸ミラディル(4.9)2質量%、γ−ドデカラクトン(4.4)0.5質量%、シトロネリルニトリル(4.4)0.4質量%、ドデカヒドロ−3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1−b]フラン(5.3)0.1質量%。(a2−1)中のClogPが1〜4の香料素材の合計は60質量%
【0054】
<(a3)成分>
(a3−1):ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド
(a3−2):ラウリルジメチルアミンオキシド
【0055】
<水>:イオン交換水
【0056】
<吸水性樹脂(B)>
(B−1):アクリルアミド−アクリル酸(塩)共重合架橋物(AK Chemtech Co.Ltd.製「HISOBEAD」)
【0057】
<実施例1〜3及び比較例1〜3>
表1〜3の配合成分のうち、(a1)成分もしくは(a1’)成分、(a2)成分、(a3)成分及び水を合計30gになるように50mLビーカーに入れ、40℃で1時間攪拌し、(a2)成分を十分に溶解させる(得られた水溶液を香料含有液状混合物(A)とする)。次に、25℃に調整した香料含有液状混合物(A)28.5gと吸水性樹脂(B)1.5gを株式会社サンエス製セキュリティクリーンコンテナ(容量60mL、直径(内寸)43mm、高さ(内寸)4mm)に入れフタをして25℃で静置し、6〜48時間の一定時間経過後の状態を目視観察し、以下の基準で評価した。一つの実施例或いは比較例毎に3つのサンプルを調製し、3サンプルの評価を平均した。結果を表1〜3に示す。
評価基準(2.0以上を合格とする)
3:完全に吸収している
2:容器の底部に液が少し残るが容器を傾けても液が流れない
1:容器の底部に液が残り容器を傾けると液が流れる
0:容器の底部に液が多量に残る
【0058】
【表1】

【0059】
表中、「%」は質量%の意味である(以下同様)。
【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
<実施例4及び比較例4>
〔I〕水性ゲル芳香剤サンプルの調製
表4の配合成分のうち、(a1)成分もしくは(a1’)成分、(a2)成分、(a3)成分及び水を合計100gになるように100mLビーカーに入れ、40℃で1時間攪拌し、(a2)成分を十分に分散させる(得られた水溶液を香料含有液状混合物(A)とする)。次に、25℃に調整した香料含有液状混合物(A)95gと吸水性樹脂(B)5gをステンレスバットに入れフタをし、25℃で48時間静置して香料含有液状混合物(A)を吸水性樹脂(B)に吸収させ、水性ゲルAを得る。水性ゲルA80gを、一つの側面と天面にそれぞれ120mm2、150mm2の空孔のある縦60mm×横40mm×高さ60mmのプラスチック製容器に入れる(これをサンプルAとする)。
【0063】
〔II〕評価
〔II−1〕香りの強さ及びその持続性の評価
(i)初期の香りの強さ
上部に換気口と側部に開放可能な窓のついた縦1m×横1m×高さ2m(内容量2000L)のボックスの底部に、サンプルAを入れ、窓を閉めた状態で60分静置する。その後、ボックス側部の窓からボックス内の香りを匂い、香りの強さ〔表中「初期(X)」と表示する〕を5人のパネラーにより、以下の基準により評価し、平均値を求めた。
評価基準
5:強いにおい
4:らくに感知できるにおい
3:何のにおいかわかる弱いにおい
2:感知できるにおい
1:やっと感知できるにおい
0:無臭
【0064】
(ii)経時の香りの強さ
サンプルA中の水性ゲルの質量が初期質量の50%になったときの香りの強さ〔表中「50%質量減少時(Y)」と表示する〕を初期の香りの強さと同様の方法で評価した。
【0065】
(iii)香りの持続性評価
前記(i)初期の香りの強さ〔(X)〕の評価点から、(ii)水性ゲルの質量が初期質量の50%になった時の香りの強さ〔(Y)〕の評価点を差し引いた値を香りの持続性とした。この評価結果が「1.5」未満であれば、香りの持続性に優れると判断できる。
【0066】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a1)下記一般式(1)で表される非イオン界面活性剤0.1〜20質量%、(a2)logPが1〜4の香料素材を30〜100質量%含有する香料1〜10質量%及び水を含む香料含有液状混合物(A)と、吸水性樹脂(B)とを接触させて、前記香料含有液状混合物(A)を前記吸水性樹脂(B)に含浸させる工程を有する水性ゲル芳香剤の製造方法。
【化1】


[式中、R1は炭素数8〜22の炭化水素基を示し、R2、R3は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜3の炭化水素基又は(R4O)m−R5であるが、少なくとも1つは(R4O)m−R5である。R4は炭素数2〜3のアルキレン基を示し、R5は水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基を示す。mは2〜30の数である。]
【請求項2】
前記吸水性樹脂(B)が、カルボン酸基及び/又はカルボン酸塩基を構成単位として含む重合体を含む請求項1記載の水性ゲル芳香剤の製造方法。
【請求項3】
前記香料含有液状混合物(A)が、更に、(a3)下記一般式(2)で表される化合物及び一般式(3)で表される化合物から選ばれる化合物0.1〜10質量%を含有する請求項1記載の水性ゲル芳香剤の製造方法。
【化2】


(式中、R6は炭素数7〜19の炭化水素基を表し、R7、R8はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3ヒドロキシアルキル基から選ばれる基を表し、eは2〜5の数を表す。)
【化3】


(式中、R7、R8はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基から選ばれる基を表し、R9は炭素数8〜20の炭化水素基を表す。)
【請求項4】
(a1)下記一般式(1)で表される非イオン界面活性剤、(a2)logPが1〜4の香料素材を30〜100質量%含有する香料、及び吸水性樹脂(B)を含有する水性ゲル芳香剤。
【化4】


[式中、R1は炭素数8〜22の炭化水素基を示し、R2、R3は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜3の炭化水素基又は(R4O)m−R5であるが、少なくとも1つは(R4O)m−R5である。R4は炭素数2〜3のアルキレン基を示し、R5は水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基を示す。mは2〜30の数である。]
【請求項5】
更に(a3)下記一般式(2)で表される化合物及び一般式(3)で表される化合物から選ばれる化合物を含有する請求項4記載の水性ゲル芳香剤。
【化5】


(式中、R6は炭素数7〜19の炭化水素基を表し、R7、R8はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3ヒドロキシアルキル基から選ばれる基を表し、eは2〜5の数を表す。)
【化6】


(式中、R7、R8はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基から選ばれる基を表し、R9は炭素数8〜20の炭化水素基を表す。)

【公開番号】特開2011−219618(P2011−219618A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90187(P2010−90187)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】