説明

水性シラン処理シリカ分散体

本発明は、シラン処理コロイドシリカ粒子の水性分散体の製造方法であって、水性媒質中において、a)エポキシ官能性を含む、少なくとも1種のシラン化合物と、b)エポキシ官能性を有しない、コロイドシリカ粒子を改質することが可能な少なくとも1種のシラン化合物と、c)コロイドシリカ粒子とを、任意の順序で混合して、a)およびb)に由来するシラン化合物を含有するシラン処理コロイドシリカ粒子の水性分散体を形成するステップを含む方法に関する。本発明はまた、前記方法によって得ることが可能な分散体にも、またコーティング用途におけるその分散体の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラン処理コロイドシリカ粒子を含む水性分散体を提供する方法であって、シラン基が、a)エポキシ官能性を含む、少なくとも1種のシラン化合物、b)エポキシ官能性を有しない少なくとも1種のシラン化合物であり、コロイドシリカ粒子を改質することが可能であるシラン化合物に由来し、これらの分散体は、シラン基の前駆体を含有するシラン化合物a)およびb)と、コロイドシリカ粒子とを任意の順序で混合して、シラン処理コロイドシリカ粒子の分散体を形成するステップによって得ることができる方法に関する。本発明はまた、このシラン処理コロイドシリカ分散体の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
コロイドシリカ分散体は、とりわけ、種々の材料の接着性状を向上させ、耐摩耗および耐水性を高めるコーティング材料として以前から使用されている。しかし、これらの組成物、特に高濃度のコロイドシリカ組成物は、ゲル化もしくは沈殿し易い恐れがあり、これが貯蔵時間をかなり短くしている。
【0003】
EP1554221は、シラン改質されたシリカの分散体を提供する方法を開示している。しかし、このような分散体の安定性は、必ずしも十分な安定性、硬度および/または耐水性をもたらすとは限らない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の上記の欠陥を考慮して、改良されたシラン処理シリカゾル分散体を提供することが望ましいであろう。何ら初期沈殿物を含まずに、容易に貯蔵および輸送することができる、とりわけコーティング用途向けの高濃度のコロイドシリカ分散体を提供することが、やはり望ましいであろう。さらなる目的は、ラッカー配合物に、高耐水性および/または硬度、特に早期硬度(early hardness)を付与する分散体を提供することである。このような分散体の便利かつ安価な製造方法を提供することも望ましいであろう。
【0005】
さらなる目的は、木材、例えばオーク材を変色(discolour)させない木材用ラッカー(wood lacquer)に適した分散体を提供することである。改良された耐水性を有する木材用ラッカー配合物を提供することが本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シラン処理コロイドシリカ粒子の水性分散体の製造方法であって、水性媒質中において、a)エポキシ官能性を含む、少なくとも1種のシラン化合物と、b)エポキシ官能性を有しない少なくとも1種のシラン化合物であり、コロイドシリカ粒子を改質することが可能であるシラン化合物と、c)コロイドシリカ粒子とを、任意の順序で混合して、a)およびb)に由来するシラン基を含有するシラン処理コロイドシリカ粒子の水性分散体を形成するステップを含む方法に関する。
【0007】
一実施形態により、本シラン処理コロイドシリカ粒子は、ラッカーに硬度および/または耐水性を付与することが可能である。
【0008】
一実施形態により、b)は、アミド官能性、ウレイド官能性、アミノ官能性、エステル官能性、メルカプト官能性および/またはイソシアナト官能性を有するシランから、例えばアミド官能性、ウレイド官能性および/またはアミノ官能性を有するシラン、例えばアミドおよび/もしくはウレイド官能性を有するシランから選択される。
【0009】
一実施形態により、b)とa)の重量比は、約2〜約0.1、例えば約1.5〜約0.2または約1.1〜約0.4の範囲にある。
【0010】
一実施形態により、a)およびb)の両方とシリカの重量比は、約0.01〜約3、例えば約0.01〜約1.5の、例えば約0.05〜約1、もしくは約0.10〜約0.5、もしくは約0.2〜約0.5、または約0.3〜約0.5の範囲にある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一実施形態により、アミド官能性物は、(メタ)アクリルアミド基を含む。一実施形態により、アミド官能性を有するシランには、例えば一般式(II)CH=CR−CO−NR−R−SiR−(R3−m(式中、m=0〜2であり、RはHまたはメチル基のいずれかであり、RはHまたは、炭素原子1〜5個を有するアルキル基であり、Rは、炭素原子1〜5個を有するアルキレン基、または、炭素鎖がOもしくはN原子により中断される2価の有機基であり、Rは、炭素原子1〜5個を有するアルキル基であり、またRは、さらに複素環により置換されうる、炭素原子1〜40個を有するアルコキシ基である。)のメタ(アクリルアミド)含有シラン基のエチレン性不飽和、シラン含有モノマーが含まれる。2個以上のR基またはR基が存在するモノマーでは、これらの基は同一もしくは異なることができる。この種類の(メタ)アクリルアミド−アルキルシランの例は、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)−アクリルアミド−プロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルエチルトリメトキシシラン、N−(2−(メタ)アクリルアミド−エチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリアセトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−エチルトリ−メトキシシラン、1−(メタ)アクリルアミド−メチルトリメトキシ−シラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルメチルジメトキシ−シラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルジメチルメトキシ−シラン、3−(N−メチル−(メタ)アクリルアミド)−プロピルトリメトキシシラン、3−((メタ)アクリルアミド−メトキシ)−3−ヒドロキシ−プロピルトリメトキシシラン、3−((メタ)アクリルアミド−メトキシ)−プロピルトリメトキシシラン、N,N−ジメチル−N−トリメトキシ−シリルプロピル−3−(メタ)アクリルアミド−プロピルアンモニウムクロリドおよびN,N−ジメチル−N−トリメトキシシリルプロピル−2−(メタ)アクリル−アミド−2−メチルプロピルアンモニウムクロリドである。
【0012】
一実施形態により、ウレイド官能性を有するシランには、例えばβ−ウレイドエチル−トリメトキシシラン、β−ウレイドエチル−トリエトキシシラン、γ−ウレイドエチルトリメトキシシランおよび/またはγ−ウレイドプロピル−トリエトキシシランが含まれる。
【0013】
一実施形態により、ウレイド官能性を有するシランは、構造B(4−n)−Si−(A−N(H)−C(O)−NH(式中、Aは、炭素原子1〜約8個を有するアルキレン基であり、Bは、炭素原子1〜約8個を有するヒドロキシルもしくはアルコキシ基であり、また、nが1もしくは2である場合、それぞれのBは同一もしくは異なることができるとの条件で、nは1〜3の整数である。)を有することができる。
【0014】
一実施形態により、エポキシ官能性を有するシランには、例えばグリシドキシおよび/もしくはグリシドキシプロピル基、例えばガンマ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、メチルジエトキシシランガンマ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)ヘキシルトリメトキシシラン、ベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリエトキシシランなどが含まれる。
【0015】
一実施形態により、エポキシ官能性を有するシランには、少なくとも1つのグリシドキシもしくはグリシドキシプロピル基、特にガンマ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、および/またはガンマ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランが含まれる。
【0016】
一実施形態により、メルカプト官能性を有するシランには、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、HS(CH、Si(OCH、少なくとも1つのヒドロキシアルコキシシリル基および/または環状ジアルコキシシリル基を有するメルカプトシラン、ガンマ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ガンマ−メルカプトプロピルトリエトキシシランが含まれる。
【0017】
一実施形態により、アミノ官能性を有するシランは、アミノメチルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)メチルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノイソブチルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、およびN−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランから選択される。使用できる上記のシラン官能性物のさらなる特定の例には、参照により本明細書に組み込まれているUS5,928,790において言及されているものが含まれる。
【0018】
一実施形態により、シラン化合物は、コロイドシリカ粒子と、任意の順序で混合することができる。一実施形態により、エポキシ官能性を有する少なくとも1種のシラン化合物は、それを、少なくとも1種のシラン化合物b)と混合する前に、コロイドシリカ粒子と混合される。
【0019】
一実施形態により、エポキシ官能性を有するシラン化合物は、シリカが、シラン化合物b)例えばアミン官能性シランにより改質された後に、そのコロイドシリカ粒子と混合される。
【0020】
一実施形態により、シラン化合物a)およびb)は、pH12未満で、例えば11未満、10未満または9.5未満で、コロイドシリカ粒子と混合される。一実施形態により、シラン化合物、例えばアミノ官能性を有するシランの混合は、10を超えるpHで、例えば11を超えるpHで行われる。
【0021】
一実施形態により、シラン化合物とコロイドシリカ粒子との混合は、pH約1〜約13で、例えば約6〜約12、もしくは約7.5〜約11、または約9〜約10.5などで行うことができる。
【0022】
シランとコロイドシリカ粒子との混合は、例えば温度約20〜約95℃で、例えば約50〜約75、または約60〜約70℃などで連続的に行うことができる。シランは、例えば温度約60℃で、また、適切にはコロイドシリカ表面積(コロイドシリカ粒子上の)1nmおよび1時間当たりシラン分子約0.01〜約100個である、例えば約0.1〜約10個、約0.5〜約5個もしくは約1〜約2個などである、制御された速度で、激しい撹拌のもとにシリカ粒子にゆっくり添加される。シランの添加は、添加速度、添加されるシランの量および所望されるシリル化の度合いに応じた、任意の適切な時間の間継続することができる。しかし、シランの添加は、適切な量のシラン化合物a)およびb)が添加されてしまうまで、約5時間まで、または約2時間まで継続することができる。コロイドシリカ粒子に添加されるa)およびb)の量は、適切には、コロイドシリカ粒子の表面積1nm当たりシラン分子約0.1〜約6個、例えば約0.3〜約3個もしくは約1〜約2個などである。コロイド粒子へのシランの連続添加は、約80重量%までのシリカ含量を有する高濃度のシラン処理されたシリカ分散体を調製する場合、特に重要であろう。しかし、分散体中のシリカ含量は、約20〜約80、約25〜約70、または約30〜約60重量%が適切である。
【0023】
一実施形態により、少なくとも1種のシラン化合物a)およびb)、例えばa)は、コロイドシリカ粒子と混合する前に、例えば水で希釈されて、適切には約1:8〜約8:1、約3:1〜約1:3または約1.5:1〜約1:1.5の重量比におけるシランと水とのプリミックスを形成する。得られたシラン−水の溶液は、実質的に透明かつ安定であり、コロイドシリカ粒子と容易に混合される。コロイドシリカ粒子へのシランの連続添加において、混合は、シランの添加を停止した後約1秒〜約30分、例えば約1〜約10分継続することができる。
【0024】
一実施形態により、本分散体の調製後2か月における、粘度の相対的増加は、約100%未満、例えば約50%未満または約20%未満などである。一実施形態により、分散体の調製後4か月における、粘度の相対的増加は、約200%未満、例えば約100%未満または約40%未満などである。
【0025】
本明細書においてシリカゾルとも呼ばれるコロイドシリカ粒子は、例えば十分な純度を有する沈降シリカ、ミクロシリカ(シリカフューム)、発熱性シリカ(フュームドシリカ)またはシリカゲル、ならびにそれらの混合物に由来でき、それらは、WO2004/035474中に記載される方法によってシラン処理できる。シリカゾルは、典型的には、例えばUS,5,368,833において開示される水ガラスから得ることもできる。
【0026】
本発明によるコロイドシリカ粒子およびシリカゾルは、改質でき、またアミン、アルミニウムおよび/またはホウ素などの他の要素を含有することができ、それらは粒子および/または連続相中に存在することができる。ホウ素改質シリカゾルは、例えばUS2,630,410中に記載されている。アルミニウム改質シリカ粒子は、適切に約0.05〜約3重量%、例えば約0.1〜約2重量%のAl含量を有する。アルミニウム改質シリカゾルの調製手順は、例えばIler,K.Ralphによる「The Chemistry of Silica」、407〜409頁、John Wiley & Sons(1979)、およびUS5368833中にさらに記載されている。
【0027】
本コロイドシリカ粒子は、約2〜約150nm、約3〜約50nm、約5〜約40nmまたは約7〜約22nmの範囲にある平均粒子直径を有することが適切である。本コロイドシリカ粒子は、約20〜約1500m/gの、例えば約50〜約900、約70〜約600m/g、または約130〜約360m/gなどの比表面積を有することが適切である。
【0028】
一実施形態により、本コロイドシリカ粒子は、狭い粒度分布、すなわち低い相対標準偏差の粒度を有することができる。
【0029】
一実施形態により、粒度分布の相対標準偏差は、個数による粒度分布の標準偏差の平均粒径に対する比率である。粒度分布の相対標準偏差は約60個数%未満、例えば約30個数%未満または約15個数%未満などである。
【0030】
コロイドシリカ粒子は、水性シリカゾルを形成するように、適切にはK、Na、Li、NHなどの安定化カチオン、有機カチオン、第一級、第二級、第三級および第四級アミン、またはこれらの混合物の存在において、水性媒質中に適切に分散される。しかし、有機媒質、例えば低級アルコール、アセトン、またはこれらの混合物を含む分散体も、適切には合計分散媒質体積の約1〜約20、約1〜約10または約1〜約5体積パーセントの量で使用できる。一実施形態により、さらなる有機媒質を全く含まない水性シリカゾルが使用される。一実施形態により、コロイドシリカ粒子は、負に帯電されている。ゾル中のシリカ含量は、約20〜約80重量%、例えば約25〜約70、また約30〜約60重量%などが適切である。シリカ含量が高いほど、得られるシラン処理したコロイドシリカ分散体はより濃度が高い。シリカゾルのpHは、約1〜約13、約3.5〜12、約6〜約12、または約7.5〜約11であるのが適切である。
【0031】
一実施形態により、本シリカゾルは約20〜約100%、例えば約30〜約90もしくは約60〜約90%などのS値を有する。
【0032】
これらの範囲内のS値を有する分散体は、得られた分散体の安定性を向上させることができることが、見出されている。S値は、コロイドシリカ粒子の凝集性の範囲、すなわち凝集もしくはミクロゲル形成の度合いを特性付ける。S値は、Iler,R.K.およびDalton,R.L.によりJ.Phys.Chem.60(1956)、955〜957頁に示される式により測定および計算されている。
【0033】
S値は、コロイドシリカ粒子のシリカ含量、粘度および密度によって決まる。高いS値は、低いミクロゲル含量を示す。S値は、例えばシリカゾルの分散相中に存在する、重量パーセントにおけるSiOの量を表す。ミクロゲルの度合いは、例えばUS5368833中にさらに記述されているように、製造工程の間、制御することができる。
【0034】
シラン化合物は、コロイドシリカ粒子の表面上で、シラノール基により安定なシロキサン共有結合(Si−O−Si)を形成することができ、または、例えば水素結合によりシラノール基と結合することができる。
【0035】
一実施形態により、シラン処理コロイドシリカ粒子の水性分散体は、水性(waterborne)/水系(water-based)(もしくは水混和性)ラッカー、例えばエポキシ、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル、アルキッド樹脂の分散体もしくはエマルションなどの樹脂に基づくラッカーであって、木材コーティング、金属コーティング、プラスチックコーティング、紙コーティング、もしくはガラスおよびセラミックスまたは鉱物質基体のコーティングにおいて使用するためのラッカーと混合される。
【0036】
一般に、用語ラッカーは、溶媒の蒸発により、また同様に、しばしば硬化過程により乾燥する任意の透明なもしくは着色したワニスであって、超つや消しから高光沢までの任意の光輝(sheen)レベルにおける硬質の、耐久性のある仕上げをもたらすワニスであり、必要に応じてさらに研磨することができるワニスを含む。
【0037】
一実施形態により、シラン処理コロイドシリカ粒子の分散体に、有機バインダーが添加される。用語「有機バインダー」には、ラテックス、水溶性樹脂およびポリマーならびにこれらの混合物が含まれる。水溶性樹脂およびポリマーは、例えばポリ(ビニルアルコール)、変性ポリ(ビニルアルコール)、ポリカルボキシレート、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミン、ポリ(アクリル酸)、ポリアミドアミン、ポリアクリルアミド、ポリピロール;カゼイン、ダイズタンパク質、合成タンパク質などのタンパク質;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースもしくはカルボキシメチルセルロースを含むセルロース誘導体などの多糖、およびデンプンもしくは変性デンプン;キトサン、多糖ガム、例えばグアールガム、アラビアゴム、キサンタンガムおよびマスチックガムなど、ならびにこれらの混合物もしくは混成体などの、種々のタイプのものとすることができる。用語「ラテックス」には、合成および/もしくは天然ラテックスであって、種々のタイプの樹脂および/もしくはポリマー、例えばスチレン−ブタジエンポリマー、ブタジエンポリマー、ポリイソプレンポリマー、ブチルポリマー、ニトリルポリマー、酢酸ビニルホモポリマー;ビニルアクリルコポリマーもしくはスチレン−アクリルポリマーなどのアクリルポリマー;ポリウレタン、エポキシポリマー、セルロースポリマー、例えばマイクロセルロース、メラミン樹脂、ネオプレンポリマー、フェノール系ポリマー、ポリアミドポリマー、ポリエステルポリマー、ポリエーテルポリマー、ポリオレフィンポリマー、ポリビニルブチラルポリマー;シリコーンゴムおよびシリコーンポリマー(例えばシリコーン油)などのシリコーン;尿素−ホルムアルデヒドポリマー、ビニルポリマーまたはこれらの混合物もしくは混成体のエマルションに基づくラテックスが含まれる。
【0038】
一実施形態により、シラン処理コロイドシリカ粒子の分散体は、水性ラッカー、例えば木材用ラッカーもしくはエポキシラッカー、などのラッカーと、乾燥基準におけるシリカとラッカーの重量比約0.01〜約4、例えば約0.1〜約2、もしくは約0.2〜約1、または約0.2〜約0.5などで混合される。同様な形で、シラン処理粒子は、同一の比率で有機バインダーと混合することができる。一実施形態により、シラン処理コロイドシリカ粒子は、有機バインダーもしくはラッカーなどのさらなる成分と適度な温度で、適切には約15〜約35℃、もしくは約20〜約30℃で混合される。一実施形態により、これらの成分は、約10秒〜約1時間、もしくは約1分〜約10分混合される。
【0039】
本発明はさらに、本明細書において記述される方法によって得られる水性分散体に関する。特に、本発明は、シラン処理コロイドシリカ粒子を含む水性分散体であって、このシラン処理コロイドシリカ粒子が、a)エポキシ官能性を含む、少なくとも1種のシラン化合物と、b)エポキシ官能性を有しない、少なくとも1種のシラン化合物とからなるシラン基を含む水性分散体に関する。
【0040】
一実施形態により、前記シランは、コロイドシリカ粒子を改質することが可能である。これらのシラン基は、本明細書において開示される任意のシラン化合物に由来することができる。
【0041】
本分散体の成分は、本明細書の方法部分において開示される技術的特徴を適切に有する。
【0042】
本水性分散体は、種々の種類の基体上にコーティングフィルムを形成することが可能である。
【0043】
一実施形態により、本水性分散体は、ラッカー、例えば水性ラッカーを、さらに含む。本水性分散体は、ラッカー配合物に、改良された硬度、特に早期硬度および/または耐水性を付与することが可能である。
【0044】
一実施形態により、本分散体は、本分散体中の乾燥材料に対して約1〜約80重量%、例えば約10〜約70、約20〜約50重量%のシリカ含量を有する。安定性に関してより有効であるほかに、本分散体は、コーティングされる材料上に塗布した後、より短い乾燥時間を有する。
【0045】
したがって、乾燥に使用されるエネルギーが、かなり低減される。シラン処理コロイドシリカ粒子が、全く実質的に凝集、沈殿および/またはゲル化せず、安定に分散されたままである限り、本分散体中の高シリカ含量が好ましい。これは、その輸送コストを低減させる見地からも有益である。
【0046】
一実施形態により、本分散体中のa)およびb)の両方とシリカの重量比は、約0.01〜約3、例えば約0.01〜約1.5であり、例えば約0.05〜約1、もしくは約0.1〜約0.5、もしくは約0.2〜約0.5、または約0.3〜約0.5などである。一実施形態により、b)とa)の重量比は、約2〜約0.1、例えば約1.5〜約0.2または約1.1〜約0.4の範囲にある。
【0047】
シリカの含量は、改質されたシラン処理シリカ粒子、および調製した分散体中にやはり存在できる非改質シリカ粒子中のシリカを含む。シランの合計含量は、全ての遊離の分散されたシランと、全ての連結もしくは結合されたシラン基とに基づいている。
【0048】
一実施形態により、本分散体は、本明細書においてさらに記述されている、ラテックスなどの有機バインダーをさらに含有する。有機バインダーおよびシラン処理コロイドシリカ粒子を含む分散体の合計固形分含量は、約15〜約80重量%、例えば約25〜約65、または約30〜約50重量%などであるのが適切である。乾燥基準におけるシリカと有機バインダーの重量比は、約0.01〜約4、例えば約0.1〜約2、または約0.2〜約1などの範囲にあるのが適切である。
【0049】
一実施形態により、シラン処理コロイドシリカ粒子および有機バインダーは、本分散体中で別々の粒子として存在する。
【0050】
本分散体の安定性は、そのため貯蔵が可能になり、使用直前に現場で調製する必要がなくなるため、どんな用途においてもその取扱いおよび適用を容易にする。したがって、既に調製した分散体を、容易に、直接使用することができる。本分散体はまた、危険な量の有毒成分を伴わないという意味でも有益である。本水性分散体は、水混和性有機媒質を含有できる。例えば水と混和できる適切な有機媒質を、本水性分散体中に、水および有機媒質の合計体積の約1〜約20体積パーセントの量で、例えば約1〜約10、または約1〜約5体積パーセントの量で含むことができる。
【0051】
本分散体は、シラン処理コロイドシリカ粒子のほかに、シリカ粒子の粒度、シラン対シリカの重量比、シラン化合物の型、反応条件などに応じて、少なくともある範囲まで非シラン処理コロイドシリカ粒子をも含有できる。コロイドシリカ粒子の少なくとも約40重量%、例えば少なくとも約65、もしくは少なくとも約90、または少なくとも約99重量%がシラン処理(シラン改質)されるのが適切である。本分散体は、シリカ粒子表面に結合もしくは連結されたシラン基もしくはシラン誘導体の形態のシランのほかに、少なくともある範囲まで、遊離の分散された非結合シラン化合物をも含有できる。シラン化合物の少なくとも約40重量%、例えば少なくとも約60、少なくとも約75、少なくとも約90、または少なくとも約95重量%が、シリカ粒子表面に結合もしくは連結されるのが適切である。
【0052】
本発明はさらに、本明細書において記述されるシラン処理コロイドシリカ粒子を含むラッカー配合物に関する。
【0053】
本発明はまた、例えば木材用ラッカーもしくはエポキシラッカーなどのラッカー配合物におけるなどのコーティング用途における、本シラン処理コロイドシリカ分散体の使用であって、改良された耐水性、硬度、特に早期硬度、および安定性を付与する添加剤としての使用に関する。また、本発明の分散体は、改良された接着性および耐摩耗性をも付与できる。本発明の分散体は、改良されたサンディング性(研磨性)および流動性状を提供することもできる。この種類の分散体は、ペイントなどの着色された系において、より良好なフィルム性状を提供することもできる。
【0054】
本分散体はまた、織布および不織布、煉瓦、印画紙(photo paper)、木材、鋼もしくはアルミニウムなどの金属表面、例えばポリエステル、PET、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネートもしくはポリスチレンなどのプラスチックフィルム;布、皮革、紙および紙様材料、セラミック、石、セメント系材料、ビチューメン、硬質繊維、麦わら、ガラス、陶器、様々な異なるタイプのプラスチック、ガラス繊維、例えば帯電防止および耐油脂性仕上げ向けのコーティングおよび含浸向けにも;不織布、接着剤、付着増進剤、積層剤、シーラント、疎水化剤向けバインダーとしても;例えばコルク粉末もしくはおが屑、石綿およびゴム屑向けバインダーとしても;捺染におけるまた紙業界における補助剤としても;例えばガラス繊維用サイズ剤としてのポリマーへの添加剤としても;ならびに皮革仕上げ用にも適している。
【0055】
本発明は、このように記述されているが、同一のものが、多くの形で変化できることは明らかである。このような変化は、本発明の要旨および範囲からの逸脱と見なされるべきではなく、当業者に明らかである全てのこのような変化が、本特許請求の範囲内に含まれることを意図している。以下において実施例は、反応のより特定な細部を提供するが、下記の一般原理をここに開示できる。下記の実施例は、記述された発明を、その範囲を限定することなく如何に実施できるかを、さらに例示するであろう。
【0056】
他に指示されない場合、全ての部および百分率は、重量部および重量百分率を指す。
【実施例】
【0057】
以下において使用されるシランA〜Eは、スイスのMomentiveから入手可能である。
A:Silquest A−187(グリシドキシ含有エポキシ−シラン)
B:Silquest A−1524(ウレイド含有シラン)
C:Silquest A−1100(アミノ含有シラン)
D:Silquest A−1130(アミノ含有シラン)
E:Silquest A−178(アクリルアミド含有シラン)
【0058】
シランの加水分解
シラン化合物A〜Eを、室温で適度の撹拌のもとにpH調節した水に添加し、それにより60〜120分後に透明な溶液が得られた。
【0059】
【表1】

【0060】
スウェーデンのEka Chemicals ABから入手可能な、使用したシリカゾルBindzil 30/360を、以下の表2に示している:
【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
シラン処理コロイドシリカ分散体の調製
予備加水分解したシラン溶液A〜E(表1参照)を、良好な撹拌のもとに1時間当り溶液600gの速度で、1滴ずつシリカゾルA1に添加した。シランを添加した後、約30分間撹拌を継続した。
【0064】
工程温度は60〜70℃であった。水およびシランを等量混合することによって水で希釈したシラン化合物のプリミックス試料を調製した(表4〜6参照)。この混合物を透明な溶液が得られるまでゆっくり撹拌した。次いでシラン希釈液を、他に指示されない限り、適度の撹拌のもとにシリカゾルと混合した。およそ300ppmの遊離エポキシシランは、シリカ粒子と反応しなかった。
【0065】
【表4】

【0066】
【表5】

【0067】
【表6】

【0068】
【表7】

【0069】
【表8】

【0070】
それぞれ木材用ラッカー配合物およびエポキシラッカー配合物1〜6および7〜11について1、7、14および30日後に、Koenig硬度試験を行った。
【0071】
木材用ラッカー配合物(No 1〜6):
20gのシラン改質コロイドシリカを、良好な撹拌のもとに80gの1液型水系ラッカーに添加した。
【0072】
木材用コーティングは、pHが8.5を超える場合に生じるオーク材の変色のため、中性pHを有する配合物を必要とする。したがって、中性pHで安定であり、コーティング配合物中にpHチョック(chock)を生じないシラン改質シリカゾルを有する必要がある。
【0073】
エポキシラッカー配合物(No 7〜11):
良好な撹拌のもとに、最初、5gのシラン改質シリカゾルを10gの2液型エポキシラッカーに添加し、その後10gのエポキシ硬化剤を添加した。
【0074】
ガラス板上にフィルムアプリケータによってフィルムを注型した。湿ったフィルム厚さは200μmであり、1、7、14および30日後に硬度を測定した(室温で乾燥および貯蔵を行った)。
【0075】
ISO1522(以前はASTM D−4366)規格により、Koenig振り子式硬度試験機測定装置で試験を行った。
【0076】
【表9】

【0077】
【表10】

【0078】
【表11】

【0079】
表11中の全てのラッカー配合物は、エポキシラッカー中で2か月を超えて安定である。
【0080】
【表12】

【0081】
表12において注目することができるように、二重にシラン処理したコロイドシリカ分散体に基づく配合物3〜6は、対照試料(No.1)および単回シラン処理コロイドシラン分散体(No.2)と比較して改良された早期硬度を示す。新たに提供される床(木材用ラッカー配合物を使用している)上に家具などを配置するなどの用途では、使用者はほとんど即座の使用を要求するので、硬度の発現が急速であることはかなり重要である。
【0082】
【表13】

【0083】
二重にシラン処理したコロイドシリカ分散体に基づく配合物9〜11は、対照試料(No.7)および単回シラン処理コロイドシラン分散体(No.8)と比較して改良された早期硬度を示す点に注目することができる。
【0084】
耐水性(24時間)試験
コロイドシリカからなる透明なフィルムによる、24時間(20℃)経過したフィルム(基体として)上に、10滴の水をたらした。これらの水滴上に50mlのカップをかぶせて、水滴が蒸発するのを防いだ。24時間後、1〜5の尺度で、そのプレートについて解析した。
【0085】
尺度は次の通りであった;1:フィルムが「溶解した」、
2:一部溶解した、
3:フィルムに影響、
4:フィルムにいくらかの影響、
5:影響なし。
【0086】
【表14】

【0087】
【表15】

【0088】
木材用ラッカー配合物(No 1〜6):
木材用ラッカー配合物から、エポキシと比較して、ウレイドもしくはアクリルアミド官能基化シランと、エポキシシランとの両方によって改質したシラン処理シリカ粒子について、著しく良好な耐水性が得られる点を見ることができる。
【0089】
エポキシラッカー配合物(7〜11):
いずれの試料についても、耐水性は、マイナスの形では影響されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラン処理コロイドシリカ粒子の水性分散体の製造方法であって、水性媒質中において、a)エポキシ官能性を含む、少なくとも1種のシラン化合物と、b)エポキシ官能性を有しない、コロイドシリカ粒子を改質することが可能な少なくとも1種のシラン化合物と、c)コロイドシリカ粒子とを、任意の順序で混合して、a)およびb)に由来するシラン化合物を含有するシラン処理コロイドシリカ粒子の水性分散体を形成するステップを含む方法。
【請求項2】
前記シラン処理コロイド粒子が、ラッカーに硬度および/または耐水性を付与することが可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
b)が、アミド官能性、ウレイド官能性、アミノ官能性、エステル官能性、メルカプト官能性および/またはイソシアナト官能性を有するシランから選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
b)が、アミド官能性および/またはウレイド官能性から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
b)対a)の重量比が、約2〜約0.1である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
a)およびb)の両方対シリカの重量比が、約0.01〜約1.5である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記水性分散体が、ラッカーと混合される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の方法によって得ることが可能な水性分散体。
【請求項9】
シラン処理コロイドシリカ粒子を含む水性分散体であって、前記シラン処理コロイドシリカ粒子が、a)エポキシ官能性を含む、少なくとも1種のシラン化合物と、b)エポキシ官能性を有しない、少なくとも1種のシラン化合物とに由来するシラン基を含む水性分散体。
【請求項10】
前記シラン処理コロイドシリカ粒子が、ラッカーに、改良された硬度および/または耐水性を付与することが可能である、請求項9に記載の水性分散体。
【請求項11】
b)が、アミド官能性、アミノ官能性、エステル官能性、メルカプト官能性、イソシアナト官能性および/またはウレイド官能性を含む、請求項9または10に記載の水性分散体。
【請求項12】
b)とa)の重量比が、約2〜約0.1の範囲にある、請求項9から11のいずれか一項に記載の水性分散体。
【請求項13】
a)およびb)の両方とシリカの重量比が、約0.01〜約1.5の範囲にある、請求項9から12のいずれか一項に記載の水性分散体。
【請求項14】
ラッカーをさらに含む、請求項9から13のいずれか一項に記載の水性分散体。
【請求項15】
コーティング用途における、請求項8から14のいずれかに記載の分散体の使用。


【公表番号】特表2012−520227(P2012−520227A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553434(P2011−553434)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053001
【国際公開番号】WO2010/103020
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(509131443)アクゾ ノーベル ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フエンノートシャップ (26)
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel Chemicals International B.V.
【住所又は居所原語表記】Stationsstraat 77, 3811 MH Amersfoort, Netherlands
【Fターム(参考)】