説明

水性スクリーンインキ

【課題】 透明基材上に、低抵抗の電気特性、高透過率、低ヘイズ値の光学特性を有する水性スクリーンインキを提供する。
【解決手段】 導電性高分子及び水溶性樹脂を含有する水性スクリーンインキであって、該水溶性樹脂が、セルロース、アルブミン、ガゼイン、アルギン酸、寒天、澱粉、多糖類から選ばれる天然系樹脂又はその誘導体、及び、ビニル系化合物、ビニリデン系化合物、ポリエステル系化合物、ポリエーテル系化合物、ポリグリコール系化合物、ポリビニルアルコール系化合物、ポリアルキレンオキサイド系化合物、ポリアクリル酸系化合物から選ばれる合成系樹脂からなる群から選ばれる1種以上の水溶性樹脂であり、溶剤中の水の含有量が50〜90質量%であることを特徴とする水性スクリーンインキ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性を有する透明皮膜を形成するための水性スクリーンインキに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネルの需要が増加し、携帯型ゲームや携帯電話、化粧版用への応用などアプリケーションも多様化してきている。タッチパネルの層構造は、一般に、ハードコート、PETフィルム、透明電極層、ドットスペーサ(空気層)、透明電極層、固定ガラスの構造である。その電極部として、ITOや導電性高分子、銀、カーボンナノチューブ(CNT)等が用いられているが、安価な製品開発を目的に、容易に印刷加工できる導電性高分子への期待が高い。特に、導電性高分子として、ポリ[(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレン−スルフォネート)](以下、PEDOT−PSS)が注目されている。
【0003】
タッチパネルの電極層の形成には、ベタ印刷により抵抗膜式で導電性を発現させるという事情で、導電性インキを、スクリーン印刷方式で印刷することが好ましい。導電性高分子材料を含有するスクリーンインキとしては、特許文献1には、PEDOT−PSSを含有する溶剤系スクリーンインキが記載されているが、PEDOT−PSSの含有量が2%程度以上であり、タッチパネル用途に求められる透過率、ヘイズ値を得ることができない。特許文献2には、溶媒を水からエチレングリコールへ置換することで、導電率向上と記載されているが、相応しい置換率が記載されておらず、更に、エチレングリコールへの置換率が高いとスクリーンインキの経時安定性や膜の乾燥条件に支障をきたす。特許文献3には、導電性高分子材料の分散体成分と溶液成分からなる電子素子用(特にトランジスタ用)と記載されているが、水系のPEDOT−PSS分散液をエチレングリコールに置換するという点で本発明の水系スクリーンインキと異なる。特許文献4には、インクジェットインクを用いた電子素子の製造方法が記載されているが、インクジェットインクに相応しい粘度はスクリーン印刷には対応できない。
【0004】
PEDOT−PSS等の導電性高分子を含有する、透過率、ヘイズ値に優れた導電性皮膜が得られ、かつスクリーン印刷方式で印刷することが出来る水性インキが求められている。
【0005】
【特許文献1】特表2002−500408号公報
【特許文献2】特表2005−529474号公報
【特許文献3】特表2005−530351号公報
【特許文献4】特開2007−165900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、透明基材上に、低抵抗の電気特性、高透過率、低ヘイズ値の光学特性を有する透明導電印刷層を形成するための水性スクリーンインキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、鋭意研究の結果、導電性高分子を安定に分散させるために、特定のバインダー樹脂及び水を主成分とする溶剤成分の配合を検討することで本発明に想到した。
【0008】
すなわち、本発明は、導電性高分子材料、水溶性樹脂及び溶剤を含有する水性スクリーンインキであって、該水溶性樹脂が、セルロース、アルブミン、ガゼイン、アルギン酸、寒天、澱粉、多糖類から選ばれる天然系樹脂又はその誘導体、及び、ビニル系化合物、ビニリデン系化合物、ポリエステル系化合物、ポリエーテル系化合物、ポリグリコール系化合物、ポリビニルアルコール系化合物、ポリアルキレンオキサイド系化合物、ポリアクリル酸系化合物から選ばれる合成系樹脂からなる群から選ばれる1種以上の水溶性樹脂であり、溶剤中の水の含有量が50〜90質量%であることを特徴とする水性スクリーンインキを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水性スクリーンインキは、印刷適性に優れ、基材への密着性、電気特性及び光学特性に優れ、特に、タッチパネル用途に用いるとき、前記印刷適性とともに表面抵抗値、透過率、ヘイズ等の、タッチパネルに特有に求められる各特性に優れた性能を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の水性スクリーンインキは、特に、タッチパネルの電極層形成のために好ましく用いられる。タッチパネルとは、顧客が手指乃至は指定のペンで直接画面に触れる(タッチする)ことで、情報を入力し、必要な情報及至物品を入手するための装置に於けるディスプレー画面(パネル)を指す。
【0011】
タッチパネルの構造は、抵抗膜式、表面弾性波式、電磁誘導式、静電容量式等が知られている。例えば、抵抗膜式のタッチパネルの層構造は、ハードコート、PETフィルム、透明電極層、ドットスペーサ(空気層)、透明電極層、固定ガラスの層構造を有する。
【0012】
透明電極層に求められる要求特性としては、例えば、1200Ω/□以下の表面抵抗値の電気特性、80%以上の透過率(白色光)、2%以下のヘイズ値等の光学特性、及び、スクリーン印刷特性が求められる。
【0013】
本発明のインキは、スクリーン印刷方式での印刷を目的とする水性インキであることから、全体として、チキソトロピック性を有しているのが良く、コーンプレート式回転粘度計による粘度測定法において、せん断速度10s−1の時0.1〜0.3Pa・s、100s−1のとき0.5〜2.0Pa・sとなる粘度を持たせることが好ましい。
【0014】
また本発明のインキは、従来の液媒体が有機溶剤を主体とした油性ではなく、水を主体とした水性である。油性でなく水性とすることで、印刷を行う際の作業環境を良好なものと出来るし、火災や爆発の危険性等もより軽減することが出来る。
【0015】
本発明の水性スクリーンインキは、特に、タッチパネルの電極層形成に用いられる、導電性高分子材料、水溶性樹脂及び溶剤を含有する水性スクリーンインキであって、該水溶性樹脂としては、セルロース、アルブミン、ガゼイン、アルギン酸、寒天、澱粉、多糖類から選ばれる天然系樹脂又はその誘導体、及び、ビニル系化合物、ビニリデン系化合物、ポリエステル系化合物、ポリエーテル系化合物、ポリグリコール系化合物、ポリビニルアルコール系化合物、ポリアルキレンオキサイド系化合物、ポリアクリル酸系化合物から選ばれる合成系樹脂からなる群から選ばれる1種以上の水溶性樹脂が用いられる。
【0016】
上記した水溶性樹脂は、スクリーン印刷方式での印刷を可能とする粘度を水性インキに持たせる成分であると共に、後記する導電性高分子材料を水性媒体中に安定的に分散させる分散剤としての機能や、電極基材に対する導電性高分子の結着を充分なものにする皮膜形成性を有したバインダー樹脂としての機能を有するものである。
【0017】
本発明では、より少量の使用で、スクリーン印刷方式での印刷を可能とする粘度を水性インキに持たせることが出来る点で、上記した水溶性樹脂のなかでも、セルロースを用いることが好ましい。
【0018】
本発明の水性スクリーンインキに用いる、導電性高分子材料としては、例えば、ポリ[(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレン−スルフォネート)](以下、PEDOT−PSS)、ポリアニリン、カーボンナノチューブ等が用いられる。これらの中でも、導電性が良好で、環境安定性に優れ、薄膜とした際の透明性に優れる点で、PEDOT−PSSが、特に好ましい。
【0019】
上記水溶性樹脂と上記導電性高分子材料とは、電極基材への結着を高める点では、前者の不揮発分が高いことが有効であるが、導電性を低下させない点では、後者の不揮発分がより高いことが有効である。
【0020】
導電性高分子材料として、PEDOT−PSSを選択した場合には、前記した水溶性樹脂としては、相溶性や増粘性の観点から、水溶性セルロース樹脂を用いることが好ましい。
【0021】
この様な水溶性セルロース樹脂としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の非イオン性セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、カルボキシメチルセルロースカルシウム塩等のイオン性セルロースを挙げることが出来る。
【0022】
水溶性セルロース樹脂としては、水性スクリーンインキとした際のPEDOT−PSSとの相互作用が小さく凝集が起き難く、経時分散安定性に優れたものに出来る点で、非イオン性セルロースを用いることが好ましい。
【0023】
本発明の水性スクリーンインキを調製するに当たって、水溶性樹脂として上記非イオン性セルロースを用いる場合は、その他の水溶性樹脂として、例えば、ポリビニルアルコールやビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体の様なポリビニルアルコール系化合物、ポリエチレングリコールの様なエチレングリコールが重合した構造をもつポリエーテル系化合物、ポリ(ビニルピロリドン)の様なビニルピロリドン重合体等の非イオン性の水溶性樹脂は、PEDOT−PSSとの相溶性に優れるので好ましく、これらの中でも、ビニルピロリドン重合体を選択して併用すると、非イオン性セルロースとの相溶性をも向上でき、少量の併用で、連続印刷時における膜のエッジ形状を改良出来る点で好ましい。
【0024】
このビニルピロリドン重合体としては、例えば、ビニルピロリドン単独重合体〔ポリ(ビニルピロリドン)。以下、PVP〕や、ビニルピロリドンを主成分としてその他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体(共単量体)と重合して得た共重合体を用いることが出来る。この様な共単量体としては、例えば、酢酸ビニル(ビニルアルコール前駆体)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等を挙げることが出来る。本発明では、重合体を構成する単量体合計を100モル%とした際、80モル%以上のビニルピロリドンを用いて重合して得た重合体を用いることが好ましい。
【0025】
水溶性樹脂である、非イオン性セルロースとビニルピロリドン重合体との割合は特に制限されるものではないが、上記したビニルピロリドン重合体の長所を存分に発揮させるためには、不揮発分の質量基準で、非イオン性セルロース/ビニルピロリドン重合体=95/5〜85/15となる様に、両者を用いることが好ましい。
【0026】
本発明の水性スクリーンインキ中の、水溶性樹脂の含有量は、スクリーンインキ中で0.1〜0.5質量%程度、固形分換算では10〜30質量%程度が好ましい。スクリーンインキ中で、0.5質量%を超えると、高弾性になり印刷適性が得られにくい傾向があり、0.1質量%を下回ると、増粘効果が十分でなくスクリーン印刷適性が得られにくい傾向がある。固形分30質量%を超えると、十分な導電性が得られない傾向があり、10質量%を下回ると、塗膜の十分な製膜性を発現しにくい。
【0027】
本発明の水性スクリーンインキ中の、導電性高分子材料の含有量は、スクリーンインキ中で0.5〜1.5質量%程度、固形分換算では40〜80質量%程度が好ましい。スクリーンインキ中で、1.5質量%を超えると、凝集する傾向があり、0.5質量%を下回ると、1200Ω/□以下の表面抵抗値が得られない傾向がある。固形分80質量%を超えると、塗膜の透過率とヘイズが悪化する傾向があり、40質量%を下回ると、十分な導電性を発現しにくい。
【0028】
本発明の水性スクリーンインキにおいて、溶剤とは、液媒体という意味で用いている。本発明のスクリーンインキは水性であるから、本発明の水性スクリーンインキに用いる溶剤は、水を主成分とする溶剤である。本発明においては、この溶剤中の水の含有量が50〜90質量%であることを特徴としている。水の量が50質量%よりも少ない場合、PEDOT−PSSの様な導電性高分子材料が凝集し易く、90質量%を超えると、連続印刷が難しくなる。
【0029】
本発明の水性スクリーンインキに、水とともに併用して用いる溶剤としては、親水性の有機溶剤が好ましい。具体的には、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールnプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、メタノール、エタノール、nプロプルアルコール、イソプロピルアルコール、3-メトキシブタノール、ダイアセトンアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等が挙げられる。連続印刷適性の向上には、エタノール、ジエチレングリコール及びトリプロピレングリコールメチルエーテルから選ばれる1種以上の併用が特に好ましい。
【0030】
本発明の水性スクリーンインキから得られる、電極基材上の導電性皮膜は、インキ中の不揮発分である、導電性高分子材料と水溶性樹脂を主成分とするものである。従って、充分な導電特性を有する皮膜を得るには、ポリ[(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレン−スルフォネート)]の様な導電性高分子材料を、水性スクリーンインキ中の不揮発分換算で、40〜80質量%含有することが好ましい。
【0031】
本発明の水性スクリーンインキには、他に任意の成分として、必要に応じて、レベリング剤、界面活性剤、分散剤、泡消剤等を含有させることが出来る。
【0032】
本発明の水性スクリーンインキの調製に当たっては、オルガノポリシロキサンをレベリング剤や消泡剤として用いることが好ましい。
【0033】
オルガノポリシロキサンとしては、例えば、無変性ジメチルポリシロキサン、無変性メチルハイドロジェンポリシロキサン、無変性ジフェニルポリシロキサン、無変性メチルフェニルポリシロキサン、モノアミノ変性メチルポリシロキサン、モノエポキシ変性メチルポリシロキサン、モノカルボキシル変性メチルポリシロキサン、ポリ(オキシアルキレン)アルキル変性メチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0034】
消泡剤としては、上記したオルガノポリシロキサンの中でも、無変性ジメチルポリシロキサンを用いることが、インキ自体の発泡の抑制に効果的であり、印刷初期におけるインキ流動性やレベリング性を向上出来る点で好ましい。
【0035】
本発明の水性スクリーンインキの調製に当たっては、無変性ジメチルポリシロキサンのみを用いても応分の効果は得られるが、レベリング剤として、ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)ブロック共重合鎖を含有するジメチルポリシロキサンを、それと併用することで、初期印刷や連続印刷時、特に連続印刷時におけるインキ吐出性を著しく向上出来る点で好ましい。
【0036】
ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)ブロック共重合鎖を含有するジメチルポリシロキサンとしては、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance;親水親油バランス)1〜20のものがいずれも使用可能であるが、水との親和性を高め、より高いレベリング性を出すために、HLB10〜20のものを用いることが好ましい。
【0037】
水性スクリーンインキの印刷時の性能を改良するためのオルガノポリシロキサンは、スクリーンインキ中で0.05〜0.5質量%することが好ましい。無変性ジメチルポリシロキサンとポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)ブロック共重合鎖を含有するジメチルポリシロキサンとを併用する場合は、質量基準で、両者合計を100部とした際、無変性ジメチルポリシロキサン/ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)ブロック共重合鎖を含有するジメチルポリシロキサン=70/30〜30/70となる様にすることが、上記した点で好ましい。
【0038】
(印刷方法等)
本発明の水性スクリーンインキは、スクリーン印刷方式でタッチパネル導電層を形成するために用いられる。基材となる透明フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)やポリエステル等のフィルムが用いられ、スクリーン印刷は、例えば、250〜500線/インチの版で、印刷速度100mm/sec等の条件で行われる。乾燥は例えば、130℃の熱風で数分程度、蒸発乾燥させる。印刷層の膜厚は、乾燥状態で、0.1〜1.0μm程度が好ましい。
【実施例】
【0039】
次に、本発明を、実施例を挙げて更に具体的に説明する。尚、本明細書では特に断りのない限り、部および%は質量基準である。実施例および比較例のスクリーンインキ組成、試験用印刷物および評価結果を表1に示す。
【0040】
(スクリーンインキ(1)の調製)
以下に記載した各原料の数値は、インキ中の質量%に換算した値である。
ORGACON HBS(日本アグフア・ゲバルト株式会社製PEDOT−PSS分散液、不揮発分1.25%)0.8g、メトローズ(信越化学工業株式会社製水溶性セルロース樹脂;メチルセルロース)0.2g、水66.4g(前記PEDOT−PSS分散液由来)、ジエチレングリコール(DEG)16.5g、トリプロピレングリコールメチルエーテル(TPM)15.8g、KM7750(信越化学工業株式会社製無変性ジメチルポリシロキサン消泡剤、不揮発分38%)0.3gを攪拌機ディスパーサー(株式会社エスエムテー製、ハイフレックスディスパーサー HG92)で混合攪拌して、スクリーンインキ(1)を調製した。
【0041】
(スクリーンインキ(2)の調製)
以下に記載した各原料の数値は、インキ中の質量%に換算した値である。
ORGACON HBS 1.1g、水87.7g(前記PEDOT−PSS分散液由来)、DEG 0.9g、エタノール9.0g、BYK349(ビックケミー・ジャパン製ポリエーテル変性オルガノポリシロキサンレベリング剤、不揮発分94%以上)1.0g、KM7750 0.3gを攪拌機ディスパーサー(株式会社エスエムテー製、ハイフレックスディスパーサー HG92)で混合攪拌して、スクリーンインキ(2)を調製した。
【0042】
(各スクリーンインキの調製)
前記スクリーンインキ(1)、(2)と同様に、表1に示す組成で、各スクリーンインキを調製した。
【0043】
(評価サンプルの調製)
表面を易接着処理した透明PETフィルム(厚さ、100μm 東洋紡製)上に、スクリーンインキ(1)を用いて、メタルメッシュ250のスクリーン版で、100μm の細線パターン部分及びベタ部分を30μmの厚さになるよう印刷した。熱風方式で130℃、55分乾燥し、評価サンプルを得た。スクリーン印刷特性、電気特性及び光学特性の評価方法を以下に示す。
【0044】
(ニューロング精密工業株式会社製スクリーン印刷機LS−150によるスクリーン印刷特性)
印刷中の目視評価による。
○:全面均一に塗れる
△:部分的に濡れる、或いは濡れムラがある
×:全く塗れない
【0045】
(スクリーン印刷特性:連続印刷適性)
印刷中の目視評価による。
○:連続印刷適性良好
△:連続印刷適性中程度
×:連続印刷適性不良
【0046】
(電気特性:表面抵抗値)
ロレスタ指針計(三菱化学製MCP-T610)を用い、表面抵抗値を測定した。単位はΩ/□である。
【0047】
(光学特性:透過率)
ヘイズメーター(有限会社東京電色製、TC-H 3DP)を用い、白色光の透過率を測定した。
単位は%である。
【0048】
(光学特性:ヘイズ値)
透過率測定と同様に、ヘイズメーター(有限会社東京電色製、TC-H 3DP)を用い、ヘイズ(値)を測定した。単位は%である。
【0049】
【表1】

【0050】
表中の略号は以下を表す。
・MC:メチルセルロース、
・PEDOT:ポリ[(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレン−スルフォネート)]、
・DEG:ジエチレングリコール、
・TPM:トリプロピレングリコールメチルエーテル、
・EtOH:エタノール
尚、上表における各原料の数値はインキ中の質量%に換算した値である。
【0051】
上記した実施例1〜7の各スクリーンインキと同様にして、以下の表2に示す組成で、各スクリーンインキを調製した。これら実施例1〜7の水性インキは、いずれも、チキソトロピック性を有しており、コーンプレート式回転粘度計による粘度測定法において、せん断速度10s−1の時0.1〜0.3Pa・s、かつ100s−1のとき0.5〜2.0Pa・sの粘度を有するものであった。
【0052】
(評価サンプルの調製)
表面を易接着処理した透明PETフィルム(厚さ100μm、 東洋紡製)上に、各スクリーンインキを用いて、下記印刷条件により1cm×3cmのベタ部分を30μmの厚さになるよう印刷した。熱風方式で120℃、5分乾燥し、評価サンプルをそれぞれ得た。これらの各評価サンプルにつき、以下の各種評価を行った結果を、合わせて以下の表2に示した。
スクリーン印刷条件、スクリーン印刷特性、電気特性及び光学特性の評価方法を以下に示す。
【0053】
(スクリーン印刷条件)
印刷機:ニューロング精密工業株式会社製スクリーン印刷機LS-150
版:メッシュ株式会社製 ステンレスメッシュ
(メッシュ数250、線径30μm、開口率50%、紗厚57μm、乳剤厚16μm)
スキージ:ニューロング精密工業株式会社製角スキージ
(硬度75°、W×H×L=9.5×9.5×170(mm))
印圧:0.075MPa
背圧:0.035MPa
速度:270mm/sec
クリアランス:2.7mm
【0054】
(印刷特性)
初期印刷とは1-3回を指し、連続印刷とは15回目の印刷を指す。
評価方法は、印刷中の目視評価による。
【0055】
吐出性・・・版の開口部分に吐出しきれなかった残インキがあるかどうかで評価した。
○:残インキなし
△:開口面積に対して30-40%程度の残インキがあり
×:開口面積に対して50%以上の残インキがあり
【0056】
膜の平滑性・・・印刷膜中に泡があるかどうかで評価した。
○:印刷膜面性に対して泡残りなし
△:やや印刷膜面積に対して10%程度の泡残りあり
×:印刷膜面積に対して30%以上の泡残りあり
【0057】
膜のエッジ形状・・・印刷直後から乾燥終了までにPETフィルム上で膜収縮が起こるかどうかで評価した。膜収縮が大きいことは、膜の基材に対する密着性不良を意味する。
○:収縮しない
△:一部膜収縮する(長方形ベタ部の1辺が縒れるかどうか)
×:印刷膜全体が膜収縮する(長方形ベタ部の辺が2辺以上縒れるかどうか)
【0058】
電気特性:表面抵抗値
上記の方法に従って同様に測定した。
【0059】
光学特性:透過率
ヘイズメーター(日本電色工業株式会社、NDH-5000)を用い、白色光の透過率を測定した。単位は%である。ISO 13468準拠。
【0060】
光学特性:ヘイズ値
透過率測定と同様に、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社、NDH-5000)を用い、ヘイズ(値)を測定した。単位は%である。ISO 14782準拠。
【0061】
【表2】

【0062】
表中の略号は、実施例1〜7に関する上表と同様である。尚、上記で定義されていないものについては、以下の通りである。
・HPMC:ヒドロキシプロピルメチルセルロース
・PVP:ビニルピロリドン単独重合体=ポリ(ビニルピロリドン)
・KF351A:信越化学工業株式会社製ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)ブロック共重合鎖を含有するジメチルポリシロキサン(HLB=12)
【0063】
尚、上表における各原料の数値はインキ中の質量%に換算した値である。また、上記実施例8〜10の水性インキは、いずれも、チキソトロピック性を有しており、コーンプレート式回転粘度計による粘度測定法において、せん断速度10s−1の時0.1〜0.3Pa・s、かつ100s−1のとき0.5〜2.0Pa・sの粘度を有するものであった。
【0064】
表2からわかる通り、実施例8と実施例9との対比から、水溶性セルロース樹脂として、非イオン性セルロースを用いた系においては、それにポリ(ビニルピロリドン)を併用することで、連続印刷時における膜のエッジ形状(基材への密着性)を改良することが出来る。
また、実施例9と実施例10との対比から、添加剤として、無変性ジメチルポリシロキサンと、ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)ブロック共重合鎖を含有するジメチルポリシロキサンを併用することで、初期印刷と連続印刷の両方においてインキ吐出性を改良することが出来る。特に、その改良効果は初期印刷よりも、連続印刷において顕著である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
特定の導電性高分子、特定の水溶性樹脂、水系溶剤を有する本発明の導電性スクリーンインキは、特にタッチパネル用途で、優れた導電性、光学特性を発現し、タッチパネルの生産性向上に寄与し、ゲームやモバイル等に用いられるタッチパネル用途に広い展開の可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性高分子材料、水溶性樹脂及び溶剤を含有する水性スクリーンインキであって、該水溶性樹脂が、セルロース、アルブミン、ガゼイン、アルギン酸、寒天、澱粉、多糖類から選ばれる天然系樹脂又はその誘導体、及び、ビニル系化合物、ビニリデン系化合物、ポリエステル系化合物、ポリエーテル系化合物、ポリグリコール系化合物、ポリビニルアルコール系化合物、ポリアルキレンオキサイド系化合物、ポリアクリル酸系化合物、ポリウレタン系化合物から選ばれる合成系樹脂からなる群から選ばれる1種以上の水溶性樹脂であり、溶剤中の水の含有量が50〜90質量%であることを特徴とする水性スクリーンインキ。
【請求項2】
前記した導電性高分子材料が、ポリ[(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレン−スルフォネート)]である請求項1に記載の水性スクリーンインキ。
【請求項3】
前記した水溶性樹脂が、水溶性セルロース樹脂である請求項1に記載の水性スクリーンインキ。
【請求項4】
前記した導電性高分子材料が、ポリ[(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレン−スルフォネート)]であり、かつ前記した水溶性樹脂が、水溶性セルロース樹脂である請求項1に記載の水性スクリーンインキ。
【請求項5】
ビニルピロリドン重合体を含有する請求項4に記載の水性スクリーンインキ。
【請求項6】
オルガノポリシロキサンを含有する請求項4に記載の水性スクリーンインキ。
【請求項7】
オルガノポリシロキサンとして、無変性ジメチルポリシロキサンと、ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)ブロック共重合鎖を含有するジメチルポリシロキサンとを併用する請求項4に記載の水性スクリーンインキ。
【請求項8】
前記した溶剤が親水性有機溶剤を含有する請求項1〜7の何れかに記載の水性スクリーンインキ。
【請求項9】
前記した親水性有機溶剤が、エタノール、ジエチレングリコール及びトリプロピレングリコールメチルエーテルから選ばれる1種以上である請求項1〜7の何れかに記載の水性スクリーンインキ。
【請求項10】
ポリ[(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレン−スルフォネート)]を、水性スクリーンインキ中の不揮発分換算で、40〜80質量%含有する請求項1〜7の何れかに記載の水性スクリーンインキ。

【公開番号】特開2010−265450(P2010−265450A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93039(P2010−93039)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】