説明

水性フロアーポリッシュ用組成物

【課題】環境負荷を低減するため、フロアーポリッシュに要求される基本性能である光沢性、耐久性を維持しながら、はく離する際には良好なはく離性を有する水性フロアーポリッシュ用組成物を提供すること。
【解決手段】下記(A1)及び(A2)からなる群より選ばれた、分子内にカルボキシル基を有する重合体(A)を含有する水性フロアーポリッシュ用組成物であって、
上記重合体(A)として下記(M1)、(M2)及び(M3)の3つの異なる重量平均分子量を有する重合体を含有するとともに、
上記重合体(A)の樹脂分の総量に対して、(M1)が70〜95質量%、(M2)が3〜18質量%、(M3)が1〜12質量%の割合であることを特徴とする水性フロアーポリッシュ用組成物。
ここで、
(A1)はビニル系モノマーと不飽和カルボン酸との共重合体、
(A2)はロジンの酸変性物であり、
(M1)は重量平均分子量が100,000以上である重合体(A)、
(M2)は重量平均分子量が10,000〜50,000である重合体(A)、
(M3)は重量平均分子量が5,000未満である重合体(A)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロアーポリッシュに要求される基本性能である光沢性、耐久性を維持しながら、はく離する際には良好なはく離性を有する水性フロアーポリッシュ用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フロアーポリッシュ(床用つや出し剤)は、ビル、マンション等の床材の保護と美観の維持を目的とし、その表面に塗布される。床材上に形成されたコーティング層はつや出し効果等によって、美観、清潔感を維持すると共に、床材の摩耗、汚れの付着、スリップ事故を防止する等の役割を果たしている。
そして、このフロアーポリッシュに求められる代表的な性能としては、床材上にクリアーで強靭な皮膜を形成させ得ること、光沢を発現させ得ること、歩行による汚れが付き難いこと、滑り難いこと、専用のはく離剤で容易に除去することができること等が挙げられる。
【0003】
従来のフロアーポリッシュとしては、水性ポリマータイプのものが主流を占めている。その具体例としては、アクリル酸若しくはメタクリル酸又はその誘導体の単独重合体やそれらの共重合体、それらとスチレン等の他のビニルモノマーとの共重合体(以下、これらをアクリル系ポリマーという。)等と、架橋剤、ポリエチレンワックス、アルカリ可溶性樹脂、可塑剤、成膜助剤等を含有する水性フロアーポリッシュが挙げられる。一般的に、上記の従来のフロアーポリッシュの主成分であるアクリル系ポリマーには、分子内にカルボキシル基を有する、ガラス転移温度が25℃を超えるアクリル系ポリマーが使用される。(例えば、特許文献1〜4)
また、水性フロアーポリッシュに配合される可塑剤やレベリング剤としては、従来は有機リン系化合物が使用されてきたが、近年は環境面への配慮から、有機リン系化合物以外の化合物が使用されるようになってきた。(特許文献5、6)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭44−024407号公報
【特許文献2】特公昭49−001458号公報
【特許文献3】特許第2517965号公報
【特許文献4】特許第3328977号公報
【特許文献5】特公平06−023335号公報
【特許文献6】特許第3515791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フロアーポリッシュのコーティング層は、施工後、人の歩行等によって汚れ、また、砂塵等によって傷つき、日々汚れや傷が蓄積していく。そこで、これを定期的に、洗剤を用いて洗浄し、その表面層の汚れを取り除き、フロアーポリッシュを塗り足す作業をおこない、床面をきれいに保つことが行われている。また、コーティング層の汚れがひどく、深く傷ついている場合等、洗浄ではメンテナンスが困難である場合には、はく離剤を用いてポリッシャーで洗浄し(以下、「はく離洗浄」ということがある。)、コーティング層全部をはく離して、新たにフロアーポリッシュを塗布する作業をおこなう。
【0006】
近年、高光沢・高耐久のフロアーポリッシュが開発・使用されているが、一方では、こ
のようなフロアーポリッシュは、はく離洗浄がし難いものであるため、有機溶剤やアルカリ成分を高濃度含有するはく離剤を用いて除去する必要がある。しかし、作業環境や地球環境の面から考えれば、これら高濃度の有機溶剤やアルカリ成分などは好ましいものではない。また、このような高濃度のはく離剤を用いない場合には、はく離作業に多大な労力と時間が必要である。
すなわち、本発明は、環境負荷を低減するため、フロアーポリッシュに要求される基本性能である光沢性、耐久性を維持しながら、はく離する際には良好なはく離性を有する水性フロアーポリッシュ用組成物を開示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決する水性フロアーポリッシュ用組成物を鋭意検討してきた。その結果、配合される重合体の分子量が、フロアーポリッシュコーティング層の光沢性とはく離性に影響を及ぼしていることを知見し、この知見に基づき実験を繰り返した末、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は次の第1〜5の発明から構成される。
【0008】
第1の発明は、下記(A1)及び(A2)からなる群より選ばれた、分子内にカルボキシル基を有する重合体(A)を含有する水性フロアーポリッシュ用組成物であって、
上記重合体(A)として下記(M1)、(M2)及び(M3)の3つの異なる重量平均分子量を有する重合体を含有するとともに、
上記重合体(A)の樹脂分の総量に対して、(M1)が70〜95質量%、(M2)が3〜18質量%、(M3)が1〜12質量%の割合であることを特徴とする水性フロアーポリッシュ用組成物に関するものである。
ここで、(A1)はビニル系モノマーと不飽和カルボン酸との共重合体、
(A2)はロジンの酸変性物であり、
(M1)は重量平均分子量が100,000以上である重合体(A)、
(M2)は重量平均分子量が10,000〜50,000である重合体(A)、
(M3)は重量平均分子量が5,000未満である重合体(A)である。
水性フロアーポリッシュのコーティング層を形成する重合体として、このような3つの異なる重量平均分子量を有する重合体を、特定の割合で含有することで、皮膜の光沢性に優れるとともに、一定の耐久性を維持しつつ、はく離する際には良好なはく離性を有する水性フロアーポリッシュ用組成物が得られる。
なお、本発明においては、アクリル酸とメタクリル酸を総称して「(メタ)アクリル酸」と表記する。
【0009】
第2の発明は、金属架橋剤を含有しないことを特徴とする、第1の発明に係る水性フロアーポリッシュ用組成物に関するものである。金属架橋剤を含有しないことで、はく離性を向上し、また成分面からも環境負荷を一層低減することができる。
第3の発明は、上記重合体(A)を構成するモノマーとして、芳香族ビニルエステルモノマーを使用していないことを特徴とする、第1又は第2の発明に係る水性フロアーポリッシュ用組成物に関するものである。芳香族ビニルエステルモノマーを含有しないことで、はく離性を向上し、また成分面からも環境負荷を一層低減することができる。
【0010】
第4の発明は、リン系化合物を含有しないことを特徴とする、第1〜3のいずれかの発明に係る水性フロアーポリッシュ用組成物に関するものである。リン系化合物を含有しないことで、環境負荷を一層低減することができる。
第5の発明は、可塑剤として、2−エチルヘキサノールのエチレンオキサイド付加物を含有することを特徴とする、第4の発明に係る水性フロアーポリッシュ用組成物に関するものである。上記の化合物を含有することで、リン系化合物を用いなくても、樹脂の可塑効果や床材へのぬれ性を良好なものとすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る水性フロアーポリッシュ用組成物は、フロアーポリッシュに要求される基本性能である光沢性、耐久性を維持しながら、はく離する際には良好なはく離性を有するという効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
[重合体(A)について]
本発明における、重合体(A)は、下記(A1)及び(A2)からなる群より選ばれた、分子内にカルボキシル基を有する重合体である。ここで、(A1)はビニル系モノマーと不飽和カルボン酸との共重合体、(A2)はロジンの酸変性物である。
ビニル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、スチレン等が挙げられる。
【0013】
不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸等が挙げられる。
ロジンの酸変性物とはロジン−マレイン酸付加物やロジン−フマル酸付加物が挙げられる。
水性フロアーポリッシュ用組成物には、これら重合体(A)は、エマルジョン、ディスパージョン又は水溶液等(以下、これらを総称して「水分散体」と表記することがある)の形態で配合される。
【0014】
重合体(A1)〜(A2)について説明する。
重合体(A1)はビニル系モノマーと不飽和カルボン酸との共重合体である。このような重合体を含有する水分散体の市販品としては、「プライマルJP−308」(ローム・アンド・ハース・ジャパン)、「ジョンクリル57J」(BASF)等がある。
重合体(A2)は、分子内にカルボキシル基を有する、ロジンの酸変性物である。このような重合体の市販品としては、「トプコLR−400」(荒川化学工業)等がある。
【0015】
本発明のフロアーポリッシュ用組成物は、上記重合体(A)として、下記(M1)、(M2)及び(M3)の3つの異なる重量平均分子量を有する重合体を併用し、なおかつ、上記重合体(A)の樹脂分の総量に対して、(M1)が70〜95質量%、(M2)が3〜18質量%、(M3)が1〜12質量%の割合となるように含有されるのが好ましい。なかでも(M1)が80〜93質量%、(M2)が5〜17質量%、(M3)が1〜8質量%の割合となるように配合されるのが、光沢性と耐久性のバランスの観点から好ましい。ここで、(M1)は重量平均分子量が100,000以上である重合体(A)、(M2)は重量平均分子量が10,000〜50,000である重合体(A)、(M3)は重量平均分子量が5,000未満である重合体(A)である。
特定の重量平均分子量範囲にある3種類の異なる重合体を特定割合含有することによって、一定の光沢性と耐久性を維持しつつ、フロアーポリッシュコーティング層にはく離性を付与することができる。
【0016】
なお、本発明における重合体(A)の重量平均分子量は、以下の測定方法により求められたものである。
<分子量の測定方法>
JIS K 7252に準拠するサイズ排除クロマトグラフィーによって測定される。一般に分子量標準物質としてポリスチレン、溶離液にテトラヒドロフランを用いる。
【0017】
本発明の水性フロアーポリッシュ用組成物には、従来公知の架橋剤、可塑剤、成膜助剤、重合体(A)以外の重合体を含む水分散体(例えば、ワックスエマルジョンやウレタンディスパージョン等)等が含有される。
【0018】
上記架橋剤としては、カルボキシル基に作用し得る非金属系又は金属系の化合物が挙げられる。
非金属系架橋剤としては、カルボジイミド基やオキサゾリン基等を含有する化合物が挙げられる。
金属系架橋剤としては亜鉛、カルシウム、マグネシウム等の多価金属やその化合物が挙げられる。
これらのなかでも、環境負荷低減の観点から金属系の架橋剤を用いないことが好ましく、またはく離性向上の観点から架橋剤を用いないことがより好ましい。
上記可塑剤としては、トリブトキシエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル、ジブチルフタレート、ジ2−エチルヘキシルフタレート等のフタル酸エステル、アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル、ジメチルアジピン酸、ジブチルアジピン酸等のアジピン酸エステル、2−エチルヘキサノール等のアルコールへのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0019】
従来、一般的にフロアーポリッシュの可塑剤としては、特にトリブトキシエチルホスフェートが広く用いられているが、環境負荷低減のために、そのようなリン系の化合物の使用を避ける方向(すなわち、無リン化)が進んでおり、リン系化合物を含有しないことが好ましい。そのような非リン系化合物のなかでも、床材へのぬれ性を良好なものとすることができることから、上記の可塑剤のうち、特に2−エチルヘキサノールのエチレンオキサイド付加物を用いるのが好ましく、さらに2−エチルヘキサノールのエチレンオキサイド1〜8モル付加物を用いることが好ましい。可塑剤の配合割合は、通常上記重合体(A)の樹脂分100質量部当り5〜25質量部が好ましい。
【0020】
本発明の水性フロアーポリッシュ用組成物に配合され得るその他の成分としては、上記以外に、従来の床用水性艶出し剤に通常配合されるもの、すなわち、ワックスエマルジョン、成膜助剤等を同様に配合することができる。ワックスエマルジョンのワックスとしては、天然ワックス、合成ワックス及びそれらの変性物等広く用いることができる。
天然ワックスとしては、牛脂や豚脂等の水素添加硬化ロウ、ラノリン、ミツロウ等の動物性ワックス、大豆油やヒマシ油等の水素添加ロウ、カルナバロウ、キャンデリラロウ、木ロウ、ヌカロウ等の植物性ワックス、モンタンワックス、セリシンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の鉱物性ワックスを挙げることができる。合成ワックスとしては、分子量500〜5,000程度のポリエチレンワックスやポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス等が挙げられる。これらのワックスのエマルジョンは、これらのワックスに乳化剤を加えて乳化する等の公知の方法により製造することができる。
【0021】
成膜助剤としては、ベンジルアルコール、3−メトキシ−3−メチルブタノール等のアルコール類、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル等のグリコール類等が挙げられる。
これらのワックスエマルジョン、成膜助剤以外に、微量成分として、湿潤剤、消泡剤、防腐剤等を含むことができる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるもの
ではない。
〔実施例1〜6、比較例1〜4〕
各成分及び水を表1、表2に示す配合割合(単位:質量部)となるよう配合して水性フロアーポリッシュ用組成物を調製した。なお、水性フロアーポリッシュ用組成物は合計が100質量部となるようにした。表中の数値は質量部であり、樹脂1〜10およびワックスエマルジョンの配合量については水分散体の有り姿としての配合質量部である。
得られた各組成物について、その性能(光沢性及びはく離性)を下記の通り評価した。評価結果は表1に併せて記載した。なお、使用した原料は以下のとおりである。
【0023】
・樹脂1
商品名:プライマルJP−308(ローム・アンド・ハース・ジャパン製/固形分39質量%/アクリル酸エステル−アクリル酸−スチレン共重合体/亜鉛架橋/重量平均分子量100,000以上)
・樹脂2
商品名:プライマルNT−2624(ローム・アンド・ハース・ジャパン製/固形分38質量%/アクリル酸エステル−アクリル酸−スチレン共重合体/非金属架橋/重量平均分子量100,000以上)
・樹脂3
商品名:プライマルB−924(ローム・アンド・ハース・ジャパン製/固形分38質量%/アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体/金属架橋/重量平均分子量100,000以上)
・樹脂4
商品名:ボンコートP−6571(DIC製/固形分40質量%/アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体/非金属架橋/重量平均分子量100,000以上)
【0024】
・樹脂5
商品名:ジョンクリル63J(BASF製/固形分30質量%/アクリル酸エステル−アクリル酸−スチレン共重合体/重量平均分子量約12,500)
・樹脂6
商品名:ジョンクリル70J(BASF製/固形分30質量%/アクリル酸エステル−アクリル酸−スチレン共重合体/重量平均分子量約16,500)
・樹脂7
商品名:プライマルE−1531B(ローム・アンド・ハース・ジャパン製/固形分38質量%/アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体/重量平均分子量約20,000)
【0025】
・樹脂8
商品名:ジョンクリル57J(BASF製/固形分37質量%/アクリル酸エステル−アクリル酸−スチレン共重合体/重量平均分子量約4,900)
・樹脂9
商品名:AL−17(三水製/固形分36質量%/アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体/重量平均分子量3,000)
・樹脂10
商品名:トプコLR−400(荒川化学工業製/ロジン変成マレイン酸/重量平均分子量約2,000)をアンモニア水に可溶化し、固形分20質量%に調整したもの。
【0026】
・可塑剤
TBEP:トリブトキシエチルホスフェート
ACTB:アセチルクエン酸トリブチル
2EHA−EO:2−エチルヘキサノールのエチレンオキサイド4モル付加物
DIBA:ジイソブチルアジピン酸エステル
・成膜助剤
ジエチレングリコールモノエチルエーテル
・ワックスエマルジョン(表中では「ワックスEm.」と表記)
商品名:ハイテックE−4000(東邦化学工業製/固形分40質量%)
・湿潤剤
商品名:サーフロンS−111N(AGCセイミケミカル製/有効成分30質量%)
・消泡剤
商品名:FSアンチフォーム013A(東レ・ダウコーニング製/有効成分56質量%)
【0027】
〔性能評価〕
1.光沢性試験
光沢性の試験は、JIS K 3920(15)に準拠して行った。即ち、フロアーポリッシュを塗布した試験片の光沢を、入射角と受光角とが60°のときの反射率を測定して、鏡面光沢度の基準面の光沢度を100としたときの百分率で表した。
評価基準 ○:3回塗布後の光沢度が50以上
×:3回塗布後の光沢度が30〜49
評価基準が○であれば、実用上問題のない光沢性を有するものと判断できる。
【0028】
2.耐ヒールマーク性試験
耐ヒールマーク性の試験は、JIS K 3920(16)に準拠して行った。即ち、フロアーポリッシュを塗布した試験片を、黒色ゴムブロックを入れた六角柱状のドラムに取り付け、回転させた。試験片へのゴム汚れ(ヒールマーク)の付着具合を目視で評価した。
評価基準 ◎:ヒールマークがほとんど付かない
○:ヒールマークがやや付き難い
△:ヒールマークがやや付き易い
×:ヒールマークが多く付く
評価基準が◎又は○であれば、実用上問題のない耐ヒールマーク性(即ち、耐久性)を有するものと判断できる。
【0029】
3.はく離性試験
はく離性の試験は、JIS K 3920(20)に準拠して行った。即ち、フロアーポリッシュを塗布して50±2℃に保った恒温乾燥機中で7日間加熱促進した試験片を水中に1時間浸せきし、24時間乾燥後試験に用いた。標準はく離剤と洗浄試験機を用いてはく離を行い、皮膜の完全除去に要する洗浄試験機の駆動回数に応じて評価した。但し試験片の調製において、フロアーポリッシュは10回塗布した。
評価基準 ◎:完全除去に要する洗浄回数が1〜25回
○:完全除去に要する洗浄回数が26〜50回
△:完全除去に要する洗浄回数が51〜100回
×:完全除去に要する洗浄回数が101回以上
評価基準が◎又は○であれば、実用上問題のないはく離性能であると判断できる。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
表1に示すとおり、本発明の要件を備える実施例1〜6の水性フロアーポリッシュ用組成物は、いずれも一定の耐久性を維持しつつ、十分な光沢性を有するとともに、良好なはく離性を有することがわかる。一方で、本発明の要件を満たさない水性フロアーポリッシュ用組成物は、耐久性、光沢性及びはく離性の両立が困難であった。
さらに実施例5と実施例6について、塩化ビニル製床材へのぬれ性の比較実験を行った。試験の方法は、フロアーポリッシュ組成物をJIS K 3920(7)に従って1回塗布し、基材(塩化ビニル製床材/商品名:PタイルP−60(タジマ製))に対するはじきやレベリングの状態を目視にて判定した。
その結果、可塑剤として2−エチルヘキサノールのエチレンオキサイド付加物を配合した実施例5の水性フロアーポリッシュ用組成物でははじきや塗布ムラがなかったのに対して、可塑剤としてジイソブチルアジピン酸エステルを配合した実施例6の水性フロアーポリッシュ用組成物では、はじきが生じ、1回の塗布では均一なコーティング層を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係る水性フロアーポリッシュ用組成物は、フロアーポリッシュに要求される基本性能である光沢性、耐久性を維持しながら、はく離する際には良好なはく離性を有する水性フロアーポリッシュ用組成物を得ることができ、環境負荷とはく離作業の労力が低減されたフロアーポリッシュとして特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A1)及び(A2)からなる群より選ばれた、分子内にカルボキシル基を有する重合体(A)を含有する水性フロアーポリッシュ用組成物であって、
上記重合体(A)として下記(M1)、(M2)及び(M3)の3つの異なる重量平均分子量を有する重合体を含有するとともに、
上記重合体(A)の樹脂分の総量に対して、(M1)が70〜95質量%、(M2)が3〜18質量%、(M3)が1〜12質量%の割合であることを特徴とする水性フロアーポリッシュ用組成物。
ここで、
(A1)はビニル系モノマーと不飽和カルボン酸との共重合体、
(A2)はロジンの酸変性物であり、
(M1)は重量平均分子量が100,000以上である重合体(A)、
(M2)は重量平均分子量が10,000〜50,000である重合体(A)、
(M3)は重量平均分子量が5,000未満である重合体(A)である。
【請求項2】
金属架橋剤を含有しないことを特徴とする、請求項1に記載の水性フロアーポリッシュ用組成物。
【請求項3】
上記重合体(A)を構成するモノマーとして、芳香族ビニルエステルモノマーを使用していないことを特徴とする、請求項1又は2に記載の水性フロアーポリッシュ用組成物。
【請求項4】
リン系化合物を含有しないことを特徴とする、請求項1〜3いずれか一項に記載の水性フロアーポリッシュ用組成物。
【請求項5】
可塑剤として、2−エチルヘキサノールのエチレンオキサイド付加物を含有することを特徴とする、請求項4に記載の水性フロアーポリッシュ用組成物。

【公開番号】特開2011−195652(P2011−195652A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62030(P2010−62030)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)