説明

水性ポリアミド分散液の製造方法

本発明は水性媒体中でアミノ酸化合物のヒドロラーゼ触媒活性反応により水性ポリアミド分散液を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、水性媒体中で、
a)アミノカルボン酸化合物Aを、
b)ヒドロラーゼB
c)分散剤Cおよび
d)場合により低い水溶性の有機溶剤D
の存在で反応させることを特徴とする、水性ポリアミド分散液の製造方法である。
【0002】
水性ポリアミド分散液は例えばホットメルト接着剤、塗料、印刷インキ、紙塗被材料等の製造に広く使用される。
【0003】
水性ポリアミド分散液の製造方法は一般に知られている。その際一般に有機アミノカルボン酸化合物を反応させ、ポリアミド化合物を生成することにより製造する。このポリアミド化合物を更に引き続く工程で一般にまずポリアミド溶融物して、ポリアミド溶融物を引き続き種々の方法により有機溶剤および/または分散剤を添加して水性媒体中でいわゆる二次分散液を形成して分散させる。溶剤を使用する場合は、分散工程に続いて再び蒸留しなければならない(これに関しては例えばドイツ特許第1028328号、米国特許第2951054号、米国特許第3130181号、米国特許第48868844号、米国特許第5236996号、米国特許第6777488号、WO97/47686号またはWO98/44062号参照)。
【0004】
水性ポリアミド分散液を製造する公知方法は一般に多工程であり、技術的におよびエネルギー的にきわめて費用がかかる。特に高分子ポリアミドおよび有機溶剤を使用する場合はこれから得られるポリアミド溶液がきわめて粘性であり、従って取り扱いが悪く、もしくは水性媒体中で分散しにくい。
【0005】
本発明の課題は、水性ポリアミド分散液を水性媒体中で直接アミノカルボン酸化合物から、付加的な分散工程/蒸留工程なしに、良好な収率で生じる、水性ポリアミド分散液の新規製造方法を提供することである。
【0006】
意想外にも、前記課題は、冒頭に記載された方法により解決される。
【0007】
アミノカルボン酸化合物Aとして、アミノ基およびカルボキシル基を遊離した形でまたは誘導された形で有するすべての有機化合物が該当するが、特にC〜C30−アミノカルボン酸、前記アミノカルボン酸のC〜C−アルキルエステル、相当するC〜C15−ラクタム化合物、C〜C30−アミノカルボン酸アミドまたはC〜C30−アミノカルボン酸ニトリルである。遊離C〜C30−アミノカルボン酸の例として、天然由来のアミノカルボン酸、例えばバリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、プロリン、セリン、チロシン、アスパラギンまたはグルタミン、および3−アミノプロピオン酸、4−アミノ酪酸、5−アミノバレリアン酸、6−アミノカプロン酸、7−アミノエナント酸、8−アミノカプリル酸、9−アミノペラルゴン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノラウリン酸、13−アミノトリデカン酸、14−アミノテトラデカン酸、または15−アミノペンタデカン酸が挙げられる。前記アミノカルボン酸のC〜C−アルキルエステルの例は3−アミノプロピオン酸、4−アミノ酪酸、5−アミノバレリアン酸、6−アミノカプロン酸、7−アミノエナント酸、8−アミノカプリル酸、9−アミノペラルゴン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノラウリン酸、13−アミノトリデカン酸、14−アミノテトラデカン酸、または15−アミノペンタデカン酸メチルまたはエチルエステルが挙げられる。C〜C15−ラクタム化合物の例としてβ−プロピオラクタム、γ−ブチロラクタム、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、7−エナントラクタム、8−カプリロラクタム、9−ペラルゴラクタム、10−カプリンラクタム、11−ウンデカン酸ラクタム、ω−ラウリンラクタム、13−トリデカン酸ラクタム、14−テトラデカン酸ラクタム、または15−ペンタデカン酸ラクタムが挙げられる。アミノカルボン酸アミドの例として、3−アミノプロピオン酸アミド、4−アミノ酪酸アミド、5−アミノバレリアン酸アミド、6−アミノカプロン酸アミド、7−アミノエナント酸アミド、8−アミノカプリル酸アミド、9−アミノペラルゴン酸アミド、10−アミノカプリン酸アミド、11−アミノウンデカン酸アミド、12−アミノラウリン酸アミド、13−アミノトリデカン酸アミド、14−アミノテトラデカン酸アミド、または15−アミノペンタデカン酸アミドが挙げられ、アミノカルボン酸ニトリルの例として、3−アミノプロピオンニトリル、4−アミノ酪酸ニトリル、5−アミノバレリアンニトリル、6−アミノカプロンニトリル、7−アミノエナントニトリル、8−アミノカプリルニトリル、9−アミノペラルゴンニトリル、10−アミノカプリンニトリル、11−アミノウンデカンニトリル、12−アミノラウリンニトリル、13−アミノトリデカンニトリル、14−アミノテトラデカンニトリル、または15−アミノペンタデカンニトリルが挙げられる。しかしC〜C15−ラクタム化合物が有利であり、この中で特にε−カプロラクタムおよびω−ラウリンラクタムが有利である。ε−カプロラクタムが特に有利である。もちろん前記アミノカルボン酸化合物Aの混合物を使用することもできる。水性媒体中でヒドロラーゼBの存在でアミノカルボン酸化合物Aの反応を行うことが方法に不可欠である。ヒドロラーゼBは当業者に知られた酵素の種類である。使用されるアミノカルボン酸化合物Aの種類に応じて、例えば前記C〜C15−ラクタム化合物の場合に、例えば水を分離する(遊離アミノカルボン酸)、アルコールを分離する(アミノカルボン酸のエステル)またはハロゲン化水素を分離する(アミノカルボン酸のハロゲン化物)、遊離した形または誘導された形でのアミノ基およびカルボキシル基の重縮合反応および/または開環および引き続く重付加に触媒活性させるように、ヒドロラーゼBを選択する。
【0008】
ヒドロラーゼB[EC3.x.x.x]として、例えばエステラーゼ[EC3.1.x.x]、プロテアーゼ[EC3.4x.x]および/またはペプチド結合として他のC−N−結合と反応するヒドロラーゼが特に適している。本発明により特にカルボキシエステラーゼ[EC3.1.1.1]および/またはリパーゼ[EC3.1.1.3]を有利に使用する。このための例は、アクロモバクター種、アスペルギルス種、カンジダ種、カンジダ・アンタルクチカ、ムコル種、ペニシリウム種、ゲオトリクム種、リゾプス種、ブルクホルデッリア種、シュードモナス種、シュードモナス・セパシア、テルモミセス種、ブタ膵臓、または小麦胚芽からのリパーゼおよびバシルス種、シュードモナス種、ブルクホルデリア種、ムコル種、サッカロミセス種、リゾプス種、テルモアナエロビウム種、ブタ肝臓または馬肝臓からのカルボキシエステラーゼである。個々のヒドロラーゼBおよび種々のヒドロラーゼBの混合物を使用することももちろん可能である。ヒドロラーゼBを遊離した形でおよび/または固定された形で使用することも可能である。
【0009】
シュードモナス・セパシア、ブルクホルデリア・プラタリまたはカンジダ・アンタルクチカからの遊離した形のまたは固定された形のリパーゼ(例えばNovozym(登録商標)435、NovozymesA/S、デンマーク)を有利に使用する。
【0010】
使用されるヒドロラーゼBの全量はそれぞれアミノカルボン酸Aの全量に対して一般に0.001〜40質量%、しばしば0.1〜15質量%、しばしば0.5〜8質量%である。
【0011】
本発明の方法により使用される分散剤Cは原則的に乳化剤および/または保護コロイドであってもよい。その際乳化剤および/または保護コロイドを、これらが特に使用されるヒドロラーゼBと相溶性であり、失活しないように選択する。所定のヒドロラーゼBの場合にどの乳化剤および/または保護コロイドを使用できるかは、当業者に知られているかまたはこれから簡単な予備試験により求めることができる。
【0012】
適当な保護コロイドは例えばポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸のアルカリ金属塩、ゼラチン誘導体またはアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および/または4−スチレンスルホン酸を含有するコポリマーおよびそのアルカリ金属塩、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、アクリルアミド、メタクリルアミド、アミン基含有アクリレート、メタクリレート、アクリルアミドおよび/またはメタクリルアミドを含有するホモポリマーおよび/またはコポリマーである。他の適当な保護コロイドの詳しい説明はHouben−Weyl、Merthoden der organischen Chemie、XIV/1、Makromolekulare Stoff、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、1961、411〜420頁に記載される。
【0013】
保護コロイドおよび/または乳化剤の混合物を使用することももちろん可能である。しばしば分散剤として、相対的分子量が保護コロイドと異なり一般に1000未満である乳化剤だけを使用する。乳化剤はアニオン性、カチオン性または非イオン性であってもよい。もちろん界面活性剤の混合物を使用する場合は個々の成分は互いに相溶性でなければならないが、疑わしい場合は、若干の予備試験により試験できる。一般にアニオン性乳化剤は互いにおよび非イオン性乳化剤と相溶性である。同じことはカチオン性乳化剤にも該当するが、アニオン性乳化剤およびカチオン性乳化剤は多くは互いに相溶性でない。適当な乳化剤の概要は、Houben−Weyl、Merthoden der organischen Chemie、XIV/1、Makromolekulare Stoff、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、1961、192〜208頁に記載される。
【0014】
しかし本発明により分散剤Cとして特に乳化剤を使用する。
【0015】
一般に使用される乳化剤は例えばエトキシル化モノ−、ジ−およびトリアルキルフェノール(EO度:3〜50、アルキル基:C〜C12)およびエトキシル化脂肪アルコール(EO度:3〜80、アルキル基:C〜C38)である。このための例はLutensol(登録商標)A(C12〜C14−脂肪アルコールエトキシレート、EO度:3〜8)、LutensolAO(C13〜C15−オキソアルコールエトキシレート、EO度:3〜30)、LutensolAT(C16〜C18−脂肪アルコ−ルエトキシレート、EO度:11〜80)、LutensolON(C10−オキソアルコールエトキシレート、EO度:3〜11)、およびLutensolTO(C13−オキソアルコールエトキシレート、EO度:3〜20)(BASF社)である。
【0016】
一般的なアニオン乳化剤は例えばアルキルスルフェート(アルキル基:C〜C12)、エトキシル化アルカノール(EO度:4〜30、アルキル基C12〜C18)およびエトキシル化アルキルフェノール(EO度:3〜50、アルキル基:C〜C12)の硫酸半エステル、アルキルスルホン酸(アルキル基:C12〜C18)およびアルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C〜C18)のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩である。
【0017】
他のアニオン性乳化剤として、更に一般式(I):
【化1】

(式中、RおよびRは水素原子またはC〜C24−アルキルを表し、同時にH原子でなく、MおよびMはアルカリ金属イオンおよび/またはアンモニウムイオンであってもよい)の化合物が示される。一般式(I)において、RおよびRは6〜18個の炭素原子、特に6、12および16個の炭素原子を有する直鎖または分枝状アルキル基または水素原子を表し、その際RおよびRは同時に水素原子でない。MおよびMは有利にナトリウム、カリウムまたはアンモニウムであり、その際ナトリウムが特に有利である。MおよびMがナトリウムであり、Rが12個の炭素原子を有する分枝状アルキル基であり、Rが水素原子またはRである化合物(I)が特に有利である。しばしばモノアルキル化生成物50〜90質量%の割合を有する工業的混合物、例えばDowfax(登録商標)2A1(Dow Chemical社)を使用する。化合物(I)は例えば米国特許第4269749号から一般に知られ、市販されている。
【0018】
適当なカチオン活性乳化剤は一般にC〜C18−アルキル基、アルキルアリール基または複素環の基を有する第一級、第二級、第三級または第四級アンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、オキサゾリニウム塩、モルホリニウム塩、チアゾリニウム塩、およびアミンオキシドの塩、キノリニウム塩、イソキノリニウム塩、トロピリウム塩、スルホニウム塩、およびホスホニウム塩である。例としてドデシルアンモニウムアセテートまたは相当するスルフェート、種々の2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルパラフィン酸エステルのスルフェートまたはアセテート、N−セチルピリジニウムスルフェート、N−ラウリルピリジニウムスルフェートおよびN−セチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムスルフェート、N−ドデシル−N,N,N−トリメチルアンモニウムスルフェート、N−オクチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムスルフェート、N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムスルフェート、およびジェミニ界面活性剤N,N′−(ラウリルジメチル)エチレンジアミンジスルフェート、エトキシル化獣脂脂肪アルキル−N−メチルアンモニウムスルフェートおよびエトキシル化オレイルアミン(例えばUniperol(登録商標)AC、BASF社、約12個のエチレンオキシド単位)である。他の多くの例はH.Sache、Tensid−Taschenbuch、Carl−Hanser−Verlag、Muenchen、Wien、1981およびMcCutcheons Emulsifiers and Detergents、MC Publishing Company、Gelen Rock、1989に記載される。例えば過塩素酸塩、硫酸塩、燐酸塩、硝酸塩、およびカルボキシレート、例えば酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、プロピオン酸塩、蓚酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、および例えばメチルスルホネート、トリフルオロメチルスルホネート、およびパラトルエンスルホネートのような有機スルホン酸、更にテトラフルオロホウ酸塩、テトラフェニルホウ酸塩、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩、テトラキス[ビス(3,5−トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸塩、ヘキサフルオロ燐酸塩、ヘキサフルオロヒ素酸塩またはヘキサフルオロアンチモン酸塩の共役アニオンのようなアニオン反対基ができるだけ求核性が少ないことが重要である。
【0019】
分散剤Cとして有利に使用される乳化剤はそれぞれアミノカルボン酸化合物Aの全量に対して0.005〜20質量%、有利に0.01〜15質量%、特に0.1〜10質量%の全量で使用する。
【0020】
分散剤Cとして付加的にまたは乳化剤の代わりに使用される保護コロイドの全量はそれぞれアミノカルボン酸化合物Aの全量に対して0.1〜10質量%、しばしば0.2〜7質量%である。
【0021】
しかし有利に唯一の分散剤Cとして非イオン性乳化剤を使用する。
【0022】
本発明により、場合により低い水溶性の有機溶剤Dを使用できる。適当な溶剤Dは5〜30個の炭素原子を有する液状脂肪族および芳香族炭化水素、例えばn−ペンタンおよび異性体、シクロペンタン、n−ヘキサンおよび異性体、シクロヘキサン、n−ヘプタンおよび異性体、n−オクタンおよび異性体、n−ノナンおよび異性体、n−デカンおよび異性体、n−ドデカンおよび異性体、n−テトラデカンおよび異性体、n−ヘキサデカンおよび異性体、n−オクタデカンおよび異性体、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クモール、o−、m−またはp−キシレン、メシチレンおよび30〜250℃の沸騰範囲を有する一般的な炭化水素混合物である。同様にヒドロキシ化合物、例えば10〜28個の炭素原子を有する飽和および不飽和脂肪アルコール、例えばn−ドデカノール、n−テトラデカノール、n−ヘキサデカノール、これらの異性体またはセチルアルコール、エステル、例えば酸部分に10〜28個の炭素原子およびアルコール部分に1〜10個の炭素原子を有する脂肪酸エステル、またはカルボン酸部分に1〜10個の炭素原子およびアルコール部分に10〜28個の炭素原子を有する、カルボン酸と脂肪アルコールのエステルが使用できる。前記溶剤Dの混合物を使用することももちろん可能である。
【0023】
場合により使用される溶剤Dの全量はそれぞれ使用される水の全量に対して60質量%まで、有利に0.1〜40質量%、特に有利に0.5〜10質量%である。
【0024】
反応条件下で水性媒体中の溶剤Dの溶解度がそれぞれ全部の溶剤の量に対して50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、または10質量%以下であり、水性媒体中に分離相として存在するように溶剤Dおよびその量を選択する場合が有利である。
【0025】
溶剤Dは、特にアミノカルボン酸化合物Aが反応条件下で水性媒体中で良好な溶解度を有し、すなわちその溶解度が10g/l以上、30g/l以上、またはしばしば50g/l以上もしくは100g/l以上である場合に使用する。
【0026】
本発明による方法は、アミノカルボン酸化合物Aおよび/または場合により溶剤Dの少なくとも1個の部分量が水性媒体中で平均液滴直径が1000nm以下である分散相として存在する(いわゆる水中油型エマルジョンまたは省略してミニエマルジョン)場合に有利に進行する。
【0027】
本発明の方法は、まずアミノカルボン酸A、分散剤Cおよび場合により溶剤Dの少なくとも1個の部分量を水の部分量もしくは全量に導入し、その後適当な手段を使用して、平均液滴直径が1000nm以下である、アミノカルボン酸化合物Aおよび/または場合により溶剤Dを有する分散相を製造し(ミニエマルジョン)、これに続いて水性媒体に、反応温度で、全量のヒドロラーゼBおよび場合により残留する残りの量の水、アミノカルボン酸化合物A、分散剤Cおよび場合により溶剤Dを添加することにより特に有利に行う。しばしば50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上または更に全量のアミノカルボン酸化合物A、分散剤Cおよび場合により溶剤Dを、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上または更に全量の水に導入し、引き続き液滴直径1000nm以下を有する分散相を製造し、これに続いて水性媒体に反応温度で全量のヒドロラーゼBおよび場合により残留する残りの量の水、アミノカルボン酸化合物A、分散剤C、および場合により溶剤Dを添加する。その際ヒドロラーゼBおよび場合により残留する残りの量の水、アミノカルボン酸化合物A、分散剤Cおよび場合により溶剤Dを水性反応媒体に不連続的に1回の分量で、不連続的に複数の分量で、および連続的に一定の量でまたは変動する物質流で添加することができる。
【0028】
しばしば全量のアミノカルボン酸化合物Aおよび場合により溶剤Dおよび少なくとも1個の分散剤Cの部分量を、主要量または全量の水に導入し、ミニエマルジョンの形成後に反応温度で全量のヒドロラーゼBを、場合により残りの量の水および分散剤Cと一緒に水性反応媒体に添加する。
【0029】
本発明により有利に使用される水性ミニエマルジョンの分散相の液滴の平均的大きさは準弾性的動的光散乱の原理により決定される(いわゆる自動相関関数の一モード分析のz−平均液滴直径d)。本明細書の実施例ではそのために、Coulter N4 Plus Particle Analyser、Coulter Scientific Instruments社を使用した。測定は希釈した水性ミニエマルジョン上で行い、エマルジョンの非水性成分の含量は0.01質量%であった。その際希釈は水を使用して行い、水を予め水性ミニエマルジョンに含まれるアミノカルボン酸化合物Aおよび/または水に溶解する少ない有機溶剤Dで飽和させた。最後の手段は、希釈とともに液滴直径の変動が起きることを回避する。
【0030】
本発明により、このようにしていわゆるミニエマルジョンに関して求めたdの値は一般に700nm以下、しばしば500nm以下である。本発明により100nm〜400nmもしくは100nm〜300nmのd範囲が有利である。一般に本発明により使用される水性ミニエマルジョンのdは40nm以上である。
【0031】
水性マクロエマルジョンからなる水性ミニエマルジョンの一般的製造は当業者に知られている(P.L.Tang、E.D.Sudol、C.A.SilebiおよびM.S.ElAasser、Journal of Applied Polymer Science、Vol43、1059〜1066頁(1991)参照)。
【0032】
この目的のために、例えば高圧ホモジナイザーを使用できる。成分の微細分布がこの機械中で高い位置エネルギーの導入により達成される。これに関して2つの変法が特に有利であると示された。
【0033】
第1の変法において水性マクロエマルジョンをピストンポンプにより1000バールより高く圧縮し、引き続き狭い間隙により緩和する。この作用は高い剪断勾配および圧力勾配の調和および間隙中の空洞形成にもとづく。この原理により機能する高圧ホモジナイザーの例はNiro−Soavi高圧ホモジナイザー タイプNS1001L Pandaである。
【0034】
第2の変法において、圧縮した水性マクロエマルジョンを2つの互いに向かい合って配置されたノズルにより混合室に向かって緩和する。この場合に微細分布作用は特に混合室中の流体動力学的関係に依存する。このホモジナイザータイプの例はミクロ流動化装置タイプM120、Microfluidics社である。この高圧ホモジナイザー中に水性マクロエマルジョンを、空気運転ピストンポンプを使用して1200気圧までの圧力に圧縮し、いわゆる相互作用室により緩和する。相互作用室中でエマルジョン噴射を微細通路系中で2つの噴射に分配し、180°の角度で互いに向かい合って供給する。この均一化の種類により運転するホモジナイザーの他の例は、ナノジェット(Nonojet)タイプExpo Nanojet Engineering社である。しかしナノジェットにおいて固体の触媒の代わりに、機械的に位置を変えることができる2つの均一化弁が取り付けられる。
【0035】
すでに述べた原理のほかに、例えば超音波(例えばBranson SonifierII450)の使用により均一化を行うことができる。ここで微細分布は空洞形成機構にもとづく。超音波を使用する均一化に関して基本的に英国特許第2250930号および米国特許第5108654号に記載される装置が適している。その際音波領域で生じる水性ミニエマルジョンの特性は導入される音波出力だけでなく、他の要因、例えば混合室中の超音波の強度分布、滞留時間、温度および乳化する物質の物理的特性、例えば粘性、界面張力および蒸気圧に依存する。その際得られる液滴の大きさは特に分散剤の濃度および均一化の際に取り入れられるエネルギーに依存し、従って例えば均一化圧力もしくは相当する超音波エネルギーにより意図的に調節できる。
【0036】
超音波による一般的なマクロエマルジョンからの本発明により有利に使用される水性ミニエマルジョンの製造に関して、特に先願のドイツ特許第19756874号に記載される装置が有利であると示された。この場合に反応空間または貫流反応通路および超音波を反応空間もしくは貫流反応通路に伝達する少なくとも1つの手段を有する装置を使用し、超音波を伝達する手段は、全部の反応空間もしくは貫流反応通路が1つの部分的区間で均一に超音波を放射できるように形成される。この目的のために、超音波を伝達する手段の放射面は、実質的に反応空間の表面に相当するかまたは反応空間が貫流反応通路の部分的区間である場合は、実質的に通路の全部の幅にわたり伸びて、放射面に対して実質的に垂直な反応空間の深さが超音波伝達手段の最大有効深さより少なくなるように形成される。
【0037】
反応空間の深さの用語はこの場合に実質的に超音波伝達手段の放射面と反応空間の底面の間隔を意味する。
【0038】
100mmまでの反応空間深さが有利である。反応空間の深さは有利に70mm以下であり、特に有利に50mm以下である。反応空間は原則的にきわめて少ない深さを有することができるが、できるだけ少ない閉塞の不安、容易な洗浄能力および高い生成物供給量を考慮すると、例えば高圧均一化装置での通常の間隙高さよりかなり大きく、多くの場合に10mmより大きい反応空間深さが有利である。反応空間の深さは例えば種々の深さの容器に浸漬する超音波伝達手段により有利に変動可能である。
【0039】
この装置の第1の構成により、超音波を伝達する手段の放射面は実質的に反応空間の表面に相当する。この構成は本発明により使用されるミニエマルジョンの断続的製造に使用する。この装置を使用して超音波を全部の反応空間に作用できる。反応空間中で軸方向の音波放射圧力により激しい横方向の混合を生じる乱流を生じる。
【0040】
第2の構成により、この種の装置は貫流セルを有する。その際容器は入口と出口を有する貫流反応通路として形成され、その際反応空間は貫流反応通路の部分的区間である。通路の幅は実質的に流動方向に垂直に伸びる通路の面積である。ここで放射面は流動方向に横方向の流動通路の全部の幅を覆う。この幅に垂直な放射面の長さ、すなわち流動方向の放射面の長さは超音波の有効範囲を規定する。この第1の構成の有利な変法により、貫流反応通路は実質的に長方形の横断面を有する。長方形の1つの面に同様に相当する寸法を有する長方形の超音波伝達手段が取り付けられる場合は、特に有効で、均一な超音波処理が保証される。しかし超音波領域に存在する乱流の関係により例えば円形の伝達手段を欠点なく使用できる。更に唯一の超音波伝達手段の代わりに流動方向で見て順番に接続される複数の別々の伝達手段を配置できる。その際放射面および反応空間の深さ、すなわち放射面と貫流通路の底面の間隔を変動できる。
【0041】
特に有利に超音波を伝達する手段が、自由な放射面からそれた端部に超音波変換器が結合されているソノトロード(sonotrode)として形成されている。超音波は例えば逆向きの圧電作用を利用することにより発生できる。その際発電機を使用して高周波電気振動(一般に10〜100kHz、有利に20〜40kHzの範囲)を発生し、圧電変換器により同じ周波数の機械的振動に変換し、伝達部品としてソノトロードを使用して超音波処理される媒体に励起する。
【0042】
特に有利にソノトロードが棒状の軸方向に放射するλ/2(もしくはλ/2の数倍)の縦方向振動器として形成される。このソノトロードは例えばその振動結合点の1つに設けられたフランジを使用して容器の開口に固定できる。これにより容器へのソノトロードの通過部分を圧密に形成することができ、反応空間内で超音波処理を高圧下でも実施できる。有利にソノトロードの振幅を調節することができ、すなわち設定された振幅をオンラインで検査し、場合により自動的に後調節する。該当する振幅の検査は例えばソノトロードに設けられた圧電変換器または後方に接続された評価電子部品による膨張測定ストリップにより行うことができる。
【0043】
この種の装置の他の有利な構成により、反応空間内に貫流比および混合比を改良するために取り付け部品が設けられている。この取り付け部品は例えば簡単なそらせ板または種々の多孔質体であってもよい。
【0044】
必要な場合は更に付加的な攪拌機により混合を更に強化することができる。有利には反応空間が温度調節可能である。
【0045】
前記の構成から本発明により、反応条件下で水性媒体中の溶解度が、前記の量を使用して分離相として1000nm以下の溶剤液滴を形成するために、十分に小さい有機溶剤Dまたは溶剤混合物を使用できることが明らかになる。更に形成される溶剤液滴の溶解能力は、少なくとも部分量、しかし有利に主要量のアミノカルボン酸化合物Aを取り入れるために十分に大きくなければならない。
【0046】
アミノカルボン酸化合物Aのほかに、ジアミン化合物E、ジカルボン酸化合物F、ジオール化合物G、ヒドロキシカルボン酸化合物H、アミノアルコール化合物Iおよび/または分子当たり少なくとも3個のヒドロキシ基、第一級または第二級アミノ基および/またはカルボキシ基を含有する有機化合物Kを使用できることが本発明の方法に重要である。その際個々の化合物E、F、G、H、IおよびKの全量の合計が100質量%以下、有利に80質量%以下または60質量%以下、特に有利に50質量%以下または40質量%以下、もしくは0.1質量%以上、しばしば1質量%以上、しばしば5質量%以上であることが重要であり、それぞれアミノカルボン酸化合物Aの全量に対する。
【0047】
ジアミン化合物Eとして、2個の第一級または第二級アミノ基を有するすべての有機ジアミン化合物が該当し、その際第一級アミノ基が有利である。その際2個のアミノ基を有する有機基本骨格はC〜C20−脂肪族構造、C〜C20−脂環式、芳香族またはヘテロ芳香族構造を有することができる。2個の第一級アミノ基を有する化合物Eの例は、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、2−メチル−1,3−ジアミノプロパン、2,2−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン(ネオペンチルジアミン)、1,4−ジアミノブタン、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノブタン、1−メチル−1,4−ジアミノブタン、2−メチル−1,4−ジアミノブタン、2,2−ジメチル−1,4−ジアミノブタン、2,3−ジメチル−1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,2−ジアミノペンタン、1,3−ジアミノペンタン、1,4−ジアミノペンタン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、3−メチル−1,5−ジアミノペンタン、2,2−ジメチル−1,5−ジアミノペンタン、2,3−ジメチル−1,5−ジアミノペンタン、2,4−ジメチル−1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,2−ジアミノヘキサン、1,3−ジアミノヘキサン、1,4−ジアミノヘキサン、1,5−ジアミノヘキサン、2−メチル−1,5−ジアミノヘキサン、3−メチル−1,5−ジアミノヘキサン、2,2−ジメチル−1,5−ジアミノヘキサン、2,3−ジメチル−1,5−ジアミノヘキサン、3,3−ジメチル−1,5−ジアミノヘキサン、N,N´−ジメチル−1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、3,3´−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4´−ジアミノジシクロヘキシルメタン(ジシアン)、3,3´−ジメチル−4,4´−ジアミノジシクロヘキシルメタン(Laromin)、イソホロンジアミン(3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン)、1,4−ジアジン(ピペラジン)、1,2−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、m−キシリレンジアミン[1,3−(ジアミノメチル)ベンゼン]およびp−キシリレンジアミン[1,4−(ジアミノメチル)ベンゼン]である。もちろん前記化合物の混合物も使用できる。
【0048】
有利に1,6−ジアミノヘキサン、1,12−ジアミノドデカン、2,2−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、3,3´−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4´−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3´−ジメチル−4,4´−ジアミノジシクロヘキシルメタン、m−キシリレンジアミン、またはp−キシリレンジアミンを任意のジアミン化合物Eとして使用する。
【0049】
ジカルボン酸化合物Fとして、2個のカルボン酸基(カルボキシ基、−COOH)またはその誘導体を有する、原則的にすべてのC〜C40−脂肪族化合物、C〜C20−脂環式、芳香族またはヘテロ芳香族化合物を使用できる。誘導体として、特に前記ジカルボン酸のC〜C10−アルキル−、有利にメチル−、エチル−、n−プロピルまたはイソプロピル−モノ−またはジエステル、相当するジカルボン酸ハロゲニド、特にジカルボン酸ジクロリドおよび相当するジカルボン酸無水物を使用する。この種の化合物の例はエタン二酸(蓚酸)、プロパン二酸(マロン酸)、ブタン二酸(琥珀酸)、ペンタン二酸(グルタル酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、ヘプタン二酸(ピメリン酸)、オクタン二酸(コルク酸)、ノナン二酸(アゼライン酸)、デカン二酸(セバシン酸)、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸(ブラシル酸)、C32−ダイマー脂肪酸(Cognis社、米国の市販の製品)、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸(フタル酸)、ベンゼン−1,3−ジカルボン酸(イソフタル酸)またはベンゼン−1,4−ジカルボン酸(テレフタル酸)、そのメチルエステル、例えばエタン二酸ジメチルエステル、プロパン二酸ジメチルエステル、ブタン二酸ジメチルエステル、ペンタン二酸ジメチルエステル、ヘキサン二酸ジメチルエステル、ヘプタン二酸ジメチルエステル、オクタン二酸ジメチルエステル、ノナン二酸ジメチルエステル、デカン二酸ジメチルエステル、ウンデカン二酸ジメチルエステル、ドデカン二酸ジメチルエステル、トリデカン二酸ジメチルエステル、C32−ダイマー脂肪酸ジメチルエステル、フタル酸ジメチルエステル、イソフタル酸ジメチルエステルまたはテレフタル酸ジメチルエステル、そのジクロリド、例えばエタン二酸ジクロリド、プロパン二酸ジクロリド、ブタン二酸ジクロリド、ペンタン二酸ジクロリド、ヘキサン二酸ジクロリド、ヘプタン二酸ジクロリド、オクタン二酸ジクロリド、ノナン二酸ジクロリド、デカン二酸ジクロリド、ウンデカン二酸ジクロリド、ドデカン二酸ジクロリド、トリデカン二酸ジクロリド、C32−ダイマー脂肪酸ジクロリド、フタル酸ジクロリド、イソフタル酸ジクロリド、またはテレフタル酸ジクロリドおよびその無水物、例えばブタンジカルボン酸無水物、ペンタンジカルボン酸無水物またはフタル酸無水物である。もちろん前記ジカルボン酸化合物Fの混合物も使用できる。
【0050】
場合により有利に遊離ジカルボン酸、特にブタン二酸、ヘキサン二酸、デカン二酸、ドデカン二酸、テレフタル酸またはイソフタル酸もしくはその相当するジメチルエステルを使用する。
【0051】
任意のジオール化合物Gとして、本発明により、2〜18個の炭素原子、有利に4〜14個の炭素原子を有する分枝または直鎖状アルカンジオール、5〜20個の炭素原子を有するシクロアルカンジオールまたは芳香族ジオールを使用する。
【0052】
適当なアルカンジオールの例はエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、または2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオールである。特にエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオールまたは1,12−ドデカンジオールが適している。
【0053】
シクロアルカンジオールの例は1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール(1,2−ジメチルシクロヘキサン)、1,3−シクロヘキサンジメタノール(1,3−ジメチロールシクロヘキサン)、1,4−シクロヘキサンジメタノール(1,4−ジメチルシクロヘキサン)または2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールである。
【0054】
適当な芳香族ジオールの例は1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,2−ジヒドロキシベンゼン、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)、1,3−ジヒドロキシナフタリン、1,5−ジヒドロキシナフタリンまたは1,7−ジヒドロキシナフタリンである。
【0055】
しかしジオール化合物Gとして、ポリエーテルジオール、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレンオキシド単位4以上)、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレンオキシド単位4以上)、およびポリテトラヒドロフラン(ポリTHF)、特にジエチレングリコール、トリエチレングリコール、およびポリエチレングリコール(エチレンオキシド単位4以上)を使用することができる。ポリTHF、ポリエチレングリコール、またはポリプロピレングリコールとして、数平均分子量(Mn)が一般に200〜10000g/モル、有利に600〜5000g/モルの範囲にある化合物を使用する。
【0056】
もちろん前記ジオール化合物Gの混合物も使用できる。
【0057】
任意のヒドロキシカルボン酸化合物Hとして、遊離ヒドロキシカルボン酸、そのC〜C−アルキルエステルおよび/またはそのラクトンを使用する。例えばグリコール酸、D−、L−、D,L−乳酸、6−ヒドロキシヘキサン酸(6−ヒドロキシカプロン酸)、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシバレリアン酸、3−ヒドロキシカプロン酸、p−ヒドロキシ安息香酸、その環状誘導体、例えばグリコリド(1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)、D−、L−、D,L−ジラクチド(3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)、ε−カプロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ドデカノリド(オキサシクロトリデカン−2−オン)、ウンデカノリド(オキサシクロドデカン−2−オン)またはペンタデカノリド(オキサシクロヘキサデカン−2−オン)が挙げられる。もちろん種々のヒドロキシカルボン酸化合物Hの混合物も使用できる。
【0058】
任意のアミノアルコール化合物Iとして、ヒドロキシ基おyび第二級または第一級、しかし有利に第一級アミノ基を有する原則的にすべての化合物、しかし有利にC〜C12−脂肪族有機化合物、C〜C10−脂環式または芳香族有機化合物を使用できる。例として、2−アミノエタノール、3−アミノプロパノール、4−アミノブタノール、5−アミノペンタノール、6−アミノヘキサノール、2−アミノシクロペンタノール、3−アミノシクロペンタノール、2−アミノシクロヘキサノール、3−アミノシクロヘキサノール、4−アミノシクロヘキサノールおよび4−アミノメチルシクロヘキサンメタノール(1−メチル−4−アミノメチルシクロヘキサン)が挙げられる。もちろん前記アミノアルコール化合物Iの混合物も使用できる。
【0059】
本発明の方法に任意に使用できる他の成分として、分子当たり少なくとも3個のヒドロキシ基、第一級または第二級アミノ基および/またはカルボキシ基を有する有機化合物Kを記載できる。例として、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリット、ポリエーテルトリオール、グリセリン、糖類(例えばグルコース、マンノース、フルクトース、ガラクトース、グルコサミン、サッカロース、ラクトース、トレハロース、マルトース、セロビオース、ゲンチオアノース、ケトース、マルトトリオース、ラフィノース、トリメシン酸(1,3,5−ベンゼントリカルボン酸およびそのエステルまたは無水物)、ピロメリット酸(1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸およびそのエステルまたは無水物)、4−ヒドロキシイソフタル酸、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ビスヘキサメチレントリアミン、N,N´−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、ジエタノールアミンまたはトリエタノールアミンが挙げられる。前記化合物Kは分子当たり少なくとも3個のヒドロキシ基、第一級または第二級アミノ基および/またはカルボキシ基により同時に少なくとも2個のポリアミド鎖に組み込まれていてもよく、これにより化合物Kはポリアミドを形成する際に分枝作用もしくは架橋作用を示す。化合物Kの含量が多いほど、もしくは分子当たりのアミノ基、ヒドロキシ基および/またはカルボキシ基が多く存在するほど、ポリアミド形成の際の分枝/架橋の程度が高い。この場合にもちろん化合物Kの混合物も使用できる。
【0060】
本発明により、ジアミン化合物E、ジカルボン酸化合物F、ジオール化合物G,ヒドロキシカルボン酸化合物H、アミノアルコール化合物Iおよび/または分子当たり少なくとも3個のヒドロキシ基、第一級または第二級アミノ基および/またはカルボキシ基を含有する有機化合物Kの混合物も使用できる。
【0061】
本発明によりアミノカルボン酸化合物Aのほかに前記化合物E〜Kの少なくとも1種を使用する場合は、カルボキシ基および/またはその誘導体(個々の化合物A、F、HおよびKからの)と、アミノ基および/またはヒドロキシ基および/またはその誘導体(個々の化合物A、E、G、H、IおよびKからの)の合計の当量比が0.5〜1,5、一般に0.8〜1.3、有利に0.9〜1.1、特に0.95〜1.05であるように、化合物AおよびE、F、G、H、Iおよび/またはKの量を選択することに注意しなければならない。当量比が1である、すなわちカルボキシ基もしくはこれから誘導された基と同じほど多くのアミノ基および/またはヒドロキシ基が存在する場合が特に好ましい。よりよい関係のために、アミノカルボン酸化合物Aが1当量のカルボキシ基を有し、ジカルボン酸化合物F(遊離酸、エステル、ハロゲン化物または無水物)が2当量のカルボキシ基を有し、ヒドロキシカルボン酸化合物Hが1当量のカルボキシ基を有し、有機化合物Kが分子当たりのカルボキシ基を有すると同じほど多くの当量のカルボキシ基を有することを記載すべきである。相当する方法でアミノカルボン酸化合物Aは1当量のアミノ基を有し、ジアミン化合物Eは2当量のアミノ基を有し、ジオール化合物Gは2当量のヒドロキシ基を有し、ヒドロキシカルボン酸化合物Hは1当量のヒドロキシ基を有し、アミノアルコール化合物Iは1当量のアミノ基および1当量のヒドロキシ基を有し、有機化合物Kは分子内にヒドロキシ基もしくはアミノ基を有するのと同じほど多くの当量のヒドロキシ基もしくはアミノ基を有する。
【0062】
その際ヒドロラーゼBが特に使用されるアミノカルボン酸化合物A、ジアミン化合物E、ジカルボン酸化合物F、ジオール化合物G、ヒドロキシカルボン酸化合物H,アミノアルコール化合物Iおよび/または分子当たり少なくとも3個のヒドロキシ基、第一級または第二級アミノ基および/またはカルボキシ基を含有する有機化合物Kもしくは分散剤Cおよび溶剤Dと相溶性であり、これらにより失活しないようにヒドロラーゼBを選択することは本発明の方法にとって自明なことである。所定のヒドロラーゼの場合にどの化合物AおよびC〜Kを使用できるかは当業者に知られているかまたは当業者により簡単な予備試験で求めることができる。
【0063】
アミノカルボン酸化合物Aのほかに前記化合物E、F、G、H、Iおよび/またはKを使用する場合に、最初に少なくとも部分量のアミノカルボン酸化合物A、化合物E、F、G、H、Iおよび/またはK、分散剤Cおよび場合により溶剤Dを部分量もしくは全体量の水に導入し、その後適当な手段を使用して、平均液滴直径1000nm以下を有する、アミノカルボン酸化合物Aおよび化合物E、F、G、H、Iおよび/またはKおよび/または場合により溶剤Dを有する分散相(ミニエマルジョン)を製造し、これに続いて反応温度で水相を全量のヒドロラーゼBおよび場合により残留する残りの量の水、アミノカルボン酸化合物A、化合物E、F、G、H、Iおよび/またはK、分散剤Cおよび場合により溶剤Dを添加するように本発明の方法を有利に行う。有利に全量のアミノカルボン酸A、化合物E、F、G、H、Iおよび/またはK、分散剤Cおよび場合により溶剤D50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上またはそれ以上を、全量の水50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上またはそれ以上に導入し、引き続き液滴直径1000nm以下を有する分散相を製造し、これに続いて反応温度で水相に全量のヒドロラーゼBおよび場合により残留する残りの量の水、アミノカルボン酸化合物A、化合物E、F、G、H、Iおよび/またはK、分散剤Cおよび場合により溶剤Dを添加する。その際ヒドロラーゼBおよび場合により残留する残りの量の水、アミノカルボン酸A、化合物E、F、G、H、Iおよび/またはK、分散剤Cおよび場合によりDを水性反応媒体に不連続的に一回の分量でまたは不連続的に複数の分量で、および連続的に一定または変動する量の流れで添加することができる。
【0064】
本発明の方法は一般に反応温度20〜90℃、有利に35〜60℃、特に45〜55℃、一般に圧力(絶対値)0.8〜10バール、有利に0.9〜2バールおよび特に1バール(大気圧)で行う。
【0065】
水性反応媒体が室温(20〜25℃)で、2以上かつ11以下、有利に3以上かつ9以下、特に6以上かつ8以下を有する場合が更に有利である。特に水性反応媒体中でヒドロラーゼBが最適な作用を示すpH値(範囲)に調節する。どのようなpH値(範囲)であるのかは当業者に知られているかまたは当業者により若干の予備試験により求めることができる。相当するpH値調節手段、すなわち相当する量の酸、例えば硫酸、塩基、例えばアルカリ金属水酸化物、特に水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの水溶液、または緩衝物質、例えば燐酸二水素カリウム/燐酸水素二ナトリウム、酢酸/酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム/塩化アンモニウム、燐酸二水素カリウム/水酸化ナトリウム、硼砂/塩酸、硼砂/水酸化ナトリウムまたはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/塩酸の添加は当業者に一般に知られている。
【0066】
本発明の方法に一般に透明であり、しばしば飲料水品質を有する水を使用する。しかし本発明の方法に有利に脱イオン水を使用する。その際本発明により達成される水性ポリアミド分散液が、ポリアミド固形分70質量%以下、有利に1質量%以上かつ50質量%以下または5質量%以上かつ35質量%以下、特に10質量%以上かつ30質量%以下に相当して、それぞれ水性ポリアミド分散液に対して30質量%以上、有利に50質量%以上かつ99質量%以下または65質量%以上かつ95質量%以下、特に70質量%以下かつ90質量%以下の含水量を有するように水の量を選択する。本発明の方法を有利に酸素不含不活性ガス雰囲気下、例えば窒素雰囲気またはアルゴン雰囲気下で行うことを記載すべきである。
【0067】
本発明により有利に水性ポリアミド分散液に、酵素による触媒活性化重合反応に続いて本発明により使用されるヒドロラーゼBを失活できる(すなわちヒドロラーゼBの触媒作用を破壊または阻害することができる)助剤(失活剤)を添加する。失活剤としてそれぞれのヒドロラーゼBを失活できるすべての化合物を使用できる。失活剤として特に錯体化合物、例えばニトリロトリ酢酸またはエチレンジアミンテトラ酢酸もしくはそのアルカリ金属塩またはアニオン乳化剤、例えばドデシル硫酸ナトリウムを使用することができる。その量は一般にそれぞれのヒドロラーゼBを失活するためにまさに十分であるように測定する。しばしば水性ポリマー分散液を95℃以上または100℃以上に加熱することにより使用されるヒドロラーゼBを失活することもでき、その際一般に沸騰反応を抑制するために不活性ガスを加圧下に押し付ける。もちろん水性ポリアミド分散液のpH値を変動することにより所定のヒドロラーゼBを失活することも可能である。
【0068】
本発明の方法により達成されるポリアミドはガラス転移温度−70℃〜+200℃を有することができる。使用目的に応じてしばしばガラス転移温度が所定の範囲内にあるポリアミドが必要である。本発明の方法に使用される成分AおよびE〜Kの適当な選択により、ガラス転移温度が所望の範囲にあるポリアミドを意図的に製造することが当業者に可能である。例えば本発明の方法により得られるポリアミドを付着接着剤として使用する場合は、得られたポリアミドがガラス転移温度0℃未満、しばしば−5℃以下、および特に−10℃以下を有するように、使用される化合物の組成を選択する。これに対してポリアミドを例えば結合剤として被覆剤組成物に使用する場合は、得られたポリアミドがガラス転移温度−40℃〜+150℃、しばしば0℃〜+100℃、特に+20℃〜+80℃を有するように、使用される化合物の組成を選択する。他の使用分野に使用されるポリアミドにも相当することが該当する。
【0069】
ガラス転移温度TgはG.Kanig(Kolloid−Zeitschrift fuer Polymere,190、1頁、式1)によりガラス転移温度を分子量の増加とともに求めるガラス転移温度の限界値と考えられる。ガラス転移温度はDSC法(示差走査熱量測定、20K/分、DIN53765による中点測定)により求める。
【0070】
本発明の方法により達成される水性ポリアミド分散液のポリマー粒子は、一般に10〜1000nm、しばしば50〜700nm、しばしば100〜500nmである平均粒子直径を有する[準弾性光散乱により求められた累積z平均値が表示される(ISO規格13321)]。
【0071】
本発明の方法により得られるポリアミドは一般に2000g/モル以上から1000000g/モルまでの範囲、しばしば3000g/モルから500000g/モルまで、しばしば5000g/モルから300000g/モルまでの質量平均分子量を有する。質量平均分子量の測定はゲル浸透クロマトグラフィーを使用してDIN55672−1により行う。
【0072】
本発明の方法により達成される水性ポリアミド分散液は、有利に接着剤、パッキング材料、合成樹脂プラスター、紙塗被材料、印刷インキ、化粧品および塗料の成分として、皮および織物の仕上げに、繊維の形成に、および無機結合剤またはアスファルトの変性に適している。
【0073】
更に本発明により達成される水性ポリアミド分散液を乾燥により相当するポリアミド粉末に変換できることが重要である。相当する乾燥法、例えば凍結乾燥または噴霧乾燥は当業者に知られている。
【0074】
本発明により達成されるポリアミド粉末は有利に顔料、プラスチック組成物の充填剤として、接着剤、パッキング材料、合成樹脂プラスター、紙塗被材料、印刷インキ、化粧品、粉体塗料および塗料の成分として、皮および織物の仕上げに、繊維の形成に、および無機結合剤またはアスファルトの変性に使用できる。
【0075】
本発明の方法は、ポリアミドが一般に相当する水性ポリアミド二次分散液より明らかに高い分子量を有する水性ポリアミド一次分散液の簡単で廉価な達成を開示する。
【0076】
以下の限定されない実施例により本発明を説明する。
【0077】
実施例
本発明により達成されるポリアミドの質量平均分子量の表示は以下の条件下でのゲル浸透クロマトグラフィー(DIN55672−1による)を使用する測定にもとづく。
予備カラム:PLHFIPゲル(内径7.5mm、長さ5cm)
分離カラム;PLHFIPゲル(内径7.5mm、長さ30cm、Polymer Laboratories社)
溶離剤:ヘキサフルオロイソプロパノール、トリフルオロ酢酸カリウム塩0.05質量%を含有する
温度:40℃
検出:示差式屈折計、G1362A1100シリーズ(Aglient Technologies社)
UV検出器、GATLCD503(Gamma Analysentechnik社)
流量:0.5ml/分、HPLCポンプ420(Kontron Instruments社)
注入:20μl
評価:WinGPC ScientificV6,2−−ソフトウエアー(Polymer Standard Service社)
測定:ポリメチルメタクリレート(PMMA)−Ready−Cal−Kit(Polymer Standard Service社)による。
【0078】
固形分は一般に決められた量の水性ポリアミド分散液(約5g)を乾燥棚中、180℃で質量定数まで乾燥することにより測定した。それぞれ2個の別々の測定を実施した。それぞれの例に示される値は2つの測定結果の平均値である。
【0079】
ポリアミド粒子の平均粒子直径は一般にオートサイザー(Autosizer)IIC、Malvern社、英国、を使用して、23℃で約0.005〜0.01質量%水性分散液での動的光散乱により測定した。測定した自動相関機能(ISO規格13321)の累積評価(累積z平均値)の平均直径を表示した。
【0080】
ガラス転移温度もしくは融点の測定は、DIN53765により、DSC820装置、TA8000シリーズ、Mettler−Toledo社を使用して行った。
【0081】
例1
窒素雰囲気下に、室温でε−カプロラクタム(Sigma−Aldrich社)4.8g(43ミリモル)を攪拌下にLutensol(登録商標)AT50(非イオン性乳化剤、BASF社の市販の製品)0.24gおよび脱イオン水23.8gからの均一な溶液に添加した。その後得られた均一な溶液にトルエン0.5gを添加した。引き続き得られた均一な混合物を磁気攪拌機を使用して60rpmで10分間攪拌し、その後同様に窒素下に80ml急傾斜湾曲容器に移し、ウルトラツラックスT25装置(Janke and Kunkel社)を使用して20500rpmで30秒間攪拌した。その後得られた液状均一混合物を超音波ゾンデ(70W、UW2070装置、Bandelin electric社)を使用して3分間超音波処理して平均液滴直径1000nm以下を有する液滴(ミニエマルジョン)に変換した。こうして製造したミニエマルジョンに、窒素雰囲気下に、一回の分量で、カンジダ・アンタルクチカタイプBのリパーゼ(Fulka社の市販の製品)0.24g、LutensolAT500.14gおよび脱イオン水14.2gから製造された均一な酵素混合物を添加し、引き続き得られた混合物を攪拌下に60℃に加熱し、混合物をこの温度で窒素雰囲気下に20時間攪拌した。引き続き得られた水性ポリアミド分散液を室温に冷却し、酵素の失活のために、攪拌下にドデシル硫酸ナトリウム0.06gを添加し、水性ポリアミド分散液を更に30分攪拌した。
【0082】
水性分散液に対して約9質量%の固形分を有する6個のアミノカプロン酸単位を有するポリアミド(=ポリカプロラクタム、ナイロン6)の水性分散液約43gが得られた。平均粒度は約220nmで測定された。
【0083】
得られたポリアミドの質量平均分子量、ガラス転移温度および融点を測定するために、得られた水性ポリアミド分散液10gを10分間遠心分離(3000rpm)し、その際ポリアミド粒子が底部沈殿物として堆積した。上澄みの透明な水溶液をデカントし、脱イオン水10gを使用してポリアミド粒子を懸濁させ、10分間攪拌した。引き続き遠心分離、上澄みの透明溶液のデカント等により再び沈殿した。全体として得られたポリアミド粒子を前記の方法により脱イオン水それぞれ10gで3回およびその後テトラヒドロフランそれぞれ10gで3回処理した。残留するポリマー残留物を引き続き50℃/1ミリバール(絶対圧力)で5時間乾燥した。こうして得られたポリアミド(約0.25g)は質量平均分子量M212000g/モルもしくは数平均分子量Mn47000g/モルを有した。融点は約200℃で測定した。
【0084】
例2
窒素雰囲気下に、45℃でペンタデカノリド(98質量%、Sigma−Aldrich社)およびヘキサデカンを均一に混合し、この混合物を50℃で攪拌下に、ε−カプロラクタム3.2g(28ミリモル)、Lutensol(登録商標)AT50 0.3gおよび脱イオン水29.7gからの均一な溶液に添加した。引き続き得られた均一な混合物を、50℃で磁気攪拌機を使用して60rpmで10分間攪拌し、その後同様に窒素下に80ml急傾斜湾曲容器に移し、ウルトラツラックスT25装置(Janke and Kunkel社)を使用して20500rpmで30秒間攪拌した。その後得られた液状均一混合物を超音波ゾンデ(70W、UW2070装置、Bandelin electric社)を使用して3分間超音波処理して平均液滴直径1000nm以下を有する液滴(ミニエマルジョン)に変換した。こうして製造したミニエマルジョンに、窒素下に、一回の分量で、カンジダ・アンタルクチカタイプBのリパーゼ0.18g、LutensolAT50 0.18gおよび脱イオン水18gから製造された均一な酵素混合物を添加し、引き続き得られた混合物を攪拌下に55℃に加熱し、混合物をこの温度で窒素雰囲気下に20時間攪拌した。引き続き得られた水性ポリアミド分散液を室温に冷却し、酵素の失活のために、攪拌下にドデシル硫酸ナトリウム0.06gを添加し、水性ポリアミド分散液を更に30分攪拌した。
【0085】
水性分散液に対して約11質量%の固形分を有する、
−NH−(CH−C(=O)−単位および
−O−(CH14−C(=O)−単位を有するポリアミドの水性分散液約53gが得られた。平均粒度は約150nmで測定された。
【0086】
得られたポリアミドの質量平均分子量、ガラス転移温度および融点を測定するために、得られた水性ポリアミド分散液10gを10分間遠心分離(3000rpm)し、その際ポリアミド粒子が底部沈殿物として堆積した。上澄みの透明な水溶液をデカントし、脱イオン水10gを使用してポリアミド粒子を懸濁させ、10分間攪拌した。引き続き遠心分離、上澄みの透明溶液のデカント等により再び沈殿した。全体として得られたポリアミド粒子を前記の方法により脱イオン水それぞれ10gで3回およびその後テトラヒドロフランそれぞれ10gで3回処理した。残留するポリマー残留物を引き続き50℃/1ミリバール(絶対圧力)で5時間乾燥した。こうして得られたポリアミド(約1g)は質量平均分子量M166000g/モルおよび融点94℃および約210℃を有した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ポリアミド分散液の製造方法において、水性媒体中で、
a)アミノカルボン酸化合物Aを、
b)ヒドロラーゼBおよび
c)分散剤Cおよび
d)場合により低い水溶性の有機溶剤D
の存在で反応させることを特徴とする、水性ポリアミド分散液の製造方法。
【請求項2】
アミノカルボン酸化合物Aおよび/または場合により溶剤Dの少なくとも1個の部分量が1000nm以下の平均液滴直径を有する分散相として水性媒体中に存在する請求項1記載の方法。
【請求項3】
まずアミノカルボン酸化合物A、分散剤Cおよび場合により溶剤Dの少なくとも1個の部分量を部分量または全量の水に導入し、その後適当な手段を使用して1000nm以下の平均液滴直径を有するアミノカルボン酸化合物Aおよび/または場合により溶剤Dを有する分散相を製造し、これに続いて反応温度で、水性媒体に全量のヒドロラーゼBおよび場合により残留する残りの量の水、アミノカルボン酸化合物A、分散剤Cおよび溶剤Dを添加する請求項2記載の方法。
【請求項4】
低い水溶性の有機溶剤Dの量が使用される全量の水に対して0.1〜40質量%である請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
重合反応のために、アミノカルボン酸化合物Aのほかに、ジアミン化合物E、ジカルボン酸化合物F、ジオール化合物G、ヒドロキシカルボン酸化合物H、アミノアルコール化合物Iおよび/または分子当たり少なくとも3個のヒドロキシ基、第一級または第二級アミノ基および/またはカルボキシル基を有する有機化合物Kを使用する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
個々の化合物E、F、G、H、Iおよび/またはKの全量の合計がアミノカルボン酸化合物Aの全量に対して100質量%以下である請求項5記載の方法。
【請求項7】
カルボキシ基および/またはその誘導体(個々の化合物A、F、HおよびKからの)とアミノ基および/またはヒドロキシ基および/またはその誘導体(個々の化合物A、E、G、H、IおよびKからの)の合計の当量比が0.5〜1.5であるように化合物AおよびE、F、G、H、Iおよび/またはKの量を選択する請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
ヒドロラーゼBとしてリパーゼおよび/またはカルボキシエステラーゼを使用する請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
分散剤Cとして非イオン性乳化剤を使用する請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
水性媒体中で反応条件下で溶剤Dの50質量%以下が溶解するように、溶剤Dおよびその量を選択する請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
水性媒体が3以上で9以下のpH値を有する請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
アミノカルボン酸化合物Aとしてラクタムを使用する請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
アミノカルボン酸化合物Aとしてε−カプロラクタムおよび/またはω−ラウリンラクタムを使用する請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
得られるポリアミドが−50℃〜+200℃のガラス転移温度を有するようにアミノカルボン酸化合物Aおよび場合により化合物E〜Kを選択する請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載の方法により得られる水性ポリアミド分散液。
【請求項16】
接着剤、パッキング材料、合成樹脂プラスター、紙塗被材料、印刷インキ、化粧用組成物、および塗料としての、皮および織物の仕上げ加工のための、繊維結合のための、および無機結合剤またはアスファルトの変性のための請求項15記載の水性ポリアミド分散液の使用。
【請求項17】
請求項15記載の水性ポリアミド分散液の乾燥によるポリアミド粉末の製造。
【請求項18】
顔料、プラスチック組成物中の充填剤、接着剤中の成分、パッキング材料、合成樹脂プラスター、紙塗被材料、印刷インキ、化粧用組成物、粉末塗料、および塗料としての、皮および織物の仕上げ加工のための、繊維結合のための、無機結合剤またはアスファルトの変性のための請求項17記載のポリアミド粉末の使用。

【公表番号】特表2008−521416(P2008−521416A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543756(P2007−543756)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012731
【国際公開番号】WO2006/058696
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】