説明

水性ポリマー分散体及び方法

(I)(a)(i)水、(ii)少なくとも1つの安定剤(例えば、界面活性剤及び疎水性共安定剤等)、(iii)少なくとも1つの粘着付与剤(例えば、ポリテルペン、ロジン樹脂及び/又は炭化水素樹脂等)、(iv)少なくとも1つのα,β−エチレン系不飽和モノマーを含む混合物を形成する工程、(b)工程(a)からの前記混合物に高剪断を適用して、水性連続相及びその中に分散した、約10〜約1000nmの平均直径の安定化小滴を含む本質的に安定なミニエマルションを形成する工程、(c)前記モノマーを前記小滴内で、遊離基開始剤の存在下で重合する工程、(d)更なるモノマーを前記分散相に添加して分散体を形成する工程、次いで、(II)工程(I)の分散体を種として使用して、その後のエマルション重合で不均質ポリマー粒子の分散体を形成する工程を含む、ミニエマルション重合による不均質ポリマー粒子の水性分散体を調製するための複数工程方法が記載されている。得られた粘着化PSAはコアシェル構造を有し、高剪断下で安定である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着化アクリルエマルションを含む感圧接着剤(PSA)の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
PSAエマルションが、低い表面エネルギーを持つもの等(例えば、ポリマーフィルム)の基体及び段ボール等のその他の基体タイプと言った広範囲の基体に対して改善された接着性を示すことは望ましいことである。これを行うための1つの手段は、ポリテルペン、ロジンエステル及び/又は炭化水素等の粘着付与剤種を添加することである。然しながら、エマルションへの粘着付与剤の添加は水性ラテックスの安定性に有害な影響を及ぼし、特にラテックスが高い剪断に掛けられる場合に有害な影響を及ぼす。
【0003】
水中における粘着付与剤の分散体は高剪断下では不安定でこれらは凝固してしまう。例えば、炭化水素粘着付与剤は、一般的に、4000より上で5000s−1までの剪断速度で凝固する。そのような粘着付与剤分散体が通常のアクリル系PSAエマルションへ添加される場合、得られたブレンドは又は高剪断下で凝固する。
【0004】
市販のPSAを高容量で適用するために使用される高速度コーティング装置は高剪断場を発生する。これは、PSAとしての粘着化アクリル系エマルションの商業的使用を大幅に制限する。例えば、Moynoポンプ、スロットダイス、加圧グラビア及びカーテンコーター等の一般的な装置は、一般的に、コーティングヘッド及び/又は漸進的キャビティーポンプで150,000s−1を超える剪断場を発生する。従来の粘着化アクリル系エマルションがこれらの装置で使用されると、エマルションは高剪断場で不安定となって凝塊を形成する。凝塊はダイを塞ぎ、コーティングウエブ上に擦過線を生じ、ダイ及びポンプで高圧を蓄積する。したがって、過剰の凝塊は除去されねばならず、これは、コーターの一時的な停止を必要とし、それはコストの増加となり望ましくない。
【0005】
粘着付与剤をPSAへ添加することが幾つかの用途にとっては不利益であり得ると言う考えが製造業者の間に存在する。例えば、粘着付与剤は、曇度が増加し得る、又は熱若しくはUVでの老化により着色し得るようなポリマーフィルム等の透明なフェイスストック(facestock)へ適用されるPSAフィルムに有害な影響を及ぼし得る。これらの問題に対処するために、或種の炭化水素粘着付与剤は、これらがその他の粘着付与剤の典型である良好な着色及び剥離性を示すと考えられてPSAで使用されてきた。然し、炭化水素粘着付与剤の乏しい高剪断安定性のために、これらのPSAは、PSAが低速でフィルム上に被覆され、したがって、高剪断に掛けられない所でのみ使用され得る。更に商業的な高容量用途に有用であるためには、PSAは高速度でフィルムに適用されねばならず、したがって、高剪断に掛けられることになる。
【0006】
したがって、透明な基体(ポリマーフィルム等)に適用される現に市販されているPSAは粘着化されていない。低表面エネルギーの表面へのPSA接着を改善すること及び良好な水濡れ及び透明度を与えることの代わりに、これらの未粘着化PSAは低ゲル含有量及び低分子量のアクリル系ポリマーから調製される。PSAに対するそのような変更は、これらの自己不利益、例えば、フィルムエッジでの接着剤の過剰な滲出による劣った交換性を生み出す。
【0007】
また、適当な界面活性剤の選択等の種々のその他の方法及び/又は正確な範囲の粒径を持つ粘着付与剤分散体を調製することにより粘着付与剤分散体の安定性を改善することも試みられている。然しながら、これらの方法はその他の不利益、例えば、これらは使用することのできる成分を制限し、方法の慎重な制御を必要とし及び/又は最終PSAの性質を制限する等の不利益を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願出願人は、アクリル系エマルションに安定的に炭化水素粘着付与剤を導入し改善された接着性を有する粘着化PSAを与えるためにミニエマルション方法が使用され得ることを見出した。有効に、そのような粘着化PSAは高剪断条件下で基体に適用することができる。都合良くは、粘着化PSAは、これらの凝集性及び接着性との間の最適バランスを持って製造することができる。
【0009】
水性ポリマー分散体は数年間ミニエマルション重合で調製されてきている。これは、モノマー(複数可)がナノサイズ化小滴に分散される、水中油エマルションの分散相である方法である。ミニエマルション重合で使用されるモノマーエマルションは10〜1000nmの平均小滴直径を有し、従来のモノマーエマルション及び小滴又はミセルのサイズが1〜10μm(ミクロン)と大きいエマルション重合方法と区別することができる。ミニエマルション方法において各ナノサイズ化小滴は、初期小滴とほぼ同じサイズのポリマーラテックス粒子を生成する、高度に平行な方式で生起する核化及び重合のための一次座になる。ミニエマルション重合は、例えば、疎水性成分が重合中にポリマー中にカプセル化され又は導入され得るように、従来のエマルション重合を凌ぐ多数の利益を提供する。
【0010】
種々のミニエマルションは、それらを安定化する方法と一緒に記載されている。
【0011】
WO04/069879(UCB、現在Cytecに譲渡されている)は、ミニエマルション小滴を安定化するために、800〜100,000の数平均分子量M及び50〜400mg KOH/gの酸価を有する両親媒性安定化ポリマーの使用を記載している。
【0012】
WO00/29451(Max Planck)及びUS5,686,518(Georgia Tech)は、ミニエマルションの安定化に適した一連の疎水性成分を開示している。これらの文献は、エマルション小滴及び重合後に得られるポリマー粒子の両方を安定化するためにはこれらの疎水性成分に加えて界面活性剤が必要とされることを教示している。使用される界面活性剤は、ナトリウムラウリルスルフェート又はその他のアルキルスルフェート、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート又はその他のアルキル若しくはアリールスルホネート、ナトリウムステアレート又はその他の脂肪酸塩、或いはポリビニルアルコールである。
【0013】
US2002/131941A1(BASF)(=EP1191041)は、化粧品として使用される、1000nmより下の平均粒径の着色水性ポリマー分散体を記載している。この参考文献は、0.1〜20%の少なくとも1つの非イオン表面活性化合物(NS)を含む皮膚刺激物であるアニオン界面活性剤を、0.5〜10モル/kgのアニオン官能基を有する少なくとも1つの両新媒性ポリマー(PA)の1〜50%で置換える安定化系を記載している。
【0014】
US5,952,398(3M)は、ミニエマルション重合で作製された感圧接着剤(PSA)を記載している。このPSAは、2つの両性連続相、即ち疎水性PSAポリマー及び親水性ポリマーを有する。これらの組成物は安定化された水中油ミニエマルションから調製される。水性連続相は、遊離基性エチレン系不飽和極性両新媒性若しくは親水性モノマー(複数可)又はオリゴマー(複数可)を含む。分散した油相は、重合後に巨大なミクロンサイズのポリマー粒子を形成する、遊離基性エチレン系不飽和疎水性モノマー(複数可)のミクロンサイズの小滴を含む。
【0015】
一般的なミニエマルションの説明は、「エマルション及びミニエマルション重合:安定化、管状反応器及び実際の用途(Emulsion and mini−emulsion polymerization:stabilization,tubular reactor and practical applications)」の主題で、Keltoum OuzinebによりUniversity Claude Bernardに1992年3月30日に提出された化学博士号論文の第一章に記載されている。この方法及び当業者に既知のその他の一般的なミニエマルション方法の条件は、本発明の方法のミニエマルション工程で使用され得る。
【0016】
次の参考文献も、ミニエマルションを調製するための方法の態様を記載するもので、これらの論文の内容は参照として本明細書に組み込まれる:
Mini−emulsion Polym Rev Schork(Adv Polym Sci、175、129頁〜255頁、2005年);
Mini−emulsion Polym Rev、Capek(Adv Polym Sci、155、101頁〜165頁、2001年);
Mini−emulsion Polym Rev、Landfester(Top Curr Chem、277、75頁〜123頁、2003年);
M.Antonietti、K.Landfester、Prog.Polym.Sci.、2002年、27、689頁;及び
J.M.Asua、Prog.Polym.Sci.、2002年、27、1283頁。
【0017】
従来の参考文献は、ミニエマルションの分散した疎水性相での粘着付与剤の導入を示唆するものではなく、実際粘着付与剤及びミニエマルションの両方を安定化することの困難さを考えると、そうしない十分な理由があろう。ミニエマルション方法を使用してPSAに好適な範囲で良好な安定性及びTの両方を有するポリマーを製造することが困難であることはわかっている。
【0018】
本発明は、ミニエマルションが更なる重合に掛けられて、疎水性粒子の表面で親水性ドメインを伴う不均質ポリマー粒子を生み出すミニエマルション重合による粘着化水性分散体の調製方法を提供することにより、従来方法の幾つかの又は全ての問題を解決する。都合良く、多数の分散した粒子は、疎水性コアの周りに実質的に完全な親水性シェルを有する。
【0019】
本発明の好ましい目的は、十分に高いT及び低分子量を持つ疎水性コアドメインを有する不均質粒子の分散体であって、本明細書で確認された問題の幾つか又は全てを解決するPSAを調製するために使用することのできる分散体を提供することである。改善されたPSAを組成することのできるこれらの3つの性質の組合せを最適化することは、従来のエマルション重合を使用すると難しいことはわかっている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
したがって、概ね本発明により、
(I)(a)(i)水、
(ii)少なくとも1つの安定剤、
(iii)少なくとも1つの粘着付与剤、及び
(iv)少なくとも1つのα,β−エチレン系不飽和モノマー
を含む混合物を形成する工程、並びに
(b)工程(a)からの前記混合物に高剪断を適用して、水性連続相及びその中に分散した、約10〜約1000nmの平均直径の安定化小滴を含む本質的に安定なミニエマルションを形成する工程、
(c)前記小滴内の前記モノマー(複数可)を、遊離基開始剤の存在下で重合する工程、
(d)場合により、更なるモノマーを前記分散相に添加する工程、次いで、
(II)工程(I)からの生成物(場合により分散体としての)を種として使用して、その後のエマルション重合で不均質ポリマー粒子の分散体を形成する工程
を含む、ミニエマルション重合による不均質ポリマー粒子の水性分散体を調製するための複数工程方法が提供される。
【0021】
場合により、均質ポリマー粒子(例えば、工程1から形成され、工程IIで使用される)は、工程IIで形成される不均質ポリマー粒子の第一の内部ドメインを実質的に形成し得る第一ポリマーの第一のドメインを含む。
【0022】
場合により、不均質ポリマー粒子(例えば、工程IIから形成される)は、粒子の内側に実質的に配置された(場合により、工程Iからの均質粒子から実質的に形成される)第一ポリマーの第一の内部ドメイン及び粒子の表面に、及び/又はそれに向けて実質的に配置された第二ポリマーの第二の外側ドメインを含む。第二ドメイン(又はシェル)は、第一ドメイン(又はコア)を実質的にカプセル化して、所謂「コア−シェル」構造を形成することができ、又は第二ドメインは、第一ドメインの外側表面上に連続の及び/又は1つ若しくは複数の個々のドメインを含むことができる。便宜上、コア及びシェルと言う用語は、第二の外側ドメインが完全に又は部分的に第一の内部ドメインをカプセル化するか否かに拘わらず、不均質粒子の内部ドメイン及び外側ドメインをそれぞれ参照するために本明細書で使用されることが理解される。
【0023】
本明細書で説明される重合は、バッチ、連続及び/又は半連続方法として実施され得るものであることが認識される。
【0024】
本発明の更なる態様は、本明細書で説明される本発明の方法により得られた及び/又は得ることのできる粒子分散体及び/又はPSAを提供する。
【0025】
都合の良いことに、本発明のPSAは、例えば、粘着付与剤樹脂がミニエマルション方法で疎水性物質として使用される粘着化不均質粒子(例えば、コアシェル構造を有する)を含む。
【0026】
如何なるメカニズムにも拘束されることなく、本願出願人は本発明の不均質粒子が基体に適用されその上にフィルム被膜を形成する場合、フィルムは凝集帯域(粒子シェル中のポリマーから主として形成される)及び散逸帯域(コア中のポリマーから主として形成される)を含む不均質構造を有するものと考える。また、散逸帯域は接着水準を制御するのに寄与し、一方、「凝集」帯域は妥当な水準で剪断力を維持するものと考える。したがって、粘着付与剤樹脂を含む本発明の不均質粒子の分散体は、その中のアクリル系種が架橋することができる十分なゲル含有量を有する連続ポリマーネットワーク及びまた、低分子量の疎水性化合物を含む分散したドメインの両方を含むPSAフィルムを生み出すために乾燥することができる。
【0027】
本発明の方法及び組成物は、最終PSAの凝集性及び接着性の間の最適なバランスを達成する。例えば、シェル及びコアの両方における本発明のポリマー粒子の化学的及び物理的性質は簡単に制御され得る。
【0028】
合成中の粘着付与剤カプセル化は、粒子の2つの明確な型:
(I)改善された接着水準に寄与する低分子量粒子の小さな集団、及び
(II)良好な凝集水準を高める高分子量粒子の大きな集団
を含む二峰性(2つのピーク)分子量分布を示す最終ポリマーを製造することができる。
【0029】
本発明での第二工程の付加は、最終固形分含有量を増加し、架橋して凝集水準を高めることのできる官能基を含むポリマーシェルを形成する利益を有する。
【0030】
好ましくは、実施され得る本発明の方法は、エマルション重合により不均質粒子(コアシェル構造を有するもの等)を製造するために複数工程(本明細書の図で例示されるもの等)である。如何なるメカニズムにも拘束されることなく、少なくとも2つの工程を含む方法を有することの好ましい利益の1つは、内部コアが軟質コポリマー(複数可)(例えば、約−50℃のTを有する)を含み、外側シェルが硬質ポリマー(複数可)(例えば、約0℃〜約30℃のTを持つ)を含むような不均質構造を伴うポリマー粒子を製造することである。場合により、シェルはまた、その上に架橋可能な官能基を有し得る。
【0031】
(安定剤)
本明細書で使用される「安定剤」と言う用語は、本発明で使用される又は本発明の分散体の安定性を増加するために使用されるいずれかの適当な種を表し、「安定剤」と言う用語は、コロイド状安定剤、共安定剤、共疎水性物質、洗剤、分散剤、乳化剤、疎水性物質、界面活性剤、表面活性剤(例えば、液体の表面張力を減少させることにより液体の拡散又は湿潤性を増加するために液体に添加し得るいずれかの物質)、湿潤剤及び/又は先のいずれかに対して同じ若しくは類似の機能を果す同じ若しくは類似の種を参照する、当業者に既知のいずれかのその他の用語等のその他の用語で参照され得るいずれかの種類の1つ又は複数を含む。
【0032】
本発明の好ましい実施形態では、安定剤は、i)少なくとも1つの界面活性剤及び/又はコロイド状安定剤を、ii)少なくとも1つの疎水性共安定剤と一緒に含む。
【0033】
本発明の好ましい方法では、安定剤は、WO04/069879に記載されている両親媒性安定化ポリマー及び/又は疎水性共安定剤並びにこれらのいずれかの混合物のいずれかを含み得る。
【0034】
本発明方法の更なる態様では、安定剤は、1つ又は複数の疎水性共安定剤(複数可)、好ましくは、そのうちの少なくとも1つが反応性である(即ち、本発明方法のその後の重合反応に参加する)疎水性共安定剤を含む。反応性疎水性共安定剤(複数可)は、追加の非反応性疎水性共安定剤(複数可)を伴い又は伴わずに使用することができる。
【0035】
好ましい反応性疎水性共安定剤は、次の1つ又は複数を含む:
疎水性(コ)モノマー、更に好ましくは、アクリレート、最も好ましくは、ステアリルアクリレート及び/又は長鎖(メタ)アクリレート、
マクロモノマー、
疎水性連鎖移動剤、更に好ましくは、ドデシルメルカプタン、オクタデシルメルカプタン及び/又はその他の長鎖メルカプタン、
疎水性開始剤、更に好ましくは、2,5−ジメチル−2−5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン及びその他の長鎖(ヒドロ)ペルオキシド、及び/又はアゾ開始剤並びに/或いはこれらの適当な混合物及び/又は組合せ。
【0036】
役に立つことには、疎水性共安定剤(複数可)は、C12〜14アルカン(特にヘキサデカン)、C12〜14アルコール、C18〜22アクリレート(特に、Norsocryl(商標)A−18−22の商標名でAtofina社から市販されているアクリレートの混合物)及び/又はこれらの混合物から選択される。
【0037】
都合良くは、疎水性(コ)モノマーは、疎水性共安定剤及びα,β−エチレン系不飽和モノマーとして両方で機能するものから選択され得るもので、その場合、そのような疎水性(コ)モノマー(複数可)の量は約70重量%と高いものであることができる。一般的に、疎水性共安定剤は、約0.05重量%〜約40重量%の量で添加され得る。特に、疎水性共安定剤が(コ)モノマーではない場合、共安定剤の量は、好ましくは、約0.1重量%〜約10重量%、更に好ましくは、約0.2重量%〜約8重量%、最も好ましくは、約0.5重量%〜約5重量%である。本明細書で使用される疎水性共安定剤の重量は、本発明方法の工程(a)で調製される混合物の全重量に対して計算される。
【0038】
役に立つことには、本発明方法で使用されるα,β−エチレン系不飽和モノマーは、好ましくは(25℃で、水100g当りの溶解モノマーのグラム数の割合として測定して)約15%未満、更に好ましくは約5%未満、最も好ましくは約3%未満の、水における低い溶解度を有する。
【0039】
好ましいα,β−エチレン系不飽和モノマーは、次のもの並びに/又はこれらの混合物及び組合せの1つ又は複数を含む:
アルキル(メタ)アクリレート、更に好ましくは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート及び/又はラウリルメタクリレート、最も好ましくは、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、エチルアクリレート及び/又は2−エチルヘキシルアクリレート、
重合性芳香族化合物、更に好ましくは、スチレン、最も好ましくは、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン及び/又はt−ブチルスチレン、
重合性ニトリル、更に好ましくは、アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリル、
重合性アミド化合物、
α−オレフィン化合物、例えば、エチレン等、
ビニル化合物、更に好ましくは、ビニルエステル(最も好ましくは、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及び/又は長鎖ビニルエステル同族体)、ビニルエーテル、ハロゲン化ビニル(最も好ましくは塩化ビニル)及び/又はハロゲン化ビニリデン、
ジエン化合物、更に好ましくはブタジエン及び/又はイソプレン、
フッ素及び/又はケイ素原子を含むα,β−エチレン系不飽和モノマー、更に好ましくは、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート及び/又はトリメチルシロキシエチルアクリレート。
【0040】
有利なことには、α,β−エチレン系不飽和モノマーは、スチレン、アクリレート、メタクリレート、ハロゲン化ビニル及びビニリデン、ジエン、ビニルエステル及びこれらの混合物から選択され、更に都合良くは、メチルメタクリレート、スチレン、酢酸ビニル、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ブタジエン及び塩化ビニルから選択される。
【0041】
本発明方法で使用されるα,β−エチレン系不飽和モノマーの量は、本発明方法の工程(a)で調製される混合物の合計重量に対して計算して、一般的に約10重量%〜約70重量%、好ましくは約18重量%〜約60重量%であり得る。
【0042】
本発明方法のなお更なる態様によれば、α,β−エチレン系不飽和モノマー(複数可)に加えて、1つ又は複数の水溶性モノマー(本明細書では第二モノマーとして表示される)が工程(a)中で形成される混合物へ添加され得る。これらの任意選択の第二モノマーは、付加重合を受けることのできるエチレン系不飽和有機化合物を含み得る。好ましい第二モノマーは、約15%より高い水溶解度(25℃で、水100g当りの溶解モノマーのグラム数の割合として測定して)を有する。都合良くは、第二モノマーは、少なくとも1つのα,β−エチレン系不飽和モノマーの存在下でのみ及びそのようなモノマー混合物において少量割合でのみ使用され得る。好ましくは、そのようなモノマー混合物における任意選択の第二モノマーの量は、全モノマー重量に対して約6重量%未満、更に好ましくは、約0.1重量%〜約4重量%、最も好ましくは、約0.1重量%〜約2重量%である。
【0043】
好ましい第二モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、2−スルホエチルメタクリレート及び/又は無水マレイン酸である。本発明方法での第二モノマーの使用は、得られるポリマー分散体から製造される被膜に所望の性質を付与することができる。
【0044】
工程(a)で形成される混合物は、また、pHを変更する1つ又は複数の成分を含み得る。例えば、安定化両親媒性ポリマーがカルボン酸基を含む場合、所望の両親媒性を示すために安定化ポリマーに対して高いpHでミニエマルションを調製し、重合することが必要であり得る。そのようなカルボン酸官能性ポリマーにとって好適なpHの範囲は、両親媒性ポリマーのその他の成分の性質によって約6.0〜約10.0、好ましくは、約7.5〜約10.0であり得る。安定化ポリマーが、スルホン酸、スルフェート、ホスフェート又はホスホネートから得られる酸官能基を含む場合、pHの好適な範囲は約2.0〜約10.0であり得る。
【0045】
pHを調整することのできる化合物としては、アンモニア、アミン(例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノヒドロキシプロパン)、炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム)、重炭酸塩(例えば、重炭酸ナトリウム)、水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム)及び/又は酸化物(例えば、酸化カルシウム)が挙げられ得る。好ましいpH−調整化合物は強塩基であり、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム等)及び/又はアンモニアから場合により選択される。
【0046】
pH−調整化合物は本発明方法の工程(a)中で、好ましくは、両親媒性ポリマーが混合物に添加される前に添加されても良い。
【0047】
本発明方法の各工程は、使用される試薬によって選択されるいずれかの適当な条件下で独立に実施され得る。都合良くは、工程のどれもが、種々の混合物(複数可)及びその中に存在する成分の凝固点及び沸点間のいずれかの好適な温度で実施されても良く、更に都合良くは、約0℃〜約100℃、最も都合良くは、ほぼ周囲温度で実施されても良い。都合良くは、工程は、約0.01〜約100気圧、更に都合良くは、ほぼ大気圧での圧力下で実施されても良い。
【0048】
(粘着付与剤)
粘着付与樹脂は、1つ又は複数の適当な疎水性粘着付与剤(複数可)、例えば、ポリテルペン、ロジン樹脂及び/又は炭化水素樹脂から選択され得る。
【0049】
ロジン粘着付与剤は、例えば、ガムロジン、ウッドロジン及び/又はオイルロジンのような松の木等の天然産源から得ることができる。ロジンは、場合によって、部分的に及び/又は完全に水素化されていても良い。
【0050】
ロジン誘導粘着付与剤の例としては、Foralyn(例えば、Foralyn 90等)、Abalyn(例えば、Abalyn E等)及び/又はPermalyn(例えば、Permalyn 3100等)の商標名でEastman Chemical社から市販されている群が挙げられる。
【0051】
炭化水素粘着付与剤(複数可)としては脂肪族及び芳香族炭化水素樹脂が挙げられ、そのどちらかが水素化されていても良い。炭化水素粘着付与樹脂は、エチレンを形成するために分解ナフサから副生成物として蒸留された画分として得られるモノマー供給原料を重合することにより通常形成される。そのような供給原料は、C炭化水素及び/又はC炭化水素画分を含み得る。C炭化水素画分の成分は、ピペリレン、イソプレン、シクロペンテン(CP)、シクロペンタジエン(CPD)、トランス−1,3−ペンタジエン、シス−1,3−ペンタジエン、2−メチル−2−ブテン、これらの異性体、その他のC炭化水素及び/又はCヒドロカルボ繰り返し単位を持つ炭化水素(例えば、前述のものの2量体、3量体、4量体等、例えば、ジシクロペンタジエン(DCPD))を含み得る。C炭化水素画分は、次のモノマー、即ち、ビニルトルエン、ジシクロペンタジエン、インデン、メチルスチレン、スチレン及び/又はメチルインデンの1つ又は複数を含む樹脂油を含み得る。
【0052】
これらの画分又はこの成分の幾つか又は全ては、本発明の接着剤での使用に適した炭化水素粘着付与剤樹脂へ重合(場合により、カチオン重合で)されるポリマー前駆体(複数可)であり得る。硬質粘着付与剤樹脂の所望の軟化点及び分子量は、供給原料にとって適当な重合条件、例えば、温度、圧力及び触媒(例えば、ルイス酸)等を選択することにより達成することができる。
【0053】
ピペリレン供給原料から形成される脂肪族炭化水素樹脂粘着付与剤の例としては、Piccotacの商標名でEastman Chemical社から市販されている群、例えば、1094−E、1095−N、1100−E及び/又は8095の商標表示で識別されるそれらの製品が挙げられる。
【0054】
その他の樹脂粘着付与剤の例としては、Tacolynの商標名でEastman Chemicals社から市販されている水性分散体の一群の水溶液、例えば、1070の商標表示で識別される製品が挙げられる。
【0055】
樹脂粘着付与剤のなおその他の例としては、例えば、ピネンテルペン樹脂及び/又はテルペンスチレン樹脂、例えば、Dercolyte A115(ピネンテルペン樹脂)及び/又はDercolyte TS105(テルペンスチレン樹脂)の商標名でDRT社から市販されているものなどのテルペン樹脂の群が挙げられる。
【0056】
粘着付与樹脂を形成するために使用されるC炭化水素及び/又はC炭化水素画分の比率は、2つの供給流を一緒に混合して、樹脂中で一定の脂肪族/芳香族バランス(曇点測定で有効に決定することができる)を得ることにより変更することができる。混合脂肪族/芳香族樹脂は、石油誘導及び/又は天然産モノマーの割合を変えることにより作製することができ、一般的にブロックコポリマーである。混合脂肪族/芳香族樹脂粘着付与剤の例としては、Piccoの商標名で、例えば、AR100及びHM100の商標表示で識別されるそれらの製品等及びPiccotacの商標名で、例えば、6095−E、8090−E、8100−J及び/又は9095の商標表示で識別されるそれらの製品等のEastman Chemical社から市販されている群が挙げられる。
【0057】
本発明での使用に適した特に好ましい粘着付与樹脂は、次の商標表示の下で入手できるものである:
Piccotac 1095−N(脂肪族炭化水素樹脂)
Piccotac 6095−E(脂肪族−芳香族炭化水素樹脂)
Dercolyte A115(αピネンテルペン樹脂)及び/又は
Dercolyte TS105(テルペンスチレン樹脂)。
【0058】
本発明方法のなおその他の態様では、工程(a)において、混合物は、両親媒性安定化ポリマー及び水を含む第一プレ混合物と、疎水性共安定剤及びα,β−エチレン系不飽和モノマー(複数可)を含む第二プレ混合物とを混合することにより都合よく形成され得る。
【0059】
第一プレ混合物は、両親媒性安定化ポリマーを水に、好ましくは、約0℃〜約100℃の温度で添加し、次いで、1つ又は複数の任意選択の成分(本明細書に記載されていて、記載されている量で)、例えば、第二の水溶性モノマー(複数可)、pH調整化合物(複数可)及び/又は重合開始剤(複数可)の添加により調製され得る。
【0060】
第一プレ混合物がカルボン酸官能基(複数可)を含む両親媒性安定化ポリマーを使用して調製される場合は、pH調整化合物(複数可)が、第一プレ混合物(i)中の両親媒性ポリマーの溶解度(25℃で測定される)を、少なくとも約1×10−2g/lまで、更に好ましくは、少なくとも約1×10−1g/lまで、最も好ましくは、少なくとも約1g/lまで調整するために添加されても良い。pH調整化合物は、ポリマーが水に対して及び第一プレ混合物のいずれかの任意選択の追加成分に対して添加される前に両親媒性ポリマーへ添加することが好ましい。
【0061】
第二プレ混合物は、所望量の疎水性共安定剤をα,β−エチレン系不飽和モノマー(複数可)に、好ましくは穏やかな撹拌下で添加することにより調製され得る。また、第二プレ混合物を室温で、更に好ましくは、透明な溶液が得られるまで調製することが好ましい。場合により、1つ又は複数の第二の水溶性モノマー(本明細書に記載されている)及び/又は重合開始剤が第二プレ混合物に添加され得る。
【0062】
工程(a)での混合物の形成は、好ましくは、約0℃〜約100℃の温度、好ましくは、ほぼ周囲温度で実施される。
【0063】
好ましくは、本発明方法の工程(b)で、工程(a)の混合物は、約10〜約900nm、更に好ましくは、約50〜約500nm、最も好ましくは、約80〜約450nm、例えば、約100〜約430nmの平均直径を有する安定化小滴を含むミニエマルションが形成されるまで混合される。
【0064】
小滴サイズは、脱イオン水で(又は好ましくは、ミニエマルション中に存在するモノマーで飽和された脱イオン水で)希釈したミニエマルションのサンプルを使用して本明細書で測定された。サンプルの平均小滴直径は、動的光散乱を使用して、例えば、Coulter(商標)N4 Plus又はNicomo 380ZLS装置で15分以内で直接決定された。
【0065】
工程(b)で、混合物は高応力下で混合される。応力は単位面積当りの力として記載される。応力が加えられる1つの方法は剪断によるものである。剪断とは、力が、1つの層又は平面を隣接の層又は平面に対して平行に移動させるようなものを意味する。応力は、また、応力が殆ど全く剪断なしで加えられるような大量の圧縮応力として全ての側面に加えることができる。応力を加える別の方法は、液体内の圧力が十分に低下して蒸発を引き起こす場合に生起するキャビテーションによるものである。蒸気泡の形成及び破裂は短時間で激しく生起し、強烈な応力を生成する。応力を適用する別の方法は超音波エネルギーの使用である。局在化した高剪断を、好ましくは、適度なバルク混合と一緒に生成することのできる装置を使用することが好ましい。更に好ましくは、高剪断混合は、超音波処理、コロイドミル及び/又はホモジナイザーを使用することにより得られる。
【0066】
モノマーミニエマルションは、混合物及びその中に存在する成分の凝固点及び沸点の間のいずれかの温度、好ましくは、約20〜約50℃、更に好ましくは、約25〜約40℃、最も好ましくは、ほぼ周囲温度で有効に形成され得る。
【0067】
本発明方法の工程(b)は、水性連続相並びにα,β−エチレン系不飽和モノマー(複数可)及び疎水性共安定剤を含む小滴の分散相を含む本質的に安定なミニエマルションを生成する。如何なるメカニズムにも拘束されることなく、両親媒性安定化ポリマーの大分(好ましくは実質的に全て)は、分散相及び連続相間の界面に又はその近くに配置され得ることが考えられる。モノマー中の安定化ポリマーの溶解度は、安定化ポリマーが脱プロトン化状態である場合、モノマーの全重量を基準にして、好ましくは約2重量%未満、更に好ましくは、約1重量%未満である。
【0068】
本質的に安定なものとは、エマルション内に分散したモノマー(複数可)が、エマルションが脱安定化して、相が分離するための時間を持ってしまう前に小滴内で重合することができるように十分に長い貯蔵寿命を持つミニエマルションを意味する。本発明方法で得られるミニエマルションは、一般的に、24時間を超え、多くの場合数日を超える貯蔵寿命を有する。
【0069】
本発明方法の工程(c)で、小滴内のモノマー(複数可)は重合される。モノマー(複数可)は、一般的に、遊離基重合条件下で、好ましくは、遊離基開始剤の存在下で重合される。重合開始剤は水溶性又は油溶性化合物のいずれであっても良い。適当な遊離基開始剤は当該技術分野で良く知られていて、(非限定的列挙として)例えば、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、2,5−ジメチル2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン及びジクミルペルオキシド等の有機過酸化物;カリウム、ナトリウム及び/又はアンモニウムペルスルフェート等の無機ペルスルフェート;及びアゾビス−(イソブチロニトリル)(AIBN)及びアゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ開始剤;及び/又はFe2+/H、ROH/Ce4+(ここで、Rは、C1〜6アルキル又はC5〜6アリール等の有機基である)及び/又はK/Fe2+等のレドックス対;t−ブチルヒドロキシペルオキシド(「t−BHP」と略称され、Luperox H70の商標名でArkema社から、又はTrigonox A−W70の商標名でAkzoNobel社から市販されている)、ナトリウムヒドロキシメタンスルフェート(Rongalit C(登録商標)の商標名でBASF社から市販されている);ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(Bruggolite FF−6の商標名でBrueggeman Chemical社から市販されている);例えば、アスコルビン酸及び/又は1つ若しくは複数のビスルファイトと対になったいずれかのものを含む。
【0070】
工程(a)で形成される第一及び/又は第二プレ混合物(複数可)に添加され得る任意選択の重合開始剤(複数可)は、また本明細書に列挙されたものから選択され得る。
【0071】
遊離基開始剤は、工程(b)の後、前及び/又は途中で添加されても良い。任意選択の第一及び第二プレ混合物が工程(a)で調製され、第二プレ混合物中での開始剤の溶解度が第一におけるよりも高い場合、開始剤は、好ましくは、第二プレ混合物に添加される。然しながら、開始剤が第一プレ混合物においてより可溶性であれば、混合物が形成された後の工程(a)の最後で、又は更に好ましくは、工程(b)の最後で得られるミニエマルションに開始剤を添加することが好ましい。
【0072】
本発明の重合工程(c)中で、安定化ポリマーを両親媒性状態に保つためには、本質的にpHが重合中に下がる工程(a)に対して記載されたpH調整化合物を更に添加することが必要であり得る。そのようなpH低下は、ペルスルフェート開始剤(例えば、アンモニウムペルスルフェート)の解離により及び/又は混合物に既に存在するいずれかのpH調整化合物が蒸発すると(例えば、アンモニアが使用されている場合)引き起こされ得る。工程(c)中に添加されるpH調整化合物(複数可)は、工程(a)中で添加されるものと同じでも異なっていても良い。
【0073】
工程(c)の重合は、開始剤の選択によって広い温度範囲にわたり、好ましくは、約20〜約90℃、更に好ましくは、約25〜約80℃、例えば、約70℃で実施され得る。
【0074】
工程(c)の重合は、普通、約10分〜約24時間、更に普通には、約2〜約10時間、最も普通には、約4〜約6時間の間にわたって実施される。
【0075】
本発明は、また、本明細書に記載される本発明方法により得られた及び/又は得ることのできる水性ポリマー分散体(また、本明細書では、ポリマーエマルション、ミニエマルション及び/又はポリマーラテックスとして参照される)、及び/又はそのような分散体から回収可能な(乾燥)ポリマーに関する。
【0076】
本発明の水性ポリマー分散体は、これらが形成されたミニエマルション中の小滴の平均サイズとほぼ同じ平均直径を有するポリマー粒子を含み得る。
【0077】
本発明の好ましいポリマーラテックスは、約10〜約900nm、更に好ましくは、約50〜約500nm、最も好ましくは、約50〜約400nm、例えば、約80〜約350nmの平均直径を有する。
【0078】
本発明の好ましい水性ポリマー分散体は、分散体の約25重量%〜約60重量%、更に好ましくは、約28重量%〜約50重量%の固形分含有量を有する。
【0079】
(モノマー組成物)
場合により、本発明のコア及び/又はシェルポリマーは、(i)少なくとも1つの疎水性モノマー(成分I)、(ii)少なくとも1つの親水性モノマー(成分II)、(iii)少なくとも1つの部分的に親水性のモノマー(成分III)、(iv)場合により、少なくとも1つの式4のモノマー(成分IV)
【化1】


(式中、
Yは陰性基を表し、
はH、OH又は場合によりヒドロキシ置換したC1〜10ヒドロカルボであり、
はH又はC1〜10ヒドロカルボであり、
は、少なくとも1つの活性化不飽和部分で置換されたC1〜10ヒドロカルボ基であり、
Aは、HN及びY部分の両方に結合した2価オルガノ部分を表し、A、NH、C=O及びY部分は、4〜8個の環原子を有する環を一緒に表し、R及びRは前記環上のいずれかの適当な位置に結合されるか、又は
Aは存在せず(即ち、式4は直鎖であり及び/又は分枝されて、複素環式環を含まない)、その場合R及びRはR部分に結合され、
xは1〜4の整数である)を含むモノマー組成物から得られても良い。
【0080】
別途指示されない限り(例えば、成分I内のアリールアリールアルキレンの量)、本明細書に記載される全ての重量は、モノマー(成分I、II、III及びIV)の全重量を基準とした重量割合で与えられる。
【0081】
(成分I)
疎水性モノマー(成分I)は、少なくとも1つの活性化不飽和部分(都合良くは、少なくとも1つの疎水性(メタ)アクリレートモノマー)を含む少なくとも1つの疎水性ポリマー前駆体及び/又はアリールアルキレンポリマー前駆体を含み、都合良くはそれから成っていてもよい。
【0082】
好ましくは、疎水性(メタ)アクリレートはC>4ヒドロカルボ(メタ)アクリレートを含み、都合良くは、C>4ヒドロカルボ部分は、C4〜20ヒドロカルビル、更に都合良くは、C4〜14アルキル、最も都合良くは、C4〜10アルキル、例えば、C4〜8アルキルであり得る。
【0083】
適当な疎水性(メタ)アクリレート(複数可)は、イソオクチルアクリレート、4−メチル−2−ペンチルアクリレート、2−メチルブチルアクリレート、イソアミルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシルアクリレート及び/又はこれらの混合物、特に2−エチルヘキシルアクリレート及び/又はn−ブチルアクリレート、例えば、2−エチルヘキシルアクリレートから選択される。
【0084】
好ましくは、アリールアルキレンは、(場合によりヒドロカルボ置換した)スチレンを含み、都合良くは、この任意選択のヒドロカルボは、C1〜10ヒドロカルビル、更に都合良くは、C1〜4アルキルであり得る。
【0085】
適当なアリールアルキレンモノマーは、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ジメチルスチレン及び/又はこれらの混合物、特にスチレンから選択され得る。
【0086】
アリールアルキレンモノマーは、成分I(全疎水性モノマー)の全重量を基準にして約30重量%まで、好ましくは、約1重量%〜約20重量%、更に好ましくは、約5重量%〜約15重量%で成分Iに存在し得る。
【0087】
現に好ましい成分Iは、2−エチルヘキシルアクリレート及び/又はn−ブチルアクリレートとスチレンとの混合物、更に好ましくは、2−エチルヘキシルアクリレート及びスチレンの混合物である。
【0088】
成分Iは、約70重量%〜約90重量%、好ましくは、約75重量%〜約85重量%の合計量で存在し得る。
【0089】
(成分II)
成分IIの適当な親水性ポリマー前駆体は、成分Iの疎水性ポリマー前駆体(複数可)と共重合することができ、水溶性であるものである。都合良くは、少なくとも1つの疎水性ポリマー前駆体は少なくとも1つの活性化不飽和部分を含み得る。
【0090】
好ましい親水性モノマーは、少なくとも1つのエチレン系不飽和カルボン酸を含み、都合良くは、それから成る。更に好ましい酸は、1つのエチレン系基及び1つ又は2つのカルボキシ基を有する。最も好ましい酸(複数可)は、アクリル酸(及びこのオリゴマー)、ベータカルボキシエチルアクリレート、シトラコン酸、クロトン酸、フマール酸、イタコン酸、マレイン酸、メタクリル酸及びこれらの混合物から成る群から選択され、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ベータカルボキシエチルアクリレート及びこれらの混合物である。
【0091】
現に好ましい成分IIは、ベータカルボキシエチルアクリレート及びアクリル酸の混合物である。
【0092】
成分IIは、少なくとも約1重量%、好ましくは、約2重量%〜約10重量%、更に好ましくは、約3重量%〜約9重量%、最も好ましくは、約4重量%〜約8重量%の合計量で存在し得る。
【0093】
(成分III)
成分IIIの部分的に親水性のポリマー前駆体(複数可)は、また、部分的に水溶性のモノマーと称されても良く、都合良くは、少なくとも1つの活性化不飽和部分を含み得る。
【0094】
好ましい部分的に親水性のモノマーは、少なくとも1つのC1〜2アルキル(メタ)アクリレートを含み、都合良くは、それから成る。更に好ましい部分的に親水性のモノマーは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート及びこれらの混合物から成る群から選択され、最も好ましくは、エチルアクリレート、メチルメタクリレート及びこれらの混合物、例えば、エチルアクリレートである。
【0095】
現に好ましい成分IIIはエチルアクリレートである。
【0096】
成分IIは、10重量%まで、好ましくは、約0.1重量%〜約5重量%、更に好ましくは、約0.1重量%〜約3重量%、最も好ましくは、約0.5重量%〜約2.5重量%の合計量で存在し得る。
【0097】
(成分IV)
成分IVは、本明細書で定義されている式4の少なくとも1つのモノマーを含み、都合良くは、それから成る。
【0098】
(式4)
式4の環部分(複数可)はそれぞれRに結合し、式4で、xが2、3又は4である場合、Rは多価(xの値による)である。xが1でない場合、R及びYは、各環において同じか異なる部分をそれぞれ表し、好ましくは、各環において同じそれぞれの部分を表す。R及びRは、環上のいずれかの適当な位置で結合され得る。
【0099】
式4の好ましいモノマーは、
Aが場合により置換した2価C1〜5ヒドロカルビレンを表し、
Yが2価NR’(ここで、R’は、H、OH、場合によりヒドロキシ置換したC1〜10ヒドロカルボ又はRである)又は2価Oであるものを含み、都合良くは、それから成り、
式4の更に好ましいモノマーは、
xが1又は2であり、
YがNRであり(即ち、式1が、環窒素を介してRに結合する場合)、
Aが2価C1〜3ヒドロカルビレンを表し、
がHであり、
がC1〜10ヒドロカルボであり、
が(メタ)アクリルオキシヒドロカルボ基又はこの誘導体(例えば、無水マレイン酸)であるものを含み、
式4の最も好ましいモノマーは、
xが1又は2であり、式1における(場合により繰り返す)単位が式6
【化2】


(式中、星印は式6のRへの結合の位置(好ましくは環窒素を介する環上のいずれかの適当な位置であり得る)を表し、
はH又はC1〜8ヒドロカルビルであり、
は(メタ)アクリルオキシC1〜10ヒドロカルボ基を含む)で表されるものを含む。
【0100】
式4の更に好ましいモノマーは、
【化3】


(式中、RはH又はC1〜6アルキルであり、Lは適当な2価オルガノ結合基(例えば、C1〜10ヒドロカルビレン等、例えば、C1〜6アルキレン)である)を含む。
【0101】
式4の更に好適なウレド(uredo)モノマーは、「ラテックス塗料での使用のための新規な湿潤接着モノマー(Novel wet adhesion monomers for use in latex paints)」Singh et al.、Progress in Organic Coatings、34(1998年)、214頁〜219頁(特に2.2及2.3節を参照されたい)及びEP0629672(National Starch)に記載されていて、これらは共に参照として本明細書に組み込まれる。
【0102】
式4のモノマーの例は、
【化4】


(式中、nは1〜4である)(Atofina社から、Sipomer(登録商標)WAM IIの商標名で市販されている)及びこれらの適当な混合物から選択される。
【0103】
本発明の同じ及び/又は別の実施形態では、その開示が参照として本明細書に組み込まれるUS6,166,220(Cytec Technology Corporation)に記載されているモノマーは、成分IV及び/又は本明細書の式4の全部若しくは一部を構成するために使用され及び/又は本発明の組成物に導入され得る。好ましくは、そのようなモノマーは、US6,166,220の第2欄25行の式:B(C=O)Y(C=O)A(ここで、B、Y及びAはそこで説明されている通りである)で表される。そのようなモノマーは、Cylink(登録商標)の登録商標でCytec社から商業的に入手可能であり得る。適当なそのようなモノマーの例は、次の商標表示:Cylink(登録商標)NMA及び/又はNMA−LF(自己架橋モノマー)、Cylink(登録商標)IBMA(Cylink(登録商標)NMAのイソブトキシ誘導体)、Cylink(登録商標)MBA、Cylink(登録商標)NBMA、Cylink(登録商標)TAC及び/又はCylink(登録商標)C4(湿潤接着モノマー)の下で入手できるものである。
【0104】
都合良くは、成分IVは式1の実質的に純粋な化合物(又は化合物の混合物)として使用され得、又は適当な溶剤、例えば、適当な(メタ)アクリレート若しくはアクリル系誘導体、例えばメチルメタクリレート等に溶解され得る。場合により、そのような溶液は、約50重量%〜約75重量%の成分IVを含み得る。
【0105】
成分IVは、少なくとも約0.1重量%、好ましくは、約0.1重量%〜約2.0重量%、更に好ましくは、約0.2重量%〜約1.0重量%、最も好ましくは、約0.3重量%〜約0.6重量%の合計量で存在し得る。
【0106】
(活性化不飽和部分)
「活性化不飽和部分」と言う用語は、少なくとも1つの活性化部分に化学的に近接している少なくとも1つの不飽和炭素対炭素二重結合を含む種を表すために本明細書で(例えば、式4のRに対して)使用される。好ましくは、活性化部分は、適当な求電子基でそこに付加するためにエチレン系不飽和二重結合を活性化するいずれかの基を含む。都合良くは、活性化部分は、オキシ、チオ、(場合によりオルガノ置換した)アミノ、チオカルボニル及び/又はカルボニル基(後の2つの基は、チオ、オキシ又は(場合によりオルガノ置換した)アミノで場合により置換されている)を含む。更に都合の良い活性化部分は、(チオ)エーテル、(チオ)エステル及び/又は(チオ)アミド部分(複数可)である。最も都合の良い「活性化不飽和部分」は、1つ若しくは複数の「ヒドロカルビリデニル(チオ)カルボニル(チオ)オキシ」及び/又は1つ若しくは複数の「ヒドロカルビリデニル(チオ)カルボニル(オルガノ)アミノ」基及び/又は類似体及び/又は誘導部分、例えば、(メタ)アクリレート官能基及び/又はこの誘導体を含む部分を含むオルガノ種を表す「不飽和エステル部分」を含む。「不飽和エステル部分」は、場合により置換した総称的α,β−不飽和酸、エステル及び/又は、チオ誘導体及びこの類似体を含むその他のこれらの誘導体を場合により含み得る。
【0107】
好ましい活性化不飽和部分は、式5の基
【化5】


(式中、n’は0又は1であり、Xはオキシ又はチオであり、Xはオキシ、チオ又はNR17であり(ここで、R17は、H又は場合により置換したオルガノを表す)、R13、R14、R15及びR16は、それぞれ独立に、式1の別の部分に対する結合、H、任意選択の置換基及び/又は場合により置換したオルガノ基を表し、場合により、R13、R14、R15及びR16のいずれかは結合して環を形成し得る(ここで、R13、R14、R15及びR16の少なくとも1つは結合である))で表されるもの並びに全ての適当なこの異性体、同じ種でのこの組合せ及び/又はこの混合物である。
【0108】
本明細書における「活性化不飽和部分」、「不飽和エステル部分」と言う用語及び/又は式5は、本明細書の式の一部を表し、本明細書で使用されるこれらの用語は、この部分が式における配置次第で、1価又は多価(例えば、2価)であり得る基部分を表す。したがって、例えば、式4において、R13、R14、R15及びR16の少なくとも1つは単独共有結合を表す、即ち、式5が式4の残部へ結合される場合を表すことが理解される。
【0109】
式5の更に好ましい部分(異性体及びこの混合物を含む)は、n’が1であり、XがOであり、XがO、S又はNRであるものである。
【0110】
13、R14、R15及びR16は、独立に、結合、H、任意選択の置換基及び場合により置換したC1〜10ヒドロカルボから選択され、場合により、R15及びR16は結合して、(これらが結合する部分と一緒になって)環を形成し得るものであり、存在するR17は、H及び場合により置換したC1〜10ヒドロカルボから選択される。
【0111】
最も好ましくは、n’は1であり、XがOであり、XがO又はSであり、R13、R14、R15及びR16が、独立に、結合、H、ヒドロキシ及び/又は場合により置換したC1〜6ヒドロカルビルである。
【0112】
例えば、n’は1であり、X及びXは共にOであり、R、R、R及びRは、独立に、結合、H、OH及び/又はC1〜4アルキルであり、又は場合により、R及びRは、式5が環状無水物を表すように2価C0〜4アルキレンカルボニルC0〜4アルキレン部分を一緒に形成し得る(例えば、R15及びR16が共にカルボニルである場合、式5は無水マレイン酸又はこの誘導体を表す)。
【0113】
n’が1であり、X及びXは共にOであり、(R13及びR14)の1つがHであり、またR13がHである場合の式5の部分に対して、式5は、アクリレート(R13及びR14が共にHである場合)及びこの誘導体(R13及びR14のいずれかがHではない場合)を含むアクリレート部分を表す。同様に、(R13及びR14)の1つがHであり、また、R15がCHである場合、式5は、メタクリレート(R13及びR14が共にHである場合)及びこの誘導体(R13及びR14のいずれかがHではない場合)を含むメタクリレート部分を表す。式5のアクリレート及び/又はメタクリレート部分は特に好ましい。
【0114】
式5の都合の良い部分は、n’が1であり、X及びXは共にOであり、R13及びR14が、独立に、結合、H、CH又はOHであり、R15がH又はCHであり、R16がHであり、又はR15及びR16が一緒に2価C=O基であるものである。
【0115】
式5の更に都合の良い部分は、n’が1であり、X及びXは共にOであり、R13がOHであり、RがCHであり、R15がHであり、Rが結合であるもの及び/又はこの互変異性体(例えば、アセトアセトキシ官能種の)である。
【0116】
最も都合の良い不飽和エステル部分は、−OCO−CH=CH、−OCO−C(CH)=CH、アセトアセトキシ、−OCOCH=C(CH)(OH)及びこれらの全ての好適な互変異性体から選択される。
【0117】
その他の反応性部分などの式5で表されるいずれかの適当な部分は、本発明の文脈において使用できることが理解される。
【0118】
(一般)
本明細書で使用される「任意選択の置換基」及び/又は「場合により置換した」と言う用語は、(その他の置換基の列挙がその後に続かない限り)次の基(又はこれらの基による置換)の1つ又は複数を表す:カルボキシ、スルホ、ホルミル、ヒドロキシ、アミノ、イミノ、ニトリロ、メルカプト、シアノ、ニトロ、メチル、メトキシ及び/又はこれらの組合せ。これらの任意選択の基は、前述の基の複数(好ましくは2つ)の、同じ部分における化学的に可能な全ての組合せ(例えば、互いに直接結合した場合にアミノ及びスルホニルはスルファモイル基を表す)を含む。好ましい任意選択の置換基としては、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、メルカプト、シアノ、メチル、ハロ、トリハロメチル及び/又はメトキシが挙げられる。
【0119】
本明細書で使用される同義語の「有機置換基」及び「有機基」(また、本明細書では「オルガノ」と略称される)は、1つ又は複数の炭素原子及び場合により1つ又は複数のその他のヘテロ原子を含むいずれかの1価又は多価部分(1つ又は複数のその他の部分に場合により結合している)を表す。有機基は、炭素を含む1価基、したがって、有機であるが、炭素以外の原子においてこれらの自由原子価を有する1価基(例えば、オルガノチオ基)を含むオルガノヘテリル基(また、オルガノエレメント基としても知られている)を含み得る。有機基は、代替的に又は付加的に、官能性のタイプに関係なく、炭素原子において1つの自由原子価を有するいずれかの有機置換基を含むオルガニル基を含み得る。有機基は、また、複素環式化合物(環員原子として、少なくとも2つの異なる元素、この場合1つは炭素を有する環状化合物)のいずれかの環原子から水素原子を除去することにより形成される1価基を含むヘテロシクリル基を含み得る。好ましくは、有機基における非炭素原子は、水素、ハロ、リン、窒素、酸素、ケイ素及び/又は硫黄から、更に好ましくは、水素、窒素、酸素、リン及び/又は硫黄から選択され得る。都合の良いリン含有基は、ホスホニル(即ち、−PR基(ここで、Rは、独立に、H又はヒドロカルビルを表す))、ホスフィン酸基(複数可)(即ち、−P(=O)(OH)基)及びホスホン酸基(複数可)(即ち、−P(=O)(OH)基)を含み得る。
【0120】
最も好ましい有機基は、次の炭素含有部分の1つ又は複数を含む:アルキル、アルコキシ、アルカノイル、カルボキシ、カルボニル、ホルミル及び/又はこれらの組合せ、場合により、次のヘテロ原子含有部分の1つ又は複数との組合せで:オキシ、チオ、スルフィニル、スルホニル、アミノ、イミノ、ニトリロ及び/又はこれらの組合せ。有機基は、前述の炭素含有及び/又はヘテロ原子部分の複数(好ましくは2つ)の同じ部分において化学的に可能な全ての組合せ(例えば、互いに直接結合した場合にアルコキシカルボニル基を表すアルコキシ及びカルボニル)を含む。
【0121】
本明細書で使用される「ヒドロカルボ基」と言う用語は有機基の下位基であり、1つ又は複数の水素原子及び1つ又は複数の炭素原子から成るいずれかの1価又は多価部分(場合により、1つ又は複数のその他の部分に結合している)を表し、1つ又は複数の飽和、不飽和及び/又は芳香族部分を含み得る。ヒドロカルボ基は、次の基の1つ又は複数を含み得る。ヒドロカルビル基は、炭化水素から水素原子を除去することにより形成される1価基(例えば、アルキル)を含む。ヒドロカルビレン基は、炭化水素から2つの水素原子を除去することにより形成される2価基を含み、その自由原子価は二重結合に関与しない(例えば、アルキレン)。ヒドロカルビリデン基は、炭化水素の同じ炭素原子から2つの水素原子を除去することにより形成される2価基(「RC=」で表され得る)を含み、その自由原子価は二重結合に関与する(例えば、アルキリデン)。ヒドロカルビリジン基は、炭化水素の同じ炭素原子から3つの水素原子を除去することにより形成される3価基(「RC≡」で表され得る)を含み、その自由原子価は三重結合に関与する(例えば、アルキリジン)。ヒドロカルボ基は、また、飽和炭素対炭素単結合(例えば、アルキル基における)、不飽和二重及び/又は三重炭素対炭素結合(例えば、それぞれに、アルケニル及びアルキニル基における)、芳香族基(例えば、アリール基における)及び/又は同じ部分内でこれらの組合せを含むことができ、指示される場合はその他の官能基で置換され得る。
【0122】
本明細書で使用される「アルキル」と言う用語又はその均等物(例えば、「アルク」)は、適切な場合には及び文脈が別途明確に指示しない限り、本明細書に記載されているもの(例えば、二重結合、三重結合、芳香族部分(例えば、それぞれに、アルケニル、アルキニル及び/又はアリール等)を含む)及び/又はこれらの組合せ(例えば、アラルキル)並びに2つ以上の部分を結合しているいずれかの多価ヒドロカルボ種(例えば、2価ヒドロカルビレン基等、例えば、アルキレン)等のいずれかのその他のヒドロカルボ基を包含する用語により容易に置換えられ得る。
【0123】
本明細書で言及されている(例えば、置換基として)ラジカル基又は部分はいずれも、別途言及されるか又は文脈が別途明確に指示しない限り、多価又は1価ラジカルであり得る(例えば、2つのその他の部分を結合している2価ヒドロカルビレン部分)。然しながら、本明細書で指示される場合はそのような1価又は多価基は、なおまた、任意選択の置換基を含み得る。3個以上の原子の鎖を含む基は、鎖が全体に又は部分的に直鎖、分枝であり及び/又は環(スピロ及び/又は結合環を含む)を形成し得る基を表す。或る原子の合計数は或る置換基、例えば、C1〜Nオルガノに対して特定され、1〜N個の炭素原子を含むオルガノ部分を表す。本明細書の式のいずれにおいても、1つ又は複数の置換基が部分においていずれかの特定の原子に結合していることが示されていない場合(例えば、鎖及び/又は環に沿う特定の位置に)、置換基はいずれかのHを置換え得るし、及び/又は化学的に適当な及び/又は有効な部分上のいずれかの利用可能な位置に配置され得る。
【0124】
好ましくは、本明細書に列挙されるオルガノ基のいずれもが、1〜36個の炭素原子、更に好ましくは、1〜18個の炭素原子を含む。オルガノ基中の炭素原子の数は1〜12、特に1〜10まで、例えば、1〜4個の炭素原子であることが特に好ましい。
【0125】
本明細書に記載されている式及び部分の幾つかは、例えば、適当な非置換又は置換アルキレン基、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン及びイソブチレン等を含むことのできる、ポリヘテロ−オルガノ、好ましくは、ポリオキシヒドロカルビレン、更に好ましくは、ポリオキシアルキレン繰り返し単位を含む。この文脈で、複数繰り返し単位と言う用語は、本明細書で説明され、表示されているそのような部分が、ホモ−、ブロック及び/又はランダムポリマー部分及び/又はこれらのいずれかの適当な混合物を表すために1回及び/又は複数回発生する同じ及び/又は異なる繰り返し単位を含み得る。
【0126】
本明細書で使用される、括弧付で与えられる特徴、例えば、(アルキル)アクリレート、(メタ)アクリレート及び/又は(コ)ポリマー等を含む化学用語(特に同定された化合物のためのIUAPC名以外)は、括弧内の部分が文脈が指示する通り任意選択的であることを表し、例えば、(メタ)アクリレートという用語はメタクリレート及びアクリレートの両方を表す。
【0127】
本明細書に記載される本発明の一部又は全部に含まれる及び/又は使用される或る部分、種、基、繰り返し単位、化合物、オリゴマー、ポリマー、材料、混合物、組成物及び/又は配合物は、1つ又は複数の異なる形態、例えば、次の不完全な列挙の中のもの等のいずれかとして存在し得る:立体異性体(例えば、光学異性体(例えば、E及び/又はZ形態)、ジアステレオマー及び/又は幾何異性体等)、互変異性体(例えば、ケト及び/又はエノール形態)、コンフォーマー、塩、双極性イオン、錯体(例えば、キレート、クラスレート、クラウン化合物、シプタンド/クリプテード、包含化合物、挿入化合物、格子間化合物、リガンド錯体、有機金属錯体、非化学量論的錯体、п−アダクト、溶媒和物及び/又は水和物)、同位体的に置換した形態、ポリマー配列[例えば、ホモ又はコポリマー、ランダム、グラフト及び/又はブロックポリマー、直鎖及び/又は分枝ポリマー(例えば、星形及び/又は側鎖分枝)、架橋及び/又はネットワークポリマー、2価及び/又は3価繰り返し単位から得ることのできるポリマー、デンドリマー、異なる立体規則性のポリマー(例えば、アイソタクチック、シンジオタクチック又はアタクチックポリマー)等]、多形体(例えば、格子間形態、結晶形態及び/又は無定形形態等)、異なる相、固溶体、並びに/又はこれらの組合せ及び/又は可能な場合のこれらの混合物。本発明は、本明細書で定義されているように有効である全てのそのような形態を含み及び/又は使用する。
【0128】
本発明のポリマーは、有機及び/又は無機であって、本明細書で示されているように直接結合(複数可)を介してポリマー前駆体又は各ポリマー前駆体(複数可)と別のものとの鎖延長及び/又は架橋を与える為にポリマー前駆体又は各ポリマー前駆体(複数可)と結合を形成することのできる部分を含む、いずれかの適当な(コ)モノマー(複数可)、(コ)ポリマー(複数可)[ホモポリマー(複数可)を含む]及びこれらの混合物を含み得る、1つ又は複数の適当なポリマー前駆体(複数可)により調製され得る。
【0129】
本発明のポリマー前駆体は、適当な重合可能な官能基を有する1つ又は複数のモノマー(複数可)、オリゴマー(複数可)、ポリマー(複数可)、これらの混合物及び/又はこれらの組合せを含み得る。
【0130】
モノマーは、重合することのできる低分子量(例えば、1000ダルトン未満)の実質的に単分散系化合物である。
【0131】
ポリマーは、重合方法により調製される大きな分子量(例えば、何千のダルトン)の巨大分子の多分散系混合物であり、巨大分子は、小さな単位(それ自体がモノマー、オリゴマー及び/又はポリマーであり得る)の複数繰り返しを含み、(性質が微細な分子構造に決定的に依存しない限り)1つ又は幾つかのこの単位の付加又は除去は巨大分子の性質に極僅かな影響を有する。
【0132】
オリゴマーは、モノマー及びポリマーとの間の中間的分子量を有する分子の多分散系混合物であり、分子は小さな複数のモノマー単位を含み、そのモノマー単位のうちの1つ又は幾つかの除去は分子の性質を著しく変化させる。
【0133】
文脈によって、ポリマーと言う用語はオリゴマーを包含してもしなくても良い。
【0134】
本発明のポリマー前駆体及び/又は本発明で使用されるポリマー前駆体は、直接合成により又は(ポリマー前駆体がそれ自体重合性である場合は)重合により調製され得る。重合性ポリマーが、それ自体、本発明のポリマー前駆体及び/又は本発明で使用されるポリマー前駆体として使用される場合、そのようなポリマー前駆体は、副反応、副生成物の数及び/又はこのポリマー前駆体から形成されるいずれかのポリマー物質における多分散性を最小にするために、低い多分散性を有し、更に好ましくは、実質的に単分散系であることが好ましい。ポリマー前駆体(複数可)は標準温度及び標準圧力で実質的に非反応性であり得る。
【0135】
本明細書で示されている場合を除いて、本発明のポリマー及び/又は重合性ポリマー前駆体及び/又は本発明で使用されるポリマー及び/又は重合性ポリマー前駆体は、当業者に良く知られているいずれかの適当な重合手段で(共)重合することができる。適当な方法の例としては、熱的開始、適当な作用剤を添加することによる化学的開始、触媒及び/又は任意選択の開始剤の使用と、その後の照射、例えば、UV等の適当な波長での電磁放射線(光化学的開始)及び/又はその他のタイプの放射線、例えば、電子ビーム、α粒子、中性子及び/又はその他の粒子等による開始が挙げられる。
【0136】
ポリマー及び/又はオリゴマーの繰り返し単位上の置換基は、本明細書に記載されている使用のためにこれらがその中に組成され及び/又は導入され得る材料とポリマー及び/又は樹脂との相溶性を改善するために選択され得る。したがって、置換基のサイズ及び長さは、樹脂との物理的交絡又は内部配置を最適化するために選択され得るか、又はこれらは、必要に応じてそのようなその他の樹脂と化学的に反応し及び/又は架橋することのできるその他の反応性構成要素を含んでも含まなくても良い。
【0137】
(粒径)
本願出願人は、驚くべきことに、本発明のPSAが、水白化抵抗性にとって必要であると以前に考えられていたものよりも大きい粒径で作製することができ、このPSAが水白化に対して適当な抵抗性をなお維持することを見出した。大きな粒径を使用することで方法の利益が存在し(例えば、減少した粘度)、したがって本発明の好ましい実施形態では、PSAの粒径は100nmを超え、都合良くは、約100nm〜約400nm、更に都合良くは、約200nm〜約300nmである。本明細書における粒径は、光走査等のいずれかの適当な方法により測定され得る数平均である。
【0138】
(その他の成分)
本発明の組成物において、重合のために選択される安定剤は、環境の理由のために望ましくないアルキルフェノールエトキシレート(APEO)が実質的にないものである。更に安定な操作条件は、安定なプレエマルション及び最終ポリマーエマルションにおける低ポリマーグリット及び被膜として適用された場合のPSAの良好な水白化抵抗性を伴って更に達成される。
【0139】
本発明の最終エマルションは、一定の剪断速度範囲下で剪断安定である。例えば、150,000s−1の高剪断場(Haake)に掛けた場合、ラテックスは安定したままである。剪断安定性は、分散体のコロイド安定性及びレオロジーを更に制御するために、接着剤の所望の性質に悪影響を及ぼさない更に適当な添加剤(例えば、追加の安定剤、消泡剤及び/又はレオロジー変性剤等)を選択することによりなお更に増加することができる。
【0140】
本発明の方法(複数可)は、また、少なくとも1つの水溶性重合開始剤を利用する。アクリレートモノマーのエマルション重合のために通常許容されるいずれかの通常の水溶性重合開始剤は使用され得るし、そのような重合開始剤は当該技術分野で良く知られている。水溶性重合開始剤の一般的濃度は、プレエマルションに投入されたモノマーの全重量の約0.01重量%〜約1重量%、好ましくは、約0.01重量%〜約0.5重量%である。水溶性重合開始剤は単独で使用することができ、又は1つ若しくは複数の通常の還元剤、例えば、ビスルファイト、メタビスルファイト、アスコルビン酸、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、硫酸第一鉄、硫酸アンモニウム第一鉄、エチレンジアミン四酢酸第二鉄等との組合せで使用することができる。本発明で使用することのできる水溶性重合開始剤としては、水溶性過硫酸塩、過酸化物、アゾ化合物等及びこれらの混合物が挙げられる。水溶性開始剤の例としては、過硫酸塩(例えば、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウム)、過酸化物(例えば、過酸化水素及びt−ブチルヒドロペルオキシド)及びアゾ化合物(例えば、4,4’−アゾビス(4−シアノ−ペンタン酸)、Wako Chemicals社のV−501)が挙げられるがこれらに限定されない。現に好ましい水溶性重合開始剤は過硫酸塩、特に過硫酸カリウム又は過硫酸ナトリウムである。
【0141】
水、モノマー及び重合開始剤の混合物に添加される水溶性又は水分散性安定剤の量は、本明細書に記載される平均粒径を有する分子を有するラテックスエマルションを製造するのに有効なその量である。必要とされる粒径を得るために必要とされる有効量は、撹拌(剪断)、粘度等を含めて、粒径に影響を持つ当該技術分野で知られている操作条件に依存する。残りの安定剤は、重合の開始時に、プレエマルションを形成するために、重合中に及び/又はモノマーと一緒にバッチで添加することができる。
【0142】
重合は、当業者に既知のいずれかの通常の方法、例えば、加熱又は放射線の適用等により開始することができ、加熱が好ましい。開始の方法は、使用される水溶性重合開始剤に依存するもので、当業者には容易に明らかである。
【0143】
水溶性重合開始剤は、当業者に既知のいずれかの通常の方法で重合反応に添加することができる。開始剤の一部を、水、水溶性又は水分散性安定剤の有効量及び重合開始剤の初期量を含む初期反応器投入量に添加することが現に好ましい。開始剤の残りはエマルション重合中に連続して又は漸進的に添加することができる。残りの開始剤を漸進的に添加することが現に好ましい。
【0144】
重合に続いて、ラテックスエマルションのpHは、ラテックスエマルションを、好ましくは、約5.5〜約9、更に好ましくは、約6.5〜約8、最も好ましくは、約7〜約8までpHを上げるのに必要な量の適当な塩基と接触させることにより調整される。ラテックスエマルションのpHを調整するための適当な塩基の例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、水酸化アンモニウム、アミン等及びこれらの混合物が挙げられる。本発明での使用にとって現に好ましい塩基は水酸化アンモニウムである。
【0145】
重合反応は、エマルション重合のできるいずれかの通常の反応容器で実施することができる。重合は、エマルション重合にとって一般的な温度で実施することができる。重合は、好ましくは、約50℃〜約95℃の範囲、好ましくは、約60℃〜約85℃の範囲の温度で実施される。
【0146】
重合時間は、その他の反応条件、例えば、温度条件及び反応成分、例えば、モノマー、開始剤等に基づく所望の転換率を達成するのに必要とされるその時間である。重合時間は当業者には容易に明らかである。
【0147】
本発明の多数のその他の変形実施形態は当業者には明らかであり、そのような変形は本発明の広い範囲内で考えられる。
【0148】
文脈が別途明確に指示しない限り、本明細書で使用される本明細書における用語の複数形は単数形を含み、逆もまた同様であるものと解釈されるべきである。
【0149】
本明細書で使用される「含む」と言う用語は、それに続く列挙が非網羅的であり、いずれかのその他の追加の適当な項目、例えば、必要に応じて1つ又は複数の特徴(複数可)、構成成分(複数可)、成分(複数可)及び/又は置換基(複数可)を含んでも含まなくても良いことを意味することが理解される。
【0150】
「有効な」、「許容される」、「活性な」及び/又は「適当な」と言う用語(例えば、本発明の及び/又は必要に応じて本明細書に記載されているいずれかの工程、使用、方法、用途、調製、生成物、材料、配合物、化合物、モノマー、オリゴマー、ポリマー前駆体及び/又はポリマーを参照する)は、正確な方法で使用された場合、本明細書に記載されているような有効性のものとなるようにこれらが添加され及び/又は導入されるものにとって、必要とされる性質を与える本発明のそれらの特徴を参照するためのものと理解される。そのような有効性は、例えば、材料が前述の使用にとって必要とされる性質を有する場合は直接的であり得るし及び/又は例えば、材料が合成中間体として及び/又は直接有効性のその他の材料を調製する際の診断手段としての使用を有する場合は間接的であり得る。本明細書で使用されるこれらの用語は、また、官能基が、有効な、許容される、活性な及び/又は適当な最終生成物を製造することに適合することを示す。
【0151】
本発明の広範囲のその他の実施形態は、PSAで望ましい最終の性質によって調製され得ることが理解される。例えば、次のパラメータは合成中に変動され得る:
コアポリマーの分子量分布(MWD)の変動はシェルポリマーのMWDを場合により一定に保つ又は逆もまた同様(コアポリマーのMWDを変動することはシェルポリマーのMWDを場合により一定に保つ)
シェルポリマー(複数可)のガラス転移温度(T)の変動はコアポリマー(複数可)のTを場合により一定に保つ。
【0152】
本発明の更なる態様は特許請求の範囲で与えられる。
【0153】
本発明は次の非限定的図により例示される。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】エマルション重合により不均質粒子(コアシェル構造を有するもの等)を製造するための本発明方法の1つの実施形態の第一段階を概略的に例示する図である。
【図2】本発明方法の1つの実施形態の第二段階(図1で示される第一段階に続く)を例示する図である。
【図3】本発明方法の1つの実施形態の最終の第三段階(図2で示される第二段階に続く)を例示する図である。
【図4】図1〜3で示された重合により調製されたポリマーから製造された粘着化PSAの構造を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0155】
図1では次の標示が使用される:「1」は、開始剤を含む容器を全体的に表し、「3」は種及び水を含む容器を一般的に表し、「5」は、コアモノマー、安定剤及び水を含む容器を一般的に表す。
【0156】
図2では次の標示が使用される:「7」は、開始剤(図1の「1」と同じであり得る)を含む容器を一般的に表し、「9」は、シェルモノマー、安定剤及び水を含む容器を全体的に表す。
【0157】
図3では次の標示が使用される:「11」は、モノマー追い出し成分を含む容器を全体的に表す。
【0158】
図4では次の標示が使用される:「13」は架橋種を含むPSAフィルムの「シェル」凝集帯域を一般的に表し、「15」は、粘着付与剤樹脂及びアクリル系コポリマーのハイブリッドポリマーを含むフィルム中の「コア」散逸帯域を全体的に表す。
【実施例】
【0159】
本発明は、次の非限定的実施例及び例示目的だけの標準的方法(複数可)を参照して詳細に説明される。
【0160】
種々の登録商標、その他の表示及び/又は略称は、本発明のポリマー及び組成物を調製するために使用される幾つかの成分を表すために本明細書で使用される。これらは、化学名及び/又は商標名及び場合によりこれらを入手することのできる製造業者又は販売業者により下記の表で確認される。然しながら、本明細書に記載された材料の化学名及び/又は販売業者が分からない場合、それは、例えば、「マカッチャンの乳化剤及び洗剤(McCutcheon’s Emulsifiers and Detergents)」、Rock Road、Glen Rock、N.J.07452−1700、USA、1997年及び/又はHawley’s Condensed Chemical Dictionary(14th Edition) by Lewis、Richard J.、Sr.;John Wiley & Sonsで簡単に見付けられ得る。
【0161】
「AA」はアクリル酸(CH=CHCOH)を表す。
「Acticide MBS」(また、本明細書では「MBS」として知られている)は、活性成分の2−メチル−2H−イソチアゾリン−3−オン1,2−ベンズイソチアゾリン−3(2H)−オンを含む、Thor GmbH社の殺生剤の商標名である。
「B3MP」は、連鎖移動剤のトリブチルメルカプトプロピオネートを表す。
「BA」はアクリル酸ブチルを表す。
「CEA」は、AAから形成されるオリゴマーのベータカルボキシエチルアクリレート(β−CEA)を表し、Rhodia社からSipomerの商標名で市販されている。
「DAAM」は、架橋可能なモノマーのジアセトンアクリルアミドを表す。
「DDCM」は、連鎖移動剤のn−ドデシルメルカプタンを表す。
「EA」はアクリル酸エチルを表す。
「EHA」は、2−エチルヒドロキシアクリレートを表す。
「EO」はエトキシ(例えば、ポリエーテル部分での繰り返し単位)を表す。
「HO(DM)」は脱塩水を表す。
「HBA」は、ヒドロキシブチルアクリレートを表す。
「MA」はアクリル酸メチルを表す。
「MAA」は、メタクリル酸(CH=C(CH)COH)を表す。
「Norsocryl(登録商標)100」(また、本明細書では「N100」と表されている)は、Arkema社からその商標名で市販されている、メチルメタクリレート中の2−(2−オキソイミダゾリジン−1−イル)エチルメタクリレート(MEIO)の溶液(MMA、75重量%)であるモノマーである。
「Piccotac 1095−N」は、Eastman Cheminal社から市販されている粘着付与剤の商標名で、Cピペリレン供給原料から形成される脂肪族炭化水素樹脂粘着付与剤である。
「Rhodacal DS−4」(また、本明細書では「DS4」として知られている)は、分枝したナトリウムドデシルベンゼンスルホネート(SDBS)の23%の固形分重量の水性分散体としてこの商標名でRhodia社から市販されているアニオン界面活性剤を表す。
「Rhodapex(登録商標)AB−20」(また、本明細書では「AB−20」として知られている)は、脂肪族アルコールエーテルスルフェートのアンモニウム塩の30%の固形分重量の水性分散体で、この商標名でRhodia社から市販されているアニオン界面活性剤を表す(EO繰り返し単位の数は9、アルキル基;C12〜18)。
「Rongalit C(登録商標)」(また、本明細書では「Ron−C」として知られている)は、BASF社から市販されているナトリウムヒドロキシメタンスルフィネートである重合開始剤の商標名である。
「SM」はステアリルメタクリレートを表す。
「STY」はスチレンを表す。
「t−BHP」は、Luperox H70又はTrigonox A−W70の商標表示の下で(それぞれに、Arkema社又はAkzoNobel社から)、例えば、水30%のt−BHP70%として市販されているt−ブチルヒドロキシペルオキシドを表す。
「Ufapol(登録商標)DMA PS2」(また、本明細書では「PS2」として知られている)は、Unger社からこの商標名で市販されている界面活性剤を表し、モノ−及びジ−アルキルジスルホン化ジフェニルオキシドジナトリウム塩の最適化組合せの水溶液である。
【0162】
本発明の実施例1及び2を調製するために使用された成分は、それぞれに表1及び2で以下で示される。これらの実施例は、表の後に記載された方法で調製された。
【0163】
(実施例1)
表1
【表1】


表1(続き)
【表2】

【0164】
(実施例2)
【表3】


表2(続き)
【表4】

【0165】
(実施例1及び2を調製するのに使用する方法)
(a)(i)第一プレ混合物の調製:ミニエマルション
界面活性剤溶液(25%w/w)、脱塩水及び緩衝液(これらの成分は、表1及び2で、標記「A」で表されている)を混合して均質な水性「溶液A」を形成する。有機相を、また、「溶液B」を形成するためにモノマー及び疎水性化合物を混合することにより調製する(これらの成分は、表1及び2で、標記「B」で表されている)。次いで、溶液「A」及び「B」を混合して濃い白色プレエマルションを形成し、次いで、(出力制御設定8及び負荷サイクル90%で、Branson Sonifier 450の商標表示で市販されている超音波装置を使用して)超音波で10分間処理することにより高剪断に掛ける。得られたミニエマルションは、両方の実施例でおよそ191nmの小滴サイズを有する。
【0166】
(a)(ii)第二プレ混合物の調製:プレエマルション
第二プレエマルションを調製する。脱イオン水及び更に界面活性剤を含む水溶液を「溶液C」として調製し、モノマーを含む有機相を、それぞれの表でそれぞれの標記「C」及び「D」で表されている成分を混合して「溶液D」として調製する。次いで、溶液C及びDを混合して白色プレエマルションを形成する。
【0167】
(b)モノマーの重合:
反応器に、脱イオン水及びミニエマルションの5%合計重量を投入する。過硫酸ナトリウムの10%溶液を第二遅延容器で調製する。反応器のジャケットを、反応混合物が82℃に達するまで加熱し、その温度で開始剤溶液の一部を5分間で投入する。次いで、開始剤投入の最後から10分後に、ミニエマルションの遅延及び開始剤の遅延が始まる。ミニエマルションの遅延期間は160分であり、開始剤の遅延期間は190分である。反応温度は遅延の間82℃に維持される。
【0168】
ミニエマルション((a)(i)遅延)の最後で、プレエマルション((a)(ii))遅延)が始まる。プレエマルションの遅延期間は20分である。全ての遅延が終了した場合(プレエマルションの遅延及び開始剤の遅延)、反応器の内容物を82℃で60分間保持する。
【0169】
この保持期間後に、反応温度を60℃まで冷却し、ポスト重合レドックス開始剤系が、以下で説明するように、表1で「E」と標示されているその他の成分(また、実施例2にも場合により添加され得る)と一緒に添加され得る。還元剤(Rongalit C)を30分にわたる遅延として添加し、酸化剤(t−BHP)を15分にわたる遅延として添加する。バッチを60℃で30分間保持し、45℃まで冷却する。次いで、反応混合物を30℃まで冷却し、殺生剤のMBSを、本発明の実施例を製造するために添加する。
【0170】
実施例1及び2の両方の粘着化分散体は、本明細書に記載されている幾つかの又は全ての有益な性質を有するPSAフィルムを形成するために透明なフェイスストック上に被覆され得る粘着化PSAを製造するのに使用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)(a)(i)水、
(ii)少なくとも1つの安定剤、
(iii)少なくとも1つの粘着付与剤、及び
(iv)少なくとも1つのα,β−エチレン系不飽和モノマー
を含む混合物を形成する工程、並びに
(b)工程(a)からの前記混合物に高剪断を適用して、水性連続相及びその中に分散した、約10〜約1000nmの平均直径の安定化小滴を含む本質的に安定なミニエマルションを形成する工程、
(c)前記小滴内の前記モノマー(複数可)を、遊離基開始剤の存在下で重合する工程、
(d)場合により、更なるモノマーを前記分散相に添加する工程、次いで、
(II)工程(I)からの生成物(場合により分散体としての)を種として使用して、その後のエマルション重合で不均質ポリマー粒子の分散体を形成する工程
を含む、ミニエマルション重合による不均質ポリマー粒子の水性分散体を調製するための複数工程方法。
【請求項2】
粘着付与剤が、ポリテルペン、ロジン樹脂及び/又は炭化水素樹脂等の1つ又は複数の適当な疎水性粘着付与剤(複数可)から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
安定剤が、A)少なくとも1つの界面活性剤及び/又はコロイド状安定剤を、B)少なくとも1つの疎水性共安定剤と一緒に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)で混合物が、コロイド状安定剤として両親媒性安定化ポリマー及び水を含む第一(水性)プレ混合物と、疎水性共安定剤及びα,β−エチレン系不飽和モノマーを含む第二(有機)プレ混合物とを混合することにより形成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
重合開始剤が第二プレ混合物に導入される(場合により溶解される)、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
両親媒性安定化ポリマーが、疎水性モノマー及び親水性モノマーの組合せから得られるポリマーである、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
両親媒性安定化ポリマーが、疎水性モノマー、及び酸官能基又は酸官能基をもたらす官能基を含む親水性モノマーの組合せから得られるポリマーを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
両親媒性安定化ポリマーが、スチレン及び無水マレイン酸から、及び/又はスチレン、α−メチルスチレン及びアクリル酸から得られるコポリマーを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
両親媒性安定化ポリマーが、25℃で測定して少なくとも約1×10−2g/lの水性相での溶解度を有する、請求項4から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
使用される両親媒性安定化ポリマーの量が、α,β−エチレン系不飽和モノマー(複数可)の全重量に対して約0.5重量%〜約15重量%である、請求項4から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
疎水性共安定剤が、25℃で測定して約5×10−5g/l未満の水での溶解度を有する、請求項3から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
疎水性共安定剤が、C12〜14アルカン、C12〜14アルコール、C18〜22アクリレート及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項3から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
疎水性共安定剤が、工程(a)で調製される混合物の全重量を基準にして約0.05重量%〜約40重量%の量で使用される、請求項3から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
α,β−エチレン系不飽和モノマーが、25℃で測定して約15%未満の水での溶解度を有する、請求項1から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
α,β−エチレン系不飽和モノマーが、スチレン、アクリレート、メタクリレート、ハロゲン化ビニル及びビニリデン、ジエン、ビニルエステル並びにこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1から14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
25℃で測定して約15%より高い水溶解度を有する1つ又は複数の水溶性モノマーが、全モノマー(複数可)の約6重量%未満の量で工程(a)の混合物へ添加される、請求項1から15までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
pHを変更する1つ又は複数の成分が、工程(a)で形成される混合物へ添加される、請求項1から16までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
工程(b)が、約50nm〜約500nmの平均直径を有する安定化小滴を含むミニエマルションを生成する、請求項1から17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
工程(b)での高応力が、局在化高剪断を、場合により適度なバルク混合との組合せで生成する装置で適用される、請求項1から18までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1から19までのいずれか一項に記載の方法により間接的及び/又は直接的に得られた及び/又は得ることのできる安定な水性ポリマー分散体。
【請求項21】
少なくとも1つのα,β−エチレン系不飽和モノマーから形成されるポリマー粒子のマトリックスを含み、前記粒子が約10〜約1000nmの平均直径を有し、前記ポリマーマトリックスと一緒に均質に分散している安定な水性ポリマー分散体であって、(i)約800〜約100,000ダルトンの数平均分子量(M)及び約50〜約400mg KOH/gの酸価の少なくとも1つの両親媒性安定化ポリマー及び(ii)場合により、粘着付与剤として少なくとも1つの疎水性共安定剤を含む、水性ポリマー分散体。
【請求項22】
被膜、フィルム、接着剤及び/又はインク組成物を調製するための、請求項20又は21に記載のポリマー分散体の使用。
【請求項23】
請求項20又は21に記載のポリマー分散体を使用して得られた及び/又は得ることのできる被膜、フィルム、接着剤及び/又はインク組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−505987(P2010−505987A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530900(P2009−530900)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/060605
【国際公開番号】WO2008/043716
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(505365965)サイテック サーフェース スペシャリティーズ、エス.エイ. (38)
【Fターム(参考)】