説明

水性ポリマー組成物及びそれから製造される製品

【課題】有機溶媒を低減した水性ポリマー組成物を提供する。
【解決手段】水性ポリマー組成物であって、・少なくとも1つのポリマー(P)、該ポリマー(P)はフッ素化モノマーと少なくとも1種の他の水素添加コモノマーから誘導される反復単位からなり、該ポリマー(P)は該組成物の全質量に対して0.5wt%〜75wt%の量で存在する;・反復単位を含む少なくとも1つの芳香族ポリアミック酸(A)であって、50モル%を超える前記反復単位が少なくとも1つの芳香環と少なくとも1つのアミック酸基及び/又はイミド基[反復単位(R2)]を含み、該反復単位(R2)のうち50モル%を超える反復単位が少なくとも1つのアミック酸基を含み、該アミック酸基の一部又は全部が少なくとも1つの塩基性化合物(B)によって中和されている芳香族ポリアミック酸、該芳香族ポリアミック酸(A)は該組成物の全質量に対して0.01wt%〜50wt%の量で存在する;・水;・任意に、芳香族ポリアミック酸の質量に対して20wt%未満の量の少なくとも1つの有機溶媒(S)を含む、前記組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸基を実質的に含まないポリマー、特にフルオロポリマーと、高温耐性重合体を含むポリマー組成物に関する。このようなポリマー組成物は、保護コーティング、プライマー又は単層又は多層コーティング系における最上層として含む、金属表面をコーティングするのに特に有効である。
【背景技術】
【0002】
カルボン酸基を実質的に含まないポリマー、特にフルオロポリマー(特にCTFE又はTFE系ポリマー)は、ユニークな特性、例えば、高い耐熱性や耐薬品性、高純度、潤滑性を有することが知られている。それらの特性があることから、これらのフルオロポリマーは、製品を被覆又は含浸するために、特に非付着性を得るために、液媒体における分散液の形で又は粉末として広く使われている。フルオロポリマーは、金属と非金属基体双方に付着しない傾向があることも周知である。
基体に付着するカルボン酸基を含まないポリマー、特にフルオロポリマー、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロペンコポリマー(FEP)又はテトラフルオロエチレン-ペルフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー(PFA又はMFA)のコーティングを得るために、通常は基体にプライマー組成物を適用することが必要とされ、前記プライマーは、基体にも、カルボン酸基を含まないポリマーにも付着性を有する。
【0003】
金属基体や非金属基体にハロゲン化ポリマー、特にフルオロポリマーコーティングを付着させるプライマー組成物の種々の解決策が既に提唱されている。多くの場合、ハロゲン化ポリマー、特にフルオロポリマーと熱安定性エンジニアリングポリマーの混合物が、非常によく付着したコーティングを得るために用いられた。
プライマーを形成するために、カルボン酸基を実質的に含まないポリマー、特にフルオロポリマーと混合される特に興味があるエンジニアリングポリマーの種類は、ポリイミド、特にポリアミドイミド(PAI)からなるものである。実際、ポリイミドは、通常は優れた膜形成能力をもち、通常は高い耐薬品性と耐熱性も示すものである。
ポリイミド、特にポリアミドイミドは、ポリアミック酸(polyamic acid)の形で、室温でさえ水媒体加水分解の分解を受け、分子量が不可逆的に減少し、最終的な機械的性質が負に影響すると考えられたので、過去には水性媒体中でなく適切な有機溶媒に溶解したフルオロポリマーと組合わせて膜形成物質として用いられた。
【0004】
環境的危険防止に対する注意が増したことにより、コーティング性能、特に基体付着、機械抵抗、耐薬品性を維持しつつ又は改善さえしつつ、純粋に溶媒含まないプライマー組成物の方へ移行することが強く求められてきた。
従って、技術においては、ポリイミド、特にPAIの安定性や水における溶解度を改善して有機溶媒の量を減少させるために種々の方法が研究された。
米国特許第4,014,834号(デュポン)には、粘度降下剤(フルフリルアルコール)と融合助剤、即ち、PAIを溶解し得る有機液、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、クレシル酸、スルホラン、ホルムアミドの存在下でPAIをポリアミック酸の形で塩化すると同時に水に溶解することによる水におけるPAI溶液の調製が記載されている。そのように得られたPAI溶液は、金属基体に対して付着性が高い配合物を得るためにPTFE分散液と混合するのに適している。しかし、米国特許第4,014,834号の配合物は高含量の有機溶媒が欠点である。
同様に、米国特許第5,168,013号(デュポン)には、ポリアミドイミド又はポリエーテルスルホンと平滑な金属表面に水性のコーティングを適用するという問題を解決するために有効な極めて異なる粘度を有する少なくとも2つの種々のポリテトラフルオロエチレン樹脂との特定の混合物の使用が開示されている。しかしながら、米国特許第5,168,013号には、プライマー組成物における有機物質の含量を減少させるという問題に対処していない。
その上、有機溶媒が通常はポリイミドのような極性樹脂に強い親和性を有するので、(ポリイミド部分と化学量論的複合体を形成する)、それらの除去には、長時間の乾燥時間がしばしば減圧で必要である。
環境的考慮に基づく、揮発した溶媒の回収の必要性と共に、乾燥及び硬化と関連しているエネルギーのコストと、溶媒のコストは、プライマー/コーティング適用においてポリイミド樹脂、特にPAI樹脂の市販の魅力に実質的に影響を与える。
【発明の概要】
【0005】
本発明によれば、下記成分を含む水性ポリマー組成物によって上述の問題点が著しく克服される。
・反復単位(R1)を含む少なくとも1つのポリマー(P)であって、0から多くても25モル%までの前記反復単位(R1)がカルボン酸基(酸又は塩の形で)を含む前記ポリマー;
・反復単位を含む少なくとも1つの芳香族ポリアミック酸(A)であって、50モル%を超える前記反復単位が少なくとも1つの芳香環と少なくとも1つのアミック酸(amic acid)基及び/又はイミド基[反復単位(R2)]を含み、反復単位(R2)のうち50モル%を超える反復単位が少なくとも1つのアミック酸基を含み、アミック酸基の一部又は全部が少なくとも1つの塩基性化合物(B)によって中和されている、前記芳香族ポリアミック酸;
・水;
・任意に、芳香族ポリアミック酸の質量に対して20wt%未満の量の、芳香族ポリアミック酸(A)の少なくとも1つの有機溶媒(S)。
【発明を実施するための形態】
【0006】
水性ポリマー組成物は、従来技術コーティング及びプライマー配合物と異なり、基体に対する付着性が大きく且つ少量の有機溶媒を含有するコーティングを供給するのに特に十分適し、それ故、エネルギーコストや環境要因の考慮が重要である使用に更に望ましい。
ポリマー(P)において、反復単位(R1)の好ましくは0から多くても10モル%まで、更に好ましくは0から多くても5モル%までカルボン酸基(酸又は塩の形で)を含んでいる。
ポリマー(P)の例として、ハロゲン化ビニルポリマー、酢酸ビニルポリマーを含むビニルポリエステル、(メタ)アクリルポリマー、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエーテル、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ロジン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、塩素化されたポリエチレン、天然ゴム、合成ゴム、例えば、スチレンとブタジエンのコポリマー、ネオプレン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエンポリマーに基づいて調製されたグラフト重合体、芳香族重縮合体、例えば、ポリフタルアミド、ポリアリールアミド、完全な芳香族ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、芳香族ポリアミドイミド、PEEK又はPEKKとして一般に知られているような芳香族ポリケトンを挙げることができる。
【0007】
好ましくは、ポリマー(P)はハロゲン化ポリマーである。
本発明のために、“ハロゲン化ポリマー”は、少なくとも1つのハロゲン原子を含む少なくとも1つのエチレン系不飽和モノマー(以後、ハロゲン化モノマー)から誘導された、25wt%を超える反復単位を含むあらゆるポリマーであることを意味する。
ハロゲン化されたモノマーは、特に塩素化モノマー及びフッ素化モノマーからなる群より選ぶことができる。
塩素化モノマーの制限されない例は、塩化ビニルや塩化ビニリデンである。
ハロゲン化ポリマーは、好ましくはフルオロポリマーである。
本発明のために、“フルオロポリマー”は、少なくとも1つのフッ素原子を含む少なくとも1つのエチレン系不飽和のモノマー(以後、フッ素化モノマー)から誘導された、25wt%を超える反復単位を含むあらゆるポリマーであることを意味する。
フルオロポリマーは、フッ素化モノマーから誘導された、好ましくは30wt%を超える、更に好ましくは40wt%を超える反復単位を含んでいる。
フッ素化モノマーの制限されない例は、特にテトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VF2)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)である。
フッ素化モノマーは、好ましくはいくつかのフッ素原子を含んでいる。更に好ましくは、水素原子より多くのフッ素原子を含んでいる。なお更に好ましくは、水素原子を含んでいない。最も好ましくは、フッ素化モノマーは、テトラフルオロエチレン及び/又はクロロトリフルオロエチレンである。
好ましくは、フルオロポリマーは、フッ素化モノマーと少なくとも1つの他のコモノマーから誘導された反復単位からなる。
コモノマーは、特に水素添加(即ち、フッ素原子を含まない)又はフッ素化(即ち、少なくとも1つのフッ素原子を含有する)され得る。
【0008】
適切な水素添加コモノマーの制限されない例は、特にエチレン、プロピレン、アクリルモノマー、例えば、メタクリル酸メチル、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、スチレンモノマー、例えば、スチレンである。
適切なフッ素化コモノマーの制限されない例は、特に
・C3-C8ペルフルオロオレフィン、例えば、ヘキサフルオロプロペン;
・C2-C8水素添加モノフルオロオレフィン、例えば、フッ化ビニル;
・1,2-ジフルオロエチレン、トリフルオロエチレン;
・式CH2=CH-Rf0に従うペルフルオロアルキルエチレン、ここで、Rf0はC1-C6ペルフルオロアルキルである;
・クロロ-及び/又はブロモ-及び/又はヨードC2-C6フルオロオレフィン、例えば、クロロトリフルオロエチレン;
・式CF2=CFORf1に従うフルオロ‐及びペルフルオロアルキルビニルエーテル、ここで、Rf1はC1-C6フルオロ‐又はペルフルオロアルキル、例えば、CF3、C2F2、C3F7である;
・CF2=CFOX0(ペル)フルオロオキシアルキルビニルエーテル、ここで、X0は1つ以上のエーテル基を有するC1-C12アルキル、又はC1-C12オキシアルキル、又はC1-C12(ペル)フルオロオキシアルキルである、例えば、ペルフルオロ-2-プロポキシ-プロピル;
・フルオロジオキソール、特にペルフルオロジオキソール。
・ポリマー(P)は、有利には粒子からなる。
・ポリマー(P)粒子の平均粒径は、有利には少なくとも20nm、好ましくは少なくとも75nm、更に好ましくは少なくとも100nmである。
ポリマー(P)粒子の平均粒径は、有利には最大でも200のμm、好ましくは最大でも150μm、更に好ましくは最大でも125μmである。
ポリマー(P)は、特に乾燥固体で(乾燥粒子として)又は水中分散液として又はラテックスとして供給され得る。
【0009】
“分散液”は、ポリマー(P)粒子が水媒体中で安定して分散するので、分散液が使われる時間内に粒子の沈降が生じないことを意味する。そのような分散液は、直接分散重合(即ち、ラテックス)として知られる方法によって得ることができ、任意に続いて濃縮及び/又は界面活性剤が添加される。有機溶媒に可溶であるポリマーについては、ポリマー溶液を、任意に界面活性剤を含有する、水と混合して、ポリマー粒子を沈殿させることにより、分散液を有利に得ることもできる。
さもなければ、分散液は、当業者に知られているあらゆる手段によって調製することができる。分散液は、通常は粒径減少装置、例えば、高圧ホモジナイザ、コロイドミル、高速ポンプ、振動かきまぜ機又は超音波装置によって調製される。分散液は、好ましくは高圧ホモジナイザ又はコロイドミルによって、特に好ましい方法では高圧ホモジナイザによって調製される。
【0010】
本発明の水性ポリマー組成物は、組成物の全質量に対して有利には少なくとも0.5wt%、好ましくは少なくとも1wt%、更に好ましくは少なくとも3wt%のポリマー(P)を含んでいる。
本発明の水性ポリマー組成物は、組成物の全質量に対して有利には多くても75wt%、好ましくは多くても60wt%、更に好ましくは多くても55wt%のポリマー(P)を含んでいる。
組成物の全質量に対して、5から50wt%までのポリマー(P)を含む水性ポリマー組成物は、非常に満足な結果を示した。
本発明のために、“芳香族ポリアミック酸”(A)は、反復単位を含むあらゆるポリマーであることを意味し、50モル%を超える前記反復単位が少なくとも1つの芳香環と少なくとも1つのアミック酸基及び/又はイミド基[反復単位(R2)]を含み、反復単位(R2)のうち50モル%を超える反復単位が少なくとも1つのアミック酸基を含んでいる。
反復単位(R2)は、有利には
【0011】
【化1】

【0012】
(ここで、
・→は異性を示すので、芳香族ポリアミック酸構造内のあらゆる反復単位において矢印が示す基は図示されるように又は入れ替えられた位置で存在することができ、
・Arは、典型的には
【0013】
【化2】

【0014】
である。)
より選ばれる。
反復単位(R2)は、更に好ましくは
【0015】
【化3】

【0016】
及び/又は対応するイミド基含有反復単位:
【0017】
【化4】

【0018】
(ここで、(i-a)に示される2つのアミド基の芳香環への給合は、1,3と1,4のポリアミドアミック酸構造であると理解される。);
【0019】
【化5】

【0020】
及び/又は対応するイミド基含有反復単位:
【0021】
【化6】

【0022】
(ここで、(ii-a)に示される2つのアミド基の芳香環への給合は、1,3と1,4のポリアミドアミック酸構造であると理解される。); 及び
【0023】
【化7】

【0024】
及び/又は対応するイミド基含有反復単位:
【0025】
【化8】

【0026】
(ここで、(iii-a)に示される2つのアミド基の芳香環への給合は、1,3と1,4のポリアミドアミック酸構造であると理解される。)
より選ばれる。
反復単位(R2)は、好ましくは反復単位(i)又は反復単位(ii)と(iii)の混合である。
非常に好ましくは、芳香族ポリアミック酸(A)は、90モル%を超える反復単位(R2)を含んでいる。なお更に好ましくは、反復単位(R2)以外の反復単位を含有しない。
優れた結果は、反復単位(i)又は反復単位(ii)と(iii)の混合からなる芳香族ポリアミック酸(A)によって得られた。
【0027】
少なくとも1つのアミック酸基を含む反復単位(R2)のモルパーセントは、有利には以下の通りに(式1)算出される。
{[(R2-A)単位]mole fraction+2×[(R2-B)単位]mole fraction+[(R2-D)単位]mole fraction}×10/[(R2-A)単位]mole fraction+[(R2-C)単位]mole fraction+2×{[(R2-B)単位]mole fraction+[(R2-D)単位]mole fraction+[(R2-E)単位]mole fraction}
(式1)
ここで、(R2-A)、(R2-B)、(R2-C)、(R2-D)、(R2-E)は上記反復単位(R2)である。
少なくとも好ましくは55モル%、更に好ましくは60モル%の反復単位(R2)は、少なくとも1つのアミック酸基を含んでいる。
【0028】
芳香族ポリアミック酸(A)の酸価(KOHのミリグラム/グラム)は、有利には少なくとも100、更に好ましくは少なくとも110、なお更に好ましくは少なくとも120であり、アミック酸単位だけを含む樹脂の理論上の酸価までであってもよい。
芳香族ポリアミック酸(A)の数平均分子量(Mn)は、有利には少なくとも1000、好ましくは少なくとも1500、更に好ましくは少なくとも2000である。
芳香族ポリアミック酸(A)の数平均分子量(Mn)は、有利には多くても20000、好ましくは多くても15000、更に好ましくは多くても10000である。
芳香族ポリアミック酸(A)の固有粘度は、30℃においてN,N-ジメチルアセトアミド中の0.5wt%溶液として測定される場合、少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.15、更に好ましくは少なくとも0.2dl/gである。
【0029】
芳香族ポリアミック酸(A)は、特に(I)無水ピロメリト酸、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテルジアンヒドリド、無水トリメリト酸及び無水トリメリト酸一酸ハロゲン化物より選ばれた少なくとも1つの酸モノマーと(II)ジアミン及びジイソシアネートより選ばれた少なくとも1つのコモノマー間の重縮合反応を含む方法によって製造することができる。
無水ピロメリト酸、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテルジアンヒドロリド、無水トリメリト酸及び無水トリメリト酸一酸ハライドの中で、無水トリメリト酸一酸クロリドが好ましい。
コモノマーは、好ましくは少なくとも1つの芳香環を含んでいる。その上、好ましくは多くても2つの芳香環を含んでいる。更に好ましくは、コモノマーはジアミンである。なお更に好ましくは、ジアミンは、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、m-フェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、及びその混合物からなる群より選ばれる。
【0030】
重縮合反応は、有利には、極性溶媒中実質的に無水条件下で150℃より低い温度で、実質的に化学量論量の酸モノマーと、コモノマーを用いて行われる。わずかに化学量論的過剰量、通常は約0.5から約5モル%までのいずれのモノマーも、好ましくは酸モノマーを、所望により分子量を制御するために使うことができる。或いは、このためのエンドキャッピング剤として、また、安定性を改善するために、単官能性反応剤を使うことができる。
芳香族ポリアミック酸(A)は、有利には、温和な条件下で、好ましくは混合できる非溶媒、例えば、水、低級アルキルアルコール等を添加することによって極性反応溶媒から凝固するか又は沈殿することにより、固体で分離される。任意に、固体樹脂は、次に、収集され、十分に水洗され、遠心分離又は押圧されて、熱を加えずに固体の水分を更に減少させることができる。水や低級アルキルアルコール以外の非溶媒も知られ、例えば、エーテル、芳香族炭化水素、ケトン等を含む溶液から芳香族ポリアミック酸(A)を沈殿させるために当該技術において用いられてきた。
【0031】
本発明の水性ポリマー組成物は、有利には組成物の全質量に対して少なくとも0.01wt%、好ましくは少なくとも0.05wt%、更に好ましくは少なくとも0.1wt%の芳香族ポリアミック酸(A)を含んでいる。
本発明の水性ポリマー組成物は、有利には組成物の全質量に対して多くても50wt%、好ましくは多くても25wt%、更に好ましくは多くても15wt%の芳香族ポリアミック酸(A)を含んでいる。
組成物の全質量に対して0.5から12wt%までの芳香族ポリアミック酸(A)を含む水性ポリマー組成物は、非常に満足な結果を示した。
使われる塩基性化合物(B)の最少量は、ポリマーにおけるアミック酸基を中和するのに必要とされるほぼ化学量論量であり、芳香族ポリアミック酸(A)におけるアミック酸基の各モルとして好ましくは少なくとも0.8、更に好ましくは少なくとも0.9モルである。
使われる塩基性化合物の最大量は、芳香族ポリアミック酸(A)におけるアミック酸基の各モルとして有利には多くても5モル、好ましくは4.5モル、更に好ましくは多くても4.0モルである。
【0032】
芳香族ポリアミック酸(A)を含み且つ芳香族ポリアミック酸(A)に存在するアミック酸基の量に基づいて、100%を超える化学量論量又は中和量の塩基性化合物を含有する水性ポリマー組成物は、加水分解に対して著しく安定であるので、同じように高レベルの塩基を含む芳香族ポリアミック酸(A)の塩に基づく配合物が好ましいことが知られている。
更に高いレベルの塩基性化合物は、水性ポリマー組成物のコーティング特性に悪影響を及ぼさずに便利に使うことができる。
これらの組成物の溶液安定性を改善することに加えて、塩基性化合物の大過剰量が、特に固体樹脂の溶解の割合を改善することを見出すことができる。
芳香族ポリアミック酸(A)のアミック酸基の一部又は全部を中和するために、有利には、芳香族ポリアミック酸を、水媒体におけるR2反復単位のカルボン酸基を中和するのに適切な塩基性化合物と反応させる。
芳香族ポリアミック酸(A)を中和し溶解することは、芳香族ポリアミック酸を、好ましくは固体で、塩基性化合物を含有する水の必要な量に添加することによって単一操作で便利に行うことができる。固体の芳香族ポリアミック酸(A)とアミック酸基を実質的に中和するとともに対応する塩を形成するのに有効な適切な塩基性化合物の量とを組合わせることは、特に芳香族ポリアミック酸(A)を溶解するのに十分であり、追加の有機溶媒又は融合助剤を必要としない。
【0033】
使われる水の量は、一般的には0.5から約30wt%まで、好ましくは約1から約25wt%まで、更に好ましくは約1から約15wt%までの芳香族ポリアミック酸(A)を含有する溶液を得るのに、十分な量である。
芳香族ポリアミック酸(A)のアミック酸基の一部又は全部を中和する際には成分を組合わせる便利なあらゆる方法を使うことができる。
固体の芳香族ポリアミック酸(A)は、塩基性化合物と水の撹拌混合物に増加分で添加することができ、芳香族ポリアミック酸が溶解されるまで撹拌を続ける。
或いはまた、塩基性化合物を水中の芳香族ポリアミック酸(A)の撹拌懸濁液に徐々に添加することができ、固体が溶解するまで撹拌を続ける。
あらゆる酸塩基反応と同様に、外部冷却が、まず最初に必要であることを見出すことができ、続いての加温と撹拌は芳香族ポリアミック酸(A)の溶解を完了するためにかなりの時間望ましいものである。
好ましくは、芳香族ポリアミック酸(A)と塩基性化合物の混合物を、少なくとも40℃、好ましくは少なくとも45℃、更に好ましくは少なくとも50℃の温度で加熱する。
適切な塩基性化合物(B)は、特に、芳香族ポリアミック酸(A)の反復単位R2のアミン基を中和することができるもの全てである。
無機塩基や有機塩基を芳香族ポリアミック酸(A)のアミック酸基の一部又は全部を中和するのに用いることができる。
無機塩基の制限されない例は、特にアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、例えば、NaOH、KOH、Mg(OH)2、アンモニア等である。
【0034】
有機塩基の制限しない例は、特に有機アミン、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミン又は芳香族複素環式アミンである。
好ましくは、塩基性化合物(B)は第三級アミンである。第三級アミンは、特にトリ(C1-C4アルキル)アミン、例えば、トリメチルアミン、N,N-ジメチルエチルアミン、N,N-ジメチルプロピルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等であってもよい。N,N-ジメチルエタノールアミン、ジエチル-2-ヒドロキシエチルアミン等を含む周知の水混和性第三級アルカノールアミンの種類のいずれかであってもよいように、環状第三級アミンもまた有効であると見出すことができる。芳香族アミン、例えば、N,N-ジメチルアニリン、ピリジン、N-メチルピロールもまた使うことができる。多官能性アミン、例えば、N,N'-ジメチルピペリジン、N,N,N'N'-テトラアルキルアルカリジアミン、ポリ-N-アルキル化アルカレントリアミンも有効であると見出すことができるが、多官能性アミンは、結合架橋やゲルを形成する傾向があるものであり、あまり好ましくない。
最も好ましい塩基性化合物(B)は、トリエチルアミン及びN,N-ジメチルエタノールアミン及びその混合物からなる基より選ばれる。
【0035】
第三級アミンは、芳香族ポリアミック酸の熱イミド化と硬化の速度を増加することが特に知られ、芳香族ポリアミック酸膜やコーティングの急速な硬化を促進するのに有効なものである。
本発明のために、塩基性化合物(B)と対抗する“有機溶媒”(S)という用語は、塩を形成するための反復単位R2のアミック酸基を中和しない有機化合物であることを意味する。
従って、有機溶媒という用語は、芳香族ポリアミック酸自体を溶解することができる極性有機溶媒又は溶解度パラメータδTが5-20の範囲に入る水と混和できる他の有機液を包含する。
極性有機溶媒の制限されない例は、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、クレシル酸、スルホラン、ホルムアミド又はその組合わせである。
【0036】
例えば、溶解度パラメータに関する説明は、Kirk-Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology, second edition (1963), pages 889-896に見つけることができる。本発明のために、粘度降下剤として有効な有機液は、全溶解度パラメータδTの以下の成分パラメータを有することが定義される。
分散成分、δD 7.0から10.0まで
極性成分、δP 2.0から11.0まで
水素結合成分、δH 7.0から14.0まで
ここで、以下の式3は各成分と全溶解度パラメータの関係を記載するものである。
δT2D2+δP2+δH2 (式3)
従来技術の水性ポリマー組成物の粘度降下剤として用いられた溶解度パラメータδTが上記の範囲内に入る有機液の中で、フルフリルアルコール、1-ブタノール、2-プロパノール、エチレングリコール、モノメチルエーテル、トリエチレングリコール、ギ酸又はその組合わせを挙げることができる。
水性ポリマー組成物は、好ましくは芳香族ポリアミック酸(A)の質量に対して15wt%を超えない、更に好ましくは10wt%を超えない、最も好ましくは5wt%を超えない量で有機溶媒(S)を含んでいる。
【0037】
任意に、水性ポリマー組成物は、コーティング組成物の通常の成分、特に (i)分散剤;(ii)色素、例えば、カーボンブラック、ケイ酸塩、金属酸化物、スルフィド;(iii)添加剤、例えば、コーティング補助剤又は流れ促進剤;(iv)無機充填剤、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、BaSO4、CaSO4、SrSO4のような金属硫酸塩、Al2O3やSiO2のような酸化物、ゼオライト、マイカ、タルク、カオリン;(v)有機充填剤、好ましくは耐熱性高分子、例えば、芳香族重縮合体;(vi)膜硬化剤、例えば、金属ケイ酸塩のようなケイ酸塩化合物、例えば、ケイ酸アルミニウム、金属酸化物、例えば、二酸化チタンや酸化アルミニウム;(vii)付着促進剤、例えば、コロイドシリカや金属リン酸塩のようなリン酸化合物、例えば、リン酸Zn、リン酸Mn又はリン酸Feを更に含むことができる。
【0038】
好ましくは、非イオン性活性剤、例えば、アルキルフェノールエトキシレート、アルキルアルコールアルコキシレート、脂肪アルコールエトキシレート、脂肪エトキシレート、脂肪アミンエトキシレート、脂肪アミンエトキシレート、ソルビタンアルカノエート、エトキシル化ソルビタンアルカノエート等、及びその組合わせの群より選ばれたものがプライマー組成物における分散剤として用いられる。
最も好ましい分散剤は、アルキルアルコールエトキシレート、アルキルアルコールエトキシプロポキシレート、アルキルフェノールエトキシレート又はその組合わせである。オクチルフェノールエトキシレートである商品名TRITON(登録商標)や第二アルコールアルコキシレートであるTERGITOL(登録商標)として入手でき、どちらもDow Chemical、ミッドランド、ミシガン、米国から入手できる非イオン性活性剤、特にTRITON(登録商標)X-100、X 102、CF-21、DF-16、X-45、TERGITOL(登録商標)NP-8、TMN 100X、MinFoam 1Xを用いることができる。アルキルアルコールエトキシプロポキシレートの中ではRhodia Geronazzo、ミラノ、イタリアからのANTAROX 863を用いることができる。商品名DYNOL(登録商標)、特にDYNOL(登録商標)604としてAir Products PLC、サリー、英国から入手できる界面活性剤もまた、プライマー組成物における分散剤として用いることができる。
【0039】
あらゆる種類の色素を本発明に用いることができる。好ましい色素は、以下の1つ以上: Whittaker、Clark & Daniels、サウスプレインフィールド、ニュージャージー、米国から入手できる二酸化チタン; Shepard Color Company、シンシナティ、オハイオ、米国から入手できるアークティックブルー#3、トパーズブルー#9、オリンピックブルー#190、キングフィッシャブル−#211、エンサインブルー#214、ルセットブラウン#24、ウォールナッツブラウン#10、ゴールデンブラウン#19、チョコレートブラウン#20、アイアンストーンブラウン#39、ハニーイエロー#29、シャーウッドグリーン#5、ジェットブラック#1; Ferro Corp.、クリーブランド、オハイオ、米国から入手できるブラックF-2302、ブルーV-5200、ターコイズF-5686、グリーンF-5687、ブラウンF-6109、バフF-6115、チェスナッツブラウンV-9186、イエローV-9404、Engelhard Industries、エジソン、ニュージャージー、米国から入手できるMETEOR(登録商標)色素であり、それを含むものでもある。
【0040】
コーティング形成促進剤又は流れ促進剤に有効な化学薬品のような添加剤もプライマー組成物に組込むことができる。これらの添加剤の例は、Lubrizol、ウィクリフ、オハイオ、米国から入手できるLanco(登録商標) Flow P10や、Solutia、セントルイス、ミズーリ、米国から入手できるMODAFLOW(登録商標) Powderである。
芳香族重縮合体は、有利には高い熱抵抗性のポリマーである。アミド、イミド、エステル、スルフィド又はケトン官能性を含む、好ましくは50wt%を超える反復単位を含んでいる。ポリフタルアミド(SOLVAY ADVANCED POLYMERS, L.L.C.からAMODEL(登録商標)として入手できる)、アジピン酸とメタキシリレンジアミンから誘導される反復単位からなるポリアミド(SOLVAY ADVANCED POLYMERS, L.L.C.からIXEF(登録商標)として入手できる)、完全な芳香族ポリエステル(SOLVAY ADVANCED POLYMERS, L.L.C.からXYDAR(登録商標)として入手できる)、ポリフェニレンスルフィド(SOLVAY ADVANCED POLYMERS, L.L.C.からPRIMEF(登録商標)として入手できる)、PEEK又はPEKKとして一般に知られているような芳香族ポリケトンがこの特性に従うものである。
【0041】
本発明の他の目的は、上記の水性ポリマー組成物を製造する方法である。
水性ポリマー組成物は、有利には、乾燥粒子としてのポリマー(P)を上記のように調製した、中和された芳香族ポリアミック酸(A)の水溶液に、任意に分散剤の使用によって分散させることにより製造することができる。水性ポリマー組成物の他成分、例えば、色素や添加剤は、ポリマー(P)を水溶液に分散する前か後のどちらでも塩水溶液に添加することができる。任意に、高圧ホモジナイザ、コロイドミル、高速ポンプ、振動かきまぜ機又は超音波装置は、溶液における芳香族ポリアミック酸(A)の塩と均質混合物(共粉砕)を達成しつつポリマー(P)粒子又は他成分の粒径を減少させるために用いることができる。
第1の別法として、本発明の水性ポリマー組成物を製造するために芳香族ポリアミック酸(A)の塩の水溶液をポリマー(P)の水分散液と特に混和することができる。摩砕操作に用いられる装置と続いてのポリマー(P)の水分散液とのブレンドは従来のものであってもよい。混合装置の制限されない例として、特にかきまぜ機ブレードを有する混合タンクを挙げることができる。
【0042】
第2の別法として、芳香族ポリアミック酸(A)と塩基性化合物(B)をポリマー(P)分散液に添加することができ、直接組成物を調製する場合の芳香族ポリアミック酸(A)の塩を形成する。芳香族ポリアミック酸(A)の塩を得るために上で記載された方法は全て特に適用することができるが、ポリマー(P)の水性分散液が単に水の代わりに用いられる。
第3の別法として、水性ポリマー組成物は、直接基体上でポリマー(P)を芳香族ポリアミック酸(A)の塩水溶液に分散させることによって有利に調製することができる。本実施例においては、任意に分散剤と他の成分、例えば、色素や添加剤)を含む塩水溶液が、所望により、従来法によって基体に適用され、ポリマー(P)粉末が基体上の水溶液に分散され、次に、基体が後述のように焼成されてプライマーコートを硬化させる。
【0043】
本発明の好ましい第1水性組成物においては、ポリマー(P)は、部分的フッ素化フルオロポリマーである。
あらゆる部分的フッ素化フルオロポリマーをこの好ましい第1水性ポリマー組成物に用いることができる。
好ましい部分的フッ素化フルオロポリマーは、エチレン(E)/クロロトリフルオロエチレン(CTFE)コポリマー(以後、ECTFE)、エチレン(E)/テトラフルオロエチレン(TFE)コポリマー(以後、ETFE)である。
エチレン(E)/クロロトリフルオロエチレン(CTFE)コポリマーが特に好ましい。
本発明の水性ポリマー組成物において用いることができるECTFEは、特に、エチレンから誘導される反復単位40から60モル%までとCTFEから誘導される反復単位60から40モル%を含有する高分子量、通常は固体、熱可塑性ポリマーである。
任意に、ECTFEは、適度な量、10モル%までの、エチレンとクロロトリフルオロエチレン以外の、プロピレン、イソブチレン、フッ化ビニル、プロピレン、ヘキサフルオリド、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ペルフルオロビニルエーテル、アクリル酸又はアルキルエステル、メタクリル酸又はアルキルエステル、ペルフルオロアルキルエチレンを含む、共重合性コモノマーを含有することもできる。
【0044】
ECTFEのメルトインデックスは、有利には少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.5、更に好ましくは少なくとも1.0g/10minである。
ECTFEのメルトインデックスは、有利には最大でも50、好ましくは最大でも30、更に好ましくは最大でも25g/10minである。
ECTFEのメルトインデックスは、2.16kgのピストン荷重下で275℃で行われる変更したASTM試験No.1238に従って測定される。
ECTFEの融点は、有利には少なくとも200℃で高くても265℃である。
商品名HALAR(登録商標)としてSolvay Solexis Inc.、トロフェア、ニュージャージー、米国から入手できるECTFE粉末は、好ましい第1水性ポリマー組成物に特に適している。
ECTFEは、例えば、触媒として過酸化ベンゾイルを用いて大気圧を超える圧力で撹拌された水媒体におけるエチレンとクロロトリフルオロエチレンの共重合を示しているHanford(米国特許第2,392,378号); 0℃で放射線を用いて調製される高融点(237℃)の1:1のエチレンとクロロトリフルオロエチレンの交互コポリマーの形成を開示しているNUCLEONICS, September, 1964, pp. 72-74; 又は酸素活性化アルキルホウ素触媒を用いた-80℃〜+50℃の温度におけるエチレンとクロロトリフルオロエチレンのバルク共重合を示している英国特許第949,422号; 又は酸素活性化ホウ素含有触媒を用いたエチレン/クロロトリフルオロエチレンコポリマーの製造方法及びその方法によって得られる製品に関するRagazzini et al.(米国特許第3,371,076号、同第3,501,446号)に記載されるように、当業者に既知の方法で調製することができる。融点が200℃より高い約等モルのエチレン/クロロトリフルオロエチレンコポリマーもまた、容器に液体クロロトリフルオロエチレンモノマーを充填し、有機ペルオキシド型開始剤、例えば、トリクロロアセチルペルオキシドを用いてこのモノマーにガス状のエチレンを泡立たせ、所望により、少量の連鎖移動剤、例えば、クロロホルム又はヘプタンを添加することによって、かきまぜ機を装備した圧力容器における大気圧を超える圧力で、約-20から+20℃の間と言う、約0℃の温度でモノマーのバッチ式バルク共重合によって調製することができる。所望のコポリマー生成物は、モノマーにおける分散液として得られる。
【0045】
部分的フッ素化フルオロポリマーは、有利には粉末、好ましくは微粉末として入手できる。
部分的フッ素化フルオロポリマーの平均粒径は、有利には最大でも125μm、好ましくは最大でも55μm、更に好ましくは最大でも45μmである。
部分的フッ素化フルオロポリマーの平均粒径は、有利には少なくとも0.2μm、好ましくは少なくとも0.5μm、更に好ましくは少なくとも1μmである。
非常に良好な結果は、平均粒径が約1μm〜25μmである部分的フッ素化ポリマーで得られた。
【0046】
好ましい第1水性ポリマー組成物は、部分的フッ素化フルオロポリマーの質量で有利には少なくとも0.1%、好ましくは少なくとも0.5%の芳香族ポリアミック酸(A)を含んでいる。
好ましい第1水性ポリマー組成物は、部分的フッ素化フルオロポリマーの質量で有利には多くても50%、好ましくは多くても20%の芳香族ポリアミック酸(A)を含んでいる。
好ましくは、本発明の好ましい第1水性組成物は、また、少なくとも1つの分散剤を含んでいる。
好ましい第1水性ポリマー組成物は、部分的フッ素化フルオロポリマーの質量で有利には少なくとも0.5%、好ましくは少なくとも1%の分散剤を含んでいる。
好ましい第1水性ポリマー組成物は、部分的フッ素化フルオロポリマーの質量で有利には多くても20%、好ましくは多くても15%の分散剤を含んでいる。
【0047】
好ましい第1組成物は、任意に分散剤を用いて部分的フッ素化フルオロポリマーを芳香族ポリアミック酸(A)の塩の水溶液に分散させることによって製造することができる。好適実施態様においては、部分的フッ素化フルオロポリマー粉末、特にECTFEが用いられ、ポリアミック酸(A)の塩の水溶液に分散させ、組成物が部分的フッ素化ポリマー粉末の質量で0.1%から50%までの芳香族ポリアミック酸(A)及び任意に部分的フッ素化ポリマー粉末の質量で0.5%から20%までの分散剤含むのに十分な量の部分的フッ素化フルオロポリマー粉末、芳香族ポリアミック酸の塩及び任意に分散剤を有する。プライマー組成物の他成分、例えば、色素や添加剤は、部分的フッ素化ポリマーを水溶液に分散する前か後のどちらかに水溶液に添加することができる。
【0048】
別法として、直接被覆すべき基体上で、部分的フッ素化ポリマー粉を芳香族ポリアミック酸の塩水溶液に分散させることによって好ましい第1水性ポリマー組成物を製造することができる。この実施態様においては、任意に分散剤と他成分、例えば、色素や添加剤を含む塩水溶液を、所望により、従来法によって基体に適用し、ポリマー粉末を基体上の水溶液に分散させ、次に、基体を焼成して、芳香族ポリアミック酸を硬化させる。溶液が部分的フッ素化ポリマーの質量で0.1%から50%までの芳香族ポリアミック酸(A)、及び任意に部分的フッ素化ポリマー粉末の質量で0.5%から20%までの分散剤を含むのに十分な部分的フッ素化フルオロポリマー粉末を水溶液に適用する。
本発明の好ましい第2水性組成物においては、ポリマー(P)は過フッ素化フルオロポリマーである。
過フッ素化フルオロポリマーは、有利には、テトラフルオロエチレン(TFE)から誘導される反復単位を含んでいる。
過フッ素化フルオロポリマーは、TFEから誘導される、好ましくは50wt%を超える、更に好ましくは70wt%を超える、なお更に好ましくは80wt%を超える反復単位を含んでいる。
任意に、過フッ素化フルオロポリマーは、また、少なくとも1つの他の過フッ素化コモノマーから誘導される反復単位を含むことができる。
【0049】
適切なフッ素化コモノマーの制限されない例は、特に下記のものである。
・C3-C8ペルフルオロオレフィン、例えば、ヘキサフルオロプロペン、ペルフルオロヘキセン-1、ペルフルオロノネン-1;
・クロロ-及び/又はブロモ-及び/又はヨードC2-C6フルオロオレフィン、例えば、クロロトリフルオロエチレン;
・式CF2=CFORf1 (式中、Rf1はC1-C6ペルフルオロアルキル、例えば、CF3、C2F2、C3F7である。)に従うペルフルオロアルキルビニルエーテル;
・CF2=CFOX0(ペル)フルオロオキシアルキルビニルエーテル(式中、X0は1つ以上のエーテル基を有するC1-C12(ペル)フルオロオキシアルキル、例えば、ペルフルオロ-2-プロポキシプロピルである。);
・フルオロジオキソール、特にペルフルオロジオキソール。
【0050】
好ましい第2水性ポリマー組成物は、過フッ素化フルオロポリマーを含む質量で有利には少なくとも0.1%、好ましくは少なくとも0.5%、更に好ましくは少なくとも1%の芳香族ポリアミック酸(A)を含んでいる。
好ましい第2水性ポリマー組成物は、有利には過フッ素化フルオロポリマーを含む質量で多くても150%、好ましくは多くても125%、更に好ましくは多くても100%の芳香族ポリアミック酸(A)を含んでいる。
第1実施態様によれば、好ましい第2水性ポリマー組成物においては、過フッ素化フルオロポリマーは非溶融加工可能か又は溶融加工可能である。
本発明のために、“溶融加工可能”という用語は、フルオロポリマーが従来の溶融押出、射出又は注型手段によって加工することができる(即ち、フィルム、繊維、チューブ、ワイヤコーティング等の成形製品に製造)ことを意味する。それには、加工温度の溶融粘度が107ポアズ以下、好ましくは103から107ポアズまで、最も好ましくは104から106ポアズまでの範囲にあることが必要である。
【0051】
本発明のために、“非溶融加工可能”という用語は、フルオロポリマーが従来の溶融押出、射出又は注型手段で加工することができないことを意味する。この要求は、107ポアズを超える加工温度における溶融粘度に対応する。
過フッ素化フルオロポリマーの溶融粘度は、防腐合金でできているシリンダ、オリフィス、ピストン先端を用い、5.0gの試料を380℃に維持される9.53内径シリンダに充填し、5kgの荷重(ピストンと質量)下で直径2.10mm、長さ8.00 mmスクエアエッジタイプオリフィスを通って充填した5分後に試料を押出すASTM D-1238-52Tに準じて測定される。溶融粘度は、グラム毎分の観察可能な押出速度からポアズで算出される。
好ましい非溶融加工可能な過フッ素化フルオロポリマーの制限されない例は、特にPTFEホモポリマーである。
好ましいPTFEホモポリマーの例は、特にAlgoflon(登録商標) F1111、Polymist(登録商標) F5-A、Polymist(登録商標) F-5A EX、Algoflon(登録商標) L206、Algoflon(登録商標) L203、Algoflon(登録商標) L101X、Algoflon(登録商標) L100X( Solvay Solexis Inc.から市販されている)である。
【0052】
好ましい溶融加工可能な過フッ素化フルオロポリマーの制限されない例は、特に、ペルフルオロアルキルビニルエーテルから誘導される反復単位を少なくとも0.5wt%、好ましくは少なくとも1wt%含有するTFEコポリマーやC3-C8 ペルフルオロオレフィンから誘導される反復単位を少なくとも5wt%、好ましくは少なくとも10wt%、更に好ましくは少なくとも15%wtを含有するTFEコポリマーである。
好ましい溶融加工可能な例は、特にHyflon(登録商標) MFA 6010、Hyflon(登録商標) PFA 7010である。
好ましい第2水性ポリマー組成物の第1実施態様の過フッ素化フルオロポリマーの平均粒径は、有利には最大でも200μm、好ましくは最大でも150μm、更に好ましくは最大でも125μmである。
好ましい第2水性ポリマー組成物の第1実施態様の過フッ素化フルオロポリマーの平均粒径は、有利には少なくとも0.5μm、好ましくは少なくとも1μm、更に好ましくは少なくとも2μmである。
特に、平均粒径が有利には最大でも50μm、好ましくは最大でも30μmである、PTFE微粉末、例えばS.Ebnesajjad, Fluoroplastics, vol.1に記載されるもの: 非溶融加工可能なフッ素樹脂、PDL, William Andrew Corp., NY, 2000, pp.191-205が好ましい第2水性ポリマー組成物の第1実施態様に特に適合する。
【0053】
第2実施態様によれば、好ましい第2水性ポリマー組成物における過フッ素化フルオロポリマーは溶融加工可能である。
溶融加工可能な過フッ素化フルオロポリマーは、本発明の組成物のために好ましい形態である水中ポリマーの分散液としてたいてい市販されている。
溶融加工可能な過フッ素化フルオロポリマーは、有利には水中のラテックスとして得ることができる。
好ましい第2組成物の第2実施態様の過フッ素化フルオロポリマーは、有利には、生成物がポリマー粒子(“一次粒子”と呼ばれる)のラテックス、即ち、分散媒、通常は水において平均径が1000nmより小さいポリマー粒子の安定な分散液(“エマルジョン”)である重合工程を含むあらゆる方法によって得られる。
【0054】
ラテックスの一次粒子の質量における平均径は、通常少なくとも100nm、好ましくは少なくとも150nm、更に好ましくは少なくとも180nmである。更に、質量における平均径は、好ましくは多くても400nm、更に好ましくは多くても300nmである。
しかしながら、具体的な実施態様においては、ラテックスの一次粒子は、質量における平均径は100nmより小さいことがあり得る。更に、質量における平均径は、好ましくは少なくとも60nm、更に好ましくは少なくとも20nmである。
他の具体的な実施態様においては、ラテックスの一次粒子は、質量平均粒径が180-400 nmの範囲にある粒子集団(a)と平均粒径が20から60nmまでの範囲にある粒子集団(b)を含む粒径の2頂分布を有してもよく; 分散液(a)と比較した分散液(b)の粒径間の比は0,3より小さい。
生成物がラテックスである重合工程を含む方法の例は、エマルジョン重合工程(水溶性開始剤が関係する)又はマイクロサスペンジョン重合工程(油溶性開始剤が関係する)を含むものである。米国特許第6,297,334号に記載されているように、マイクロエマルジョン重合工程を含む方法は、平均径が100nmより小さい一次粒子を調製するのに適している。
重合工程の間、有利には温和な撹拌が適用されてフルオロポリマー一次粒子の凝固を防止する。
【0055】
重合工程は、有利には乳化剤の存在下で、好ましくはフルオロポリマー一次粒子のエマルジョンを安定化するのに十分な多量で行われる。
乳化剤は、好ましくはフルオロ界面活性剤である。更に好ましくは、フルオロ界面活性剤は下記より選ばれる。
・CF3(CF2)n1COOM (式中、n1は、4から10まで、好ましくは5から7までの範囲にあり、更に好ましくは6に等しい整数であり; Mは、H、NH4、Na、Li又はK、好ましくはNH4である。);
・T(C3F6O)n0(CFXO)m0CF2COOM (式中、TはCl又はペルフルオロアルコキシド基CkF2k+1Oであり、k = 1から3の整数、1つのF原子はCl原子によって任意に置換され; n0は、1から6までの範囲にある整数であり; m0は、0から6までの範囲にある整数であり; Mは、H、NH4、Na、Li又はKであり; Xは、F又はCF3である。);
・F-(CF2-CF2)n2-CH2-CH2-SO3M (式中、MはH、NH4、Na、Li又はK、好ましくはHであり; n2は、2から5までの範囲にある整数、好ましくはn2=3である。);
・A-Rf-B二官能性フッ素化界面活性剤(式中、A、Bは、相互に等しいか又は異なり、-(O)pCFX-COOMであり; Mは、H、NH4、Na、Li又はKであり、好ましくはMはNH4であり; X = F又はCF3; pは、0又は1に等しい整数であり; Rfは、直鎖又は分枝鎖ペルフルオロアルキル鎖、又は(ペル)フルオロポリエーテル鎖であり、A-Rf-Bの数平均分子量は、300-1,800の範囲にある。)。
【0056】
補助安定剤は、有利には乳化剤と組合わせて用いられる。軟化点が48℃-62℃の範囲にあるパラフィンは補助安定剤として好ましい。
好ましい第2組成物の第2実施態様の過フッ素化フルオロポリマーは、有利には乳化重合工程を含むあらゆる方法によって得られる。
フッ素化モノマーの乳化重合工程を含む方法の詳細な説明は、特に米国特許第4,016,345号、同第4,725,644号、同第6,479,591号において入手でき、これらの明細書の記載は本願明細書に含まれるものとする。
水溶性開始剤は、有利には、過硫酸塩、過マンガン酸塩及び水溶性有機過酸化物、例えば、二コハク酸過酸化物より選ばれる。
水溶性開始剤は、任意に還元剤と組合わせて用いることができる。その例は、(NH4)2Fe(SO4)2.6H2O(モール塩)である。
【0057】
本発明のために、好ましい第2組成物の第2実施態様によれば、過フッ素化フルオロポリマーのラテックスは、直接水性ポリマー組成物の調製のための重合から得られるように用いることができる。この場合、ラテックスの固形分は、通常は20から30wt%の範囲にある。
任意に、重合工程に続いて、ラテックスは、多くても65wt%まで過フッ素化フルオロポリマー含量を増加するために濃縮することができる。濃縮ラテックスは、特に、当該技術において既知である方法のいずれかで得ることができる。一例として、濃縮ラテックスは、特に、非イオン性界面活性剤を添加し、上述の非イオン性界面活性剤の曇り点より高く加熱するとともに上澄みの水相をポリマーの豊富な相から分離することにより得ることができる。さもなければ、濃縮ラテックスは、当業者に周知の限外ろ過方法によって得ることができる。
任意に、重合工程から得られるか又は上記の通りの濃縮工程後のラテックスは、乳化重合に用いられるアニオンフッ素化界面活性剤の残留物から更に精製することができる。この場合、アニオンフッ素化界面活性剤を実質的に含まないラテックスが有利に得られる。
【0058】
好ましい第2組成物の第2実施態様の水性ポリマー組成物は、有利には少なくとも15wt%、好ましくは少なくとも40wt%、なお更に好ましくは少なくとも50wt% (組成物の全乾燥質量に関する)の過フッ素化フルオロポリマーを含んでいる。
本発明の水性ポリマー組成物は、有機溶媒が要求又は許容されることができないコーティング適用に有効であることを特に見出だすことができる。
本発明の水性ポリマー組成物は、特にコーティング適用に用いることが企図された配合物において望ましいことを見出だすことができ、コーティング表面上の靭性が改善された粘着性の高強度連続コーティング層を与え、注目すべき付着特性と膜形成特性を示し且つコーティングの硬化又は焼成の間、ポリマー(P)分散安定性(コーティング前)と熱安定性を高める。
【0059】
従って、本発明の水性ポリマー組成物は、また、金属やガラス用プライマーとして、容器のコーティング適用におけるエナメルとして; 自動車の仕上げの既存の層間の付着又は他金属仕上げとの付着を改善する自動車の仕上げ用バインダー層として; 金属又は他の基体用の化学的防腐コーティングとして、こびりつかない調理器具のためのバインダー層として; セメントにおける使用のためのタイバー用コーティングとして; 金属化操作に用いられる場合、ポリマーフィルム、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドフィルムのための前処理コーティングとして; 種々のプラスチック又は金属のフィルム材料、例えば、液晶ポリマーやポリイミドに対する接着剤として用いられる配合物を与えるのに特に有効であることを見出だすことができる。
上記の水性ポリマー組成物は、吹付け、ブラッシング、ローラーコーティング、浸漬又は電着によってプライマー又はコーティングとして特に適用することができる。
プライマーとして用いられる場合、被覆すべき基体が金属である場合には、好ましくはグリットブラスト、金属又は金属酸化物のフレーム溶射又はフリットコーティングにより前処理されるが、有利にはリン酸処理やクロム酸処理された金属に組成物を適用することもできる。被覆すべき基体がガラスである場合には、グリットブラスト又はフリットコーティングされることが好ましい。それにもかかわらず、上記の水性ポリマー組成物は、接着を妨害することがあり得るグリースや他の汚染物を除去するために洗浄することによってのみ処理される、平滑な基体に特に適用することができ、良好なコーティング特性が得られる。
【0060】
さもなければ、本発明の水性ポリマー組成物は、任意に、単層又は多層構造におけるプライマー層に適用された、トップコート、保護コーティング又は仕上層、特にこびりつかない仕上げ加工として用いることができる。
本発明の水性ポリマー組成物は、通常は約1-50μm(乾燥)の厚みに適用される。
上記の水性ポリマー組成物のプライマー又はコーティング層は、次に、空気乾燥され、芳香族ポリアミック酸のイミド化に影響を及ぼすのに十分高い温度で焼成又は硬化される。
プライマーにおけるポリアミック酸のイミド化は、通常は約180℃で開始し、温度が高くなった場合に特に加速される。
焼成は、塩基性化合物が揮発性の有機塩基である場合、焼成の間、イミド結合が形成されるにつれて水と任意に芳香族ポリアミック酸塩の塩部分を含むコーティング組成物に存在する揮発性の材料を排除する。
上記の水性ポリマー組成物を硬化するための焼成温度は、有利には少なくとも180℃、好ましくは少なくとも200℃である。
好ましい焼成温度は、有利には、水性ポリマー組成物の配合物の関数として選ばれる。
【0061】
上記の好ましい第1組成物の水性ポリマー組成物を硬化するための焼成温度は、有利には少なくとも245℃、好ましくは245℃から270℃まで、最も好ましくは245℃から260℃までである。上記の好ましい第2組成物の水性ポリマー組成物を硬化するための焼成温度は、有利には少なくとも245℃、好ましくは少なくとも250℃、更に好ましくは少なくとも260℃、有利には高くても450℃、好ましくは高くても425℃、更に好ましくは、高くても410℃である。
本発明の好ましい第1水性ポリマー組成物で準備した基体上のトップコーティング(即ち、準備したトップコート基体)もまた、これらの温度範囲で硬化することができる。
水性ポリマー組成物は、一般的には約1分から約30分間、好ましくは約5分から約20分間、最も好ましくは約7分から約15分間焼成される。各コーティング層は、同じ時間焼成することができる。しかしながら、トップコート層に典型的な焼成時間は、通常は部/質量部や形に左右される。
【0062】
上記の水性ポリマー組成物は、従来の組成物よりいくつかの利点を有する。乾燥と焼成の間に環境に特に有害な有機溶媒の放出がない。焼成温度が低下し、基体をコーティングするための全体のエネルギーコストが低下する。また、低い焼成温度の結果として粘度の低いプライマーを用いて高い構造コーティングを得ることが可能である。本発明の水性ポリマー組成物においては基体、特に金属基質の予熱工程が排除される。
最後に、本発明の水性ポリマー組成物を通じて適用されるトップコートが従来のプライマーを通じて適用されるコーティングより低い温度で短い時間で硬化することができることからトップコートにおける少量の安定剤が実行可能になることができる。
従って、本発明の他の目的は、上記の水性ポリマー組成物を含む製品である。
第1実施態様によれば、本発明は、上記の水性ポリマー組成物を含む被覆膜に関する。
第2実施態様によれば、本発明は、本発明の水性ポリマー組成物を含む中間層(タイ層)に関する。このタイ層は、更に多層構造に含まれてもよい。
従って、本発明の目的は、更に、上記の水性ポリマー組成物を含む少なくとも1つの層を含む多層構造である。
本発明の水性ポリマー組成物は、従来技術のコーティング配合物や及びプライマー配合物と異なり、基体に対する接着が大きく、少量の有機溶媒を含有するコーティングに特に有効である。それ故、本発明の水性ポリマー組成物及び製品は、エネルギーコストと環境要因が重要な考慮である使用に更に望ましい。
【0063】
以下の実施例によって本発明を更に詳述する。しかしながら、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【実施例】
【0064】
評価法:
ポリアミド-アミック酸粉末の固形分の定量。
約0.5gのポリアミド-アミック酸の湿った粉末を予め質量を計ったアルミニウムの重みのパンで正確に質量を計り、250℃で15分間乾燥炉に入れた。次式を用いて用いたポリマー樹脂の固形分パーセントを求めるために室温冷却後に更にまた試料の質量を記録した。
固形分% ={[(乾燥試料とパン質量)- (パン質量)] / (最初の試料質量)}×100
ラテックス固形分の定量
ポリマーと界面活性剤の含量を、質量測定によって求めた。約2gのラテックスを予め質量を量ったアルミニウムの重みのあるパンに入れ、105℃で2時間乾燥炉に入れた。ラテックスに存在する水の量を求めるために、室温冷却後に試料の質量を更にまた記録した。次に、乾燥残留物を含有するアルミニウムパンを10分間400℃で炉に入れて有機界面活性剤を分解し、室温で冷却した後に更にまた質量を計った。ラテックスのポリマー含量は、次式から得られた。
ポリマー% = 100×(400℃処理後の質量)/(ラテックスの最初の質量)。
ラテックスの界面活性剤含量は、次式から得られた。
界面活性剤% = [100×(105℃処理後の質量)/(ラテックスの最初の質量)] - ポリマー%。
【0065】
ラテックス粒径の定量
粒子の平均直径を、Brookhaven(登録商標)コリレータ2030 ATモデルとSpectra-Physicsによる波長が514.5nmであるアルゴンレーザー光源を備えた、レーザ光拡散、特に光子相関分光法に基づく計測器で測定した。ラテックス試料を水で希釈し、Millipore(登録商標)フィルタよる0.2μmでろ過した。散乱計測を、角度90oにおいて室温で行った。ラテックス粒子の直径を、蓄積カウンタ法で得た。
ポリマー粉末の評価
ASTM D4895に指定されたように粒度分布を確認した。
【0066】
コーティングの厚み測定
コーティングの厚みを評価するために、0.001mmの許容量を有する電子マイクロメータを用いた。長さ2メートルの非焼結コートテープで、400mm毎に6回テープの中央で厚みを測定することによって平均厚み値を算出した。
付着性の定量
2つの方法を膜厚の関数として用いた
方法1: ASTM D3359-87に指定されたクロスカット試験。
方法2: 90o角度における剥離強度を求めるために、INSTRON(登録商標) Corporation、カントン、マサチューセッツ、米国からINSTRON(登録商標)ヘッドを用いた剥離強度測定を下で詳述されるように実現した。
液体コーティング適用
異なって指定されない限り、水性ポリマー組成物を、従来のエアースプレー技術によって選ばれた基体に適用した。湿った膜を、まず、150℃で炉内で乾燥して過剰量の水を排除し、次に、組成物に存在するポリマーの関数として膜形成を得るのに必要な温度で焼成した。
【0067】
静電スプレーコーティング
MFA粉末コーティングのために電圧が20kVのエレクトロスプレーガンを用いた。2コート適用(プライマー+トップコート)させるために、適用後に粉末パネルを385℃で30分間炉内で焼成して適当なポリマー溶融と膜形成を有した。多い構造コーティングサイクル(5以上のトップコート)の場合、最初のコートは405℃で20分間焼成し、それ以後のコートは330℃で焼成してポリマーの熱劣化を防止した。
サンド試験(水蒸気抵抗)
水蒸気抵抗試験を受ける被覆パネルを、被覆面が連続的に凝縮物と平衡に熱蒸気と接触しているように、脱イオン水が95℃に維持されたサンドセルの上に水平に保った。パネルが20日を超える試験条件に耐える場合に良好な蒸気抵抗が得られる。
【0068】
実施例1
200グラムのポリアミドアミック酸(固形分= 35 wt% を有する湿った粉末として入手できるSolvay Advanced Polymers製TORLON(登録商標) AI50)485グラムの水と50グラムのジメチルエタノールアミンの混合物に分散した。次に、分散液を60℃〜70℃の温度に加温した。徐々に、固体を約11質量%のポリアミドアミック酸を含有する褐色水溶液に溶解した。冷却後、この水溶液は室温での保存に安定なままだった。
【0069】
実施例2(比較例)
49.5グラムのECTFE粉末(Solvay Solexis, Inc.製HALAR(登録商標) 6014F ECTFE)を撹拌しながら100グラムの水と4.95グラムの分散剤、Dow Chemical製TRITON(登録商標)CF-21を含有する混合物に添加することによって、水性ポリマー組成物を製造した。撹拌の後、ECTFEは水によく分散した。
ステンレス鋼クーポン(幅4インチ×長さ4インチ×幅1/16インチ)に砂を吹き付けて汚染物を除去し、表面を粗くし、次に揮発性有機溶媒を除去した。薄いガラス繊維布粘着テープ(幅1/2インチ、長さ1/2インチ)をステンレス鋼クーポンの一端の中央に適用した。次に、プライマー分散液の薄層をクーポンに噴霧し、260℃で15分間焼成した。プライマーを焼成した直後に、ECTFE粉末(Solvay Solexis, Inc.製HALAR(登録商標)6014F)をプライマーに静電的に噴霧し、260℃で15分間焼成した。ECTFE粉末を適用するとともに260℃で15分間焼成する工程を2回繰り返して更にECTFEトップコートを適用した。ステンレス鋼クーポン上の最終的なコーティング厚は、約22milから約30milであった。
プライマーコートの最初の焼成後、プライマーは褐色の色を有した。しかしながら、トップコート層の適用の間、焼成サイクル後に色は暗褐色に変わった。このことにより、ECTFEはポリアミドイミドの存在なくこのような高熱曝露サイクルに耐えることができず、また、ポリアミドイミドは少なくとも、プライマーにおいてECTFEの安定剤として機能することが機示された。この実施例と結果は表1に言及されている。
【0070】
実施例3〜18
各実施例について、50グラムの水を有する反応容器に実施例1からの50グラムの水溶液を充填して5.5質量%のポリアミドアミック酸のアミン塩を有する溶液を得た。平均粒径が5μm未満のECTFE粉末(Solvay Solexis, Inc.製HALAR(登録商標) 6014F)と分散剤を反応容器に添加し、周囲温度で攪拌してプライマー組成物を得た。
プライマー組成物がECTFE9部とポリアミドアミック酸のアミン塩1部を有するように各実施例について十分なECTFE粉末を添加した。各実施例について分散剤の種類と量を表1に示す。各実施例について、ステンレス鋼クーポン(幅4インチ×長さ4インチ×幅1/16インチ)に砂を吹き付けて汚染物を除去し、表面を粗くし、次に揮発性有機溶媒を除去した。薄いガラス繊維布粘着テープ(幅1/2インチ、長さ1/2インチ)をステンレス鋼クーポンの一端の中央に適用した。次に、プライマー分散液の薄層をクーポンに噴霧し、260℃で15分間焼成した。プライマーを焼成した直後に、ECTFE粉末(Solvay Solexis, Inc.製HALAR(登録商標)6014F)をプライマーに静電的に噴霧し、260℃で15分間焼成した。ECTFE粉末を適用するとともに260℃で15分間焼成する工程を2回繰り返して更にECTFEトップコートを適用した。
【0071】
ECTFE被覆ステンレス鋼クーポンの各々を一晩冷却した後、各コーティングをガラス繊維布テープの両側に沿って切断して寸法が幅1/2インチ、長さ4インチのECTFEコーティング片を得た。次に、薄いガラス繊維テープをクーポン表面から持ち上げ、INSTRON(登録商標) Corporation、カントン、マサチューセッツ、米国製INSTRON(登録商標)ヘッドによってつかみ、剥離強度を測定した。
ステンレス鋼クーポンを、各被覆ガラス繊維片を各ステンレス鋼クーポンの表面に垂直に保つために移動した、特別なINSTRON(登録商標)アタッチメントによって保持した。各実施例について90oの角度における剥離強度を記録し、各実施例(実施例3-18)の結果を表1に示す。これらの実施例の全てのトップコートはプライマーに少なくとも十分に付着し、コーティングは基体に十分に付着した。
【0072】
実施例19〜21
ECTFE粉末の粒径が表1に示されるように125ミクロンから5ミクロン未満まで変動する以外は、実施例3〜18に記載された同じ方法で実施例19〜21のプライマー組成物を調製した。実施例19、20、21のプライマーを実施例3〜18記載される同様の方法でトップコーティングを有するステンレス鋼クーポンに適用し、上記実施例3〜18に記載される手順と装置を適用して剥離強度試験に供した。
実施例19、20、21の剥離強度試験の結果を、表1に示す。これらの実施例の全てが基体に十分に付着し、トップコートがプライマーに十分に付着した。これらの結果から、プライマー組成物とトップコート間の付着強度がプライマー組成物における部分的フッ素化ポリマー、例えば、ECTFEの粒径の減少によって改善されたことが示される。
【0073】
実施例22
20グラムの実施例1からの水溶液を反応容器内の10グラムの水に充填して水溶液を得た。次に、この溶液に2グラムのTERGITOL(登録商標) MIN 1X分散剤を添加した。ステンレス鋼クーポン(幅4インチ×長さ4インチ×幅1/16インチ)に砂を吹き付けて汚染物を除去し、表面を粗くし、次に揮発性有機溶媒を除去した。薄いガラス繊維布粘着テープ(幅1/2インチ、長さ1/2インチ)をステンレス鋼クーポンの一端の中央に適用した。次に、上記水溶液の薄層をクーポンに噴霧し、表面を湿らせた。直ちに、ECTFE粉末の薄層をこの湿った表面に噴霧し、260℃で15分間焼成して、厚みが2.2milのプライマーコートを得た。プライマーを焼成した直後に、ECTFE粉末(Solvay Solexis, Inc.製HALAR(登録商標)6014F)をプライマーに静電的に噴霧し、260℃で15分間焼成した。ECTFE粉末を適用するとともに260℃で15分間焼成する工程を2回繰り返して更にECTFEトップコートを適用した。
【0074】
ECTFE被覆ステンレス鋼クーポンを一晩冷却した後、コーティングをガラス繊維布テープの両側に沿って切断して寸法が幅1/2インチ、長さ4インチのECTFEコーティング片を得た。次に、薄いガラス繊維テープをクーポン表面から持ち上げ、INSTRON(登録商標) Corporation、カントン、マサチューセッツ、米国製INSTRON(登録商標)ヘッドによってつかみ、剥離強度を測定した。ステンレス鋼クーポンを、被覆ガラス繊維片をステンレス鋼クーポンの表面に垂直に保つために移動した、特別なINSTRON(登録商標)アタッチメントによって保持した。この実施例のコーティングについて90oの角度における剥離強度は92lb/inであり、破損形態として膜が破断し、これは実施例17において得られた結果と同様である。
【0075】
表1

【0076】
実施例23
45.55グラムの芳香族ポリアミック酸(Solvay Advanced Polymers製TORLON(登録商標)AI-50、固形分=40%を有する湿った粉末として入手できる)を145.35グラムの水と9.11グラムのトリエチルアミン(TEA)の混合物に分散した。次に、その分散液を50℃で3時間保持した。徐々に、固体が約9質量%のポリアミドアミック酸塩を含有する褐色の水溶液に溶解した。冷却後、この水溶液は室温での保存に安定である。
【0077】
実施例24
33.82グラムの芳香族ポリアミック酸(Solvay Advanced Polymers製TORLON(登録商標)AI-30、固形分=34%を有する湿った粉末として入手できる)を159.42グラムの水と6.76グラムのトリエチルアミン(TEA)の混合物に分散した。次に、その分散液を50℃で3時間保持した。徐々に、固体が約6質量%のポリアミドアミック酸塩を含有する褐色の水溶液に溶解した。冷却後、この水溶液は室温での保存に安定である。
【0078】
実施例25
49.0グラムの実施例23からの水溶液を48.0グラムのMFA濃縮分散液(Solvay Solexis製HYFLON(登録商標)D5010、質量における固形分55%、4%の非イオン性界面活性剤を含有する)と穏やかに撹拌して混合した。撹拌して混合物を保持しつつ、混合物に5.0グラムのチャンネルブラックペースト/水(質量における固形分30%)を添加して黒に着色したペイントになった。得られた水性組成物は、均一で安定であった。
アルミニウムクーポン(長さ100×100mm×厚さ2mm)に砂を吹き付けて汚染物を除去するとともに表面を粗くし、次に、揮発性有機溶媒で洗浄した。次に、黒色組成物の8-12μm層をプライマーとしてクーポンに噴霧し、150℃で炉内で乾燥した。プライマーを、静電スプレーコーティングによって適用されたHYFLON(登録商標)MFA 6010粉末でオーバーコートして2つのコーティング層を得た。パネルを385℃で30分間焼成して厚さ70μmの膜コーティングが生じた。
MFA被覆クーポンを冷却した後、膜を100×倍率の光学顕微鏡(Leiz SM-.LUX)によって検査し、クロスカット試験によって付着を調べた。コーティングは連続であり、プライマー-基体(P/S)又はトップコート-プライマー(T/P)界面のどちらも層間剥離は見られなかった。この実施例と結果は表2に言及されている。
【0079】
実施例26
50.0グラムの実施例24からの水溶液を30.9グラムのMFA濃縮分散液(Solvay Solexis製HYFLON(登録商標)D5010、質量における固形分55%、4%の非イオン性界面活性剤を含有する)と穏やかに撹拌して混合した。撹拌して混合物を保持しつつ、混合物に3.3グラムのチャンネルブラックペースト/水(質量における固形分30%)を添加して黒に着色したペイントになった。得られた水性組成物は、均一で安定であった。
炭素鋼クーポン(長さ100×100mm×厚さ3mm)を砂で吹き付けて汚染物を除去するとともに表面を粗くし、次に、揮発性有機溶媒で洗浄した。次に、黒色組成物の15-20μm層をプライマーとしてクーポンに噴霧し、150℃で炉内で乾燥した。プライマーを、静電スプレーコーティングによって適用されたHYFLON(登録商標)MFA 6010粉末でオーバーコートして2つのコーティング層を得た。パネルを385℃で30分間焼成して厚さ85μmの膜コーティングが生じた。
MFA被覆クーポンを冷却した後、膜を100×倍率の光学顕微鏡(Leiz SM-.LUX)によって検査し、クロスカット試験によって付着を調べた。コーティングは連続であり、プライマー-基体(P/S)又はトップコート-プライマー(T/P)界面のどちらも層間剥離は見られなかった。この実施例と結果は表2に言及されている。
【0080】
実施例27
100.0グラムの実施例24からの水溶液を25.5グラムのMFA濃縮分散液(Solvay Solexis製HYFLON(登録商標)D5010、質量における固形分55%、4%の非イオン性界面活性剤を含有する)と穏やかに撹拌して混合した。撹拌して混合物を保持しつつ、混合物に4.3グラムのチャンネルブラックペースト/水(質量における固形分30%)を添加して黒に着色したペイントになった。得られた水性組成物は、均一で安定であった。
炭素鋼クーポン(長さ100×100mm×厚さ3mm)に砂を吹き付けて汚染物を除去し、表面を粗くし、次に揮発性有機溶媒を洗浄した。薄いガラス繊維布粘着テープ(幅1/2インチ、長さ1/2インチ)をステンレス鋼クーポンの一端の中央に適用した。次に、黒色組成物の20-25μmをプライマーとしてクーポンに噴霧した。プライマーを適用した直後に、パネルを湿式法に関する粉末を用いて、静電スプレーコーティングで適用されるHYFLON(登録商標)MFA 6010でオーバーコートした。次に、パネルを405℃で20分間焼成して2つのコート層の適当な層化とポリアミドイミドの硬化を得た。MFA粉末を適用する工程を、5回反復し、各層を330℃で15分間焼成して更にMFAトップコートを適用した。ステンレス鋼クーポン上の最終的なコーティング厚さは、約400μmであった。
【0081】
MFA被覆ステンレス鋼クーポンを一晩冷却した後、各コーティングをガラス繊維布テープの両側に沿って切断して寸法が幅1/2インチ、長さ4インチのMFAコーティング片を得た。次に、薄いガラス繊維テープをクーポン表面から持ち上げ、INSTRON(登録商標)ヘッドによってつかみ、剥離強度を測定した。ステンレス鋼クーポンを、各被覆ガラス繊維片をステンレス鋼クーポンの表面に垂直に保つために移動した、特別なINSTRON(登録商標)アタッチメントによって保持した。90oの角度の剥離強度の結果を表2に示す。
【0082】
実施例28
HYFLON(登録商標)MFA 6010の湿式適用に対する最初の粉末と405℃における20分間の焼成後、MFA粉末を適用する工程を10回反復し、各層を330℃で15分間焼成し、更にMFAトップコートを適用し、約725μmのステンレス鋼上の最終的なコーティング厚さに達した以外は、実施例27において用いられた同じ組成物と手順を用いた。MFA被覆クーポンを冷却した後、上記のように、付着は、90oの角度の剥離強度試験によって検査し、結果は表2に言及されている。
【0083】
実施例29
100.0グラムの実施例24からの水溶液を11グラムのMFA濃縮分散液(Solvay Solexis製HYFLON(登録商標)D5010、質量における固形分55%、4%の非イオン性界面活性剤を含有する)と穏やかに撹拌して混合した。撹拌して混合物を保持しつつ、混合物に2グラムのチャンネルブラックペースト/水(質量における固形分30%)を添加して黒に着色したペイントになった。得られた水性組成物は、均一で安定であった。
炭素鋼クーポン(長さ100×100mm×厚さ3mm)に砂を吹き付けて汚染物を除去し、表面を粗くし、次に揮発性有機溶媒を洗浄した。薄いガラス繊維布粘着テープ(幅1/2インチ、長さ1/2インチ)をステンレス鋼クーポンの一端の中央に適用した。次に、黒色組成物の20-25μmをプライマーとしてクーポンに噴霧した。プライマーを適用した直後に、パネルを湿式法に関する粉末を用いて、静電スプレーコーティングで適用されるHYFLON(登録商標)MFA 6010でオーバーコートした。次に、パネルを405℃で20分間焼成して2つのコート層の適当な層化とポリアミドイミドの硬化を得た。MFA粉末を適用する工程を、5回反復し、各層を330℃で15分間焼成して更にMFAトップコートを適用した。ステンレス鋼クーポン上の最終的なコーティング厚さは、約400μmであった。
MFA被覆ステンレス鋼クーポンを一晩冷却した後、各コーティングをガラス繊維布テープの両側に沿って切断して寸法が幅1/2インチ、長さ4インチのMFAコーティング片を得た。次に、薄いガラス繊維テープをクーポン表面から持ち上げ、INSTRON(登録商標)ヘッドによってつかみ、剥離強度を測定した。ステンレス鋼クーポンを、各被覆ガラス繊維片をステンレス鋼クーポンの表面に垂直に保つために移動した、特別なINSTRON(登録商標)アタッチメントによって保持した。90oの角度の剥離強度の結果を表2に示す。
【0084】
実施例30
100グラムの実施例23からの水溶液を反応容器内の50グラムの水に充填して6質量%のポリアミック酸を有する水溶液を得た。次に、その溶液に100グラムのPTFE粉末(Solvay Solexis製POLYMIST(登録商標)F5A)を室温で徐々に約15分間で導入した。得られた分散液を、PTFE粉末の全量を添加した後に更に5分間撹拌して保持した。均一な分散液を得た。得られた分散液は、2時間後に目に見える沈降徴候がなく安定であった。
得られた水性分散液を、予め揮発性有機溶媒で洗浄したアルミニウムパネル(長さ100×100mm×厚さ2mm)にエアガン吹付けによって適用した。パネルをまず100℃で乾燥し、均一な乾燥被覆層が観察された。乾燥した被覆パネルを400℃で10分間焼結し、30μmの厚さを特徴とする均一なコーティングを得た。
冷却後、被覆クーポンを100×倍率の光学顕微鏡(Leiz SM-.LUX)によって検査し、クロスカット試験によって付着を調べた。コーティングは連続であり、層間剥離は観察されなかった。この実施例と結果は表2に言及されている。
【0085】
実施例31
乾燥したパネルを260℃で2時間の炉内で焼成して芳香族ポリアミック酸を硬化させる以外は、実施例30に記載される同じ組成物とコーティング手順を繰り返した。得られたコーティングは均一であり、金属に対する付着が十分であった。
冷却後、被覆クーポンを100×倍率の光学顕微鏡(Leiz SM-LUX)によって検査し、クロスカット試験によって付着を調べ、コーティングは連続であり、層間剥離は観察されなかった。この実施例と結果は表2に言及されている。
【0086】
実施例32
100グラムの実施例23からの水溶液を反応容器内の50グラムの水に充填して6質量%のポリアミック酸を有する水溶液を得た。次に、その溶液に80グラムのPAI粉末(Solvay Solexis製TORLON(登録商標) 4000TF)を室温で徐々に約15分間で導入した。得られた分散液を、PAI粉末の全量を添加した後に更に5分間撹拌して保持した。均一な分散液を得、2時間後に目に見える沈降徴候がなく良好な安定性を示した。
得られた水性分散液を、予め揮発性有機溶媒で洗浄したアルミニウムパネル(長さ100×100mm×厚さ2mm)にエアガン吹付けによって適用した。パネルをまず100℃で乾燥し、均一な乾燥被覆層を得た。乾燥した被覆パネルを250℃で2時間硬化し、20μmの厚さを特徴とする均一なコーティングを得た。
冷却後、被覆クーポンを100×倍率の光学顕微鏡(Leiz SM-.LUX)によって検査し、クロスカット試験によって付着を調べた。コーティングは連続であり、層間剥離は観察されなかった。この実施例と結果は表2に言及されている。
【0087】
実施例33(比較例)
Concannonの米国特許第4,014,834号に開示された手順を用いて酸含有量80mg KOH/gを特徴とするポリアミック酸の水性溶液を調製した(Solvay Advanced Polymers製TORLON(登録商標)AI-10)。
15グラムのポリアミック酸Torlon(登録商標) AI-10を、50グラムの水、4グラムのジエチルエタノールアミン、2グラムのトリエチルアミン、18グラムのフルフリルアルコール、10グラムのN-メチルピロリドン(NMP)の混合物に分散した。次に、分散液を50℃で4時間保持した。徐々に、固体は、約15質量%のポリアミック酸と30%の有機溶媒を含有する褐色の水溶液に溶解した。冷却後、この水溶液は室温での保存に安定であった。
【0088】
実施例34(比較例)
80mgのKOH/gの酸含有量を特徴とする15グラムのポリイミドアミック酸(Solvay Advanced Polymers製TORLON(登録商標)AI-10)を80グラムのN-メチルピロリドン(NMP)に分散した。次に、分散液を50℃で1時間保持した。徐々に、固体は約15質量%の固形分を含有する褐色溶液に溶解した。冷却後、この水溶液は室温での保存に安定であった。
【0089】
実施例35(比較例)
35.0グラムの実施例34からの水/NMP溶液を9.5グラムのMFA濃縮分散液(Solvay SolexisからHYFLON(登録商標)D5010、質量における固形分55%、4%の非イオン性界面活性剤を含有する)と穏やかに撹拌して混合した。撹拌しつつ、その混合物に1.75グラムのチャンネルブラックペースト/水(質量における固形分30%)を添加して黒色に着色したペイントになった。得られた水性組成物は均一であったが、粘度は非常に高く、ある安定性の問題を示した。
黒色の組成物を、あらかじめ砂を吹き付けて汚染物を除去するとともに表面を粗くし、揮発性有機溶媒で洗浄した炭素鋼クーポン(長さ100×100mm×厚さ3mm)に噴霧した。そのように得られた15-20μmプライマー層は均一でなく、表面に斑点が検出された。150℃の炉内で乾燥した後、プライマーを、静電スプレーコーティングによって適用したHYFLON(登録商標)MFA 6010粉末でオーバーコートして2つのコート層を得た。パネルを385℃で30分間焼成して厚み60μmの膜コーティングが生じた。
MFA被覆クーポンを冷却した後、膜を、100×倍率の光学顕微鏡(Leiz SM-.LUX)によって検査し、カットクロス試験によって付着を調べた。付着は十分でなく、パネルはサンド試験で破損した。本実施例と結果は表2に言及されている。
【0090】
実施例36(比較例)
45.0グラムの実施例35からのNMP溶液を6.7グラムのMFA粉末(Solvay Solexis製HYFLON(登録商標)6010、質量における固形分55%、4%の非イオン性界面活性剤を含有する)と混合し、その混合物を実施例31において行ったように撹拌した。NMP溶液は粉末を湿潤せず、分散液は得られなかった。
【0091】
実施例37-39(比較例)
40グラムのポリマー粉末を5%非イオン性界面活性剤溶液(Dow製Triton X100)に添加することによってSolvay Solexis製HYFLON(登録商標)MFA 6010やTORLON(登録商標) F5A、Solvay Advanced Polymers製POLYMIST(登録商標) 4000TF粉末の水分散液を調製した。その混合物を実施例31において行ったように撹拌した。得られた全ての水分散液の粉末は速やかな沈降を示した。
ポリマー分散液を、あらかじめ揮発性有機溶媒で洗浄したアルミニウムパネル(長さ100×100mm×厚み2mm)に噴霧した。被覆されたパネルを100℃で乾燥したが、乾燥粉末はアルミニウムに付着せず、連続被覆層を得ることが不可能であるとわかった。
【0092】
表2

【0093】
表2つづき

(§) MFA HYFLON(登録商標)D5010 (APS = 180 nm);(‡) PTFE POLYMIST(登録商標)F5A (APS = 4,5μm);(†) PAI TORLON(登録商標)4000TF ;(□) MFA HYFLON(登録商標)6010 ;(*)混和しない;(**)膜形成組成物でない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ポリマー組成物であって、
・少なくとも1つのポリマー(P)、該ポリマー(P)はフッ素化モノマーと少なくとも1種の他の水素添加コモノマーから誘導される反復単位からなり、該ポリマー(P)は該組成物の全質量に対して0.5wt%〜75wt%の量で存在する;
・反復単位を含む少なくとも1つの芳香族ポリアミック酸(A)であって、50モル%を超える前記反復単位が少なくとも1つの芳香環と少なくとも1つのアミック酸基及び/又はイミド基[反復単位(R2)]を含み、該反復単位(R2)のうち50モル%を超える反復単位が少なくとも1つのアミック酸基を含み、該アミック酸基の一部又は全部が少なくとも1つの塩基性化合物(B)によって中和されている芳香族ポリアミック酸、該芳香族ポリアミック酸(A)は該組成物の全質量に対して0.01wt%〜50wt%の量で存在する;
・水;
・任意に、芳香族ポリアミック酸の質量に対して20wt%未満の量の少なくとも1つの有機溶媒(S)
を含む、前記組成物。
【請求項2】
反復単位(R2)が
【化1】

(式中、
・→は異性を示すので、ポリアミック酸構造内のあらゆる反復単位において矢印が示す基は図示されるように又は入れ替えられた位置で存在することができ、
・Arは、
【化2】

である。)
より選ばれる、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
反復単位(R2)が
【化3】

及び/又は対応するイミド基含有反復単位:
【化4】

(ここで、(i-a)に示される2つのアミド基の芳香環への給合は、1,3と1,4のポリアミドアミック酸構造であると理解される。);
【化5】

及び/又は対応するイミド基含有反復単位:
【化6】

(ここで、(ii-a)に示される2つのアミド基の芳香環への給合は、1,3と1,4のポリアミドアミック酸構造であると理解される。); 及び
【化7】

及び/又は対応するイミド基含有反復単位:
【化8】

(ここで、(iii-a)に示される2つのアミド基の芳香環への給合は、1,3と1,4のポリアミドアミック酸構造であると理解される。)
より選ばれる、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
芳香族ポリアミック酸(A)が反復単位(i)又は反復単位(ii)と(iii)の混合からなる、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
芳香族ポリアミック酸(A)の酸価(KOHのミリグラム/グラム)が少なくとも100である、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
塩基性化合物(B)が第三級アミンである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
第三級アミンが、トリエチルアミン及びN,N-ジメチルエタノールアミン及びその混合物からなる群より選ばれる、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
ポリマー(P)が粒子からなる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
ポリマー(P)がエチレン(E)/クロロトリフルオロエチレン(CTFE)コポリマー及びエチレン(E)/テトラフルオロエチレン(TFE)コポリマーから選ばれる部分的フッ素化フルオロポリマーである、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
部分的フッ素化フルオロポリマーの平均粒径が最大でも125μmで少なくとも0.2μmである、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
組成物が、部分的フッ素化フルオロポリマーの質量で少なくとも0.1%で多くても50%の芳香族ポリアミック酸(A)を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
組成物が、更に少なくとも1つの分散剤を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
組成物が、部分的フッ素化フルオロポリマーの質量で少なくとも0.5%で多くても20%の分散剤を含む、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物を含む製品。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物を含む被覆膜。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物を含む中間層。
【請求項17】
多層構造に含まれることを特徴とする、請求項16記載の中間層。
【請求項18】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物を含む少なくとも1つの層を含んでいる多層構造。

【公開番号】特開2011−184694(P2011−184694A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88987(P2011−88987)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【分割の表示】特願2006−521587(P2006−521587)の分割
【原出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】