説明

水性不織物バインダーおよびこれから製造された処理された不織物

【課題】不織物基材に対する湿潤強度および分散性の有用なバランスを発現するバインダーの提供。
【解決手段】エマルションポリマーの重量を基準にして0.1重量%〜5重量%のモノエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー、およびエマルションポリマーの重量を基準にして12重量%〜22重量%のモノエチレン性不飽和モノ酸モノマーを共重合単位として含み、エマルションポリマーの計算Tgが−20℃〜30℃であるエマルションポリマーを得る。これを不織物に含浸させ、加熱処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性不織物バインダー(aqueous nonwoven binder)、この水性不織物バインダーを使用して処理された不織物基材を形成する方法、およびこのように処理された処理された不織物基材に関する。水性不織物バインダーはエマルションポリマーを含み、このエマルションポリマーは、エマルションポリマーの重量を基準にして0.1重量%〜5重量%のモノエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー、およびエマルションポリマーの重量を基準にして12重量%〜22重量%のモノエチレン性不飽和モノ酸モノマーを共重合単位として含み、このエマルションポリマーの計算Tgは−20℃〜30℃である。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,451,432号は可撓性で多孔質の基材を、ホルムアルデヒドを含まない水性組成物で処理する方法を開示し、この組成物は特定の共重合されたエチレン性不飽和ジカルボン酸もしくはその誘導体を含み、バインダーは不揮発性塩基で部分的に中和されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,451,432号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
望ましい水準の湿潤強度を維持しつつ、処理された不織物基材の分散性の改良されたバランスが依然として望まれている。選択された水性不織物エマルションポリマーバインダーが所望の特性を提供したことが見いだされた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の形態においては、エマルションポリマーの重量を基準にして0.1重量%〜5重量%のモノエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー、およびエマルションポリマーの重量を基準にして12重量%〜22重量%のモノエチレン性不飽和モノ酸モノマーを共重合単位として含み、エマルションポリマーのTgが−20℃〜30℃であるエマルションポリマーを含む水性不織物バインダーが提供される。
本発明の第2の形態においては、a)エマルションポリマーの重量を基準にして0.1重量%〜5重量%のモノエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー、およびエマルションポリマーの重量を基準にして12重量%〜22重量%のモノエチレン性不飽和モノ酸モノマーを共重合単位として含み、エマルションポリマーのTgが−20℃〜30℃であるエマルションポリマーを含む水性組成物を形成し;b)不織物基材を前記水性組成物と接触させ;並びにc)前記接触させられた不織物を120℃〜220℃の温度に加熱する;ことを含む、処理された不織物基材を形成する方法が提供される。
本発明の第3の形態においては、本発明の第2の形態の方法によって形成された処理された不織物基材が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
水性不織物バインダーはエマルションポリマー;すなわち、水性乳化重合プロセスにおいてエチレン性不飽和モノマーの付加重合により製造されるポリマーを含む。本明細書においては「水性」とは、連続相が水であるか、もしくは選択的に過半の水を含むが水混和性溶媒も含む混合物である組成物を意味する。本明細書においては「不織物(nonwoven)」とは織られた材料でも編まれた材料でもない、繊維の布のような集合体、典型的にはシートもしくはウェブ形態の集合体を意味する。本明細書においては、「バインダー」はポリマーを含む組成物を意味する。
【0007】
本明細書においては、水性バインダーは硬化性であり、追加のエネルギー、最も典型的には加熱の作用の下で、共有結合形成のような化学処理をある程度受けるエマルションポリマーを含む。エマルションポリマーは、共重合単位として、エマルションポリマーの重量を基準にして0.1重量%〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%、およびより好ましくは0.2重量%〜0.8重量%のモノエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー、例えば、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、例えば、これらの無水物、塩およびこれらの混合物を含む。好ましいのはイタコン酸である。
【0008】
エマルションポリマーは共重合単位として、エマルションポリマーの重量を基準にして12重量%〜22重量%、好ましくは15重量%〜22重量%のモノエチレン性不飽和モノ酸モノマーも含む。モノ酸モノマーには、例えば、カルボン酸モノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸モノメチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノブチル;並びに硫黄含有酸モノマー、およびリン含有酸モノマーなどが挙げられる。好ましいモノ酸モノマーはカルボン酸モノマーである。より好ましいのはアクリル酸である。
【0009】
エマルションポリマーは共重合されたモノ酸モノマーおよびジカルボン酸モノマーに加えて、少なくとも1種の共重合されたエチレン性不飽和モノマー、例えば、(メタ)アクリルエステルモノマー、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、ウレイド官能性(メタ)アクリラート、および(メタ)アクリル酸のアセトアセタート、アセトアミドもしくはシアノアセタート;スチレンもしくは置換スチレン;ビニルトルエン;ブタジエン;酢酸ビニルもしくは他のビニルエステル;ビニルモノマー、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、N−ビニルピロリドン;並びに(メタ)アクリロニトリルなどを含む。別の用語が後に続く用語「(メタ)」の使用、例えば、(メタ)アクリラートもしくは(メタ)アクリルアミドは、本開示を通して使用される場合、それぞれアクリラートおよびメタクリラートの双方もしくはアクリルアミドおよびメタクリルアミドの双方を言及する。好ましくは重合もしくは後の処理中にホルムアルデヒドを生じさせうるモノマー、例えば、N−アルキロール(メタ)アクリルアミドなどは除かれる。ある実施形態においては、エマルションポリマーはポリマーの重量を基準にして0〜2重量%、もしくは選択的に0〜0.1重量%の共重合された多エチレン性不飽和モノマーを含むことができるが、その量はこのエマルションポリマーを含む水性不織物バインダーで処理される不織物基材の分散性を実質的に悪化させないように選択されなければならない。多エチレン性不飽和モノマーには、例えば、(メタ)アクリル酸アリル、フタル酸ジアリル、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリラート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリラート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、およびジビニルベンゼンが挙げられる。
【0010】
異なる組成を有するエマルションポリマーの混合物も意図される。2種以上のエマルションポリマーの混合物については、共重合されたモノ酸およびジカルボン酸含量は、その中のエマルションポリマーの数もしくは組成に関係なくエマルションポリマーの全体組成から決定されるものとする。
【0011】
エマルションポリマーを製造するために使用される乳化重合技術は、例えば、米国特許第4,325,856号;第4,654,397号;および第4,814,373号に開示される様に当該技術分野において周知である。例えば、アニオン性および/または非イオン性乳化剤、例えば、アルキル硫酸アルカリ金属もしくはアンモニウム、アルキルスルホン酸、脂肪酸、共重合可能な界面活性剤、並びにオキシエチル化アルキルフェノールのような従来の界面活性剤が使用されうる。好ましいのはアニオン性乳化剤である。使用される界面活性剤の量は、全モノマーの重量を基準にして通常0.1重量%〜6重量%である。熱もしくはレドックス開始プロセスが使用されうる。従来のフリーラジカル開始剤、例えば、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシド、過硫酸アンモニウムおよび/または過硫酸アルカリなどが、典型的には全モノマーの重量を基準にして0.01重量%〜3.0重量%の量で使用されうる。同じ開始剤を好適な還元剤、例えば、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、ハイドロサルファイトナトリウム、イソアスコルビン酸、硫酸ヒドロキシルアミンおよび亜硫酸水素ナトリウムなどと共に使用するレドックスシステムが同じ量で、場合によっては鉄および銅のような金属イオンと組み合わせて、場合によってはこの金属のための錯化剤をさらに含んで使用されうる。ポリマーの分子量を小さくするためにメルカプタンのような連鎖移動剤が使用されうる。モノマー混合物はそのままでもしくは水中のエマルションとして添加されうる。モノマー混合物は一回の添加で、もしくは複数回の添加で、もしくは反応期間にわたって均一なもしくは変化する組成を用いて連続的に添加されうる。追加の成分、例えば、フリーラジカル開始剤、酸化剤、還元剤、連鎖移動剤、中和剤、界面活性剤、および分散剤などが段階のいずれかの前に、その際に、もしくはその後に添加されうる。多モード粒子サイズ分布を生じさせる方法、例えば、米国特許第4,384,056号、および第4,539,361号に開示される方法などが使用されうる。
【0012】
本発明の別の実施形態においては、エマルションポリマーは多段階乳化重合プロセスによって製造されることができ、このプロセスにおいては組成が異なる少なくとも2つの段階が逐次的な様式で重合される。このようなプロセスは通常、少なくとも2つの相互に非混和性のポリマー組成物の形成をもたらし、それによりポリマー粒子内に少なくとも2つの相の形成をもたらす。このような粒子は様々な形状の2以上の相からなり、例えば、コア/シェルもしくはコア/シース粒子、シェル相が不完全にコアを封入しているコア/シェル粒子、複数のコアを含むコア/シェル粒子、並びに相互侵入(interpenetrating)網目粒子などである。多段階エマルションポリマーの段階のそれぞれは、本明細書においてエマルションポリマーについて上述したものから選択される、モノマー、界面活性剤、連鎖移動剤などを含むことができる。多段階エマルションポリマーについては、共重合されるモノ酸およびジカルボン酸含量は、この中の段階もしくは相の数とは関係なくエマルションポリマーの全体組成から決定されるものとする。このような多段階エマルションポリマーを製造するために使用される重合技術は当該技術分野において、例えば、米国特許第4,325,856号;第4,654,397号;および第4,814,373号などにおいて周知である。
【0013】
エマルションポリマーの計算ガラス転移温度(「Tg」)は−20℃〜30℃である。本明細書においては、ポリマーのTgはフォックス式(T.G.Fox,Bull.Am.Physics Soc.,第1巻、第3号、123ページ(1956年))を用いて計算されるものである。すなわち、モノマーM1およびM2のコポリマーのTgを計算するために
【数1】

式中、Tg(calc.)はコポリマーについて計算されるガラス転移温度であり;
w(M1)はコポリマー中のモノマーM1の重量分率であり;
w(M2)はコポリマー中のモノマーM2の重量分率であり;
Tg(M1)はM1のホモポリマーのガラス転移温度であり;
Tg(M2)はM2のホモポリマーのガラス転移温度であり;
全ての温度は°K単位である。
【0014】
ホモポリマーのガラス転移温度は、例えば「Polymer Handbook(ポリマーハンドブック)」J.Brandrup(ブランドラップ)およびE.H.Immergut(イメルグート)編、Interscience Publishers(インターサイエンスパブリシャーズ)に認められうる。ともかく、以下のホモポリマーTgが以下のポリ酸についてのフォックス式計算に使用されるものである:ポリ(メタクリル酸)Tg=185℃;ポリ(アクリル酸)Tg=106℃;ポリ(イタコン酸)Tg=154℃;およびポリ(無水マレイン酸)Tg=154℃。
【0015】
エマルションポリマー粒子の平均粒子直径は、ニューヨーク州、ホルツビルのブルックハーベンインスツルメントコーポレーションにより供給されるブルックハーベン(Brookhaven)モデルBI−90パーティクルサイザーによって測定して、30ナノメートル〜500ナノメートル、好ましくは200ナノメートル〜450ナノメートルである。
【0016】
本発明の水性不織物バインダーは好ましくはホルムアルデヒドを含まない組成物である。本明細書において「ホルムアルデヒドを含まない組成物」とは、その組成物がホルムアルデヒドを実質的に含まず、かつ乾燥および/または硬化の結果として実質的なホルムアルデヒドを遊離させないことを意味する。組成物のホルムアルデヒド含量を最小にするために、本発明のエマルションポリマーを製造する際には、それ自体がホルムアルデヒドを含まず、重合プロセス中にホルムアルデヒドを発生させず、かつ基材の処理中にホルムアルデヒドを発生もしくは放出させない重合添加剤、例えば、開始剤、還元剤、連鎖移動剤、殺生物剤、界面活性剤などを使用することが好ましい。低濃度のホルムアルデヒドが水性組成物中に許容可能である場合、またはホルムアルデヒドを発生させるかもしくは放出する添加剤を使用するのに仕方のない理由が存在する場合には、このような組成物が使用されうる。
【0017】
水性不織物バインダーはエマルションポリマーに加えて、従来の処理成分、例えば、乳化剤、顔料、充填剤もしくはエキステンダー、移動防止剤(anti−migration aid)、硬化剤、造膜助剤、界面活性剤、殺生物剤、可塑剤、有機シラン、消泡剤、腐蝕防止剤、着色剤、ワックス、本発明のではない他のポリマー、および酸化防止剤などを含んでいてもよい。
【0018】
本発明の一形態においては、a)本発明の水性不織物バインダーを形成し;b)不織物基材を水性不織物バインダーと接触させ;およびc)接触させられた不織物を120℃〜220℃の温度に加熱する;ことを含む、処理された基材を形成する方法が提供される。不織物基材には紙;不織布;フェルトおよびマット;または繊維の他の集合体が挙げられる。繊維を含む基材には、セルロース系繊維、例えば、木材パルプ、綿およびレーヨン;合成繊維、例えば、ポリエステル、ガラスなど;これらの混合物などが挙げられうる。任意の合成繊維が、その長さおよび量が処理される不織物基材の最終的な分散性に反しないように典型的に選択される。好ましいのはセルロース系繊維である。不織物基材はウェットレイドもしくはエアレイドウェブ形成のような当該技術分野において既知の方法によって形成されうる。
【0019】
不織物基材は従来の適用技術、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、パディング、飽和、ロールコーティング、カーテンコーティング、グラビア印刷などを用いて水性不織物バインダーと接触させられる。片面もしくは両面にもしくはその付近に、または基体全体にわたって均一にもしくは均一でなく分配してバインダーを提供するように不織物基材は水性不織物バインダーと接触させられうる。パターン形成された分配が望まれる場合には、水性不織物バインダーは不均一な方法で片面もしくは両面に適用されうることも意図される。許容可能な水準の乾燥および硬化を達成するのに充分な時間で、120℃〜220℃、好ましくは140℃〜180℃の温度で、接触させられた不織物を加熱することが行われる。所望の場合には、乾燥および硬化機能は2以上の別個の工程でもたらされうる。例えば、組成物はまず、組成物を実質的に乾燥させるのに充分であるが実質的に硬化させない温度および時間で加熱されることができ、次いで、硬化を達成するためにより高い温度および/またはより長い期間で二回目の加熱が行われうる。「B−ステージング」と称されるこのような手順は、硬化プロセスと同時に具体的な形状への形成もしくは成形を伴うかまたは伴わずに後の時点で硬化されることができるバインダー処理された不織物を、例えば、ロール形態で提供するために使用されうる。
【0020】
本発明の処理された不織物基材は、例えば、処理された不織物がトイレフラッシング動作におけるような過剰な水中に配置された場合における有用な程度の分散性と同時に、処理された不織物が例えば、ワイプにおける使用などのために湿潤状態で貯蔵されるものであった場合などに必要とされる湿潤強度などの強度との有用なバランスを有する。
【0021】
使用される略語
AA=アクリル酸
EA=アクリル酸エチル
IA=イタコン酸
DI水=脱イオン水
【0022】
実施例1.エマルションポリマーの形成
スターラー、凝縮器、温度モニター、加熱マントルおよび窒素入口を備えた5000mlの丸底フラスコに、950gのDI水を入れ、これは次いで85℃に加熱された。800gのDI水、26.7gのDISPONIL商標FES993(Cognis)、3.2gのIA、1280gのEAおよび317gのAAからモノマープレミックスが製造された。反応器水と共に、85℃で、35gのDI水に溶かされた3.2gの過硫酸アンモニウムが添加された。11.8g/分でプレミックスフィードが開始された。15分後、フィード速度が23.7g/分に上げられた。同時に、80gのDI水中に溶かされた1.1gの過硫酸アンモニウムのフィードが0.77g/分で開始された。これらフィードが完了した後で、このバッチがゆっくりと40分間にわたって約75℃に冷却された。目標温度で、7gの0.15%の硫酸第一鉄七水和物水溶液が添加された。50gのDI水中の2.7gのtBHP(70%水溶液)および50gのDI水中の1.9gのBRUGGOLITE商標FF6(Bruggaman Chemicals)が1時間にわたって供給された。このバッチは室温まで冷却され、濾過された。エマルションポリマーのpHは2.6であり、固形分量43.9%、#2スピンドル、60rpmでのLV粘度が35Cpsであり、BI90での粒子サイズは350nmであった。
【0023】
実施例2〜5および比較例1〜7.エマルションポリマーの製造
以下のモノマーチャージを用いて実施例1に従ってエマルションポリマーが製造された。比較サンプル1〜3は粘度上昇のせいでケトル中に1145gの水を必要とした。使用されたモノマー量、並びに得られるエマルションポリマーのpHおよび固形分量は表2.1に示される。ポリマー組成(エマルションポリマー重量を基準にした重量%)、ブルックフィールド粘度、および粒子サイズが表2.2に示される。
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
実施例6.水性不織物バインダーの形成
オーバーヘッドスターラーを備え付けた1ガロン容器に1370.0gの実施例1のエマルションポリマーおよび1633.6gのDI水を添加し、20%浴固形分を生じさせた。この混合物は、良好な混合を確実にするために、次いで、15分間攪拌された。残りのサンプルは以下のバインダーおよびDI水チャージを用いて同じように製造された。
【0027】
【表3】

【0028】
実施例7.処理された不織物基材の形成
使用された不織物は50g/mの坪量で軽度にエンボス加工されたエアレイド木材パルプウェブであった。
スプレーブースセッティング:
使用されたスプレーチップは0.0015/650033タイプであった。このスプレーチップはファン型スプレーパターンを生じさせた。スプレーブースの前面パネル(調節可能)セッティングは以下の通りであった:トラバース17−19psi、ポンプ22−24psi、スプレー44−50psi。スプレーオーバーヘッドリーディングは225psiであった。このウェブは一片のボール紙に取り付けられた。このボール紙は一片のワイヤメッシュ上に配置され、このワイヤメッシュはケーブルに取り付けられており、このケーブルはメッシュ、ボール紙およびウェブをスプレーブース内で前に進ませた。ウェブがスプレーチップのすぐ下を通過したときには、ウェブはスプレーチップから12インチであった。
【0029】
スプレー例
カッティングボードが使用されて、不織物ウェブを9インチ×11インチ片に切り出した。次いで、各片に番号がつけられ、予備乾燥させられ、そして直ちに秤量されて坪量を得た。この予備秤量された片は、次いで、ボール紙片にクリップで留められた。スプレーブース内で水性不織物バインダーが使用され、予備秤量されたウェブに2回噴霧された。2回噴霧されたこのウェブ片は次いでマチスオーブン内で1.5分間、150℃で乾燥させられた。この噴霧され乾燥された同じウェブ片が、次いで、ひっくり返されて、再びボール紙片にクリップで留められた。スプレーブースが使用されて、このウェブのもう一方の面が2回噴霧された。このウェブはマチスオーブン内で1.5分間、150℃で再び乾燥させられて、次いで、直ちに秤量されて、合計添加(Add−on)%を決定した。添加量は20%を目標にした。添加%=100×(Wt.B−Wt.A)/Wt.B。
【0030】
実施例8.処理された不織物基材の評価
ローション
湿潤ワイプにおいて使用されたローションを模倣するために、TRITON商標X−100界面活性剤の0.1%溶液が使用された。処理された不織物基材の各片に添加されたローションの量はウェブの重量の3.5〜4.0倍であった。このローションは基材上に均一に分配された。ローション中で1日後に、横方向湿潤引張(CDWT)強さおよびティップチューブ分散性の観点から性能が評価された。
【0031】
横方向湿潤引張(CDWT)強さ
上記ウェブ(ローション適用の1日後)の1インチ(幅)×4インチ(長さ)片の横方向湿潤引張強さが、MAP3ソフトウェアを使用するThwing−Albert EJA張力試験機を用いて測定された。試験速度は12インチ/分であった。ピーク負荷が測定され、報告された各値は8回〜10回の繰り返しの平均であった。
【0032】
ティッピングチューブ(tipping tube)
INDA/EDANAティッピングチューブ試験(FG511.2 Tier1−分散性、ティッピングチューブ試験)は湿潤ワイプが使用されフラッシュされた後でのその湿潤ワイプの分散性を評価するための方法である。処理された不織物の4インチの正方形片、透明チューブおよび700mlの水道水が使用された。次いで、このチューブは繰り返しティップされて、フラッシングおよび建築パイプを通る移送を模倣し、そしてティッピングサイクルの数が記録された。ティッピングチューブ試験の詳細はINDA/EDANAフラッシュ能力ガイドライン(Flushability Guidelines)に見いだされうる。この試験は、ティッピングチューブ試験の開始前30秒から6時間の間、それを水道水中に配置することにより湿潤ワイプのプレコンディショニングを可能にした。そのサンプルをプレコンディショニングするために、水道水中での1時間の滞留時間が使用された。INDA/EDANA試験の終わりに、チューブの内容物がふるいを通され、様々なサイズのフラクションを秤量して、崩壊の程度を決定した。最初の崩壊(2から3片)までのティッピングサイクルの数、第二の崩壊(4から5片)までのティッピングサイクルの数、分散する(大きなものがなく、多くの片として定義される)までのティッピングサイクルの数、および試験が終了させられた時点でのティッピングサイクルの数が記録された。この試験はサンプルが分散しなかった場合でも240ティッピングサイクルで終了させられた。試験の終了時に残っていたものの外観に関するコメントも記録された。
【0033】
【表4】

【0034】
【表5】

【0035】
本発明の実施例1〜5のエマルションポリマーを含む本発明の実施例1a〜5aの水性不織物バインダーは、比較例1〜7のエマルションポリマーを含む比較例1a〜7aの水性不織物バインダーと比べて、湿潤引張強さおよび分散性の所望のバランスを提供した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルションポリマーの重量を基準にして0.1重量%〜5重量%のモノエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー、およびエマルションポリマーの重量を基準にして12重量%〜22重量%のモノエチレン性不飽和モノ酸モノマーを共重合単位として含み、エマルションポリマーの計算Tgが−20℃〜30℃であるエマルションポリマーを含む水性不織物バインダー。
【請求項2】
前記エマルションポリマーが前記エマルションポリマーの重量を基準にして0.1重量%〜2重量%のモノエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマーを共重合単位として含む、請求項1に記載の水性不織物バインダー。
【請求項3】
a)エマルションポリマーの重量を基準にして0.1重量%〜5重量%のモノエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー、およびエマルションポリマーの重量を基準にして12重量%〜22重量%のモノエチレン性不飽和モノ酸モノマーを共重合単位として含み、エマルションポリマーのTgが−20℃〜30℃であるエマルションポリマーを含む水性不織物バインダーを形成し;
b)不織物基材を前記水性組成物と接触させ;並びに
c)前記接触させられた不織物を120℃〜220℃の温度に加熱する;
ことを含む、処理された不織物基材を形成する方法。
【請求項4】
前記エマルションポリマーが前記エマルションポリマーの重量を基準にして0.1重量%〜2重量%のモノエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマーを共重合単位として含む、請求項3に記載の処理された不織物基材を形成する方法。
【請求項5】
請求項3の方法により形成された処理された不織物基材。
【請求項6】
請求項4の方法により形成された処理された不織物基材。

【公開番号】特開2012−92483(P2012−92483A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−210145(P2011−210145)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】