説明

水性内服液剤組成物

【課題】pH3.5以下の低pH条件下における澱の発生が防止され、外観安定性に優れた水性内服液剤組成物を提供する。
【解決手段】水難溶性生薬エキス、ポリビニルピロリドンおよび糖アルコールを含有し、かつpHが2.0〜3.5であることを特徴とする水性内服液剤組成物。前記糖アルコールは、好ましくはエリスリトールおよび/またはキシリトールである。前記ポリビニルピロリドンは、好ましくはK値が30〜95である。前記水難溶性生薬エキスは、好ましくはヨクイニンエキスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生薬エキスを含有する水性内服液剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生薬を配合した内服液剤においては、生薬由来の濁りや沈殿など、いわゆる澱が生じやすく、外観安定性が悪いという問題があり、その防止が製剤の商品性や有効性の観点から大きな課題となっている。
これまで、生薬を配合した内服液剤における澱の発生防止等の目的で、種々の提案がなされている。従来、かかる目的のためには、主にポリビニルピロリドンが使用されている(たとえば特許文献1〜2参照)。また、特許文献3には、ポリビニルピロリドンと、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とを併用することが記載されており、特許文献4にはポリビニルピロリドンとノニオン界面活性剤とを併用することが記載されている。
【特許文献1】特開平10−45627号公報
【特許文献2】特開2000−38345号公報
【特許文献3】特開昭61−268627号公報
【特許文献4】特開2003−246744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
生薬を配合した内服液剤、特に生薬エキスを配合した水性内服液剤は、風味、防腐性の面から、pHを低く設定することが望ましいとされている。
しかし、ポリビニルピロリドンは、低pH条件、特にpH3.5以下のpH条件下では、生薬エキスを配合した水性内服液剤の安定化に満足な効果を発揮することができない。
また、低pH条件下においては、ノニオン界面活性剤が加水分解を受けやすく、経時的に、当該界面活性剤由来の析出物を生じるなどの問題があり、特許文献4のように、安定化のためにノニオン界面活性剤を使用することは難しい。
そのため、これまで、生薬エキスを配合した水性内服液剤の、pH3.5以下の低pH条件下での澱の発生を防止することは難しく、特に、生薬エキスの原生薬として、水難溶性の成分(脂質等)を多く含む生薬を用いた水難溶性生薬エキスを配合する場合には、水難溶性成分を多く含むため、澱の発生が顕著であった。
本発明は、pH3.5以下の低pH条件下における澱の発生が防止され、外観安定性に優れた水性内服液剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、水難溶性生薬エキスに対し、ポリビニルピロリドンと、糖アルコールとを組み合わせることにより、pH2.0〜3.5の範囲内において、水難溶性生薬エキスを含有する水性内服液剤組成物における澱の発生を効果的に防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、水難溶性生薬エキス、ポリビニルピロリドンおよび糖アルコールを含有し、かつpHが2.0〜3.5であることを特徴とする水性内服液剤組成物である。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、pH3.5以下の低pH条件下における澱の発生が防止され、外観安定性に優れた水性内服液剤組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
<水難溶性生薬エキス>
本明細書および特許請求の範囲において、「水難溶性生薬エキス」とは、当該エキスの原料となる生薬(原生薬)として、脂肪、脂肪油、炭素数12以上の高級脂肪酸およびその誘導体、ならびにタンパク質等の水不溶性化合物(以下、「油分」という。)が多い(たとえば当該原生薬の乾燥質量に対して3質量%以上である)生薬を用いたエキスであり、水への溶解性が低いものである。
使用する生薬エキスが「水難溶性生薬エキス」であるかどうかは、固形分濃度が10%の水溶液の、波長600nmにおける光透過率(以下、「10%水溶液の光透過率(600nm)」ということがある。)を求めることにより評価でき、生薬エキスの水への溶解性が低いほど、その10%水溶液の光透過率(600nm)が低くなる。
本発明において、「水難溶性生薬エキス」としては、10%水溶液の光透過率(600nm)が30%以下の生薬エキスが好ましく、20%以下の生薬エキスがより好ましい。10%水溶液の光透過率(600nm)が30%以下の生薬エキスを配合した水性内服液剤組成物は、通常、澱が発生しやすく、外観安定性が悪いが、本発明の水性内服液剤組成物は、10%水溶液の光透過率(600nm)が30%以下の生薬エキスを配合した場合であっても、優れた外観安定性を示す。
該10%水溶液の光透過率(600nm)の下限値としては、水性内服液剤組成物の外観安定性を考慮すると、1.0%以上が好ましく、5.0%以上がより好ましい。
10%水溶液の光透過率(600nm)は、具体的には、以下の手順で求めることができる。
[10%水溶液の光透過率(600nm)の測定方法]
生薬エキス固形分1gに水9mLを加え、室温(25℃)にて30分間振り混ぜる。水の吸光度をブランク(基準)とし、得られた液の光透過率(600nm)を分光光度計にて測定する。
【0007】
水難溶性生薬エキスとしては、市販の抽出エキスを利用してもよく、原生薬から溶媒抽出により調製した抽出エキスを利用してもよい。
該抽出エキスの抽出溶媒が、内服可能なものであれば、該抽出エキスを水難溶性生薬エキスとしてそのまま用いることができる。また、該抽出エキスを適宜な溶媒で希釈した希釈液としても用いてもよい。また、抽出溶媒の留去、凍結乾燥などにより、抽出エキスを濃縮エキス、乾燥粉末あるいはペースト状としたものを用いてもよい。
抽出溶媒としては、たとえば水、および/またはエタノール等の有機溶剤が挙げられる。
本発明においては、抽出溶媒が水であることが最も好ましい。すなわち、本発明においては、水難溶性生薬エキスとして、水抽出物を用いることが最も好ましい。抽出溶媒が水であると、抽出エキスをそのまま水難溶性生薬エキスとして配合することができ、また、得られる水性内服液剤組成物の風味が良好である。
水抽出の方法としては、従来公知の方法を利用でき、特に、熱水にて抽出を行い、粗ろ過する方法がしたものが好ましく用いられる。
【0008】
水難溶性生薬エキスの原生薬としては、具体的には、種子類または果実類に属する原生薬が挙げられる。
種子類に属する原生薬のうち、油分を3質量%以上含有するものとしては、ヨクイニン、キョウニン、ケツメイシ、サンソウニン、トウニン、ニクズク等が挙げられる。
果実類に属する原生薬のうち、油分を3質量%以上含有するものとしては、ウイキョウ、エイジツ、キジツ、コショウ、ゴミシ、ショウズク等が挙げられる。
これらの中でも、ヨクイニン、キョウニン、ウイキョウからなる群から選択される1種以上が好ましく、特にヨクイニンが好ましい。
ヨクイニンは、ハトムギの漢薬名で、通常脱穀した種子が用いられるが、本発明においては脱穀せずに煎じたものを用いることもできる。
ヨクイニンエキスは、美肌効果が期待される成分であり、古くから民間療法として、イボ取りや肌荒れに対して服用されている。ヨクイニンから常法に従って抽出した水抽出物は、水難溶性成分を多く含んでおり、その10%水溶液の光透過率(600nm)は20%以下であるものが多い。
【0009】
本発明の水性内服液剤組成物中、水難溶性生薬エキスの配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。該配合量としては、特に、原生薬換算で、100〜10,000mg/100mLが好ましく、200〜5,000mg/100mLがより好ましい。100mg/100mL以上であると、水性内服液剤組成物中の油分の量が多く、本発明による効果が充分に発揮される。100mg/100mL未満であると、油分の量が多くないため、ポリビニルピロリドンおよび/または糖アルコールを含有しない場合であっても、ある程度の外観安定性が確保される。また、該配合量が10,000mg/100mL以下であると、濁りや沈殿が生じにくく、外観安定性に優れる。特に、5,000mg以下であると、製造適性に優れる。
ここで、「原生薬換算」とは、当該水性内服液剤組成物中に配合された水難溶性生薬エキスの量を、当該水難溶性生薬エキスの調製に用いられた原生薬の量に換算した値である。
【0010】
<ポリビニルピロリドン>
ポリビニルピロリドンは、1−ビニル−2ピロリドンの直鎖重合物であり、ポビドンとも呼ばれる。ポリビニルピロリドンによる水性内服液剤組成物の安定化効果は、ポリビニルピロリドンによる電気的反発および粘性によって、水難溶性生薬エキス中の油分が微細分散状態を維持しつつ安定化されるためと推測される。
ポリビニルピロリドンとしては、K値が15〜100のものが一般的に知られている。
K値とは、「第十四改正 日本薬局方」第二部医薬品各条の「ポビドン」の項に記載された測定方法により求められる、粘性特性を示す値である。
市販のポリビニルピロリドンには、そのK値に応じて、K15、K29/32、K30、K60、K90等の記号が付されており、たとえばポリビニルピロリドン K−90(BASF社製、K値90)、ポリビニルピロリドン K−30(BASF社製、K値30)、ポリビニルピロリドン K−25(BASF社製、K値25)等が挙げられる。
なお、市販品のポリビニルピロリドンのK値を上記測定方法により測定した場合、測定されるK値は、通常、当該市販品に表示されたK値の90〜108%である。
【0011】
本発明において用いられるポリビニルピロリドンは、水性内服液剤組成物の安定化効果に優れることから、K値が30〜95であることが好ましく、60〜95であることがより好ましく、80〜95であることがさらに好ましい。
【0012】
本発明の水性内服液剤組成物中、ポリビニルピロリドンの配合量としては、1mg/100mL〜5.0g/100mLが好ましく、10mg/100mL〜3.0g/100mLがより好ましく、50mg/100mL〜1.0g/100mLがさらに好ましい。1mg/100mL以上であると安定化効果が高く、5.0g/100mL以下であると内服液剤としてのテクスチャーに優れる。
【0013】
<糖アルコール>
本発明において、糖アルコールは、前記ポリビニルピロリドンとともに、pH2.0〜3.5の条件下における澱の発生を抑制し、水性内服液剤組成物の外観安定性の向上に寄与する。
糖アルコールとしては、内服可能なものであればよく、たとえば、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、マルチトール、イノシトールなどから選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記の中でも、本発明の効果に優れることから、エリスリトールおよび/またはキシリトールが好ましい。
【0014】
本発明の水性内服液剤組成物中、糖アルコールの配合量としては、水難溶性生薬エキスの原生薬換算1質量部に対し、0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましく、0.5〜3質量部がさらに好ましい。0.01質量部以上であると安定化効果が高く、また、得られる水性内服液剤組成物の風味も向上する。10質量部以下であると、風味が良好である。
【0015】
本発明の水性内服液剤組成物は、さらに、グルクロノラクトン、ビタミンおよびその誘導体からなる群から選択される1種以上を含有することが好ましい。
本発明の水性内服液剤組成物は、上記ポリビニルピロリドンおよび糖アルコールを含有することにより、グルクロノラクトン、ビタミンおよびその誘導体の安定化効果をも奏し、そのため、本発明の水性内服液剤組成物中においては、グルクロノラクトン、ビタミンおよびその誘導体が安定に存在することができる。
【0016】
グルクロノラクトンは、白色〜微黄白色の結晶又は結晶性の粉末である。グルクロノラクトンは、従来、肝機能の改善、蕁麻疹、湿疹、中毒疹、妊娠悪阻、妊娠中毒症等の治療等に使用されている成分であり、また、アルコールや脂肪の多量摂取に起因するアルコール性脂肪肝の予防剤としての効果が知られている有用な薬物である。本発明におけるグルクロノラクトンは、グルクロノラクトン自体とグルクロン酸又はその塩を含む意味で用いるものとする。
グルクロノラクトンは、市販品であってもよいし、適宜合成したものであってもよい。なお、前記グルクロノラクトンを合成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明の水性内服液剤組成物中、グルクロノラクトンの配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。たとえば肝機能改善の目的においては、mg/mL単位として、水性内服液剤組成物の総体積に対し、例えば、10mg/100mL〜2,000mg/20mLが好ましく、100mg/100mL〜1,000mg/20mLがより好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、上記目的を充分に達成でき、上限値以下であると、水性内服液剤組成物の風味が良好である。グルクロノラクトンは、特有の不快な味(苦味)を持つため、その配合量が少ないほど、水性内服液剤組成物の風味が良好である。
【0017】
ビタミンまたはその誘導体(以下、これらをまとめてビタミン類という。)の種類や配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。ビタミン類としては、特に、ビタミンB、ビタミンC等の水溶性ビタミンおよび/またはその誘導体が好ましい。
ビタミンBまたはその誘導体としては、たとえば、チアミン、硝酸チアミン等のビタミンB1またはその誘導体;リボフラビン、リン酸リボフラビン等のビタミンB2またはその誘導体;ピリドキシン、塩酸ピリドキシン等のビタミンB6またはその誘導体;シアノコバラミン等のビタミンB12またはその誘導体;ニコチン酸アミド;パントテン酸カルシウム等が挙げられる。
ビタミンCまたはその誘導体としては、アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸ナトリウム等が挙げられる。
また、トコフェロール、酢酸トコフェロール等のビタミンEまたはその誘導体等も挙げられる。
上記のビタミン類は1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
本発明の水性内服液剤組成物は、前記であげた各成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、甘味剤、保存剤、安定化剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤、着香剤・香料、清涼化剤、着色剤、緩衝剤、生薬、カフェイン、ローヤルゼリー等の任意成分を含有してもよい。これら任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量配合することができる。
【0019】
前記甘味剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ショ糖、液糖、果糖、果糖ブドウ糖液、ブドウ糖果糖液糖、還元麦芽糖水アメ、黒砂糖、高果糖液糖、ブドウ糖、粉末還元麦芽糖水アメ、水アメ、高ブドウ糖水アメ、乳糖、白糖、精製白糖、精製白糖球状顆粒、ハチミツ、精製ハチミツ、単シロップ、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、アマチャ抽出物、甘草、甘草抽出物、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビア抽出物、ネオテーム、ソーマチン、グリシン、グリセリン、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム等が挙げられる。上記の甘味剤は1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
前記安定化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アジピン酸、L−アスパラギン酸、L−アスパラギン酸ナトリウム、アミノエチルスルホン酸、DL−アラニン、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、L−アルギニン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール、アルブミン、安息香酸、安息香酸ナトリウム、イオウ、エタノール、エデト酸カルシウム二ナトリウム、エデト酸ナトリウム、エリソルビン酸、エルソルビン酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩酸システイン、カカオ脂、果糖、カルボキシビニルポリマー、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、含水二酸化ケイ素、乾燥亜硫酸ナトリウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、乾燥水酸化アルミニウムゲル、乾燥炭酸ナトリウム、キサンタンガム、クエン酸、クエン酸カルシウム、クエン酸ナトリウム、グリシン、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、グリチルリチン酸二ナトリウム、グルコノ−δ−ラクトン、グルコン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、結晶セルロース、酢酸、酢酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸フェニル、β−シクロデキストリン、ジブチルヒドロキシトルエン、酒石酸、ショ糖脂肪酸エステル、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、精製ゼラチン、精製大豆レシチン、精製白糖、セスキオレイン酸ソルビタン、セタノール、ゼラチン、ソルビタン脂肪酸エステル、大豆油不けん化物、デキストラン、乳酸、乳糖、濃グリセリン、白糖、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸メチル、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、氷酢酸、ピロ亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、ブドウ糖、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、プロピレングリコール、ベントナイト、ホウ酸、没食子酸プロピル、ポリアクリル酸部分中和物、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリソルベート、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール・ジブチルエーテル混合物、マクロゴール、マルトース、マレイン酸、マロン酸、無水クエン酸、無水クエン酸ナトリウム、無水ピロリン酸ナトリウム、無水マレイン酸、メタリン酸ナトリウム、メチルセルロース、l−メントール、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、薬用炭、ラウリル硫酸ナトリウム、卵白アルブミン、DL−リンゴ酸等が挙げられる。上記の安定化剤は1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
前記pH調整剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩酸、希塩酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グリシン、コハク酸、酢酸、酒石酸、D−酒石酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、乳酸、乳酸カルシウム、氷酢酸、フマル酸一ナトリウム、プロピオン酸、マレイン酸、無水クエン酸、DL−リンゴ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アジピン酸、グルコン酸、フマル酸、吉草酸、酪酸、イソ酪酸、メチル酪酸、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、希塩酸、酢酸、酪酸が、水性内服液剤組成物の風味が良好であるため好ましい。上記のpH調整剤は1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
前記防腐剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノエチルスルホン酸、安息香酸、安息香酸ナトリウム、エタノール、エデト酸ナトリウム、カンテン、dl−カンフル、クエン酸、クエン酸ナトリウム、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸フェニル、ジブチルヒドロキシトルエン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、2−ナフトール、白糖、ハチミツ、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、l−メントール、ユーカリ油等が挙げられる。上記の防腐剤は1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記香料としては、アセロラ、パイナップル、アップル、ピーチ、ストロベリー、ブルーベリー、グレープ、グレープフルーツ、レモン、オレンジ、ウメ等の香料が好ましい。
【0023】
本発明の水性内服液剤組成物は、上記の中でも、有機酸を含有することが好ましい。これにより、水性内服液剤組成物の風味が向上する。
有機酸としては、酢酸、乳酸、酪酸、酒石酸等のカルボン酸が好ましく、中でも酪酸が好ましい。
本発明の水性内服液剤組成物中、有機酸の配合量としては、0.1〜500mg/100mLが好ましく、0.5〜50mg/100mLがより好ましい。上記範囲内であると風味の改善効果に優れる。
【0024】
ノニオン界面活性剤は、低pH条件下で加水分解しやすく、その加水分解物は、水性内服液剤組成物中における澱の発生原因となる。
そのため、本発明の水性内服液剤組成物は、ノニオン界面活性剤の含有量が、水性内服液剤組成物の総体積の0.02質量%以下であることが好ましい。0.02質量%以下であると、澱が発生しにくく、水性内服液剤組成物の外観安定性が高い。また、風味も良好である。
本発明の水性内服液剤組成物中、ノニオン界面活性剤は、少ないほど好ましく、0%、すなわち含有しないことが最も好ましい。
【0025】
本発明の水性内服液剤組成物は、水を溶媒として含有するものである。
本発明の水性内服液剤組成物は、溶媒として、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、エタノール等の炭素数1〜3の低級アルコールを含有してもよい。
ただし、低級アルコールを含有すると、水性内服液剤組成物の風味が損なわれるおそれがあるため、水性内服液剤組成物中の低級アルコールの配合量は、総体積の0.5質量%未満が好ましく、0.1%質量未満がより好ましく、0.06質量%未満がさらに好ましい。風味を考慮すると、0%が最も好ましい。
【0026】
本発明の水性内服液剤組成物のpHは2.0〜3.5の範囲内である。かかる範囲内であることにより、水難溶性生薬エキスに由来する澱の発生が抑制され、しかも風味、防腐性等に優れている。また、ビタミン類やグルクロノラクトンを含有する場合においては、それらの成分の安定性も高い。
本発明の水性内服液剤組成物のpHは、2.0〜3.0が好ましく、2.0〜2.8がより好ましい。
本発明の水性内服液剤組成物のpHは、20℃におけるpHである。
【実施例】
【0027】
次に、実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1〜8,比較例1〜3>
[水性内服液剤組成物の調製]
表1〜2に示す組成及びpHになるように、常法により各成分を混合して100mLの水性内服液剤組成物を調製した。表中に示す数値は、水性内服液剤組成物100mL中の配合量(mg)である。
表1〜2中の(*1)〜(*6)はそれぞれ以下のものである。
(*1):ヨクイニンの水抽出物(日本粉末薬品(株)製。10%水溶液の光透過率(600nm):10%)。
(*2):ヨクイニンのエタノール抽出物(日本粉末薬品(株)製。エタノール含有量:30%。10%水溶液の光透過率(600nm):90%)。
(*3):ポリビニルピロリドン K−90(Kollidon 90F、BASF社製。K値:90)。
(*4):ポリビニルピロリドン K−30(Kollidon 30、BASF社製。K値:30)。
(*5):ポリビニルピロリドン K−25(Kollidon 25、BASF社製。K値:25)。
(*6):エチレンオキサイドの平均付加モル数20モルのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(商品名:ポリソルベート80、日光ケミカルズ(株)製)。
【0028】
[外観安定性評価]
得られた水性内服液剤組成物について、以下の手順で外観安定性を評価した。
各水性内服液剤組成物を、調製後、25℃の条件下で1週間保存し、保存後の各水性内服液剤組成物を観察し、下記評価基準で評価した。その結果を表1〜2に併記する。
(評価基準)
○:組成物中に澱(沈殿物)が発生せず、浮遊物も見られなかった。
△:組成物中に浮遊物は見られるものの、澱は発生しなかった。
×:組成物中に澱が発生した。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
上記結果に示すように、ヨクイニンエキス、ポリビニルピロリドンおよび糖アルコールをすべて含有する実施例1〜7の水性内服液剤組成物は、いずれの例においても澱は発生せず、外観安定性が良好であった。
これらのうち、使用したポリビニルピロリドンの種類以外は同じ組成とpHの実施例3〜5を比較すると、K値が25の範囲内のポリビニルピロリドンを用いた実施例5には、澱は発生しなかったものの、若干の浮遊物が見られた。
一方、ポリビニルピロリドンを配合しなかった比較例1や、糖アルコールを配合しなかった比較例2、およびポリビニルピロリドンのかわりにノニオン界面活性剤を配合した比較例3の水性内服液剤組成物は、澱が発生しており、外観安定性が悪かった。
【0032】
[風味評価]
上記で調製した実施例1,3〜8および比較例2〜3の水性内服液剤組成物について、パネラー10人により、調製後すぐに飲用時の味についての官能評価を行った。その結果から、下記の評価基準でその風味を評価した。
(評価基準)
◎:10人中9〜10人が好ましいと評価した。
○:10人中7〜8人が好ましいと評価した。
△:10人中4〜6人が好ましいと評価した。
×:10人中0〜3人が好ましいと評価した。
【0033】
また、参考例1として、pHを4.0とした以外は実施例1と同じ組成の水性内服液剤組成物を調製し、上記と同様、風味評価を行った。
これらの結果を、各組成物のpHと合わせて表3に示す。
【0034】
【表3】

【0035】
上記結果に示すように、実施例1,3〜5,7〜8の水性内服液剤組成物はいずれも風味が良好で、特に、酪酸を配合した実施例8の風味は優れていた。しかし、実施例6の水性内服液剤組成物は風味が悪かった。これは、エタノールの影響によると推測される。
比較例2〜3の水性内服液剤組成物や、pHを4.0とした参考例1の水性内服液剤組成物は、風味があまりよくなかった。
【0036】
[グルクロノラクトン安定性評価]
上記で調製した実施例7〜8の水性内服液剤組成物を、調製後、50℃の条件下で2ヶ月間保存し、保存後の各水性内服液剤組成物中のグルクロノラクトン量を液体クロマトグラフィーにより測定した。その結果から、下記計算式により残存率(%)を求めた。
(計算式)残存率(%)=(保存後のグルクロノラクトン量/保存前のグルクロノラクトン量)×100
【0037】
また、参考例2として、pHを4.0とした以外は実施例7と同じ組成の水性内服液剤組成物を調製し、上記と同様、グルクロノラクトン安定性評価を行った。
これらの結果を、各組成物のpHと合わせて表4に示す。
【0038】
【表4】

【0039】
上記結果に示すように、実施例7〜8の水性内服液剤組成物は、50℃、2ヶ月間の保存後においても90%以上のグルクロノラクトンが残存しており、グルクロノラクトン安定性が高かった。
一方、pHが4.0と比較的高かった参考例2の水性内服液剤組成物は、残存率が80%であった。
【0040】
<実施例9〜16>
表5に示す組成及びpHになるように、常法により各成分を混合して100mLの水性内服液剤組成物を調製した。表中に示す数値は、水性内服液剤組成物100mL中の配合量(mg)である。
表5中の(*1),(*3)はそれぞれ表1〜2中の(*1),(*3)と同じものである。
得られた水性内服液剤組成物について、上記と同様、外観安定性および風味の評価を行った。その結果を表5に併記する。
【0041】
【表5】

【0042】
上記結果に示すように、実施例13において若干浮遊物が見られたものの、実施例9〜16のいずれにおいても、澱(沈殿)の発生は見られなかった。
また、風味については、実施例10〜16の水性内服液剤組成物はいずれも良好であったが、実施例9の水性内服液剤組成物は若干劣っていた。これは、ポリビニルピロリドンの配合量が影響したものと推測される。
【0043】
上記結果から明らかなように、水難溶性生薬エキスとともに、ポリビニルピロリドンおよび糖アルコールを配合した本発明の水性内服液剤組成物は、澱の発生がなく、外観安定性に優れたものである。また、アルコールやノニオン界面活性剤を含まないことにより、風味も向上する。さらに、本発明の水性内服液剤組成物においては、グルクロノラクトンの安定性も良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水難溶性生薬エキス、ポリビニルピロリドンおよび糖アルコールを含有し、かつpHが2.0〜3.5であることを特徴とする水性内服液剤組成物。
【請求項2】
前記糖アルコールがエリスリトールおよび/またはキシリトールである請求項1に記載の水性内服液剤組成物。
【請求項3】
前記ポリビニルピロリドンのK値が30〜95である請求項1または2に記載の水性内服液剤組成物。
【請求項4】
前記水難溶性生薬エキスがヨクイニンエキスである請求項1〜3のいずれか一項に記載の水性内服液剤組成物。
【請求項5】
さらに、グルクロノラクトン、ビタミンおよびその誘導体からなる群から選択される1種以上を含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の水性内服液剤組成物。
【請求項6】
さらに、有機酸を含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の水性内服液剤組成物。
【請求項7】
ノニオン界面活性剤の含有量が、総体積の0.02質量%以下である請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性内服液剤組成物。

【公開番号】特開2008−88116(P2008−88116A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271917(P2006−271917)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】