説明

水性分散液の形態の顔料組成物

本発明は、(a)合成非晶質シリカ又はアルミノケイ酸塩の顔料粒子;(b)少なくとも1つの水溶性アルミニウム塩;及び(c)約2000〜約1000000の分子量と約0.2〜約12meq/gの電荷密度を有する少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含む、水性分散液の形態の顔料組成物に関する。本発明は、更に、その製造方法、その使用方法、紙又は板紙の被覆方法、及びその方法により得られる紙又は板紙に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料組成物、その製造方法、その使用方法、紙又は板紙の被覆方法、及びその方法により得られる紙又は板紙に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタの開発は、その目的に適切な紙の需要をもたらした。特に、製造するのが容易であるが、依然として高品質のインクジェット印刷を可能にする紙への需要が存在する。
【0003】
インクジェット印刷に適切な紙を製造するために、多様な種類の被覆物を使用することが開示されてきた。
【0004】
特許文献1は、水溶性金属塩を、顔料及び従来の結合剤を含むインク受容層に組み込むことを開示する。
【0005】
特許文献2は、水溶性多価金属とカチオン性ポリマーとの組み合わせを含む記録表面を開示する。
【0006】
特許文献3は、水溶性多価金属塩で表面処理されている顔料を開示する。
【0007】
特許文献4は、インクジェット記録材料の調製方法であって、500nm以下の平均二次粒径を有するシリカ粒子を含有する少なくとも1つの多孔質層を形成する工程、及び被覆無機粒子の固形分が多孔質層上で0.33g/m2以下になるように無機粒子含有層を調製するために、被覆溶液を被覆する工程、を含む方法を開示する。
【0008】
特許文献5は、原紙及びその上の被覆物を含むインクジェット紙を開示し、ここで前記被覆物は、正電荷を帯びた錯体及び結合剤により変性されている無機顔料を含有する。この正電荷を帯びた錯体は、多価金属イオン及び無機リガンドを含有する。
【0009】
特許文献6は、基材を含み、結合剤と、非晶質シリカ粒子を分散し、強い機械的応力を適用して粒子を分裂することにより形成された複数の粒子とを含む透明インク受容層を含む、インクジェット記録材料を開示する。
【0010】
被覆紙に関する開示の他の例は、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12及び特許文献13である。
【特許文献1】米国特許出願公開2002/0039639
【特許文献2】米国特許第4,554,181号
【特許文献3】米国特許出願公開2004/0255820
【特許文献4】米国特許出願公開2005/0106317
【特許文献5】米国特許第6,797,347号
【特許文献6】米国特許出願公開2003/0099816
【特許文献7】WO03/011981
【特許文献8】WO01/53107
【特許文献9】WO01/45956
【特許文献10】EP947349
【特許文献11】EP1120281
【特許文献12】EP1106373
【特許文献13】US5551975
【発明の開示】
【0011】
本発明の目的は、インクジェット印刷用に紙又は板紙を被覆するために適切であり、製造することが簡単である顔料組成物を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、インクジェット印刷に適するように、紙又は板紙の表面に塗布することが簡単である被覆配合物を提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、インクジェット印刷に適切であり、製造することが簡単である紙又は板紙を提供することである。
【0014】
これらの目的は、新規の顔料組成物によって達成できることが見出された。したがって、本発明の一つの態様は、
(a)合成非晶質シリカ又はアルミノケイ酸塩の顔料粒子と、
(b)少なくとも1つの水溶性アルミニウム塩と、
(c)約2000〜約1000000の分子量及び約0.2〜約12meq/gの電荷密度を有する少なくとも1つのカチオン性ポリマーと
を含む、水性分散液の形態の顔料組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
前記合成非晶質シリカ又はケイ酸塩の顔料粒子は、好ましくは約0.005μm〜約25μm、より好ましくは約0.007μm〜約15μm、最も好ましくは約0.01μm〜約10μmの平均直径を有する。これらの粒子は、好ましくは約30m2/g〜約600m2/g、より好ましくは約30〜450m2/g、最も好ましくは約40m2/g〜約400m2/g、特に最も好ましくは約50m2/g〜約300m2/gの表面積を有する。前記組成物中の顔料粒子の実効表面電荷は、好ましくは正であり、したがって、この分散液は、主にカチオン性であると考えられる。
【0016】
本明細書で使用されるとき、直径という用語は球形の直径と同等であることを意味する。
【0017】
前記合成非晶質シリカ又はアルミノケイ酸塩の顔料粒子は、例えば、沈降シリカ、ゲル型シリカ、ヒュームドシリカ、シリカ、アルミノケイ酸塩若しくはこれらの混合物のコロイド一次粒子、又はシリカ、アルミノケイ酸塩若しくはこれらの混合物のコロイド一次粒子の水性ゾル中での凝集により形成される多孔質凝集体、又は上記の種類の粒子の1つ以上の混合物であることができる。
【0018】
沈降シリカは、水性媒体中の最終的なシリカ粒子が粗凝集体として凝固し、それを回収し、洗浄し、乾燥したときに形成されるシリカを意味する。沈降シリカは、例えば、商標名Tixosil(商標)で市販されている。
【0019】
ゲル型シリカは、シリカゲルから形成される粒子を意味する(通常、コロイドシリカの隣接粒子の凝集性で硬質の三次元網状組織として記載される)。ゲル型シリカは、例えば、商標名Sylojet(商標)で市販されている。
【0020】
ヒュームドシリカは、火炎加水分解法により調製されるシリカを意味する。ヒュームドシリカは、例えば、商標名Cabosil(商標)及びAerosil(商標)で市販されている。
【0021】
シリカ又はアルミノケイ酸塩のコロイド一次粒子は、好ましくはアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液から形成され、ここで、アルカリ金属イオンはイオン交換法を通して除去されるか、又はアルカリ金属ケイ酸塩溶液のpHは酸の添加により低減される。イオン交換に基づく方法は、R.K. IIer, "The Chemistry of Silica" 1979, pages 333-334に記載された基本原理、及びシリカ又はアルミノケイ酸塩の負若しくは正電荷を帯びたコロイド粒子を含む水性ゾル中での結果に従う。アルカリ金属ケイ酸塩のpH低減に基づく方法は、例えば、米国特許第5,176,891号、同第5,648,055号、同第5,853,616号、同第5,482,693号、同第6,060,523号及び同第6,274,112号に記載された基本原理に従う。
【0022】
特に好ましいゾルは、例えばアルミニウム、チタン、クロム、ジルコニウム、ホウ素又は他の任意の適切な金属の酸化物のような金属酸化物により、表面が変性されていても、いなくてもよい、シリカのコロイド一次粒子を含む。
【0023】
前記一次粒子の表面積は、約30m2/g〜約600m2/g、より好ましくは約30〜450m2/g、最も好ましくは約40m2/g〜約400m2/g、特に最も好ましくは約50m2/g〜約300m2/gである。この一次粒子の水性ゾルの乾燥含有量は、好ましくは約0.5重量%〜約60重量%、最も好ましくは約1重量%〜約50重量%である。
【0024】
シリカ又はアルミノケイ酸塩のコロイド一次粒子の適切な水性ゾルは、例えば、商標名Ludox(商標)、Snowtex(商標)、Bindzil(商標)、Nyacol(商標)、Vinnsil(商標)又はFennosil(商標)で市販されている。
【0025】
例えば沈降シリカ、ゲル型シリカ又はヒュームドシリカの粉末を分散して形成されたゾルとは異なり、イオン交換又はpH低減によりアルカリ金属ケイ酸塩から調製されたゾル中のコロイド粒子は、例えば沈降シリカ又はゲル型シリカの場合のように、粉末にするのに乾燥されていない。
【0026】
この場合、前記組成物中の粒子はコロイド一次粒子の凝集体であり、これらの一次粒子の平均粒子直径は、好ましくは約5nm〜約125nm、最も好ましくは約7nm〜約100nmである。このコロイド一次粒子は、好ましくは、上記で記載されたように水性ゾルの形態である。
【0027】
多孔質凝集体の分散液を形成するためのゾル中の一次粒子の凝集は、R. K. IIer, "The Chemistry of Silica" 1979, pages 364-407で記載されているような、任意の適切な方法により実施してもよい。この凝集度は、粘度を測定し、アインシュタインとムーニーの方程式を適用すること(例えば、R.K. IIer, "The Chemistry of Silica" 1979, pages 360-364を参照すること)によって、追うことができる。この凝集は、別個の工程として、又は他の顔料粒子も含む混合物中で実施してもよい。
【0028】
一つの実施態様において、アニオン性ゾル(負電荷を帯びたコロイド一次粒子を含む)及びカチオン性ゾル(正電荷を帯びたコロイド一次粒子を含む)が混合され、両方のゾルからの一次粒子の多孔質凝集体の形成をもたらす。
【0029】
別の実施態様において、好ましくは二価、多価又は錯体塩から選択される塩が、アニオン性又はカチオン性ゾルに添加され、これも、多孔質凝集体の形成をもたらす。これらの塩の例は、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸ケイ酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、炭酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、アルカリ金属ホウ酸塩、及びこれらの混合物である。
【0030】
なお別の実施態様において、架橋物質が、一次粒子から凝集体を形成するために使用される。適切な架橋物質の例は、CMC(カルボキシメチルセルロース)、PAM(ポリアクリルアミド)、ポリDADMAC(ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリアリルアミン、ポリアミン、デンプン、グアーゴム、及びこれらの混合物のような、合成及び天然の高分子電解質である。
【0031】
上記の凝集方法の1、2又は3つ全てを含むあらゆる組み合わせを利用することもできる。
【0032】
それぞれの多孔質凝集体は、本質的に少なくともいくつかの孔を与える少なくとも3つの一次粒子から形成される。この凝集体の平均直径は、好ましくは約0.03〜約25μm、より好ましくは約0.05〜約10μm、最も好ましくは約0.1μm〜約5μmである。この多孔質凝集体の平均直径は、それらを形成する一次粒子の平均直径よりも常に大きいことが理解されるべきである。この凝集体の表面積は、通常、一次粒子と実質的に同じである。
【0033】
一つの実施態様において、合成非晶質シリカ又はアルミノケイ酸塩の顔料粒子は、場合により部分的に又は完全に凝集している、イオン交換又はpH低減によりアルカリ金属ケイ酸塩から調製されるゾル中のコロイド粒子と、1つ以上の沈降シリカ、ゲル型シリカ又はヒュームドシリカの粒子との混合物である。
【0034】
前記顔料組成物中の水溶性アルミニウム塩は、塩を含有する任意のアルミニウムであることができ、乾燥顔料粒子に対するAl23の重量%として計算して、好ましくは約0.1重量%〜約30重量%、最も好ましくは約0.2〜約15重量%の量で存在する。これらの塩の例には、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸ケイ酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、炭酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、及びこれらの混合物が挙げられる。このアルミニウムは、シリカ若しくはアミノケイ酸塩の粒子の表面上に、又は水相中に、部分的に又は完全に存在してもよい。
【0035】
水溶性アルミニウム塩の総含有量は、本顔料組成物を調製するのに使用される、カチオン性アルミニウム変性シリカゾルに存在するものから由来してもよい。しかし、本顔料組成物は、また、追加的なアルミニウム塩を含んでもよい。
【0036】
本顔料組成物中のカチオン性ポリマーは、約2000〜約1000000、好ましくは約2000〜500000、最も好ましくは約5000〜約200000の分子量を有する。電荷密度は、約0.2meq/g〜約12meq/g、好ましくは約0.3meq/g〜約10meq/g、最も好ましくは約0.5meq/g〜約8meq/gである。前記カチオン性ポリマーは、乾燥顔料粒子の量に基づき、好ましくは約0.1重量%〜約30重量%、より好ましくは約0.5重量%〜約20重量%、最も好ましくは約1重量%〜約15重量%の量で顔料分散体に存在する。適切なカチオン性ポリマーの例には、前記分子量及び電荷密度が上記の要件を満たすのであれば、PAM(ポリアクリルアミド)、ポリDADMAC(ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリアリルアミン、ポリアミン、多糖類、及びこれらの混合物のような合成及び天然の高分子電解質が挙げられる。前記カチオン性ポリマーは、シリカ若しくはアミノケイ酸塩の粒子の表面上に、又は水相中に、部分的に又は完全に存在してもよい。
【0037】
一つの実施態様において、本組成物は、カオリナイト、スメクタイト、タルサイト、炭酸カルシウム鉱物、沈降炭酸カルシウム及びこれらの混合物のような、他の種類の顔料粒子を更に含む。合成非晶質シリカ又はアルミノケイ酸塩粒子の含有量は、顔料粒子の総量に基づき、好ましくは約10〜100重量%、最も好ましくは約30重量%〜100重量%である。
【0038】
本組成物中の合成非晶質シリカ又はアルミノケイ酸塩の顔料粒子と任意の他の顔料粒子の全含有量は、好ましくは約1重量%〜約60重量%、最も好ましくは約5重量%〜約50重量%、特に最も好ましくは約10重量%〜約50重量%である。
【0039】
本顔料組成物は、また、顔料粒子の総量に基づき、好ましくは0〜約70重量%、最も好ましくは0〜約50重量%の量で紙被覆に適切な被覆結合剤を含んでもよい。紙被覆に慣例的に使用されるそのような結合剤の例は、ポリビニルアルコール、場合により変性されているデンプン、ゴム、タンパク質結合剤(例えば、カゼイン及び大豆タンパク質結合剤)、ラテックス、並びにこれらの混合物である。ラテックスは、スチレンブタジエン、アクリレート、酢酸ビニル、エチレンと酢酸ビニルのコポリマー、スチレンアクリルエステルなどに基づくことができる。1つ以上の結合剤が含まれる場合、ポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0040】
本顔料組成物は、また、安定剤、レオロジー変性剤、蛍光増白剤、潤滑剤、不溶化剤、染料、サイズ剤などのような紙被覆に慣用的に使用される他の添加剤、ならびに原材料からの多様な不純物を含んでもよい。本顔料組成物の乾燥含有量は、好ましくは約2重量%〜約75重量%、最も好ましくは約10重量%〜約70重量%である。他の添加剤(任意の結合剤を除く)及び可能な不純物の総量は、乾燥含有量に基づき、好ましくは0〜約50重量%、最も好ましくは0〜約30重量%である。
【0041】
上記で記載された顔料組成物は、好ましくは少なくとも1週間、最も好ましくは少なくとも1か月間は貯蔵安定している。この組成物は、紙又は板紙を被覆するために直接使用してもよいか、又は被覆組成物を調製するための中間生成物を形成してもよい。
【0042】
好ましくは450m2/g未満の小さい表面積を有するシリカ又はアルミノケイ酸塩の場合により凝集された一次粒子の顔料粒子を含み、前記のイオン交換又はpH低減によりアルカリ金属ケイ酸塩から調製された組成物では、上記の結合剤を含まないか、又は低量の結合剤、例えば、乾燥顔料に対して、顔料粒子の総量の例えば約3重量%未満、好ましくは約2重量%未満、最も好ましくは約1重量%未満の結合剤を含む顔料組成物により紙又は板紙を被覆することによって、満足できる結果が得られることが見出された。
【0043】
本発明は、更に、合成非晶質シリカ又はケイ酸塩の粒子、水溶性アルミニウム塩、及び約2000〜約1000000の分子量と約0.2meq/g〜約12meq/gの電荷密度を有するカチオン性ポリマーを、実質的にゲル化又は沈殿を避ける方法で混合して水性分散液にすることを含む、上記記載の顔料組成物の製造方法に関する。これは、幾つかの代替的な方法の実施態様により達成することができる。
【0044】
一つの代替的な方法の実施態様は、合成非晶質シリカ又はアルミノケイ酸塩の粒子を、水溶性アルミニウム塩の水溶液に加え、続いて上記で記載されたカチオン性ポリマーを加える工程を含む。他の顔料粒子又は結合剤のような他の各成分を、任意の段階において、固体、液体又は分散液の形態で加えてもよい。前記シリカ又はアルミノケイ酸塩の粒子は、固体粉末又はコロイド粒子の水性ゾルの形態であってもよく、これはアニオン性であっても、カチオン性であってもよい。カチオン性ゾルが使用されないのであれば、前記アルミニウム塩は、好ましくは、得られる分散液を主にカチオン性にするのに十分であるような過剰量である。少なくとも、アニオン性ゾルが使用される場合は、コロイド粒子の少なくとも一部が凝集していてもよい。
【0045】
別の代替的な方法は、合成非晶質シリカ又はアルミノケイ酸塩の粒子を、上記で記載されたカチオン性ポリマーの水溶液に加え、続いて水溶性アルミニウム塩を加える工程を含む。他の顔料粒子又は結合剤のような他の各成分を、任意の段階において、固体、液体又は分散液の形態で加えてもよい。前記シリカ又はアルミノケイ酸塩の粒子は、固体粉末又はコロイド粒子の水性ゾルの形態であってもよく、これはアニオン性であっても、カチオン性であってもよい。カチオン性ゾルが使用されないのであれば、前記カチオン性ポリマーは、好ましくは、得られる分散液を主にカチオン性にするのに十分であるような過剰量である。少なくとも、アニオン性ゾルが使用される場合は、コロイド粒子の少なくとも一部が凝集していてもよい。
【0046】
なお別の方法の実施態様は、コロイドシリカ又はアルミノケイ酸塩のカチオン性アルミニウム変性水性ゾルと、カチオン性ポリマーとを混合する工程を含む。可能ではあるが、コロイドシリカ又はアルミノケイ酸塩のゾルに存在しているものの他に、更なる水溶性アルミニウム塩を加えることは必要ではない。他の顔料粒子又は結合剤のような他の各成分を、任意の段階において、固体、液体又は分散液の形態で加えてもよい。
【0047】
各成分の適切であり、かつ好ましい量及び種類に関しては、上記記載の顔料組成物が参照される。
【0048】
本発明は、また、紙又は板紙を被覆するための、上記記載の顔料組成物の使用に関する。
【0049】
本発明は、更に、上記で記載された被覆組成物を、紙又は板紙ウエブの少なくとも1つの面に被覆物として塗布する工程を含む、被覆紙又は板紙の製造方法に関する。
【0050】
この被覆物は、紙又は板紙ウエブの被覆面1つあたり、前記顔料組成物から、好ましくは約0.4g/m2〜約40g/m2、より好ましくは約0.5g/m2〜約40g/m2、最も好ましくは約1g/m2〜約20g/m2の、合成非晶質シリカ又はアルミノケイ酸塩の顔料粒子及び場合により他の顔料粒子を生じるのに十分な量で塗布される。大部分の場合において、紙又は板紙の被覆面1つあたりに塗布される被覆物の乾燥量は、好ましくは約0.7g/m2〜約50g/m2、最も好ましくは約1.0g/m2〜約25g/m2である。
【0051】
前記被覆物は、好ましくは紙又は板紙の非被覆面に塗布されるが、また、既に塗布されている被覆層の上に、同じ又は別の被覆組成物により塗布されてもよい。本明細書で記載された被覆物から形成される層の上に、他の種類のあらゆる更なる被覆物を塗布しないことが好ましい。
【0052】
前記被覆物を塗布することは、紙若しくは板紙抄紙機の上、又は紙若しくは板紙抄紙機の外のいずれかで、実施することができる。いずれの場合でも、あらゆる種類の被覆方法が使用できる。これらの被覆方法の例は、ブレードコーティング、エアナイフコーティング、ロールコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング、サイズプレスコーティング(例えば、フィルムプレスコーティング)、及びキャストコーティングである。
【0053】
この被覆物を塗布した後、この紙は乾燥され、機械上の場合は、被覆物は好ましくは機械の乾燥セクションで達成される。赤外線放射、熱風、加熱シリンダー、又はこれらの任意の組み合わせのような、あらゆる乾燥方法を使用してもよい。
【0054】
本明細書で使用されるとき、被覆という用語は、顔料が紙又は板紙の表面に塗布されるあらゆる方法を意味し、したがって、従来の被覆のみならず、例えば顔料着色のような他の方法も含む。
【0055】
この被覆される紙及び板紙は、硫酸塩、亜硫酸及びオルガノソルブパルプのような化学パルプ、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケムサーモメカニカルパルプ(CTMP)のような機械パルプ、未使用若しくは回収繊維又はこれらの任意の組み合わせに基づく硬材及び軟材のさらし又は未さらしパルプの両方からの精砕パルプ又は砕木パルプのような、あらゆる種類のパルプから作製できる。他のあらゆる種類のパルプからの紙及び板紙もまた、本発明により被覆されてもよい。
【0056】
本顔料組成物の更なる詳細及び実施態様に関しては、上記記載のものが参照される。
【0057】
本発明は、最後に、上記で記載された方法により得られる、インクジェット印刷に適切な紙又は板紙に関する。そのような紙又は板紙は、本被覆組成物からの、合成非晶質シリカ又はアルミノケイ酸塩の顔料粒子及び場合により他の顔料粒子を含む、実質的に透明な又は実質的に非透明な層を含み、この顔料粒子は、好ましくはナノ構造を形成する。この被覆物の乾燥量は、好ましくは約0.5g/m2〜約50g/m2、最も好ましくは約1.0g/m2〜約25g/m2である。前記紙又は板紙の被覆面1つあたりの、上記で記載された顔料組成物からの顔料粒子の量は、好ましくは約0.7g/m2〜約40g/m2、最も好ましくは約1.0g/m2〜約20g/m2である。好ましくは、この層の上に他の種類の被覆物は塗布されない。
【0058】
本発明の紙又は板紙は、線の低いぼやけ及び色むら、並びに色の高い印刷濃度を与えるインクジェット印刷に特に良好な特性を有するが、有利には、トナー、フレキソ印刷、凸版印刷、グラビア印刷、オフセット印刷及びスクリーン印刷のような他の種類の印刷法にも使用できることが、見出されている。少量の被覆物を塗布するだけの、多数の異なる被覆層を紙又は板紙に塗布する必要のない簡単な方法によって、そのような良好な特性を得ることができることが特に有利である。これは、この被覆物を、フィルムプレスのようなサイズプレスにより塗布することも可能にし、このことは、実用的な理由から有利である。更に、本顔料組成物の主要成分は、容易に入手可能な原材料から作製できる。
【0059】
ここで本発明を以下の実施例で更に説明する。特に記述のない限り、全ての部及び百分率は、重量部及び重量%を意味する。
【0060】
実施例1:Grace Davisonからのゲル型シリカ顔料Sylojet(商標)P612を用いて、3つの被覆配合物を作製した。3つの配合物の全てにおいて、ポリビニルアルコール結合剤(ACETEX Co., SpainからのERKOL(商標)26/88)を結合剤として使用した。このポリビニルアルコール(PVA)を水に90℃で溶解して、10重量%の濃度にし、20部の結合剤(乾燥)を与える量で、シリカ顔料100部(乾燥)に加えた。これらの3つの被覆配合物における顔料粒子の総含有量は、20重量%であった。
A)10重量%PVA溶液20gを水20gで希釈した。乾燥粉末Sylojet(商標)10gを、UltraTurrax(商標)中、激しい混合下(10000rpm)でこの溶液にゆっくりと加えた。
B)1つのビーカー中で、Sylojet(商標)10g、10重量%PVA 20g、及び水10gをAと同様に混合した。別のビーカー中で、Clariantからのアルミニウムクロロ水和物Locron(商標)(25%Al23)3gを水7gで希釈した。UltraTurrax(商標)混合下で、前記PVA−Sylojet(商標)スラリーを、Locron(商標)溶液にゆっくりと加えた。
C)1つのビーカー中で、PVA−Sylojetスラリーを、Bと同様に調製した。別のビーカー中で、Locron(商標)3gを水3.5gで希釈し、Sylojet(商標)−PVAスラリーをLocron(商標)溶液と、Bと同様に混合した。最後に、ポリDADMAC(40重量%、分子量20000及び電荷密度7.2meq/g)1.5gを、水2gで希釈し、前記Sylojet(商標)−PVA−Locron(商標)スラリーに加えた。
【0061】
前記3つの被覆配合物を、未被覆コピー用紙(M-realからのA4サイズData Copy)の表面に、実験室被覆試験で慣用的に使用されるワイヤ付ロッドを用いたドローダウン法により塗布した。この被覆の後、この紙をIR乾燥機(Hedson Technologies AB Sweden)で乾燥した。これらの乾燥した紙のシートを、2台のインクジェットプリンタ、Hewlett-PackardからのHP Deskjet(商標)5850及びEpsonからのEpson Stylus(商標)C86で評価した。
【0062】
印刷の結果を、7個の色ブロック:シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、グリーン、ブルー及びブラックを有する印刷像を使用して評価した。これらの印刷されたブロック及び印刷されていない紙を、分光光度計(TechnidyneからのColor Touch 2)で測定し、色域量を計算した。この域量を、CEI L*a*b*色空間の十二面体で概算し、この色の測定値は、十二面体の角を与える("Rydefalk Staffan, Wedin Michael; Litterature review on the colour Gamut in the Printing Process-Fundamentals, PTF-report no 32, May 1997"を参照すること)。これらの結果を以下の表に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
被覆配合物Cが、最良の総合的な色域量を与えたことを見ることができる。また可視判断が、良好な線の鮮鋭度、及び色むらの傾向がないことを明らかにした。
【0065】
実施例2:これらの配合物において、使用されるゲル型シリカの等しい部分(乾燥/乾燥)を有する顔料ブレンドは、Sylojet(商標)P612(実施例1と同じ)、及び50重量%のゾルが平均粒径100nmである、Eka Chemicalsからのアニオン性シリカゾルNyacol(商標)9950であった。結合剤として、実施例1と同じ量及び同じ種類のPVAを使用した。20重量%の総顔料含有量を有する2つの被覆配合物を調製した。
A)乾燥シリカゲル(Sylojet(商標)P612)を、Nyacol(商標)9950 10g、10重量%PVA 20g、及び水15gを含有する溶液に、UltraTurrax(商標)混合下(10000rpm)で分散した。
B)1つのビーカー中で、乾燥シリカゲル(Sylojet(商標)P612)5gを、Nyacol(商標)9950 10g及び10重量%PVA 20gを含有する溶液に、UltraTurrax(商標)混合下(10000rpm)で分散した。別のビーカー中で、Locron(商標)3gを水7gと混合した。次に最初のビーカーのスラリーを、UltraTurrax(商標)混合下で Locron(商標)溶液に移し、その後、水3.5gによる前希釈の後で、ポリDADMAC(実施例1と同じもの)1.5gを加えた。
【0066】
実施例1と同様の手順に従って、これらの被覆物を紙に塗布し、乾燥して、2台のプリンタにより評価した。これらの結果を以下の表に示す。
【0067】
【表2】

【0068】
被覆配合物Bが、両方のプリンタでより良好な印刷品質を与えたと思われる。
【0069】
実施例3:この試験では、50重量%のゾルが平均直径40nmである、Eka Chemicalsからのアニオン性シリカゾルBindzil(商標)50/80を顔料として使用した。2つの配合物をPVA結合剤を何も用いないで調製した。
A)30重量%に希釈した Bindzil(商標)50/80
B)Locron(商標)6gを水20gで希釈し、Bindzil(商標)50/80 60gを、激しい混合下(UltraTurrax(商標))で加えた。この混合を、ポリDADMAC(実施例1と同じもの)3g及び水11gの添加の間続けた。シリカの最終濃度は30重量%となった。
【0070】
実施例1と同様の手順に従って、これらの被覆物を紙に塗布し、乾燥して(被覆重量8〜9g/m2)、2台のプリンタにより評価した。これらの結果を以下の表に示す。
【0071】
【表3】

【0072】
被覆配合物AがEpsonで僅かに良好な域量を与えたが、配合物Bは、HPで著しく良好であり、したがって、最良の総合的な結果を与えたと考えることができる。また可視判断が、良好な線の鮮鋭度、及び色むらの傾向がないことを明らかにした。
【0073】
実施例4:4つの被覆配合物を調製した。アニオン性シリカゾル、Bindzil(商標)50/80と、カオリン、被覆粘土(SPS(商標)、Imerys, UK)の等しい部分(乾燥/乾燥)を持つ顔料組成物を、全ての配合物で使用した。実施例3と同様に、PVAのような外部の結合剤をいずれの配合物にも使用しなかった。
A)Bindzil(商標)50/80、SPS(商標)粘土及び水を、UltraTurrax(商標)中で混合して、30重量%の顔料濃度にした。
B)Bindzil(商標)15g(乾燥)及びSPS粘土15gを含有する顔料スラリーを、Locron(商標)6g(そのまま)を含有する水溶液に、UltraTurrax(商標)混合下で加え、最終顔料濃度が30重量%になった。
C)ポリDADMAC(実施例1と同じもの)3gを水で希釈し、 Bindzil(商標)(乾燥)15g及びSPS(商標)粘土15gを含有する顔料スラリーに、UltraTurrax(商標)混合下で加えて、固形分30重量%の顔料とした。
D)顔料スラリーをLocron(商標)溶液と、Aと同様に混合した。UltraTurrax混合を続け、ポリDADMAC(実施例1と同じもの)3gを水で希釈し、Locron処理顔料スラリーに加えて、最終顔料含有量30重量%を得た。
【0074】
実施例1と同様の手順に従って、これらの被覆物を紙に塗布し、乾燥して(被覆重量8〜9g/m2)、2台のプリンタにより評価した。これらの結果を以下の表に示す。
【0075】
【表4】

【0076】
アルミニウム塩とカチオン性低分子ポリマーの両方を含有する配合物Dが、両方のプリンタで最良の結果を与えたと思われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)合成非晶質シリカ又はアルミノケイ酸塩の顔料粒子と、
(b)少なくとも1つの水溶性アルミニウム塩と、
(c)約2000〜約1000000の分子量及び約0.2〜約12meq/gの電荷密度を有する少なくとも1つのカチオン性ポリマーと
を含む、水性分散液の形態の顔料組成物。
【請求項2】
前記合成非晶質シリカ又はアルミノケイ酸塩の粒子が、沈降シリカ、ゲル型シリカ、ヒュームドシリカ、シリカ、アルミノケイ酸塩又はこれらの混合物のコロイド一次粒子、シリカ、アルミノケイ酸塩又はこれらの混合物のコロイド一次粒子の水性ゾル中での凝集により形成される多孔質凝集体、及び上記の種類の粒子の1つ以上の混合物からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記合成非晶質シリカ又はアルミノケイ酸塩の顔料粒子が、約0.005μm〜約25μmの平均直径を有する、請求項1〜2のいずれか一項記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物中の顔料粒子の実効表面電荷が正である、請求項1〜3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項5】
前記合成非晶質シリカ又はアルミノケイ酸塩の顔料粒子が、約30〜約600m2/gの表面積を有する、請求項1〜4のいずれか一項記載の組成物。
【請求項6】
前記合成非晶質シリカ又はアルミノケイ酸塩の顔料粒子が、場合により部分的に又は完全に凝集している、イオン交換又はpH低減によりアルカリ金属ケイ酸塩から調製されるゾル中のコロイド粒子と、1つ以上の沈降シリカ、ゲル型シリカ又はヒュームドシリカの粒子との混合物である、請求項1〜5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの水溶性アルミニウム塩が、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸ケイ酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、炭酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1〜6のいずれか一項記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの水溶性アルミニウム塩が、乾燥顔料粒子に対するAl23の重量%として計算して、約0.1重量%〜約30重量%の量で存在する、請求項1〜7のいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つのカチオン性ポリマーが、PAM(ポリアクリルアミド)、ポリDADMAC(ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリアリルアミン、ポリアミン、多糖類、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1〜8のいずれか一項記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つのカチオン性ポリマーが、乾燥顔料粒子の量に基づき、約0.1重量%〜約30重量%の量で存在する、請求項1〜9のいずれか一項記載の組成物。
【請求項11】
前記顔料組成物が、他の種類の顔料粒子を更に含む、請求項1〜10のいずれか一項記載の組成物。
【請求項12】
前記他の種類の顔料粒子が、カオリナイト、スメクタイト、タルサイト、炭酸カルシウム鉱物、沈降炭酸カルシウム、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
前記合成非晶質シリカ又はケイ酸塩の粒子、水溶性アルミニウム塩、及び約2000〜約1000000の分子量と約0.2meq/g〜約12meq/gの電荷密度を有するカチオン性ポリマーを、実質的にゲル化又は沈殿を避ける方法で混合して水性分散液にすることを含む、請求項1〜12のいずれか一項記載の顔料組成物の製造方法。
【請求項14】
紙又は板紙のウエブを被覆するための、請求項1〜12のいずれか一項記載の組成物の使用。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか一項記載の組成物を、紙又は板紙ウエブの少なくとも1つの面に塗布する工程を含む、被覆紙又は板紙の製造方法。
【請求項16】
前記被覆物が、紙又は板紙ウエブの被覆面1つあたり、顔料組成物から約0.4g/m2〜約40g/m2の顔料粒子を生じるのに十分な量で塗布される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
請求項15〜16のいずれか一項記載の方法により得られる紙又は板紙。

【公表番号】特表2008−523167(P2008−523167A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540280(P2007−540280)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【国際出願番号】PCT/SE2005/001523
【国際公開番号】WO2006/049546
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(595024087)アクゾ ノーベル エヌ.ブイ. (38)
【Fターム(参考)】