説明

水性分散液及びその使用

本発明は、化工デンプンの水溶液に分散した少なくとも1つの活性物質の粒子を含む分散液であって、前記水溶液のpH値が5〜10の範囲にある前記分散液、及びその使用に関する。本発明は、更に、本発明の分散液を調製する方法であって、a)前記化工デンプンの水溶液を準備する工程、b)前記溶液に前記少なくとも1つの活性物質を添加する工程、c)このようにして得られた混合液を処理して、前記化工デンプンを含む前記水溶液中の前記少なくとも1つの活性物質の粒子の分散液を調製する工程を含む前記方法であって、d)前記化工デンプンの水溶液のpHを5-10の範囲に調整する工程を更に含むことを特徴とする前記方法に関する。本発明の分散液は、品質が改善された、マイクロカプセルのような製品を調製するのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化工デンプンに分散した活性物質を含む水性分散液、その分散液を調製する方法、及び、例えば、マイクロカプセルを調製するための、その使用に関する。
【背景技術】
【0002】
天然に存在し且つ変性した多糖類や天然に存在する親水コロイド、例えば、アルギン酸塩、カゼイン塩、カラゲナン、ゼラチン、ペクチン、アラビアゴム、アカシアゴム、トラガント、デンプン、化工デンプンは、食品、補助食品、医薬及び農産品におけるビタミン、芳香物質、風味物質のような感受性がある活性物質又は不安定な活性物質のマイクロカプセル化に用いられるマトリックス材料として幅広く使用されて、酸素、水分、照射、又は物理的影響、例えば、圧力にさらされることから保護し、このようにして前記活性物質の化学分解及び/又は物理的分解を避けかつその貯蔵安定性を改善している。
【0003】
植物由来のマトリックス物質の使用に基づくマイクロカプセル化製品は、通常、ある製品、例えば、菜食主義の食品、ユダヤ教の掟にかなった食べ物、イスラム教の戒律に従った食べ物に用いられるのに好ましい。立法上の規制による動物由来のマトリックス材料の代わりにマトリックス材料としての使用にも有利なものである。
【0004】
文献に記載される動物由来のマトリックス材料に対する一代替物は、デンプンや化工デンプン、例えば、解重合デンプン、デンプン加水分解物であり、これらは分散目的のために用いることができる。デンプンや化工デンプンを含む分散した製品を調製するための方法もまた、文献に記載されている。
【0005】
欧州特許出願第1 066 761 A2号には、マルトース又は低分子量炭水化物の混合物を含む炭水化物マトリックスに封入された脂溶性物質を含む組成物、及びこの組成物を調製する方法が記載されている。
【0006】
米国特許第3,455,838号には、粒子中に封入された水不溶性物質を含有する乾燥した自由流動性粒子であって、該粒子が、置換されたジカルボン酸のデキストリン化デンプン酸エステルから本質的になる封入剤の固形マトリックスから本質的になる、前記乾燥した自由流動性粒子が記載されている。水不溶性物質を封入するための方法であって、封入剤の水性分散液を調製する工程、前記分散液に水不溶性物質を乳化する工程及び得られた分散液を乾燥させて乾燥した自由流動粒子を形成する工程を含む、前記方法も記載されている。好ましい封入剤は、オクテニルコハク酸無水物から得られる置換コハク酸のデキストリン化デンプン酸エステルである。
【0007】
デンプンや化工デンプンに基づくマトリックス材料に埋め込まれた活性物質を含有するマイクロカプセルを調製する周知の方法においては、マイクロカプセル化に先立つ分散すべき活性物質の添加の前にデンプンのコロイド状水分散液が発泡して最終製品に空気の取り込みが生じることから問題が生じる。これにより、取り扱い、貯蔵及び適用上の理由から望ましいほど安定でなく、また密度も高くない最終製品(分散液又はマイクロカプセル)が生じる。
【0008】
本発明の目的は、化工デンプンに分散した活性物質を含む改良された分散液及びそれを調製する改良された方法を提供することである。分散液は、化工デンプンマトリックスに埋め込まれた活性物質を含むマイクロカプセルを調製するのに適している。
【発明の開示】
【0009】
従って、本発明は、化工デンプンの水溶液に分散した少なくとも1つの活性物質の粒子を含む新規な分散液であって、前記分散液のpH値が5〜10の範囲にある、前記分散液に関する。
【0010】
本発明は、更に、本発明の分散液を調製する方法であって、
a)前記化工デンプンの水溶液を準備する工程、
b)前記溶液に少なくとも1つの活性物質を添加する工程、
c)このように得られた混合物を処理して、前記化工デンプンを含む前記水溶液中の前記少なくとも1つの活性物質の分散液を調製する工程、
を含み、更に、
d)前記少なくとも1つの活性物質を添加する前か添加した後に前記化工デンプンの前記水溶液のpHを5〜10の範囲に調整する工程
を含む、前記方法に関する。
【0011】
本明細書に用いられる“分散液”という用語は、水性媒体に分散した液状粒子(油滴)を含む混合物を意味するエマルジョンと、水性媒体に分散した固形粒子を意味する懸濁液、例えば、微細にすりつぶしたカロチノイドの双方又はそれらの混合物を包含する。
【0012】
本発明に従って用いられる化工デンプンとは、天然源、例えば、ジャガイモ、小麦、トウモロコシ、タピオカ、米から得られるデンプンを意味する。化工デンプンは、(部分的)分解、解重合、加水分解等によって化工されていないデンプンから調製される。本発明に従って用いられる非常に適切な化工デンプンは、n-OSA化工デンプン、例えば、ナトリウムオクテニルスクシネート化工デンプン、即ち、ヒドロキシルの一部がオクテニルスクシニル酸によってエステル化したデンプンであり、デンプンの表面活性の特性を与える。
【0013】
本発明の分散液は、化工デンプンの水溶液によって調製された分散液における発泡の減少傾向のために有利である。従って、得られた分散液は、本質的にも実質的にも空気を含まない。最適pHは、化工デンプンの種類に左右される。
【0014】
分散液の調製のための本発明の方法は、分散液における発泡の減少傾向による製造上の利点を示す。従来の方法では、分散液におけるpHは、化工デンプンの種類によっては、中性pHより非常に低く、通常は約3〜5である。pHが本発明に従って約5〜10、例えば、約6〜10又は約7又は7.5〜9又は9.5に調整される場合、発泡は従来の方法におけるより非常に速く消失することがわかってきた。
【0015】
“本質的に”又は“実質的に”空気を含まないという用語は、含まれる空気の量が非常に小さいので、分散液はいかなる有意な発泡も容積の増加も引き起こさずに減圧下で沸騰することを意味する。
【0016】
本発明の分散液は多くの利点を有しており、これにより、例えば機械的及び化学的安定性、さらに機械強度が改善されたマイクロカプセルの製造が適切になる。
【0017】
従って、本発明は、他の重要な観点においては、マイクロカプセルを調製するための分散液の使用及び化工デンプンのマトリックスに埋め込まれた少なくとも1つの活性物質の粒子を含むマイクロカプセルを調製する方法であって、本発明の分散液を乾燥して、水を除去する工程を含む、前記方法に関する。
【0018】
本明細書に用いられる“マイクロカプセル”という用語は、各々が単一の又は複数の固形又は液状マイクロ粒子を粒子中に埋め込んだマトリックス物質を含む粒子を意味する。
【0019】
本発明の分散液及び分散液から調製されたマイクロカプセルは、固形物質含量が改善されている。
【0020】
本発明に従って示されたpH調節が明白でないことは強調されなければならない。
【0021】
方法の利点及び最終製品の改善された品質によって、分散液が乾燥された場合に全固形分の増加による更に経済的な製造法が得られる。更にまた、pH調整が発泡/空気の取り込みに対してこの効果を有したことは非常に驚くべきことであった。
【0022】
本発明の分散液を含む製品の改善された特性は、図面からわかるであろう。
【0023】
図面の写真から、本発明の分散液から調製されたマイクロカプセルは実質的に空気を含まず(図2及び図3)、pHを調整していない分散液から調製された製品は取り込まれた空気を含有している(図1)ことがわかる。
【0024】
図面の写真は、また、マトリックス材料が封入された活性物質を高密度で取り囲んでいるので、貯蔵の間の酸化度が低下するとともに貯蔵安定性が高まることを示している。従って、従来の抗酸化剤の添加を回避又は減少させることができ、或いはより効率的でない抗酸化剤系を適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の分散液の一好適態様においては、化工デンプンは、n-オクテニルサクシニル酸化工デンプン、例えば、ナトリウムオクテニルスクシネートであり、その場合、pH値は、好ましくは6〜10、より好ましくは7〜9である。
【0026】
他の態様においては、分散液は、更に抗酸化剤を含んでいる。
【0027】
本発明の一態様においては、本発明は、化工デンプンのマトリックス材料に埋め込まれた少なくとも1つの活性物質を含むマイクロカプセルを調製するための方法であって、
a)前記化工デンプンの水溶液を準備する工程、
b)前記溶液に前記少なくとも1つの活性物質を添加する工程、
c)このように得られた混合物を処理して、前記化工デンプンを含む前記水溶液中の前記少なくとも1つの活性物質の粒子の分散液を調製する工程、
c1)工程c)で得られた分散液を微細に粉砕し乾燥して、各々が前記化工デンプンを含むマトリックスに埋め込まれた前記少なくとも1つの活性物質の単一の又は複数の液状又は固形ミクロ粒子を含有する多量の粒子を得る工程
を含み、更に、
d)前記少なくとも1つの活性物質を添加する前か添加した後に化工デンプンの水性媒体のpHを範囲5〜10に調整する工程
を含む、前記方法に関する。
【0028】
他の好適態様においては、本方法は、更に、e)水性媒体から取り込まれた空気及び/又は酸素を除去する工程を含む。取り込まれた空気のこの除去は、例えば、pHの調整後に行ってもよい。空気/酸素の除去は、排気/圧抜きのようなあらゆる都合のいい方法によって行うことができる。また、水蒸気噴射後、瞬間冷却(減圧下蒸発)によって行うこともできる。
【0029】
一般に、工程d)における水性媒体のpHの調整は、化工デンプンを媒体に添加する前か又は化工デンプンを添加した後のいずれか、また、1つ又は複数の活性物質を添加する前か又は添加した後に調整することによって影響させることができる。必要ならば、本方法の後で、また、途中で調整されてもよい。
【0030】
本発明の方法の工程c)における処理は、あらゆる都合のいい方法、例えば、ホモジェナイズ、乳化、摩砕又は分散によって行うことができる。
【0031】
本発明の方法の工程c1)は、従来の方法、例えば、噴霧冷却、噴霧乾燥、改良噴霧乾燥又はシート乾燥、破砕により行うことができる。例えば、国際出願第91106292号を参照のこと。
【0032】
工程d)におけるpHの調整は、あらゆる適切なアルカリ、例えば、水酸化ナトリウムを添加することによって行うことができる。
【0033】
本発明の一実態様においては、分散液のpHは、後の工程f)において酸pHに再調整される。この場合、“後の”という用語は、pHは、本方法において工程d)で調整するpHより後で行われる工程で調整されることを意味する。pHの再調整を含むこの態様は、例えば、微生物学的な安定性に関して、得られた分散液がより安定で且つ酸性pHでの寿命がより長いことから、また、化工デンプンの乳化特性が低pHにおいてより良好であることから、好ましいものである。
【0034】
使用するn-OSAデンプンは、例えば、National Starch and Chemical Company製Capsul(登録商標)、又はあらゆる類似したで製品あり得る。
【0035】
本発明の分散液又は本発明に従って調製されたマイクロカプセルに含まれる活性物質は、物質の物理的・化学的分解を避けるために、貯蔵、輸送、取扱い、使用の間、例えば、酸素、水分、光照射、物理的影響からの保護を必要とするあらゆる物質であってもよい。これらの活性物質は、更に、化学系又は生物系において活性であるものとして定義される。保護マトリックスは、活性物質が組成物に存在する他の物質と又は使用中に接触することができ且つ活性物質の所望の特性に有害な影響を有する物質と反応することを防止するために用いることができる。また、保護マトリックスは、たとえば粘着性のために取り扱いが難しい液体や他の物質を、使用における取り扱いや処理に適した固形形態、例えば、マイクロカプセルの粉末に変換するために用いることができる。
【0036】
本発明と関連して用いるのに適した活性物質の例は、脂溶性物質、例えば、ビタミン、例えば、ビタミンAやそのエステル、ビタミンEやそのエステル、例えば、ビタミンE 酢酸塩、ビタミンD、ビタミンK、脂肪酸(天然由来のものと発酵方法で得られたもの)、例えば、モノ不飽和脂肪酸やポリ不飽和脂肪酸、即ち、(n-3)脂肪酸ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)を含む魚油の形態に添加することができる脂肪酸、共役リノレン酸(CLA)、例えば卵黄から得られるリン脂質、また、即ち、(n-6)脂肪酸γ-リノレン酸、アラキドン酸、リポ酸を含む月見草油やヒマシ油の形態にあるリン脂質、カロテノイド、例えばβ-カロテン、ルテイン、リコペン、β-クリプトキサンチン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、シトラナキサンチン、ゼアキサンチン、クルクミン、ベンゾキノン、例えば、コエンザイムQ10(ユビデカレノン)、フィトステロール、油、脂肪;水溶性物質、例えば、ビタミンC; 酵素、例えば、アミラーゼ; 医薬、例えば、グリセオフルビン、イブプロフェン、ベンゾジアゼピン、フェナセチン、ホルモン類、パラセタモール; 他の栄養補給剤、例えば、ミネラルやイソフラボンである。好ましい物質は、ビタミンA、ビタミンE、それらのエステル、ビタミンD、ビタミンK、PUFA油、カロテノイド、コエンザイム Q10である。特に好ましい物質は、ビタミンA、ビタミンE、それらのエステル、ビタミンD、β-カロテン、コエンザイム Q10である。
【0037】
追加の活性物質は、芳香化合物や風味化合物である。
【0038】
非水溶性物質又はマトリックス材料(場合によっては、また、添加剤の種類によっては)は、従来の添加剤、例えば、抗酸化剤、例えば、t-ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、t-ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸、アスコルビルパルミテート、アスコルビン酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、EDTA又はその塩、トコフェロール、TBHQ、エトキシキン、没食子酸プロピル、ハーブからのエキス、即ち、ローズマリー又はオレガノエキス; 粉末化剤、例えば、デンプン、化工デンプン、リン酸三カルシウム、ラクトース、マンニトール、エチルセルロース、凝固アルブミン、硬ゼラチン、カゼイン、ステアリン酸Ca、ステアリン酸Na、金属石鹸、水素添加ヒマシ油、ポリオキシド、タルク、ワックス、ケイ酸塩; 固化防止剤、例えば、リン酸三カルシウム、ケイ酸塩、即ち、二酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウムナトリウム; 可塑剤、例えば、炭水化物、炭水化物アルコール、例えば、サッカロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、転化糖、ソルビトール、マンニトール、トレハロース、タガトース、プルラン、ラフチロース(オリゴフルクトース)、デキストリン、マルトデキストリン、グリセリン、それらの混合物、好ましくはサッカロース、トレハロース、プルラン、デキストリン、ラフチロース、それらの混合物を含有することができる。
【0039】
本発明は、また、本発明の方法によって得られる、化工デンプンのマトリックス材料に埋め込まれた少なくとも1つの活性物質を含むマイクロカプセルに関する。
【0040】
本発明に従って調製される製品は、様々な応用、例えば食品、補助食品、飲料、医薬や動物薬、飼料、補助飼料、パーソナルケア製品、家庭用品に適している。従って、本発明は本発明の分散液又は1つ又は複数のマイクロカプセルを含む製品に関する。
【0041】
本発明の方法は、以下の一般的な製法に従って行うことができる。
【0042】
デンプン物質を含む水溶性成分を、熱い(例えば、45-70℃、例えば、60-65℃)イオン交換水に添加し、連続撹拌下で溶解する。油溶性成分は、もしあれば、撹拌下に加熱した活性物質(例えば、ビタミンA酢酸塩)油に添加する。次に、油相を水相に添加し、混合液を乳化/ホモジェナイズする。必要なら、上記のように噴霧して粉末にされる前に適切な粘度に希釈してもよい。
ここで、本発明を以下の実施例によって更に詳細に記載する。

【0043】
分散液とマイクロカプセルの調製
例1 (PH=7.5)
400gの化工デンプン(National Starch製のn-OSAデンプン)と430gのイソマルトを650mlの加熱したイオン交換水に65℃で連続撹拌下に溶解した。その溶液のpHを、適量(15 ml)の4M NaOHを添加することによってpH = 7.5に調整した。泡からの空気抜きがpH約5.5で開始した。
その溶液を沸騰するまで減圧にした。
278gのビタミンA酢酸塩と12.5gのdl-α-トコフェロールを、65℃に加熱し、充分に混合した。油性混合物を水溶液に添加し、窒素下で激しく撹拌した。
分散液を充分にホモジェナイズし、噴霧可能な粘度に希釈した。
続いて、分散液を噴霧乾燥塔において噴霧して粉末にし、そこで散粒子がデンプンの薄層で覆われ、乾燥された。
得られた乾燥粉末は、約544.000 IU/gのビタミンA酢酸塩効力を有した。
【0044】
製品の安定性を調べるために、約3グラムの製品の質量を計り、小さなalu-foilバッグに入れ、密閉し、25℃/16%RHと40℃/75%RHで6ヵ月間保存した。
試料を、それぞれ0、3、6ヵ月後と0、1、2、3、6ヵ月後に分析した。結果を以下に示す。

【0045】
例2(pH = 9.5):
400gの化工デンプン(National Starch製n-OSAデンプン)と430gのイソマルトを連続撹拌下65℃で650mlのイオン交換水に溶解した。その溶液のpHを、適切な量の4M NaOH(19ml)を添加することによってpH = 9.5に調整した。pHが約8を超えたとき、空気/泡はすぐに溶液から完全に消えた。
その溶液を、沸騰するまで減圧にした。
278gのビタミンA酢酸塩と12.5gのdl-α-トコフェロールを、65℃に加熱し、窒素下で充分に混合した。油性混合物を水溶液に添加し、激しく撹拌した。
分散液を充分にホモジェナイズし、噴霧可能な粘度に希釈した。
続いて、分散液を噴霧乾燥塔において噴霧して粉末にし、そこで散粒子がデンプンの薄層で覆われ、乾燥された。
得られた乾燥粉末は、約 573.000 IU/gのビタミンA酢酸塩効力を有した。
【0046】
製品の安定性を調べるために、約3グラムの製品の質量を計り、小さなalu-foilバッグに入れ、密閉し、25℃/16%RHと40℃/75%RHで6ヵ月間保存した。
試料を、それぞれ0、3、6ヵ月後と0、1、2、3、6ヵ月後に分析した。結果を以下に示す。

【0047】
比較例(pHの調整なし、pH4.2)
400gの化工デンプン(National Starch製n-OSAデンプン)と430gのイソマルトを連続撹拌下65℃で750mlのイオン交換水に溶解した。その溶液のpHは4.2であった。その溶液を、沸騰するまで減圧にした。
278gのビタミンA酢酸塩と12.5gのdl-α-トコフェロールを、65℃に加熱し、充分に混合した。油性混合物を水溶液に添加し、激しく撹拌した。
分散液を充分にホモジナイズし、噴霧可能な粘度に希釈した。
続いて、分散液を噴霧乾燥塔において噴霧して粉末にし、そこで散粒子がデンプンの薄層で覆われ、乾燥された。
得られた乾燥粉末は、約563.000 IU/gのビタミンA酢酸塩効力を有した。
【0048】
製品の安定性を調べるために、約3グラムの製品の質量を計り、小さなalu-foilバッグに入れ、密閉し、25℃/16%RHと40℃/75%RHで6ヵ月間保存した。
試料を、それぞれ0、3、6ヵ月後と0、1、2、3、6ヵ月後に分析した。結果を以下に示す。

【0049】
製品特性の試験
最終製品の特性に対するpH効果を本発明による製品と従来技術による製品について行った多くの試験によって証明した。これらの試験において、固形物質の量を求めた。更に、製品に、目視法である破砕試験を行った。
更に、pH効果を走査型電子顕微鏡(SEM)によって視覚化した。
結果を、以下の表1と図面に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
破砕試験を、以下の通り行う。
製品を、2枚のガラスプレート間に一定の力で押圧して、目視により判断した。壊れた粒子が少ないほど、製品は強い。
図1-3におけるSEM写真から、実施例1と実施例2に従って調製したマイクロカプセルはほとんど空気を含まず(図2及び図3)、比較例に従って調製した製品は取り込まれた空気を含む (図1)ことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、pHが4.2である、即ち、本発明の範囲に従って調整されていない従来の方法によって調製されたマイクロカプセルのSEM(走査電子顕微鏡)写真を示す。
【図2】図2は、1つ又は複数の活性物質の添加前にpHが7.5に調整されている本発明の分散液から調製されたマイクロカプセルのSEM写真を示す。
【図3】図3は、1つ又は複数の活性物質の添加前にpHが9.5に調整されている本発明の分散液から調製されたマイクロカプセルのSEM写真を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化工デンプンの水溶液に分散した少なくとも1つの活性物質の粒子を含む分散液であって、前記分散液のpH値が5〜10の範囲にある前記分散液。
【請求項2】
前記化工デンプンが、天然源、例えば、ジャガイモ、小麦、トウモロコシ、タピオカ又は米に由来する、請求項1記載の分散液。
【請求項3】
前記化工デンプンが、化学的に又は酵素的に変性されている、請求項1又は2記載の分散液。
【請求項4】
前記化工デンプンが、n-オクテニルスクシニル酸化工デンプンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の分散液。
【請求項5】
前記分散液のpH値が、7〜10の範囲にある、請求項1〜4のいずれか1項に記載の分散液。
【請求項6】
抗酸化剤を更に含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の分散液。
【請求項7】
化工デンプンの水溶液に分散した少なくとも1つの活性物質の粒子を含む分散液の調製方法であって、前記分散液のpH値が5〜10の範囲にあり、前記方法が
a)前記化工デンプンの水溶液を準備する工程、
b)前記溶液に前記少なくとも1つの活性物質を添加する工程、
c)このように得られた混合物を処理して前記化工デンプンを含む前記水溶液中の前記少なくとも1つの活性物質の粒子の分散液を調製する工程、
を含む、前記方法であって、
d)前記少なくとも1つの活性物質を添加する前か後に前記化工デンプンの水溶液のpHを5-10の範囲に調整する工程
を更に含むことを特徴とする前記方法。
【請求項8】
化工デンプンのマトリックスに埋め込まれた少なくとも1つの活性物質を含むマイクロカプセルを調製するための請求項7記載の方法であって、
c1)工程c)で得られた分散液を微細に粉砕し乾燥して、各々が前記化工デンプンを含むマトリックスに埋め込まれた前記少なくとも1つの活性物質の単一の又は複数の液状又は固形ミクロ粒子を含有する多量の粒子を得る工程
を更に含む、前記方法。
【請求項9】
前記化工デンプンが、天然源、例えば、ジャガイモ、小麦、トウモロコシ、タピオカ又は米に由来する、請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
前記化工デンプンが化学的に又は酵素で変性されている、請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記化工デンプンがn-オクテニルスクシニル酸化工デンプンである、請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程d)において、pHが約7〜10に調整される、請求項7〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
e)取り込まれた空気及び/又は酸素を水性媒体から除去する工程を更に含む、請求項7〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
水性媒体に取り込まれた空気及び/又は酸素が減圧/除圧によって除去される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
水性媒体に取り込まれた空気が、水蒸気噴射に続いて減圧下蒸発(瞬間冷却)によって除去される、請求項13記載の方法。
【請求項16】
工程c)における処理が、ホモジェナイズ、乳化、摩砕又は分散によって行われる、請求項7〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
水溶液に抗酸化剤を添加することを更に含む、請求項7〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
非水溶液に抗酸化剤を添加することを更に含む、請求項7〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
f) pHを酸性状態、例えば、3.5〜5に後で再調整する工程を更に含む、請求項7〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
化工デンプンのマトリックスに埋め込まれた少なくとも1つの活性物質の粒子を含むマイクロカプセルの調製方法であって、請求項1〜6のいずれか1項に記載の分散液を乾燥して、水を除去する工程を含む、前記方法。
【請求項21】
マイクロカプセルを調製するための請求項1〜6のいずれか1項に記載の分散液の使用。
【請求項22】
化工デンプンのマトリックス物質に埋め込まれた少なくとも1つの活性物質を含むマイクロカプセルであって、請求項8〜20のいずれか1項に記載の方法によって得られることを特徴とする前記マイクロカプセル。
【請求項23】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の分散液を含む製品。
【請求項24】
請求項7又は9〜19のいずれか1項に記載の方法によって得られる分散液を含む製品。
【請求項25】
請求項22記載のマイクロカプセルを含む製品。
【請求項26】
請求項23〜25のいずれか1項に記載の製品であって、食品、補助食品、飲料、医薬又は動物薬、飼料又は補助飼料、パーソナルケア製品又は家庭用品であることを特徴とする、前記製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−520603(P2007−520603A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551718(P2006−551718)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000078
【国際公開番号】WO2005/075066
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(500213960)バスフ アクチェンゲゼルシャフト (3)
【Fターム(参考)】