説明

水性分散物

【課題】1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(BITと略す)の安定な水性分散物を製造する方法を提供する。
【解決手段】(A)1種以上の増粘剤と、(B)BITの固体粒子とを含む水性分散物を製造する方法であって、(a)水と、溶解したBITの塩と、場合によって1種以上の増粘剤とを含み、pHが8.5以上である水性混合物(I)を形成する工程、(b)酸と、前記水性混合物(I)と、場合によって1種以上の増粘剤とを含む成分を任意の順に一緒に混合することにより、pHが1.5〜7.5である前記水性分散物を形成する工程を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性分散物に関する。
【背景技術】
【0002】
以下は本発明の背景である。
1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(BIT)は、例えば、有用な水性組成物、例えばラテックスなどにおいて微生物(例えば、バクテリア、真菌、カビ、酵母など)を殺すために使用される効果的な殺生物剤である。pHが7.5以下の場合にはBITは低い水中溶解度を有し、よって水中で分散されたBIT粒子の形態(「水性BIT分散物」と称される)でBITを提供するのが一般的である。多くの場合、有用な水性組成物中での微生物の制御に必要とされるよりも高い濃度のBITを有する形態(「BIT濃縮物」と称される)でBITを提供することが望まれる。有用な水性組成物における微生物の制御に必要とされるBITの濃度を達成するために適切な量のBIT濃縮物が有用な水性組成物に添加されることができた。有用であるために、BIT分散物濃縮物(すなわち、BIT濃縮物でもある水性BIT分散物)は有用な粘度を有するべきであり、かつそれは安定であるべきである。
【0003】
BIT分散物濃縮物をはじめとするBIT分散物においては、固体粒子が小さなサイズを有しかつその分散物が安定であることが通常望ましい。典型的には、過去においては、充分に小さな粒子を製造するために、BITの粒子は機械的処理(例えば、粉砕など)にかけられてその粒子のサイズを小さくしていた。
【0004】
米国仮出願第61/371,811号は1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(BIT)の粒子の水性分散物を製造する方法を記載する。米国仮出願第61/371,811号に記載される方法は、普通に製造されて望ましくなく大きいBITの粒子を得て、次いでその粒子を粉砕してそのサイズを小さくすることを伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国仮出願第61/371,811号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
BITの安定な水性分散物を製造する方法を提供することが望まれ;その方法が粉砕を必要とせずかつその方法が望ましく小さな粒子サイズを有する分散物を生じさせることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下が本発明の提示である。
本発明の第一の形態は、(A)1種以上の増粘剤と、(B)1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンの固体粒子とを含む水性分散物を製造する方法であって、(a)水と、溶解した1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンの塩と、場合によって1種以上の増粘剤とを含み、pHが8.5以上である水性混合物(I)を形成する工程、および(b)次いで、酸と、前記水性混合物(I)と、場合によって1種以上の増粘剤とを含む成分を任意の順に一緒に混合することにより、pHが1.5〜7.5である前記水性分散物を形成する工程を含む方法である。
【0008】
本発明の第2の形態は、本発明の第1の形態の方法によって製造された水性分散物である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下は本発明の詳細な説明である。
本明細書において使用される場合、文脈が他のことを明確に示さない限りは、以下の用語は指定された定義を有する。
【0010】
本明細書において使用される場合、連続液体媒体がその連続液体媒体の重量を基準にして20重量%以上が水である場合には、連続液体媒体は「水性媒体」である。
【0011】
本明細書において使用される場合、分散物は固体粒子が連続液体媒体全体にわたって分布している組成物である。水性分散物は連続液体媒体が水性媒体である分散物である。本明細書において使用される場合、溶液は分散物とは異なる。溶液では、化合物(溶質)の個々の分子が連続液体媒体(溶媒)全体にわたって分布している。溶媒が水性媒体である場合には、溶液は水性である。
【0012】
本明細書において使用される場合、溶媒は、25℃で液体でありかつ1気圧で30℃以上の沸点を有する化合物である。本明細書において使用される場合、25℃で溶媒中に溶解されうる化合物の量が、その溶媒100グラムあたりその化合物1グラム以上である場合には、その化合物はその溶媒に可溶性である。
【0013】
2種以上の成分の混合物が形成される(または、同じ意味として、これら2種以上の成分が一緒に混合される)ことが本明細書において示される場合には、それら成分が互いに接触させられ、かつ一緒にブレンドされることを意味する。他のことが示されない限りは、これら成分は任意の順に互いに一緒にされる。例えば、2成分の混合物においては、第1の成分が第2の成分に添加されることができ、または第2の成分が第1の成分に添加されることができ、またはこれら2成分が容器に同時に入れられることができ、または何らかの他の方法が使用されうる。別の例については、3種以上の成分の混合物が製造される場合には、2種以上の成分の第1の混合物が製造されることができ、次いでその第1の混合物と1種以上の残りの成分とから次の混合物が製造されうる。2以上の別の操作でいずれか1種の成分が添加されても良く;例えば、第1の工程において第1の成分が第2の成分の一部分と混合されることができ、そして第2の工程において、第1の工程の結果物が第3の成分と混合されることができ、次いで第2の工程の結果物がさらなる量の第2の成分と混合されることができる。
【0014】
本明細書において使用される場合、2種以上の成分が「混合され」るまたは「一緒に混合され」ると称される場合には、これらの成分が初めて互いに接触させられることが意味される。
【0015】
増粘剤は、水に、水溶液に、または水性分散物に添加されたときに粘度の増大を生じさせる化合物または化合物の混合物である。以下の試験に従ってpH感受性またはpH非感受性として増粘剤を特徴付けることが有用である。1重量部の増粘剤活性成分がpH7で100重量部の水と混合され、その混合物の定常剪断粘度が1秒−1でpH7で測定される(ETA7)。この混合物に塩基が添加されてpHを10にして、そしてこの混合物の定常剪断粘度が1秒−1で測定される(ETA10)。ETA10をETA7で割った商が5以上である場合には、その増粘剤はpH感受性である。そうでなければ、その増粘剤はpH感受性ではない。
【0016】
用語「殺微生物剤」または「殺生物剤」とは、微生物を殺すことができ、微生物の成長を阻止することができ、または微生物の成長を制御することができる化合物をいう。殺生物剤には、例えば、殺バクテリア剤、殺真菌剤および殺藻剤が挙げられる。用語「微生物」は、例えば、バクテリア、真菌(例えば、酵母およびカビ)、並びに藻類を含む。
【0017】
多糖は、繰り返し単位が単糖であり、10より多い繰り返し単位から作られているポリマーである。
【0018】
本明細書において、ある比率が「X以上:1」であることが示される場合には、その比率がY:1で、YはX以上であることを意味する。同様に、本明細書において、ある比率が「Q以下:1」であることが示される場合には、その比率がT:1で、TはQ以下であることを意味する。
【0019】
本明細書において使用される場合、攪拌は容器内に存在するそれぞれの材料を容器の内容物全体にわたって分布させるように機能する、容器において行われる機械的作用である。攪拌には、例えば、容器の内容物をかき回すプロセスおよび容器を動かすプロセスが挙げられる。かき回しは容器の内容物の中にある1以上の物体を回転させることを伴い、回転する物体には例えば、棒、インペラ、スクリュー、ローター、らせんなどが挙げられる。容器を動かすプロセスには、例えば、振とう、ローリングなどが挙げられる。
【0020】
本明細書において使用される場合、「室温」は25℃である。本明細書において使用される場合、「pbw」は重量部である。
【0021】
本発明の方法は、水、溶解したBITの塩、および場合によって1種以上の増粘剤を含み、かつ8.5以上のpHを有する水性混合物(本明細書においては、「水性混合物(I)」と称される)を提供することを伴う。好ましくは、水性混合物(I)は、所望のpHを確立するために1種以上の塩基が水に添加されるか、またはBITと、水と、場合によっては1種以上の増粘剤との混合物に添加されるプロセスによって製造される。好ましくは、この塩基は水に可溶性である。好ましい塩基は強塩基(すなわち、3以下のpKの塩基)である。好ましいのは無機塩基である。より好ましいのは水溶性無機水酸化物塩であり、より好ましいのは水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、および水溶性アルカリ金属水酸化物塩であり;より好ましいのは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムおよびこれらの混合物である。
【0022】
ある実施形態(本明細書において「高I」実施形態と称される)においては、水性混合物(I)は1種以上の増粘剤を含む。ある実施形態(本明細書において「低I」実施形態と称される)においては、水性混合物(I)は増粘剤を含まない。
【0023】
水性混合物(I)は任意の方法によって形成されうる。
【0024】
低I実施形態では、例えば、塩基の水溶液を製造し、次いでBITを添加することにより水性混合物(I)は形成されうる。低I実施形態の中の別の例については、BITおよび水の混合物を製造し、次いで塩基を添加することにより水性混合物(I)は形成されうる。
【0025】
高I実施形態においては、混合物(本明細書において「混合物(III)」と称される)が形成される。混合物(III)は水、BITおよび1種以上の増粘剤を含み、かつ混合物(III)のpHは7.5以下である。混合物(III)の形成後、混合物(III)のpHが上げられて、水性混合物(I)を形成する。高I実施形態では、例えば、水性混合物(I)は水およびBITの混合物を製造し、次いで1種以上の増粘剤を添加し、次いで塩基を添加することにより製造されうる。高I実施形態の中の別の例については、水性混合物(I)は、水および1種以上の増粘剤の混合物を製造し、次いでBITを添加し、次いで塩基を添加することにより製造されうる。
【0026】
場合によっては、水性混合物(I)は以下の1種以上を含むことができる:水以外の溶媒、BITと反応しなかった塩基、塩基と反応しなかったBIT、他の材料、およびこれらの混合物。
【0027】
水性混合物(I)を製造するのに使用される塩基の量は、この混合物を8.5以上、より好ましくは11.0以上のpH値にするのに充分な量である。好ましくは、水性混合物(I)のpHは14以下である。
【0028】
BITは、25℃で固体である粒子の集合物(collection)の形態で製造者によって普通に提供される。個々の粒子、凝集体、および凝集塊を含むこのような集合物における粒子は1マイクロメートル〜500マイクロメートルのサイズの範囲である。このような集合物は、通常、約85重量%のBITおよび約15重量%の水を含む。このような集合物は粉体であるように見えるが、それは(本明細書をはじめとして)多くの場合「ペースト」と称される。
【0029】
本発明の実施においては、任意の形態のBITが、水性混合物(I)の製造において使用されうる。すなわち、水性混合物(I)を製造することが望まれる場合には、本発明を実施する人は純粋なBIT、BITペースト、溶媒中のBITの溶液、BITの分散物、何らかの他の形態のBIT、またはこれらの組み合わせから始めることを選択することができる。すなわち、結果物が本明細書において定義される水性混合物(I)としての資格を有する限りは、BITの最初の形態は重要ではない。例えば、製造者によって供給されるペーストの形態のBITは、水に、または塩基の水溶液に直接添加されることができる。好ましくは、BITペーストは、水性混合物(I)の製造における使用の前に、粒子サイズを小さくするための機械的処理(例えば、粉砕など)にかけられない。より好ましくは、BITペーストは水性混合物(I)の製造における使用の前に、粒子サイズを小さくするための処理にかけられない。
【0030】
本発明の実施においては、BITおよびBITと反応可能な塩基が両方とも水性媒体中に存在する場合には、この塩基はBITと反応してBITの塩を形成するであろう。そのBITの塩は水性媒体中に可溶性であろうし、かつ溶解したBITの塩になるであろう。本明細書においては、「溶解したBIT」または「溶液中のBIT」が言及される場合には、その溶解した物質はBITの塩であると理解される。
【0031】
本明細書においては、「溶液中のBITの量」が言及される場合には、その意図される量はその溶液を製造するのに必要な中性BITの量である。例えば、100グラムの全重量を有する溶液を製造するのに5グラムの中性BITが使用された場合には、本明細書においては、溶液中のBITの濃度は5%として表される。
【0032】
本発明の水性分散物中のBITの量は、水性分散物の重量を基準にして、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上である。本発明の水性分散物中のBITの量は、水性分散物の重量を基準にして、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。
【0033】
好ましくは、水性混合物(I)を製造するのに使用される塩基:BITのモル当量比は0.8以上:1、より好ましくは0.9以上:1、より好ましくは0.95以上:1、より好ましくは0.99以上:1である。好ましくは、水性混合物(I)を製造するのに使用される塩基:BITのモル当量比は5以下:1、より好ましくは3以下:1、より好ましくは1.5以下:1、より好ましくは1.2以下:1、より好ましくは1.1以下:1である。本明細書において使用される場合、この塩基:BITのモル当量比は、水性混合物(I)を製造するのに使用される滴定可能な塩基基のモル数:水性混合物(I)を製造するのに使用されるBITのモル数の比率である。例えば、一価の塩基化合物(例えば、アルカリ水酸化物など)が使用される場合には、塩基基のモル数はこの一価塩基化合物のモル数である。別の例については、二価の塩基化合物(例えば、2つのヒドロキシド基を有する化合物など)が使用される場合には、塩基基のモル数はこの二価の塩基化合物のモル数の二倍である。
【0034】
本発明の方法は、水性混合物(I)と、場合によって1種以上の増粘剤と、酸とを含む混合物(本明細書においては「水性混合物(II)」)を形成することを伴う工程(b)を含む。増粘剤は水性混合物(I)の形成の際に、または水性混合物(II)の形成の際に、またはこの双方で添加されうる。水性混合物IIは材料を任意の方法によって、任意の順に一緒にすることによって製造されうる。例えば、水性混合物(II)は工程(b1)および工程(b2)を含む工程によって製造されうる。工程(b1)は増粘剤を含み、かつ水性混合物(I)を含む混合物を製造する工程である。水性混合物(I)がすでに、工程(a)の実施からの1種以上の増粘剤を含む場合には、次いで工程(b1)の実施の際にさらなる増粘剤が添加されてよく、または添加されなくても良い。添加される場合には、このようなさらなる増粘剤は工程(a)の実施に使用された増粘剤、またはその混合物と同じであっても良いしまたは異なっていてもよい。
【0035】
工程(b2)は酸を含み、かつ水性混合物(I)を含む混合物を製造する工程であって、酸の量は酸と水性混合物(I)との混合物を1.5〜7.5のpHにするのに充分な量である。工程(b1)および(b2)は任意の順に行われうる。
【0036】
低I実施形態では、水性混合物(II)の形成の際に1種以上の増粘剤が組成物に添加されうる。低I実施形態では、水性混合物(II)の形成の際に、増粘剤、水性混合物(I)および酸が任意の順に一緒にされうる。低I実施形態では、酸が添加される前に、酸が添加された後で、またはその組み合わせで、増粘剤は水性混合物(I)に添加されうる。高I実施形態では、水性混合物(II)の形成の際に追加の増粘剤が添加される場合には、この追加の増粘剤、水性混合物(I)および酸は任意の順で一緒にされうる。
【0037】
工程(b2)が工程(b1)の後で行われる場合には、ひいては、工程(b2)の実施は酸と工程(b1)から得られた混合物とを一緒にすることを伴うことが企図される。同様に、工程(b1)が工程(b2)の後で行われる場合には、ひいては、工程(b1)の実施は増粘剤と工程(b2)から得られた混合物とを一緒にすることを伴うことが企図される。
【0038】
例えば、工程(b1)が行われ、その後で工程(b2)が行われうる。別の例では、工程(b2)が行われ、その後で工程(b1)が行われうる。別の例では、工程(b1)の一部分が行われることができ(例えば、増粘剤の一部分が水性混合物(I)に添加されうる)、次いで工程(b2)が行われることができ、次いで工程(b1)が完了されうる(すなわち、さらなる増粘剤が水性混合物(I)、増粘剤および酸の混合物に添加されうる)。別の例については、工程(b2)の一部分が行われることができ(すなわち、酸の一部分が水性混合物(I)に添加されうる)、次いで工程(b1)が行われることができ、次いで工程(b2)が完了されうる(すなわち、さらなる酸が水性混合物(I)、増粘剤および酸の混合物に添加されうる)。
【0039】
工程(b1)の一部分または全部が工程(b2)の一部分または全部と同時に行われる実施形態も企図される。工程(b1)および(b2)の同時実施は少なくとも2つの方法で行われえたと考えられる。例えば、一つの方法は3成分、すなわち、水性混合物(I)、増粘剤および酸を同時に一緒にすることであろう。例えば、別の方法は酸と増粘剤とを一緒に混合して一つの組成物にして、次いでその組成物が水性混合物(I)と混合されることであろう。
【0040】
ある実施形態においては、比較的高濃度の溶解したBITの塩を有する比較的低体積の水性混合物(I)を、比較的高体積の酸の水溶液に添加することにより、水性混合物(I)は酸と混合されうる。このような実施形態においては、水性混合物(I)中のBITの濃度は5%以上、より好ましくは10%以上、好ましくは20%以上である。このような実施形態においては、水性混合物(I)の体積は酸の水溶液の体積より小さい。このような実施形態では、増粘剤は水性混合物(I)と接触する前に酸水溶液中に存在していてよく、または増粘剤は水性混合物(I)が酸水溶液と混合された後で、組成物に添加されうる。このような実施形態では、好ましくは、水性混合物(I)が酸水溶液と混合された後で、増粘剤が組成物に添加される。
【0041】
増粘剤が本発明の組成物の他の材料と混合される(すなわち、接触させられる)瞬間に増粘剤が存在する形態を考慮することが有用である。その形態は任意の形態、例えば、純粋な増粘剤、増粘剤と別の組成物との混合物、溶媒(例えば、トリエチレングリコール)中の増粘剤の溶液、液体媒体(例えば、水性媒体)中の増粘剤粒子の分散物、またはこれらの混合物などであることができる。同様に、酸が他の材料と混合される(すなわち、接触させられる)瞬間に、酸が存在する形態を考慮することが有用である。その形態は任意の形態、例えば、純粋な酸、酸と別の組成物との混合物、溶媒(例えば、水)中の酸の濃厚溶液、溶媒中の酸の希薄溶液、またはこれらの混合物などであることができる。
【0042】
任意の増粘剤が適する。適する増粘剤には、例えば、ポリ電解質(例えば、アクリル酸および/またはメタクリル酸の重合単位を含むホモポリマーおよびコポリマーなど)、多糖、セルロースエーテル、セルロースエーテルの誘導体、ガム、およびこれらの混合物が挙げられる。好ましい増粘剤はpH感受性ではない。好ましい増粘剤は、1.5〜10のpH範囲内に部分的にもしくは完全に入るpH値の範囲にわたって水に可溶性である。好ましい増粘剤は多糖である。好ましいのは50以上の繰り返し単位を有する多糖であり、より好ましいのは75以上の繰り返し単位である。好ましい多糖は水溶性である。好ましい多糖はセルロースエーテル、セルロースエーテルの誘導体、ガムおよびこれらの混合物である。
【0043】
セルロースエーテルおよびその誘導体はセルロースのアルキル化および場合によってはさらなる化学修飾によって製造される。好ましいセルロースエーテルおよびその誘導体は水溶性である。セルロースエーテルおよびその誘導体の中では、好ましいのはヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロールナトリウム、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、より好ましいのはヒドロキシエチルセルロールである。
【0044】
ガムは生体システムによって製造される多糖である。ガムは処理(例えば、ガム粒子の表面への1種以上の化学物質の添加)を受けていても、受けていなくても良い。好ましいガムは水溶性である。好ましいガムは500,000以上の重量平均分子量を有し、より好ましいのは100万以上である。好ましいガムはキサンタンガムである。
【0045】
より好ましい多糖はヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガムおよびこの混合物である。
【0046】
1種以上の多糖が存在する場合には、本発明の水性分散物中の多糖の好ましい量は、水性分散物の重量を基準にして、0.3重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは0.6重量%以上である。独立して、1種以上の多糖が存在する場合には、本発明の水性分散物中の多糖の好ましい量は、水性分散物の重量を基準にして、2重量%以下、より好ましくは1.5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。多糖が存在する場合には、最適な量は使用される具体的な多糖に応じておよびBITの量に応じて変化する。
【0047】
ある実施形態においては、本発明の水性分散物はグリコールおよびグリコールエーテルから選択される1種以上の第2溶媒を含む。第2溶媒が存在する場合には、好ましいのは式F1を有する第2溶媒である:
【化1】

式中、nは1〜15であり;Rは水素またはアルキルであり;およびRは水素、アルキル、アリール、置換アルキルまたは置換アリールである。Rが水素である場合には、第2溶媒はグリコールである。好ましい第2溶媒はグリコール類である。好ましくは、Rは水素、メチルまたはエチルである。より好ましくは、Rは水素である。好ましくはnは2〜10である。第2溶媒が存在する場合には、第2溶媒の好ましい量は、本発明の水性分散物の重量を基準にして、0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上である。第2溶媒が存在する場合には、第2溶媒の好ましい量は、本発明の水性分散物の重量を基準にして、50重量%以下、より好ましくは25重量%以下、より好ましくは10重量%以下、より好ましくは6重量%以下である。第2溶媒を伴うある実施形態においては、増粘剤が水性混合物(I)と混合される前に、または増粘剤が水性混合物(I)と混合されるのと同時に、第2溶媒は水性混合物(I)と混合される。第2溶媒が使用されるある実施形態においては、第2溶媒と増粘剤との混合物(本明細書においては、「2ST」混合物)が製造され、次いでこの2ST混合物が他の成分と混合される。2ST混合物が使用される場合、第2溶媒の量は、本発明の水性分散物の重量を基準にして好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上である。2ST混合物が使用される場合、第2溶媒の量は、本発明の水性分散物の重量を基準にして好ましくは8重量%以下、より好ましくは6重量%以下である。2ST混合物が使用される場合には、この2ST混合物は本発明の工程(b)に使用される酸の一部分または全部を含んでいて良く、または含んでいなくても良い。
【0048】
本発明の方法は、本明細書において「ターゲット混合物」と称される混合物と酸とを混合することを含む方法によって、水性分散物を形成することを伴う。ターゲット混合物は水性混合物(I)を含み;ターゲット混合物は増粘剤を含んでいて良く、または含んでいなくても良い。
【0049】
酸が添加される水性組成物のpHを下げることが可能な任意の酸が適している。酸のpKは好ましくは7以下、より好ましくは6以下、より好ましくは5以下である。
【0050】
適する酸は有機もしくは無機である。適する酸には、有機酸、無機酸、リン酸およびスルホン酸が挙げられる。好ましいのは無機酸、有機カルボン酸、有機ポリカルボン酸および有機スルホン酸であり;より好ましいのは無機酸およびアルキルカルボン酸である。好ましくは、酸は酸の水溶液の形態であり、かつその酸の水溶液がターゲット混合物に添加される。酸が酸性ポリ電解質、例えば、ポリ(アクリル酸)などであるいくつかの実施形態が企図され;このような酸が酸として機能するだけでなく増粘剤としても機能しうることも企図される。
【0051】
酸がターゲット混合物に添加される実施形態では、酸が添加される速度を考慮することが有用である。この添加の速度は、BITのkg(すなわち、酸の添加前のターゲット混合物中に存在するBITのkg)あたりの、分あたりの酸のモル数として本明細書において定義される酸速度単位(「asu」)によって特徴付けられうる。好ましくは、酸の添加の速度は好ましくは1.0asu以上、より好ましくは2asu以上、より好ましくは5asu以上、より好ましくは10asu以上である。ターゲット混合物に酸を添加するための任意の従来の手段を用いて、できるだけ高い酸の添加の速度を使用することが許容される。
【0052】
ターゲット混合物と混合される酸の量はpHを1.5〜7.5の値にする。
【0053】
好ましくは、酸がターゲット混合物と混合されつつ、この酸とターゲット混合物との混合物が攪拌される。すなわち、酸とターゲット混合物との混合が始まるときに、この混合物は好ましくは攪拌され、酸の全てがターゲット混合物の全てと混合されるときに攪拌は好ましくは続けられる。好ましくは、攪拌は酸とターゲット混合物との混合物内のインペラを回転させることにより行われる。
【0054】
インペラを液体組成物と共に回転させることにより攪拌が行われる場合には、そのインペラの先端の接線速度によって攪拌を特徴付けることが有用である。
【0055】
好ましくは、インペラの先端の接線速度600mm/秒以上、より好ましくは900mm/秒以上でインペラを混合物と共に回転させることにより攪拌が行われつつ、酸とターゲット混合物との混合が行われる。好ましくは、インペラの先端の接線速度6,500mm/秒以下、より好ましくは5,000mm/秒以下でインペラを混合物と共に回転させることにより攪拌が行われつつ、酸とターゲット混合物との混合が行われる。
【0056】
本発明の実施においては、BIT、水および場合によって1種以上の増粘剤が一緒にされて、pHが8.5以上である混合物を形成する場合には、このプロセスは溶解したBITの塩が形成されるように行われる。ある場合には、BIT、塩基、水および場合によって1種以上の増粘剤を適切な量で混合することが混合物に熱を適用する必要なしに、溶解したBITの塩の溶液を生じさせうる。このような場合のいくつかにおいて、溶解したBITの塩の形成は発熱プロセスであり、外部ソースから熱が適用されないとしても、この混合物は成分が混合される温度を超える温度に到達する。外部熱が溶解したBITの塩の形成に必要であるか否かに関わりなく、工程(a)の実行中に水、塩基、BITおよび場合によって1種以上の増粘剤の混合物に熱を適用することは本発明の範囲内のことである。典型的には、工程(a)が完了した瞬間に、結果物は水性混合物(I)であり、その中にBIT塩が溶解しており、かつ水性混合物(I)は室温であることができまたは室温より高い温度であることができる。
【0057】
いくつかの増粘剤は、本明細書において、「高pH感受性」と標記される特徴を有する。このような増粘剤は8.5以上のpHで水に容易に溶解しない。このような増粘剤は塊形態で8.5以上のpHで水に添加される場合に、この塊を溶かすために過剰な攪拌が必要とされる。高pH感受性増粘剤はpH感受性であって良いし、pH感受性でなくても良い。キサンタンガムは通常は高pH感受性である。いくつかの市販のグレードのキサンタンガムが、キサンタンガムを高pH感受性でないようにする目的で処理される。このように処理されていないキサンタンガムのグレードは高pH感受性である。
【0058】
高pH感受性でない増粘剤が使用される場合には、水性混合物(II)の形成の際にこの増粘剤を組成物に添加することが好ましい。この増粘剤が添加された後で、組成物の増大した粘度は、組成物をかき回すまたは他の方法で攪拌するために増大したエネルギーを必要とするであろうし、よってその増粘剤をこのプロセスにおいて後で(すなわち、水性混合物(II)の形成の際に)添加することが望まれる。高pH感受性でない増粘剤が使用される場合で、かつ増粘剤が水性混合物(II)の形成の際に組成物に添加される場合には、pHが8.5以上でありつつ、増粘剤を組成物に添加することが好ましく、すなわち、酸を添加する前に、増粘剤を組成物に添加することが好ましい。
【0059】
高pH感受性である増粘剤が使用される場合には、高I実施形態で本発明を実施するのが好ましい。高pH感受性である増粘剤が使用される場合には、水性混合物(I)の形成の際の塩基を添加する工程の前に、BIT、水およびこのような増粘剤の混合物を、pH7.5未満で形成することがより好ましい。
【0060】
水性混合物(I)は固有の沈殿温度を有する。すなわち、水性混合物(I)の温度が低くされるならば、温度はBITの塩の一部分がもはや可溶性でない温度(固有の沈殿温度)に到達するであろうし、そしてBITの塩の一部分は沈殿するであろう。水性混合物(I)が、BITの塩の沈殿の発生なしに水性混合物(I)の凝固点まで温度を下げられるならば、ひいては、水性混合物(I)の凝固点はその固有の沈殿温度であると見なされるであろう。固有の沈殿温度は水性混合物(I)の特性であって、他の可変事項の中でも、塩基の種類、BITの濃度および/または溶解したBITの塩の濃度に応じて変動する。
【0061】
ある実施形態においては、室温よりも高い固有の沈殿温度を有する水性混合物(I)が製造される。BITの特定の濃度で水性混合物(I)が、室温よりも高い固有の沈殿温度を有しているとしても、本発明の方法を使用して、室温で存在しかつ安定なBITの、その特定の濃度での水性分散物を製造することが可能である。そのような水性分散物は以下のように製造されるであろう。水性混合物(I)は、必要ならばこの混合物に熱を適用して、工程(a)を実施することにより製造される。工程(a)の終わりにおいて、BITが溶解され、そして水性混合物(I)は固有の沈殿温度より高い温度である。次いで、必要に応じて、この組成物に熱を適用することによって、工程(b)の実施中にその組成物が固有の沈殿温度より高い温度に維持される。工程(b)の終わりにおいて、BITは沈殿し、水性分散物を形成し、よって水性混合物(I)はもはや存在しないので水性混合物(I)の固有の沈殿温度はもはや関係ない。次いで、この水性分散物は室温まで冷却されることができ、そしてこの水性分散物は室温で安定であろう。
【0062】
特定の低I実施形態が本明細書において「b2−次いで−b1実施形態」と称される。このような実施形態においては、工程(b2)は工程(b1)の前に行われる。このような実施形態では、酸と水性混合物(I)との混合物を素早く製造することが好ましい。
【0063】
b2−次いで−b1実施形態では、希薄酸溶液を使用することが好ましい。すなわち、水中の酸の希薄酸溶液を製造すること、および次いでその希薄酸溶液を水性混合物(I)と混合することが好ましい。例えば、塩酸を使用するb2−次いで−b1実施形態の中では、好ましいのは、塩酸の濃度が酸溶液の重量を基準にして25重量%以下、より好ましくは20重量%以下である塩酸溶液である。また、塩酸を使用するb2−次いで−b1実施形態の中では、好ましいのは、塩酸の濃度が酸溶液の重量を基準にして0.5重量%以上である塩酸溶液である。他の酸を使用するb2−次いで−b1実施形態では、酸は同等の希薄溶液で使用されうることが企図される。
【0064】
b2−次いで−b1実施形態が実施される場合には、工程(b2)の際に、溶解したBITの塩の一部分もしくは全部がBITの分散した粒子に変換される。得られた組成物は、本明細書においては、「b2のみの分散物」と称される。本明細書においては、溶解したBITの塩がb2のみの分散物中に残存するかどうかに関わりなく、増粘剤をb2のみの分散物と混合する工程が工程(b1)としての資格を有すると理解されるべきである。すなわち、増粘剤を水性混合物(I)と混合するとして本明細書に記載される工程は以下の操作のいずれかまたは双方を含むと理解される:酸が水性混合物(I)と混合される前に、増粘剤が水性混合物(I)と混合される操作;および酸と水性混合物(I)との混合から生じた組成物と増粘剤が混合される操作。
【0065】
工程(b1)および工程(b2)が20℃〜60℃で行われる実施形態が企図される。
【0066】
工程(a)において使用される塩基と工程(b)において使用される酸との間の中和反応から形成されるであろう塩の組成を有する塩を企図することが有用である。1種以上のこのような塩が本発明の方法を行うことによって形成されるであろうことが企図される。本発明の方法によって形成されるこのような塩は、本明細書においては、「プロセス中和塩」と表記される。工程(a)において1種より多い塩基が使用される場合;または工程(b)において1種より多い酸が使用される場合;または工程(a)において1種より多い塩基が使用され、かつ工程(b)において1種より多い酸が使用される場合には、1種より多いプロセス中和塩が形成されるであろうことが企図される。ある実施形態においては、1種以上のプロセス中和塩が沈殿し、本明細書において水性分散物中に含まれていると見なされないであろう。好ましい実施形態においては、1種以上のプロセス中和塩は本発明の水性分散物中に溶解したままであるかまたは分散したままであり、本明細書においては、これら塩は水性分散物中に含まれていると見なされる。より好ましくは、全てのプロセス中和塩は本発明の水性分散物中に溶解したまたは分散したままであろう。
【0067】
本発明の水性分散物に含まれる全てのプロセス中和塩の合計量は、水性分散物中に含まれる全てのプロセス中和塩の当量の合計数:BITの当量数の比率によって特徴付けられうる。好ましくは、その比率は0.3以上:1、より好ましくは0.5以上:1、より好ましくは0.8以上:1、より好ましくは0.9以上:1、より好ましくは0.95以上:1、より好ましくは0.99以上:1である。好ましくは、その比率は5以下:1、より好ましくは3以下:1、より好ましくは1.5以下:1、より好ましくは1.2以下:1、より好ましくは1.1以下:1である。
【0068】
本発明の水性分散物の粘度は、ASTM D562−10(ASTMインターナショナル、米国ペンシルベニア州19428−2959、ウェストコンショッケン、100バー ハーバードライブ POボックスC700)に定義されるようなストーマー粘度計を使用した粘度測定の結果であるクレブス単位(KU)によって特徴付けられうる。好ましくは、本発明の水性分散物の粘度は50KU以上、より好ましくは60KU以上、より好ましくは65KU以上である。好ましくは、本発明の水性分散物の粘度は100KU以下、より好ましくは90KU以下、より好ましくは80KU以下である。
【0069】
本発明の水性分散物中のBIT粒子の粒子サイズ分布はレーザー光散乱によって測定される。このような測定に適するアプローチの一つはシラス(Cilas)粒子サイズ分析装置、モデルナンバー1064LD、シリーズナンバーRev.1.02(米国、ウィスコンシン州、マジソン、シラスパーティクルサイズ)である。粒子サイズ分布を評価する一方法はD99であり、これは水性分散物中の全てのBIT粒子の質量を基準にして99%以上の質量のBIT粒子がD99以下の粒子直径を有するように選択されうる最も小さい粒子直径である。
【0070】
好ましくは、D99は75マイクロメートル以下、より好ましくは60マイクロメートル以下、より好ましくは55マイクロメートル以下、より好ましくは50マイクロメートル以下、より好ましくは45マイクロメートル以下、より好ましくは40マイクロメートル以下である。好ましくは、D99は1マイクロメートル以上、より好ましくは5マイクロメートル以上、より好ましくは10マイクロメートル以上である。
【0071】
本発明の水性分散物は、連続液体媒体の重量を基準にして20重量%以上が水である連続液体媒体を有する。好ましくは、連続液体媒体中の水の量は、連続液体媒体の重量を基準にして50重量%以上、より好ましくは75重量%以上、より好ましくは85重量%以上、より好ましくは95重量%以上である。ある実施形態においては、本発明の水性分散物は1種以上の「追加の溶媒」(すなわち、水ではなくかつ本明細書において上述した第2溶媒のいずれかでもない)を含む。全ての追加の溶媒の量は、連続液体媒体の重量を基準にして、好ましくは0重量%〜50重量%、より好ましくは0重量%〜20重量%、より好ましくは0重量%〜10重量%、より好ましくは0重量%〜5重量%である。
【0072】
本発明のある組成物は、BITに加えて、1種以上の追加の殺生物剤を含む。追加の殺生物剤(すなわち、BIT以外の殺生物剤)は、例えば、BIT以外の3−イソチアゾロンの誘導体、ホルムアルデヒド放出性殺生物剤、アルデヒド、尿素ベースの殺生物剤、第四級アンモニウム殺生物剤、フェノール系殺生物剤、ハロゲン含有殺生物剤、有機金属殺生物剤、有機硫黄殺生物剤、複素環式殺生物剤、ビグアナイド殺生物剤、他の窒素含有殺生物剤、アルコール殺生物剤、およびこれらの混合物から選択されうる。1種以上の追加の殺生物剤が存在する場合には、好ましい追加の殺生物剤は本発明の水性媒体中に溶解されまたは分散されうる殺生物剤である。1種以上の追加の殺生物剤が存在する場合には、好ましい追加の殺生物剤は、その安定範囲の一部分もしくは全部が1.5〜7.5のpH範囲内に入るpHの範囲(本明細書においては「安定範囲」)にわたって、水中で安定である(すなわち、室温で2週間以上にわたって貯蔵される場合に殺生物活性を保持する)殺生物剤であり;そのような殺生物剤が本発明の水性分散物中で安定であろうことが企図される。いくつかの適切な追加の殺生物剤は水溶性である。いくつかの適切な水溶性の追加の殺生物剤は、例えば、3−イソチアゾロンの水溶性誘導体である。適切な水溶性の追加の殺生物剤には、例えば、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(CMI)、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MI)、ブロノポール、ジメチロールジメチルヒダントイン(DMDMH)、エチレンジオキシジメタノール(EDDM)、グルタルアルデヒド、グリオキサール、テトラヒドロ−1,3,4,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)イミダゾ(4,5−d)イミダゾール−2,5(1H,3H)−ジオン(CAS登録番号5395−50−6、テトラメチロールアセチレンジウレア、すなわちTMDUとも称される)、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0073】
1種以上の水溶性の追加の殺生物剤が使用される場合には、ゼロより多い任意の量の水溶性殺生物剤が企図される。1種以上の水溶性の追加の殺生物剤が使用される場合には、水溶性の追加の殺生物剤の好ましい量は、水性分散物の重量を基準にして0.3重量%以上であり、より好ましくは1重量%以上であり、より好ましくは2重量%以上であり、より好ましくは5重量%以上である。独立して、1種以上の水溶性の追加の殺生物剤が使用される場合には、水溶性の追加の殺生物剤の好ましい量は、水性分散物の重量を基準にして25重量%以下であり、より好ましくは15重量%以下であり、より好ましくは12重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下である。CMIまたはCMIとMIとの混合物が含まれる場合には、CMIの好ましい量またはCMIとMIとの混合物の好ましい量は、水性分散物の重量を基準にして0.3重量%〜2重量%である。
【0074】
1種以上の水溶性の追加の殺生物剤が使用される実施形態のいくつかにおいては、1種以上の水溶性の追加の殺生物剤は組成物のpHに対して感受性でありうる。すなわち、pH約5で、このような殺生物剤は、そのpHが上昇するにつれて次第に不安定になる。このような実施形態においては、このpHは好ましくは7.5以下、より好ましくは6.0以下、より好ましくは5.0以下である。
【0075】
ある実施形態においては、組成物はBITに加えて、水に可溶性でない1種以上の殺生物剤を含む。BITではなく、かつ水に可溶性でない適切な殺生物剤には、例えば、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(OIT)、ヨードプロピニルブチルカルバマート(IPBC)およびオルト−フェニルフェノール(OPP)が挙げられる。例えば、BIT以外の1種以上の殺生物剤が分散した液滴または分散した固体粒子の形態で存在することができる。このような実施形態では、BITではなくかつ水に可溶性でない殺生物剤の好ましい量は、組成物の重量を基準にして15重量%以下である。
【0076】
BITに加えて、任意の殺生物剤が存在するか存在しないかにかかわらず、本発明の組成物中の全殺生物剤の好ましい量(全ての殺生物剤の量の合計)は、本発明の組成物の重量を基準にして、1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、より好ましくは5重量%以上である。BITに加えて、任意の殺生物剤が存在するか存在しないかにかかわらず、本発明の組成物中の全殺生物剤の好ましい量(全ての殺生物剤の量の合計)は、本発明の組成物の重量を基準にして、50重量%以下、より好ましくは35重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。
【0077】
本発明の水性分散物中に任意の追加の殺生物剤が存在する場合には、この追加の殺生物剤は本発明の方法におけるあらゆる時点で添加されうる。例えば、水溶性の追加の殺生物剤は本発明の方法の開始前に水に添加されることができ、または工程(a)もしくは工程(b)のいずれかの前、その際、またはその後で適切な溶液もしくは混合物に添加されることができる。(本明細書において上述した様な)pHに対して感受性の水溶性の追加の殺生物剤が使用される場合には、そのような追加の殺生物剤が工程(b)の後に添加されることが好ましい。
【0078】
ある実施形態においては、1種以上のアジュバント(すなわち、本明細書において上で論じたものとは異なる材料)が本発明の水性分散物中に含まれる。適切なアジュバントには、例えば、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、キレート化剤(chelant)、充填剤、脱泡剤、およびこれらの混合物が挙げられる。充填剤は、例えば、二酸化チタンおよびクレイのような鉱物粉体である。
【実施例】
【0079】
以下は本発明の実施例である。
以下の実施例においては、他に示されない限りは操作は約23℃で行われる。BITペーストは粉砕または粒子サイズを低減させるための他の機械的プロセスを行うことなく使用された。
【0080】
以下の実施形態のいくつかにおいては、「プロトコル1」が行われた。プロトコル1のある部分は本発明の方法の工程に従うが、プロトコル1の他の部分は検討される組成物の特定の特性を決定するために行われた。これら特性は混合物が本発明の方法に使用されうるか使用できないかについての情報を提供する。
【0081】
「プロトコル1」は次のことを意味する:混合物(本明細書においては、「混合物1」)が以下のように形成された:151.18gのBITペースト(このペーストの重量を基準にして83〜85重量%の濃度のBIT)が塩基性溶液とおよび水と混合された。塩基性溶液の量は、BITと1:1の当量比を有するように選択され、水の量は混合物1が所望の濃度のBITを有するように選択された。ある場合においては、混合物1の材料を混合するプロセスは発熱性であり;このような場合には、この混合物によって到達されるピーク温度が「発熱ピーク」として記録された。この混合物から、100gのサンプル(本明細書においては、「試験1バッチ」)が使用された。BITの一部分または全部が溶解しなかった場合には、この試験1バッチは(最高61℃まで)加熱され、全てのBITが溶解した61℃以下の温度が存在していた場合には、その温度は「溶解温度」として記録された。BITが周囲温度で全て溶解する場合には、本明細書においては溶解温度は23℃であるとされる。次いで、その試験1バッチを0℃まで、またはBITが沈殿した点まで、どちらの温度がより高いにしても、冷却することにより、固有の沈殿温度が観察された。次いで、この試験1バッチは溶解温度(本明細書においては「T2」)またはそれより高い温度まで加熱された;その溶液は温度T2でありつつ、増粘剤が添加されかつ酸溶液が添加された。
【0082】
以下の実施例のいくつかにおいては、様々な塩基性溶液および様々な濃度のBITを用いて、プロトコル1は繰り返し行われた。プロトコル1のこれら繰り返し実施の目的は以下の質問に答えることであった:「特定の塩基性溶液を使用しかつ約23℃〜約60℃の温度を使用しつつ、水性混合物(I)を製造する場合に、どのような範囲のBIT濃度が可能であるのか」。
【0083】
「プロトコル2」は以下のことを意味する。バッチサイズは、ポリプロピレンで造られた3リットルビーカー中で1kgであった。攪拌は120mm直径で、回転速度約600rpm(このインペラ先端の接線速度は3.77m/秒であった)のビスコジェット(Viscojet(商標))インペラを用いて行われた。水性混合物(I)は、BITに対する塩基のモル当量比0.94〜1.02を用いて形成された(BITは塩基も含んでいた水中に溶けた)。増粘剤はキサンタンガムであった(本明細書においては「キサンタン」)。使用される場合には、グリコールは、式HO−(CH−O)−Hを有するトリエチレングリコール(TEG)であった。グリコールが使用された場合には、それはキサンタンガムと混合され、次いでグリコールとキサンタンガムの混合物はBIT塩の溶液に添加された。使用された酸溶液は濃厚HCl(「濃HCl」、酸溶液の重量を基準にして34重量%のHCl)もしくは希薄HCl(「希HCl」、1:1(重量)の水:濃厚酸)であった。次いで、増粘剤および場合によってはグリコールが添加され、次いで、酸が添加されて水性分散物を形成した。この水性分散物のpHおよび粘度が測定された。また、ヘレウスメガフュージ(Heraeus Megafuge(商標))16遠心分離機を用いて、15分間、1650rcfでこの水性分散物の安定性が試験された。沈殿物の量は遠心管内の沈殿物の体積として、遠心管内の物質の全体積のパーセンテージとして報告された。粒子サイズ分布は本明細書において上述したシラス装置を用いて測定された。
【0084】
プロトコル2の目的は、本発明の方法に従い、かつ得られた水性分散物を特徴付けることであった。
【0085】
以下の表においては、材料についての量が空白のままである場合には、その材料は使用されなかった。測定についての結果が空白のままである場合には、その測定は行われなかった。表記「nd」は決定されていないことを意味する。
【0086】
実施例1:NaOH溶液中のBITの溶解度
プロトコル1が行われた。塩基溶液はNaOH(このNaOH溶液の重量を基準にして50重量%のNaOH)であった。
【0087】
【表1】

注(1):組成物の重量を基準にしたBIT重量%
【0088】
実施例1のバッチが示すように、NaOHを用いると、BIT濃度範囲は水性混合物(I)の重量を基準にして5重量%〜40重量%のBITである。実施例1は、本発明の方法が5%〜40%のBIT濃度を用いて実施されることができたという結論を支持することを企図しているが、これはなぜなら、その濃度範囲にわたって、約60℃以下の温度で水性混合物(I)を製造するのが可能であって、かつそれぞれのバッチにおいて溶解温度は固有の沈殿温度よりも高かったからである。より低い濃度(例えば、1%〜5%)のBITが使用されうることもさらに企図される。
【0089】
実施例2:KOH溶液中のBITの溶解度
プロトコル1が行われた。塩基溶液はKOH(KOH溶液の重量を基準にして50重量%のKOH)であった。
【0090】
【表2】

注(1):組成物の重量を基準にしたBIT重量%
【0091】
実施例2のバッチが示すように、KOHを用いると、BIT濃度範囲は水性混合物(I)の重量を基準にして5重量%〜40重量%のBITである。より低い濃度(例えば、1%〜5%)のBITが使用されうることもさらに企図される。
【0092】
実施例3:モノエタノールアミン溶液中のBITの溶解度
プロトコル1が行われた。塩基溶液はモノエタノールアミン(純粋)であった。
【0093】
【表3】

注(1):組成物の重量を基準にしたBIT重量%
【0094】
実施例3のバッチは、モノエタノールアミンを用いると、BIT濃度範囲が5%を含んでいることを示す。モノエタノールアミン溶液中の5%BITの溶解温度は60℃より高かったので、より高濃度のBITは60℃を充分に超える溶解温度を必要とするであろうことが企図される。
【0095】
実施例4:ジアミノエタン溶液中のBITの溶解度
プロトコル1が行われた。塩基溶液はジアミノエタン(純粋)であった。
【0096】
【表4】

注(1):組成物の重量を基準にしたBIT重量%
【0097】
実施例4のバッチは、ジアミノエタンを用いると、BIT濃度範囲が5%を含んでいることを示す。ジアミノエタン溶液中の5%BITの溶解温度は60℃に近かったので、より高濃度のBITは60℃を充分に超える溶解温度を必要とするであろうことが企図される。
【0098】
実施例5:アンモニア溶液中のBITの溶解度
プロトコル1が行われた。塩基溶液はアンモニア(塩基溶液の重量を基準にして水中25重量%アンモニア)であった。
【0099】
【表5】

注(1):組成物の重量を基準にしたBIT重量%
【0100】
実施例4のバッチは、アンモニアを用いると、BIT濃度範囲が5%を含んでいることを示す。アンモニア溶液中の5%BITの溶解温度は60℃を超えていたので、より高濃度のBITは60℃を充分に超える溶解温度を必要とするであろうことが企図される。
【0101】
実施例6:LiOH溶液中のBITの溶解度
プロトコル1が行われた。塩基溶液はLiOH(純粋固体)であった。
【0102】
【表6】

注(1):組成物の重量を基準にしたBIT重量%
【0103】
実施例6のバッチが示すように、LiOHを用いると、BIT濃度範囲は水性混合物(I)の重量を基準にして5重量%〜30重量%のBITである。より低い濃度のBIT(例えば、1%〜5%)が使用されうることもさらに企図される。LiOH純粋固体の代わりにLiOH溶液が使用された場合に、40%BITが使用されることができたと企図される。
【0104】
実施例7:5%BIT、NaOH、HCl、酸の前のキサンタン
プロトコル2が続行された。BITの量はバッチの重量を基準にして5重量%であった。塩基溶液はNaOH(塩基溶液の重量を基準にして50重量%のNaOH)であった。
【0105】
【表7】

注(2):バッチの重量を基準にした重量%
注(3):酸添加速度、BITのkgあたりの、分あたりの酸のモル数。
注(4):遠心分離後、遠心管内の全BITを基準にした重量%
注(5):粒子サイズ、重量平均直径、マイクロメートル
注(6):粒子サイズ(マイクロメートル)、BITの固体粒子の全ての99%がそれより小さい
注(7):バッチの重量を基準にして0.5重量%イムベンチン(Imbentin)C/91/025(ドクターコーブ(Dr.Kolb)カンパニーからの分散剤)も含んでいた
注(8):185rpmで(他のものは全て600rpmで)かき回す
注(13):バッチ48eおよび「HCl2」の定義について実施例17を参照。
【0106】
実施例7において製造された全ての分散物は許容可能である。バッチ番号43fおよび43gは、より遅い攪拌が幾分かより大きな粒子を生じさせたことを示す。バッチ番号43kはイムベンチンC/91/025分散剤の添加がより大きな粒子をもたらしたことを示した(他の分散剤はこのプロセスに異なる効果を有しうることが企図される)。これらバッチにおいては、増粘剤は酸の前に添加され、これらバッチにおいては、酸の添加の速度は大きな効果を有していない。
【0107】
実施例8:5%BIT、NaOH、HCl、キサンタンの前の酸
キサンタンの前に酸が添加されたことを除いて、プロトコル2が使用された。
【0108】
【表8】

注(2)〜(6):実施例7におけるのと同じ
【0109】
2asu未満の酸添加速度のバッチは望ましくない沈殿物を伴い、かつ望まれるよりも高いD99を有する分散物を生じさせた。他のバッチは、望まれる通り、沈殿物を有さず、かつ幾分かより小さなサイズを有していた。すなわち、増粘剤の前に酸が添加された場合には、酸を比較的素早く添加することが好ましかった。酸添加速度が6.4asuであったサンプル、酸も水性混合物(I)への添加の前に希釈された;希薄酸と素早い添加の組み合わせは少ない沈殿物および小さな粒子サイズをもたらすことが企図される。
【0110】
実施例9:20%BIT、NaOH、HCl、酸の前のキサンタン
バッチのサイズが1kgであったことを除いて、プロトコル2が続行された。BITの量は、バッチの重量を基準にして20重量%であった。塩基性溶液はNaOHであった(塩基性溶液の重量を基準にして50重量%のNaOH)。
【0111】
【表9】

注(2)〜(6):実施例7におけるのと同じ
【0112】
粒子は望まれるより大きかったが、実施例9において製造されたバッチは許容可能であった。本発明の方法は20%のBIT濃度において適切に働く。
【0113】
実施例10:20%BIT、NaOH、HCl、キサンタンの前の酸
バッチサイズが1kgであったこと、および増粘剤が添加される前に酸が添加されて水性分散物を形成したことを除いて、プロトコル2が続行された。BITの量はバッチの重量を基準にして20重量%であった。塩基性溶液はNaOHであった(塩基性溶液の重量を基準にして50重量%のNaOH)。
【0114】
【表10】

注(2)〜(6):実施例7におけるのと同じ
【0115】
粒子は望まれるより大きかったが、バッチ46bおよび46cがまさに許容可能な分散物であった。バッチ46a(これは非常にゆっくりとした酸添加の速度を使用した)は大きすぎるD99および多すぎる沈殿物を有し、許容可能ではなかった。比較的高い粘度はバッチ46bおよび46cにおいて安定性(沈殿物の欠失)に寄与したことが企図される。
【0116】
実施例11:5%BIT、NaOH、HCl、可変量のキサンタン
プロトコル2が続行された。BITの量はバッチの重量を基準にして5重量%であった。塩基性溶液はNaOHであった(塩基性溶液の重量を基準にして50重量%のNaOH)。
【0117】
【表11】

注(2)〜(6):実施例7におけるのと同じ
【0118】
実施例11における全てのバッチは許容可能な粒子サイズを有していた。より多い量のキサンタンガムを有するサンプルは沈殿物を有さず、これはより望ましい。
【0119】
実施例12:5%BIT、NaOH、様々な酸
プロトコル2が続行された。BITの量はバッチの重量を基準にして5重量%であった。塩基性溶液はNaOHであった(塩基性溶液の重量を基準にして50重量%のNaOH)。酸は酢酸またはギ酸であった。
【0120】
【表12】

注(2)〜(6):実施例7におけるのと同じ
注(9):遠心分離方法:1650rcfで3回×5分
【0121】
実施例12における両方のサンプルは許容可能であったが、このことは本発明の方法が有機酸を使用して実施されうることを示す。
【0122】
実施例13:10%BIT、NaOH、HCl、酸の前のキサンタン
プロトコル2が続行された。BITの量は、バッチの重量を基準にして10重量%であった。塩基性溶液はNaOHであった(塩基性溶液の重量を基準にして50重量%のNaOH)。
【0123】
【表13】

注(2)〜(6):実施例7におけるのと同じ
【0124】
実施例13における両方のサンプルは許容可能であったが、このことは本発明の方法が10%BITを使用して実施されうることを示す。
【0125】
実施例14:可変%BIT、KOH、HCl、酸の前のキサンタン
プロトコル2が続行された。BITの量は、バッチの重量を基準にして5重量%または10重量%であった。塩基性溶液はKOHであった(塩基性溶液の重量を基準にして50重量%のKOH)。
【0126】
【表14】

注(2)〜(6):実施例7におけるのと同じ
【0127】
実施例14における両方のサンプルは許容可能であったが、このことは本発明の方法がKOHを使用して実施されうることを示す。最も遅い酸添加速度の2つのサンプルは希薄酸も使用し、得られた分散物は許容可能であった。
【0128】
実施例15:5%BIT、LiOH、HCl、沈殿の前のキサンタン
プロトコル2が続行された。BITの量は、バッチの重量を基準にして5重量%であった。塩基性溶液はLiOHであった(純粋な固体として添加された)。
【0129】
【表15】

注(2)〜(6):実施例7におけるのと同じ
【0130】
実施例15における両方のサンプルは許容可能であったが、このことは本発明の方法がLiOHを使用して実施されうることを示す。
【0131】
実施例16:5%BIT、NaOH、HCl、酸の前の非キサンタン増粘剤
プロトコル2が続行された。BITの量は、バッチの重量を基準にして5重量%であった。塩基性溶液はNaOHであった(塩基性溶液の重量を基準にして50重量%のNaOH)。キサンタンは、ヒドロキシエチルセルロース、高分子量セルロース系ポリマーであるセロサイズ(Cellosize(商標))QP52000H増粘剤(本明細書においては、「HECl」)で置換えられた。
【0132】
【表16】

注(2)〜(6):実施例7におけるのと同じ
注(10):水性分散物の重量を基準にして、4重量%のトリエチレングリコールも含んでいた
注(11):バッチの重量を基準にして0.25重量%のイムベンチンC/91/025も含む。
【0133】
イムベンチンC/91/025を使用したサンプルにおいては沈殿物および粒子サイズは望ましいほどではなかったが、実施例16におけるバッチは全て許容可能であった。
【0134】
実施例17:5%BIT、NaOH、HCl、キサンタン、別のプロトコル
バッチサイズは1kgであった。水は自治体の水道水であった。NaOH50%溶液は、NaOH溶液の重量を基準にして50重量%のNaOHであった。BITペーストおよび濃HClはプロトコル1および2において上で定義したのと同じであった。
【0135】
以下の混合物が製造された:
【表17】

BIT20およびBIT10の両方とも50℃で製造され、使用するまでその温度で保持された。
【0136】
バッチ58aは以下のように製造された。プレミックス58aは3.4pbwのX/TEGと71.6pbwのHCl2であった。次いで、プロトコル2におけるように600rpmで容器がかき回されつつ、75pbwのプレミックス58aを収容した容器に25pbwのBIT20が注ぎ込まれた。この注ぎ込みは60秒間にわたって、一定の速度で手作業で行われた。
【0137】
バッチ58bは以下のように製造された:プレミックス58bは3.40pbwのX/TEGと46.65pbwのHCl3であった。次いで、プロトコル2におけるように600rpmで容器がかき回されつつ、50.05pbwのプレミックス58bを収容した容器に49.95pbwのBIT10が注ぎ込まれた。この注ぎ込みは60秒間にわたって、一定の速度で手作業で行われた。
【0138】
バッチ58dは以下のように製造された:プロトコル2におけるように600rpmで容器がかき回されつつ、71.6pbwのHCl2を収容した容器に25.0pbwのBIT20が注ぎ込まれた。この注ぎ込みは60秒間にわたって、一定の速度で手作業で行われた。次いで、かき回しを続けつつ、3.4pbwのX/TEGがこの容器に添加された。
【0139】
バッチ58eは以下のように製造された:プレミックス58eは3.4pbwのX/TEGと71.6pbwのHCl2であった。次いで、プロトコル2におけるように600rpmで容器がかき回されつつ、25pbwのBIT20を収容した容器にプレミックス58eが注ぎ込まれた。この注ぎ込みは60秒間にわたって、一定の速度で手作業で行われた。
【0140】
それぞれのバッチの得られた特性は以下の通りであった。
【表18】

注(4)〜(6):実施例7におけるのと同じ
注(12):沈殿物は、沈殿物を示した他のバッチにおいて観察される沈殿物ほどしっかりと固まらなかった。安定性は、10%の結果と通常に関連するよりも良好であると見なされる。
【0141】
粒子は望まれるよりも大きかったが、実施例17におけるバッチは全て許容可能であった。溶解したBITの塩の濃厚溶液の、希薄酸溶液への注ぎ込み(バッチ58a、58bおよび58dにおけるような)は、BITの固体粒子が許容可能に小さく;粒子サイズが増粘剤が沈殿工程中に存在しなかった場合(バッチ58dにおけるような)よりももっと小さい許容可能な分散物を可能にする。比較的低水準の沈殿物(特に、バッチ58aおよび58dにおける)が望ましい。
【0142】
実施例18:高I実施例
水性混合物(I)の様々な例が形成された。使用された材料は以下の通りであった:640gの市水;48gのBITペースト(濃度84.8%);2.24gのNaOH(濃度50%);7.20gのキサンタンガム。これら水性混合物が本発明の水性分散物を製造するために使用されるものであった場合には、酸はこの水性混合物に添加された。実施例18−Aは水性混合物(I)とその後のキサンタンガムの添加の低I実施形態であると見なされることができたか、またはキサンタンガムがBITおよび塩基の後で添加された水性混合物(I)の高I実施形態であると見なされることができた。実施例18−B、18−C、18−CRおよび18−Dは高I実施形態である。
【0143】
【表19】

注13:45000rcbで8分間の遠心分離の後の沈殿物の体積
注14:溶解後の攪拌シャフト上に観察された量
注15:実施例18−CRはより高い攪拌速度を除いて実施例18−Cと同じであるので、実施例18−CRは遠心分離の後で0mlの沈殿物を示すであろうことが予想される。
【0144】
5つの実施形態は全て本発明の水性分散物を製造するのに使用可能である。実施例18−B、18−C、18−CRおよび18−Dはより素早く溶解し、かつ均質な外観を有していた。実施例18−Cおよび実施例18−CRは許容可能な溶解時間を有しており、均質であり、かつ最高水準の沈殿物および残留物を有していた。実施例18−CRも望ましく短い溶解時間を有していた。
【0145】
実施例19:pH調節
実施例18−A、18−Bおよび18−DにさらなるNaOH溶液が添加された。最終pHは、沈殿物と共に(実施例18において評価されたように)以下に示される。
【0146】
【表20】

【0147】
実施例18−A、18−Bおよび18−DのpHを上げることが沈殿物を減少させたことが企図される。水性混合物(I)の最初の形成中に、生じる水性混合物(I)のpHが11.0以上であるのに充分な塩基が混合物に添加された場合には、実施例18−A、18−Bおよび18−Dに類似したこれら配合物は低減されたまたは除かれた沈殿物および/または残留物を示すであろうことがさらに企図される。さらに、水性混合物(I)の最初の形成中に、生じる水性混合物(I)のpHが11.0以上であるのに充分な塩基が混合物に添加された場合には、実施例18−A、18−Bおよび18−Dに類似したこれら配合物は短くなった溶解時間を示すであろうことも企図される。
【0148】
実施例20:水性分散物の配合
実施例18−CRは水性分散物を形成するために使用された。HCl溶液の重量を基準にして30〜34重量%の濃度でHClが、8秒間にわたって、BITのキログラムあたり、分あたり57.4mmolの酸の速度で添加された。最終pHは2.10であった。粘度は73KUであった。粒子サイズ平均(実施例7におけるように評価された)は11.34マイクロメートルであった。この水性分散物は許容可能であると見なされた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1種以上の増粘剤と、
(B)1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンの固体粒子と
を含む水性分散物を製造する方法であって、
(a)水と、溶解した1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンの塩と、場合によって1種以上の増粘剤とを含み、pHが8.5以上である水性混合物(I)を形成する工程、
(b)次いで、酸と、前記水性混合物(I)と、場合によって1種以上の増粘剤とを含む成分を任意の順に一緒に混合することにより、pHが1.5〜7.5である前記水性分散物を形成する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記工程(a)が、
(a1)水と、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンと、1種以上の増粘剤との混合物(III)を形成する工程であって、前記混合物(III)のpHが7.5以下である工程、および
(a2)次いで、前記混合物(III)のpHを8.5以上に上げる工程
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(b)が、
(b1)水性混合物(I)が1種以上の増粘剤をまだ含んでいない場合には、前記増粘剤と前記水性混合物(I)とを含む混合物を製造する工程、および
(b2)前記酸と前記水性混合物(I)とを含む混合物を製造する工程であって、前記酸の量が、前記酸と前記水性混合物(I)とを含む前記混合物を1.5〜7.5のpHにするのに充分である工程
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(b1)が前記工程(b2)の前に行われる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンの量が前記水性分散物の重量を基準にして1重量%〜40重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記酸と前記増粘剤とを含む混合物を製造する工程、および前記酸と前記増粘剤とを含む前記混合物を水性混合物(I)と混合する後続の工程を前記工程(b)が含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1の方法によって製造される水性分散物。
【請求項8】
前記酸および前記塩基の1種以上の中和生成物に対応する1種以上の塩を前記分散物が含む、請求項7に記載の水性分散物。
【請求項9】
前記塩の全ての当量:BITの当量の比率が0.3:1〜5:1である、請求項8に記載の水性分散物。
【請求項10】
BITではなくかつ水中で安定範囲のpHを有する1種以上の殺生物剤を前記分散物が含み、前記安定範囲の一部分または全部が1.5〜7.5のpH範囲内に入る、請求項7に記載の水性分散物。
【請求項11】
前記分散物が水以外の1種以上の溶媒を含む、請求項7に記載の水性分散物。

【公開番号】特開2013−1708(P2013−1708A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−118645(P2012−118645)
【出願日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】