説明

水性化粧料

【課題】べたつきがなく、使用感が良好で、保湿効果に優れた水性化粧料を提供する。
【解決手段】次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)総炭素数12〜60の第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン又は第4級アミン、
(B)カルボキシル基を有するアニオンポリマー、
(C)水
を含有する水性化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
肌の健康にとって、肌のバリア機能は非常に重要であり、アトピーや荒れ肌では、肌の経皮水分蒸散量が増加することが知られている。バリア機能を高める剤として、古くからワセリンやワックス等の固体脂に高い効果があることが知られている。しかしながら、ワセリンやワックスは、閉塞効果が高いものの、べたつきがあるため、これらを用いた場合の使用感を改善するための検討がなされている。例えば、全量の90重量%以上がワセリンより成る油性成分を含有し、内油相粒子径が500nm以下である液状乳化型皮膚用組成物(特許文献1)や、白色ワセリン、化粧料粉末、ホスホリルコリン類似基含有重合体、抗炎症剤又は殺菌剤を含有する皮膚外用剤組成物(特許文献2)等が提案されている。
【0003】
しかしながら、これらの組成物では、べたつきを十分に抑えることはできず、良好な使用感と保湿効果を両立させることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−72581号公報
【特許文献2】特開2003−26608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、べたつきがなく、使用感が良好で、しかも閉塞効果に優れた化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定のアミンと、カルボキシル基を有するアニオンポリマーを組み合わせ、得られたポリマー塩が、水と混合することにより液晶を形成し、ゲル又は水中に分散されることにより、塗布時のべたつきがなく、使用感が良好で、しかも閉塞効果が高く、保湿性に優れた水性化粧料が得られることを見出した。
【0007】
本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)総炭素数12〜60の第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン又は第4級アミン、
(B)カルボキシル基を有するアニオンポリマー、
(C)水
を含有する水性化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水性化粧料は、べたつきがなく、使用感が良好で、しかも閉塞効果が高く、保湿効果に優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で用いる成分(A)のアミンは、総炭素数12〜60、好ましくは総炭素数14〜36のもので、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を有しているものであり、アミド基、水酸基、エーテル結合等を有していても良い。なお、脂肪酸とスフィンゴシンがアミド結合したいわゆるセラミドは、含まないことが好ましい。ここでいうセラミドとは、セラミドNDS、セラミドNS、セラミドNP、セラミドNH、セラミドAS、セラミドAH、セラミドAP、セラミドEOS、セラミドEOH、セラミドEOPなどの天然型のセラミドを意味する。
成分(A)のアミンは、炭素数14〜36のアルキル基又はアルケニル基を有しているものが好ましく、例えば、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、イソパルミチル基、ステアリル基、イソステアリル基等のアルキル基;オレイル基、リノール基、パルミトオレイル基等のアルケニル基などが挙げられる。
【0010】
より具体的には、第1級アミンとしては、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシンなどのスフィンゴシン類等が挙げられ;第2級アミンとしては、ジステアリルアミン、ヒドロキシエチルイソステアリロキシイソプロパノールアミン、ヒドロキシエチルステアリロキシイソプロパノールアミン等が挙げられ;第3級アミンとしては、ジメチルステアリルアミン等が挙げられ;第4級アミンとしては、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
なかでも、第1級アミン、第2級アミンが好ましく、特に、分岐アルキル鎖を有しているものが好ましい。
【0011】
成分(A)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.01〜40質量%、特に0.1〜20質量%含有するのが、後述する成分(B)カルボキシル基を有するアニオンポリマーを十分に中和できる点から好ましい。
【0012】
本発明で用いる成分(B)は、カルボキシル基を有するアニオンポリマーである。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基を有するモノマーを重合して得られたポリマーが好ましい。また、成分(B)は、アクリル酸、メタアクリル酸等のモノマーと、これら以外で、疎水性で不飽和結合等の重合基を有するモノマーとの共重合で得られたポリマーであっても良い。更には、架橋剤を含有したものでも良い。
より具体的には、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30)クロスポリマー、カルボキシビニルポリマー(カーボマー)、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル(C10-30)/(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンアルキル(C10-30)エーテル等が挙げられる。
【0013】
これらのポリマーとしては、アキュリン88、アキュリン22、アキュリン28、アキュリン38(以上、ローム・アンド・ハース社製)、カーボポール980、カーボポール981、カーボポールUltrez 10、カーボポールUltrez 20、カーボポールUltrez 21、カーボポールETD2020、カーボポールAQUA-SF1、PEMULEN TR-1、PEMULEN TR-2(以上、ルーブリゾール・アドバンスト・マテリアルズ社製)等の市販品を使用することができる。
【0014】
更に、成分(B)としては、カルボキシル基を有する高分子多糖類を用いることもできる。
かかるカルボキシル基を有する高分子多糖類としては、例えば、ペクチン、ヒアルロン酸、ジェランガム等が挙げられる。
なかでも、ペクチンは、アルキルアミンとの中和が容易であるという点で好ましい。
【0015】
成分(B)のアニオンポリマーは、重量平均分子量が10万以上、特に100万以上であるのが好ましく、1000万以下であることが、取り扱いやすさと液晶による十分な閉塞効果が得られるので好ましい。
【0016】
成分(B)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.01〜20質量%、特に0.1〜10質量%含有するのが、成分(A)、成分(B)及び成分(C)で作る液晶を化粧料中に十分含むことができ、高い保湿性を得る観点から好ましい。
【0017】
本発明において、成分(A)と成分(B)の質量割合は、(A)/(B)≧1、特に1〜90であるのが、液晶形成の点で好ましい。
【0018】
本発明で用いる成分(C)の水は、全組成中に10質量%以上、特に50〜99.8質量%含有するのが好ましい。
成分(A)で中和された成分(B)は、成分(C)の一部又は全部と混合されることで液晶を作り、ゲル状となる。本発明の化粧料は、このゲル状、若しくはゲルの水分散物を示す。この液晶を形成した組成物は、なめらかに伸び、閉塞性の高い膜を皮膚上に形成できる。使用時には、べたつきが抑制され、さっぱりとした使用感となり、しかもぱさつきを感じにくくすることができる。
【0019】
本発明の水性化粧料は、更に(D)25℃で液状の油剤を含有することができる。
かかる油剤としては、通常の化粧料に用いられるものであれば特に制限されず、例えば、流動パラフィン、流動イソパラフィン、水添ポリイソブテン、スクワラン、n−オクタン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素油;リンゴ酸ジイソステアリル、乳酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバチン酸ジイソプロピル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリカプロイン、オリーブ油、メドフォーム油、2エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル等のエステル油;セチルイソブチルエーテル、ジオクチルエーテル、エチレングリコールモノラウリルエーテル、エチレングリコールジオクチルエーテル、グリセロールモノオレイルエーテル等のエーテル油が挙げられる。
【0020】
成分(D)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.01〜50質量%、特に0.1〜30質量%含有するのが、得られた液晶の保湿効果を高めるとともに、使用感を整える点で好ましい。
【0021】
本発明の水性化粧料は、さらに、前記成分以外に、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、界面活性剤、アルコール、多価アルコール、高分子化合物、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粉体、染料、香料、色素、防汚剤、保湿剤等を含有することができ、皮膚、毛髪に使用される化粧料とすることができる。
【0022】
本発明の水性化粧料は、例えば、成分(A)、(B)及び(C)を混合し、成分(A)の融点以上に加熱して均一にすることにより、製造することができる。また、成分(A)、(B)及び成分(C)の一部を混合し、成分(A)の融点以上に加熱し、成分(B)の中和を促進し、成分(C)と十分に液晶を作った後、撹拌しながら残余の水を加え、液晶を水中に均一に分散させることにより、製造することができる。
【0023】
水を分けて加える場合、初めに加える一部の水を(C’)とすると、成分(A)、(B)及び(C’)の質量割合は、(C’)/((A)+(B))=0.01以上、特に0.01〜0.5であるのが、液晶形成の点で好ましい。
【0024】
いずれの場合にも、成分(A)と成分(B)の混合物に、水(少なくとも一部)を加えることにより、ポリマー液晶が形成される。ポリマー液晶が形成していることは、偏光顕微鏡によって異方性を示すことによって確認が可能であり、さらに詳細には、広角X線散乱解析でアモルファス上の構造を検出することにより、確認することができる。
本発明においては、ポリマー液晶が、乾燥過程で皮膚上に薄い液晶の皮膜を形成して、皮膚の水分蒸散を抑制し、特に優れた保湿効果を得ることができる。
【0025】
本発明の水性化粧料は、化粧水、美容液、乳液、毛髪化粧料等として適用することができる。
【実施例】
【0026】
実施例1〜11及び比較例1〜2
表1に示す組成の水性化粧料を製造し、ポリマー液晶形成、閉塞効果、使用感及び保湿効果を評価した。結果を表1及び表2に併せて示す。
【0027】
(製造方法)
成分(A)と成分(B)を80℃で均一に混合し、80℃に加熱した水1を加え、更に混合する。更に、水2を加え、水2に分散させることにより、水性化粧料を得た。
【0028】
(評価方法)
(1)ポリマー液晶形成:
各化粧料について、偏光顕微鏡によって異方性を示すこと、さらに広角X線散乱解析でアモルファス上の構造を検出することにより観察した。
ポリマー液晶が形成しているものを「○」、形成していないものを「×」で示した。
【0029】
(2)閉塞効果:
50mLのバイアル瓶(ピアースバイアルCV-400、アズワン社製)に、20.00gの水を入れる。直径約2cmの濾紙(ADVANTEC filter paper 5C、東洋濾紙社製)に、精製水、又は各化粧料0.05gを均一に塗布し、30分放置後、塗布面を上部に向けてバイアル瓶の口に載せた。蓋についているゴムをはずし、遮蔽物を除いたのち蓋をして濾紙を固定した。その後、20℃、湿度40%の部屋で24時間保存し、保存前後の重さを測定することにより、水分蒸散量を求めた。水のみを塗布した場合に比べ、化粧料がどの程度水分の蒸発を抑制するか、次の式1〜3により、閉塞効果を計算した。
水塗布時の重量変化=初期重量−24時間後重量 (式1)
サンプル塗布時の重量変化=初期重量−24時間後重量 (式2)
閉塞効果(%)=(1−(式2)/(式1))×100 (式3)
【0030】
(3)使用感(べたつきのなさ):
専門パネラー10名により、各化粧料を使用したときのべたつきのなさを、下記基準により官能評価し、平均点を求めた。
5;かなりべたつかない。
4;べたつかない。
3;どちらともいえない。
2;ややべたつく。
1;べたつく。
【0031】
(4)保湿効果:
専門パネラー10名により、各化粧料を使用したときの保湿効果を、下記基準により官能評価し、平均点を求めた。
5;かなり保湿効果がある。
4;保湿効果がある。
3;どちらともいえない。
2;あまり保湿効果がない。
1;保湿効果がない。
【0032】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)総炭素数12〜60の第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン又は第4級アミン、
(B)カルボキシル基を有するアニオンポリマー、
(C)水
を含有する水性化粧料。
【請求項2】
成分(A)と成分(B)の質量割合が、(A)/(B)=1〜90である請求項1記載の油性組成物。
【請求項3】
成分(B)が、重量平均分子量10万以上のアクリル酸又はメタクリル酸系ポリマーである請求項1又は2記載の油性組成物。
【請求項4】
更に、(D)25℃で液状の油剤を含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の水性化粧料。
【請求項5】
成分(A)、(B)及び(C)を混合し、成分(A)の融点以上に加熱して均一にすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の水性化粧料の製造方法。

【公開番号】特開2011−136951(P2011−136951A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298191(P2009−298191)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】