説明

水性化粧料

【課題】塗布時の感触が良好で、かつ保湿効果の持続効果に優れた水性化粧料を提供する。
【解決手段】(A)リゾリン脂質、(B)ムコ多糖類又はその塩、及び(C)少なくとも3価アルコールと4価以上のアルコールを含む多価アルコールを含有し、(C)成分の含有量が水性化粧料中に20〜80質量%であり、(C)成分中の4価以上のアルコールの含有量が3価アルコールの含有量よりも少ないことを特徴とする水性化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保湿性の持続効果に優れ、かつ、べたつき、きしみを抑えた感触の良好な水性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
基礎化粧料の本来の役割は、皮膚の乾燥、肌荒れを防止し、皮膚に弾力性、柔軟性を賦与することにある。このような保湿効果は、水分蒸散を抑えられる油分を含んだ化粧料で効果が高いが、単独使用では油分のべたつきに抵抗感を感じる傾向がある。従って、油分を含んだ化粧料の主な使用方法としては、水性化粧料の次に塗布するといった複数の工程をとるので、工程の煩雑さや、そのもののべたつき感からあまり好まれない傾向がある。
【0003】
一方、実質的に油分を含まない水性化粧料は、油分独特のべたつきがなく、さっぱりとした使用感が好まれている。しかし、その保湿効果は、油分を配合していないため、水分蒸散が著しく、塗布直後では保湿感を感じるが、時間の経過と共に、著しくその保湿効果が薄れてしまうという問題がある。
【0004】
この問題を解決するために、種々の検討が行われ、種々の化粧料が報告されている。例えば、皮膚の保湿に関与する油分以外の物質についての研究が進んでおり、グリセリンやプロピレングリコールなどの多価アルコールや、ヒアルロン酸などの酸性ムコ多糖類といった数多くの保湿剤が使用されている。多価アルコールや酸性ムコ多糖類は、配合量を高めると保湿効果が高まることは周知であるが、保湿効果の向上と同時にべたつきも相乗的に増強されてしまい、化粧料中への高配合は困難であった。
【0005】
その中で、シリコーン樹脂粉末、有機・無機粉末と水溶性高分子を併用することで、多価アルコールのべたつきを抑えた化粧料(特許文献1参照)が報告されているが、多価アルコールの配合量は10%以下であり、その配合量を高めることができず、保湿効果の持続性に劣るものであった。水溶性多価アルコール、リン脂質とポリオキシアルキレングリセリルエーテルを併用することで、多価アルコールのべたつきを抑え、かつ保湿効果を増強した化粧料(特許文献2参照)も報告されているが、油剤を実質的に配合しない水性化粧料とした場合には、安定性が悪く、分離や白濁が生じていた。また、ムコ多糖類とリン脂質と塩類とを併用することで、保湿効果を高めた水性化粧料(特許文献3)が報告されているが、こちらも安定性に問題があり、多価アルコールを高配合した場合のべたつき感の抑制効果は十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3648722号公報
【特許文献2】特許第3453643号公報
【特許文献3】特公平7−116010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かように、実質的に油を含まない水性化粧料において、使用感、安定性に優れ、十分な保湿持続効果を有するものは得られておらず、種々検討されているのが現状である。
【0008】
従って、本発明の課題は、使用感に優れ、かつ単独の使用で皮膚の乾燥、肌荒れを防止し、皮膚に弾力性、柔軟性を賦与する、保湿効果の持続性に優れた水性化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、多価アルコールやムコ多糖類を高配合し、保湿効果の持続性に優れ、かつべたつきやきしみが抑制された使用感の良い水性化粧料の検討を行った結果、多量の多価アルコール、ムコ多糖に加え、リゾリン脂質を併用して配合し、かつ2種の多価アルコールの含有比率を特定の範囲とすることで、使用感がよく、高い保湿効果を発揮する水性化粧料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、(A)リゾリン脂質、(B)ムコ多糖類又はその塩、及び(C)少なくとも3価アルコールと4価以上のアルコールを含む多価アルコールを含有し、(C)成分の含有量が水性化粧料中に20〜80質量%であり、(C)成分中の4価以上のアルコールの含有量が3価アルコールの含有量よりも少ないことを特徴とする水性化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水性化粧料は、単品使いでも保湿効果の持続性に優れ、多価アルコールを高含有しているにもかかわらず、べたつき、きしみが抑制された感触の良好な化粧料である。また、安定性も高く、整肌及び美容のために用いる医薬品、医薬部外品としての応用が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の水性化粧料は、実質的に油剤を含有しない化粧料であって、好ましくは水性化粧料中のリゾリン脂質を含む油剤の含有量が5質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。当該範囲であれば、安定性に優れ、油剤によるべたつきがなく、さっぱりとした使用感となる。
【0013】
ここで、油剤は、リゾリン脂質を含む、油脂(トリグリセリド)、エステル油、炭化水素、炭素数8以上の高級アルコール、シリコーン油、フッ素油等の油分へ溶解しやすい成分の総体である。
【0014】
本発明で用いる(A)リゾリン脂質とは、グリセロールの2位にエステル結合している脂肪酸残基の1分子がとれた脂質であり、例えば、リン脂質にリン脂質分解酵素であるホスホリパーゼA2 を作用させてリン脂質をリゾ化して得られる。尚、ホスホリパーゼA2 はリン脂質分子のグリセロール部と脂肪酸基との2位の結合部分を分解し、それによってこの脂肪酸基をはずしOH基にする酵素である。
【0015】
リゾリン脂質としては、例えば、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジン酸、卵黄や植物由来の卵黄リゾレシチン、大豆リゾレシチン等を挙げることができる。これらは、水素添加したものを用いることもできる。
【0016】
リゾリン脂質は、2本鎖の脂肪酸を有するリン脂質とは異なり、リン脂質とは異なる化学的性質を有する。また、生体の細胞膜成分であるため、皮膚へのなじみに優れ、使用感の向上、保湿効果の向上に寄与していると考えられている。
【0017】
本発明では、リゾリン脂質のうち、リゾホスファチジルコリン含有量が30質量%以上であるリゾリン脂質を用いると、経時安定性の観点から、より好ましい。
【0018】
これらのリゾリン脂質は市販されており、卵黄リゾホスファチジルコリンとして、卵黄リゾレシチンLPC−1(キューピー社製)が挙げられる。市場での入手性の良さから、卵黄リゾホスファチジルコリンを好適に利用することができる。
【0019】
リゾリン脂質の本発明の水性化粧料中の含有量は、特に限定されるものではないが、0.001〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.005〜2質量%、さらに好ましくは0.01〜1質量%である。当該範囲内であれば、べたつき感のなさや伸び広がりのよさといった使用感、後肌のエモリエント感に優れた水性化粧料を得ることができる。また、経時安定性も良好なものとなる。
【0020】
本発明で用いる(B)酸性ムコ多糖類は、ヘキソサミンを構成糖とする多糖のうち,構成糖が酸性の基であるものである。具体的には、ヒアルロン酸、コンドロイチン−4−硫酸、コンドロイチン−6−硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン、カルボキシメチルキチン等を挙げることができる。
【0021】
本発明で用いる酸性ムコ多糖類の塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、ジイソプロパノールアミン塩等のアルカノールアミン塩、リジン塩、アルギニン塩、ヒスチジン塩等の塩基性アミノ酸塩が好ましいものとして挙げられる。これらの塩は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。これらのうち、好ましくはヒアルロン酸又はその塩である。
【0022】
本発明で用いる酸性ムコ多糖類又はその塩の重量平均分子量は、1万〜300万のものを好適に利用することができるが、好ましくは3万〜150万、より好ましくは4万〜15万である。
【0023】
これらの酸性ムコ多糖類又はその塩は、市販されており、ヒアルロン酸ナトリウムとしては、例えばヒアルロン酸FCHシリーズ(紀文フードケミファ社製)が挙げられる。コンドロイチン硫酸ナトリウムとしては、コンドロイチン硫酸ナトリウム(マルハニチロ食品社製)等を挙げることができる。
【0024】
酸性ムコ多糖類又はその塩の水性化粧料中の含有量は、特に限定されるものではないが、0.001〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜3質量%、さらに好ましくは0.05〜2質量%である。当該範囲内であれば、べたつき感やきしみ感を抑制し、高い保湿持続効果が発現するため、好ましい。
【0025】
(A)リゾリン脂質と(B)酸性ムコ多糖類又はその塩との含有比は、酸性ムコ多糖類又はその塩の含有量に対して、リゾリン脂質の含有量が、0.005〜20質量倍であることが好ましく、より好ましくは0.01〜10質量倍、さらに好ましくは0.1〜10質量倍である。当該範囲内であれば、保湿効果の持続性に優れ、べたつき感やきしみ感を抑制する効果が高く、好ましい。
【0026】
本発明で用いる(C)多価アルコールは、分子内に2個以上のアルコール性水酸基をもつ化合物であり、(C)成分中には少なくとも3価アルコールと4価以上のアルコールを含む。3価アルコールとしてはグリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられるが、グリセリンが好ましい。4価以上のアルコールとしては、ジグリセリン、トリグリセリン等のポリグリセリン;グルコース、マルトース、マルチトース、ショ糖、キシリトール、ソルビトール、マルビトール、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリオキシエチレンエチルグルコシド、ポリオキシエチレンプロピレングルコシド等の糖類又は糖アルコールが挙げられる。このうち、ポリグリセリン、糖アルコールが好ましく、ポリグリセリンがより好ましく、ジグリセリンがさらに好ましい。3価アルコールと4価以上のアルコールの組み合わせとしては、グリセリンとポリグリセリンの組み合わせが好ましく、さらにグリセリンとジグリセリンの組み合わせが、べたつき感、きしみ感の抑制効果の点で好ましい。
【0027】
(C)成分の多価アルコールには,さらに2価アルコールが含まれる。2価アルコールとしては、例えば、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(重量分子量1500以下)、ポリプロピレングリコール(重量分子量1500以下)等が挙げられる。これらの2価アルコールのうち、保湿効果、きしみ感抑制の点で、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコールが好ましい。
【0028】
さらに、(C)成分としては、2価アルコール、3価アルコール及び4価以上のアルコールを組み合わせて用いるのが、保湿効果の持続性、べたつき感、きしみ感の抑制効果の点で好ましい。さらに好ましい多価アルコールの組み合わせはグリセリン、ジグリセリン及び2価アルコールの組み合わせであり、特に好ましい組み合わせはグリセリン、ジグリセリン、1,3−ブチレングリコール及びジプロピレングリコールの組み合わせである。
【0029】
(C)多価アルコールの本発明水性化粧料中の含有量は、合計で20〜80質量%が好ましく、より好ましくは25〜70質量%、さらに好ましくは30〜45質量%である。当該範囲内であれば、保湿効果の持続性に優れ、好ましい。
【0030】
保湿効果の持続性を維持しつつ、べたつき感及びきしみ感を抑制する点から、(C)成分中の4価以上のアルコールの含有量が3価アルコールの含有量より少ないことが好ましい。さらに、4価以上のアルコールの含有量が3価アルコールの含有量に対して0.1〜0.5質量倍とするのがより好ましく、さらに好ましくは0.2〜0.4質量倍である。
【0031】
また、(C)成分中の4価以上のアルコール及び3価アルコールの合計量は30〜45質量%とするのが、べたつき感及びきしみ感の抑制効果の点で好ましい。さらに好ましくは、(C)成分中の4価以上のアルコール及び3価アルコールの合計量が30〜45質量%、2価アルコールが55〜70質量%である。
【0032】
本発明の水性化粧料には、上記の成分の他に、水;水溶性色素;パラベン、フェノキシエタノールなどの防腐剤;セチル硫酸ナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸塩などの陰イオン界面活性剤;多価アルコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、変性シリコーン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤;テトラアルキルアンモニウム塩などの陽イオン界面活性剤;ベタイン型、スルホベタイン型、スルホアミノ酸型などの両性界面活性剤;セラミド、セレブロシドなどの天然系界面活性剤;ジブチルヒドロキシトルエンなどの抗酸化剤;塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、等の無機塩類;クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸カリウム、琥珀酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、カルニチン塩、γ−アミノ酪酸、リポ酸等の有機酸塩類;塩酸エタノールアミン、硝酸アンモニウム、塩酸アルギニン等の塩類、エデト酸等のキレート剤;水酸化カリウム、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン等の中和剤;コラーゲン等の生体高分子;胎盤抽出物;ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルフォン酸塩等の紫外線吸収剤;パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、テトライソステアリン酸アスコルビルなどの油溶性ビタミンC誘導体;キサンタンガム、ベータグルカン、オーツ麦、白きくらげ等から抽出される多糖類、カラギーナンやアルギン酸、寒天などのような海藻より抽出されるもの、カルボキシビニルポリマー、ペクチン、アルキル変性カルボキシビニルポリマーなどの水溶性高分子等を配合することができる。
【0033】
本発明の水性化粧料には更に植物、海藻又は菌体の抽出物を用いることができ、例えばアーティチョーク、アイ、アルニカ、アロエ、アルテア、アシタバ、アセロラ、アンズ、アーモンド、アマチャ、アケビ、アニス、アボカド、インチンコウ、イラクサ、イチゴ、ウイキョウ、ウコン、ウチワサボテン、ウーロン茶、ウスベニアオイ、エイジツ、エチナシ、エンバク、エンメイソウ、エーデルワイス、オランダカラシ、オウバク、オウゴン、オウレン、オオバナサルスベリ、オトギリソウ、オレンジ、オクラ、オリーブ葉、カシス、カノコソウ、柿、火棘、カミツレ、カムカム、カロット、カワラヨモギ、カラスムギ、甘草、キュウカンバー、キョウニン、キウイ、キナ、キラヤ、キズタ、ギャバ茶、木苺、クララ、クマザサ、クワ、クルミ、グレープフルーツ、ゲンノショウコ、ゲンチアナ、ゲツトウ、コヒラタムブツ、ゴボウ、コンフリー、小麦胚芽、サクラ、サボンソウ、サルビア、サンザシ、サイシン、サイタイ、サンシシ、シモツケソウ、ジュウヤク、シチヘンゲ、ショウブ、ショウガ、シコン、シソ、シラカバ、シャクヤク、ジオウ、シーカーサー、シモン、スギナ、スターフルーツ、ゼニアオイ、センキュウ、セイヨウサンザシ、セイヨウキズタ、セイヨウナシ、セイヨウシロヤナギ、セージ、センブリ、ダイズ、ダイダイ、タイム、タチバナ、タチジャコウソウ、タマリンド、茶、チョウジ、チンピ、椿、ドクダミ、トウキ、トウニン、トウヒ、トマト、トウキセンカ、藤茶、トルメンチラ、トウモロコシ、ニーム、ニガハッカ、ニワトコ、ニンニク、ニンジン、ノバラ、パプアメース、ハイビスカス、パセリ、バナナ、バラ、ハトムギ、ハウチワマメ、ピーカンナッツ、ヒノキ、ヒソップ、ヒマラヤンラズベリー、ヒメフウロ、ビャクダン、ビルベリー、ビワ、プルーン、ブドウ、フサザキスイセン、フサフジウツギ、フトモモ、ペパーミント、ベニバナ、ヘチマ、ヘラオオバコ、ホワイトジェネピ、ホウノキ、菩提樹、ボタンボウフウ、ボタン、ホップ、ホホバ、マルメロ、マイカイカ、マロニエ、マツ、ミカン、ムクロジ、メリッサ、メマツヨイグサ、モモ、モミジ、ヤグルマソウ、ユキノシタ、ユーカリ、ユリ、柚、ヨクイニン、ヨモギ、ラン、ライム、ラベンダーレタス、リンゴ、リュウキュウヨモギ、ルイボス、レンゲソウ、レモン、レモンバーム、ローズヒップ、ローズマリー、緑藻、紅藻、褐藻、ブクリョウ、シイタケ、クリタケ、サルノコシカケ、シロキクラゲ、レイシ、冬虫夏草、酵母、乳酸菌、根粒菌の全草、葉、茎、根、果実、種子、花、子実体、菌体から水、あるいはグリセリン、プロピレングリコール、エタノール、ブチレングリコール等の有機溶媒、或いはその混液等で抽出された抽出物である。葉緑素も植物抽出物に該当する。また生乳、果汁、合成培地、半合成培地を用いた乳酸菌、酵母の培養液を菌体の除去の有無に関わらず用いることができる。
【0034】
本発明の水性化粧料は、化粧品、医薬部外品として用いるものであり、皮膚に塗布したときの感触、例えばべたつかず、さっぱり感等の感触が良好であるため、皮膚化粧料として好適に利用することができる。特に本発明の水性化粧料は、例えば、保温、抗老化、美白用のローション、水性エッセンス、パック等の皮膚化粧料として好適に適用することができる。
【0035】
本発明の水性化粧料の剤形は任意であり、液状、ゲル状、スプレー状、ムース状等のものとして調製される。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。尚、以下に示す含有量は質量%であり、「%」で表す。
まず、実施例及び比較例にて各試料を用いて行った安定性試験、官能試験、保湿性試験について以下に説明する。
【0037】
〔安定性試験〕
各試料の調製直後の室温での安定性及び恒温槽にて40℃で一ヶ月保存した後の安定性について、それぞれ評価した。
【0038】
〔安定性試験の評価基準〕
○:変化なし
△:やや分離、またはやや白濁
×:完全に分離、または白濁
【0039】
〔官能試験〕
20名の評価パネラーに各試料を使用してもらい、塗布後のべたつき・きしみについてそれぞれ評価した。
【0040】
〔官能試験の評価基準〕
1.べたつき
◎:20名中16名以上がべたつきを感じないと回答
○:20名中11〜15名がべたつきを感じないと回答
△:20名中6〜10名がべたつきを感じないと回答
×:20名中5名以下がべたつきを感じないと回答
2.きしみ
◎:20名中16名以上がきしみを感じないと回答
○:20名中11〜15名がきしみを感じないと回答
△:20名中6〜10名がきしみを感じないと回答
×:20名中5名以下がきしみを感じないと回答
【0041】
〔保湿性試験〕
角質層水分量の測定
20名の評価パネラーの上腕部において、実施例及び比較例で用いた各試料を一定量塗布し、塗布前、塗布1時間後、及び4時間後の角質水分量を田上らの方法に基づきSkicon−200(IBS社製)を用いて測定し、塗布後の数値の上昇した人数にて評価を行った。また、単品使用での保湿効果を比較するため、化粧水+乳液のW保湿との比較も行った。
【0042】
実施例1〜6、比較例1〜6(ローション)
表1に示す種々の組成のローションを製造し、安定性試験、官能試験、保湿性試験により、評価を行った。
【0043】
【表1】

【0044】
〔実施例の調製法〕
各成分を室温にて均一に混合攪拌する。
【0045】
実施例及び比較例の安定性試験結果、官能試験結果及び保湿性試験結果を表2、表3に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
本発明の実施例1〜6の試料は40℃一ヵ月保存後も外観に変化がなく、安定性に優れたものであった。一方、リゾレシチンの代わりに水素添加レシチンを用いた比較例1では、調製直後からやや白濁しており、40℃一ヵ月保存後は、白濁層が分離していた。
実施例1〜6の試料はべたつき感、きしみ感がなく、優れた官能評価が得られ、保湿持続性も優れていたが、リゾレシチンを用いない比較例2では、べたつき感が強く、きしみ感も感じられた。酸性ムコ多糖類であるヒアルロン酸ナトリウムの代わりに、水溶性高分子であるキサンタンガムを用いた比較例3では、べたつき感が感じられ、きしみ感が強く感じられた。比較例4、5は、多価アルコールの試料中の含有量が少な過ぎる又は多すぎる場合のものであるが、少なすぎると保湿持続性が著しく低下し、多すぎるとべたつき感やきしみ感が強く感じられた。比較例6は、4価アルコール(ジグリセリン)と3価アルコール(グリセリン)の含有量が同一のものであるが、べたつき感が強く、きしみ感も感じられた。
【0049】
本発明の実施例1〜6の試料は保湿性において比較例「化粧水+乳液のW保湿」同等以上の長時間の保湿性が示された。従って、本発明の水性化粧料は、単品使いで十分な保湿効果を期待できる水性化粧料である。
【0050】
処方例1、2 保湿用ローション
成分 処方例1 処方例2(質量%)
リゾレシチン 0.1 0.1
ヒアルロン酸ナトリウム(注1) 0.1 0.1
グリセリン 10 10
ジプロピレングリコール 10 7
ジグリセリン 3 3
1,3−ブチレングリコール 10 7
1,3−プロパンジオール − 6
加水分解シルク 0.3 0.3
グリシン 0.1 0.1
クロルフェネシン 0.05 0.05
アスコルビン酸硫酸エステルマグネシウム 0.01 0.01
ソルビトール液(70質量%) 1 1
エデト酸塩 0.02 0.02
カルボキシメチルグルカン液 0.2 0.2
スギノリエキス 0.3 0.3
メバロノラクトン 0.01 0.01
ラフィノース 0.1 0.1
γ−アミノ−β−ヒドロキシ酪酸 0.3 0.3
真珠蛋白抽出液 0.1 0.1
冬虫夏草抽出液 0.4 0.4
香料 0.02 0.02
純水 残 量 残 量
注1:紀文フードケミファ社製 ヒアルロン酸FCH(FCH−120)
【0051】
処方例3、4 美白用ローション
成分 処方例3 処方例4(質量%)
リゾレシチン 0.2 0.2
ヒアルロン酸ナトリウム(注2) 0.3 0.3
グリセリン 12 12
ジプロピレングリコール 10 7
ジグリセリン 3 3
1,3−ブチレングリコール 10 7
1,3−プロパンジオール − 6
ハトムギエキス 0.3 0.3
L−アラニン 0.01 0.01
エタノール − 5
フェノキシエタノール 0.3 0.3
ニコチン酸アミド 0.01 0.01
マルチトール液(75質量%) 1 1
エデト酸塩 0.02 0.02
グリチルリチン酸ジカリウム 0.2 0.2
ユキノシタエキス 0.3 0.3
シーカーサーエキス 0.3 0.3
オオバナサルスベリエキス 0.01 0.01
ハイビスカスエキス 0.1 0.1
デキオスコレアコンポジタ抽出液 0.3 0.3
アスコルビン酸グルコシド 0.3 0.3
アーティチョークエキス 0.1 0.1
サクラ葉エキス 0.4 0.4
香料 0.02 0.02
純水 残 量 残 量
注2:紀文フードケミファ社製 ヒアルロン酸FCH−SU
【0052】
処方例5、6 抗老化用ローション
成分 処方例5 処方例6(質量%)
リゾレシチン 0.2 0.2
ヒアルロン酸ナトリウム(注1) 0.1 0.1
ヒアルロン酸ナトリウム(注2) 0.3 0.3
グリセリン 12 12
ジプロピレングリコール 10 7
ジグリセリン 3 3
1,3−ブチレングリコール 10 7
1,3−プロパンジオール − 6
ハトムギエキス 0.3 0.3
L−プロリン 0.01 0.01
エタノール − 5
フェノキシエタノール 0.3 0.3
ニコチン酸アミド 0.01 0.01
マルチトール液(75質量%) 1 1
エデト酸塩 0.02 0.02
グリチルリチン酸ジカリウム 0.2 0.2
ユズエキス 0.3 0.3
アシタバエキス 0.3 0.3
セイヨウナシ果汁発酵液 0.01 0.01
オクラエキス 0.1 0.1
ラン抽出液 0.3 0.3
火棘抽出物 0.1 0.1
香料 0.02 0.02
アボカドエキス 0.4 0.4
純水 残 量 残 量
注1:紀文フードケミファ社製 ヒアルロン酸FCH(FCH−120)
注2:紀文フードケミファ社製 ヒアルロン酸FCH−SU
【0053】
尚、処方例1〜6で用いた香料は下記処方のものを用いた。
【0054】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)リゾリン脂質、(B)ムコ多糖類又はその塩、及び(C)少なくとも3価アルコールと4価以上のアルコールを含む多価アルコールを含有し、(C)成分の含有量が水性化粧料中に20〜80質量%であり、(C)成分中の4価以上のアルコールの含有量が3価アルコールの含有量よりも少ないことを特徴とする水性化粧料。
【請求項2】
(C)成分中の4価以上のアルコールの含有量が、3価アルコールの含有量に対して、0.1〜0.5質量倍である請求項1に記載の水性化粧料。
【請求項3】
(C)成分中の3価アルコールがグリセリンであり、4価以上のアルコールがジグリセリンである請求項1又は2に記載の水性化粧料。
【請求項4】
(C)成分として、さらに2価アルコールを含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性化粧料。
【請求項5】
(A)成分の含有量が、(B)成分の含有量に対して、0.005〜20質量倍である請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性化粧料。
【請求項6】
(B)成分が、ヒアルロン酸又はその塩である請求項1〜5のいずれか1項に記載の水性化粧料。

【公開番号】特開2012−82177(P2012−82177A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231130(P2010−231130)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】