説明

水性園芸用農薬組成物

【課題】
予め水で希釈され直接使用濃度に調整された水性園芸用農薬組成物であって、製品を変質させることなく、農薬を識別するために添加された水溶性着色剤の性能を長期に亘って維持できる水性園芸用農薬組成物の提供。
【解決手段】
農薬活性成分、界面活性剤、水溶性着色剤、パラベン系防腐剤及び水からなることを特徴とする、予め水で希釈された水性園芸用農薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭園芸用の場面で、水で希釈することなく植物体にそのまま直接散布できる水性園芸用農薬組成物において、製品を変質させることなく、製品の外観維持に必要な水溶性着色剤の性能が長期に亘って維持できる防腐剤を添加した水性園芸用農薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水で希釈することなく植物体にそのまま直接散布できる水性園芸用農薬組成物(以下、そのまま剤と略称する)は、予め水で希釈され直接使用濃度に調整されており、希釈に伴う煩わしい手間が必要なく、乳剤における引火性や悪臭、水和剤における微粉末の飛散などもなく、家庭園芸用の場面では非常に便利で使いやすいことから、多くの商品が検討、開発されている(例えば、特許文献1乃至6参照。)。そのまま剤を構成する成分としては、農薬活性成分、界面活性剤等の他に、使用者に農薬であることを知らしめ注意を促す目的で添加される水溶性着色剤や、微生物による変質を防ぐための防腐剤といったものが挙げられる
【0003】
【特許文献1】特開2000−128704号公報
【特許文献2】特開平10−87403号公報
【特許文献3】特開平8−268803号公報
【特許文献4】特開平6−305904号公報
【特許文献5】特開平6−80504号公報
【特許文献6】特開平3−145403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般にそのまま剤は、濃度が希薄であるが故に構成成分が分解されやすい。特にそのまま剤中に添加される水溶性着色剤は微量であるため、分解、退色しやすいことが知られている。
一方、水性製剤は長期保存中に細菌やカビなどの影響で製品が著しく変質してしまう場合があることから、処方中に防腐剤を添加するのが一般的である。ところが、水溶性着色剤の添加されたそのまま剤に、農薬で一般的な防腐剤を添加すると、水溶性着色剤の分解が促進され、有効期限内における製品の外観が維持できなくなるという課題があった。このため、水溶性着色剤の分解を促進することなく、製品の変質を抑制することのできる防腐剤が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、パラベン系防腐剤を使用することにより、製品を変質させることなく、長期に亘って水溶性着色剤の性能が維持できることを見出し、本発明を完成させた。即ち本発明は、
[1]農薬活性成分、界面活性剤、水溶性着色剤、パラベン系防腐剤及び水からなることを特徴とする、予め水で希釈された水性園芸用農薬組成物、
[2]パラベン系防腐剤がメチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、イソプロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン及びベンジルパラベンから選択される1種以上のパラベンである[1]に記載の水性園芸用農薬組成物、
[3]防腐剤の配合割合が0.01〜1.00重量%である[1]又は[2]に記載の水性園芸用農薬組成物、
[4]農薬活性成分がN−(ホスホノメチル)グリシン(一般名:グリホサート)若しくはその塩、又は4−〔ヒドロキシ(メチル)ホスフィノイル〕−DL−ホモアラニン(一般名:グルホシネート)若しくはその塩である[1]乃至[3]いずれかに記載の水性園芸用農薬組成物、
[5]水溶性着色剤が青色1号、又は青色2号である[1]乃至[4]いずれかに記載の水性園芸用農薬組成物に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の水性園芸用農薬組成物は、農薬活性成分、界面活性剤、水溶性着色剤、パラベン系防腐剤及び水からなることを特徴とする、予め水で希釈された水性園芸用農薬組成物であり、パラベン系防腐剤の効果により、製品を変質させることなく、長期に亘って水溶性着色剤の性能が維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の水性園芸用農薬組成物に含有される農薬活性成分としては、水性園芸用農薬組成物に使用できるものであれば特に限定されないが、2−ターシャリーブチルイミノ−3−イソプロピル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,3,5−チアジアジン−4−オン(一般名:ブプロフェジン)、tert−ブチル=(E)−α−(1,3−ジメチル−5−フェノキシピラゾール−4−イルメチレンアミノオキシ)−p−トルアート(一般名:フェンピロキシメート)、N−tert−ブチル−N’−(4−エチルベンゾイル)−3,5−ジメチルベンンゾヒドラジド(一般名:テブフェノジド)、(±)−5−アミノ−1−(2,6−ジクロロ−α,α,α−トリフルオロ−p−トルイル)−4−トリフルオロメチルスルフィニルピラゾール−3−カルボニトリル(一般名:フィプロニル)、(E)−N1-〔(6−クロロ−3−ピリジル)メチル〕−N2-シアノ−N1-メチルアセトアミジン(一般名:アセタミプリド)、O,S−ジメチル−N−アセチルホスホロアミドチオエート(一般名:アセフェート)等の殺虫活性成分、
【0008】
α,α,α−トリフルオロ−3’−イソプロポキシ−o−トルアニリド(一般名:フルトラニル)、2,3−ジシアノ−1,4−ジチアアンスラキノン(一般名:ジチアノン)、テトラクロロイソフタロニトリル(一般名:TPN)、2−p−クロロフェニル−2−(1H)−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)ヘキサンニトリル(一般名:ミクロブタニル)、2−メトキシ−N−(2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−3−イル)アセト−2’,6’−キシリジド(一般名:オキサジキシル)等の殺菌活性成分、メチル=α−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イルカルバモイルスルファモイル)−o−トルアート(一般名:ベンスルフロンメチル)、2−クロロ−N−(3−メトキシ−2−テニル)−2’,6’−ジメチルアセトアニリド(一般名:テニルクロール)、エチル=2−クロロ−5−(4─クロロ−5−ジフルオロメトキシ−1−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−4−フルオロフェノキシアセテート(一般名:ピラフルフェン−エチル)、N−(ホスホノメチル)グリシン(一般名:グリホサート)及びそのアンモニウム塩、ナトリウム塩、イソプロピルアミン塩又はトリメシウム塩、4−〔ヒドロキシ(メチル)ホスフィノイル〕−DL−ホモアラニン(一般名:グルホシネート)及びそのアンモニウム塩等の除草活性成分を例示することができ、特に好ましくはN−(ホスホノメチル)グリシン(一般名:グリホサート)若しくはその塩、又は4−〔ヒドロキシ(メチル)ホスフィノイル〕−DL−ホモアラニン(一般名:グルホシネート)若しくはその塩である。
【0009】
本発明で使用する界面活性剤としては農薬製剤に使用できるものであれば特に限定されないが、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルのホルマリン縮合物、ポリオキシアルキレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル亜硫酸塩、ポリオキシアルキレンポリスチリルフェニルエーテルリン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩等を例示することができ、これらの界面活性剤は単独で、又は2種以上混合して使用することができる。
【0010】
本発明で使用する水溶性着色剤としては、赤色2号、赤色3号、赤色40号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、青色1号、青色2号等が例示でき、好ましくは青色1号又は青色2号である。これらの水溶性着色剤は単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0011】
本発明で使用するパラベン系防腐剤としては、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、イソプロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン及びベンジルパラベンから選択される1種以上のパラベンを使用することができる。その配合割合は、防腐効果と水溶性着色剤の0.01〜1.00重量%の範囲で選択して使用すればよく、好ましくは、0.05%〜0.10重量%である。
【0012】
本発明の水性園芸用農薬組成物は、農薬活性成分、界面活性剤、水溶性着色剤、パラベン系防腐剤の他に、必要に応じて凍結復元剤(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、消泡剤(例えば、ジメチルポリシロキサン、アセチレンアルコール等)、有機溶剤(例えば、アルキルベンゼン、ノルマルパラフィン等)、安定化剤(例えばリン酸、クエン酸等)、及び水を使用し、農薬製剤上の常法により製造することができる。使用する水としては、例えば水道水の他に蒸留水や濾過処理した水、滅菌処理した水等を使用することができる。
【実施例】
【0013】
以下に本発明の代表的な実施例及び試験例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
グルホシネート0.2重量%、界面活性剤0.3重量%、青色1号0.00007重量%、プロピルパラベン0.05重量%に水を加えて100重量%とし、均一に混合溶解して水性農薬組成物を得た。成分及び成分量について表1に示した。
実施例2〜4及び比較例1〜3
実施例1に準じて各水性園芸用農薬組成物を調製した。成分及び成分量について表1に示した。
【0014】
【表1】

【0015】
試験例1 青色1号の残存試験
実施例1〜4及び比較例1〜3の水性園芸農薬組成物を無色透明ガラス瓶に入れ、40℃、2000ルクス下に静置して経時的にサンプリングし、青色1号の残存率を分光光度計により求めた。結果を表2に示す。
【0016】
【表2】

その結果、パラベン系防腐剤は良好な残存率を示し、水溶性着色剤の分解を抑制したが、他の防腐剤である1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオールは水溶性着色剤の分解を促進した。
【0017】
試験例2 カビに対する防腐効果試験
本発明の実施例1〜4及び比較例1の水性園芸農薬組成物に、市販の水性製剤より分離された糸状菌を植菌し、25℃で振とう培養し、30日後に菌の生育を肉眼判定した。結果を表3に示す。
【0018】
【表3】

【0019】
試験例3 除草効果試験
本発明の実施例1〜4及び比較例1の水性園芸農薬組成物をイヌビエ及びオナモミの茎葉部に処理し、3週間後の除草効果を目視により判定した。結果を表4に示す。
【0020】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
農薬活性成分、界面活性剤、水溶性着色剤、パラベン系防腐剤及び水からなることを特徴とする、予め水で希釈された水性園芸用農薬組成物。
【請求項2】
パラベン系防腐剤がメチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、イソプロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン及びベンジルパラベンから選択される1種以上のパラベンである請求項1に記載の水性園芸用農薬組成物。
【請求項3】
防腐剤の配合割合が0.01〜1.00重量%である請求項1又は2に記載の水性園芸用農薬組成物。
【請求項4】
農薬活性成分がN−(ホスホノメチル)グリシン(一般名:グリホサート)若しくはその塩、又は4−〔ヒドロキシ(メチル)ホスフィノイル〕−DL−ホモアラニン(一般名:グルホシネート)若しくはその塩である請求項1乃至3いずれか1項に記載の水性園芸用農薬組成物。
【請求項5】
水溶性着色剤が青色1号又は青色2号である請求項1乃至4いずれか1項に記載の水性園芸用農薬組成物。

【公開番号】特開2007−45728(P2007−45728A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−230219(P2005−230219)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(000232623)日本農薬株式会社 (97)
【Fターム(参考)】