説明

水性塗料及び塗装方法

【課題】水性メタリック塗料における密着性不良や界面剥離の問題を十分に改善する。
【解決手段】本発明の水性メタリック塗料は、反応性シリル基を有し、シリカ残量比率が0.1〜30重量%である合成樹脂エマルション(A)、及び金属粉顔料(B)を必須成分とし、前記合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対し、前記金属粉顔料(B)を1〜100重量部混合して得られるものである。当該水性メタリック塗料を塗装した後には、反応性シリル基を有し、シリカ残量比率が0.1〜30重量%である合成樹脂エマルション(A)を含む水性クリヤー塗料を塗装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な水性メタリック塗料及びその塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にメタリック塗料は、顔料としてアルミニウム粉等の金属粉顔料を含んでおり、この金属粉顔料の作用によって独特の美観性を表出することができ、また熱線反射等の性能を発揮することもできる。
メタリック塗料におけるこのような特徴は、金属粉顔料のリーフィング現象によるところが大きい。リーフィング現象とは、塗膜形成時に生じる表面張力等によって、金属粉顔料が塗膜上層に浮上し、被塗面と平行に配向する現象のことである。
しかし、メタリック塗料を塗装後、クリヤー塗料を塗り重ねた場合には、上述の如き金属粉顔料のリーフィング現象によって、メタリック塗膜とクリヤー塗膜の層間密着性が低下し、界面剥離等の問題が引き起こされるおそれがある。
【0003】
このような問題を改善する手法として、例えば、特公平6-19080号公報(特許文献1)には、金属粉、樹脂、溶剤ならびに塗料用添加剤からなるメタリック塗料組成物において、シランカップリング剤を全固形分に対し0.1〜5重量%配合せしめることが記載されている。特開平10-219150号公報(特許文献2)には、アルミニウムフレークの表面をリン酸アルキルエステルで表面処理してなるメタリック顔料と、ビヒクル成分と有機溶剤を主成分とするメタリック塗料が記載されている。また、特開2000-178478号公報(特許文献3)には、蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料、リン酸基含有化合物、及びシランカップリング剤を含有するメタリック塗料が記載されている。
【0004】
ただし、上記特許文献に記載のメタリック塗料は、いずれもトルエン、キシレン、酢酸ブチル等の強溶剤を媒体とする溶剤系塗料である。環境問題、省資源、労働安全衛生等の見地からすると、このような強溶剤の使用は差し控えたほうが良く、水を媒体とする水性塗料への転換が望まれるが、上記特許文献の技術は、いずれも溶剤系塗料のみを対象とするものであり、水性塗料にそのまま適用できるものではない。
【0005】
【特許文献1】特公平6-19080号公報
【特許文献2】特開平10-219150号公報
【特許文献3】特開2000-178478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑みなされたものであり、水性メタリック塗料における密着性不良や界面剥離の問題を十分に改善すること目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行なった結果、特定の合成樹脂エマルションと金属粉顔料を必須成分とする水性メタリック塗料に想到し、本発明を完成させるに到った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.反応性シリル基を有し、シリカ残量比率が0.1〜30重量%である合成樹脂エマルション(A)、及び金属粉顔料(B)を必須成分とし、
前記合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対し、前記金属粉顔料(B)を1〜100重量部含むことを特徴とする水性塗料。
2.前記合成樹脂エマルション(A)が、乳化剤として、重合性不飽和基を有するアニオン性界面活性剤(p)、及びHLB14以下のノニオン性界面活性剤(q)を含むものであることを特徴とする項1記載の水性塗料。
3.前記合成樹脂エマルション(A)及び前記金属粉顔料(B)に加え、さらに、
水への溶解度が10g/100g以上の水易溶性溶剤(C)、及び
水への溶解度が10g/100g未満の水難溶性溶剤(D)を必須成分とし、
前記水易溶性溶剤(C)及び前記水難溶性溶剤(D)の合計量が塗料中0.01〜20重量%であり、前記水易溶性溶剤(C)と前記水難溶性溶剤(D)との重量比率が95:5〜5:95であることを特徴とする1.または2.記載の水性塗料。
4.項1〜3のいずれかに記載の水性塗料を塗装した後、反応性シリル基を有し、シリカ残量比率が0.1〜30重量%である合成樹脂エマルション(A)を結合剤とする水性クリヤー塗料を塗装することを特徴とする塗装方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の塗料は、水を媒体とする水性塗料であり、環境問題、省資源、労働安全衛生等の点において好ましいものである。
上記項1.に係る塗料を使用すれば、メタリック塗膜とクリヤー塗膜の層間密着性が改善され、界面剥離等の塗膜異常の発生を抑制することができる。
上記項2.または項3.に係る塗料によれば、消泡剤に頼ることなく塗料中の気泡を低減することができる。したがって、消泡剤の添加量を削減することができ、ひいては塗膜の層間密着性を高めることができる。
上記項4.に係る塗装方法によれば、メタリック塗膜とクリヤー塗膜の層間密着性に優れるとともに、長期にわたりメタリック調の美観性を保持することができる塗膜が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0011】
本発明の水性メタリック塗料では、反応性シリル基を有し、シリカ残量比率が0.1〜30重量%である合成樹脂エマルション(A)(以下「(A)成分」という)をバインダーとして使用する。本発明では、この(A)成分を使用することにより、水性メタリック塗料における密着性不良や界面剥離の問題を十分に改善することができる。具体的には、本発明の水性メタリック塗料によって形成されたメタリック塗膜と、その上に形成されたクリヤー塗膜との密着性や界面剥離を防止することができる。
【0012】
かかる(A)成分は、反応性シリル基含有化合物(以下「a成分」という)を必須成分として得られるものである。(A)成分において、a成分を導入する方法としては、特に限定されず各種の方法を採用することができるが、例えば、
[1]反応性シリル基含有ビニル系単量体を共重合する方法、
[2]反応性シリル基含有ビニル系単量体を共重合した後に、シラン化合物を反応させる方法、
[3]樹脂中の官能基と、該官能基と反応可能な官能基を有するカップリング剤を反応させる方法、
[4]樹脂中の官能基と、該官能基と反応可能な官能基を有するカップリング剤を反応させた後に、シラン化合物を反応させる方法、
等が挙げられる。
【0013】
反応性シリル基としては、珪素原子にアルコキシル基、フェノキシ基、メルカプト基、アミノ基、ハロゲン、水素原子等が結合したものが挙げられる。
【0014】
[1]、[2]における反応性シリル基含有ビニル系単量体としては、反応性シリル基と重合性二重結合を含有する化合物であり、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルプロピルビニルエーテル等があげられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0015】
[2]、[4]におけるシラン化合物としては、反応性シリル基を一分子中に2個以上有するものが用いられ、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラブトキシシラン等の4官能アルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリブトキシシラン等の3官能アルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン等の2官能アルコキシシラン類;テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン等のクロロシラン類;テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン等のアセトキシシラン類等があげられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。また、反応性シリル基を一分子中に1個有する化合物を併用することもできる。
【0016】
[3]、[4]における官能基の組み合わせとしては、水酸基とイソシアネート基、アミノ基とイソシアネート基、カルボキシル基とエポキシ基、アミノ基とエポキシ基、アルコキシシリル基どうし等があげられる。カップリング剤は、例えば、一分子中に、少なくとも1個以上の反応性シリル基とそのほかの置換基を有する化合物であり、具体的には、β−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、イソシアネート官能性シランなどがあげられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0017】
(A)成分におけるa成分の重量比率は、シリカ残量比率で(A)成分の樹脂固形分中に0.1〜30重量%であることが望ましく、さらには1〜10重量%であることが望ましい。シリカ残量比率が0.1重量%より少ない場合は、密着性改善効果が得られず、界面剥離等が発生しやすくなる。また、耐汚染性、耐候性等の塗膜物性向上効果も得られにくい。シリカ残量比率が30重量%より多い場合は、塗料の貯蔵安定性の確保が難しくなる。
【0018】
なお、シリカ残量比率とは、Si−O結合をもつ化合物を、完全に加水分解した後に、900℃で焼成した際にシリカ(SiO)となって残る重量分にて表したものである。一般に、アルコキシシランやシリケート等は、水と反応して加水分解反応が起こりシラノールとなり、さらにシラノールどうしやシラノールとアルコキシにより縮合反応を起こす性質を持っている。この反応を究極まで行うと、シリカ(SiO)となる。これらの反応は一般式、
RO(Si(OR)O)R+(n+1)HO→nSiO+(2n+2)ROH
という反応式で表されるが、この反応式をもとに残るシリカ成分の量を換算したものである。
【0019】
(A)成分の共重合モノマーとしては、特に限定されないが、アクリル系モノマーを好適に用いることができる。アクリル系モノマーとしては、、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル基含有(メタ)アクリル系単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリル系単量体;(メタ)アクリル酸などのエチレン性不飽和カルボン酸;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有(メタ)アクリル系単量体;(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド含有(メタ)アクリル系単量体;アクリロニトリルなどのニトリル基含有(メタ)アクリル系単量体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体等があげられる。
【0020】
(A)成分においては、前記モノマーの他に、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系ビニル単量体;マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸などのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸;スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などのスルホン酸含有ビニル単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレンなどの塩素含有単量体;ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテルなどの水酸基含有アルキルビニルエーテル;エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテルジエチレングリコールモノアリルエーテルなどのアルキレングリコールモノアリルエーテル;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのα−オレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどのビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのビニルエーテル;エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテルなどのアリルエーテル等を用いることもできる。この他、エチレン性不飽和二重結合含有紫外線吸収剤、エチレン性不飽和二重結合含有光安定剤等を用いることもできる。
【0021】
重合に用いる乳化剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性の各種乳化剤から適宜選択することができるが、本発明では、重合性不飽和基を有するアニオン性界面活性剤(p)(以下単に「アニオン性界面活性剤(p)」もいう)、及びHLB14以下のノニオン性界面活性剤(q)(以下単に「ノニオン性界面活性剤(q)」ともいう)を使用することが望ましい。このような界面活性剤を使用することによって、十分な気泡低減効果を得ることができる。したがって、消泡剤の添加量を削減することができ、ひいては塗膜の層間密着性を高めることができる。さらに、塗膜中に気泡が残存するのを抑制することができるため、金属粉顔料の経時的変色の防止にも有利である。
【0022】
具体的に、アニオン性界面活性剤(p)としては、例えば、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート硫酸エステル塩、(メタ)アクリロイルオキシアルキレン硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステル塩、α−[1−[(アリルオキシ)メチル]−2−(ノニルフェノキシ)エチル]−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩、アルキルアリルスルホコハク酸塩、スルホコハク酸型反応性活性剤等が挙げられる。ここで塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等の金属塩、またはアンモニウム塩等が含まれる。
【0023】
ノニオン性界面活性剤(q)としては、HLBが14以下のものであればその種類は特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル等が挙げられる。ノニオン性界面活性剤(q)のHLBは14以下であるが、好ましくは13以下である。HLBの下限は特に限定されないが、通常は2以上、好ましくは5以上である。
【0024】
このような界面活性剤の使用量は、単量体100重量部に対し、通常0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部である。なお、ここに言う界面活性剤の使用量とは、アニオン性界面活性剤(p)とノニオン性界面活性剤(q)の合計量である。
また、アニオン性界面活性剤(p)とノニオン性界面活性剤(q)との重量比率は、アニオン性界面活性剤(p):ノニオン性界面活性剤(q)が10:90〜90:10(好ましくは20:80〜80:20)となる範囲内とする。このように界面活性剤を併用すれば、エマルション安定性を高めることができるとともに、界面活性剤に起因する気泡発生を十分に抑制することができる。
【0025】
(A)成分のガラス転移温度は通常−60〜80℃(好ましくは−40〜60℃)程度である。また、平均粒子径は、通常0.05〜0.4μm程度である。
【0026】
本発明における金属粉顔料(B)は、本発明塗料の形成塗膜にメタリック感を付与する成分である。金属粉顔料(B)としては、例えばアルミニウム、銅、ニッケル、マグネシウム、亜鉛、真鍮等、及びそれらの合金等が使用できる。この中でも、本発明ではアルミニウム顔料が好適である。アルミニウム顔料としては、種々の表面処理を施したものも使用できる。例えば、アトマイズドアルミニウム粉及び/またはアルミニウム箔を、脂肪酸、脂肪族アミン、脂肪族アミド、脂肪族アルコール等の粉砕助剤を用いて粉砕した後、さらにクロム酸、リン酸、リン酸塩、リン酸エステル、バナジン酸塩、酸化バナジウム、モリブデン酸塩、シリカ等によって処理を施したもの等が使用できる。このような処理を施したアルミニウム顔料を使用すれば、水との接触による水素ガスの発生を抑制することができる。
【0027】
金属粉顔料(B)の形状は、通常リン片状であり、その平均粒径は通常1〜50μm(好ましくは5〜30μm)程度である。
【0028】
金属粉顔料(B)の混合比率は、(A)成分の固形分100重量部に対し、通常1〜100重量部、好ましくは2〜80重量部である。金属粉顔料(B)が1重量部より少ない場合は、形成塗膜において十分なメタリック感を得ることができず、100重量部より多い場合は、塗料の流動性が低下し、塗装作業に支障をきたすおそれがある。
【0029】
本発明では、上記金属粉顔料以外の着色顔料を使用することもできる。かかる着色顔料を水性メタリック塗料に混合することで、塗料の色相を調整することができ、様々な色彩を有するメタリック塗膜が得られる。
着色顔料としては、通常塗料に使用可能なものであれば特に制限されず、例えば酸化チタン、カーボンブラック、酸化第二鉄(ベンガラ)、黄色酸化鉄、オーカー、群青、コバルトグリーン等の無機系顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンゾイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機顔料等が使用できる。これら着色顔料は、所望の色彩に応じて1種または2種以上を適宜使用することができる。
着色顔料の混合比率は、(A)成分の固形分100重量部に対し通常0.1〜200重量部、好ましくは0.1〜100重量部である。
【0030】
本発明の水性塗料では、水への溶解度が10g/100g以上の水易溶性溶剤(C)(以下単に「水易溶性溶剤(C)」ともいう)、及び水への溶解度が10g/100g未満の水難溶性溶剤(D)(以下単に「水難溶性溶剤(D)」ともいう)を混合することが望ましい。特に、水易溶性溶剤(C)と水難溶性溶剤(D)との混液を予め用意しておき、当該混液を混合することが望ましい。本発明では、水への溶解特性が異なるこれら2成分を併用することによって、気泡低減効果を高めることができ、その結果、消泡剤添加量の削減、塗膜の層間密着性の向上等を図ることができる。ここでは、水易溶性溶剤(C)が水難溶性溶剤(D)のキャリヤーとして作用することによって、気泡低減効果が奏されるものと推測される。
なお、本発明における水への溶解度は、水100gに溶解し得る最大質量(g)のことである。測定温度は20℃である。
【0031】
水易溶性溶剤(C)としては、水への溶解度が上記範囲内であれば特に限定されないが、具体的な化合物としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、ヘキシレングリコール、ジアセトンアルコール、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
水易溶性溶剤(C)の水への溶解度は10g/100g以上であるが、好ましくは20g/100g以上、より好ましくは∞である。
【0032】
水難溶性溶剤(D)としては、例えば、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、オクチレングリコール、2−エチルヘキシレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、ベンジルアルコール等が挙げられる。
水難溶性溶剤(D)の水への溶解度は10g/100g未満であるが、好ましくは5g/100g未満、より好ましくは4g/100g未満である。
【0033】
水易溶性溶剤(C)及び水難溶性溶剤(D)は、その合計量が塗料中0.01〜20重量%(好ましくは0.05〜10重量%)となるように混合する。また、水易溶性溶剤(C)と水難溶性溶剤(D)との重量比率は、通常95:5〜5:95であり、好ましくは90:10〜10:90、より好ましくは80:20〜20:80、さらに好ましくは70:30〜30:70である。本発明では、かかる比率で両成分を併用することによって、優れた気泡低減効果を得ることができる。
【0034】
本発明の水性メタリック塗料には、上述の成分の他に通常塗料に使用可能な成分を混合することもできる。かかる成分としては、例えば、増粘剤、造膜助剤、体質顔料、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、吸着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、触媒、架橋剤等が挙げられる。
【0035】
本発明の水性塗料には、必要に応じ消泡剤を混合することもできるが、その混合量は、水性塗料中に2重量%以下とすることが好ましく、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下とする。本発明において前述のように特定の乳化剤や溶剤を使用すれば、このように消泡剤の混合量が少ない場合であっても、塗料中の気泡を低減することができる。その結果として、塗膜の層間密着性を高めることもできる。なお、ここに言う消泡剤とは、鉱物油、シリコーン化合物を主成分とするものである。
【0036】
本発明の水性メタリック塗料は、金属、コンクリート、プラスチック等の各種素材に直接塗装することもできるし、何らかの表面処理(シーラー、フィラー、サーフェーサ、パテ等による下地処理等)を施した上に塗装することも可能である。塗装方法としては、ハケ塗り、スプレー塗装、ローラー塗装等の種々の方法を採用することができる。塗装を行う際の塗付量は、通常0.1〜0.5kg/m程度である。塗付時には水等で希釈することによって、塗料の粘性を適宜調製することもできる。希釈割合は、通常0〜20重量%程度である。塗装後の乾燥は通常、常温で行えばよいが、必要に応じ加熱することもできる。
【0037】
水性メタリック塗料を塗装した後には、通常、水性クリヤー塗料を塗装する。本発明における水性クリヤー塗料としては、特に、前述の(A)成分を結合剤とする水性クリヤー塗料が好適である。かかる水性クリヤー塗料の塗装により、耐久性、耐汚染性、美観性(光沢感)等を高めることができる。さらに、本発明では、メタリック塗膜とクリヤー塗膜との層間密着性が十分に確保されるため、界面剥離等の塗膜異常の発生を抑制することもできる。なお、本発明における水性クリヤー塗料では、前述の(A)成分に加え、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、フッ素樹脂系等の各種水性樹脂を組み合わせて使用することができる。また、下層のメタリック塗膜の美観性が著しく損なわれない範囲内であれば、着色タイプのものも使用できる。
【0038】
水性クリヤー塗料の塗装方法は、公知の方法に従えばよく、ハケ塗り、スプレー塗装、ローラー塗装等の種々の方法を採用することができる。塗装を行う際の塗付量は、通常0.1〜0.5kg/m程度である。塗付時には水等で希釈することによって、塗料の粘性を適宜調製することもできる。希釈割合は、通常0〜20重量%程度である。水性クリヤー塗料を塗装した後の乾燥は通常、常温で行えばよいが、必要に応じ加熱することもできる。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0040】
(水性メタリック塗料の製造)
表1に示す配合比率に従い、合成樹脂エマルション、金属粉顔料、着色顔料、溶剤、増粘剤、消泡剤等を常法にて順次混合・攪拌することによって水性メタリック塗料<1>〜<4>を製造した。なお、原料としては下記のものを使用した。
【0041】
・合成樹脂エマルションi:反応性シリル基含有アクリル樹脂エマルション(樹脂成分:メチルメタクリレート・スチレン・n−ブチルアクリレート・γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン・メチルトリエトキシシラン・メタクリル酸、乳化剤:アルキルアリルスルホコハク酸ソーダ・ポリオキシエチレンオレイルエーテル(HLB12.0)、固形分:50重量%、ガラス転移温度20℃、固形分中のシリカ残量比率:3重量%)
・合成樹脂エマルションii:反応性シリル基含有アクリル樹脂エマルション(樹脂成分:メチルメタクリレート・スチレン・n−ブチルアクリレート・γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン・メチルトリエトキシシラン・メタクリル酸、乳化剤:アルキルアリルスルホコハク酸ソーダ・ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB14.5)、固形分:50重量%、ガラス転移温度20℃、固形分中のシリカ残量比率:3重量%)
・合成樹脂エマルションiii:アクリル樹脂エマルション(樹脂成分:メチルメタクリレート・スチレン・n−ブチルアクリレート・メタクリル酸、乳化剤:アルキルアリルスルホコハク酸ソーダ・ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB14.5)、固形分:50重量%、ガラス転移温度20℃)
・金属粉顔料:アルミニウム顔料(平均粒子径15μm)
・着色顔料:フタロシアニンブルー顔料
・溶剤i:ジエチレングリコールジエチルエーテル(水への溶解度∞)
・溶剤ii:ジエチレングリコールジエチルエーテル(水への溶解度∞)とジエチレングリコールジブチルエーテル(水への溶解度0.3g/100g)の混液(重量比率50:50)
・増粘剤:ウレタン系会合性増粘剤
・消泡剤:鉱物油系消泡剤
【0042】
【表1】

【0043】
(水性クリヤー塗料<1>の製造)
合成樹脂エマルションiを200重量部用意し、これに溶剤iiを16重量部、消泡剤を0.8重量部常法にて混合・攪拌することによって水性クリヤー塗料<1>を製造した。
(水性クリヤー塗料<2>の製造)
合成樹脂エマルションiiiを200重量部用意し、これに溶剤iiを16重量部、消泡剤を0.8重量部常法にて混合・攪拌することによって水性クリヤー塗料<2>を製造した。
【0044】
(試験方法)
予めシーラー塗装が施されたスレート板に対し、上記方法で得られた水性メタリック塗料を塗付量300g/m2でスプレー塗装し、標準状態(温度23℃・相対湿度50%)にて24時間乾燥後、水性クリヤー塗料を塗付量150g/m2でスプレー塗装して標準状態にて14日間養生した。以上の方法により、ライトブルーメタリック色の外観を有する試験板を得た。
この試験板について、水浸漬(23℃)18時間→−20℃3時間→50℃3時間を1サイクルとする温冷繰返し試験を合計10サイクル行った後、標準状態にて24時間放置後、JIS K 5600−5−6に準じた碁盤目テープ法にて、密着性を評価した。なお、密着性の評価基準は、剥れた面積が5%未満のものを「○」、剥れた面積が5%以上15%未満のものを「△」、剥れた欠損部の面積が15%以上のものを「×」とした。
以上の試験において使用した水性メタリック塗料と水性クリヤー塗料の組み合わせ、及びその結果を表2に示す。
【0045】
【表2】






【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性シリル基を有し、シリカ残量比率が0.1〜30重量%である合成樹脂エマルション(A)、及び金属粉顔料(B)を必須成分とし、
前記合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対し、前記金属粉顔料(B)を1〜100重量部含むことを特徴とする水性塗料。
【請求項2】
前記合成樹脂エマルション(A)が、乳化剤として、重合性不飽和基を有するアニオン性界面活性剤(p)、及びHLB14以下のノニオン性界面活性剤(q)を含むものであることを特徴とする請求項1記載の水性塗料。
【請求項3】
前記合成樹脂エマルション(A)及び前記金属粉顔料(B)に加え、さらに、
水への溶解度が10g/100g以上の水易溶性溶剤(C)、及び
水への溶解度が10g/100g未満の水難溶性溶剤(D)を必須成分とし、
前記水易溶性溶剤(C)及び前記水難溶性溶剤(D)の合計量が塗料中0.01〜20重量%であり、前記水易溶性溶剤(C)と前記水難溶性溶剤(D)との重量比率が95:5〜5:95であることを特徴とする請求項1または2記載の水性塗料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の水性塗料を塗装した後、反応性シリル基を有し、シリカ残量比率が0.1〜30重量%である合成樹脂エマルション(A)を含む水性クリヤー塗料を塗装することを特徴とする塗装方法。

【公開番号】特開2006−36992(P2006−36992A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221167(P2004−221167)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】