説明

水性塗料及び該水性塗料を塗装してなる塗装物品

【課題】焼付け時に揮発性有機化合物の発生が少ない水性塗料を提供する。
【解決手段】特定の窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体0.1〜30重量%と、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体及び/又はその他のラジカル重合性不飽和単量体との混合物をラジカル重合反応することによって得られる樹脂成分(B)、ならびに、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体1〜20重量%と、特定の窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体及び/又はその他のラジカル重合性不飽和単量体との混合物をラジカル重合反応することによって得られる樹脂成分(B)であって、樹脂成分の溶解性パラメーター(SP値)の差が0.5〜2.0の範囲内にあり、樹脂成分の固形分100重量部に対して、ジノニルナフタレンスルホン酸又は/及びメタンスルホン酸から有機酸触媒(C)を0.01〜10重量部含有する水性塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼付け時に塗膜からのホルムアルデヒドやブロック剤(揮発性有機化合物)の発生が少ない水性塗料及び該水性塗料を塗装してなる塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗料は有機溶剤を用いた塗料が主流であったが、有機溶剤を用いた場合には常に火災の危険がつきまとい、さらに使用者の健康への影響、また最近になって特に環境への影響が懸念されている。さらに有機溶剤は、低VOC(揮発性有機化合物、volatile organic compounds)やHAPs(有害性大気汚染物質、Hazardous Air Pollutants)規制によって使用が制限されてきた。このような背景から塗料の水性化が進んできており、種々の被塗物を対象とした水性塗料が開発されている。中でも塗膜品質の均一性、高塗着効率、省力化などの面から電着塗料を用いた電着塗装が優れている。
被塗物として、アルミニウムは軽量で加工が容易であることや耐蝕性に優れるといった性質を利用して、特に建材関係の材料として多く使用されるようになってきている。
また通常、アルミニウム型材は、それ自体、防食性、耐摩耗性、耐薬品性などが劣ることから、アルミニウムを陽極酸化処理した後、艶有り塗膜を得る目的や押し出し時に発生するダイスマークを目立ち難くするために、水性塗料の中でもアニオン電着塗料を用いて、電着塗装を施しているのが一般的である。
従来、アニオン電着塗料に関する発明として、溶解性パラメーター(SP値)の異なった2種のアクリル系樹脂とこれらのアクリル系樹脂と相溶性のないメラミン樹脂を水分散させてなる艶消しの塗料が開発されている[特許文献1]。
他に、水分散性樹脂とメラミン樹脂を含有し、水分散性樹脂の溶解性パラメーター(SP値)の差によって艶消し塗膜を得る方法がある[特許文献2]。
また、ラジカル重合性不飽和単量体をラジカル重合反応して得られるエマルションと、架橋剤としてメラミン樹脂及び/又はブロックイソシアネート化合物を用いる方法がある[特許文献3]。
他に1分子中に重合性不飽和基を2個以上有する化合物、水酸基含有重合性不飽和単量体、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体、及びその他の重合性不飽和単量体を共重合して得られるアクリル樹脂、並びに架橋剤としてメラミン樹脂及び/又はブロックイソシアネートを含むアニオン型の電着塗料で、仕上り光沢を容易に調整できる発明がある[特許文献4]。
上記のように、従来のアニオン電着塗料は、架橋成分としてメラミン樹脂やブロックイソシアネートが用いられており、ホルムアルデヒドやブロック剤(揮発性有機化合物)が多く発生するため、環境への影響が問題であり改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−46065号公報
【特許文献2】特開2001−131494号公報
【特許文献3】特開2003−292879号公報
【特許文献4】特開2003−49112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、焼き付け時に塗膜からのホルムアルデヒドやブロック剤(揮発性有機化合物)の発生が少ない水性塗料を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記した問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体及びカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体を含む単量体をラジカル重合反応してなる樹脂成分と有機酸触媒を含有する水性塗料(I)、並びに溶解性パラーメーター(SP値)を調整した少なくとも2種類の樹脂成分と有機酸触媒を含有する水性塗料(II)によって達成できることを見出し、発明を完成した。
【発明の効果】
【0006】
本発明の水性塗料は、焼き付け時に塗膜からのホルムアルデヒドやブロック剤(揮発性有機化合物)の放散を低減し、硬化性、塗膜性能、塗料安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の水性塗料は、(1).特定の窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a)及びカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(b)を含むラジカル重合性不飽和単量体をラジカル重合反応することによって得られた樹脂成分(A)、樹脂成分(A)の固形分100重量部に対して、有機酸触媒(C)を0.01〜10重量部含有する水性塗料(I)。
(2).特定の窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a)を含む単量体をラジカル重合反応することによって得られた樹脂成分(B)と、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(b)を含む単量体をラジカル重合反応することによって得られた樹脂成分(B)、並びに樹脂成分(B)と樹脂成分(B)の固形分100重量部に対して、有機酸触媒(C)を0.01〜10重量部含有し、かつ樹脂成分(B)と樹脂成分(B)の溶解性パラーメーター(SP値)を調整した水性塗料(II)に関する。以下、詳細に説明する。
【0008】
水性塗料(I)
水性塗料(I)は、構成する単量体の合計に対して、式(1)で表される窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a)を0.1〜30重量%、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(b)を1〜20重量%、その他のラジカル重合性不飽和単量体(c)を50〜98.9重量%の割合でラジカル重合反応することによって得られた樹脂成分(A)を含有する水性塗料である。
式(1)
【0009】
【化1】

【0010】
(式(1)中、Rは水素原子又はCHを表し、Rは−C2nOHを表し、Rは水素原子又は炭素数1〜6個のアルキル基又は−C2mOHを表す。また、m,nは2〜6の整数を表す)
【0011】
窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a):窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a)としては、例えば、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)(
メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−(3−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−(3−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、これらは単独もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
この中でもN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N,N−ジ−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−エチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドが硬化性や塗膜性能の面から好ましい。
【0012】
カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(b):カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(b)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸等の単量体が挙げられ、これらは単独もしくは2種以上組み合わせ使用することができる。
【0013】
その他のラジカル重合性不飽和単量体(c):その他のラジカル重合性不飽和単量体(c)としては、水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体として、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸のC〜Cのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコ−ルモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等;また、これら水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体とβ−プロピオラクトン、ジメチルプロピオラクトン、ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−カプリロラクトン、γ−ラウリロラクトン、ε−カプロラクトン、δ−カプロラクトン等のラクトン類化合物との反応物等、商品名としては、プラクセルFM1(ダイセル化学社製、商品名、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステル類)、プラクセルFM2(同左)、プラクセルFM3(同左)、プラクセルFA−1(同左)、プラクセルFA−2(同左)、プラクセルFA−3(同左)等;
例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のC〜C18のアルキル又はシクロアルキルエステル類等;
【0014】
アルコキシシリル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(d):その他のラジカル重合性不飽和単量体(c)として、アルコキシシリル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(d)を用いることでき、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシランビニルジメチルエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジプロポキシシラン、ビニルジメチルプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキキシプロピルジメチルメトキシシラン等、が挙げられる。
【0015】
1分子中に2個以上のラジカル重合性不飽和基を有する単量体(e):その他のラジカル重合性不飽和単量体(c)として、1分子中に2個以上のラジカル重合性不飽和結合を有する単量体(e)を用いることができ、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレ
ングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、グリセロールアリロキシジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタントリ(メタ)アクリレート等、が挙げられる。
【0016】
ラジカル重合性不飽和単量体(f):その他のラジカル重合性不飽和単量体(c)として、式(2)で表されるラジカル重合性不飽和単量体(f)を用いることができ、例えば、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−i−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−i−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等、が挙げられる。その他のラジカル重合性不飽和単量体(c)は、適宜に、単独もしくは2種以上組み合わせ使用することができる。
これらの単量体の配合割合としては、樹脂成分(A)を構成するラジカル重合性不飽和単量体の合計に対して、窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a)は0.1〜30重量%、好ましくは3〜15重量%である。またカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(b)は1〜20重量%、その他のラジカル重合性不飽和単量体(c)は50〜98.9重量%が好ましい。
窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a)が0.1重量%未満では十分な硬化性が得られず、30重量%を越えると耐薬品性が低下する。カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(b)が1重量%未満では塗料安定性が劣り、20重量%を越えると塗料安定性や耐薬品性が低下する。
【0017】
また、樹脂成分(A)を構成するラジカル重合性不飽和単量体の合計に対して、アルコキシシリル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(d)を0.1〜20重量%及び/又は1分子中に2個以上ラジカル重合性不飽和基を有する単量体(e)を0.1〜20重量%の範囲内で配合することにより、塗膜の光沢を適宜に調整することができる。さらに式(2)で表されるラジカル重合性不飽和単量体(f)を1〜15重量%の範囲内で配合することにより、塗膜性能が更に向上する。
式(2)
【0018】
【化2】

【0019】
(式(2)中、Rは水素原子又はCHを表し、Rは水素原子又は炭素数1〜6個のアルキル基を表す)
【0020】
上記の単量体(a)と単量体(b)と単量体(c)、必要に応じて単量体(d)、単量
体(e)、単量体(f)を加えたラジカル重合反応は、窒素等の不活性ガスの存在下で約50℃〜約300℃好ましくは約60℃〜250℃に保持された有機溶剤中で、ラジカル重合性不飽和単量体を約1時間〜約24時間、好ましくは約2時間〜約10時間ラジカル重合反応させることによって各樹脂成分を得ることができる。
ラジカル重合反応に用いられる有機溶剤としては、例えば、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類、エチレングリコールモノブチルエーテル、メチルカルビトール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングルコールモノメチルエーテル、エチレングルコールモノエチルエーテル、エチレングルコールモノブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類などが好適に使用できる。
また、これ以外にも必要に応じて、例えば、キシレン、トルエンなどの芳香族類、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ペンチル、3−メトキシブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル類も併用することができる。
ラジカル重合反応に用いる重合開始剤として、例えば、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウリルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0021】
得られた樹脂成分(A)の重量平均分子量(注1)は5,000〜100,000、特に20,000〜80,000の範囲が好ましく、酸価は5〜180mgKOH/gの範囲、水酸基価は3〜150mgKOH/gの範囲が適している。
(注1)重量平均分子量:JIS K 0124−83に準じて行ない、分離カラムにTSK GEL4000HXL+G3000HXL+G2500HXL+G2000HXL(東ソー(株)製)を用いて40℃で流速1.0ml/分、溶離液にGPC用テトラヒドロフランを用いて、RI屈折計で得られたクロマトグラムとポリスチレンの検量線から計算により求めた。
【0022】
水性塗料(II)
水性塗料(II)は、樹脂成分(B)と樹脂成分(B)であって、かつ樹脂成分(B)と樹脂成分(B)の溶解性パラメーター(注2)の差が0.5〜2.0の範囲である樹脂成分(B)と樹脂成分(B)、並びに樹脂成分(B)と樹脂成分(B)の固形分100重量部に対して、有機酸触媒(C)を0.01〜10重量部含有する水性塗料である。
樹脂成分(B):樹脂成分(B)は、式(1)で表される窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a)を0.1〜30重量%含有し、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(b)及び/又はその他のラジカル重合性不飽和単量体(c)を70〜99.9重量%の割合でラジカル重合反応することによって得られる。
式(1)
【0023】
【化3】

【0024】
(式(1)中、Rは水素原子又はCHを表し、Rは−C2nOHを表し、Rは水素原子又は炭素数1〜6個のアルキル基又は−C2mOHを表す。また、m、nは2〜6の整数を表す)
【0025】
樹脂成分(B):次に、樹脂成分(B)は、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(b)を1〜20重量%含有し、式(1)で表される窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a)及び/又はその他のラジカル重合性不飽和単量体(c)を80〜99重量%の割合でラジカル重合反応することによって得られた樹脂成分である。
(注2)溶解性パラメーター(SP値):溶解性パラメーター(SP値)とは、(solubility parameter)の略号で、液体分子の分子間相互作用の尺度を表わす。該SP値は、濁点滴定によって測定することができ、具体的には、下記の式(3)、K.W.SUH、J.M.CORBETTの式(Journal of Applied Polymer Science,12,2359,1968)に準じて算出することができる。
式(3)
【0026】
【数1】

【0027】
(式(3)中、Vはn−ヘキサンの容積分率、Vは脱イオン水の容積分率、δはn−ヘキサンのSP値、δは脱イオン水のSP値を示す)
濁点滴定では、サンプルとして樹脂0.5g(固形分)をアセトン10mlに溶解した中に、n−ヘキサンを徐々に加え、濁点での滴定量H(ml)を読み、同様にアセトン溶液中に脱イオン水を加えての濁点における滴定量D(ml)を読んで、これらを下記式に適用しV、V、δ、δを算出する。なお、各溶剤のSP値はアセトン:9.75、n−ヘキサン:7.24、脱イオン水:23.43である。
[V=H/(10+H)、V=D/(10+D)、δ=9.75×10/(10+H)+7.24×H/(10+H)、δ=9.75×10/(10+D)+23.43×D/(10+D)]
【0028】
樹脂成分(B)における窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a)は、樹脂成分(A)に使用したものと同様の単量体を使用することができる。
具体的には、例えば、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−(3−ヒ
ドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−(3−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、これらは単独もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0029】
また、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(b)及びその他のラジカル重合性不飽和単量体(c)についても、樹脂成分(A)に使用したものと同様の単量体を使用することができる。
上記の単量体の配合割合としては、樹脂成分(B)を構成するラジカル重合性不飽和単量体の合計に対して、窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a)を0.1〜30重量%、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(b)及び/又はその他のラジカル重合性不飽和単量体(c)を70〜99.9重量%の割合であることが硬化性や耐薬品性の面から好ましい。カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(b)を用いる場合は、5重量%以下であることが塗料安定性の面から好ましい。
樹脂成分(B)において、必須成分として含有するカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(b)は、樹脂成分(A)に使用したものと同様の単量体を使用することができる。具体的には、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸等の単量体が挙げられ、これらは単独もしくは2種以上組み合わせ使用することができる。
また、窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a)及びその他のラジカル重合性不飽和単量体(c)についても、樹脂成分(A)に使用したものと同様の単量体を使用することができる。
【0030】
上記の単量体の配合割合としては、樹脂成分(B)を構成するラジカル重合性不飽和単量体の合計に対して、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(b)を1〜20重量%、前記の式(1)で表される窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a)及び/又はその他のラジカル重合性不飽和単量体(c)を80〜99重量%の割合が耐薬品性や塗料安定性の面から好ましい。窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a)を用いる場合は、0.1〜30重量%の範囲が硬化性や耐薬品性の面から好ましい。
ここで、樹脂成分(B)及び樹脂成分(B)に使用する単量体は、樹脂成分(B)及び/又は樹脂成分(B)における特定の窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a)のアミド基とカルボキシル基の官能基比率が、アミド基/カルボキシル基=0.3〜1.5となるように単量体を選択することが、得られた塗膜の硬化性と耐薬品性の面から好ましい。
【0031】
水性塗料(II)は、樹脂成分(B)と樹脂成分(B)の溶解性パラメーター(SP値)の差を0.5〜2.0にすることで、塗膜の光沢を調整することができる。
さらに樹脂成分(B)及び樹脂成分(B)を構成するラジカル重合性不飽和単量体の総合計量に対して、アルコキシシリル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(d)を0.1〜20重量%及び/又は1分子中に2個以上ラジカル重合性不飽和基を有する単量体(e)を0.1〜20重量%の範囲で配合することにより、更に低光沢の塗膜を得ることができる。
上記に述べた樹脂成分(B)、樹脂成分(B)のラジカル重合反応は、上記の窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a)とカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(b)とその他のラジカル重合性不飽和単量体(c)を目的に応じて選択し、窒素等の不活性ガスの存在下で約50℃〜約300℃、好ましくは約60℃〜250℃に保持された有機溶剤中に、ラジカル重合性不飽和単量体を約1時間〜約24時間、好ましくは約2時間〜約10時間ラジカル重合反応させることによって、各樹脂成分を得ることができる。
【0032】
ラジカル重合反応に用いられる有機溶剤としては、樹脂成分(A)の合成に用いたものと同様の1種類以上を使用することができる。ラジカル重合反応に用いる重合開始剤として、樹脂成分(A)の合成に用いたものと同様の1種類以上を使用することができる。
このように得られた樹脂成分(B)の重量平均分子量(注1参照)は、500〜50,000、好ましくは2,000〜30,000の範囲、酸価は50mgKOH/g以下の範囲、水酸基価は3〜150mgKOH/gの範囲が適している。
また、樹脂成分(B)の重量平均分子量(注1参照)は、5,000〜100,000、好ましくは20,000〜80,000の範囲、酸価は5〜180mgKOH/gの範囲、水酸基価は3〜150mgKOH/gの範囲が適している。
水性塗料(II)における樹脂成分(B)と樹脂成分(B)の配合割合であるが、重量比率で、樹脂成分(B)/樹脂成分(B)=10/90〜90/10、好ましくは、20/80〜80/20の範囲が好ましい。
【0033】
有機酸触媒(C):
本発明の水性塗料(I)や水性塗料(II)に必須成分として使用する有機酸触媒(C)は、特定の窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a)のアミド基とカルボキシル基の縮合反応を促進することを目的としている。
有機酸触媒(C)としては、例えば、n−ブチルベンゼンスルホン酸、n−アミノベンゼンスルホン酸、n−オクチルスルホン酸、n−オクチルベンゼンスルホン酸、n−ドデシルベンゼンスルホン酸、n−オクタデシベルベンゼンスルホン酸、n−ジブチルベンゼンスルホン酸、イソプロピルナフタリンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、キュメンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸等が挙げられ、これらは単独もしくは2種以上組み合わせて使用できる。
この中でも、ジノニルナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸が硬化性の面から好ましい。また、有機酸触媒(C)の配合量としては、樹脂成分(樹脂成分(A)、又は樹脂成分(B)と樹脂成分(B))の固形分100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましい。
これらは1当量以上の塩基性化合物、例えば、アンモニア、ジエチルアミン、エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、エチルアミノエチルアミン、ヒドキシエチルアミン、ジエチレントリアミンなどの有機アミン、及びカセイソーダ、カセイカリなどのアルカリ金属水酸化物などで中和して使用する。
【0034】
多価アルコール(D):
さらに水性塗料(I)や水性塗料(II)には、低沸点で水性塗料中から揮散する揮発性有機化合物を用いる代わりに揮発性有機化合物の低減を目的として、多価アルコール(D)を配合することができる。
多価アルコール(D)は、2価のアルコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等;3価以上のアルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール等;脂環族多価アルコールとしては、1,4−シクロへキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール等が挙げられ、これらは単独もしくは2種以上組み合わせ使用することができる。
この中でも、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等が好ましい。多価アルコール(D)の配合量としては、樹脂固形分合計100重量部に対して、20重量部以下が好ましい。
【0035】
リン酸モノエステル及び一塩基酸で変性したエポキシ樹脂(E):
さらに水性塗料(I)や水性塗料(II)には、塗膜性能の向上を目的として、適宜に、リン酸モノエステル及び一塩基酸で変性したエポキシ樹脂(E)を配合することができる。
リン酸モノエステル及び一塩基酸とエポキシ樹脂との反応物であるリン酸モノエステル及び一塩基酸で変性したエポキシ樹脂(E)(以下、リン酸モノエステル及び一塩基酸で変性したエポキシ樹脂(E)を「変性エポキシ樹脂(E)」と称する。)
上記のリン酸モノエステルとしては、オルソリン酸モノメチルエステル、オルソリン酸モノエチルエステル、オルソリン酸モノプロピルエステル、オルソリン酸モノブチルエステル、オルソリン酸モノステアリルエステルなどのオルソリン酸のモノアルキルエステルが挙げられる。
上記の一塩基酸としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ヤシ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸などの脂肪酸及び安息香酸、p−ter−ブチル安息香酸などの芳香族酸が挙げられる。
上記のエポキシ樹脂としては、エポキシ当量100〜4,000であって1分子中に1個以上のエポキシ基を有するエピクロルヒドリンとビスフェノールとの縮合物で、例えば、商品名としてエピコート828、同左1001、同左1004、同左1007、同左1009(以上、ジャパンエポキシレジン社製)が挙げられる。
変性エポキシ樹脂(E)の製造は、例えば、エポキシ樹脂1モルに対してリン酸モノエステル0.5〜1.5モル、好ましくは0.8〜1.2モル、及び一塩基酸0.5〜1.5モル、好ましくは0.8〜1.2モルの割合で反応させて得られる。
変性エポキシ樹脂(E)の配合量としては、樹脂成分(A)又は樹脂成分(B)と樹脂成分(B)の固形分100重量部に対して0.01〜10重量部が塗膜性能の面から好ましい。
【0036】
アニオン電着塗料について
上記に述べた水性塗料(I)、又は水性塗料(II)の塗装方法としては、電着塗装、エアレススプレー、エアスプレー、静電塗装、刷毛、ロールコーター、カーテンフロー等によって塗装することができる。この中でも電着塗装、特にアニオン電着塗装によって塗膜が形成されることが好ましく、水性塗料がアニオン電着塗料として使用されることを前提に述べる。
以下、水性塗料(I)をアニオン電着塗料(I)、水性塗料(II)をアニオン電着塗料(II)と称する。
アニオン電着塗料(I)又はアニオン電着塗料(II)の製造は、アニオン電着塗料(I)においては樹脂成分(A)と有機酸触媒(C)を、アニオン電着塗料(II)においては樹脂成分(B)と樹脂成分(B)の2種類の樹脂と有機酸触媒(C)を配合した後、適宜に、多価アルコール(D)、変性エポキシ樹脂(E)、さらに必要に応じて、ブロックポリイソシアネート化合物やメラミン樹脂、顔料、染料、流動調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤を配合できる。
次に、樹脂成分のカルボキシル基に対し、中和当量として0.1〜1.5当量、好ましくは0.2〜1.2当量の中和剤、例えば、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノールなどの第1級モノアミン;ジ−n−またはジ−イソ−プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンなどの第2級モノアミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなどの
第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミンなどのポリアミントリエチルアミンなどを配合して混合分散し、次いでこのものに脱イオン水を固形分5〜60重量%、好ましくは10〜40重量%になるように徐々に加え、pHを7.0〜9.0になるように中和剤で調整して、固形分5〜20重量%となるように脱イオン水で調整し、アニオン電着塗料(I)、又はアニオン電着塗料(II)を得ることができる。
アニオン電着塗料(I)、又はアニオン電着塗料(II)を使用して塗膜を形成するには、上記で得られたアニオン電着塗料を浴槽の中に入れ、この中にアルミニウム材を浸漬した後、乾燥膜厚が約5〜30μmになるようにアニオン電着塗装を行い、水洗を行わず(ノンリンス)、又は水洗(リンス)を行い、次いで室温でセッテングした後、120〜200℃、好ましくは、160〜180℃で約20〜40分間、焼付け乾燥することにより塗膜を形成することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれによって限定されるものではない。尚、「部」及び「%」は「重量部」及び「重量%」を示す。
【0038】
アニオン電着塗料(I)について
製造例1 樹脂溶液No.1の製造例(アニオン電着塗料(I)に使用)
反応容器中にイソプロピルアルコール16.7部、プロピレングリコールモノメチルエーテル13.3部を仕込み80℃に保持した中へ以下の「混合物(1)」を4時間掛けて滴下し、次いでアゾビスジメチルバレロニトリル0.5部を添加し、80℃で3時間保持して反応を行い、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルで調整して、固形分60重量%の樹脂溶液No.1を製造した。樹脂溶液No.1は、酸価63mgKOH/g、水酸基価98mgKOH/g、重量平均分子量約35,000であった。
【0039】
「混合物(1)」
N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド 10部
アクリル酸 8部
スチレン 10部
メチルメタクリレート 30部
エチルアクリレート 10部
n−ブチルアクリレート 22部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 10部
アゾビスジメチルバレロニトリル 1.5部
【0040】
製造例2〜12 (アニオン電着塗料(I)の実施例に使用)
製造例1の「混合物(1)」に代えて、配合内容を表1の内容とする以外は、製造例1と同様にして、樹脂溶液No.2〜樹脂溶液No.12を得た。
【0041】
【表1】

【0042】
製造例13〜16 (アニオン電着塗料(I)の比較例に使用)
製造例1の「混合物(1)」に代えて、配合内容を表2の内容とする以外は、製造例1と同様にして、樹脂溶液No.13〜樹脂溶液No.16を得た。
【0043】
【表2】

【0044】
実施例1 アニオン電着塗料No.1の製造例
製造例1で作成した樹脂溶液No.1 1667部(固形分1000部)、ジノニルナフタレンスルホン酸 10部(10部)、トリエチルアミン0.4当量分を加えて混合分散した後、攪拌を行いながら脱イオン水を徐々に滴下し、更にpHが8.2になるようにトリエチルアミンを添加し、脱イオン水で調整して、固形分10%のアニオン電着塗料No.1を得た。
【0045】
実施例2〜14 アニオン電着塗料No.2〜No.14の製造例
実施例1と同様にして、表3のような配合で固形分10%のアニオン電着塗料No.2〜No.14を得た。
【0046】
【表3】

【0047】
(注3)変性エポキシ樹脂:ヤシ油脂肪酸/エピコート828(ジャパンエポキシレジン社製、商品名、エポキシ樹脂)/モノブチルリン酸=1/1/1モル比反応物
【0048】
比較例1〜6 アニオン電着塗料No.15〜No.20の製造例
実施例1と同様にして、表4のような配合で固形分10%のアニオン電着塗料No.15〜No.20を得た。
【0049】
【表4】

【0050】
(注4)ニカラックMX430:三和ケミカル株式会社製、商品名、ブトキシ化メラミン樹脂、固形分100%
(注5)デュラネート24A−90CX:旭化成工業株式会社製、商品名、ブロックポリイソシアネート、固形分80%
試験板の作成について
実施例、及び比較例で得られたアニオン電着塗料を浴として、2次電解処理(脱脂−エッチング−中和−陽極酸化処理−封孔)を施した被膜厚さ約10μmの陽極酸化アルミニウム材(シルバー:大きさは150×70×0.5mm)を浸漬し、乾燥膜厚が10μmになるように電着塗装を行い、水洗後、180℃−20分間焼き付けた。
試験結果について
アニオン電着塗料No.1〜No.14の実施例を表5に、アニオン電着塗料No.15〜No.20の比較例を表6に示す。なお塗膜性能は、下記の試験条件に従い試験に供した。
【0051】
【表5】

【0052】
【表6】

【0053】
(注7)ホルムアルデヒド放散量:
ホルムアルデヒドの放散量は下記の方法で測定した。
焼付け前の電着塗膜2gをかきとって密閉したガラス瓶に入れて150℃−30分焼付けし、冷却後、50℃に加熱してから脱イオン水10mlを入れてよく攪拌する。そこへジニトロフェニルヒドラジン塩酸酸性溶液5mlを加え、30分放置した後、クロロホルム5mlで抽出して、HPLC−8020(東ソー社製、商品名、液体クロマトグラフィー)で定量した。
◎は、塗膜(乾燥)1gあたりのホルマリン放散量が10μg未満
○は、塗膜(乾燥)1gあたりのホルマリン放散量が10μg以上、かつ20μg未満
△は、塗膜(乾燥)1gあたりのホルマリン放散量が20μg以上、かつ500μg未満
×は、塗膜(乾燥)1gあたりのホルマリン放散量が500μg以上
(注8)揮発性有機化合物の放散量:
揮発性有機化合物の放散量は下記の方法で測定した。
焼付け前の電着塗膜2gをかきとって密閉したガラス瓶に入れて150℃−30分焼付けし、冷却後、脱イオン水10mlを入れてよく攪拌する。30分放置した後、GC−15A(島津製作所製、商品名、ガスクロマトグラフィー)で定量した。
◎は、抽出液中の揮発性有機化合物が0.5%未満
○は、抽出液中の揮発性有機化合物が0.5%以上、かつ1.0%未満
△は、抽出液中の揮発性有機化合物が1.0%以上、かつ3.0%未満
×は、抽出液中の揮発性有機化合物が3.0%以上
(注9)ゲル分率:
ゲル分率は下記の方法で測定した。
電着塗装し、水洗後、180℃−20分焼付けした試験板をセパレート型の丸底フラスコに入れ、硬化塗膜1gに対してアセトン100gを加え5時間還流する。次に105℃−1時間で乾燥後、還流前後の塗膜重量を測定し、下記式に適用して算出した。
ゲル分率(%)=還流後の塗膜重量/還流前の塗膜重量×100
(注10)耐薬品性(耐アルカリ性):
耐薬品性(耐アルカリ性)は下記の方法で測定した。
20℃、0.5%水酸化ナトリウム水溶液に100時間浸漬したのちの塗面の異常の有無を調べた。
◎は、異常なし
○は、若干劣るが実用上問題なく良好
△は、異常あり
×は、著しく異常が認められる
(注11)塗料安定性:塗料を試験管(高さ20cm、容量20ml)に充填し、20℃で7日間静置した後、容器の底に沈殿した残さの高さを調べた。
○は、残さが0.5mm未満
△は、残さが0.5mm以上10mm未満
×は、残さが10mm以上
(注12)60度鏡面光沢度:
塗膜の光沢の程度を、JIS K−5400 7.6(1990)の60度鏡面光沢度に従い、入射角と受光角とがそれぞれ60度のときの反射率を測定して、鏡面光沢度の基準面の光沢度を100としたときの百分率で表した
【0054】
アニオン電着塗料(II)について
製造例17 樹脂成分(B)の製造例(アニオン電着塗料(II)用)
反応容器中にイソプロピルアルコール16.7部、プロピレングリコールモノメチルエーテル13.3部を仕込み80℃に保持した中へ以下の「混合物(2)」を4時間掛けて滴下し、次いでアゾビスジメチルバレロニトリル0.5部を添加し、80℃で3時間保持して反応を行い、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルで調整して、固形分60重量%の樹脂溶液No.17を製造した。樹脂溶液No.17は、水酸基価57mgKOH/g、重量平均分子量約12,000、SP値は9.18であった。
【0055】
「混合物(2)」
スチレン 10部
メチルメタクリレート 38部
エチルアクリレート 10部
n−ブチルアクリレート 30部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 12部
アゾビスジメチルバレロニトリル 8部
【0056】
製造例18〜26 樹脂成分(B)の製造例(アニオン電着塗料(II)用)
製造例17の「混合物(2)」に代えて、配合内容を表7の内容とする以外は、製造例17と同様にして、樹脂溶液No.18〜樹脂溶液No.26を得た。
【0057】
【表7】

【0058】
(注13)KBM−503:信越化学工業社製、商品名、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
【0059】
製造例27 樹脂成分(B)の製造例(アニオン電着塗料(II)用)
反応容器中にイソプロピルアルコール16.7部、プロピレングリコールモノメチルエーテル13.3部を仕込み80℃に保持した中へ以下の「混合物(3)」を4時間掛けて滴下し、次いでアゾビスジメチルバレロニトリル0.5部を添加し、80℃で3時間保持して反応を行い、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルで調整して、固形分60重量%の樹脂溶液No.27を製造した。樹脂溶液No.27は、重量平均分子量約35000、酸価5mgKOH/g、水酸基価76mgKOH/g、SP値10.48であった。
【0060】
「混合物(3)」
アクリル酸 0.5部
スチレン 13部
メチルメタクリレート 48.5部
エチルアクリレート 5部
n−ブチルアクリレート 17部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 16部
アゾビスジメチルバレロニトリル 1.5部
【0061】
製造例28〜35 樹脂成分(B)の製造例
製造例17の「混合物(3)」に代えて、配合内容を表8の内容とする以外は、製造例27と同様にして、表8の配合内容にて、樹脂溶液No.28〜樹脂溶液No.35を得た。
【0062】
【表8】

【0063】
実施例15 アニオン電着塗料No.21の製造例
樹脂溶液No.18 667部(固形分400部)、樹脂溶液No.29 1000部(固形分600部)、ジノニルナフタレンスルホン酸 10部(固形分10部)、トリエチルアミン0.4当量分を加えて混合分散した後、攪拌を行いながら脱イオン水を徐々に滴下し、更にpHが8.2になるようにトリエチルアミンを添加し、脱イオン水で調整して、固形分10%のアニオン電着塗料No.21を得た。
実施例16〜25 アニオン電着塗料No.22〜No.31の製造例
実施例15と同様にして、表7のような配合で、固形分10%のアニオン電着塗料No.22〜No.31を得た。
【0064】
【表9】

【0065】
比較例7 アニオン電着塗料No.32の製造例
樹脂溶液No.18 667部(固形分400部)、樹脂溶液No.28 1000部(固形分600部)、ジノニルナフタレンスルホン酸 10部(10部)、トリエチルアミン0.4当量分を加えて混合分散した後、攪拌を行いながら脱イオン水を徐々に滴下し、更にpHが8.2になるようにトリエチルアミンを添加し、脱イオン水で調整して、固形分10%のアニオン電着塗料No.32を得た。
【0066】
比較例8〜15 アニオン電着塗料No.33〜No.40の製造例
比較例7と同様の操作により、表10の内容で、比較例8〜15のアニオン電着塗料No.33〜No.40を得た。
【0067】
【表10】

【0068】
表11に実施例のアニオン電着塗料No.21〜No.31を、表12に比較例のアニオン電着塗料No.32〜No.40を示す。なお塗膜性能は、前記の試験条件に従い試験に供した。
【0069】
【表11】

【0070】
【表12】

【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、焼付け時に塗膜からのホルムアルデヒドやブロック剤(揮発性有機化合物)の発生を低減した水性塗料による塗装物品を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成する単量体の合計量を基準にして、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N,N−ジ−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド及びN−エチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドから選択される少なくとも1種の窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a) 0.1〜30重量%と、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(b)及び/又はその他のラジカル重合性不飽和単量体(c) 70〜99.9重量%との混合物をラジカル重合反応することによって得られる樹脂成分(B)、ならびに構成する単量体の合計量を基準にして、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(b) 1〜20重量%と、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N,N−ジ−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド及びN−エチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドから選択される少なくとも1種の窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a)及び/又はその他のラジカル重合性不飽和単量体(c) 80〜99重量%との混合物をラジカル重合反応することによって得られる樹脂成分(B)であって、樹脂成分(B)と樹脂成分(B)の溶解性パラメーター(SP値)の差が0.5〜2.0の範囲内にある樹脂成分(B)と樹脂成分(B)、ならびに樹脂成分(B)と樹脂成分(B)の固形分100重量部に対して、ジノニルナフタレンスルホン酸及びメタンスルホン酸から選択される少なくとも1種の有機酸触媒(C)を0.01〜10重量部含有する水性塗料。
【請求項2】
その他のラジカル重合性不飽和単量体(c)がアルコキシシリル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(d)を含有する請求項1に記載の水性塗料。
【請求項3】
その他のラジカル重合性不飽和単量体(c)が1分子中に2個以上のラジカル重合性不飽和基を有する単量体(e)を含有する請求項1又は2に記載の水性塗料。
【請求項4】
その他のラジカル重合性不飽和単量体(c)が下記の式(2)
【化1】

[式中、Rは水素原子又はCHを表し、Rは水素原子又は炭素数1〜6個のアルキル基を表す]
で表されるラジカル重合性不飽和単量体(f)を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性塗料。
【請求項5】
水性塗料がアニオン電着塗料である請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性塗料。
【請求項6】
陽極酸化処理したアルミニウムに請求項1〜5のいずれか1項に記載の水性塗料を塗装してなる塗装物品。

【公開番号】特開2010−215915(P2010−215915A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111037(P2010−111037)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【分割の表示】特願2004−342012(P2004−342012)の分割
【原出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】