説明

水性塗料用の濡れ性向上剤

【課題】水性塗料に含有されその水系成分との相溶性が良く、その水性塗料を塗装する際に基材への優れた濡れ性を示しハジキを防止し、その水性塗料で形成した塗装膜のレベリング性や鮮映性や仕上がり外観を優れたものとし、その塗装膜に上塗り塗装する際に上塗り塗料への優れた濡れ性を示し高い上塗り付着性を付与する濡れ性向上剤を提供する。
【解決手段】水性塗料用の濡れ性向上剤は、下記化学式(1)
CH=C(R)−COO−(C2mO)−R ・・・(1)
で表されるエーテル基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマー(A)の5〜80重量部と、下記化学式(2)
CH=C(R)−COO−R ・・・(2)
で表されるアルキル(メタ)アクリレートモノマー(B)の20〜95重量部との共重合体を含有しており、該共重合体の重量平均分子量を3000〜500000としその曇点を30〜85℃とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性塗料に含有されるものであり、その塗料の塗装時における塗料と基材との濡れ性、及びその塗料で形成した塗装膜と上塗り塗料との濡れ性を向上させる水性塗料用の濡れ性向上剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の金属車体、プレコート用メタル材、携帯電話やパーソナルコンピューターのような家電製品のプラスチックハウジング、建材等の様々な基材に、その美観を向上させつつ表面を保護するため、油性塗料又は水性塗料で塗装処理が施される。
【0003】
油性塗料は揮発性で引火性の有機溶剤を主溶剤とするのに対して、水性塗料は安全で安価な水を主溶剤とする。作業者に対する安全性、環境に対する保全性、成分簡素化や作業工程の短縮などによる経済性の観点から、水性塗料の需要が、増加している。特に、工業用材料の塗装、自動車車体の塗装などの塗装ラインに用いられる熱硬化型塗料は、油性塗料から水性塗料へ急速に、変更されつつある。
【0004】
しかし、水性塗料は、その主溶媒である水により、水特有の物性に起因した様々な問題点を有する。例えば、水性塗料を塗装する際、水の表面張力が高く、水性塗料と基材との濡れ性が欠如し、基材へ塗れなかったり、ハジキを生じさせたりするという問題がある。また、水性塗料で形成された塗装膜の表面に、水性塗料の表面張力の不均一化による凹みのような凹凸を生じさせる問題もある。これらの問題を改善するために、消泡剤、ワキ防止剤、濡れ剤、レベリング剤等の各性能を付与する表面調整剤が水性塗料に含有される。
【0005】
例えば、特許文献1にアセチレンジオール系消泡剤およびシリコーン系濡れ性向上剤を含む水性塗料組成物が開示されている。これは、HVLP(ハイ ボリューム ロープレッシャ)エアースプレーガンで塗料を霧化して塗装でき、タレ性に優れ、外観の良好な塗膜を得ることができる高粘度の水性塗料組成物である。
【0006】
一般的に、ポリジメチルシロキサンをポリエーテル変性させたシリコーン系表面調整剤を含有する水性塗料は、シリコーン構造に起因してその塗料の表面張力を低下させ、優れた濡れ性を示す。その塗料を塗装して形成した塗装膜は、その表面に優れたレベリング性を示す一方で、低い表面張力により上塗り塗料の付着性が不十分なものとなる。また、水性塗料中の水系溶媒との相溶性が悪いと、過度のシリコーン分子が凝集し、ハジキやブツが生じてしまう。
【0007】
アルキルフェノール又はアルコールエトキシラート、及びエチレンオキシド(EO)/プロピレンオキシド(PO)共重合体のような低分子ノニオン界面活性剤やジアルキルスルホコハク酸ナトリウムのような低分子アニオン界面活性剤を用いた表面調整剤を含有する水性塗料は、低い表面張力を示さないため、基材への濡れ性が不十分である。また、これらの表面調整剤は、泡立ちが起こりやすいため、塗装膜の泡痕、ワキの問題発生の原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−113350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、水性塗料に含有されその水系成分との相溶性が良く、その水性塗料を塗装する際に塗料と基材との優れた濡れ性を示しハジキを防止し、その水性塗料で形成した塗装膜のレベリング性や鮮映性や仕上がり外観を優れたものとし、その塗装膜に上塗り塗装する際に塗装膜と上塗り塗料との優れた濡れ性を示し高い上塗り付着性を付与する濡れ性向上剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された水性塗料用の濡れ性向上剤は、下記化学式(1)
CH=C(R)−COO−(C2mO)−R ・・・(1)
(化学式(1)中、Rは水素原子又はメチル基、−Rは水素原子又は炭素原子数1〜22のアルキル基、mは2〜4の数、nは2〜100の数)で表されるエーテル基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマー(A)の5〜80重量部と、下記化学式(2)
CH=C(R)−COO−R ・・・(2)
(化学式(2)中、Rは水素原子又はメチル基、−Rは炭素原子数1〜22のアルキル基)で表されるアルキル(メタ)アクリレートモノマー(B)の20〜95重量部との共重合体を含有しており、該共重合体の重量平均分子量を3000〜500000としその曇点を30〜85℃とすることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の濡れ性向上剤は、請求項1に記載されたものであって、該共重合体が、該モノマー(A)及び該モノマー(B)と、下記化学式(3)
CH=CH−O−R ・・・(3)
(化学式(3)中、−Rは炭素原子数2〜22のアルキル基)で表されるビニルエーテルモノマー(C)との100:1〜45の重量比の共重合体であることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の濡れ性向上剤は、請求項1又は2に記載されたものであって、該共重合体が、該モノマー(A)、該モノマー(B)及び該モノマー(C)と、共重合性不飽和モノマー(D)との100:1〜40の重量比の共重合体であることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載された濡れ性向上剤は、請求項1に記載されたものであって、該共重合体が、該モノマー(A)及び該モノマー(B)と、該共重合性不飽和モノマー(D)との100:1〜40の重量比の共重合体であることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載された濡れ性向上剤は、請求項1〜4の何れかに記載されたものであって、該共重合体が、その溶解性パラメーターを8.0〜15.0とすることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載された水性湿潤塗料は、請求項1〜5の何れかに記載の濡れ性向上剤と、水性塗料成分と、水とを含有し、被塗装基材全面を湿潤させて塗装するものである。
【0016】
請求項7に記載された塗装膜は、請求項6に記載の水性湿潤塗料が、基材に塗装されて硬化して形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載された塗装物は、請求項7に記載の塗装膜に、上塗り塗料がその全面を湿潤させて塗装されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の濡れ性向上剤は、水性塗料の水系成分、特に水系溶剤との相溶性に優れており、水性塗料に含有させたときに、粒状のまま残存することなく、均質に溶解又は分散し、長期間均一状態のまま維持することができる。
【0019】
この濡れ性向上剤を含有させた水性湿潤塗料は、その水性湿潤塗料を塗装する際に、疎水性基材であっても、その基材への濡れ性を向上させることができ、ハジキを防止し塗料を平滑に塗ることができるため、レベリング性の優れた塗装膜を得ることができる。
【0020】
また、この塗装膜に上塗り塗料を塗装する際に、塗装膜の表面張力が高く維持されているため、上塗り塗料との濡れ性を向上させることができ、塗装膜と上塗り塗料との密着性・付着性が優れた塗装物を得ることができる。
【0021】
このように水性湿潤塗料は、濡れ性向上剤によりその塗料自体の表面張力が低下されており、その塗料を硬化後の塗装膜は、濡れ性向上剤により表面張力が大きいまま維持されていることから、両者のバランスがとれているものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための好ましい形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0023】
本発明の水性塗料用の濡れ性向上剤は、下記化学式(1)
CH=C(R)−COO−(C2mO)−R2 ・・・(1)
(化学式(1)中、Rは水素原子又はメチル基、−R2は水素原子又は炭素原子数1〜22のアルキル基、mは2〜4の整数、nは2〜100の整数。それらの混合物であってもよい。)で表されるエーテル基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマー(A)の5〜80重量部と、下記化学式(2)
CH=C(R)−COO−R ・・・(2)
で表されるアルキル(メタ)アクリレートモノマー(B)の20〜95重量部との共重合体、及び希釈溶媒を含有するものである。共重合体は、重量平均分子量を3000〜500000とするものであり、ISO1065−1975(E)の「エチレンオキシド系非イオン界面活性剤−曇り点測定法」の中の「測定法B」に準拠して測定した曇点が30〜85℃とするものである。
【0024】
このような重合体である濡れ性向上剤は、シリコーン系表面調整剤のような著しく表面張力を低下させるものではなく、濡れ性を示すのに十分な程度に表面張力を低下させるものである。優れた濡れ性により、ハジキを防止しレベリング性を奏する。この濡れ性向上剤は、水性湿潤塗料、特に熱硬化型水性塗料に添加されて、優れた濡れ性により塗装時においてその塗料を平滑にし、それを硬化して形成された塗装膜の表面を平滑する、レベリング効果を発揮する。
【0025】
本発明の水性湿潤塗料は、この濡れ性向上剤と、水性樹脂のようなバインダ、溶媒、必要に応じて顔料やその他の添加剤のような水性塗料成分と、水とを、含有している水性塗料である。この水性塗料は、濡れ性を示すのに十分な程度に表面張力が低下され、さらにその表面張力が均一であり、表面張力の局部的なバラつきによる塗装膜表面の粗さを抑え、優れたレベリング性を示す。
【0026】
本発明の塗装膜は、水性塗料が、基材に塗装されて加熱により、硬化し焼き付けられて形成されたものである。
【0027】
本発明の塗装物は、塗装膜と、その塗装膜上に塗装された上塗り塗料を硬化して形成した上塗り塗装膜とが、密着して付着し積層したものである。
【0028】
濡れ性向上剤中の共重合体として、モノマー(A)とモノマー(B)との共重合体の例を示したが、モノマー(A)及びモノマー(B)と、化学式(3)
CH=CH−O−R・・・・(3)
で表されるビニルエーテルモノマー(C)、及び/又はモノマー(A)〜(C)以外の不飽和モノマー(D)との共重合体であってもよい。
【0029】
より具体的には、モノマー(A)は、前記化学式(1)で表されるもので、炭素数2〜4のオキシアルキレン基を繰返し単位としその繰返し数2〜100とするポリ−オキシアルキレン(メタ)アクリレートである。オキシアルキレン基の炭素数は、2又は3であると好ましく、2であると更に好ましい。また、その繰返し数は、3〜50の数であると好ましい。繰返し数が2より小さいと曇点が30℃よりも低くなり、一方、繰返し数が100より大きいと曇点が85℃より高くなり、それぞれ濡れ性を向上させる機能を示すことができない。
【0030】
モノマー(A)は、例えば、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール(エチレングリコールの重合数2〜100のもの)エステル、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの重合数2〜100のもの)エステル、(メタ)アクリル酸ポリ(エチレン−プロピレン)グリコール(エチレングリコール−プロピレングリコールの重合数2〜100のもの)エステル、(メタ)アクリル酸ポリ(エチレン−テトラメチレン)グリコール(エチレングリコール−テトラメチレングリコールの重合数2〜100のもの)エステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール(エチレングリコールの重合数2〜100のもの)エステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの重合数2〜100のもの)エステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリ(エチレン−プロピレン)グリコール(エチレングリコール−プロピレングリコールの重合数2〜100のもの)エステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリ(エチレン−テトラメチレン)グリコール(エチレングリコール−テトラメチレングリコールの重合数2〜100のもの)エステル、(メタ)アクリル酸ブトキシポリ(エチレン−プロピレン)グリコール(エチレングリコール−プロピレングリコールの重合数2〜100のもの)エステル、(メタ)アクリル酸オクトキシポリ(エチレン−プロピレン)グリコール(エチレングリコール−プロピレングリコールの重合数2〜100のもの)エステル、(メタ)アクリル酸ラウロキシポリエチレングリコール(エチレングリコールの重合数2〜100のもの)エステル、(メタ)アクリル酸ステアロキシポリエチレングリコール(エチレングリコールの重合数2〜100のもの)エステル、(メタ)アクリル酸フェノキシポリエチレングリコール(エチレングリコールの重合数2〜100のもの)エステル等のようなエーテル基含有アルキル(メタ)アクリレート類が挙げられる。モノマー(A)は、これらを単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。また、モノマー(A)は、5〜80重量部用いられることが好ましい。
【0031】
モノマー(B)は、前記化学式(2)で表されるもので、炭素数1〜22で直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートである。モノマー(B)は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−,iso−、又はtert−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソヘキシル(メタ)アクリレート、イソヘプチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソウンデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、tert−アミル(メタ)アクリレート、sec−アミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートのようなアルキル(メタ)アクリレート類が挙げられる。モノマー(B)は、これらを単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。また、モノマー(B)は、20〜95重量部用いられていることが好ましい。
【0032】
モノマー(C)は、炭素数1〜22で直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基を有するアルキルビニルエーテルである。モノマー(C)は、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−,iso−、又はtert−ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ノニルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、ウンデシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ヘキサビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルのようなアルキルビニルエーテル類が挙げられる。モノマー(C)は、これらを単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。共重合体中、モノマー(A)及びモノマー(B)の合計と、モノマー(C)とが、重量比で100:1〜45であることが好ましく、100:5〜40であると一層好ましい。
【0033】
モノマー(D)は、モノマー(A)〜(C)以外の共重合性不飽和モノマーであれば、特に限定されない。このモノマー(D)は、例えば、アクリル酸又はメタクリル酸である(メタ)アクリル酸類;(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、アクリル酸ベンジルエステル、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシアルキルアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチルエステルのような(メタ)アクリル酸アラルキルエステル類;アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクロイルモルフォリンのような(メタ)アクリルアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンのような芳香族炭化水素系ビニル化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル類;ジアリルフタレートのようなアリル化合物類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、フルオロオレフィンマレイミドのような脂肪族炭化水素系ビニル化合物が挙げられる。モノマー(D)は、これらを単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。共重合体中、モノマー(A)及びモノマー(B)及び共存するならモノマー(C)の合計と、モノマー(D)とが、重量比で100:1〜40であることが好ましい。
【0034】
このような重量比で含有された共重合体を含有した濡れ性向上剤は、優れた湿潤性能である濡れ性及びレベリング性の効果を奏する。
【0035】
この共重合体の重量平均分子量は、3000〜500000であることが好ましい。重量平均分子量が、3000未満の場合、塗装膜の強度などの物性が低下してしまい、500000を超える場合、塗装膜表面にハジキ、濁りなどを生じて外観を損なってしまう。重量平均分子量は、3000〜300000であると、一層好ましい。重量平均分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフ法によりポリスチレン換算して、求められるものである。
【0036】
これらのモノマーを用いて共重合体を合成する方法として、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法が挙げられる。その共重合を行うための開始剤として、通常使用されるアゾ重合開始剤や、過酸化物が、挙げられる。共重合体の合成方法によって、濡れ性向上剤の効能や機能は影響されないから、その合成方法は、特に制限されない。
【0037】
この共重合体を合成する具体的な方法は、共重合成分である各モノマーを、ラジカル重合開始剤存在下、溶媒中に滴下して加熱することにより、ランダム共重合させて生成させるというものである。別な方法は、共重合成分である各モノマーを、ブロック共重合開始剤存在下、別々に順次、溶媒中に滴下して加熱することにより、ブロック共重合させて生成させるというものである。共重合体は、濡れ性及びレベリング性の効果を阻害しない限りは、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合のような如何なる形態を取ってもよい。
【0038】
共重合体を合成するのに用いられるラジカル重合開始剤は、一般的にラジカル重合に用いられる開始剤であれば、特に限定されないが、例えば、過酸化物、アゾ化合物等を使用することができ、より具体的には、パーブチルD(日油(株)の商品名)、パーブチルO(日油(株)の商品名)、パーオクタO(日油(株)の商品名)が挙げられる。また、ブロック共重合開始剤は、例えば、2段分解型2官能開始剤が挙げられ、より具体的には、1,1−ビス−(tert−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサンが挙げられる。
【0039】
濡れ性向上剤は、この共重合体のみからなっていてもよいが、共重合体20〜70重量部と、希釈溶媒30〜80重量部とが、含有されていることが好ましい。
【0040】
濡れ性向上剤中の希釈溶剤は、一般的に用いられる有機溶剤であれば、特に限定されないが、例えば、シクロヘキサンのような炭化水素系溶剤;シクロヘキサノン、アセトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン系溶剤;メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテルのようなエーテル系溶剤;酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテートのようなエステル系溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、シクロヘキサノール、2−エチルヘキサノール、3−メチル−3−メトキシブタノールのようなアルコール系溶剤が挙げられる。これらの溶剤は、単独で使用されてもよく、混合して使用されてもよく、さらに水と混合して使用されてもよい。
【0041】
共重合体は、曇点を30〜85℃とするものである。曇点が85℃を越えても、また30℃を下廻っても親水性/疎水性のバランスが崩れてしまう結果、濡れ性向上剤が、十分な濡れ性及びレベリング性の効果を奏しなくなってしまう。共重合体の曇点は、30〜80℃であると一層好ましい。
【0042】
曇点が30〜85℃に範囲となる共重合体の条件は、共重合体のモノマー(A)が炭素数2のオキシアルキレン、その繰返し数が3〜50のモノマーであり、共重合体の中に5重量部以上含有している必要がある。また、曇点は、共重合体のモノマー(A)の繰返し数により調整することが可能である。繰返し数が少ないと曇点が低い値になり、繰返し数を増やすと曇点が高くなる。
【0043】
その曇点とは、非イオン系界面活性剤でもあるこの共重合体の親水性の尺度となるものである。曇点の高い共重合体ほど、親水性が大きいことを示している。このような曇点の測定法は、ISO1065−1975(E)の「エチレンオキシド系非イオン界面活性剤−曇り点測定法」の中の「測定法B」に準拠して、以下のようにして行われる。先ず25質量%のブチルジグリコール(ブタノール/エチレンオキシド(EO)2モル付加物)水溶液に、試料を10質量%濃度になるように溶解する。次いでこの試料溶液約5ccを試験管に採り、試験管中に温度計を入れて攪拌しながら徐々に加熱すると終には試料溶液が白濁する。試料溶液が完全に白濁する温度を読みとり、これを曇点とする。なお、曇点の測定においてブチルジグリコールの濃度は、0〜50重量%の範囲で変更して、測定することが可能である。
【0044】
曇点がこの範囲内にある共重合体を含有する濡れ性向上剤が優れた濡れ性、レベリング性作用を奏するメカニズムの詳細は、必ずしも明らかでないが、以下の通りである。
【0045】
濡れ性向上剤が含まれた熱硬化型の水性塗料を基材に塗布し、塗布層を形成する。すると、濡れ性向上剤中の共重合体のエーテル結合基のような親水性基に、共存する水分子が水素結合により相互作用している結果、共重合体が、水に溶解しつつ、塗布層内で均質に分散する。塗布層を乾燥し、焼付けする際、加熱と共に、共重合体と相互作用している水分子が、共重合体の曇点である30〜85℃で共重合体から脱離し、共重合体の結晶性が、向上する。その結果、共重合体は、親水性の性質から、むしろ疎水性の性質が強くなり、塗布層内でブリードする。ブリードした共重合体は、水性塗料の表面張力を適度に低下させ、塗装膜表面での表面張力不均一化を抑制させる。そのことにより、濡れ性や塗装膜表面へのレベリング性等の表面調整効果を発現するものであると考えられる。
【0046】
このような共重合体の極性を表現する方法の一つとして、溶解性パラメーター(SP値)が用いられる。SP値は、分子構造から推算でき、様々な計算手法が知られている。その中で、Fedorsの理論SP値は、共重合体の密度パラメーターが不要なため、比較的簡単に求められることから、しばしば用いられているものである。Fedorsの理論SP値は、下記数式(1)から求められる。
【0047】
【数1】

【0048】
(数式(1)中Δe、Δvは、それぞれの原子又は原子団の蒸発エネルギー及びモル体積を表す。)
【0049】
SP値は、数値が高い程、極性が高いことを示している。この濡れ性向上剤中の共重合体のSP値は、8.0〜15.0であることが好ましい。そのSP値が8.0未満であると、共重合体の極性が低すぎて水性塗料中で共重合体が十分に溶解できず、均質な水性塗料の調製が困難となったり、たとえ均質に水性塗料が調製できたとしても、共重合体の溶解性が悪過ぎるために塗装膜の表面に共重合体の凝集塊が露出して凹凸を生じ外観を損ねたりする。一方、SP値が15.0を超える共重合体を用いて形成された塗装膜は、共重合体の極性が高すぎて水性塗料との相溶性が良過ぎることで、塗装膜表面に共重合体が配向しない結果、十分な表面調整効果を得ることができなくなってしまう。SP値は、8.5〜14.0であると一層好ましい。
【0050】
この濡れ性向上剤を含有させる水性塗料は、濡れ性向上剤の0.01〜10.0重量部、アクリル樹脂、アルキド樹脂のような被膜形成樹脂成分の0.3〜10.0重量部、必要に応じてエタノール、ブチルセロソルブ、水のような溶媒が含まれたものである。カーボンブラック、べんがら(酸化第二鉄)、酸化チタンなどで例示される無機顔料、アゾ系、フタロシアニン系、キナクドリン系などで例示される有機顔料、アルミニウム、マイカで例示される光輝性顔料のような顔料が含まれていてもよい。水性塗料は、これらの成分を配合して、混練して調製したものである。
【0051】
水性塗料に含有される樹脂は、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、アルキッド系、エポキシ系、アミノ系樹脂のようなものが挙げられる。この樹脂は、例えば、加熱硬化型、紫外線硬化型、電子線硬化型、酸化硬化型、光カチオン硬化型、過酸化物硬化型、及び酸/エポキシ硬化型のように、触媒存在下、又は触媒非存在下で化学反応を伴って硬化するものであってもよく、ガラス転移点が高い樹脂で、化学反応が伴わず、溶剤もしくは水が揮発するだけで被膜となるものであってもよい。
【0052】
中でも、熱硬化型水性塗料に含有される水性樹脂として、アクリル樹脂、ビニル樹脂、オイルフリーアルキド樹脂、油変成アルキド樹脂、フェノール樹脂又はエポキシ樹脂などが挙げられる。また、この様な水性樹脂の架橋剤として用いられる水溶性アミノ樹脂としては、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−メチロールメラミン及びそれらのメチルエーテル化物、尿素−ホルムアルデヒド縮合物、尿素−メラミン共縮合物が挙げられる。
【0053】
水性塗料中、濡れ性向上剤は、水や有機溶媒で予め適当な濃度に希釈した溶液の状態で添加しても、またそのままで添加してもよい。その添加量は、水性塗料、例えば熱硬化型水性塗料に対し、0.3〜10.0質量%であり、好ましくは0.5〜5.0質量%である。
【0054】
熱硬化型水性塗料への濡れ性向上剤の添加方法としては、水性樹脂の合成時に添加する方法であってもよく、顔料分散時に添加する方法であってもよく、塗料調製の最後に添加する方法であってもよく、何れの添加方法であっても表面調整効果の発現に影響はない。
【0055】
水性塗料は一般的に塗装に適する粘度に水又は溶剤で希釈して使用する。またこの水性塗料には、必要に応じて通常使用されている、顔料、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤などの塗料用添加剤を適量含有させてもよい。
【0056】
水性塗料は、金属、セラミックス、プラスチック、ガラス、陶器、木材、紙、布帛、不織布などでできた基材上に、塗布又は噴霧されて塗装される。
【0057】
水性塗料の塗装方法は、例えば、スピンコート、スリットコート、スプレーコート、ディップコート、バーコート、ドクターブレード、ロールコート、フローコートが挙げられる。
【0058】
なお、これらの水性塗料を硬化して形成した塗装膜上に、紫外線防止やカビ防止等の機能性付加や色付け等の美観向上のために、上塗り塗料が塗装されていてもよい。その上塗り塗料は特に限定されない。また、上塗り塗料の塗装方法は、水性塗料の塗装方法と同じ方法を用いることができる。
【実施例】
【0059】
以下に、本発明を適用する濡れ性向上剤を調製した例を製造例1〜7に示し、本発明を適用外の濡れ性向上剤を調製した例を比較例1〜7に示す。
【0060】
(製造例1)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び滴下槽を備えた容器に3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールであるソルフィット((株)クラレ製の商品名)100重量部を入れて、液温を110℃に保温した。窒素雰囲気下で、2−エチルヘキシルアクリレート50重量部、メトキシポリエチレングリコール9モル付加物モノメタクリレートであるライトエステル130MA(共栄社化学(株)製の商品名)50重量部、パーオクタO(日油(株)製の商品名)3重量部の混合溶液を約2時間かけてソルフィット溶液に滴下した。110℃で2時間反応させて、水性塗料用濡れ性向上剤としてアクリル系共重合体液を、得た。得られたアクリル系共重合体液を用いて、それに含有されている共重合体の重量平均分子量を、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法によりポリスチレン換算値として求めたところ、11000であった。また、25質量%のブチルジグリコール水溶液法による曇点は、55℃であった。Fedors法により求めた理論SP値は、9.3であった。
【0061】
(製造例2)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び滴下槽を備えた容器に2−エチル−1−ヘキサノール100重量部を入れて、液温を110℃に保温した。窒素雰囲気下で、イソブチルアクリレート50重量部、メトキシポリエチレングリコール23モル付加物モノメタクリレートであるNKエステルM−230G(新中村(株)製の商品名)50重量部、パーオクタO(日油(株)製の商品名)4重量部の混合溶液を約2時間かけて2−エチル−1−ヘキサノール溶液に滴下した。110℃で2時間反応させて、水性塗料用濡れ性向上剤としてアクリル系共重合体液を得た。得られたアクリル系共重合体液について重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフ法によりポリスチレン換算値として求めたところ、9000であった。また、25質量%のブチルジグリコール水溶液法による曇点は、79℃であった。Fedors法により求めた理論SP値は、9.5であった。
【0062】
(製造例3)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び滴下槽を備えた容器に2−エチル−1−ヘキサノール100重量部を入れて、液温を110℃に保温した。窒素雰囲気下で、ドデシルビニルエーテル10重量部、2−エチルヘキシルアクリレート42重量部、メトキシポリエチレングリコール9モル付加物モノメタクリレートであるライトエステル130MA(共栄社化学(株)製の商品名)48重量部、パーオクタO(日油(株)製の商品名)3重量部の混合溶液を約2時間かけて2−エチル−1−ヘキサノール溶液に滴下した。110℃で2時間反応させて、水性塗料用濡れ性向上剤としてアクリル系共重合体液を、得た。得られたアクリル系共重合体液について重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフ法によりポリスチレン換算値として求めたところ、15000であった。また、25質量%のブチルジグリコール水溶液法による曇点は、55℃であった。Fedors法により求めた理論SP値は、9.3であった。
【0063】
(製造例4)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び滴下槽を備えた容器に2−エチル−1−ヘキサノール100重量部を入れて、液温を110℃に保温した。窒素雰囲気下で、2エチルヘキシルメタクリレート55重量部、メトキシトリエチレングリコールモノメタクリレート45重量部、パーオクタO(日油(株)製の商品名)5重量部の混合溶液を約2時間かけて2−エチル−1−ヘキサノール溶液に滴下させた。110℃で2時間反応させ、水性塗料用濡れ性向上剤として、アクリル系共重合体液を、得た。得られたアクリル系共重合体液について重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフ法によりポリスチレン換算した値で求めたところ、9000であった。また、25質量%のブチルジグリコール水溶液法による曇点は、35℃であった。Fedors法により求めた理論SP値は、9.4であった。
【0064】
(製造例5)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び滴下槽を備えた容器に2−エチル−1−ヘキサノール100重量部を入れて、液温を110℃に保温した。窒素雰囲気下で、2エチルヘキシルメタクリレート70重量部、アクリル酸2重量部、メトキシポリエチレングリコール9モル付加物モノメタクリレートであるライトエステル130MA(共栄社化学(株)製の商品名)28重量部、パーオクタO(日油(株)製の商品名)3重量部の混合溶液を約2時間かけて2−エチル−1−ヘキサノール溶液に滴下した。110℃で2時間反応させ後、60℃に冷却し、ジメチルエタノールアミン2.5重量部滴下し中和させ、水性塗料用濡れ性向上剤として、アクリル系共重合体液を得た。得られたアクリル系共重合体液について重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフ法によりポリスチレン換算値として求めたところ、33000であった。また、25質量%のブチルジグリコール水溶液法による曇点は、60℃であった。Fedors法により求めた理論SP値は、9.4であった。
【0065】
(製造例6)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び滴下槽を備えた容器に3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールであるソルフィット((株)クラレ製の商品名)50重量部を入れて、液温を110℃に保温した。窒素雰囲気下で、ドデシルメタクリレート70重量部、メトキシポリエチレングリコール9モル付加物モノメタクリレートであるライトエステル130MA(共栄社化学(株)製の商品名)30重量部、パーオクタO(日油(株)製の商品名)0.5重量部の混合溶液を約2時間かけてソルフィット溶液に滴下した。85℃で4時間反応させて、水性塗料用濡れ性向上剤としてアクリル系共重合体液を、得た。得られたアクリル系共重合体液を用いて、それに含有されている共重合体の重量平均分子量を、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法によりポリスチレン換算値として求めたところ、160000であった。また、25質量%のブチルジグリコール水溶液法による曇点は、55℃であった。Fedors法により求めた理論SP値は、9.1であった。
【0066】
(製造例7)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び滴下槽を備えた容器に3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールであるソルフィット((株)クラレ製の商品名)100重量部を入れて、液温を110℃に保温した。窒素雰囲気下で、nブチルアクリレート30重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート40重量部、メトキシポリエチレングリコール9モル付加物モノメタクリレートであるライトエステル130MA(共栄社化学(株)製の商品名)30重量部、パーオクタO(日油(株)製の商品名)5重量部の混合溶液を約2時間かけてソルフィット溶液に滴下した。110℃で2時間反応させ、水性塗料用濡れ性向上剤として、アクリル系共重合体液を、得た。得られたアクリル系共重合体液について重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフ法によりポリスチレン換算値として求めたところ、12000であった。また、25質量%のブチルジグリコール水溶液法による曇点は、60℃であった。Fedors法により求めた理論SP値は、11.5であった。
【0067】
(比較例1)
サーフィノール104A(日信化学工業(株)の商品名)を水性塗料用濡れ性向上剤として用いた。
【0068】
(比較例2)
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを水性塗料用濡れ性向上剤として用いた。
【0069】
(比較例3)
ポリエーテル変性シリコーン(Tego Wet KL245、デグサジャッパン(株)の商品名)を水性塗料用濡れ性向上剤として用いた。
【0070】
(比較例4)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び滴下槽を備えた容器に3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールであるソルフィット((株)クラレ製の商品名)100重量部を入れて、液温を110℃に保温した。窒素雰囲気下で、n-ブチルアクリレート15重量部、メトキシポリエチレングリコール9モル付加物モノメタクリレートであるライトエステル130MA(共栄社化学(株)製の商品名)85重量部、パーオクタO(日油(株)製の商品名)2重量部の混合溶液を約2時間かけてソルフィット溶液に滴下した。110℃で2時間反応させ、水性塗料用濡れ性向上剤として、アクリル系共重合体液を得た。得られたアクリル系共重合体液について重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフ法によりポリスチレン換算値として求めたところ、12000であった。また、25質量%のブチルジグリコール水溶液法による曇点は60℃であった。Fedors法により求めた理論SP値は、9.5であった。
【0071】
(比較例5)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び滴下槽を備えた容器に2−エチル−1−ヘキサノール100重量部を入れて、液温を100℃に保温した。窒素雰囲気下で、ドデシルビニルエーテル55重量部、n-ブチルアクリレート10重量部、メトキシトリエチレングリコールモノメタクリレート35重量部、パーオクタO(日油(株)製の商品名)1重量部の混合溶液を約2時間かけてソルフィットに滴下させた。100℃で2時間反応させ、水性塗料用濡れ性向上剤として、アクリル系共重合体液を得た。得られたアクリル系共重合体液について重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフ法によりポリスチレン換算値として求めたところ、10000であった。また、25質量%のブチルジグリコール水溶液法による曇点は35℃であった。Fedors法により求めた理論SP値は、9.0であった。
【0072】
(比較例6)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び滴下槽を備えた容器に3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールであるソルフィット((株)クラレ製の商品名)100重量部を入れて、液温を110℃に保温した。窒素雰囲気下で、2エチルヘキシルメタクリレート70重量部、メトキシポリエチレングリコール30モル付加物モノメタクリレートであるライトエステル041MA(共栄社化学(株)製の商品名)、パーオクタO(日油(株)製の商品名)3重量部の混合溶液を約2時間かけてソルフィット溶液に滴下した。110℃で2時間反応させ、水性塗料用濡れ性向上剤として、アクリル系共重合体液を得た。得られたアクリル系共重合体液について重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフ法によりポリスチレン換算値として求めたところ、30000であった。また、25質量%のブチルジグリコール水溶液法による曇点は95℃以上で観測されなかった。Fedors法により求めた理論SP値は、9.3であった。
【0073】
(比較例7)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び滴下槽を備えた容器に3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールであるソルフィット((株)クラレ製の商品名)100重量部を入れて、液温を120℃に保温した。窒素雰囲気下で、nブチルアクリレート97重量部、メトキシトリエチレングリコールモノメタクリレート3重量部、パーオクタO(日油(株)製の商品名)7重量部の混合溶液を約2時間かけてソルフィット溶液に滴下した。120℃で2時間反応させ、水性塗料用濡れ性向上剤として、アクリル系共重合体液を得た。得られたアクリル系共重合体液について重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフ法によりポリスチレン換算値として求めたところ、5000であった。また、25質量%のブチルジグリコール水溶液法による曇点は観測されなかった。Fedors法により求めた理論SP値は、9.2であった。
【0074】
次に、本発明を適用する水性塗料を調製した例と、それを硬化させて塗装膜を形成させた例とを、実施例に示す。
【0075】
(実施例)
(1.1評価用熱硬化型水性塗料組成物の調製)
ビニル変性アルキド樹脂ウォーターゾールBCD3050(DIC(株)製の商品名)278.1重量部、酸化チタンであるテイカJR−600A(テイカ(株)製の商品名)300重量部、イオン交換水30重量部、及び直径1.5〜2.0mmのガラスビーズ300重量部を900mlガラス瓶に加え、ペイントシェーカーにより2時間攪拌し、その後、ウォーターゾールBCD3050(DIC(株)製の商品名)307.2重量部、メラミン樹脂サイメル303(日本サイテックインダストリーズ(株)製の商品名)68.1重量部を加えてレッドダウンしてガラスビーズを濾別した後、フォードカップNo.4を用いて35秒/25℃にイオン交換水で希釈して評価用熱硬化型水性塗料組成物を調製した。
【0076】
(1.2濡れ性向上剤の添加による水性塗料の調製)
この水性塗料物に、製造例1〜7及び比較例1〜7で調製した水性塗料用濡れ性向上剤を固形分で0.5重量%を加え、1500rpmで5分間混合し、夫々、水性塗料を調製した。
【0077】
製造例1〜7及び比較例1〜7で調製した濡れ性向上剤を用いて以下の試験方法にて塗装膜を作製して、濡れ性、レベリング性、鮮映性の各物性評価を行った。
【0078】
(基材への濡れ性試験)
基材への濡れ性試験は、予め市販のハンドクリームをガラス板(縦20cm×横10cm)の中央に縦20cm×横2cmの帯状になるように塗装し、1時間室温で乾燥する。次に製造例1〜7、比較例1〜7の各濡れ性向上剤について実施例に基づき調整して得られた熱硬化型水性塗料を塗装器具で100μmのアプリケーターを用いて塗装する。その後、セッティング5分間後、プレヒートを80℃で10分間行った後、140℃で30分間加熱し、焼き付けて硬化させた塗装膜を得る。基材への濡れ性の評価は、ハンドクリーム塗装部分を目視で観察して行う。その結果、ハジキがなくハンドクリーム上に塗料が塗れている場合を○、ハンドクリーム上に水性塗料の塗れが弱くハジキ1〜10点発生している場合を△、ハンドクリーム上に水性塗料の塗れが悪くハジ10点以上ハジキが発生する場合を×とする3段階で評価した。
【0079】
(レベリング性試験)
レベリング性試験は、製造例1〜7、比較例1〜7の各濡れ性向上剤について実施例に基づき調整して得られた熱硬化型水性塗料を、口径1.5mmで吐出圧3.0kg/cmのエアスプレー(ワイダーW−61カップガン:岩田塗装(株)製の商品名)により、温度25℃、湿度70%の条件下でアルミ板に水性塗料を塗装し、セッティング5分間後、プレヒートを80℃で10分間行った後、140℃で30分間加熱し、焼き付けて硬化させた塗装膜を得た。レベリング性の評価は、塗装膜表面を目視で観察して行う。その結果、凹みやハジキがなく平滑である場合を○、やや柚子肌状のオレンジピールが生じレベリング性が乏しい場合を△、著しくオレンジピールが生じ光沢が極端に低下してレベリング性が極めて悪い場合を×とする3段階で評価した。
【0080】
(上塗り付着性試験)
カチオン電着塗装板に、製造例1〜7、比較例1〜7の各濡れ性向上剤について実施例に基づき調整して得られた熱硬化型水性塗料を、口径1.5mmで吐出圧3.0kg/cmのエアスプレー(ワイダーW−61カップガン:岩田塗装(株)製の商品名)により、温度25℃、湿度70%の条件下でアルミ板に水性塗料を塗装し、セッティング5分間後、プレヒートを80℃で10分間行った後、140℃で30分間加熱し、焼き付けて硬化させた塗装膜を得た。その塗装膜上に実施例1の濡れ性向上剤無添加の熱硬化型水性塗料を、口径1.5mmで吐出圧3.0kg/cmのエアスプレー(ワイダーW−61カップガン:岩田塗装(株)製の商品名)により、温度25℃、湿度70%の条件下でアルミ板に水性塗料を上塗り塗装し、セッティング5分間後、プレヒートを80℃で10分間行った後、140℃で30分間加熱し、焼き付けて硬化させた上塗り塗装膜を得た。直角の格子パターンの切り込みを塗装膜に入れ、透明感圧付着テープを貼り付けてから引き剥がして、剥がれの程度を目視で確認する、JIS規格K5600−5−6に準拠する碁判目試験により、上塗り付着性を評価した。全ての塗装膜が剥離した場合を0、剥離が全く起こらないものを100とし、剥離せずに残った割合から100段階で評価した。
【0081】
【表1】

【0082】
表1から明らかな通り、製造例1〜7の水性塗料用濡れ性向上剤を用いて形成した塗装膜は、基材への濡れ性やレベリング性、上塗り付着性に優れていた。一方、濡れ性向上剤無添加、又は比較例1〜7の濡れ性向上剤を用いて形成した塗装膜は、基材への濡れ性、レベリング性、上塗り付着性が不十分でありレベリング性や鮮映性に不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明を適用する水性塗料用の濡れ性向上剤は、工業用材料、自動車車体、建材、建造物、日用品原材を塗装する水性塗料に含有させて、用いられる。この水性塗料をこれら被塗装体に塗装し焼き付けて形成した塗装膜は、被塗装体の外観を綺麗にし、その表面を保護するのに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)
CH=C(R)−COO−(C2mO)−R ・・・(1)
(化学式(1)中、Rは水素原子又はメチル基、−Rは水素原子又は炭素原子数1〜22のアルキル基、mは2〜4の数、nは2〜100の数)で表されるエーテル基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマー(A)の5〜80重量部と、下記化学式(2)
CH=C(R)−COO−R ・・・(2)
(化学式(2)中、Rは水素原子又はメチル基、−Rは炭素原子数1〜22のアルキル基)で表されるアルキル(メタ)アクリレートモノマー(B)の20〜95重量部との共重合体を含有しており、該共重合体の重量平均分子量を3000〜500000としその曇点を30〜85℃とすることを特徴とする水性塗料用の濡れ性向上剤。
【請求項2】
該共重合体が、該モノマー(A)及び該モノマー(B)と、下記化学式(3)
CH=CH−O−R ・・・(3)
(化学式(3)中、−Rは炭素原子数2〜22のアルキル基)で表されるビニルエーテルモノマー(C)との100:1〜45の重量比の共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の濡れ性向上剤。
【請求項3】
該共重合体が、該モノマー(A)、該モノマー(B)及び該モノマー(C)と、共重合性不飽和モノマー(D)との100:1〜40の重量比の共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の濡れ性向上剤。
【請求項4】
該共重合体が、該モノマー(A)及び該モノマー(B)と、該共重合性不飽和モノマー(D)との100:1〜40の重量比の共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の濡れ性向上剤。
【請求項5】
該共重合体が、その溶解性パラメーターを8.0〜15.0とすることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の濡れ性向上剤。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の濡れ性向上剤と、水性塗料成分と、水とを含有し、被塗装基材全面を湿潤させて塗装する水性湿潤塗料。
【請求項7】
請求項6に記載の水性湿潤塗料が、基材に塗装されて硬化して形成されていることを特徴とする塗装膜。
【請求項8】
請求項7に記載の塗装膜に、上塗り塗料がその全面を湿潤させて塗装されていることを特徴とする塗装物。

【公開番号】特開2011−105786(P2011−105786A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259229(P2009−259229)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000162076)共栄社化学株式会社 (67)
【Fターム(参考)】