Notice: Undefined variable: fterm_desc_sub in /mnt/www/biblio_conv.php on line 353
水性塗料用低汚染化剤ならびにこれを用いた水性塗料用組成物および水性塗料用キット
説明

水性塗料用低汚染化剤ならびにこれを用いた水性塗料用組成物および水性塗料用キット

【課題】水性塗料用組成物に含有させることによって塗膜表面の自己浄化機能を向上させることができるとともに、塗料の貯蔵安定性を損ないにくい水性塗料用低汚染化剤を提供する。
【解決手段】炭素数1〜24のペルフルオロアルキル基を有する重合単位(a’)の30〜70質量%と、アルキレンオキシド鎖を有する重合単位(b’)の20〜69質量%と、アミノ基を有する重合単位(c’)の1〜10質量%を含む含フッ素共重合体を含有する水性塗料用低汚染化剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性塗料用低汚染化剤、該水性塗料用低汚染化剤を用いた水性塗料用組成物および水性塗料用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、物品に塗料を塗布して表面を親水性かつ撥油性にし、汚れ防止または易洗浄性といった自己浄化機能を向上させるために、パーフルオロアルキル(メタ)アクリル酸エステルと親水基含有モノマーを含むモノマー混合物を重合させてフッ素系共重合化合物を合成し、これを塗料に添加する法が記載されている。
しかし、具体的に記載されているフッ素系共重合化合物および塗料は、溶媒が有機溶剤であり、環境上の配慮からは有機溶剤の含有量が少ない水性の塗料で汚れ防止効果または易洗浄効果を実現できることが望ましい。
【0003】
下記特許文献2には、低汚染化剤としてアルコキシシランの変性縮合物を含有する水性塗料組成物が記載されている。
しかし、アルコキシシランの変性縮合物は水と反応し、反応性も比較的高いため、アルコキシシランの変性縮合物の添加は、塗料の貯蔵安定性を低下させやすいという問題がある。
【0004】
なお下記特許文献3には、本発明における含フッ素共重合体(f)と同様の主鎖骨格を有する含フッ素共重合体を防汚加工剤として用いる技術が開示されているが、これは繊維製品等の基材に防汚加工剤を付着させて、撥水撥油性を付与するものであり、塗料に含有させるものではない。また親水性を付与するものでもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−297482号公報
【特許文献2】特許第3073775号公報
【特許文献3】国際公開第2008/149676号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、水性塗料用組成物に含有させることによって塗膜表面の自己浄化機能を向上させることができるとともに、塗料の貯蔵安定性を損ないにくい水性塗料用低汚染化剤、該水性塗料用低汚染化剤を用いた水性塗料用組成物、および該水性塗料用低汚染化剤を用いた水性塗料用キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の水性塗料用低汚染化剤は、下記単量体(a)に基づく重合単位(a’)の30〜70質量%、下記単量体(b)に基づく重合単位(b’)の20〜69質量%、下記単量体(c)に基づく重合単位(c’)の1〜10質量%を含む含フッ素共重合体(f)を含有することを特徴とする。
単量体(a):(Z−Y)Xで表される化合物。ただし、式中Zは炭素数1〜24のペルフルオロアルキル基またはC2m+1O(CFWCFO)CFK−(mは1〜24の整数、dは0〜4の整数、WおよびKはそれぞれ独立にフッ素原子またはトリフルオロメチル基。)で表される1価の基を表し、Yは2価の有機基または単結合を表し、nは1または2であり、nが1のとき、Xは−CR=CH、−COOCR=CH、−OCOCR=CH、−OCH−φ−CR=CHまたは−OCH=CHを表し、nが2のとき、Xは−CH[−(CHCR=CH]−、−CH[−(CHCOOCR=CH]−、−CH[−(CHOCOCR=CH]−、または−OCOCH=CHCOO−を表し、Rは水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、φはフェニレン基であり、pは0〜4の整数である。
単量体(b):CH=CR−COO−(RO)−Rで表される化合物。ただし、式中のRは水素原子またはメチル基を表し、Rは、炭素数2〜4のアルキレン基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、(メタ)アクリロイル基、またはグリシジル基を表し、qは1〜140の整数を表す。qが2〜140のとき、一分子中に存在する複数の−(RO)−は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
単量体(c):CH=CR−M−Q−NRまたはCH=CR−M−Q−N(O)Rで表される化合物。式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Mは−COO−または−CONH−を表し、Qは炭素数2〜4のアルキレン基または水素原子の一部または全部が水酸基で置換された炭素数2〜3のアルキレン基を表し、RおよびRはそれぞれ独立に、ベンジル基、炭素数1〜8のアルキル基、水素原子の一部が水酸基で置換された炭素数2〜3のアルキル基を表し、R、Rおよび窒素原子がピペリジノ基またはピロリジニル基を形成してもよく、R、R、酸素原子、窒素原子がモルホリノ基を形成してもよい。
【0008】
本発明は、合成樹脂水分散体と、本発明の水性塗料用低汚染化剤を含む水性塗料用組成物を提供する。
前記合成樹脂水分散体中の固形分100質量部に対して、前記水性塗料用低汚染化剤中の前記含フッ素共重合体(f)が0.5〜30質量部であることが好ましい。
【0009】
前記合成樹脂水分散体が、フルオロオレフィンに基づく重合単位、親水性部位を有するマクロモノマーに基づく重合単位、及び一般式:X’−Y’−Z’(ここでX’はラジカル重合性不飽和基、Y’はn−ノニレン基またはシクロヘキサン−1,4−ジメチレン基、Z’は水酸基)で表される水酸基含有単量体に基づく重合単位を必須構成成分とする含フッ素共重合体(A1’)を含有することが好ましい。
【0010】
前記合成樹脂水分散体が、式(a1)で表される重合単位40〜60モル%、式(a2)で表される重合単位3〜50モル%、式(a3)で表される重合単位4〜30モル%、式(a4)で表される重合単位0.4〜7モル%(ただし、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)で表される各重合単位の合計モル%の値は80〜100である。)からなる含フッ素共重合体(A2’)を含有することが好ましい。
−CFX−CX− ・・・式(a1)
[ただし、式(a1)において、XおよびXは、それぞれ独立に水素原子、塩素原子またはフッ素原子であり、Xは塩素原子、フッ素原子または−CY(Y、Y、Yはそれぞれ独立に水素原子、塩素原子またはフッ素原子である。)である。]
【0011】
【化1】

【0012】
[ただし、式(a2)において、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数1〜12のアルキル基、または炭素数4〜10の1価の脂環式基であり、jは0〜8の整数、kは0または1である。]
【0013】
【化2】

【0014】
[ただし、式(a3)において、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数1〜10のアルキレン基、または炭素数4〜10の2価の脂環式基であり、mは0〜8の整数、nは0または1である。]
【0015】
【化3】

【0016】
[ただし、式(a4)において、RおよびRは式(3)における各々と同じ意味であり、Rは炭素数2〜10のアルキレン基または炭素数4〜10の2価の脂環式基であり、Rは水素原子または−NHZ(Z、Z、Zはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基である。)であって、少なくとも一部のRは−NHZであることを必須とし、pは0〜8の整数、qは0または1である。]
【0017】
本発明は、水性塗料用組成物を調製するのに用いられるキットであって、合成樹脂水分散体と、請求項1に記載の水性塗料用低汚染化剤を備える水性塗料用キットを提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の水性塗料用低汚染化剤は、これを水性塗料用組成物に添加することによって塗膜表面の自己浄化機能を向上することができる。該水性塗料用低汚染化剤の添加による塗料の貯蔵安定性の低下は生じにくい。
本発明の水性塗料用組成物によれば、自己浄化機能が向上した塗膜が得られる。良好な貯蔵安定性も得られやすい。また水性であるため環境的に好ましい。
本発明の水性塗料用キットによれば、自己浄化機能が向上した塗膜を形成できる水性塗料用組成物が得られる。水性塗料用低汚染化剤の添加による塗料の貯蔵安定性の低下は生じにくい。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<水性塗料用低汚染化剤>
本発明の水性塗料用低汚染化剤(以下、単に低汚染化剤ということがある。)は特定の含フッ素共重合体(f)を含有する。
本発明の低汚染化剤は、含フッ素共重合体(f)と水性媒体を含んでおり、揮発性有機溶媒の含有量が1質量%以下の組成物であることが好ましい。
<含フッ素共重合体(f)>
含フッ素共重合体(f)は、少なくとも単量体(a)に基づく重合単位(a’)と、単量体(b)に基づく重合単位(b’)と、単量体(c)に基づく重合単位(c’)を含有する。さらに単量体(d)に基づく重合単位(d’)を含有してもよい。
【0020】
[単量体(a)]
重合単位(a’)は単量体(a)のエチレン性二重結合が開裂して形成される重合単位である。
単量体(a)は、(Z−Y)Xで表される化合物である。
(Z−Y)XにおけるZは、炭素数1〜24のペルフルオロアルキル基またはC2m+1O(CFWCFO)CFK−(mは1〜24の整数、dは0〜4の整数、W、Kはそれぞれ独立にフッ素原子またはトリフルオロメチル基(−CF)である。)で表される基である。環境上の配慮の点からは、Zの炭素数は1〜6が好ましい。前記mは1〜6の整数であることが好ましい。
Zとしては、炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基が好ましく、F(CF−、F(CF−、F(CF)−、F(CF−、F(CF−または(CFCF(CF−がより好ましく、F(CF−、F(CF−またはF(CF)−が最も好ましい。
【0021】
Yは2価の有機基または単結合である。Yは2価有機酸基が好ましい。
Yは、−R−T−R−で表される2価の基がより好ましい。式中、R、Rはそれぞれ独立して、単結合、または1個以上のエーテル性の酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜22の飽和または不飽和の2価の炭化水素基を示す。Tは単結合、−COO−、−OCONH−、−CONH−、−SONH−、−SONR’−(R’は炭素数1〜6のアルキル基)または−NHCONH−を示す。
Yは、炭素数1〜10のアルキレン基、−CH=CHCH−、−(CHCHR”O)CHCH−(jは1〜10の整数、R”は水素原子またはメチル基を示す。)、−COCONHC−、−COCOOC−、または−COOC−が好ましく、炭素数1〜10のアルキレン基がより好ましく、−CH−、−CHCH−、−(CH11−または−CHCHCH(CH)−がさらに好ましい。
【0022】
Xは、重合性不飽和基であって、nが1の場合は−CR=CH、−CR=CH−CH=CH、−COOCR=CH、−OCOCR=CH、−OCH−φ−CR=CHまたは−OCH=CHであり、nが2の場合は−CH[−(CHCR=CH]−、−CH[−(CHCOOCR=CH]−、−CH[−(CHOCOCR=CH]−、または−OCOCH=CHCOO−(Rは水素原子、メチル基またはハロゲン原子。φはフェニレン基。pは0〜4の整数。)である。
Xとしては、−OCOCR=CHまたは−OCOCH=CHCOO−が好ましく、溶媒に対する溶解性に優れ、乳化重合が容易に行えることから、−OCOCR=CHがより好ましい。Rとしては、重合性に優れることから、水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)または炭素数1〜3のアルキレン基が好ましく、水素原子、メチル基またはハロゲン原子がより好ましい。
【0023】
単量体(a)としては、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート(C13OCOCH=CH、またはC13OCOC(CH)=CH)、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル(メタ)アクリレート(COCOCH=CH、またはCOCOC(CH)=CH)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルαクロロアクリレート(C13OCOC(Cl)=CH)が好ましい。
単量体(a)は1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0024】
[単量体(b)]
重合単位(b’)は単量体(b)のエチレン性二重結合が開裂して形成される重合単位である。
単量体(b)はCH=CR−COO−(RO)−Rで表される化合物である。式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは、炭素数2〜4のアルキレン基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、(メタ)アクリロイル基、またはグリシジル基を表し、qは1〜140の整数を表す。qが2〜140のとき、一分子中に存在する複数の−(RO)−は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。Rはメチル基が好ましい。qは4〜137の整数が好ましい。
−(RO)−で表されるアルキレンオキシド鎖において、アルキレン基(R)の炭素数が異なる2種以上の繰り返し単位(−(RO)−)が含まれる場合、該繰り返し単位の配列はブロック状でもよくランダム状でもよい。
単量体(b)は1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。単量体(b)を2種以用いる場合は、前記R2が異なる単量体(b)の2種以上を併用することが好ましい。特に−(RO)−として−CO−を有する単量体(b)と、−CO−を有する単量体(b)を併用することが好ましい。
この他、RおよびRの両方が異なる単量体(b)の2種以上、Rが異なる単量体(b)の2種以上を併用してもよい。
3種以上の単量体(b)を併用する場合、そのうちの1種は、Rが(メタ)アクリロイル基またはグリシジル基であることが接着性および耐久性の点で好ましい。
【0025】
単量体(b)としては、
ポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、
ポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、
メトキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、
メトキシポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、
エトキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、
ポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、
ポリ(エチレンオキシド−テトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、
ポリ(プロピレンオキシド−テトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、
プロピレンオキシド−ポリブチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、
オクトキシポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドジ(メタ)アクリレート、
ポリプロピレンオキシドジ(メタ)アクリレート、
ポリテトラメチレンオキシドジ(メタ)アクリレート、
ポリ(エチレンオキシド−テトラエチレンオキシド)ジ(メタ)アクリレート、
ポリ(プロピレンオキシド−テトラエチレンオキシド)ジ(メタ)アクリレート、
ポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド−エチレンオキシド)ジ(メタ)アクリレート、
ポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)グリシジルエーテル(メタ)アクリレートが好ましく挙げられる。
【0026】
単量体(b)を2種以上併用する場合、メトキシポリエチレンオキシドモノメタクリレートとポリプロピレンオキシドモノメタクリレートの組み合わせ、メトキシポリエチレンオキシドモノメタクリレートとポリ(エチレンオキシド−テトラメチレンオキシド)モノメタアクリレートまたはメトキシポリエチレンオキシドモノメタクリレートとオクトキシポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)モノメタクリレートの組み合わせがより好ましい。
【0027】
[単量体(c)]
重合単位(c’)は単量体(c)のエチレン性二重結合が開裂して形成される重合単位である。
単量体(c)は、CH=CR−M−Q−NRまたはCH=CR−M−Q−N(O)Rで表される化合物である。
式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Mは−COO−または−CONH−を表し、Qは炭素数2〜4のアルキレン基または水素原子の一部または全部が水酸基で置換された炭素数2〜3のアルキレン基を表し、RおよびRはそれぞれ独立に、ベンジル基、炭素数1〜8のアルキル基、水素原子の一部が水酸基で置換された炭素数2〜3のアルキル基を表し、R、Rおよび窒素原子がピペリジノ基またはピロリジニル基を形成してもよく、R、R、酸素原子、窒素原子がモルホリノ基を形成してもよい。
Qとしては炭素数2〜3のアルキレン基が好ましい。R、Rとしては炭素数1〜2のアルキル基が好ましい。Mとしては−COO−(エステル結合)が好ましい。
【0028】
単量体(c)としては、
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、
N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、
N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、
N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、
N,N−ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、
N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、
N−(メタ)アクリロイルモルホリン、
N−(メタ)アクリロイルペピリジン、
N,N−ジメチルアミノオキシドエチル(メタ)アクリレート、
N,N−ジエチルアミノオキシドエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
これらのうちでN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミドまたはN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートがより好ましい。
単量体(c)として、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0029】
[単量体(d)]
重合単位(d’)は単量体(d)の重合性不飽和基の二重結合が開裂して形成される重合単位である。
単量体(d)は単量体(a)、単量体(b)、単量体(c)と共重合可能な単量体であって、イソシアネート基、ブロック化されたイソシアネート基、ウレタン結合、アルコキシシリル基、エポキシ基、N−メチロール基、およびN−アルコキシメチル基からなる群から選ばれる一種以上の架橋性官能基を有し、ポリフルオロアルキル基を有しない単量体である。単量体(b)に含まれるものは、単量体(d)には含まれないものとする。
単量体(d)は、(メタ)アクリレートの誘導体またはビニル化合物の誘導体であることが好ましい。
【0030】
単量体(d)としては、以下の化合物が好ましく挙げられる。
(1)イソシアネート基を有する化合物:2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、3−イソシアネートプロピル(メタ)アクリレート、4−イソシアネートブチル(メタ)アクリレート。
(2)ブロック化されたイソシアネート基を有する化合物:2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレートの2−ブタノンオキシム付加体、
2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレートのピラゾール付加体、
2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、
2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレートの3−メチルピラゾール付加体、
2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加体、
3−イソシアネートプロピル(メタ)アクリレートの2−ブタノンオキシム付加体、
3−イソシアネートプロピル(メタ)アクリレートのピラゾール付加体、
3−イソシアネートプロピル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、
3−イソシアネートプロピル(メタ)アクリレートの3−メチルピラゾール付加体、
3−イソシアネートプロピル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加体、
4−イソシアネートブチル(メタ)アクリレートの2−ブタノンオキシム付加体、
4−イソシアネートブチル(メタ)アクリレートのピラゾール付加体、
4−イソシアネートブチル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、
4−イソシアネートブチル(メタ)アクリレートの3−メチルピラゾール付加体、
4−イソシアネートブチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加体。
【0031】
(3)ウレタン結合を有する化合物:トリアリルイソシアヌレート、
3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピルアクリレートのトリレンジイソシアネート付加物、
3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピルアクリレートのヘキサメチレンジイソシアネート付加物、
ペンタエリストールトリアクリレートのヘキサメチレンジイソシアネート付加物。
(4)アルコキシシリル基を有する化合物:CH=CR−D−E−SiR(ただし、Dは−OCO−、−COO−または単結合、Eは炭素数1〜4のアルキレン基、R、R、Rは、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基、Rは水素原子またはメチル基を示す。)で表される化合物。
具体例としては、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、
3−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、
3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、
3−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシエチルシラン、
ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0032】
(5)エポキシ基を有する化合物:グリシジル(メタ)アクリレート。
(6)N−メチロール基またはN−アルコキシメチル基を有する化合物:N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド。
これらのうちで、単量体(d)としては上記(2)ブロック化されたイソシアネート基を有する化合物が好ましく、特に2−イソシアネートエチルメタクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体がより好ましい。
単量体(d)は1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0033】
[他の単量体]
本発明においては、含フッ素共重合体(f)の基材への密着性、接着性、摩擦に対する耐久性等の物性を改良するために、該含フッ素共重合体(f)にさらに、単量体(a)、(b)、(c)と共重合可能であり、単量体(a)〜(d)のいずれにも含まれない単量体(他の単量体ともいう)に基づく重合単位を含んでいてもよい。
他の単量体の例としては、エチレン、塩化ビニリデン、塩化ビニル、フッ化ビニリデン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、イソブタン酸ビニル、イソデカノン酸ビニル、ステアリル酸ビニル、セチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、メチロール化ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ビニルアルキルケトン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、ベンジル(メタ)アクリレート、ポリシロキサンを有する(メタ)アクリレート、酢酸アリル、N−ビニルカルバゾール、マレイミド、N−メチルマレイミド、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルとε−カプロラクトンとの付加物、プロピレンオキシドジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリプロピレンオキシドジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、グリセリンジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート等が好ましく挙げられる。
【0034】
これらのうちで、造膜性や耐久性が向上しやすい点で、塩化ビニリデン、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルとε−カプロラクトンとの付加物、グリセリンジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0035】
[含フッ素共重合体(f)の組成]
(1)含フッ素共重合体(f)が重合単位(a’)、(b’)、(c’)を有し、重合単位(d’)を有しない場合、含フッ素共重合体(f)全体を100質量%とするとき、重合単位(a’)は30〜70質量%であり40〜65質量%が好ましく、重合単位(b’)は20〜69質量%であり30〜50質量%が好ましく、重合単位(c’)は1〜10質量%であり1〜6質量%が好ましい。他の単量体を用いる場合、該他の単量体に基づく重合単位の含有割合は20質量%以下が好ましく、10質量%以下が好ましい。
上記の範囲内であると、水性塗料用組成物の塗膜において、良好な撥水撥油性および良好な防汚性が同時にバランス良く達成できる。
本発明における各重合単位の含有割合は、含フッ素共重合体(f)における重合開始剤および連鎖移動剤由来の重合単位の質量を0(ゼロ)とみなして、各単量体の仕込み量から求められる値である。
【0036】
(2)含フッ素共重合体(f)が重合単位(a’)、(b’)、(c’)、(d’)を有する場合、含フッ素共重合体(f)全体を100質量%とするとき、重合単位(a’)は30〜70質量%であり40〜65質量%が好ましく、重合単位(b’)は20〜68質量%であり30〜50質量%が好ましく、重合単位(c’)は1〜10質量%であり1〜6質量%が好ましく、重合単位(d’)は1〜5質量%であり1〜4質量%が好ましい。他の単量体を用いる場合、該他の単量体に基づく重合単位の含有割合は20質量%以下が好ましく、10質量%以下が好ましい。
含フッ素共重合体(f)に重合単位(d’)を含有させることにより、水性塗料用組成物の塗膜において、効果が持続されやすくなり耐久性が向上する。また撥水撥油、防汚性もより良好となる。
【0037】
共重合に用いる単量体(a)、(b)、(c)の好ましい組み合わせとしては、
単量体(a)として、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルαクロロアクリレートから選ばれる1種以上を用い、
単量体(b)として、ポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレンオキシドモノメタアクリレート、ポリ(エチレンオキシド−テトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド−ポリブチレンオキシドモノ(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上を用い、
単量体(c)として、N,N−ジメチルアミノエチルメタアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチルメタアクリレートから選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
【0038】
含フッ素共重合体(f)の数平均分子量(Mn)は3000〜40000が好ましく、6000〜30000がより好ましい。質量平均分子量(Mw)は6000〜30000が好ましく、10000〜50000がより好ましい。該分子量が上記範囲の上限値以下であると分散安定性に優れ、下限値以上であると撥水撥油性および基材との密着性に優れる。
本明細書における含フッ素共重合体(f)の質量平均分子量は、標準ポリスチレン試料を用いて作成した検量線を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定することによって得られるポリスチレン換算分子量である。
なお、下記のように分子量を測定した。
共重合体をフッ素系溶媒(旭硝子社製、AK−225)/THF=6/4(体積比)の混合溶媒に溶解させ、1質量%の溶液とし、0.2μmのフィルタに通し、分析サンプルとした。測定条件は下記のとおりである。
装置:東ソー社製、HLC−8220GPC、
カラム:Polymer laboratories社製、MIXED−Cおよび100Aを直列でつなげたもの、
測定温度:37℃、
注入量:50μL、
流出速度:1mL/分、
標準試料:Polymer laboratories社製、EasiCal PM−2、
溶離液:フッ素系溶媒(旭硝子社製、AK−225)/THF=6/4(体積比)の混合溶媒。
【0039】
[含フッ素共重合体(f)の製造方法]
含フッ素共重合体(f)は、公知の方法を用いて、重合溶媒中で単量体の重合反応を行うことにより得られる。すなわち、反応容器内に、少なくとも単量体(a)、(b)、(c)を含む単量体混合物と重合溶媒を投入し、さらに必要に応じて重合開始剤、連鎖移動剤等を加えて共重合反応させる工程を経て含フッ素共重合体(f)を得る。
【0040】
重合溶媒としては、特に限定なく用いることができ、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メタノール、2−プロピルアルコール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、またはジプロピレングリコールのエチルエーテルまたはメチルエーテル等のグリコールエーテル類およびその誘導体;脂肪族炭化水素類;芳香族炭化水素類;パークロロエチレン、トリクロロ−1,1,1−エタン、トリクロロトリフルオロエタン、ジクロロペンタフルオロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;ジメチルホルムアミド;N−メチル−2−ピロリドン;ブチロアセトン;ジメチルスルホキシド(DMSO)等が好ましく用いられる。
含フッ素共重合体(f)を得る重合反応において、仕込み原料の全部(重合溶媒も含む)における単量体の濃度の合計は5〜60質量%が好ましく、10〜40質量%の範囲がより好ましい。
【0041】
含フッ素共重合体(f)を得る重合反応においては、重合開始剤を用いるのが好ましい。重合開始剤としては、ベンジルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、スクシニルパーオキシド、tert−ブチルパーピバレート等の過酸化物;アゾ化合物等が好ましい。溶媒中の重合開始剤の濃度は単量体の合計量100質量部に対して0.1〜1.5質量部が好ましい。
重合開始剤の具体例としては、2,2´−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、ジメチル−2,2´−アゾビスイソブチレート、2,2´−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2イル)プロパン]、2,2´−アゾビス(4−メトキシ−2、4−ジメチルバレロニトリル)、1、1´−アゾビス(2シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2´−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)、1、1´−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、ジメチルアゾビスイソブチレート、4,4´−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等が好ましく、2,2´−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2イル)プロパン]、4,4´−アゾビス(4−シアノ吉草酸)がより好ましい。
【0042】
含フッ素共重合体(f)の重合度(分子量)を調節するために、重合反応において連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤を用いることにより溶媒中の単量体の濃度の合計を高める効果もある。連鎖移動剤としては、tert−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、ステアリルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン;アミノエタンチオール、メルカプトエタノール、3−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸、3,3´−ジチオ−ジプロピオン酸、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸n−ブチル、チオグリコール酸メトキシブチル、チオグリコール酸エチル、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、四塩化炭素等が好ましく挙げられる。連鎖移動剤の使用量は、単量体の合計量100質量部に対して0〜2質量部が好ましい。
【0043】
重合反応における反応温度は、室温から反応混合物の沸点までの範囲が好ましい。重合開始剤を効率良く使う観点からは重合開始剤の半減期温度以上が好ましく、30〜90℃がより好ましい。
【0044】
重合反応後に、水性媒体を加え、必要に応じて重合溶媒を除去する処理を行うことにより、含フッ素共重合体(f)が水性媒体に分散されており揮発性有機溶媒の含有量が1質量%以下である組成物が得られる。重合溶媒の除去は、例えばストリッピング(揮散)処理により行う。
水性媒体は、水を含み、揮発性有機溶媒の含有量が1質量%以下である液体であればよく、具体的には水または水を含む共沸混合物が好ましい。
本発明において、低汚染化剤中の揮発性有機溶媒とは、低汚染化剤を常温で保存したときに揮発する有機溶媒を意味しており、具体的には1×10Paにおける沸点(以下、単に「沸点」という。)が100℃以下である有機溶媒である。なお、水と共沸混合物を作る溶媒は該揮発性有機溶媒には含まれないものとする。
含フッ素共重合体(f)が水性媒体に分散されている形態の低汚染化剤において、揮発性有機溶媒の含有量は1質量%以下が好ましく、ゼロが最も好ましい。
【0045】
含フッ素共重合体(f)を水性媒体に分散させる場合、重合溶媒としては、重合反応後の処理の作業性が良い点から、上記に挙げた重合溶媒のうち、比較的低沸点(例えば、沸点が80℃以下)の溶媒または水との共沸組成を有する溶媒を用いることが好ましい。比較的低沸点の溶媒の例としては、アセトン、メタノール等が挙げられる。水との共沸組成を有する溶媒としてはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−プロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。アセトンがより好ましい。
【0046】
含フッ素共重合体(f)の合成後、必要に応じて、含フッ素共重合体(f)の末端基をアニオン性基またはカチオン性基に変性させる処理を行ってもよい。
例えば、合成樹脂水分散体と低汚染化剤を用いて水性塗料用組成物または水性塗料用キットを構成する場合、合成樹脂水分散体中の合成樹脂の末端基と、低汚染化剤中の含フッ素共重合体(f)の末端基が、いずれもアニオン性基、またはいずれもカチオン性であると、両者の良好な相溶性が得られやすい。
【0047】
例えば含フッ素共重合体(f)を合成する際に、アニオン性基を有する重合開始剤および/またはアニオン性基を有する連鎖移動剤を用いると、末端にアニオン性基を有する含フッ素共重合体(f)を得ることができる。
また含フッ素共重合体(f)の末端基をアニオン化する方法としては、塩基性化合物を用いるのが好ましい。塩基性化合物は、塗膜中に残留しにくくなることから、沸点が200℃以下であることが好ましい。
かかる塩基性化合物としては、アンモニア;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン等の1級、2級または3級のアルキルアミン類;モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール等のアルカノールアミン類;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のジアミン類;エチレンイミン、プロピレンイミン等のアルキレンイミン類;ピペラジン、モルホリン、ピラジン、ピリジン等が挙げられる。
【0048】
また含フッ素共重合体(f)の末端基をカチオン化する方法としては、酸などを用いるのが好ましく、解離定数または一次解離定数が10−5以上である酸を用いるのがより好ましい。酸としては、塩酸、臭化水素酸、スルホン酸、硝酸、リン酸、酢酸、蟻酸、プロピオン酸または乳酸等が好ましく酢酸がより好ましい。酸の代わりには、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、ベンジルクロライド、トリチルリン酸、メチルp−トルエンスルホン酸などを用いてもよい。
【0049】
<水性塗料用組成物>
本発明の水性塗料用組成物は、合成樹脂水分散体と低汚染化剤を含む。具体的には合成樹脂水分散体に低汚染化剤を添加し混合して得られる。
低汚染化剤の添加量は、合成樹脂水分散体中の固形分100質量部に対して、低汚染化剤中の含フッ素共重合体(f)が0.5〜30質量部であることが好ましく、5〜20質量部がより好ましい。該含フッ素共重合体(f)の量が5質量部以上であると、低汚染化剤の添加効果が十分に得られやすく、20質量部以下であると得られる塗膜の耐水性が確保できる。
【0050】
<合成樹脂水分散体>
本発明で用いられる合成樹脂水分散体としては、例えば、アクリル樹脂系エマルション、アクリルシリコン樹脂系エマルション、フッ素樹脂系エマルション、ウレタン樹脂系エマルションなどが挙げられる。合成樹脂水分散体は、硬化剤と組み合わせて使用される2液型であってもよい。
【0051】
[アクリル樹脂系エマルション]
アクリル樹脂系エマルションとしては、アクリル系単量体、およびアクリル系単量体と共重合可能な他の単量体とをラジカル共重合して得られるものが使用できる。
アクリル系単量体は、特に限定されないが、以下の単量体を例示することができる。メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル基含有(メタ)アクリル系単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリル系単量体;(メタ)アクリル酸などのエチレン性不飽和カルボン酸;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有(メタ)アクリル系単量体;(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド含有(メタ)アクリル系単量体;アクリロニトリルなどのニトリル基含有(メタ)アクリル系単量体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体。
【0052】
これらのアクリル系単量体と共重合可能な他の単量体としては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系ビニル単量体;マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸などのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸;スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などのスルホン酸含有ビニル単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレンなどの塩素含有単量体;ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテルなどの水酸基含有アルキルビニルエーテル;エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテルジエチレングリコールモノアリルエーテルなどのアルキレングリコールモノアリルエーテル類;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのα−オレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどのビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのビニルエーテル;エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテルなどのアリルエーテル等を例示できる。
アクリル樹脂系エマルションは、耐久性、光沢の高さ、コスト面、樹脂設計の自由度の高さなどが有利である。
【0053】
[アクリルシリコン樹脂系エマルション]
アクリルシリコン樹脂系エマルションとしては、珪素含有アクリル系単量体、および珪素含有アクリル系単量体と共重合可能な他の単量体とをラジカル共重合して得られるものが使用できる。
珪素含有アクリル系単量体としては、特に限定されないが、たとえば、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの加水分解性シリル基含有ビニル系単量体等を例示できる。
珪素含有アクリル系単量体と共重合可能な他の単量体としては、たとえば、前述のアクリル樹脂系エマルションで使用されるアクリル系単量体やアクリル系単量体と共重合可能な他の単量体等を、特に限定されず使用できる。
アクリルシリコン樹脂系エマルションは、耐候性、耐黄変性、耐久性、耐薬品性、耐汚染性などが有利である。
【0054】
[フッ素樹脂系エマルション]
フッ素樹脂系エマルションとしては、フッ素含有単量体、およびフッ素含有単量体と共重合可能な他の単量体とをラジカル共重合して得られるものが使用できる。
フッ素含有単量体としては、たとえば、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ペンタフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンなどのフルオロオレフィン;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロビル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのフッ素含有(メタ)アクリレート等が例示されるが、これらに限定されない。
フッ素含有単量体と共重合可能な他の単量体としては、たとえば、前述のアクリル樹脂系エマルションで使用されるアクリル系単量体やアクリル系単量体と共重合可能な他の単量体等を、特に限定されず使用できる。
フッ素樹脂系エマルションは、耐候性、耐黄変性、耐久性、耐薬品性、耐汚染性などが有利である。
特に本発明において、合成樹脂水分散体中の合成樹脂と、低汚染化剤中の含フッ素共重合体との良好な相溶性が得られやすい点で、合成樹脂水分散体としてフッ素樹脂系エマルションを用いることが好ましく、その中でも後述の第1の含フッ素樹脂水分散体(A1)または第2の含フッ素樹脂水分散体(A2)がより好ましい。
【0055】
[ウレタン樹脂系エマルション]
ウレタン樹脂系エマルションとは、塗膜形成後の塗膜中にウレタン結合を持つエマルションを総称する。即ち、塗膜形成前からウレタン結合を有するものでもよいし、塗膜形成後の反応によりウレタン架橋を形成するものでもよい。エマルションの形態としては、1液型でもよいし2液型であってもよい。
1液型としては、ウレタン結合を有する重合性単量体を他の共重合可能な単量体と共重合する方法、ウレタン結合を有する水性樹脂の存在下に重合性不飽和単量体を重合する方法、反応基を有する水性ウレタン樹脂と、該反応基と反応することのできる基を含むエマルションとを混合する方法等が挙げられる。
2液型としては、水分散性イソシアネートと水酸基含有エマルションとの組み合わせ等が挙げられる。
ウレタン樹脂系エマルションは、耐久性、耐溶剤性、耐薬品性、耐汚染性などが有利である。
【0056】
[架橋反応型エマルション]
架橋反応型エマルションとは、合成樹脂水分散体中で、前記の水酸基とイソシアネート化合物による架橋反応以外に、カルボニル基とヒドラジド基、カルボン酸と金属イオン、エポキシ基とアミン、エポキシ基とカルボキシル基、カルボン酸とアジリジン、カルボン酸とカルボジイミド、カルボン酸とオキサゾリン、アセトアセテートとケチミンなどを利用した架橋反応を形成するエマルションを意味する。かかる架橋反応型エマルションを、本発明における合成樹脂水分散体として使用できる。
架橋反応型エマルションは、1液タイプであっても、2成分以上の多成分タイプであってもよい。
架橋反応型エマルションは、耐久性、耐溶剤性、耐薬品性、耐汚染性などが有利である。
【0057】
本発明で用いられる合成樹脂水分散体の製造方法は特に限定されないが、例えば乳化重合法、溶液重合法を用いることができる。乳化重合法は、バッチ重合、モノマー滴下重合、乳化モノマー滴下重合などの方法により実施することができる。
乳化重合に用いる乳化剤は一般に使用されるものであれば特に限定はされず、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性、ノニオン−カチオン性、ノニオン−アニオン性のものを単独あるいは併用して使用することができる。また、耐水性の向上を目的として反応性基をもった乳化剤も使用することができる。
溶液重合法を採用する場合には、重合後に得られる重合体を水に分散させて合成樹脂水分散体を得ることができる。残存する溶媒は留去することもできる。水分散性を高めるために、重合体に親水性側鎖を導入したり、乳化剤を使用することも可能である。
【0058】
重合開始剤としては、合成エマルションの製造において使用される公知のラジカル開始剤を限定なく使用することができる。具体例としては、過硫酸アンモニウム塩などの過硫酸塩;過酸化水素と亜硫酸水素ナトリウムなどとの組み合わせからなるレドックス開始剤;第一鉄塩、硝酸銀などの無機系開始剤を混合させた系;ジコハク酸パーオキシド、ジグルタール酸パーオキシドなどの二塩基酸過酸化物;アゾビスブチロニトリルなどの有機系開始剤;などが挙げられる。
重合開始剤の使用量は特に限定されない。例えば単量体100質量部に対して0.01〜5質量部程度が使用できる。
その他、乳化物のpH調整のため炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、チオ硫酸ナトリウムなどの無機塩およびトリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機塩基類を添加することができる。
【0059】
以下、合成樹脂水分散体として好適な第1の含フッ素樹脂水分散体(A1)、および第2の含フッ素樹脂水分散体(A2)について説明する。
<第1の含フッ素樹脂水分散体(A1)>
第1の含フッ素樹脂水分散体(A1)は、水に合成樹脂が分散又は溶解しており、該合成樹脂は含フッ素共重合体(A1’)を含んでいる。
含フッ素共重合体(A1’)は、フルオロオレフィンに基づく重合単位、親水性部位を有するマクロモノマーに基づく重合単位、及び一般式:X’−Y’−Z’(ここでX’はラジカル重合性不飽和基、Y’はn−ノニレン基またはシクロヘキサン−1,4−ジメチレン基、Z’は水酸基)で表される水酸基含有単量体に基づく重合単位を必須構成成分とする。含フッ素共重合体(A1’)は乳化重合によって合成される。
【0060】
[フルオロオレフィンに基づく重合単位]
フルオロオレフィンとしては、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンなどの炭素数2〜4程度のフルオロオレフィンが挙げられる。特にパーハロオレフィンが好ましい。
【0061】
[親水性部位を有するマクロモノマーに基づく重合単位]
第1の含フッ素樹脂水分散体(A1)では、乳化重合によって得られる含フッ素共重合体(A1’)が、親水性部位を有するマクロモノマーに基づく重合単位を有することが重要である。この単位が含フッ素共重合体の必須構成成分として含まれていると、水性分散液の機械的、化学的安定性が改善されるばかりでなく、造膜性、塗膜の耐水性なども向上する。
親水性部位を有するマクロモノマーの、親水性部位とは、親水性基を有する部位又は親水性の結合を有する部位又はこれらの組み合わせからなる部位を表している。
この親水性基は、イオン性、ノニオン性、両性及びこれらの組み合わせのいずれであってもよい。第1の含フッ素樹脂水分散体(A1)の液の化学的安定性の点からは、親水性部位がイオン性の親水性基を有する部位のみからよりも、ノニオン性又は両性の親水性基を有する部位と組み合わせるか、または親水性の結合を有する部位と組み合わせる方が好ましい。
【0062】
マクロモノマーとは片末端にラジカル重合性不飽和基を有する低分子量のポリマー又はオリゴマーをいう。すなわち、片末端にラジカル重合性不飽和基を有し、下記オキシエチレン単位などの繰り返し単位を少なくとも2個有する化合物である。繰り返し単位の種類によって異なるが、通常は繰り返し単位が100個以下のものが重合性、耐水性などの面から好ましく採用される。
【0063】
親水性部位を有するマクロモノマーとして、例えば、
(1)CH=CHO(CH)a[O(CHOX(aは1〜10、bは1〜4、cは2〜20の整数、Xは水素原子又は低級アルキル基である)、
(2)CH=CHCHO(CH[O(CHOX’’(dは1〜10、eは1〜4、fは2〜20の整数、X’’は水素原子又は低級アルキル基である)、
(3)CH=CHO(CH(OCHCH(OCHCH(CH3))OX’’(gは1〜10、hは2〜20、kは0〜20の整数、X’’は水素原子又は低級アルキル基であり、オキシエチレン単位及びオキシプロピレン単位はブロック、ランダムのいずれの型で配列されていてもよい)、
(4)CH=CHCHO(CH(OCHCH)n(OCHCH(CH))OX’’(mは1〜10、nは2〜20、pは0〜20の整数、X’’は水素原子又は低級アルキル基であり、オキシエチレン単位とオキシプロピレン単位はブロック、ランダムのいずれの型で配列されていてもよい)、又は
(5)CH=CHO(CHO(CO(CHO)H(qは1〜10、rは1〜10、sは1〜30の整数)などが例示される。
【0064】
なかでも、片末端がビニルエーテル型の構造を有するものがフルオロオレフィンとの共重合性に優れているため好ましい。特にポリエーテル鎖部分が、オキシエチレン単位、又は、オキシエチレン単位とオキシプロピレン単位、からなるものが親水性に優れているため好ましい。
また、オキシエチレン単位を少なくとも2個有するものでないと、安定性などの諸性質が達成されない。また、オキシアルキレン単位の数があまりに大きいものは、塗膜の耐水性や耐候性などが悪くなり、好ましくない。
【0065】
かかる親水性部位を有するマクロモノマーは、水酸基を有するビニルエーテル若しくはアリルエーテルに、ホルムアルデヒド、ジオールを重合させるか、又はアルキレンオキシド若しくはラクトン環を有する化合物を開環重合させるなどの方法により製造できる。
また、親水性部位を有するマクロモノマーは、親水性のエチレン性不飽和モノマーがラジカル重合した鎖を有し、末端にビニルオキシ基又はアリルオキシ基のごときラジカル重合性不飽和基を有するマクロモノマーであってもよい。
【0066】
このようなマクロモノマーは、山下らがPolym.Bull.,5.335(1981)に述べている方法などにより製造できる。すなわち、縮合可能な官能基を有する開始剤及び連鎖移動剤の存在下に親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーをラジカル重合させることにより、縮合可能な官能基を有する重合体を製造し、ついでこの重合体の官能基にグリシジルビニルエーテル、グリシジルアリルエーテルのごとき化合物を反応させ、末端にラジカル重合性不飽和基を導入する方法などが例示される。
【0067】
このマクロモノマーの製造に用いられるエチレン性不飽和モノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、2−メトキシエチルアクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、多価アルコールのアクリル酸エステル及び多価アルコールのメタクリル酸エステル及びビニルピロリドンなどがある。
【0068】
この他に、共重合可能なモノマーとして、アクリルアミドとその誘導体、メタクリルアミドとその誘導体、N−メチロールアクリルアミド誘導体、アクリル酸エチルカルビトール、ブトキシエチルアクリレートなどがある。
また、マクロモノマーの製造に用いられる開始剤としては、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン塩酸塩、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイルなどがある。
【0069】
[水酸基含有単量体に基づく重合単位]
水酸基含有単量体は、一般式:X’−Y’−Z’(ここでX’はラジカル重合性不飽和基、Y’はn−ノニレン基またはシクロヘキサン−1,4−ジメチレン基、Z’は水酸基)で表されるものを使用する。この構造以外の水酸基含有単量体では、場合によっては重合時、貯蔵時又は塗料化時に凝集してしまうこともある。
ラジカル重合性不飽和基X’としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。Y’とラジカル重合性不飽和基X’を連結する結合としては、エーテル結合が好ましい。
【0070】
前記一般式:X’−Y’−Z’で表される水酸基含有単量体として、具体的には
(1)CH=CHOCH−cycloC10−CHOH、
(2)CH=CHCHOCH−cycloC10−CHOH、
(3)CH=CHOC18OH、
(4)CH=CHCHOC18OHなどが例示される。
なかでもビニルエーテル型の構造を有するものが、フルオロオレフィンとの交互共重合性に優れ、塗膜の耐候性が良好となるので好ましい。
【0071】
第1の含フッ素樹脂水分散体(A1)の含フッ素共重合体(A1’)は、上記単位の他に、これらと共重合可能な単量体に基づく単位が含まれていてもよい。かかる単量体としては、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類;エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;ブタン酸ビニルエステル、オクタン酸ビニルエステルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物などのビニル系化合物;エチルアリルエーテルなどのアリル化合物、アクリル酸ブチルなどのアクリロイル化合物、メタクリル酸エチルなどのメタクリロイル化合物などが例示される。特に、オレフィン類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、アリルエーテル類、アリルエステル類が好ましく採用される。
オレフィン類としては炭素数2〜10程度のものが好ましく、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、アリルエーテル類、アリルエステル類としては、炭素数2〜15程度の直鎖状、分岐状又は脂環状のアルキル基を有するものが好ましく採用される。
これらの単量体は、炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一部がフッ素原子に置換されていてもよい。
【0072】
第1の含フッ素樹脂水分散体(A1)の含フッ素共重合体(A1’)は、フルオロオレフィンに基づく重合単位が20〜80モル%、親水性部位を有するマクロモノマーに基づく重合単位が0.1〜25モル%及び水酸基含有単量体に基づく重合単位が1〜40モル%の割合であることが好ましい。
フルオロオレフィンに基づく重合単位があまりに少ないと耐候性が十分に発揮されず、また多すぎると水分散性が極めて悪くなるため好ましくない。特に30〜70モル%であることが好ましい。
親水性部位を有するマクロモノマーに基づく重合単位が少なすぎると水分散性が極めて悪くなり、また多すぎると塗膜の耐候性、耐水性が悪くなるため好ましくない。特に造膜性に極めて優れた効果を達成させるために、この単位が0.3〜20モル%の割合で含まれることが好ましい。
【0073】
水酸基含有単量体に基づく重合単位は、共重合体の水酸基価が20mgKOH/gポリマー以上となるよう、含有することが望ましい。水酸基価が20mgKOH/gポリマー未満であると、水性ブロックイソシアネートや水性メラミンなどの硬化剤と架橋させたとき、塗膜の耐溶剤性などに格段の向上効果が認められない。特に好ましい水酸基価は40mgKOH/gポリマー以上である。
【0074】
乳化剤を用いなくても分散安定性が良好な第1の含フッ素樹脂水分散体(A1)が得られるが、乳化剤を用いることを除外するものではない。ノニオン性乳化剤としては、アルキルフェノールエチレンオキシド付加物、高級アルコールエチレンオキシド付加物、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーなどが挙げられる。アニオン性乳化剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、リン酸エステル塩などを例示しうる。
【0075】
乳化重合の開始は、通常の乳化重合の開始と同様に重合開始剤の添加により行われる。かかる重合開始剤としては、通常のラジカル開始剤を採用でき、水溶性開始剤が好ましい。具体的には過硫酸アンモニウム塩などの過硫酸塩、過酸化水素、又はこれらと亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなどの還元剤との組み合わせからなるレドックス開始剤、さらにこれらに少量の鉄、第一鉄塩、硫酸銀などを共存させた系の無機系開始剤、又はジコハク酸パーオキシド、ジグルタル酸パーオキシドなどの二塩基酸過酸化物、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリルなどの有機系開始剤が例示される。
重合開始剤の使用量は、その種類、乳化重合条件などに応じて適宜変更できるが、通常は乳化重合させるべき単量体100質量部あたり0.005〜0.5質量部程度が好ましい。また、これらの重合開始剤は一括添加してもよいが、必要に応じて分割添加してもよい。
【0076】
乳化物のpHを上昇させる目的で、pH調整剤を用いてもよい。かかるpH調整剤としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、オルトリン酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、テトラホウ酸ナトリウムなどの無機塩基及びトリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミンなどの有機塩基類などが例示される。
pH調整剤の添加量は、通常乳化重合媒体100質量部あたり0.05〜2質量部程度、好ましくは0.1〜2質量部程度である。pHの高い方が重合速度が速くなる傾向にある。
【0077】
また、乳化重合開始温度は重合開始剤の種類に応じて適宜最適値が選定されるが、通常は0〜100℃、特に10〜90℃程度が好ましく採用される。また反応圧力は適宜選定できるが、通常は0.1〜10MPa、特に0.2〜5MPa程度を採用するのが望ましい。
【0078】
かかる製造方法において、単量体、水、乳化剤、開始剤などの添加物をそのまま一括仕込みして重合してもよいが、分散粒子の粒子径を小さくして分散液の安定性及び塗膜の光沢などの諸物性を向上させる目的で、重合開始剤を添加する以前にホモジナイザーなどの撹拌機を用いて前乳化させ、その後に開始剤を添加して重合してもよい。単量体を分割して又は連続して添加してもよく、その際単量体組成は異なってもよい。
【0079】
第1の含フッ素樹脂水分散体(A1)において、水に分散又は溶解している合成樹脂中に占める含フッ素共重合体(A1’)の比率は、50質量%以上が好ましく、100質量%が最も好ましい。
第1の含フッ素樹脂水分散体(A1)中における合成樹脂の固形分濃度は、3〜50質量%であることが好ましく、30〜50質量%であることがより好ましい。
【0080】
<第2の含フッ素樹脂水分散体(A2)>
第2の含フッ素樹脂水分散体(A2)は、水性媒体(好ましくは水)に合成樹脂が分散又は溶解しており、該合成樹脂は含フッ素共重合体(A2’)を含んでいる。
第2の含フッ素樹脂水分散体(A2)は、硬化剤と組み合わせて使用される2液型である。
含フッ素共重合体(A2’)は、式(a1)で表される重合単位(a1)の40〜60モル%と、式(a2)で表される重合単位(a2)の3〜50モル%と、式(a3)で表される重合単位(a3)の4〜30モル%、式(a4)で表される重合単位(a4)の0.4〜7モル%からなる。各重合単位(a1)、(a2)、(a3)、(a4)の合計モル%の値は80〜100モル%、好ましくは95〜100である。
【0081】
重合単位(a1)は、下式(a1)で表される、フルオロオレフィン系化合物に基づく重合単位である。
−CFX−CX− …(a1)
ただし、式(a1)において、XおよびXは、それぞれ独立に水素原子、塩素原子またはフッ素原子であり、Xは水素原子、塩素原子、フッ素原子または−CY(Y、Y、Yはそれぞれ独立に水素原子、塩素原子またはフッ素原子である。)である。
【0082】
重合単位(a1)としては、下記のフルオロオレフィン系化合物に基づく重合単位を挙げることができる。
CF=CF、CClF=CF、CHCl=CF、CCl=CF、CClF=CClF、CHF=CCl、CH=CClF、CCl=CClF、CF=CH等のフルオロエチレン。
CFClCF=CF、CFCCl=CF、CFCF=CFCl、CFClCCl=CF、CFClCF=CFCl、CFClCF=CF、CFCCl=CClF、CFCCl=CCl、CClFCF=CCl、CClCF=CF、CFClCCl=CCl、CFClCCl=CCl、CFCF=CHCl、CClFCF=CHCl等のフルオロプロペン類。
これらの中で、CF=CF、CClF=CFが、塗膜の耐候性が優れ好ましい。
【0083】
含フッ素共重合体(A2’)における重合単位(a1)の含有割合は、40〜60モル%であり、45〜55モル%であることが好ましい。
重合単位(a1)の含有割合が上記範囲であると、充分な耐候性が得られ、ポリマーのガラス転移温度が高くなりすぎず、非晶質で良好な膜が得られる。
【0084】
重合単位(a2)は、下式(a2)で表される、アルキルビニルエーテル、アルキルビニルエステル、アルキルアリルエーテル、またはアルキルアリルエステルなどに基づく重合単位である。
【0085】
【化4】

【0086】
ただし、式(a2)中のRは水素原子またはメチル基、Rは炭素数1〜12のアルキル基または炭素数4〜10の1価の脂環式基であり、jは0〜8の整数、kは0または1である。
式(a2)で表わされる重合単位としては、j=0であり、k=0または1である、アルキルビニルエーテルまたはアルキルビニルエステルが好ましい。
【0087】
重合単位(a2)としては、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、酢酸ビニル、吉草酸ビニル、またはピバリン酸ビニルに基づく重合単位が挙げられ、これらの中から所望の塗膜物性(硬度、光沢、顔料分散性など)に応じた重合単位が適宜選択される。
これらの中で、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどに基づく重合単位が、重合単位(a1)との交互共重合性がよく、樹脂のガラス転位温度を調整しやすい点で好ましい。
重合単位(a2)が、含フッ素共重合体(A2’)の重合単位全体に対する割合は、3〜50モル%、好ましくは20〜45モル%である。2種以上の重合単位(a2)を用いてもよい。
【0088】
重合単位(a3)は、下式(a3)で表される、水酸基含有ビニルエーテル、水酸基含有ビニルエステル、水酸基含有アリルエーテル、または水酸基含有アリルエステルなどに基づく重合単位である。
【0089】
【化5】

【0090】
ただし、式(a3)中のRは水素原子またはメチル基、Rは炭素数1〜10のアルキレン基または炭素数4〜10の2価の脂環式基であり、mは0〜8の整数、nは0または1である。
【0091】
重合単位(a3)としては、2−ヒドロキシアルキルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルーテル、1−ヒドロキシメチル−4−ビニロキシメチルシクロヘキサン、または4−ヒドロキシプチルビニルエステルに基づく重合単位が挙げられるが、これらの中で重合性、架橋性などからヒドロキシアルキルビニルエーテルに基づく重合単位が好ましい。
含フッ素共重合体(A2’)における重合単位(a3)の含有割合は、4〜30モル%であり、8〜25モル%であることが好ましい。
重合単位(a3)の含有割合が少なすぎると、架橋をした際、架橋密度が低くなる。また、重合単位(a3)の含有割合が多すぎると、塗膜にしたときの耐水性の低下が懸念される。
【0092】
重合単位(a4)は、下式(a4)で表される重合単位である。
【0093】
【化6】

【0094】
ただし、式(a4)中のR、Rは式(a3)における各々と同じ意味であり、Rは炭素数2〜10のアルキレン基または炭素数4〜10の2価の脂環式基であり、Rは水素原子または−NHZ(Z、Z、Zはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基または炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基である。)であって、少なくとも一部のRは−NHZであることを必須とし、pは0〜8の整数、qは0または1である。
重合単位(a4)中に存在するRのうち、−NHZである割合は30〜100モル%であることが好ましく、50〜100モル%であることがより好ましい。
【0095】
含フッ素共重合体(A2’)における重合単位(a4)の含有割合は、0.4〜7モル%であり、1.4〜6モル%であることが好ましい。
重合単位(a4)の割合が上記範囲であると、水への溶解性または分散性に優れ、水中での安定性に優れる。
含フッ素共重合体(A2’)は、重合単位(a1)、重合単位(a2)、重合単位(a3)、重合単位(a4)以外の重合単位(以下、その他の重合単位という。)を、20モル%以下の含有割合で含んでいてもよい。
その他の重合単位としては、エチレン性単量体に基づく重合単位が挙げられる。
【0096】
含フッ素共重合体(A2’)の特に好ましい構成は、重合単位(a1)が45〜55モル%、重合単位(a2)が14〜45.6モル%、重合単位(a3)が8〜25モル%、重合単位(a4)が1.4〜6モル%であって、その他の重合単位を含有しない構成である。
【0097】
[その他の合成樹脂成分]
第2の含フッ素樹脂水分散体(A2)は、含フッ素共重合体(A2’)以外の他の合成樹脂が、含フッ素共重合体(A2’)と共に分散又は溶解していてもよい。他の合成樹脂としては、フッ素系、フェノール系、アルキド系、メラミン系、ユリア系、ビニル系、エポキシ系、ポリエステル系、ポリウレタン系、アクリル系などの合成樹脂が挙げられる。
フッ素系の合成樹脂としては、特許第2955336号に記載のフルオロオレフィンに基づく重合単位及び親水性部位を有するマクロモノマーに基づく重合単位を必須構成成分とする含フッ素共重合体が挙げられる。かかる含フッ素共重合体を含有させると、第2の含フッ素樹脂水分散体(A2)の機械的安定性および化学的安定性が改良される点で好ましい。
【0098】
第2の含フッ素樹脂水分散体(A2)において、水に分散又は溶解している合成樹脂中に占める含フッ素共重合体(A2’)の比率は、10〜100質量%が好ましく、50〜100質量%がより好ましい。
含フッ素共重合体(A2’)以外の他の合成樹脂として、フッ素系以外の合成樹脂を用いる場合は、優れた耐候性を付与する観点から含フッ素共重合体(A2’)の比率を55質量%以上とすることが好ましい。
第2の含フッ素樹脂水分散体(A2)中における合成樹脂の固形分濃度は、3〜50質量%であることが好ましく、30〜50質量%であることがより好ましい。
【0099】
第2の含フッ素樹脂水分散体(A2)は、有機溶媒を含まないもの、または、有機溶媒の含有量が10質量%以下、好ましくは3質量%以下であるものが好ましい。
含有し得る有機溶媒としては、例えば、後述のエステル化工程で用いる有機溶媒が残留したものが挙げられる。また、後述の含フッ素共重合体(B)の重合過程で用いられる有機溶媒が残留したものも挙げられる。
【0100】
〔第2の含フッ素樹脂水分散体(A2)の製造方法〕
第2の含フッ素樹脂水分散体(A2)の製造方法は、下記の含フッ素共重合体(B)と、二塩基性酸無水物とを有機溶媒中で反応させることにより、式(a3)で表される重合単位における水酸基の一部をエステル化しカルボキシ基を導入するエステル化工程と、塩基性化合物を加え、前記カルボキシ基の少なくとも一部を塩基性化合物で中和する中和工程と、水を加える工程と、有機溶媒を除去する溶媒除去工程とを備えている。
【0101】
[含フッ素共重合体(B)]
含フッ素共重合体(B)は、重合単位(a1)40〜60モル%、重合単位(a2)3〜50モル%、および重合単位(a3)4.4〜37モル%(ただし、式(a1)、式(a2)、式(a3)で表される各重合単位の合計モル%の値は80〜100モル%である。)から構成されている。
含フッ素共重合体(B)における重合単位(a3)のモル%は、含フッ素共重合体(A2’)における重合単位(a3)と、重合単位(a4)のモル%の合計に等しい。
【0102】
含フッ素共重合体(B)は、以下に示す、式(b1)で表される単量体、式(b2)で表される単量体、および式(b3)で表される単量体(以下、各々「単量体(b1)」のようにも記す。)を、重合触媒の共存下、あるいは非共存下に、重合開始剤あるいは電離性放射線などの重合開始源を作用せしめて、アルカリ条件下で共重合させることによって製造可能である。共重合反応系をアルカリ側に保つために、共重合反応は塩基性化合物の存在下で行う。
【0103】
単量体(b1)は、下式(b1)で表される化合物である。
CFX=CX ・・・式(b1)
ただし、式(b1)中のXおよびXは、それぞれ前記式(a1)における意味と同じである。
単量体(b2)は、下式(b2)で表される単量体である。
ただし、式(b2)中のR、R、j、kは、それぞれ前記式(a2)における意味と同じである。
【0104】
【化7】

【0105】
単量体(b3)は、下式(b3)で表される化合物である。
ただし、式(b3)中のR、R、m、nは、前記式(a3)における意味と同じである。
【0106】
【化8】

【0107】
単量体(b1)、単量体(b2)、単量体(b3)の仕込みの比率(モル%)は、各々含フッ素共重合体(B)を構成する重合単位(a1)、重合単位(a2)、重合単位(a3)のモル%と同じとする。
【0108】
重合開始剤としては、t−ブチルパーオキシアセテートのごときパーオキシエステル型過酸化物、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートのごときジアルキルパーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリルなどが用いられる。
重合開始剤の使用量は、種類、共重合反応条件に応じて適宜変更可能であるが、通常は共重合されるべき単量体全量に対して、0.05〜0.5質量%程度が採用される。
塩基性化合物の使用量は、共重合されるべき単量体全量に対して0.01〜20質量%、好ましくは0.1〜10質量%程度が採用される。
また、重合の際に存在させる塩基性化合物は、有機塩基性化合物、無機塩基性化合物の中から広範囲に選択可能である。有機塩基性化合物では、トリエチルアミンなどのアルキルアミン類、トリエチルホスフィンなどのアルキルホスフィン類などが好ましい。無機塩基性化合物では、炭酸カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酸化マグネシウムなどのアルカリ金属、若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化物または酸化物などが好ましい。
【0109】
含フッ素共重合体(B)を得るための共重合反応としては、溶液重合を採用することが好ましい。溶媒としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、1個以上のフッ素原子を含む飽和ハロゲン化炭化水素類、キシレンなどの芳香族炭化水素類などを使用することが好ましい。
共重合反応の反応温度は10℃〜90℃が好ましい。反応圧力は0〜2MPaが好ましく、0〜1MPaがより好ましい。
【0110】
含フッ素共重合体(B)の質量平均分子量は3000〜200000の範囲が好ましい。質量平均分子量が3000未満の場合は、塗膜にした場合の耐候性が低下する場合がある。質量平均分子量が200000超の場合は塗装性が低下し、塗膜外観が低下する場合がある。
【0111】
[エステル化工程]
エステル化工程では、有機溶媒中で、含フッ素共重合体(B)に、二塩基性酸無水物を反応させることにより、(a3)で表される重合単位(a3)における水酸基の一部をエステル化しカルボキシ基を導入する。
二塩基性酸無水物としては無水コハク酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸、無水アジピン酸、無水1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、無水cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、無水フタル酸、無水1,8−ナフタル酸、無水マレイン酸等が好ましく採用される。
【0112】
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第2級ブタノール、第3級ブタノール、ペンタノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、第2級ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール誘導体;エチレングリコールエチルエーテルアセテート;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族化合物などが挙げられ、含フッ素重合体(B)および二塩基性酸無水物の溶解性などを勘案して適宜選定される。
なお、含フッ素共重合体(B)を製造する場合の重合過程で用いた有機溶媒が充分に残留していれば、エステル化工程において新たに有機溶媒を添加する必要はない。
【0113】
エステル化工程では、触媒を併用することが可能である。かかる触媒としては、カルボン酸金属塩、水酸化アルカリ、アルカリ金属炭酸塩、4級アンモニウム塩、3級アミンが用いられるが、好ましくはトリエチルアミンなどの3級アミンが挙げられる。
エステル化工程の反応温度は、室温〜150℃が好ましく、50〜100℃がより好ましい。反応時間は数10分から数時間程度である。
【0114】
反応させる二塩基性酸無水物の量は、結果的に、得られる含フッ素共重合体(A2’)における、重合単位(a4)の含有割合が0.4〜7モル%となり、重合単位(a3)の含有割合が4〜30モル%残存するように調整して決定される。
エステル化反応後の重合単位(a4)の量は、酸価を測定することによって確認できる。エステル化反応後の酸価が2〜35mgKOH/gであると、重合単位(a4)が0.4〜7モル%であることが確認できる。
エステル化反応前の重合単位(a3)の量は、エステル化前の水酸基価から確認できる。重合単位(a3)が4〜30モルであるためには、エステル化前の水酸基価が20〜150mgKOH/gであって、エステル化後の酸価が上記範囲であることが必要である。
【0115】
[中和工程]
中和工程では、エステル化された含フッ素共重合体(B)に塩基性化合物を加え、エステル化工程で導入されたカルボキシ基の少なくとも一部を塩基性化合物で中和する。重合単位(a4)中、塩基性化合物で中和する割合は30〜100モル%であることが好ましく、50〜100モル%であることがより好ましい。
中和工程の反応は、塩基性化合物または塩基性化合物の水溶液を、エステル化された含フッ素共重合体(B)が溶解した有機溶媒に対して、室温で数10分撹拌しながら加えれば、充分に進行する。
【0116】
中和工程では、エステル化された含フッ素共重合体(B)が溶解した有機溶媒に対して、塩基性化合物を加えると共に水も加える。水は、塩基性化合物と同時に加えても別々に加えても、一部を同時に加えて残りを別々に加えてもよい。一部または全部を同時に加える場合には、塩基性化合物の水溶液とすることが好ましい。別々に加える場合には、塩基性化合物を加える前に加えても、後に加えてもよい。
中でも、塩基性化合物を加えた後に水を加える方法と、塩基性化合物の水溶液を加える方法が好ましい。
中和工程で加える水の量は、エステル化された含フッ素共重合体(B)の固形分濃度が、3〜50質量%、特には15〜35質量%となるようにすることが好ましい。
【0117】
中和工程で用いる塩基性化合物は、塗膜中に塩基性化合物が残留しにくくなることから、沸点が200℃以下であることが好ましい。
かかる塩基性化合物としては、アンモニア;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン等の1級、2級または3級のアルキルアミン類;モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール等のアルカノールアミン類;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のジアミン類;エチレンイミン、プロピレンイミン等のアルキレンイミン類;ピペラジン、モルホリン、ピラジン、ピリジン等が挙げられる。
【0118】
[溶媒除去工程]
溶媒除去工程では、有機溶媒を除去する。これにより、有機溶媒が全質量に対して10質量%以下である水性塗料組成物が得られる。
ここで除去すべき溶媒としては、エステル化工程で用いた有機溶媒が残留したものが挙げられる。また、含フッ素共重合体(B)を製造する場合の重合過程で用いられた有機溶媒が残留したものが挙げられる。
溶媒の除去は、減圧留去により行うことができる。
【0119】
[硬化剤]
第2の含フッ素樹脂水分散体(A2)は硬化剤と組み合わせて用いられる2液型である。硬化剤によっては、常温乾燥でも架橋が可能であり、第2の含フッ素樹脂水分散体(A2)と硬化剤とを混合した後に塗布することにより塗膜を形成できる。架橋に加熱が必要な場合は、さらに加熱焼き付けすることにより塗膜を形成できる。
【0120】
第2の含フッ素樹脂水分散体(A2)と併用される硬化剤は、水酸基またはカルボキシ基と反応する官能基を有する、水溶性または水分散型の硬化剤である。
具体的には、イソシアネート系化合物、メラミン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂などが挙げられる。特にイソシアネート系化合物が耐候性、機械的性質に優れた塗膜が得られやすいため好ましい。
【0121】
イソシアネート系化合物としては、機械的に水に分散させたもの、または自己乳化性のポリイソシアネート化合物が好ましい。自己乳化性のポリイソシアネート化合物とは、乳化剤なしに水に乳化分散可能な化合物のことである。
機械的に水に分散させるポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート類;m−またはp−フェニレンジイソシアネート、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネート−3,3’−ジメチルジフェニルなどの芳香族ポリイソシアネート類;ビス−(イソシアネートシクロヘキシル)メタン、イソホロンジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネート類;クルードトリレンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネートなどのクルードポリイソシアネート類;カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリオール変性ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリオール変性ヘキサメチレンジイソシアネートなどの変性ポリイソシアネート類が挙げられる。
【0122】
これらのポリイソシアネート類はビューレット型、イソシアヌレート環型、ウレトジオン型等により、2量体または3量体になっているもの、あるいはイソシアネート基をブロック化剤と反応させたブロックポリイソシアネート類であってもよい。
ブロック化剤としては、アルコール類、フェノール類、カプロラクタム類、オキシム類、活性メチレン化合物類などが挙げられる。
上記のポリイソシアネート類は、2種以上併用してもよい。
ポリイソシアネート類は、機械的に水に分散させたものが使用される。
機械的に水に分散させるポリイソシアネート類は、比較的低粘度のものが好ましい。この分散の際に乳化剤を添加すると、より安定な分散体が得られる。ここで使用する乳化剤としては、公知のものが特に限定なく使用されるが、イオン性、特に、活性水素原子を有するものは、分散時に反応して増粘したり、分散性が低下したりするため好ましくない。非イオン性乳化剤、特にポリオキシエチレン鎖を有する乳化剤が好ましい。
【0123】
ブロックポリイソシアネート類は、通常140℃以上でないと硬化しないため、それより低い温度で硬化させる場合には、ブロック化されていないポリイソシアネート類を使用することが好ましい。
また、自己乳化性のポリイソシアネート化合物としては、上記のごときポリイソシアネート類に親水性のポリオキシアルキレン類を反応せしめたプレポリマーなどが例示できる。
親水性のポリオキシアルキレン類としては、イソシアネート反応性基を少なくとも1個有する、数平均分子量が200〜4000の範囲のものが好ましい。特に好ましくは分子量が300〜1500の範囲のポリオキシアルキレンポリオールまたはポリオキシアルキレンモノオールである。分子量の小さいものは自己乳化性が充分に達成されず、分子量の高いものは、自己乳化性は良好であるが、水中安定性が悪くなり、また、結晶性が高くなるため、低温性での貯蔵安定性が低下し、濁りが発生する。
ポリオキシアルキレン類におけるオキシアルキレン鎖としては、その全部または多くがオキシエチレン基であるものが親水性の面から好ましい。
【0124】
ポリイソシアネート類とポリオキシアルキレングリコール類の反応は、3級アミン類、アルキル置換エチレンイミン類、3級アルキルホスフィン類、金属アルキルアセトネート類、有機酸金属塩類等の触媒の存在下、必要に応じて助触媒の存在下に100℃以下で行う。また、反応に際しては、残存イソシアネート基の量が10〜24質量%、特には15〜20質量%となるように調整することが好ましい。
残存イソシアネート基の量が少ないと含フッ素共重合体(A2’)との反応性が低下することがあり好ましくない。また、充分な架橋度を達成するために多量のイソシアネート化合物が必要となるため、塗膜の耐候性に悪い影響を与えることがあり好ましくない。残存イソシアネート基の量が多すぎると安定な乳化液が形成されにくいため好ましくない。
自己乳化性のイソシアネート化合物は特公平4−15270号公報などに記載されている。
【0125】
硬化剤としてのメラミン樹脂は、メチルエーテル化、ブチルエーテル化、イソブチルエーテル化などのアルキルエーテル化されたメラミン樹脂が挙げられ、水溶性の面から、少なくとも一部がメチルエーテル化されたメラミン樹脂が好ましい。
第2の含フッ素樹脂水分散体(A2)と硬化剤とを併用する場合、不揮発分(固形分)基準での両者の質量比「(A2)/硬化剤」は、50〜95/5〜50が好ましく、65〜90/10〜35がより好ましい。
【0126】
<塗料用添加剤>
本発明の水性塗料用組成物は、合成樹脂水分散体と低汚染化剤を含む。該水性塗料用組成物は、そのままで水性塗料として使用することができる。または、合成樹脂水分散体と低汚染化剤の他に、塗料用添加剤として公知の成分を含有させた水性塗料用組成物を水性塗料として使用することができる。塗料用添加剤として、例えば、通常塗料に用いられる造膜助剤、無機系着色顔料、有機系着色顔料、体質顔料などを配合できる。また必要に応じて硬化触媒を配合できる。さらに、本発明の効果に影響しない程度の可塑剤、防腐剤、防黴剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの添加剤を単独あるいは併用して配合することができる。
【0127】
<水性塗料用キット>
本発明の水性塗料用キットは、合成樹脂水分散体と低汚染化剤の2液を、互いに混合されない状態で備えており、これらを混合することにより水性塗料用組成物を調製できる。塗料用添加剤を水性塗料用組成物に配合する場合は、該2液の一方または両方に適宜含有させることができる。
また合成樹脂水分散体が2液型である場合、水性塗料用キットは、合成樹脂水分散体と、硬化剤の水溶液または水分散体と、低汚染化剤の3液を、互いに混合されない状態で備えることが好ましい。該3液を混合することにより水性塗料用組成物を調製できる。塗料用添加剤を水性塗料用組成物に配合する場合は、該3液のうちの1液以上に適宜含有させることができる。
いずれの場合も、低汚染化剤の使用量は、合成樹脂水分散体中の固形分100質量部に対する、低汚染化剤中の含フッ素共重合体(f)の割合(単位:質量部)が0.5〜30質量部となる範囲が好ましく、5〜20質量部がより好ましい。
【0128】
<水性塗料用組成物の用途>
本発明の低汚染化剤を含有する水性塗料用組成物は、金属、ガラス、磁器タイル、コンクリート、サイディングボード、押出成形板、プラスチック等の各種素材の表面仕上げに使用することができ、主に建築物、土木構築物等の躯体の保護に好適である。すなわち最外層を形成する塗料として好適である。
水性塗料用組成物は、基材に直接塗装してもよく、公知の表面処理(下地処理等)を施した上に塗装してもよい。塗装方法としては、ハケ塗り、スプレー塗装、ローラー塗装、ロールコーター、フローコータ−等種々の方法を用いることができる。さらに、建材表面に工場等においてプレコートすることも可能である。
【0129】
本発明によれば、後述の実施例に示されるように、水性塗料用組成物に本発明の低汚染化剤を含有させることにより、塗膜表面の親水性を維持または向上しつつ撥油性を向上させることができる。塗膜の撥油性が向上すると油性汚れが付着し難くなり(汚れ防止)、塗膜の親水性が向上すると付着した汚れが降雨等の水滴で洗い流され易くなる(易洗浄性)。したがって、塗膜表面の親水性および撥油性の一方または両方を向上させることにより、塗膜表面の自己浄化機能を向上させることができる。
前記特許文献3の記載には、本発明における含フッ素共重合体(f)と同様の主鎖骨格を有する含フッ素共重合体を繊維製品に付着させると撥水性および撥油性が向上することが記載されているが、含フッ素共重合体(f)を水性塗料用組成物に含有させると塗膜表面の親水性が維持または向上するとともに撥油性が向上するというのは驚くべき効果である。
また、本発明の低汚染化剤は、例えばアルコキシシラン変性縮合物のように反応性が高くないため、これを水性塗料用組成物に含有させても貯蔵安定性は損なわれ難い。
さらに、揮発性の有機溶剤の含有量が少ない水性塗料用組成物で自己浄化機能が向上された塗膜を形成できるため、環境上好ましい。
【実施例】
【0130】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[接触角の測定方法]
実施例および比較例において塗膜の接触角の測定は下記の方法で行った。
すなわち、空気中にて塗膜に水、および流動パラフィンの液滴を落とした際のそれぞれの接触角を協和界面科学社製接触角計CA−X型を用いて測定した。水の接触角が小さいほど親水性が高く、流動パラフィンの接触角が大きいほど撥油性が高いことを示す。
【0131】
[調製例1:低汚染化剤の調製]
100mLのガラス製容器に、単量体(a)としてC13OCOC(CH)=CH(純度99.7質量%。以下、C6FMAとあらわす。)の19g(54質量部)、
単量体(b)としてCH=C(CH)COO(CO)CH(ただし−CO−の鎖長は平均値である。以下、MEO400Mとあらわす。)の9.1g(26質量部)、およびCH=C(CH)COO(CO)(CO)10Hの5.6g(16質量部)、単量体(c)として、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(以下、DMとあらわす。)の0.7g(2質量部)、単量体(d)として2−イソシアネートエチルメタクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体(以下I35DPとあらわす。)の0.7g(2質量部)、重合溶媒としてアセトンの50.1g(143質量部)、および重合開始剤として4,4´−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(以下、ACPとあらわす。)の0.28g(0.8質量部)を仕込み、窒素雰囲気下で振とうしつつ、65℃で20時間重合を行い、固形分濃度40.5質量%の淡黄色溶液(含フッ素共重合体を含む重合体溶液)を得た。得られた重合体溶液を室温にて減圧乾燥し得られた含フッ素共重合体の分子量を測定した。数平均分子量(Mn)は14000、質量平均分子量(Mw)は28000であった。また、ガスクロマトグラフィーにて重合が進行していることも確認した。
さらに、得られた含フッ素共重合体の末端基を、トリエチルアミンを用いてアニオン化する処理を行った。すなわち、得られた重合体溶液の50gに、水の60gとトリエチルアミンの0.25gを添加し、撹拌してアミン塩化処理を行った。この後、減圧条件下にて60℃でアセトンを除去し、淡黄色透明な水分散液を得た後、イオン交換水を加えて固形分濃度が20質量%である水分散液を得た。得られた水分散液をキャピラリーガスクロマトグラフィーにて測定したところ、アセトン含有量が1質量%以下であることを確認した。
【0132】
[調製例2:合成樹脂水分散体(第1の含フッ素樹脂水分散体(A1−1))の調製]
内容積2500mLのステンレス製撹拌機付きオートクレーブ中に、水1280g、エチルビニルエーテル(EVE)の185g、シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)の244g、親水性マクロモノマー(CM−EOVE)の47g、水酸基含有単量体(CHMVE)の194g、イオン交換水1280g、炭酸カリウム(KCO)2.0g、過硫酸アンモニウム(APS)1.3g、ノニオン性乳化剤(Newcol−2320:日本乳化剤社製)33g、アニオン性乳化剤(ラウリル硫酸ナトリウム)1.4gを仕込み、氷で冷却して、窒素ガスを0.4MPaGになるよう加圧し脱気した。この加圧脱気を2回繰り返した後0.095MPaGまで脱気して溶存空気を除去した後、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)664gを仕込み、50℃で24時間反応を行った。24時間反応を行った後、反応器を水冷して反応を停止した。この反応液を室温まで冷却した後、未反応モノマーをパージし、固形分濃度50質量%の第1の含フッ素樹脂水分散体(A1−1)を得た。これに含まれる含フッ素共重合体の水酸基価は55mgKOH/gであった。
なお本例で使用した親水性マクロモノマー(CM−EOVE)と水酸基含有単量体(CHMVE)の構造は次の通りである。
CM−EOVE:CH=CHOCH−cycloC10−CHO(CHCHO)nH(平均分子量830)
CHMVE:CH=CHOCH−cycloC10−CHOH
【0133】
[調製例3:合成樹脂水分散体(第2の含フッ素樹脂水分散体(A2−1))の調製]
含フッ素共重合体(B)として旭硝子社製ルミフロンフレーク(製品名、クロロトリフルオロエチレン/エチルビニルエーテル/シクロヘキシルビニルエーテル/ヒドロキシブチルビニルエーテルのモル%比が50/15/15/20、水酸基価100mgKOH/g、Mw7000)を、メチルエチルケトン(MEK)に溶解させて固形分60質量%のワニスを得た。
このワニス300gに、無水こはく酸の4.8g、及び触媒としてトリエチルアミンの0.072gを加え、70度で6時間反応させエステル化した。反応液の赤外吸収スペクトルを測定したところ、反応前に観測された無水酸の特性吸収(1850cm−1、1780cm−1)が反応後では消失しており、カルボン酸(1710cm−1)およびエステル(1735cm−1)の吸収が観測された。エステル化後の含フッ素共重合体の水酸基価は85mg/KOH、酸価は15mgKOH/gであった。
次に、エステル化後の含フッ素共重合体に、トリエチルアミンの4.9gを加え室温で20分撹拌しカルボン酸を中和し、イオン交換水の180gを徐々に加えた。
最後に、アセトンおよびメチルエチルケトンを減圧留去した。イオン交換水を用いて、固形分濃度50質量%の第2の含フッ素樹脂水分散体(A2−1)を調製した。
【0134】
[調製例4:顔料組成物の調製]
酸化チタン(ディポン社製、製品名:Tipure R−706)の210質量部、顔料分散剤としてDisperbyk190(製品名、ビックケミー社製、顔料に親和性のある共重合物、酸価10mgKOH/g)の21質量部、消泡剤としてデヒドラン1620(製品名、コグニス社製)の4.5質量部、イオン交換水の64.5質量部、ガラスビーズの300質量部を混合し、分散機を用いて分散し、ガラスビーズを濾過により除去して顔料組成物を調製した。
【0135】
[実施例1]
調製例4で得た顔料組成物の55gに、調製例2で得た第1の含フッ素樹脂水分散体(A1−1)の193g、造膜助剤としてジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテルの15g、増粘剤としてベルモドール2150(製品名、アクゾノーベル社製)の0.5g、調製例1で得た低汚染化剤の30gを加えて混合し、水性塗料用組成物を調製した。得られた水性塗料用組成物をフィルムアプリケータを用いてアルミニウム板(厚さ1mm、表面をクロメート処理)に乾燥膜厚40μmになるよう塗布し、80℃にて60分間焼付けして試験片を作製した。得られた試験片について、塗膜の接触角を上記の方法で測定した。その結果を表1に示す。
【0136】
[実施例2]
調製例4で得た顔料組成物の55gに、調製例3で得た第2の含フッ素樹脂水分散体(A2−1)の193g、表面調整剤としてBYK−348(製品名、ビックケミー社製)の1.3g、増粘剤としてベルモドール2150(製品名:アクゾノーベル社製)の0.5部、調製例1で得た低汚染化剤の30g、水分散型イソシアネート硬化剤としてバイヒジュール3100(製品名、住化バイエル社製)の25gを加えて混合し、水性塗料用組成物を得た。実施例1と同様にして試験片を作製し、塗膜の接触角を測定した。その結果を表1に示す。
【0137】
[比較例1]
実施例1において、低汚染化剤を添加しない以外は同様にして水性塗料用組成物を調製した。実施例1と同様にして試験片を作製し、塗膜の接触角を測定した。その結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例2において、低汚染化剤を添加しない以外は同様にして水性塗料用組成物を調製した。実施例1と同様にして試験片を作製し、塗膜の接触角を測定した。その結果を表1に示す。
【0138】
【表1】

【0139】
表1の結果に示されるように、水性塗料用組成物が低汚染化剤を含有しない比較例1に比べて、実施例1は水接触角が低減し、流動パラフィン接触角が増大した。このことから、実施例1は比較例1に比べて、塗膜の親水性および撥油性が向上し、塗膜表面の自己浄化機能が向上したことがわかる。
また、水性塗料用組成物が低汚染化剤を含有しない比較例2に比べて、実施例2は水接触角がほぼ同じであり、流動パラフィン接触角が増大した。このことから、実施例2は比較例2と比べて、塗膜の親水性がほぼ維持されながら撥油性が向上し、塗膜表面の自己浄化機能が向上したことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記単量体(a)に基づく重合単位(a’)の30〜70質量%、
下記単量体(b)に基づく重合単位(b’)の20〜69質量%、
下記単量体(c)に基づく重合単位(c’)の1〜10質量%を含む含フッ素共重合体(f)を含有することを特徴とする水性塗料用低汚染化剤。
単量体(a):(Z−Y)Xで表される化合物。
ただし、式中Zは炭素数1〜24のペルフルオロアルキル基またはC2m+1O(CFWCFO)CFK−(mは1〜24の整数、dは0〜4の整数、WおよびKはそれぞれ独立にフッ素原子またはトリフルオロメチル基。)で表される1価の基を表し、
Yは2価の有機基または単結合を表し、
nは1または2であり、
nが1のとき、Xは−CR=CH、−COOCR=CH、−OCOCR=CH、−OCH−φ−CR=CHまたは−OCH=CHを表し、
nが2のとき、Xは−CH[−(CHCR=CH]−、−CH[−(CHCOOCR=CH]−、−CH[−(CHOCOCR=CH]−、または−OCOCH=CHCOO−を表し、Rは水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、φはフェニレン基であり、pは0〜4の整数である。
単量体(b):CH=CR−COO−(RO)−Rで表される化合物。
ただし、式中のRは水素原子またはメチル基を表し、Rは、炭素数2〜4のアルキレン基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、(メタ)アクリロイル基、またはグリシジル基を表し、qは1〜140の整数を表す。qが2〜140のとき、一分子中に存在する複数の−(RO)−は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
単量体(c):CH=CR−M−Q−NRまたはCH=CR−M−Q−N(O)Rで表される化合物。
式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Mは−COO−または−CONH−を表し、Qは炭素数2〜4のアルキレン基または水素原子の一部または全部が水酸基で置換された炭素数2〜3のアルキレン基を表し、RおよびRはそれぞれ独立に、ベンジル基、炭素数1〜8のアルキル基、水素原子の一部が水酸基で置換された炭素数2〜3のアルキル基を表し、R、Rおよび窒素原子がピペリジノ基またはピロリジニル基を形成してもよく、R、R、酸素原子、窒素原子がモルホリノ基を形成してもよい。
【請求項2】
合成樹脂水分散体と、請求項1に記載の水性塗料用低汚染化剤を含む水性塗料用組成物。
【請求項3】
前記合成樹脂水分散体中の固形分100質量部に対して、前記水性塗料用低汚染化剤中の前記含フッ素共重合体(f)が0.5〜30質量部である、請求項2記載の水性塗料用組成物。
【請求項4】
前記合成樹脂水分散体が、フルオロオレフィンに基づく重合単位、親水性部位を有するマクロモノマーに基づく重合単位、及び一般式:X’−Y’−Z’(ここでX’はラジカル重合性不飽和基、Y’はn−ノニレン基またはシクロヘキサン−1,4−ジメチレン基、Z’は水酸基)で表される水酸基含有単量体に基づく重合単位を必須構成成分とする含フッ素共重合体(A1’)を含有する、請求項2または3に記載の水性塗料用組成物。
【請求項5】
前記合成樹脂水分散体が、式(a1)で表される重合単位40〜60モル%、式(a2)で表される重合単位3〜50モル%、式(a3)で表される重合単位4〜30モル%、式(a4)で表される重合単位0.4〜7モル%(ただし、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)で表される各重合単位の合計モル%の値は80〜100である。)からなる含フッ素共重合体(A2’)を含有する、請求項2または3に記載の水性塗料用組成物。
−CFX−CX− ・・・式(a1)
[ただし、式(a1)において、XおよびXは、それぞれ独立に水素原子、塩素原子またはフッ素原子であり、Xは塩素原子、フッ素原子または−CY(Y、Y、Yはそれぞれ独立に水素原子、塩素原子またはフッ素原子である。)である。]
【化1】

[ただし、式(a2)において、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数1〜12のアルキル基、または炭素数4〜10の1価の脂環式基であり、jは0〜8の整数、kは0または1である。]
【化2】

[ただし、式(a3)において、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数1〜10のアルキレン基、または炭素数4〜10の2価の脂環式基であり、mは0〜8の整数、nは0または1である。]
【化3】

[ただし、式(a4)において、RおよびRは式(3)における各々と同じ意味であり、Rは炭素数2〜10のアルキレン基または炭素数4〜10の2価の脂環式基であり、Rは水素原子または−NHZ(Z、Z、Zはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基である。)であって、少なくとも一部のRは−NHZであることを必須とし、pは0〜8の整数、qは0または1である。]
【請求項6】
水性塗料用組成物を調製するのに用いられるキットであって、
合成樹脂水分散体と、請求項1に記載の水性塗料用低汚染化剤を備える水性塗料用キット。

【公開番号】特開2012−77225(P2012−77225A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224964(P2010−224964)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】