説明

水性塗料用粘性調整剤及びこれを含有してなる塗料

【課題】
大きな垂れ止め効果が得られ、且つレベリング性、ワキ防止性、耐水性等に悪影響を与えない水性塗料及びこれに添加する粘性調整剤を提供することを目的とする。
【解決手段】
式(1)のポリオキシアルキレン化合物を含有してなる水性塗料用粘性調整剤を用いる。
−L(−U−L−S−L)−U−L−S (1)
は式(2)の基、Sは式(3)の基、Lはジイソシアネートの反応残基又はジグリシジルエーテルの反応残基、Uは式(4)の基、qは0〜2。


Qは非還元性の二又は三糖類の残基、OAはオキシアルキレン、Zはアルキレン又はアリーレン、nは3〜50、tは2〜4、mは5〜25

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性塗料用粘性調整剤及びこれを含有してなる塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、塗料は急速に水性化し、工業用塗装ラインにおける熱硬化型塗料の水性化への動きにもめざましいものがあり、近い将来自動車のベースコート、中塗り塗料もその殆どすべてが水性化される勢いとなっている。しかし水性塗料はその溶媒の主成分が水であることから塗料の粘度低下効果が低く、スプレー塗装を可能とするには塗料濃度(樹脂、顔料成分等の塗料中に占める割合)を低く設定せざるを得ない場合が多い。この場合、スプレー塗装後に塗料がタレる(垂れる)という不具合が生じるという問題点がある。これを防止するため粘性調整剤(垂れ防止剤)が添加されるが、これによりさらに粘度の増大を招くという負のサイクルが発生する。また、粘性調整剤の強い親水性のため、粘性調整剤の添加によって形成された塗膜の耐水性が低下するという問題等があり、これらの諸問題を解決できる粘性調整剤の開発が望まれていた。
【0003】
これらの諸問題を解決する手段として、架橋したコアと疎水性のシェルを有するコア/シェル型エマルション樹脂(A)、末端に嵩高い疎水性基を有する粘性調整剤(B)及び比較的多量の疎水性溶媒(C)を含有する水性塗料(特許文献1)や、両末端に疎水性の強いアルキル基等を持つポリオキシアルキレン系ウレタン樹脂を添加した水性塗料(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】再公表2007−126134号公報
【特許文献2】特開2001−254068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の水性塗料では、特殊なエマルション樹脂を使用すること、また比較的多量の疎水性溶媒を使用すること等により、塗料の価格が高くなりやすく、疎水性溶媒の使用が問題となる場合がある。
【0006】
一方、特許文献2に記載の水性塗料では、ウレタン樹脂を構成する両末端の疎水基の影響を受けるためポリオキシアルキレン鎖の親水性を大きくせざるを得ず、結果的に耐水性が低下する場合があるという問題がある。また、何れもエマルション樹脂のネットワーク化による増粘機構のため、垂れ止め効果が大きければ必然的にレベリング性に悪影響が出る等の問題がある。
そこで、本発明は、大きな垂れ止め効果が得られ、且つレベリング性、ワキ防止性、耐水性等に悪影響を与えない水性塗料及びこれに添加する粘性調整剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に達した。すなわち、本発明の塗料用粘性調整剤の特徴は、一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(Y1)を含有してなる点を要旨とする。
【0008】

−L(−U−L−S−L)−U−L−S (1)

【0009】
ただし、Sは一般式(2)で表される基、Sは一般式(3)で表される基、Lは炭素数6〜20のジイソシアネートの反応残基又は炭素数10〜50のジグリシジルエーテルの反応残基、Uは一般式(4)で表される基、qは0、1又は2を表す。
【0010】
【化1】

【0011】
Qは非還元性の二又は三糖類のt個の1級水酸基から水素原子を除いた残基、OAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、Zは炭素数2〜15のアルキレン基又はアリーレン基、Oは酸素原子、Hは水素原子、nは3〜50の整数、tは2〜4の整数、mは5〜25の整数を表し、S単位又はS単位に含まれるOAの総数はそれぞれ10〜100の整数であり、S、S、L、U、(OA)n、(OA)m、Q、n、mは、それぞれ同じでも異なってもよい。
【0012】
また、本発明の塗料用粘性調整剤の製造方法の特徴は、非還元性の二又は三糖類(a1)1モル部と、炭素数2〜4のアルキレンオキシド(a2)10〜100モル部との化学反応(1)から化合物(a12)を得る工程(1);
炭素数2〜15のグリコール(a3)1モル部と炭素数2〜4のアルキレンオキシド(a2)10〜50モル部との化学反応(2)から化合物(a32)を得る工程(2);及び
化合物(a12)1モル部と、化合物(a32)0.1〜0.75モル部と、炭素数6〜20のジイソシアネート(a4)0.5〜1.5モル部との化学反応(3)、又は化合物(a12)1モル部と、化合物(a32)0.1〜0.75モル部と、炭素数10〜50のジグリシジルエーテル(a5)0.5〜1.5モル部との化学反応(4)から、ポリオキシアルキレン化合物(Y1)を得る工程(3)を含む点を要旨とする。
【0013】
また、本発明の塗料の特徴は、水性ベース塗料と上記の粘性調整剤とからなり、この粘性調整剤の含有量が水性ベース塗料及び粘性調整剤の重量に基づいて1〜5重量%である点を要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水性塗料用粘性調整剤は、大きな垂れ止め効果が得られ、且つレベリング性、ワキ防止性、耐水性等に悪影響を与えない。
【0015】
本発明の塗料用粘性調整剤の製造方法によると、上記の粘性調整剤を効率的に得ることができる。
【0016】
本発明の塗料は、上記の粘性調整剤を含むため、大きな垂れ止め効果が得られ、且つレベリング性、ワキ防止性、耐水性等が良好となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
炭素数6〜20のジイソシアネートの反応残基又は炭素数10〜50のジグリシジルエーテルの反応残基(L)のうち、ジイソシアネートの反応残基(LD)としては、−CO−NH−X−NH−CO−で表される基が含まれる。
【0018】
Xは、アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン及びアルアルキレン(アリールアルキレン)が含まれ、これらの基に含まれる水素原子の一部がハロゲン原子及び/又は炭素数1〜6のアルコキシ等で置換されていても構わず、またこれらの基同士がオキサ基(−O−)又はスルホニル基(−SO−)で結合されていてもよい。
【0019】
アルキレンとしては、炭素数4〜8のアルキレン等が用いられ、ブチレン、ヘキサメチレン及び2−エチルヘキシレン等が挙げられる。
【0020】
シクロアルキレンとしては、炭素数6〜15のシクロアルキレン等が用いられ、シクロヘキシレン、ジシクロヘキシレン、メチルシクロヘキシレン、トリメチルシクロヘキシレン、ノニルシクロヘキシレン、-(ch)-CH-(ch)-で表される基、-CH-(ch)-CH-で表される基、-(ch)-C(CH-(ch)-で表される基、-(ch)-CHCH-(ch)-で表される基及び-(tmch)-CH-で表される基等が挙げられる。なお、(ch)はシクロヘキシレン、(tmch)はトリメチルシクロヘキシレンを表す(以下同様)。これらの他、-(ch)-O-(ch)-で表される基、-(ch)-SO-(ch)-で表される基、クロロシクロヘキシレン及びメトキシシクロヘキシレン等も使用できる。
【0021】
アリーレンとしては、炭素数6〜15のアリーレン等が用いられ、フェニレン、トリレン、メチルフェニレン、エチルフェニレン、テトラメチルフェニレン、キシリレン、ノニルフェニレン、ナフチレン、ビフェニリレン、ジメチルビフェニリレン、アントリレン、フェナントリレン、-(ph)-CH-(ph)-で表される基、-(ph)-C(CH-(ph)-で表される基、-(ph)-CHCH-(ph)-で表される基及び-CH-(ch)-CH-で表される基等が挙げられる。なお、(ph)はフェニレンを表す(以下同様)。これらの他、-(ph)-O-(ph)-で表される基、-(ph)-SO-(ph)-で表される基、ブロモフェニレン、クロロナフチレン、クロロビフェニレン及びメトキシフェニレン等も使用できる。
【0022】
アルアルキレンとしては、炭素数7〜18のアルアルキレン等が用いられ、フェニルエチレン、トリルブチレン、エチルフェニルエチレン、キシリルヘキシレン、ノニルフェニルエチレン、ナフチルブチレン、ビフェニリルエチレン及びフェナントリルプロピレン等が挙げられる。これらの他、ブロモフェニルエチレン、クロロビフェニリルエチレン、メトキシフェニルエチレン、ブトキシナフチルブチレン及びジエトキシビフェニリルエチレン等も使用できる。
【0023】
これらのXのうち、アルキレン、シクロアルキレン及びアリーレンが好ましく、さらに好ましくはヘキサメチレン、-(tmch)-CH-で表される基及びキシリレン、特に好ましくはヘキサメチレンである。
【0024】
また、反応残基(L)のうち、炭素数10〜50のジグリシジルエーテルの反応残基(LG)としては、炭素数10〜50のジグリシジルエーテルのエポキシ基が開環反応した残基が含まれる。
【0025】
このようなジグリシジルエーテルの反応残基としては、2,11−ジヒドロキシ−4,9−ジオキサドデシレン{−CHCH(OH)CHOCHCHCHCHOCHCH(OH)CH−}、2,6,10−トリヒドロキシ−4,8−ジオキサウンデシレン{−CHCH(OH)CHOCHCH(OH)CHOCHCH(OH)CH−}、2,10−ジヒドロキシ−4,8−ジオキサ−6,6−ジメチルウンデシレン{−CHCH(OH)CHOCHC(CHCHOCHCH(OH)CH−}、2,13−ジヒドロキシ−4,11−ジオキサテトラデシレン{−CHCH(OH)CHOCHCHCHCHCHCHOCHCH(OH)CH−}、2,10−ジヒドロキシ−4,8−ジオキサ−6−ヒドロキシメチル−6−エチルウンデシレン{−CHCH(OH)CHOCHC(C)(CHOH)CHOCHCH(OH)CH−}、2,10−ジヒドロキシ−4,8−ジオキサ−6,6−ビスヒドロキシメチルウンデシレン{−CHCH(OH)CHOCHC(CHOH)CHOCHCH(OH)CH−}、及びポリオキシアルキレン(グリコール/アルキレンオキシド付加物等、炭素数4〜44、アルキレンの炭素数は2〜4)ジグリシジルエーテルの反応残基等が挙げられる。
【0026】
qは、0、1又は2である。この範囲であると、粘性調整機能とともに界面活性能(レベリング性、ワキ防止等)がさらに良好となる。
【0027】
非還元性の二又は三糖類のt個の1級水酸基から水素原子を除いた残基(Q)を構成することができる二又は三糖類としては、蔗糖(サッカロース)、トレハロース、イソトレハロース、イソサッカロース、ゲンチアノース、ラフィノース、メレチトース及びプランテオース等が含まれる。これらのうち、粘性調整機能の観点から、蔗糖、トレハロース、ゲンチアノース、ラフィノース及びプランテオースが好ましく、さらに好ましくは蔗糖、トレハロース及びラフィノースであり、供給性及びコスト等の観点から特に好ましくは蔗糖である。
【0028】
炭素数2〜15のアルキレン基又はアリーレン基(Z)のうち、アルキレンとしては、炭素数2〜9のアルキレン等が用いられ、エチレン、3−オキサペンチレン(−CHCHOCHCH−)、プロピレン、3−オキサ−2,4−ジメチルペンチレン(−CHCH(CH)OCH(CH)CH−)、ブチレン、ヘキサメチレン、シクロヘキシレン、メチレンシクロへキシレンメチレン(−CH10CH−)、メチルシクロヘキシレン及びトリメチルシクロヘキシレン等が挙げられる。
【0029】
(Z)のうち、アリーレンとしては、炭素数6〜15のアリーレン等が用いられ、フェニレン、メチルフェニレン、エチルフェニレン、テトラメチルフェニレン、キシリレン、ナフチレン、ビフェニリレン、ジメチルビフェニリレン、アントリレン、フェナントリレン、-(ph)-CH-(ph)-で表される基、-(ph)-C(CH-(ph)-で表される基、-(ph)-CHCH-(ph)-で表される基及び-CH-(ch)-CH-で表される基等が挙げられる(phはフェニレン基を、chはシクロヘキセニル基を表す)。
【0030】
これらの(Z)のうち、アルキレン及びアリーレンが好ましく、さらに好ましくはエチレン、プロピレン、ヘキサメチレン及び-(ph)-C(CH-(ph)-で表される基であり、特に好ましくはプロピレンである。
【0031】
炭素数2〜4のオキシアルキレン基(OA)としては、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン及びこれらの混合等が挙げられる。これらのうち、粘性調整機能の観点から、オキシエチレン及びオキシプロピレンが好ましく、さらに好ましくはオキシプロピレンとオキシエチレンとの混合である。また、塗料の基本性能のうち耐水性の観点等から、オキシプロピレン及びオキシブチレンが好ましく、さらに好ましくはオキシプロピレンとオキシブチレンとの混合である。
【0032】
(OA−)n又は(OA−)m内に複数種類のオキシアルキレン基を含む場合、これらのオキシアルキレン基の結合順序(ブロック状、ランダム状及びこれらの組合せ)及び含有割合には制限はない。
【0033】
一般式(2)、(3)において、オキシプロピレン及び/又はオキシブチレンと、オキシエチレンとを含む場合、オキシエチレンの含有割合(モル%)は、オキシアルキレン基の全モル数に基づいて、4〜10が好ましく、さらに好ましくは4〜8である。また、この場合、反応残基(Q)から離れた端部にオキシプロピレン及び/又はオキシブチレンが位置することが好ましい。すなわち、(OA−)nにオキシエチレン基を含む場合、反応残基(Q)にオキシエチレン基が直接的に結合していることが好ましい。また、(OA−)nに複数種類のオキシアルキレン基を含む場合、ブロック状又はランダム状のいずれを含んでいても差し支えない。
【0034】
一般式(4)において、オキシプロピレン及び/又はオキシブチレンと、オキシエチレンとを含む場合、オキシエチレンの含有割合(モル%)は、オキシアルキレン基の全モル数に基づいて、4〜10が好ましく、さらに好ましくは4〜8である。また、この場合、アルキレン基又はアリーレン基(Z)から離れた端部にオキシエチレンが位置することが好ましい。すなわち、(OA−)mにオキシエチレン基を含む場合、(Z)から離れた端部にオキシエチレン基が結合していることが好ましい。また、(OA−)mに複数種類のオキシアルキレン基を含む場合、ブロック状又はランダム状のいずれを含んでいても差し支えない。
【0035】
nは、3〜50の整数が好ましく、さらに好ましくは5〜45の整数、特に好ましくは10〜45の整数、最も好ましくは15〜40の整数である。この範囲であると、粘性調整機能がさらに良好となる。
【0036】
tは、2〜4の整数が好ましく、さらに好ましくは3である。この範囲であると、粘性調整機能がさらに良好となる。
【0037】
mは、5〜25の整数が好ましく、さらに好ましくは7〜23の整数、特に好ましくは7〜20の整数、最も好ましくは10〜20の整数である。この範囲であると、粘性調整機能がさらに良好となる。
【0038】
単位又はS単位に含まれるOAの総数は、それぞれ、10〜100の整数が好ましく、さらに好ましくは15〜90の整数、特に好ましくは15〜80の整数、最も好ましくは20〜80の整数である。この範囲であると、粘性調整機能がさらに良好となる。
【0039】
本発明の水性塗料用粘性調整剤には、さらに一般式(5)で表されるポリオキシアルキレン化合物(Y2)を含有してもよい。
【0040】

−L(−S−L)−S (5)

【0041】
ただし、S、S、L、qは一般式(1)と同じである。
【0042】
なお、S単位又はS単位に含まれるOAの総数は、それぞれ、10〜100の整数が好ましく、さらに好ましくは20〜100の整数、特に好ましくは25〜95の整数、最も好ましくは30〜95の整数である。この範囲であると、粘性調整機能がさらに良好となる。
【0043】
ポリオキシアルキレン化合物(Y2)を含有する場合、この含有量(重量%)は、ポリオキシアルキレン化合物(Y1)の重量に基づいて、10〜150が好ましく、さらに好ましくは30〜120、特に好ましくは50〜100である。この範囲であると、粘性調整機能がさらに良好となる。
【0044】
一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(Y1)、一般式(5)で表されるポリオキシアルキレン化合物(Y2)は、公知の化学反応を適用して製造できる。
たとえば、一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(Y1)は、非還元性の二又は三糖類(a1)1モル部と、炭素数2〜4のアルキレンオキシド(a2)10〜100モル部の化学反応(1)から化合物(a12)を得る工程(1);
炭素数2〜15のグリコール(a3)1モル部と炭素数2〜4のアルキレンオキシド(a2)10〜50モル部との化学反応(2)から化合物(a32)を得る工程(2);及び
化合物(a12)1モル部と、化合物(a32)0.1〜0.75モル部と、炭素数6〜20のジイソシアネート(a4)0.5〜1.5モル部との化学反応(3)、又は化合物(a12)1モル部と、化合物(a32)0.1〜0.75モル部と、炭素数10〜50のジグリシジルエーテル(a5)0.5〜1.5モル部との化学反応(4)から、ポリオキシアルキレン化合物(Y1)を得る工程(3)を含む方法等により製造できる。
【0045】
なお、化学反応(3)において、化合物(a32)の使用量(モル部)が0.1以上0.5未満、ジイソシアネート(a4)の使用量(モル部)が0.5以上1未満の場合と、化学反応(4)において、化合物(a32)の使用量(モル部)が0.1以上0.5未満、ジグリシジルエーテル(a5)の使用量(モル部)が0.5以上1未満の場合とでは、ポリオキシアルキレン化合物(Y1)以外に、ポリオキシアルキレン化合物(Y2)が副生する。
【0046】
以上の使用量の場合以外の製造方法等においても、一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(Y1)を得る際、一般式(5)で表されるポリオキシアルキレン化合物(Y2)も副生することがあり得るが、そのまま混合物として用いてもよい。
【0047】
一般式(5)で表されるポリオキシアルキレン化合物(Y2)は、上記のようにポリオキシアルキレン化合物(Y1)と共に得る他、上記の化学反応(1)から化合物(a12)を得る工程(1);及び
化合物(a12)1モル部と、炭素数6〜20のジイソシアネート(a4)0.5〜0.75モル部との化学反応(5)、又は化合物(a12)1モル部と、炭素数10〜50のジグリシジルエーテル(a5)0.5〜0.75モル部との化学反応(6)から、ポリオキシアルキレン化合物(Y2)を得る工程(4)を含む方法等により製造できる。
【0048】
すなわち、これらの化学反応により製造されるポリオキシアルキレン化合物(Y1)及びポリオキシアルキレン化合物(Y2)は、オキシアルキレン基やn、m、qの数等に分布を生じる場合があり、この場合、厳密には複数種類のポリオキシアルキレン化合物の混合物となり、この混合物の中に、一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(Y1)、一般式(5)で表されるポリオキシアルキレン化合物(Y2)が含まれるものである。
【0049】
化合物(a12)を得る工程(1)において、アルキレンオキシド(a2)の使用量(モル部)としては、非還元性の二又は三糖類(a1)1モル部に対して、10〜100が好ましく、さらに好ましくは15〜90、特に好ましくは15〜80、最も好ましくは20〜80である。この範囲であると、粘性調整機能がさらに良好となる。
【0050】
化合物(a32)を得る工程(2)において、アルキレンオキシド(a2)の使用量(モル部)としては、炭素数2〜15のグリコール(a3)1モル部に対して、10〜50モルが好ましく、さらに好ましくは14〜46、特に好ましくは14〜40、最も好ましくは20〜40である。この範囲であると、粘性調整機能がさらに良好となる。
【0051】
ポリオキシアルキレン化合物(Y1)を得る工程(3)において、化合物(a32)の使用量(モル部)としては、化合物(a12)1モル部に対して、0.1〜0.75が好ましく、さらに好ましくは0.15〜0.72、特に好ましくは0.17〜0.7、最も好ましくは0.2〜0.7である。この範囲であると、粘性調整機能がさらに良好となる。
【0052】
なお、工程(3)において、ポリオキシアルキレン化合物(Y2)の副生を抑制したい場合、化合物(a32)の使用量(モル部)としては、化合物(a12)1モル部に対して、0.5〜0.75が好ましく、さらに好ましくは0.53〜0.72、特に好ましくは0.53〜0.7、最も好ましくは0.55〜0.7である。
【0053】
工程(3)において、ジイソシアネート(a4)又はジグリシジルエーテル(a5)の使用量(モル部)としては、化合物(a12)1モル部に対して、0.5〜1.5が好ましく、さらに好ましくは0.6〜1.4、特に好ましくは0.7〜1.4、最も好ましくは0.8〜1.3である。この範囲であると、粘性調整機能がさらに良好となる。
【0054】
なお、工程(3)において、ポリオキシアルキレン化合物(Y2)の副生を抑制したい場合、ジイソシアネート(a4)又はジグリシジルエーテル(a5)の使用量(モル部)としては、化合物(a12)1モル部に対して、1〜1.5が好ましく、さらに好ましくは1〜1.4、特に好ましくは1.1〜1.4、最も好ましくは1.1〜1.3である。
【0055】
工程(4)において、ジイソシアネート(a4)又はジグリシジルエーテル(a5)の使用量(モル部)としては、化合物(a12)1モル部に対して、0.5〜0.75が好ましく、さらに好ましくは0.53〜0.72、特に好ましくは0.53〜0.7、最も好ましくは0.55〜0.7である。この範囲であると、粘性調整機能がさらに良好となる。
【0056】
非還元性の二又は三糖類(a1)としては、反応残基(Q)を構成することができる二又は三糖類と同じものが使用でき、好ましい範囲も同じである。
【0057】
アルキレンオキシド(a2)としては、炭素数2〜4のアルキレンオキシド等が使用でき、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、ブチレンオキシド(BO)及びこれらの混合物等が挙げられる。これらのうち、粘性調整機能の観点から、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドが好ましく、さらに好ましくはプロピレンオキシドとエチレンオキシドとの混合である。また、塗料の基本性能のうち耐水性の観点等から、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドが好ましく、さらに好ましくはプロピレンオキシドとブチレンオキシドとの混合である。
【0058】
工程(1)の非還元性の二又は三糖類(a1)及びアルキレンオキシド(a2)の化学反応(1)において、複数種類のアルキレンオキシドを用いる場合、反応させる順序(ブロック状、ランダム状及びこれらの組合せ)及び使用割合には制限ないが、ブロック状又はブロック状とランダム状の組合せを含むことが好ましい。また、EOを含有する場合、EOの使用割合(モル%)は、アルキレンオキシドの全モル数に基づいて、4〜10が好ましく、さらに好ましくは4〜8である。EOと、PO又は/及びBOとを含む場合、二又は三糖類(a1)とEOとの反応後にPO及び/又はBOを反応させることが好ましい。
【0059】
工程(2)の炭素数2〜15のグリコール(a3)とアルキレンオキシド(a2)の化学反応(2)において、複数種類のアルキレンオキシドを用いる場合、反応させる順序(ブロック状、ランダム状及びこれらの組合せ)及び使用割合には制限ないが、ブロック状又はブロック状とランダム状の組合せを含むことが好ましい。EOを使用する場合、EOの使用割合(モル%)は、アルキレンオキシドの全モル数に基づいて、4〜10が好ましく、さらに好ましくは4〜8である。また、この場合、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドを反応させてから、エチレンオキシドを反応させることが好ましい。
【0060】
炭素数2〜15のグリコール(a3)としては、アルキレンジオール{エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキシルグリコール、メチルシクロヘキシルグリコール、トリメチルヘキシルグリコール及びジ(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等}及びアリーレンジオール{ヒドロキノン、カテコール、メチルヒドロキノン、エチルヒドロキノン、テトラメチルヒドロキノン、キシリレングリコール、ナフタレングリコール、ビフェニルグリコール、ジメチルビフェニルグリコール、アントラセンビフェニル、フェナントレンビフェニル、ビスフェノールF{HO−C−CH−C−OH }、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン{HO−C−CHCH−C−OH }及びビスフェノールA{HO−C−C(CH−C−OH }等}等が挙げられる。これらのうち、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール及びビスフェノールAが好ましく、さらに好ましくはプロピレングリコールである。
【0061】
炭素数6〜20のジイソシアネート(a3)としては、アルキレンジイソシアネート、シクロアルキレンジイソシアネート、アリーレンジイソシアネート及びアルアルキレンジイソシアネート等が含まれる。
【0062】
アルキレンジイソシアネートとしては、炭素数4〜8のアルキレンジイソシアネート等が用いられ、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及び2−エチルヘキシレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0063】
シクロアルキレンジイソシアネートとしては、炭素数6〜15のシクロアルキレンジイソシアネート等が用いられ、シクロヘキシレンジイソシアネート、ジシクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、トリメチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ノニルシクロヘキシレンジイソシアネート、OCN-(ch)-CH-(ch)-NCOで表されるジイソシアネート、OCN-CH-(ch)-CH-NCOで表されるジイソシアネート、OCN-(ch)-C(CH-(ch)-NCOで表されるジイソシアネート、OCN-(ch)-CHCH-(ch)-NCOで表されるジイソシアネート及びOCN-(tmch)-CH-NCO(イソホロンジイソシアネート)で表されるジイソシアネート等が挙げられる。これらの他、OCN-(ch)-O-(ch)-NCOで表されるジイソシアネート、OCN-(ch)-SO-(ch)-NCOで表されるジイソシアネート、クロロシクロヘキシレンジイソシアネート及びメトキシシクロヘキシレンジイソシアネート等も使用できる。
【0064】
アリーレンジイソシアネートとしては、炭素数6〜15のアリーレンジイソシアネート等が用いられ、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、メチルフェニレンジイソシアネート、エチルフェニレンジイソシアネート、テトラメチルフェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ノニルフェニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ビフェニリレンジイソシアネート、ジメチルビフェニリレンジイソシアネート、アントリレンジイソシアネート、フェナントリレンジイソシアネート、OCN-(ph)-CH-(ph)-NCOで表されるジイソシアネート、OCN-(ph)-C(CH-(ph)-NCOで表されるジイソシアネート、OCN-(ph)-CHCH-(ph)-NCOで表されるジイソシアネート及びOCN-CH-(ch)-CHNCO-で表されるジイソシアネート等が挙げられる。これらの他、OCN-(ph)-O-(ph)-NCOで表されるジイソシアネート、OCN-(ph)-SO-(ph)-NCOで表されるジイソシアネート、ブロモフェニレンジイソシアネート、クロロナフチレンジイソシアネート、クロロビフェニレンジイソシアネート及びメトキシフェニレンジイソシアネート等も使用できる。
【0065】
アルアルキレンジイソシアネートとしては、炭素数7〜18のアルアルキレンジイソシアネート等が用いられ、フェニルエチレンジイソシアネート、トリルブチレンジイソシアネート、エチルフェニルエチレンジイソシアネート、キシリルヘキシレンジイソシアネート、ノニルフェニルエチレンジイソシアネート、ナフチルブチレンジイソシアネート、ビフェニリルエチレンジイソシアネート及びフェナントリルプロピレンジイソシアネート等が挙げられる。これらの他、ブロモフェニルエチレンジイソシアネート、クロロビフェニリルエチレンジイソシアネート、メトキシフェニルエチレンジイソシアネート、ブトキシナフチルブチレンジイソシアネート及びジエトキシビフェニリルエチレンジイソシアネート等も使用できる。
【0066】
これらのジイソシアネートのうち、アルキレンジイソシアネート、シクロアルキレンジイソシアネート及びアリーレンジイソシアネートが好ましく、さらに好ましくはヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと称す)、OCN-(tmch)-CH-NCOで表されるジイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)(以下、IPDIと称す)及びキシリレンジイソシアネート(以下、XDIと称す)、特に好ましくはヘキサメチレンジイソシアネートである。
【0067】
炭素数10〜50のジグリシジルエーテル(a5)としては、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル及びペンタエリスリトールジグリシジルエーテル等が挙げられ、さらにポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル(ポリオキシエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールジグリシジルエーテル及びポリオキシテトラメチレンエーテルグリコールジグリシジルエーテル等のうち炭素数が10〜50のもの)等が挙げられる。これらのうち、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル及びポリオキシプロピレングリコールジグリシジルエーテルが好ましく、さらに好ましくはポリオキシプロピレングリコールジグリシジルエーテルである。
【0068】
非還元性の二又は三糖類(a1)及びアルキレンオキシド(a2)の化学反応(1)、並びに炭素数2〜15のグリコール(a3)及び(a2)の化学反応(2)は、アニオン重合、カチオン重合又は配位アニオン重合等のいずれの形式で実施してもよい。また、これらの重合形式は単独でも、重合度等に応じて組み合わせて用いてもよい。
【0069】
アルキレンオキシド(a2)との化学反応(1、2)には反応触媒が使用できる。なお、反応溶媒として以下に説明するアミドを用いる場合、反応触媒を用いる必要がない。
反応触媒としては、通常使用されるアルキレンオキシド付加反応用触媒等が使用でき、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物(水酸化カリウム、水酸化ルビジウム及び水酸化セシウム等)、アルカリ金属のアルコラート(カリウムメチラート及びセシウムエチラート等)、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩(炭酸カリウム、炭酸セシウム及び炭酸バリウム等)、炭素数3〜24の第3級アミン(トリメチルアミン、トリオクチルアミン、トリエチレンジアミン及びテトラメチルエチレンジアミン等)、及びルイス酸(塩化第二錫及びトリフッ化ホウ素等)等が用いられる。これらのうち、アルカリ金属の水酸化物及び第3級アミンが好ましく、さらに好ましくは水酸化カリウム、水酸化セシウム及びトリメチルアミンである。
【0070】
反応触媒を使用する場合、その使用量(重量%)は、非還元性の二又は三糖類(a1)及びアルキレンオキシド(a2)の合計重量、又はグリコール(a3)及びアルキレンオキシド(a2)の合計重量に基づいて、0.05〜2が好ましく、さらに好ましくは0.1〜1、特に好ましくは0.2〜0.6である。
【0071】
反応触媒を使用する場合、反応触媒は反応生成物から除去することが好ましく、その方法としては、合成アルミノシリケートなどのアルカリ吸着剤{例えば、商品名:キョーワード700、協和化学工業(株)製、「キョーワード」は同社の登録商標である}を用いる方法(特開昭53−123499号公報等)、キシレン又はトルエン等の溶媒に溶かして水洗する方法(特公昭49−14359号公報等)、イオン交換樹脂を用いる方法(特開昭51−23211号公報等)及びアルカリ性触媒を炭酸ガスで中和して生じる炭酸塩を濾過する方法(特公昭52−33000号公報)等が挙げられる。
【0072】
反応触媒の除去の終点としては、CPR(Controlled Polymerization Rate)値が20以下であることが好ましく、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは5以下、最も好ましくは2以下である。なお、CPRは、JIS K1557−4:2007に準拠して測定される。
【0073】
化学反応(1、2)の反応容器としては、加熱、冷却及び撹拌が可能な耐圧性反応容器を用いることが好ましい。反応雰囲気としては、アルキレンオキシド(a2)を反応系に導入する前に反応装置内を真空又は乾燥した不活性気体(アルゴン、窒素及び二酸化炭素等)の雰囲気とすることが好ましい。また、反応温度(℃)としては80〜150が好ましく、さらに好ましくは90〜130である。反応圧力(ゲージ圧:MPa)は0.8以下が好ましく、さらに好ましくは0.5以下である。
【0074】
反応終点の確認は、次の方法等により行うことができる。すなわち、反応温度を15分間一定に保ったとき、反応圧力(ゲージ圧)の低下が0.001MPa以下となれば反応終点とする。所要反応時間は通常4〜12時間である。
【0075】
非還元性の二又は三糖類(a1)及びアルキレンオキシド(a2)の化学反応(1)には、反応溶媒を用いることが好ましい。反応溶媒としては、活性水素を持たないものが好ましく、さらに好ましくは非還元性の二又は三糖類(a1)、アルキレンオキシド(a2)及びこれらの反応により生成する生成物(a12)を溶解するものが好ましい。
【0076】
このような反応溶媒としては、炭素数3〜8のアルキルアミド及び炭素数5〜7の複素環式アミド等が使用できる。
アルキルアミドとしては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−N−プロピルアセトアミド及び2−ジメチルアミノアセトアルデヒドジメチルアセタール等が挙げられる。
【0077】
複素環式アミドとしては、N−メチルピロリドン、N−メチル−ε−カプロラクタム及びN,N−ジメチルピロールカルボン酸アミド等が挙げられる。
【0078】
これらのうち、アルキルアミド及びN−メチルピロリドンが好ましく、さらに好ましくはDMF、N,N−ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドン、特に好ましくはDMF及びN−メチルピロリドン、最も好ましくはDMFである。
【0079】
反応溶媒を用いる場合、その使用量(重量%)は、二又は三糖類(a1)とアルキレンオキシド(a2)との化学反応(1)により生成する化合物(a12)の重量に基づいて、20〜200が好ましく、さらに好ましくは40〜180、特に好ましくは60〜150である。
【0080】
反応溶媒を用いた場合、反応後に反応溶媒を除去することが好ましい。反応溶媒の残存量(重量%)は、ポリオキシアルキレン化合物(Y1)の重量に基づいて、0.1以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.05以下、特に好ましくは0.01以下である。なお、反応溶媒の残存量は、内部標準物質を用いるガスクロマトグラフィー法にて求めることができる。
【0081】
反応溶媒の除去方法としては、減圧留去及び吸着除去等が適用でき、減圧留去した後さらに吸着除去することが好ましい。
減圧留去する条件としては、0.6〜27kPaの減圧下にて100〜150℃にて留去する条件等が適用できる。
吸着除去としては、合成アルミノシリケート等のアルカリ吸着剤{例えば、商品名:キョーワード700、協和化学工業(株)製}を用いて処理する方法等が適用できる。例えば、キョーワード700を用いる場合、アルカリ吸着剤の添加量(重量%)は、化合物(a12)の重量に基づいて、0.1〜10程度、処理温度は60〜120℃程度、処理時間は0.5〜5時間程度である。続いてろ紙又はろ布等を用いてろ別してアルカリ吸着剤を取り除くことにより、反応溶媒の残存量を減少させることができる。
【0082】
化学反応(3)、化学反応(5)(付加反応)において、反応速度の小さいイソシアネート(脂肪族若しくは脂環式ジ−イソシアネート等;たとえば、HDI、IPDIを用いる場合、反応時間の短縮を目的として反応触媒を用いることができる。反応触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、スタナスオクトエート及びトリエチレンジアミン等が一般的である。
【0083】
化学反応(3)、化学反応(5)には、加熱、冷却及び攪拌が可能な密閉容器を用いることができる。反応温度(℃)は、70〜150が好ましく、さらに好ましくは90〜130である。反応雰囲気としては、乾燥した不活性気体雰囲気下が好ましい。また、反応終点の確認は次の方法等により行うことができる。すなわち、ジ−n−ブチルアミンのジオキサン溶液を用いるイソシアナト基含有量測定法において、イソシアナト基含有量が0.01重量%以下となった時点を反応の終点とする。
【0084】
化学反応(4)、化学反応(6)(エポキシ開環反応)には、反応触媒を用いることができる。このような触媒としては、アルキレンオキシド(a2)との化学反応(1、2)に用いられるものと同一であり、公知の触媒(特開2004−224945号公報等)等が適用できる。
【0085】
反応の終点は、エポキシ基の消滅により行うことができる。エポキシ基の定量としては、過塩素酸と第四級アンモニュウム塩(CTAB)とからハロゲン化水素(HB)を発生させてこれとエポキシ基とを反応させるセチルトリメチルアンモニュウムブロマイド(CTAB)法(JIS K7236:ISO3001:1999に準拠)が適用できる。
【0086】
化学反応(4)、化学反応(6)は、化学反応(1)、化学反応(2)と同じエポイキシ開環反応であり、反応装置、触媒及びその除去も同様である。
【0087】
ポリオキシアルキレン化合物(Y1)としては、表1で示される化合物等が挙げられる。また、ポリオキシアルキレン化合物(Y2)としては、表2で示される化合物等が挙げられる。
【0088】
なお、Q1は蔗糖の反応残基を、Q2はトレハロースの反応残基を、Q3はラフィノースの反応残基を表す。また、Pはオキシプロピレンを、Eはオキシエチレンを、Bはオキシブチレンを表し、これらの添え字は、それぞれ、非還元性のニ又は三糖類の残基1モルに対するモル数{一般式(1)のS単位又はS単位に含まれるOAの総数に相当する}を表す。OA中の/はブロック状を、・はランダム状を意味する。
【0089】
さらに、DEGはジエチレングリコールの反応残基を、DPGはジプロピレングリコールの反応残基を、HGはヘキサメチレングリコールの反応残基を、BPAはビスフェノールAの反応残基を表す。また、Pはオキシプロピレンを、Eはオキシエチレンを、Bはオキシブチレンを表し、これらの添え字は、それぞれ、アルキレン又はアリーレン(Z)1モルに対するモル数{一般式(4)のmの2倍の値(2m)に相当する}を表す。OA中の/はブロック状を、・はランダム状を意味する。
【0090】
また、(a4)欄のLDは一般式(1)、(5)のLに対応し、D1はヘキサメチレンジイソシアネートの反応残基を、D2はイソホロンジイソシアネートの反応残基を、D3はキシリレンジイソシアネートの反応残基を表す。
【0091】
さらに、(a5)欄のLGは一般式(1)、(5)のLに対応し、G1はポリオキシエチレン(1.5モル)・ポリオキシプロピレン(15モル)・ポリオキシエチレン(1.5モル)(ポリオキシプロピレンの両末端にポリオキシエチレンブロックを付加するプルロニックタイプ)グリコールジグリシジルエーテルの反応残基を、G2は1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルの反応残基を、G3はポリオキシプロピレングリコール(3モル)ジグリシジルエーテルの反応残基を、G4はポリオキシプロピレングリコール(7モル)ジグリシジルエーテルの反応残基をそれぞれ表す。
また、qは一般式(1)に対応する。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
これらのポリオキシアルキレン化合物(Y1)のうち、No.1、4、6、7、9、10、11、12、14、16、20、21、22、23、25、27、29、30、31、33、35、40、42又は43で表されるのポリオキシアルキレン化合物が好ましく、さらに好ましくはNo.4、7、10、16、22、25、29、31、40又は43で表されるポリオキシアルキレン化合物、特に好ましくはNo.7、25又は40で表されるポリオキシアルキレン化合物である。
【0095】
これらのポリオキシアルキレン化合物(Y2)のうち、No.46、48、49、50、56、59、60、63又は65で表されるのポリオキシアルキレン化合物が好ましく、さらに好ましくはNo.46、48、50、60又は63で表されるポリオキシアルキレン化合物である。
【0096】
本発明の塗料用粘性調整剤には、ポリオキシアルキレン化合物(Y1)及びポリオキシアルキレン化合物(Y2)以外の成分として、必要により、公知の添加剤(消泡剤、湿潤剤、造膜調整剤等)及び/又は溶媒等を含有させることができる。
【0097】
消泡剤としてはSNデフォーマー180及び同184(サンノプコ株式会社製)等、湿潤剤としてはSNウエット125、同126及び同984(サンノプコ株式会社製)等、造膜調整剤としてはテキサノール(イーストマンケミカル社製、「テキサノール」は吉村油化学株式会社の登録商標である。)等が挙げられる。
【0098】
これらの添加剤を含有する場合、これらの含有量(重量%)は、ポリオキシアルキレン化合物(Y1)の重量に基づいて、いずれも1〜20が好ましい。
【0099】
溶媒としては、水及び水溶性有機溶剤等を用いることができる。水としては、イオン交換水、蒸留水、水道水及び工業用水等が挙げられる。水溶性有機溶剤としては、炭素数1〜3のアルコール(メタノール、エタノール及びイソプロパノール等)、炭素数3〜6のケトン(アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等)、炭素数2〜6のエーテル(ジメチルエーテル、エチルセルソルブ及びブチルセルソルブ等)及び炭素数4〜6のエーテルエステル(ブチルセルソルブアセテート等)等が挙げられ、これらを併用してもよい。
【0100】
溶媒を含有する場合、この含有量(重量%)は、ポリオキシアルキレン化合物(Y1)の重量に基づいて、1〜30が好ましい。
【0101】
本発明の水性塗料用粘性調整剤は、ポリオキシアルキレン化合物(Y2)、添加剤及び/又は溶媒を含有する場合、これらと、ポリオキシアルキレン化合物(Y1)とを均一混合できれば製造方法に制限はなく、たとえば、ポリオキシアルキレン化合物(Y1)と、ポリオキシアルキレン化合物(Y2)、添加剤及び/又は溶媒とを、不活性ガス(窒素ガス等)の存在下又は不存在下、20〜80℃程度にて攪拌混合する方法等が適用できる。
【0102】
本発明の塗料用粘性調整剤は、水性塗料に適用することができ、これらのうち水性エマルション塗料に適し、特に熱硬化型水性塗料(自動車上塗り水性塗料等)に最適である。水性エマルション塗料としては、アクリル系、酢酸ビニル系、スチレン系、ハロゲン化オレフィン系、ウレタン系、アクリル−シリコン系又はフッ素系等の塗料が挙げられる。
【0103】
本発明の水性塗料用粘性調整剤は、界面活性等に優れているため、塗料の粘性を向上させる添加剤(ワキ・タレ防止剤)としての他に、汚染低減剤、分散剤、乳化剤、表面張力低減剤(カーテンフローコート性向上剤、スプレー適正化剤を含む)、消泡剤(抑泡剤、破泡剤及び整泡剤等を含む)、氷結防止剤、曇り防止剤、指紋付着防止剤、皮張り防止剤(水性塗料が容器内貯蔵中に塗料の表面が固化する現象を防止する)及びその他の塗料添加剤等として広く使用でき、これらの原材料等としても使用できる。
【0104】
本発明の塗料用粘性調整剤の使用量(重量%)は用途等に応じて適宜決定されるが、例えば水性塗料等に使用する場合、水性ベース塗料及び粘性調整剤の重量に基づいて、1〜5が好ましく、さらに好ましくは1.5〜4.5、特に好ましくは2〜4である。
【0105】
本発明の塗料用粘性調整剤の塗料へ添加するタイミングとしては、塗料の製造工程途中(例えば塗料樹脂溶解工程、エマルション希釈工程、顔料分散工程、又は各種添加剤を塗料に配合する工程等)でもよい。
【0106】
本発明の塗料には、上記の粘性調整剤の他に、フレーク状フィラーを含有することが好ましい。フレーク状フィラーを含有すると、常温(およそ20℃)から40℃付近での塗装時において、フレーク状フィラーと、ポリオキシアルキレン化合物(Y1、Y2)を構成する糖類に存在する二級水酸基とが水素結合をすることにより水性塗料に粘性が付与され、一方、加熱硬化時において、上記の水素結合が消失し、ポリオキシアルキレン化合物(Y1、2)が本来有している界面活性を発揮するため、ワキ等の不具合を防止し、レベリング性(平滑性)にも優れた効果を発揮するものと考えられる。なお、本発明の粘性調整剤には、親水性部分(糖類に存在する二級水酸基、オキシエチレン基)が少ないため、形成される塗膜の耐水性を殆ど低下させない。
【0107】
フレーク状フィラーとしては、アルミニュウムフレーク顔料、着色アルミニュウムフレーク顔料、金属チタンフレーク顔料、ステンレスフレーク顔料、板状酸化鉄顔料、金属酸化物被覆マイカ顔料、金属酸化物被覆シリカフレーク顔料、金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料及びグラファイト等が挙げられる。
【0108】
本発明の塗料用粘性調整剤を含有する塗料等は、通常の方法により被塗装体に塗装することができ、ハケ塗り、ローラー塗装、ベル塗装、エアスプレー塗装、エアレス塗装、ロールコーター塗装及びフローコーター塗装等の塗装方法等が適用できる。乾燥方法は常乾であっても焼付け乾燥であってもよく、焼付け乾燥は常法に従い、例えば電気式熱風乾燥機、間接熱風炉、直接熱風炉、遠赤外炉等を用い、約100〜250℃にて数10秒〜30分間塗膜を保持することで実施できる。
【実施例】
【0109】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特記しない限り、部は重量部を、%は重量%を意味する。
【0110】
<製造例1>
攪拌、加熱、冷却、滴下、窒素による加圧及び真空ポンプによる減圧の可能な耐圧反応容器に、精製グラニュー糖{台糖(株)製蔗糖}342部(1モル部)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF){三菱ガス化学(株)製、以下同じ}1000部を加えた。次いで窒素ガスを用いて、ゲージ圧で0.4MPaになるまで加圧し0.02MPaになるまで排出する操作を3回繰り返した(以下、「窒素置換」と略す)。その後攪拌しつつ100℃まで昇温し、次いで同温度にてプロピレンオキシド(PO)580部(10モル部)を4時間かけて滴下し、さらに同温度にて4時間攪拌を続け残存するPOを完全に反応させた(以下、残存するPO等を完全に反応させる操作の記載を「反応させた」と略す)。次いでオイル拡散式真空ポンプ{MODEL SW−150、佐藤真空(株)製}を用い、120℃にて1.3〜13kPaの減圧下にてDMFを除去(以下、「DMFを除去」と略す)し、蔗糖/PO10モル付加物(S1)を得た。
【0111】
<製造例2>
製造例1と同様な耐圧反応容器に、蔗糖/PO10モル付加物(S1)922部(1モル部)及び、水酸化カリウム{試薬特級、和光純薬工業(株)製、使用量は水分を除いた純分換算量で表示した。以下同じ}3部を加えて窒素置換し、さらに120℃にてオイル拡散式真空ポンプを用いて0.6〜1.3kPaの減圧下にて脱水した(以下、「脱水」と略す)。次いで減圧のまま100℃にて、(PO)580部(10モル部)を滴下、反応させて重合体を得た。次いで90℃にて脱イオン水25部(重合体のおよそ2重量%となる量、以下同じ)を加えた後、キョーワード600S{協和化学工業(株)製、「キョーワード」は同社の登録商標である}45部(重合物のおよそ3重量%となる量、以下同じ)を加え、同温度にて1時間攪拌し、同温度にてNo.2濾紙{東洋濾紙(株)製}を用いて濾過してキョーワードを取り除き、さらに1.3〜2.7kPaの減圧下120℃にて1時間脱水(以下、「キョーワード処理」と略する。)して、蔗糖/PO20モル付加物(S2)を得た。
【0112】
<製造例3>
製造例1と同様な耐圧反応容器に、蔗糖/PO10モル付加物(S1)922部(1モル部)及び、水酸化カリウム5部を加えて脱水した。次いで減圧のまま100℃にて、(PO)1740部(30モル部)を滴下、反応させた。次いでキョーワード処理して、蔗糖/PO40モル付加物(S3)を得た。
【0113】
<製造例4>
製造例1と同様な耐圧反応容器に、蔗糖/PO10モル付加物(S1)922部(1モル部)及び、水酸化カリウム7.5部を加えて脱水した。次いで減圧のまま100℃にて、(PO)2900部(50モル部)を滴下、反応させた。次いでキョーワード処理して、蔗糖/PO60モル付加物(S4)を得た。
【0114】
<製造例5>
製造例1と同様な耐圧反応容器に、蔗糖/PO10モル付加物(S1)922部(1モル部)及び、水酸化カリウム10部を加えて脱水した。次いで減圧のまま100℃にて、(PO)4060部(70モル部)を滴下、反応させた。次いでキョーワード処理して、蔗糖/PO80モル付加物(S5)を得た。
【0115】
<製造例6>
製造例1と同様な耐圧反応容器に、蔗糖/PO10モル付加物(S1)922部(1モル部)及び、水酸化カリウム2.6部を加えて脱水した。次いで減圧のまま100℃にて、1,2−ブチレンオキシド(BO)370部(5モル部)を滴下、反応させた。次いでキョーワード処理して、蔗糖/PO10モル/BO5モル付加物(S6)を得た。
【0116】
<製造例7>
製造例1と同様な耐圧反応容器に、蔗糖/PO10モル付加物(S1)922部(1モル部)及び、水酸化カリウム11部を加えて脱水した。次いで減圧のまま100℃にて、エチレンオキシド(EO)176部(4モル部)を滴下、反応させた。さらに(PO)4408部(76モル部)を滴下、反応させた。次いでキョーワード処理して、蔗糖/PO10モル/EO4モル/PO76モル付加物(S7)を得た。
【0117】
<製造例8>
製造例1と同様な耐圧反応容器に、蔗糖/PO10モル付加物(S1)922部(1モル部)及び、水酸化カリウム12部を加えて脱水した。次いで減圧のまま100℃にて、エチレンオキシド(EO)176部(4モル部)を滴下、反応させた。さらに(PO)4988部(86モル部)を滴下、反応させた。次いでキョーワード処理して、蔗糖/PO10モル/EO4モル/PO86モル付加物(S8)を得た。
【0118】
<製造例9>
製造例1と同様な耐圧反応容器に、ラフィノース{試薬特級、和光純薬工業(株)製}504部(1モル部)及びDMF1500部を加えて窒素置換した。その後攪拌しつつ100℃まで昇温し、同温度にて(PO)1160部(20モル部)を滴下、反応させた。次いでDMFを除去し、ラフィノース/PO20モル付加物(S9)を得た。
【0119】
<製造例10>
製造例1と同様な耐圧反応容器に、ラフィノース/PO20モル付加物(S9)1664部(1モル)及び水酸化カリウム8部を加えて脱水した。次いで減圧のまま100℃にて、(PO)2320(40モル部)を滴下、反応させた。次いでキョーワード処理して、ラフィノースPO60モル付加物(S10)を得た。
【0120】
<製造例11>
製造例1と同じ耐圧反応容器に、ジエチレングリコール{試薬特級、和光純薬工業(株)製、以下、「deg」と略す}106部(1モル部)及び水酸化カリウム1.5部を投入した後、窒素置換した。その後攪拌しつつ100℃まで昇温し、次いで同温度にて(PO)812部(14モル部)を滴下、反応させた。次いでキョーワード処理して、deg/PO14モル付加物(U1)を得た。
【0121】
<製造例12>
製造例1と同じ耐圧反応容器に、deg/PO14モル付加物(U1)918部(1モル部)及び水酸化カリウム3.5部を投入した後、窒素置換した。その後攪拌しつつ100℃まで昇温し、次いで同温度にて(PO)928部(16モル部)を滴下、反応させた。次いでキョーワード処理して、deg/PO30モル付加物(U2)を得た。
【0122】
<製造例13>
製造例1と同じ耐圧反応容器に、deg/PO14モル付加物(U1)918部(1モル部)及び水酸化カリウム6部を投入した後、窒素置換した。その後攪拌しつつ100℃まで昇温し、次いで同温度にて(PO)2088部(36モル部)を滴下、反応させた。次いでキョーワード処理して、deg/PO50モル付加物(U3)を得た。
【0123】
<製造例14>
製造例1と同様な耐圧反応容器に、ジプロピレングリコール{試薬特級、和光純薬工業(株)製、以下、「dpg」と略す}134部(1モル部)及び水酸化カリウム1.5部を投入した後、窒素置換した。その後攪拌しつつ100℃まで昇温し、次いで同温度にて(PO)580部(10モル部)を滴下、反応させた。次いでキョーワード処理して、dpg/PO10モル付加物(U4)を得た。
【0124】
<製造例15>
製造例1と同様な耐圧反応容器に、dpg/PO10モル付加物(U4)714部(1モル部)及び水酸化カリウム2.5部を投入した後、窒素置換、脱水した。その後攪拌しつつ100℃まで昇温し、次いで同温度にて(PO)580部(10モル部)を滴下、反応させた。次いでキョーワード処理して、dpg/PO20モル付加物(U5)を得た。
【0125】
<製造例16>
製造例1と同様な耐圧反応容器に、dpg/PO10モル付加物(U4)714部(1モル部)及び水酸化カリウム4.5部を投入した後、窒素置換、脱水した。その後攪拌しつつ100℃まで昇温し、次いで同温度にて(PO)1508部(26モル部)を滴下、反応させた。さらに(EO)176部(4モル部)を滴下、反応させた。次いでキョーワード処理して、dpg/PO36モル/EO4モル付加物(U6)を得た。
【0126】
<製造例17>
製造例1と同様な耐圧反応容器に、dpg/PO10モル付加物(U4)714部(1モル部)及び水酸化カリウム5部を投入した後、窒素置換、脱水した。その後攪拌しつつ100℃まで昇温し、次いで(PO)1856部(32モル部)を滴下、反応させた。さらに(EO)176部(4モル部)を滴下、反応させた。次いでキョーワード処理して、dpg/PO42モル/EO4モル付加物(U7)を得た。
【0127】
<製造例18>
製造例1と同様な耐圧反応容器に、dpg134部(1モル部)及び水酸化カリウム1.5部を投入した後、窒素置換した。その後攪拌しつつ100℃まで昇温し、次いで同温度にて(PO)754部(13モル部)を滴下、反応させた。さらに(EO)132部(3モル部)を滴下、反応させ、dpg/PO13モル/EO3モル付加物(EO1.5モル−PO15モル−EO1.5モルのプルロニックグリコール)を得た。次いで水酸化カリウム112.2部(2モル部)を50%水溶液として投入した後、脱水した。さらにエピクロルヒドリン{鹿島ケミカル(株)製}189.6部(2.05モル部)を攪拌下40℃にて3時間で滴下した。さらに同温度にて3時間攪拌した後キョーワード処理して、プルロニックグリコール(EO1.5モル−PO15モル−EO1.5モル)ジグリシジルエーテル(g1)を得た。エポキシ当量は570(g/eq)であった。
【0128】
<実施例1>
攪拌、加熱、冷却及び真空ポンプによる減圧の可能な反応容器に、製造例2で得た蔗糖/PO20モル付加物(S2)4506部(3モル部)、製造例16で得たdpg/PO36モル/EO4モル付加物(U6)4796部(2モル部)及び水酸化ナトリウム14部(最終的な合計仕込み量のおよそ0.1%となる量)を仕込み脱水した。その後、製造例18で得たプルロニックグリコール(EO1.5モル−PO15モル−EO1.5モル)ジグリシジルエーテル(g1)4560部(4モル部)を加え130℃にて6時間反応させエポキシ基の消失を確認した。次いでキョーワード処理してポリオキシアルキレン化合物(Y101)を得た。そして、このポリオキシアルキレン化合物(Y101)を本発明の水性塗料用粘性調整剤(1)とした。
【0129】
<実施例2〜8>
「蔗糖/PO20モル付加物(S2)4506部(3モル部)」、「dpg/PO36モル/EO4モル付加物(U6)4796部(2モル部)」及び「プルロニックグリコール(EO1.5モル−PO15モル−EO1.5モル)ジグリシジルエーテル(g1)4560部(4モル部)」を、それぞれ表3に示した化合物及び使用モル数に変更したこと以外、実施例1と同様にして、ポリオキシアルキレン化合物(Y102)〜(Y108)及び本発明の粘性調整剤(2)〜(8)を得た。
なお、水酸化ナトウムの使用量は、合計仕込み量のおよそ0.1%となるように調整した。
【0130】
<実施例9>
実施例1と同様な反応容器に、製造例1で得た蔗糖/PO10モル付加物(S1)3688部(4モル部)、製造例13で得たdeg/PO50モル付加物(U3)3006部(3モル部)及びHDI(d1)1008部(6モル部)を仕込み窒素置換を3回繰り返した。その後攪拌しつつ1時間で110℃まで昇温し、同温度にて6時間攪拌を続けた後にイソシアナト基の消失を確認して、ポリオキシアルキレン化合物(Y109)を得た。そして、このポリオキシアルキレン化合物(Y109)をこのまま本発明の粘性調整剤(9)とした。
【0131】
<実施例10〜12>
「蔗糖/PO10モル付加物(S1)3688部(4モル部)」、「deg/PO50モル付加物(U3)3006部(3モル部)」及びHDI(d1)1008部(6モル部)」を、それぞれ表3に示した化合物及び使用モル数に変更したこと以外、実施例9と同様にして、ポリオキシアルキレン化合物(Y110)〜(Y112)及び本発明の粘性調整剤(10)〜(12)を得た。
【0132】
<実施例13>
「蔗糖/PO20モル付加物(S2)4506部(3モル部)」、「dpg/PO36モル/EO4モル付加物(U6)4796部(2モル部)」及び「プルロニックグリコール(EO1.5モル−PO15モル−EO1.5モル)ジグリシジルエーテル(g1)4560部(4モル部)」を、それぞれ、製造例10で得たラフィノースPO60モル付加物(S10)19920部(5モル部)、製造例14で得たdpg/PO10モル付加物(U4)714部(1モル部)及び製造例18で得た(g1)4560部(4モル部)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、ポリオキシアルキレン化合物(Y113){(S10)2モル部、(U1)1モル部及び(g1)2モル部の反応体}とポリオキシアルキレン化合物(Y201){(S10)3モル部及び(g1)2モル部の反応体}との混合物(Y1Y201)及び本発明の粘性調整剤(13)を得た。
【0133】
<実施例14〜16>
「蔗糖/PO20モル付加物(S2)4506部(3モル部)」、「dpg/PO36モル/EO4モル付加物(U6)4796部(2モル部)」及び「プルロニックグリコール(EO1.5モル−PO15モル−EO1.5モル)ジグリシジルエーテル(g1)4560部(4モル部)」を、それぞれ表3に示した化合物及び使用モル数に変更したこと以外は実施例1、実施例9と同様にして、ポリオキシアルキレン化合物(Y114){(S5)3モル部、(U4)2モル部及び(g4)4モル部の反応体}とポリオキシアルキレン化合物(Y202){(S5)3モル部及び(g4)2モル部の反応体}との混合物(Y1Y202)、ポリオキシアルキレン化合物(Y115){(S7)3モル部、(U1)2モル部及び(d2)4モル部の反応体}とポリオキシアルキレン化合物(Y203){(S7)3モル部及び(d2)2モル部の反応体}との混合物(Y1Y203)、ポリオキシアルキレン化合物(Y116){(S8)2モル部、(U4)1モル部及び(d1)2モル部の反応体}とポリオキシアルキレン化合物(Y204){(S8)4モル部及び(d1)3モル部の反応体}との混合物(Y1Y204)、並びに本発明の粘性調整剤(14〜16)を得た。
【0134】
<実施例17>
実施例1と同様な反応容器に、製造例1で得た蔗糖/PO10モル付加物(S1)6456部(7モル部)、製造例16で得たdpg/PO36モル/EO4モル付加物(U6)9592部(4モル部)及び水酸化ナトリウム10部を仕込み脱水した。その後、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(g2)1856部(8モル部)を加え130℃にて6時間反応させエポキシ基の消失を確認した。次いでキョーワード処理してポリオキシアルキレン化合物(Y117)を得た。
【0135】
さらに実施例1と同様な反応容器に、製造例8で得た蔗糖/PO10モル付加物(S8)12172部(2モル部)及び水酸化ナトリウム10部を仕込み脱水した。その後、グリシエールPP−300P(g4)580部(1モル部)を加え130℃にて6時間反応させエポキシ基の消失を確認した。次いでキョーワード処理してポリオキシアルキレン化合物(Y205)を得た。
【0136】
ポリオキシアルキレン化合物(Y117)67部とポリオキシアルキレン化合物(Y205)33部とを約25℃で均一に混合して、ポリオキシアルキレン化合物(Y1Y205)を得た。そして、このポリオキシアルキレン化合物(Y1Y205)を本発明の粘性調整剤(17)とした。
【0137】
<実施例18>
実施例1と同様な反応容器に、製造例2で得た蔗糖/PO20モル付加物(S2)4506部(3モル部)、製造例11で得たdeg/PO14モル付加物(U1)1836部(2モル部)及びHDI(d1)672部(4モル部)を仕込み窒素置換を3回繰り返した。その後攪拌しつつ1時間で110℃まで昇温し、同温度にて6時間攪拌を続けた後にイソシアナト基の消失を確認して、ポリオキシアルキレン化合物(Y118)を得た。
【0138】
さらに実施例1と同様な反応容器に、製造例3で得た蔗糖/PO40モル付加物(S3)10648部(4モル部)及びHDI(d1)504部(3モル部)を仕込み窒素置換を3回繰り返した。その後攪拌しつつ1時間で110℃まで昇温し、同温度にて6時間攪拌を続けた後にイソシアナト基の消失を確認して、ポリオキシアルキレン化合物(Y206)を得た。
【0139】
ポリオキシアルキレン化合物(Y118)50部とポリオキシアルキレン化合物(Y206)50部とを約25℃で均一に混合して、ポリオキシアルキレン化合物(Y1Y206)を得た。そして、このポリオキシアルキレン化合物(Y1Y206)を本発明の粘性調整剤(18)とした。
【0140】
<実施例19>
実施例1と同様な反応容器に、製造例6で得た蔗糖/PO10/BO5モル付加物(S6)9044部(7モル部)、製造例15で得たdpg/PO20モル付加物(U5)5176部(4モル部)及びIPDI(d2)1776部(8モル部)を仕込み窒素置換を3回繰り返した。その後攪拌しつつ1時間で110℃まで昇温し、同温度にて6時間攪拌を続けた後にイソシアナト基の消失を確認して、ポリオキシアルキレン化合物(Y119)を得た。
【0141】
さらに実施例1と同様な反応容器に、製造例4で得た蔗糖/PO60モル付加物(S4)15288部(4モル部)及び水酸化ナトリウム20部を仕込み脱水した。その後、グリシエールPP−300P(g4)1740部(3モル部)を加え130℃にて6時間反応させエポキシ基の消失を確認した。次いでキョーワード処理してポリオキシアルキレン化合物(Y207)を得た。
【0142】
ポリオキシアルキレン化合物(Y119)46部とポリオキシアルキレン化合物(Y207)54部とを約25℃で均一に混合して、ポリオキシアルキレン化合物(Y1Y207)を得た。そして、このポリオキシアルキレン化合物(Y1Y207)を本発明の粘性調整剤(19)とした。
【0143】
【表3】

【0144】
d1はHDI、d2はIPDI、d3はXDI{いずれも住化バイエルウレタン(株)製}を表す。g2は1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル{1,6HD−DEP(D)、四日市合成(株)製、エポキシ当量116g/eq}、g3はポリオキシプロピレングリコール(3モル)ジグリシジルエーテル{エピオールP−200、日油(株)製、エポキシ当量155g/eq、「エピオール」は同社の登録商標である}、g4はポリオキシプロピレングリコール(7モル)ジグリシジルエーテル{グリシエールPP−300P、三洋化成工業(株)製、エポキシ当量290g/eq、「グリシエール」は同社の登録商標である}であり、各エポキシ当量を2倍した数値をそれぞれの分子量とした。
【0145】
<比較例1>
SNシックナー603{サンノプコ株式会社製、ウレタン変性ポリエーテル系、有効成分40%}を比較用の粘性調整剤(H1)とした。
【0146】
<比較例2>
SNシックナー613{サンノプコ株式会社製、変性ポリアクリル酸系、有効成分20%}を比較用の粘性調整剤(H2)とした。
【0147】
表4に示した原料及び使用量を用いて、インペラー型羽根を備えたエクセルオートホモジナイザーで混合分散して、評価用塗料を調製した。また、粘性調整剤を用いないこと以外、上記と同様にして、ブランク塗料を調製した。
なお、JIS K5600−2−5:1999に準拠して、評価用塗料及びブランク塗料に5μm以上の粒のないことを確認した。
評価用塗料及びブランク塗料について、垂れ防止性及びワキ防止性を評価し、表5に示した。
【0148】
【表4】

【0149】
※1 大日本インキ化学(株)製水溶性アクリル樹脂、「ボンコート」は同社の登録商標である。
※2 三井サイアナミッド(株)製水溶性メラミン樹脂、「サイメル」はサイテツク テクノロジー コーポレーションの登録商標である。
※3 東洋アルミニウム(株)製アルミニウムフレーク、「アルペースト」は同社の登録商標である。
※4 サンノプコ(株)製消泡剤、「ノプコ」は、コグニス・ドイッチュランド・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシヤフトの登録商標である。
※5 実施例及び比較例の粘性調整剤
【0150】
<垂れ防止性の評価>
評価用塗料又はブランク塗料をイオン交換水にてフォードカップNo.4(JIS K−5600−2−2に準拠)で20秒(25℃)になるように希釈し、アセトンにて脱脂したステンレス板(250mm×100mm、0.5mm厚さ)の全体に、スプレーガン{ワイダーW−88カップガン(岩田塗装(株)製)、以下同じ}を用いて、膜厚差のある塗膜を形成する(膜厚傾斜塗装、雰囲気条件:25℃、40%相対湿度)。引き続き、塗布板を60度に立て掛けて静置し、静置5分後に塗膜の垂れ具合をチェックし、限界垂れ膜厚〔垂れ始める直前の膜厚、焼付け乾燥後、電磁微膜厚計{オーウエル(株)製、SEM−100型}にて測定した。単位:μm〕を比較した。この値が高いほど垂れ防止性が良好であることを意味する。
【0151】
<ワキ防止性の評価>
評価塗料又はブランク塗料をイオン交換水で、フォードカップNo.4(JIS K−5600−2−2に準拠)で20秒(25℃)になるように希釈し、アセトンにて脱脂したステンレス板(250mm×100mm、0.5mm厚さ)に、スプレーガンを用いて、膜厚傾斜塗装した後、10分間セッテイング(25℃、40%相対湿度)した後、140℃、10分間焼き付けし、膜厚差のある塗膜を形成して、ワキ限界膜厚値を評価し、この値をワキ防止性とした。この値が高いほどワキ防止性が良好であることを意味する。
なお、ワキ限界膜厚値は、傾斜塗装して膜厚差のある塗膜を形成し、焼き付け乾燥を行うと、膜厚の薄い部分から厚い部分にかけてワキを発生するが、このワキが発生し始める部分の膜厚を意味し、電磁微膜厚計{オーウエル(株)製、SEM−100型}にて測定した(単位:μm)。
【0152】
【表5】

【0153】
評価結果から、本発明の水性塗料用粘性調整剤(実施例1〜19)は、比較例1、2に比べて、ワキ防止性に著しく優れていた。また、ブランクに比較して、耐垂れ性が著しく向上しており、従来、両立しないと言われていたワキ防止性と耐垂れ性のバランスが極めて良好に取れていた。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明の水性塗料用粘性調整剤は水性塗料に適用することができるが、これらのうち特に熱硬化型水性塗料(自動車上塗り水性塗料、建材用水性塗料等)に最適である。水性エマルション塗料としては、アクリル系、酢酸ビニル系、スチレン系、ハロゲン化オレフィン系、ウレタン系、アクリル−シリコン系又はフッ素系等の塗料が挙げられる。そして、本発明の水性塗料用粘性調整剤はアルミニュウムフレーク等のフレーク状のフィラーを含む水性の熱硬化型塗料に極めて有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(Y1)を含有してなることを特徴とする水性塗料用粘性調整剤。

−L(−U−L−S−L)−U−L−S (1)

ただし、Sは一般式(2)で表される基、Sは一般式(3)で表される基、Lは炭素数6〜20のジイソシアネートの反応残基又は炭素数10〜50のジグリシジルエーテルの反応残基、Uは一般式(4)で表される基、qは0、1又は2を表す。
【化1】

Qは非還元性の二又は三糖類のt個の1級水酸基から水素原子を除いた残基、OAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、Zは炭素数2〜15のアルキレン基又はアリーレン基、Oは酸素原子、Hは水素原子、nは3〜50の整数、tは2〜4の整数、mは5〜25の整数を表し、S単位又はS単位に含まれるOAの総数はそれぞれ10〜100の整数であり、S、S、L、U、(OA)n、(OA)m、Q、n、mは、それぞれ同じでも異なってもよい。
【請求項2】
さらに一般式(5)で表されるポリオキシアルキレン化合物(Y2)を含有してなる請求項1に記載の粘性調整剤。

−L(−S−L)−S (5)

ただし、S、S、L、qは一般式(1)と同じである。
【請求項3】
非還元性の二又は三糖類の反応残基(Q)が蔗糖の反応残基である請求項1又は2に記載の粘性調整剤。
【請求項4】
非還元性の二又は三糖類(a1)1モル部と、炭素数2〜4のアルキレンオキシド(a2)10〜100モル部との化学反応(1)から化合物(a12)を得る工程(1);
炭素数2〜15のグリコール(a3)1モル部と炭素数2〜4のアルキレンオキシド(a2)10〜50モル部との化学反応(2)から化合物(a32)を得る工程(2);及び
化合物(a12)1モル部と、化合物(a32)0.1〜0.75モル部と、炭素数6〜20のジイソシアネート(a4)0.5〜1.5モル部との化学反応(3)、又は化合物(a12)1モル部と、化合物(a32)0.1〜0.75モル部と、炭素数10〜50のジグリシジルエーテル(a5)0.5〜1.5モル部との化学反応(4)から、ポリオキシアルキレン化合物(Y1)を得る工程(3)を含むことを特徴とする水性塗料用粘性調整剤の製造方法。
【請求項5】
水性ベース塗料と請求項1〜3のいずれかに記載の粘性調整剤とからなり、この粘性調整剤の含有量が水性ベース塗料及び粘性調整剤の重量に基づいて1〜5重量%であることを特徴とする塗料。
【請求項6】
水性ベース塗料が加熱硬化型の塗料であり、且つ、フレーク状フィラーを含んでなる塗料である請求項5に記載の塗料。


【公開番号】特開2011−241354(P2011−241354A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117189(P2010−117189)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000106438)サンノプコ株式会社 (124)
【Fターム(参考)】