説明

水性塗料用組成物および二液硬化型水性塗料キット

【課題】塗膜の外観に優れ、さらにポットライフが長い水性塗料用組成物および二液硬化型水性塗料キットを提供する。
【解決手段】含フッ素共重合体(A):水酸基を有する含フッ素共重合体、化合物(B):スルホ基または一部もしくは全部が中和されたスルホ基と、1を超える数のイソシアネート基とを有する化合物、および水性媒体(C)を含有する水性塗料用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素共重合体を含む水性塗料用組成物、および二液硬化型水性塗料キットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然環境保護のため、有機溶媒排出による地球温暖化や光化学スモッグ等の公害が問題とされ、排出規制が実施されつつある。特に欧州では規制が先行しており、日本においても2006年に大気汚染防止法が改訂されて、法的な排出規制が開始された。
法的規制に対応するために、塗料分野では、塗着効率を上げて塗料の有効利用をはかる塗装方法の開発や、塗料の固形分濃度を上げ、排出溶剤を削減するハイソリッド型塗料の導入が実施されてきた。しかし、ハイソリッド型塗料では溶剤削減に限界がある。
【0003】
アルキド系、アクリル系、ポリエステル系、ポリ酢酸ビニル系、およびエポキシ系等の各種合成樹脂を水に分散または溶解させた水性塗料用組成物が知られている。合成樹脂として、または合成樹脂の一部として水酸基を備える架橋性の含フッ素共重合体を用いた水性塗料組成物は、耐候性に優れることから広く用いられている。
【0004】
該含フッ素共重合体としては、水に対する親和性を高めるため、有機溶媒中でカルボキシル基を導入し、さらに、カルボキシル基の一部または全部を塩基性化合物で中和した含フッ素共重合体が知られている。該共重合体の硬化剤としてはポリエーテル変性イソシアネートが採用されている(特許文献1、2)。また、乳化重合により得られる含フッ素共重合体も知られており、この場合もやはり硬化剤としてはポリエーテル変性イソシアネートが採用されている(特許文献3)。
【0005】
しかし、特許文献1〜3に記載の含フッ素共重合体の水分散液または水溶液を、ポリエーテル変性イソシアネートを用いて硬化させる場合、硬化剤であるポリエーテル変性イソシアネートの含フッ素共重合体の水分散液または水溶液への分散性が悪く、塗膜にフィッシュアイが発生する問題があった。また、含フッ素共重合体の水分散液または水溶液においては、硬化剤を混合した後、塗装が可能な状態を維持する時間(すなわちポットライフ)が短い問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004/072197号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2007/125970号パンフレット
【特許文献3】特開平7−324180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決する水性塗料用組成物に関する。すなわち、塗膜の外観に優れ、さらにポットライフが長い水性塗料用組成物および二液硬化型水性塗料キットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成を有する。
[1]下記含フッ素共重合体(A)、下記化合物(B)、および水性媒体(C)を含有する水性塗料用組成物。
含フッ素共重合体(A):水酸基を有する含フッ素共重合体。
化合物(B):スルホ基または一部もしくは全部が中和されたスルホ基と、1を超える数のイソシアネート基とを有する化合物。
【0009】
[2]前記含フッ素共重合体(A)が、フルオロオレフィンに基づく重合単位と、水酸基を有する重合単位を含み、かつ、その水酸基価が20〜150mgKOH/gであることを特徴とする[1]に記載の水性塗料用組成物。
[3]前記含フッ素共重合体(A)が、さらに、酸基または一部もしくは全部が中和された酸基を有する重合単位を含み、かつ、その酸価が0mgKOH/gを超え40mgKOH/g以下であることを特徴とする[2]に記載の水性塗料用組成物。
【0010】
[4]前記含フッ素共重合体(A)が、フルオロオレフィンに基づく重合単位、下式(2)で表わされる重合単位、下式(3)で表される重合単位、および下式(4)で表わされる重合単位を含み、かつ、前記含フッ素共重合体(A)中の全重合単位に対するフルオロオレフィンに基づく重合単位の割合が40〜60モル%であり、前記下式(4)で表わされる重合単位の割合が3〜50モル%である[3]に記載の水性塗料用組成物。
【化1】

(ただし、式(2)中、R2bは水素原子またはメチル基、R2cは炭素数1〜10のアルキレン基または炭素数4〜10の2価の脂環式基である。mは0〜8の整数、nは0または1である。)
【化2】

(ただし、式(3)中、R3bは水素原子またはメチル基、R3cは、炭素数1〜10のアルキレン基または炭素数4〜10の2価の脂環式基、R3dは炭素数2〜10のアルキレン基、またはエチレン性二重結合を1以上有する炭素数2〜10の2価の炭化水素基、炭素数4〜10の2価の脂環式基、または炭素数4〜10の2価の芳香族基、R3eは水素原子または−NHZ(Z、Z、およびZはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基である。)である。pは0〜8の整数、qは0または1である。)
【化3】

(ただし、式(4)において、R4bは水素原子またはメチル基、R4eは炭素数1〜12のアルキル基または炭素数4〜10の1価の脂環式基である。jは0〜8の整数、kは0または1である。)
【0011】
[5]前記化合物(B)が、イソシアネート基を2以上有するポリイソシアネートと、アミノスルホン酸とを、前記イソシアネート基が1を超える割合で残るように反応させて得られる化合物である[1]〜[4]のいずれかに記載の水性塗料用組成物。
[6]前記アミノスルホン酸が、2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸および3−(シクロへキシルアミノ)プロパンスルホン酸から選ばれる少なくとも1種である[5]に記載の水性塗料用組成物。
[7]前記化合物(B)が有するイソシアネート基の数が1.8以上である[1]〜[6]のいずれかに記載の水性塗料用組成物。
[8]前記化合物(B)が有するイソシアネート基の数が2.0〜4.8であり、前記化合物(B)における、分子量に占めるイソシアネート基の割合が4.0〜26.0質量%であり、スルホネート基(ただし、SO基として計算した質量)の割合が0.1〜7.7質量%である[1]〜[7]のいずれかに記載の水性塗料用組成物。
【0012】
また、本発明の二液硬化型水性塗料キットの一実施形態は、以下の構成を有する。
[9]前記含フッ素共重合体(A)と前記水性媒体(C)とを含む主剤(D)、および前記化合物(B)を含む硬化剤(E)、または、前記含フッ素共重合体(A)と水性媒体(C1)とを含む主剤(D)、および前記化合物(B)と水を含まない媒体(C2)とを含む硬化剤(E)(ただし、水性媒体(C1)と媒体(C2)を合わせると前記水性媒体(C)となる。)からなり、前記主剤(D)と前記硬化剤(E)とを合わせることで[1]〜[8]のいずれかに記載の水性塗料組成物を形成することを特徴とする二液硬化型水性塗料キット。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水性塗料用組成物および二液硬化型水性塗料キットは、ポットライフが長い。また本発明の水性塗料用組成物から形成される塗膜は外観に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、重合単位とは、重合性の反応基を有する化合物(該化合物は、モノマーまたは単量体ともいわれる)の重合反応により形成される最少の繰り返し単位をいう。
本明細書において、1級アミノ基とは1級アミン(NH)の1個の水素原子が結合手となった−NHで表わされる基をいい、2級アミノ基とは−NHの水素原子の1個が1価炭化水素基(例えば、アルキル基等)となった1価の基をいう。
【0015】
[水性塗料用組成物]
本発明の水性塗料用組成物は、下記含フッ素共重合体(A)、下記化合物(B)、および水性媒体(C)を含有する。
【0016】
含フッ素共重合体(A):水酸基を有する含フッ素共重合体。
化合物(B):スルホ基または一部もしくは全部が中和されたスルホ基と、1を超える数のイソシアネート基とを有する化合物。
【0017】
<含フッ素共重合体(A)>
含フッ素共重合体(A)は、水酸基を有する含フッ素共重合体である。含フッ素共重合体(A)は、フッ素原子を必須とするモノマーの重合単位と、水酸基を必須とするモノマーの重合単位を必須とする重合体であるのが好ましく、さらに前記重合単位以外の重合単位(以下、他の重合単位という。)を含む重合体であるのが特に好ましい。
【0018】
含フッ素共重合体(A)は、フッ素原子を必須とするモノマーの重合単位としてフルオロオレフィンに基づく重合単位を含む重合体であるのが好ましい。さらに、含フッ素共重合体(A)は水酸基を有する重合単位を含み、その水酸基価が20〜150mgKOH/gであることが特に好ましい。
上記フルオロオレフィンに基づく重合単位としては、下式(1)で表される重合単位(以下、該重合単位を重合単位(1)と記す。他の式で表わされる重合単位も同様に記す。)が好ましい。
【0019】
−CX−CX− (1)
(ただし、式(1)において、X、X、XおよびXは、それぞれ独立に水素原子、塩素原子、フッ素原子、アルキル基、またはハロゲン原子を有する炭素数1〜3のアルキル基であり、X〜Xのうち少なくとも1つはフッ素原子またはフッ素原子を有する炭素数1〜3のアルキル基である。)
【0020】
重合単位(1)を形成するモノマーとしては、CF=CF、CClF=CF、CHCl=CF、CCl=CF、CClF=CClF、CHF=CCl、CH=CClF、CCl=CClF等のフルオロエチレン類;CFCH=CF、CFClCF=CF、CFCCl=CF、CFCF=CFCl、CFClCCl=CF、CFClCF=CFCl、CFClCF=CF、CFCCl=CClF、CFCCl=CCl、CClFCF=CCl、CClCF=CF、CFClCCl=CCl、CFClCCl=CCl、CFCF=CHCl、CClFCF=CHCl、CHFCCl=CCl、CFClCH=CCl、CFClCCl=CHCl、CClCF=CHCl、CHBrCF=CCl等のフルオロプロペン類;CFCCl=CFCF、CF=CFCFCClF、CFCFCF=CCl等の炭素数4以上のフルオロオレフィン系化合物等を挙げることができる。
【0021】
重合単位(1)を形成するモノマーとしては、フルオロエチレン類、フルオロプロペン類等が好ましい。フルオロエチレン類としては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン等が好ましく、フルオロプロペン類としてはヘキサフルオロプロピレン等が好ましい。含フッ素共重合体(A)がこれらの重合単位(1)を有していると、塗膜の耐候性に優れる利点がある。
【0022】
含フッ素共重合体(A)は、前記フッ素原子を必須とするモノマーの重合単位と、水酸基を必須とするモノマーの重合単位を必須とする重合体であるのが好ましい。該水酸基を必須とするモノマーの重合単位の好ましい態様は後述する。さらに、含フッ素共重合体(A)は、水酸基価が20〜150mgKOH/gとなる量の水酸基を含有する重合体であることが好ましい。ここで水酸基価とは、水酸基の含有量を示す指標であって、本発明に用いる含フッ素共重合体(A)においては、架橋密度を適切な範囲に調整する観点から、水酸基価は40〜125mgKOH/gが好ましく、さらに40〜60mgKOH/gが特に好ましい。水酸基価は、実施例に示す方法により定量できる。
【0023】
含フッ素共重合体(A)は、他の重合単位として、酸基または一部もしくは全部が中和された酸基を有する重合単位を含み、かつ、その酸価が0mgKOH/gを超え40mgKOH/g以下であることがより好ましい。
酸基または一部もしくは全部が中和された酸基を有する重合単位としては、酸基としてのカルボキシル基、またはカルボキシル基の一部または全部が中和された基を有する重合単位であるのが好ましい。該重合単位の好ましい態様は後述する。
ここで酸価とは、該共重合体における酸基および(本発明においては)中和された酸基)の含有量を示す。含フッ素共重合体(A)の酸価は、酸基と中和された酸基の合計量から求められる値である。酸価は、実施例に示す方法により定量できる。
【0024】
含フッ素共重合体(A)としては、酸基も中和された酸基も含まない重合体を用いてもよく、その場合、該重合体の酸価は0mgKOH/gである。本発明においては、含フッ素共重合体(A)は、水への溶解性または分散性と水中での安定性の観点から、前記酸価を有する重合体が好ましく、さらに酸価は7〜25mgKOH/gがより好ましく、10〜20mgKOH/gが特に好ましい。
【0025】
含フッ素共重合体(A)としては、フルオロオレフィンに基づく重合単位としての上記重合単位(1)、下式(2)で表わされる重合単位、下式(3)で表される重合単位、および下式(4)で表わされる重合単位、を含む含フッ素共重合体が挙げられる。
共重合体中の各重合単位の割合は、重合単位(1)の割合が40〜60モル%、重合単位(4)の割合が3〜50モル%であることが好ましい。共重合体中の、上記重合単位(2)および重合単位(3)の割合としては、それぞれ水酸基価および酸価が、前記の値となる割合が好ましい。
【0026】
含フッ素共重合体(A)中の全重合単位に対する重合単位(1)の含有割合は、40〜60モル%が好ましく、45〜55モル%がより好ましい。含フッ素共重合体(A)中の重合単位(1)の含有割合を該範囲にすると、十分な耐候性が得られ、含フッ素共重合体(A)のガラス転移温度が高くなりすぎず、非晶質で外観が良好な膜が得られる。
【0027】
水酸基を有する重合単位としては、下式(2)で表わされる重合単位が好ましい。
【0028】
【化4】

(ただし、式(2)中、R2bは水素原子またはメチル基、R2cは炭素数1〜10のアルキレン基または炭素数4〜10の2価の脂環式基である。mは0〜8の整数、nは0または1である。)
【0029】
重合単位(2)としては、水酸基含有ビニルエーテル、水酸基含有ビニルエステル、水酸基含有アリルエーテル、または水酸基含有アリルエステル等に基づく重合単位が好ましく、重合性、架橋性などの観点からヒドロキシアルキルビニルエーテル等に基づく重合単位がより好ましい。また、重合単位(2)を形成する単量体としては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、1−ヒドロキシメチル−4−ビニロキシメチルシクロヘキサン、および4−ヒドロキシプチルビニルエステル等が好ましい。
【0030】
含フッ素共重合体(A)中の全重合単位に対する重合単位(2)の含有割合は、4〜30モル%が好ましく、8〜25モル%がより好ましく、8〜12モル%が特に好ましい。
【0031】
酸基または一部もしくは全部が中和された酸基を有する重合単位としては、下式(3)で表される重合単位が好ましい。
【0032】
【化5】

(ただし、式(3)中、R3bは水素原子またはメチル基、R3cは、炭素数1〜10のアルキレン基または炭素数4〜10の2価の脂環式基、R3dは炭素数2〜10のアルキレン基、またはエチレン性二重結合を1以上有する炭素数2〜10の2価の炭化水素基、炭素数4〜10の2価の脂環式基、または炭素数4〜10の2価の芳香族基、R3eは水素原子または−NHZ(Z、Z、およびZはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基である。)である。pは0〜8の整数、qは0または1である。)
【0033】
重合単位(3)としては、酸基を有する重合単位である場合のR3eが水素原子である場合(すなわち重合単位(3)はカルボキシル基を有する重合単位である)と、中和された酸基である場合のR3eが−NHZである場合(すなわち、重合単位(3)はカルボン酸塩基を有する重合単位である)の態様が好ましい。
【0034】
重合単位(3)としては、pが0、qが0、R3cが炭素数2〜8のアルキレン基、R3dが炭素数2〜8のアルキレン基、R3eがトリアルキルアミノ基である重合単位が好ましく、重合性、架橋性などの観点からpが0、qが0、R3cがブチレン基、R3dがエチレン基、R3eがトリエチルアミノ基である重合単位がより好ましい。
カルボキシル基とカルボン酸塩基の総量に占めるカルボン酸塩基の割合は、30〜100モル%が好ましく、70〜100モル%がより好ましく、100モル%(すなわち、重合単位(3)はカルボン酸塩基のみで構成される)場合がさらに好ましい。
【0035】
重合単位(3)におけるカルボン酸塩基の割合を調節することにより、含フッ素共重合体(A)は、酸価が小さくても水中での分散粒子径を小さく保つことが可能になり、水性塗料用組成物の貯蔵安定性(特に各種分散・溶解成分を配合した際の貯蔵安定性)が向上する。
【0036】
重合単位(3)がカルボン酸塩基を有する場合、該重合単位中の式−COONHZで表わされる基は、水性塗料用組成物中で陽イオン性の成分(すなわち、NHZで表わされるカチオン)と陰イオン性の基(すなわち、式−COOで表わされる基。)に解離していてもよい。
【0037】
重合単位(3)の製造方法としては、以下の方法が挙げられる。
(方法i)カルボン酸塩基を有する単量体を共重合させる方法。
(方法ii)カルボキシル基を有する単量体を共重合させた後に、カルボキシル基をアミン類等の塩基性化合物で中和する方法。
(方法iii)水酸基を含有する単量体を重合させた後に、式HOOC−R3d−COOHで表されるジカルボン酸またはその無水物でエステル化し、つぎに末端のカルボキシル基をアミン類等の塩基性化合物で中和する方法。
【0038】
方法iiiを採用した場合、水酸基を含有する単量体としては、前記の重合単位(2)を形成させる単量体と同様の単量体が採用でき、製造のしやすさの観点から同様の単量体が好ましい。
また、ジカルボン酸無水物として、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸、無水アジピン酸、無水1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、無水cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、無水フタル酸、無水1,8−ナフタル酸、無水マレイン酸等が挙げられる。ジカルボン酸としては、ジカルボン酸無水物と水との反応生成物が挙げられる。
【0039】
重合単位(3)の含有割合は、含フッ素共重合体(A)の全重合単位に対して0モル%を超え8モル%以下が好ましく、1.4〜5モル%がより好ましく、2〜4モル%であることがさらに好ましい。
重合単位(3)の含有割合を前記割合にすると、含フッ素共重合体(A)は水への分散性と水中での安定性を向上できる。よって、水性塗料用組成物の貯蔵安定性を確保し、かつ塗膜を形成した際の耐水性をも確保できる。
【0040】
さらに本発明の含フッ素重合体(A)は、他の重合単位として、下記重合単位(4)で表される重合単位を有する重合体であるのが好ましい。
【0041】
【化6】

(ただし、式(4)において、R4bは水素原子またはメチル基、R4eは炭素数1〜12のアルキル基または炭素数4〜10の1価の脂環式基である。jは0〜8の整数、kは0または1である。)
【0042】
上記式(4)で示される重合単位(4)としては、アルキルビニルエーテルの重合単位(jとkが0)、アルキルビニルエステルの重合単位(jが0、kが1)、アルキルアリルエーテルの重合単位(jが1、kが0)、およびアルキルアリルエステルの重合単位(jが1、kが1)から選ばれる重合単位であることが好ましい。
【0043】
重合単位(4)を形成する単量体としては、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、酢酸ビニル、吉草酸ビニル、またはピバリン酸ビニル等が好ましく、塗膜物性(硬度、光沢、顔料分散性など)に応じて適宜選択して採用するのが好ましい。
【0044】
重合単位(4)を形成する単量体としては、フルオロオレフィンとの交互共重合性がよく、ガラス転位温度を調節しやすいことからエチルビニルエーテル、およびシクロヘキシルビニルエーテル等が好ましい。
【0045】
重合単位(4)の含有割合は、含フッ素共重合体(A)の全重合単位に対して、3〜50モル%が好ましく、20〜45モル%がより好ましい。
【0046】
含フッ素共重合体(A)中の前記重合単位(1)〜(4)は、それぞれ1種でもよく、2種以上であってもよい。また含フッ素共重合体(A)中の重合単位(1)〜(4)の総量は、全重合単位に対して80〜100モル%が好ましく、95〜100モル%がより好ましく、100モル%がさらに好ましい。
【0047】
含フッ素共重合体(A)が重合単位(1)〜(4)以外の重合単位(以下、重合単位(5)という。)を含有する場合、含フッ素共重合体(A)の全重合単位に対する重合単位(5)の割合は、20モル%未満が好ましく、5モル%未満がより好ましい。
【0048】
重合単位(5)としては、架橋性の官能基を有しない重合単位が好ましく、特に非フッ素系エチレン性単量体に基づく該重合単位が好ましく、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテンなどの非フッ素系オレフィン類を重合させた重合単位が挙げられる。
【0049】
本発明に用いる含フッ素共重合体(A)の特に好ましい構成は、重合単位(1)が45〜55モル%、重合単位(2)が8〜25モル%、重合単位(3)が1.4〜5モル%、重合単位(4)が20〜45モル%であって、重合単位(5)を含有しない構成である。
【0050】
含フッ素共重合体(A)の質量平均分子量は3,000〜200,000が好ましい。本明細書における分子量(質量平均分子量および数平均分子量)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法でポリスチレンを標準として測定した値である。質量平均分子量を該範囲にすることにより、塗料組成物の塗装性が向上し、塗膜の耐候性、塗膜外観も良好になる。
【0051】
<含フッ素共重合体(A)の製造>
本発明における含フッ素共重合体(A)は、所望の重合単位を形成する単量体を、公知の重合方法により重合させる方法により製造できる。重合反応には、必要に応じて、重合触媒、重合開始剤または電離性放射線等の重合開始源を用いてもよい。特に本発明における共重合反応は、反応系をアルカリ側に保つために、塩基性化合物の存在下で行うことが好ましい。
【0052】
重合開始剤としては、t−ブチルパーオキシアセテート等のパーオキシエステル型過酸化物;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のジアルキルパーオキシジカーボネートを用いることができ、他にもベンゾイルパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0053】
塩基性化合物としては、有機塩基性化合物、無機塩基性化合物から選択されうる。有機塩基性化合物としては、トリエチルアミンなどのアルキルアミン類、トリエチルホスフィンなどのアルキルホスフィン類などが好ましい。無機塩基性化合物では、炭酸カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酸化マグネシウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化物または酸化物などが好ましい。
【0054】
重合開始剤の使用量は、種類、共重合反応条件に応じて適宜変更可能であり、通常は単量体全量に対して、0.05〜0.5質量部程度が好ましい。塩基性化合物の使用量は、単量体全量に対して0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部が特に好ましい。
【0055】
共重合反応は、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などが採用でき、特に溶液重合の採用が好ましい。溶液重合に用いる溶媒としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、1個以上のフッ素原子を含む飽和ハロゲン化炭化水素類、キシレンなどの芳香族炭化水素などを使用することが好ましい。
共重合反応の反応温度は10℃〜90℃が好ましい。また、反応圧力は、0〜100kg/cm・Gが好ましく、1〜50kg/cm・Gがより好ましい。
【0056】
重合単位(1)、重合単位(2)、重合単位(3)、および重合単位(4)を含む含フッ素共重合体(A)の製造方法としては、それぞれの重合単位を形成する単量体を共重合する方法が挙げられる。さらに重合単位(3)については、前記方法i〜方法iiiが採用でき、方法iiiが好ましい。
【0057】
含フッ素共重合体(A)の製造方法の好ましい例としては、まず、重合単位(1)、重合単位(2)および重合単位(4)をそれぞれ形成する単量体を共重合させた含フッ素共重合体(X)を得る。ここで、含フッ素共重合体(X)は、本発明における含フッ素共重合体(A)として使用可能な含フッ素共重合体であり、重合単位(1)〜(4)と該重合単位以外の重合単位とを含む含フッ素共重合体(A)の製造においては、中間体として用いられる。各単量体の配合量は、重合単位(1)および重合単位(4)を形成する単量体については、所望の重合単位のモル%と同様の量とするのが好ましい。重合単位(2)については、重合単位(2)と重合単位(3)の総モル%と同様の量とするのが好ましい。
共重合には、重合開始剤、塩基性化合物、溶媒等を用いることができ、これらの種類、使用量、および共重合の反応条件等は、上記と同様である。
【0058】
含フッ素共重合体(X)は、市販品を用いることも可能である。市販品としては、ルミフロン(商品名、旭硝子社製)、ゼッフル(商品名、ダイキン社製)等が挙げられる。
【0059】
つぎに、含フッ素共重合体(X)の水酸基をエステル化反応して重合単位(3)を形成させる。エステル化の割合は、重合単位(2)および(3)の割合に応じて調節する。
【0060】
エステル化は、含フッ素共重合体(X)とジカルボン酸無水物を、有機溶媒中で反応させることにより行うのが好ましい。エステル化により、重合単位(2)は水酸基がカルボキシル基含有する重合単位(3)に変換されうる。
【0061】
ジカルボン酸無水物としては、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸、無水アジピン酸、無水1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、無水cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、無水フタル酸、無水1,8−ナフタル酸、無水マレイン酸等が好ましい。
【0062】
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第2級ブタノール、第3級ブタノール、ペンタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、第2級ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール誘導体、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族化合物などが挙げられる。有機溶媒は、含フッ素共重合体(X)およびジカルボン酸無水物の溶解性などの観点から適宜選択できる。
【0063】
エステル化は、触媒の存在下で実施してもよい。触媒としては、カルボン酸金属塩、水酸化アルカリ、アルカリ金属炭酸塩、4級アンモニウム塩、3級アミン等が好ましく、特にトリエチルアミンなどの3級アミンが好ましい。
エステル化の反応温度は、室温(25℃)〜150℃が好ましく、50〜100℃がより好ましい。反応時間は、数10分〜数時間程度が好ましい。
【0064】
ジカルボン酸無水物の量は、含フッ素共重合体(A)の重合単位(3)の含有割合に応じて適宜変更されうる。
【0065】
含フッ素重合体(A)の酸価は、エステル化反応後に測定するのが好ましい。エステル化反応後の酸価が0mgKOH/gを超え40mgKOH/g以下である場合には、重合単位(3)となる重合単位が約0モル%を超え8モル%以下になる。
【0066】
含フッ素共重合体(A)中の重合単位(2)の量は、エステル化工程前の含フッ素共重合体(X)の水酸基価を測定することによって確認できる。該水酸基価が25〜175mgKOH/gであって、エステル化後の酸価が0mgKOH/gを超え40mgKOH/g以下である場合には、含フッ素共重合体(A)における重合単位(2)の含有量が4〜30モル%になる。
【0067】
フッ素共重合体(A)を中和する場合には、フッ素共重合体(A)に塩基性化合物を加え、エステル化工程で導入されたカルボキシル基の一部または全部を中和する。重合単位(3)のカルボキシル基のうち、中和された基の割合は、30〜100モル%であることが好ましく、70〜100モル%であることがより好ましく、100モル%であることがさらに好ましい。
【0068】
中和は、エステル化により得られたカルボキシル基を有する含フッ素共重合体(A)が溶解した有機溶媒に、塩基性化合物または塩基性化合物、および水を、室温で数10分間添加する方法で実施するのが好ましい。該方法によれば、カルボキシル基の30〜100モル%が中和された含フッ素共重合体(A)が製造される。
【0069】
中和における水の添加は、塩基性化合物と同時であっても別であってもよい。一部を塩基性化合物と同時に、残りを別に添加してもよい。同時に加える場合には、塩基性化合物を水溶液として添加する方法が好ましい。水を別に加える場合には、塩基性化合物の添加前であっても添加後であってもよい。
【0070】
水の量は、中和後の含フッ素共重合体(A)の固形分含有量が、3〜50質量%となる量が好ましく、特には15〜40質量%となる量が好ましい。
中和に用いうる塩基性化合物としては、塗膜中に残留しにくくするために、沸点が200℃以下である化合物から選択するのが好ましい。
【0071】
塩基性化合物としては、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン等の1級、2級または3級のアルキルアミン類;モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール等のアルカノールアミン類;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のジアミン類;エチレンイミン、プロピレンイミン等のアルキレンイミン類;ピペラジン、モルホリン、ピラジン、ピリジン等が挙げられる。
【0072】
塩基性化合物の量は、カルボキシル基1モルに対して塩基性化合物が0.7〜1.0モルとなる量が好ましい。
【0073】
本発明においては、中和後に、含フッ素共重合体(A)を含む反応液中の有機溶媒を除去することが好ましい。有機溶媒の除去は、例えば減圧留去により行うことができる。
【0074】
<化合物(B)>
本発明の水性塗料用組成物は、含フッ素重合体(A)と化合物(B)とを必須成分として含有する。化合部(B)は、スルホ基または一部もしくは全部が中和されたスルホ基と、1を超える数のイソシアネート基とを有する化合物である。本発明は、含フッ素共重合体(A)と化合物(B)を組合せることにより、ポットライフが長い水性塗料用組成物を実現可能とした。また本発明の水性塗料用組成物から形成された塗膜は外観に優れた塗膜となりうる。
【0075】
化合物(B)はスルホ基(−SOH)、または、一部または全部が中和されたスルホ基と、1を超える数のイソシアネート基とを有する化合物である。中和されたスルホ基とは、スルホ基に該基と反応しうる塩基性化合物を反応させて得られる基をいう。
化合物(B)中のスルホ基または中和されたスルホ基の割合を、SO基として計算した場合には、化合物(B)の分子量に対する該スルホ基の割合は、安定性の観点から、0.1〜7.7質量%が好ましく、0.2〜6.3質量%がより好ましく、0.6〜4.8質量%が特に好ましい。
【0076】
化合物(B)がスルホ基を有する場合には、化合物(B)の水分散性が向上するが、スルホ基の一部または全部を中和することにより、より水分散性が向上しうる。
本発明における化合物(B)のイソシアネート基の数は、化合物(B)の1種または化合物(B)の2種以上の組成物におけるイソシアネート基の数をいい、2種以上の化合物からなる場合には、イソシアネート基の数の平均値をいう。化合物(B)のイソシアネート基の数は、1を超える数であり、化合物(B)が1種である場合には、分子中に2以上のイソシアネート基が存在することをいい、化合物(B)が2種以上である場合には、分子中に1以上のイソシアネート基を有する化合物のイソシアネート基の平均数が1を超えた数になることをいう。
【0077】
化合物(B)が2種以上からなる場合のイソシアネート基の平均数は、好ましくは1.8以上であり、さらに好ましくは2.0〜4.8であり、特に好ましくは2.4〜3.8である。化合物(B)が1種である場合の分子中のイソシアネート基は2以上であり、好ましくは2〜5であり、特に好ましくは2〜4である。
本発明においては、化合物(B)のイソシアネート基数が1を超える数とすることにより、含フッ素共重合体(A)との架橋反応が十分に進行する。
【0078】
化合物(B)が2種以上である場合のイソシアネート基の平均数は、理論的には下式(F)で求められる。
【0079】
【数1】

(上記式(F)中、数平均分子量はポリイソシアネート化合物の数平均分子量である。)
【0080】
イソシアネート基平均数(y)は、1を超え、1.8以上が好ましく、2.0〜4.8がさらに好ましく、2.4〜3.8が特に好ましい。イソシアネート基平均数(y)が1を超えると、含フッ素共重合体(A)との反応が十分に進行しうる。
【0081】
化合物(B)は、2以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(b1)と、該イソシアネート基と反応しうる基と、スルホ基または中和されたスルホ基とを有する化合物(b2)、とを反応させることにより得られる化合物であるのが好ましい。
ポリイソシアネート(b1)としては、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートおよび芳香族ポリイソシアネートから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0082】
ポリイソシアネート(b1)としては、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネートおよび芳香族ジイソシアネートから選ばれる少なく1種のジイソシアネート中のイソシアネート基を変性することにより調製される化合物が好ましい。該化合物としては、ウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造を有する化合物であって、分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物が好ましい。
【0083】
ポリイソシアネート(b1)は、上記式(F)で求められるイソシアネート基平均数(y)が、2.0〜5.0であり、ポリイソシアネート(b1)全量に対するイソシアネート基含有量が8.0〜27.0質量%であることが好ましい。
【0084】
ポリイソシアネート(b1)の調製に好ましく用いられるジイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネートおよび芳香族ジイソシアネート等が好ましく、分子量140〜400の該ジイソシアネートが特に好ましい。
脂肪族ジイソシアネートとしては、1,4−ジイソシアナトブタン、1,6−ジイソシアナトへキサン(HDI)、2−メチル−1,5−ジイソシアナトペンタン、1,5−ジイソシアナト−2,2−ジメチルペンタン、2,2,4−および2,4,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,10−ジイソシアナトデカン等が挙げられる。
【0085】
脂環式ジイソシアネートとしては、1,3−または1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3−または1,4−ビス−(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(すなわち、イソホロン−ジイソシアネート)、4,4'−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、1−イソシアナト−1−メチル−4(3)イソシアナト−メチルシクロヘキサン、ビス−(イソシアナトメチル)ノルボルネン等が挙げられる。
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、1,3−および1,4−ビス−(2−イソシアナト−プロパ−2−イル)−ベンゼン(TMXDI)等が挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしては、2,4−および2,6−ジイソシアナトトルエン(TDI)、2,4'−および4,4'−ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、1,5−ジイソシアナトナフタレン等が挙げられる。
【0086】
ジイソシアネートからポリイソシアネート(b1)を調製する際には、ジイソシアネートを1種用いても、2種以上を併用してもよい。
ポリイソシアネート(b1)としては、脂肪族ジイソシアネートおよび/または脂環式ジイソシアネートから得られる変性体が好ましく、HDI、IPDIおよび4,4'−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン等から選ばれるジイソシアネートの3量体として得られるトリイソシアヌレートが特に好ましい。
ポリイソシアネート(b1)と、化合物(b2)との反応は、イソシアネート基が1を超えて残る割合で反応させることにより行われる。
【0087】
ポリイソシアネートと反応させる化合物(b2)は、スルホ基または一部もしくは全部が中和されたスルホ基と、1を超える数のイソシアネート基とを有する化合物である。イソシアネート基と反応性を有する官能基としては、水酸基、1級アミノ基、または2級アミノ基等が挙げられ、本発明においては、1級アミノ基または2級アミノ基が好ましい。
化合物(b2)としては、1級アミノ基または2級アミノ基の1個と、スルホ基または一部もしくは全部が中和されたスルホ基の1個が、2価の基で連結されたかご化合物が好ましく、下式(5)に示される化合物、または、該化合物の−SOHの一部または全部が中和された化合物が好ましい。
【0088】
【化7】

(ただし、Rは、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数4〜20の1価の脂環式基を表し、Xは炭素数1〜6のアルキレン基、または炭素数4〜20の2価の脂環式基を表す。)
【0089】
上式(5)に示される化合物としては、アミノスルホン酸として知られる化合物から選択されうる。化合物(b2)としては、イソシアネート基と反応性の観点から、2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸、3−(シクロヘキシルアミノ)プロパンスルホン酸等が好ましい。アミノスルホン酸は、両性イオン物質として公知の化合物であり、通常は結晶の形態であり、300℃を超える融点を有する。該化合物(b2)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
化合物(b2)がスルホ基を有する化合物である場合には、反応後に一部または全部を中和してもよい。スルホ基の中和は、反応前、反応中、反応後のいずれに行われてもよく、該中和は、ポリイソシアネート(b1)と化合物(b2)との反応中に行われることが好ましい。
【0091】
化合物(b2)のスルホ基の一部または全部を中和する方法は、該化合物(b2)と塩基性化合物との中和反応によるものが好ましい。塩基性化合物としては、3級アミンが好ましい。
上記3級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン等の3級モノアミン;1,3−ビス−(ジメチルアミノ)−プロパン、1,4−ビス−(ジメチルアミノ)−ブタン、N,N'−ジメチルピペラジン、等の3級ジアミン、が挙げられる。
【0092】
3級アミンとしては、前記化合物(b2)のスルホ基の中和に用いる3級アミンもスルホ基の中和に用いることもできる。ただし、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンは、イソシアネートと反応する基を有することから、中和反応に用いるのを避けるのが好ましい。
中和に用いる塩基性化合物の量は、化合物(b2)のスルホ基1モルに対して0.2〜2.0モルが好ましく、0.5〜1.5モルが特に好ましい。
【0093】
ポリイソシアネート(b1)と化合物(b2)とを反応させて化合物(B)を得る際の反応温度は、40〜150℃が好ましく、特に50〜130℃が好ましい。また、該反応は、触媒の存在下に実施するのが好ましい。触媒としては、塩基性化合物(好ましくは3級アミン。)または金属塩が好ましい。塩基性化合物、および3級アミンを用いた場合には、後述するスルホ基の中和に用いるものと同じものを用いることができる。また、中和に用いる塩基性化合物および3級アミンと同じものを用いると、ポリイソシアネート(b1)と化合物(b2)との反応と中和反応を同時に実施できる。
【0094】
触媒として用いる3級アミンとしては、前記と同様のものを用いることができ、トリエチルアミン、ピリジン、メチルピリジン、ベンジルジメチルアミン、N,N−エンドエチレンピペラジン、N-メチルピペリジン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N−ジメチル−アミノシクロヘキサン、N,N'−ジメチルピペラジン等が好ましい。
金属塩としては、塩化鉄(III)、トリ(エチル−アセト酢酸)アルミニウム、塩化亜鉛、n−オクタン酸亜鉛(II)、2−エチル−1−ヘキサン酸亜鉛(II)、2−エチルカプロン酸亜鉛(II)、ステアリン酸亜鉛(II)、ナフテン酸亜鉛(II)、アセチルアセトン酸亜鉛(II)、n−オクタン酸錫(II)、2−エチル−1−ヘキサン酸錫(II)、エチルカプロン酸錫(II)、ラウリン酸錫(II)、パルミチン酸錫(II)、ジブチル錫(IV)オキシド、ジブチル錫(IV)ジクロライド、ジブチル錫(IV)ジアセテート、ジブチル錫(IV)ジマレエート、ジブチル錫(IV)ジラウレート、ジオクチル錫(IV)ジアセテート、またはモリブデングリコレート等が挙げられる。触媒は1種を用いても、2種以上の混合物を用いてもよい。
【0095】
触媒の量は、反応基質の全質量に対して0.001〜2質量%が好ましく、特には0.005〜0.5質量%が好ましい。
【0096】
ポリイソシアネート(b1)と化合物(b2)との反応は、イソシアネート基が1を超えて残る割合で反応を行う必要があることから、ポリイソシアネート(b1)と化合物(b2)の量比は、[ポリイソシアネート(b1)のイソシアネート基のモル量]:[化合物(b2)のイソシアネート基と反応性を有する官能基とのモル量]=2:1〜400:1とするのが好ましく、特に4:1〜250:1が好ましい。イソシアネート基の量比を多くすることにより、イソシアネート基の数が1を超える化合物(B)を得ることができる。
【0097】
化合物(B)の分子量に対するイソシアネート基(NCO基)の割合は、4.0〜26.0質量%が好ましく、7.0〜23.0質量%がより好ましく、10.0〜22.0質量%が特に好ましい。
【0098】
ポリイソシアネート(b1)と化合物(b2)との反応は、イソシアネート基に不活性である溶媒中で行なうことが好ましい。溶媒としては、塗料用組成物に用いる溶媒から選択するのが好ましく、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルまたはエチルエーテルアセテート、1−メトキシプロパ−2−イルアセテート、3−メトキシ−n−ブチルアセテート、アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、揮発油、多置換された芳香族化合物等の溶媒;商品名:ソルベッソ(登録商標)、アイソパー(登録商標)、ナッパー(登録商標)(全て、エクソン社製)およびシェルゾール(商品名、シェル社製)等の市販溶媒;炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、1,2−エチレンカーボネートおよび1,2−プロピレンカーボネート、ラクトン等の炭酸エステル;β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトンおよびε−メチルカプロラクトン等のラクトン系溶媒;プロピレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルおよびブチルエーテル−アセテート、N−メチルピロリドンおよびN−メチルカプロラクタム等、が挙げられる。溶媒は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0099】
化合物(B)は、さらに水への分散安定性を向上させるために、構造中にポリオキシアルキレン構造を有する化合物であるのが好ましく、ポリオキシエチレン構造および/またはポリオキシプロピレン構造を有する化合物であるのが好ましい。化合物(B)中のポリオキシアルキレン構造の割合は、化合物(B)の分子量に対して、0〜19.5質量%が好ましく、0〜17質量%が特に好ましく、0〜15質量%が好ましい。またポリオキシアルキレン構造におけるオキシアルキレン構造単位の繰り返し数は、5〜55であるのが好ましい。ポリオキシアルキレン構造としては、ポリオキシエチレン構造が好ましく、オキシエチレン構造の繰り返し数が5〜55であるポリオキシエチレン構造が特に好ましい。
【0100】
化合物(B)中にポリオキシアルキレン構造を導入する方法としては、(方法1)イソシアネート基と反応性の基と、ポリオキシエチレン構造を有する化合物(b3)を、ポリイソシアネート(b1)と化合物(b2)の反応に並存させる方法、(方法2)ポリイソシアネート(b1)と化合物(b3)とを反応させた後で化合物(b2)と反応させる方法、または(方法3)ポリイソシアネート(b1)と化合物(b2)とを反応させた後に化合物(b3)を反応させる方法、によるのが好ましい。
【0101】
化合物(b3)としては、ポリオキシアルキレン基の末端が水酸基となった構造を有する化合物が好ましく、水酸基を1個有するポリオキシアルキレンモノオールまたは水酸基を2個以上有するポリオキシアルキレンポリオールが好ましく、ポリオキエチレンモノオールまたはポリオキエチレンポリオールが特に好ましい。
化合物(b3)の量は、化合物(b1)、化合物(b2)、および化合物(b3)の総質量に対して0〜25質量%が好ましく、0〜20質量%がより好ましい。
【0102】
化合物(b3)としては、ポリオキシアルキレンモノオールが好ましく、オキシアルキレン基の繰り返し単位の数が5〜35個、好ましくは7〜30個、特に好ましくは7〜25個であるポリオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレンモノオールが好ましい。
該ポリオキシアルキレンモノオールは、市販のポリオキシアルキレンポリオールの末端の水酸基を既知の方法でアルコキシル化することによって、水酸基を1個以上有する化合物に、アルキレンオキシドを付加反応させることによって、またはアミノ基を1個以上有する化合物に、アルキレンオキシドを付加反応させることによって、入手できる。
【0103】
化合物(b3)の製造に用いうる水酸基を1個以上有する化合物としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、異性体ペンタノール、ヘキサノール、オクタノールおよびノナノール、n−デカノール、n−ドデカノール、n−テトラデカノール、n−ヘキサデカノール、n−オクタデカノール、シクロへキサノール、異性体メチルシクロヘキサノールまたはヒドロキシメチルシクロヘキサン、3−エチル−3-ヒドロキシメチルオキセタンまたはテトラヒドロフルフリルアルコール等の飽和炭化水素基を有するモノアルコール;アリルアルコール、1,1−ジメチル−アリルアルコールまたはオレイルアルコール等の不飽和炭化水素基を有するアルコール;フェノール、異性体クレゾールまたはメトキシフェノール等の芳香族アルコール;ベンジルアルコール、アニシルアルコールまたはシンナミルアルコール等の芳香脂肪族アルコール等が挙げられる。
【0104】
化合物(b3)の製造に用いうるアミノ基を1個以上有する化合物としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ビス−(2−エチルヘキシル)−アミン、N−メチル−およびN−エチルシクロヘキシルアミンまたはジシクロヘキシルアミン等の2級アミン、モルホリン、ピロリジン、ピペリジンまたは1H−ピラゾール等のヘテロ環2級アミンが挙げられる。
【0105】
化合物(b3)としては、炭素数1〜4のアルキル基を有するモノアルコールであり、メタノールが好ましい。アルキレンオキシドとして、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドが好ましい。
【0106】
化合物(b3)中のオキシアルキレン基は1種であっても2種以上であってもよい。さらにポリオキシアルキレン基中のオキシエチレン基本の割合は、30モル%以上が好ましく、40モル%以上が好ましい。
【0107】
化合物(B)は、水中に良好に溶解または分散でき、容易に沈降安定性が高い組成物を調製できる。化合物(B)として、前記の方法により適宜調製してもよく、バイヒジュールXP2655(商品名、Bayer社製)、バイヒジュールXP2547(商品名、Bayer社製)等の市販品を用いてもよい。
【0108】
<水性媒体(C)>
本発明の水性塗料用組成物は、含フッ素共重合体(A)および化合物(B)、水性媒体(C)を必須成分として含有する。水性媒体(C)としては、水、または、水と水溶性の有機溶媒との混合物が好ましく、水が特に好ましい。また、上記水溶性の有機溶媒として、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第2級ブタノール、第3級ブタノール、ペンタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、第2級ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール誘導体、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等が挙げられ、これらのうちでもメチルエチルケトン、アセトン等が好ましい。水性媒体(C)が水と水溶性の有機溶媒との混合物である場合、該混合物における水溶性有機溶媒の割合は、水100質量部に対して0質量部を超え、かつ20質量部以下が好ましく、0.5〜20質量部が好ましい。
【0109】
<水性塗料用組成物>
本発明の水性塗料用組成物中の含フッ素共重合体(A)と、化合物(B)との配合割合は、含フッ素共重合体(A)が有する水酸基の1モルに対して化合物(B)の有するイソシアネート基のモル量が、0.5〜1.5倍量となる量比で配合されることが好ましい。水性媒体(C)の配合量は、含フッ素共重合体(A)および化合物(B)の種類により適宜変更され、通常の場合、含フッ素共重合体(A)と化合物(B)の総質量100質量部に対して50〜300質量部が好ましく、80〜200質量部がより好ましい。
【0110】
さらに、含フッ素共重合体(A)と化合物(B)との量比は、フッ素共重合体(A)と化合物(B)の合計量を100質量%とした場合に、含フッ素共重合体(A)の50〜95質量%に対して、化合物(B)を5〜50質量%を配合するのが好ましく、特に含フッ素共重合体(A)の65〜90質量%に対して、化合物(B)の5〜35質量%を配合するのが好ましい。
【0111】
本発明の水性塗料用組成物は、含フッ素共重合体(A)中の水酸基と、化合物(B)中のイソシアネート基が反応してウレタン結合を形成し、硬化塗膜になる。
【0112】
本発明の水性塗料用組成物においては、含フッ素共重合体(A)と化合物(B)の水性媒体(C)に十分に分散または溶解することから、外観に優れる硬化塗膜が得られる。さらに混合後のポットライフが長く、混合から数時間経過した後に塗布したとしても、十分に外観に優れた塗膜を形成する。
【0113】
本発明の水性塗料用組成物の硬化条件としては、含フッ素共重合体(A)と化合物(B)の種類、濃度や塗膜の厚さ等により適宜変更され、通常は5〜180℃での硬化が好ましく、硬化時間は0.1〜48時間が好ましい。また、架橋・硬化に加熱が必要な場合には、加熱焼き付けすることにより塗膜を形成することができる。
【0114】
[二液硬化型水性塗料キット]
本発明の水性塗料用組成物の保管形態としては、主剤(D)と硬化剤(E)の2剤をそれぞれ保管する形態が好ましい。例えば、含フッ素共重合体(A)と水性媒体(C)とを含む主剤(D)、および上記化合物(B)を含む硬化剤(E)を個別に保管する形態、または、含フッ素共重合体(A)と水性媒体(C1)とを含む主剤(D)、および化合物(B)と水を含まない媒体(C2)とを含む硬化剤(E)(ただし、水性媒体(C1)と媒体(C2)を合わせると上記水性媒体(C)となる。)を個別に保管する形態、が好ましい。個別に保管された主剤(D)と硬化剤(E)とは、使用に際して混合され塗膜形成に用いられる。
【0115】
上記主剤(D)と硬化剤(E)の混合および、得られた混合物の被塗装物品への塗布は、通常の方法で行うことができる。塗布方法としては、例えば、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、静電塗装、ベル塗装などの方法が挙げられる。
【0116】
本発明の水性塗料用組成物は、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲において、他の任意成分が配合されていてもよい。任意成分としては、通常、二液硬化型水性塗料キットの、主剤(D)および硬化剤(E)にそれぞれ配合されうる成分である。他の任意成分については、以下の二液硬化型水性塗料キットに含ませうる任意成分が挙げられる。
【0117】
二液硬化型水性塗料キットを用いて本発明の水性塗料用組成物を調製する場合、水性媒体(C)は、水性媒体(C1)と、硬化剤(E)が任意に含有する媒体(C2)の混合物であるが、硬化剤(E)が媒体(C2)を含有しない場合の水性媒体(C1)と水性媒体(C)は同じものである。また、水性媒体(C1)と媒体(C2)の合計量が水性媒体(C)の量である。
【0118】
<主剤(D)>
主剤(D)は、含フッ素共重合体(A)が水性媒体(C1)に分散してなるものが好ましい。水性媒体(C1)は、上記水性媒体(C)と同様のものが使用でき、好ましい態様も同様である。主剤(D)中の含フッ素共重合体(A)の量は、顔料分散性、塗装性、耐水性等の塗膜性能の観点から、主剤(D)の総質量に対して3〜60質量%が好ましく、15〜50質量%がより好ましい。水性媒体(C1)の含有量は、塗装性、貯蔵安定性の観点から、主剤(D)の総質量に対して20〜70質量%が好ましく、20〜50質量%がより好ましい。
さらに、主剤(D)には必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲において、他の任意成分が配合されていてもよい。
【0119】
主剤(D)に含ませうる他の任意成分としては、水性媒体(C1)に分散または溶解する合成樹脂が挙げられる。該合成樹脂としては、フッ素系、フェノール系、アルキド系、メラミン系、ユリア系、ビニル系、エポキシ系、ポリエステル系、ポリウレタン系、アクリル系などの合成樹脂が挙げられる。合成樹脂としては、水酸基、カルボキシル基等の化合物(B)と反応する官能基を有する合成樹脂が好ましい。合成樹脂中の官能基としては水酸基またはカルボキシル基が好ましく、水酸基価は20〜150mgKOH/gが好ましく、酸価は10〜100mgKOH/gが好ましい。
【0120】
フッ素系の合成樹脂としては、含フッ素重合体(A)以外の合成樹脂であり、例えば、特許第2955336号公報に記載のフルオロオレフィンに基づく重合単位および親水性部位を有するマクロモノマーに基づく重合単位(ただし水酸基を持たない)を必須構成成分とする含フッ素共重合体が挙げられる。ここで、親水性部位とは、水酸基以外の親水性基を有する部位、または親水性の結合を有する部位、およびこれらの組合せからなる部位を意味する。また、マクロモノマーとは片末端にラジカル重合性不飽和基を有する低分子量のポリマーまたはオリゴマーをいう。フッ素系の合成樹脂を含有させた場合は、主剤(D)の機械的安定性および化学的安定性が改良され、好ましい。
【0121】
非フッ素系合成樹脂は、非フッ素系合成樹脂をそのまま、または、含フッ素共重合体(A)の存在下で非フッ素系単量体をシード重合(2段重合)したもの、を用いるのが好ましい。また、含フッ素共重合体(A)以外のフッ素系重合体の存在下に非フッ素単量体をシード重合したものを、用いてもよい。
含フッ素共重合体(A)存在下でシード重合する場合、非フッ素単量体としては、相溶性の観点から、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルが好ましい。
シード重合は、乳化重合に通常使用される条件と同様の条件下で実施できる。
【0122】
具体的には、フッ素共重合体(A)の水性媒体分散体に少なくとも1種の非フッ素単量体、界面活性剤、重合開始剤、連鎖移動剤、およびpH調整剤などが混合し、重合を行う方法が挙げられる。界面活性剤は、フッ素共重合体(A)の水性媒体分散体が高分子乳化剤の役割を果たす場合、または、フッ素共重合体(A)の水性媒体分散体に界面活性剤が含まれる場合、は使用しなくてもよい。
【0123】
主剤(D)中の他の合成樹脂の含有量は、他の合成樹脂がフッ素系の樹脂である場合には、上記含フッ素共重合体(A)と他の合成樹脂の総量に対して、0〜90質量%が好ましく、0〜50質量%がより好ましい。
他の合成樹脂が非フッ素系の合成樹脂である場合には、含フッ素共重合体(A)の耐候性を十分に発揮させる観点から、含フッ素共重合体(A)と他の合成樹脂の総量に対して、0〜50質量%が好ましい。
【0124】
主剤(D)には、さらに、造膜助剤、表面調整剤、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤等の添加剤を適宜含有させることが好ましい。また、用途に応じてツヤ消剤や着色材を含有させてもよい。
【0125】
造膜助剤としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノ(2−メチルプロピオネート)、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。造膜助剤は、主有機溶媒の1種でもあることから、造膜助剤を含有させる場合は、有機溶剤の総量が主剤(D)全量に対して10質量%以下になるように調整することが好ましく、3質量%以下とすることがより好ましい。また、造膜助剤の量は、含フッ素共重合体(A)と他の合成樹脂の総質量に対して、3質量%以下が好ましく、質量%以下が特に好ましい。
表面調整剤としては、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン等が好ましく挙げられる。
増粘剤としては、ポリウレタン系会合性増粘剤等が好ましく挙げられる。
【0126】
紫外線吸収剤としては、透明塗料として上塗り塗装で用いる場合に適した紫外線吸収剤であることから、サリチル酸メチル、サリチル酸フェニル、サリチル酸クレジル、サリチル酸ベンジル等のサリチル酸エステル類;2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−クロロベンゾフェノン、2−アミノベンゾフェノン、アデカ・アーガス社製のT−57(商品名)等の高分子量変性品等のベンゾフェノン類;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−ネオペンチルフェニル)ベンゾトリアゾール、チバ・ガイギー社製のチヌビン900、1130(商品名)等の高分子量変性品等のベンゾトリアゾール類;2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸エチル、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸2−エチルヘキシル、α−シアノ−β−メチル−4−メトキシ桂皮酸メチル等の置換アクリロニトリル類;2,2’−チオビス(4−オクチルフェノレート)ニッケル錯塩、{2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノラート)}−n−ブチルアミン・ニッケル錯塩等のニッケル錯塩;p−メトキシベンジリデンマロン酸ジメチル、レゾルシノールモノ安息香酸エステル、ヘキサメチルリン酸トリアミド、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン等の紫外線吸収剤;およびビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)等が挙げられる。紫外線吸収剤は1種をまたは2種以上を組み合わせて用いうる。
【0127】
紫外線吸収剤は、含フッ素共重合体(A)と他の合成樹脂の総質量に対して、0.1〜15質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。
【0128】
光安定剤としてはアデカ・アーガス社製のMARK LA 57,62,63,67,68(商品名)、チバ・ガイギー社製のチヌビン622LD(商品名)等のヒンダードアミン系の光安定剤が挙げられる。光安定剤は、1種または2種以上の混合物として、もしくは紫外線吸収剤と組合せて用いることができる。
【0129】
消泡剤としては、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸塩類、液体脂肪油硫酸エステル類、脂肪族アミンおよび脂肪族アミドの硫酸塩類、脂肪族アルコールリン酸エステル類、二塩基性脂肪酸エステルのスルホン酸塩類、脂肪酸アミドスルホン酸塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類、ホルマリン縮合のナフタリンスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類、アクリル系ポリマー、シルコーン混合アクリル系ポリマー、ビニル系ポリマー、ポリシロキサン化合物などが挙げられる。
消泡剤の効果を示す親水基と疎水基のバランス(HLB価)は6以下が好ましく、特に4以下が好ましい。
【0130】
塗膜の光沢を調整する必要がある場合は、常用の無機または有機のツヤ消剤を添加してもよい。
着色が必要な場合には、市販の有機顔料、無機顔料、有機染料、これらを複合化した顔料もしくは染料、等の着色材を分散もしくは混合添加してもよい。
着色材の量は含フッ素共重合体(A)と他の合成樹脂の総質量に対して、10〜120質量%が好ましく、20〜100質量%が特に好ましい。
【0131】
<硬化剤(E)>
二液硬化型水性塗料キットの硬化剤(E)は、化合物(B)のみ、または化合物(B)と媒体(C2)を含有する。媒体(C2)は、上記水性媒体(C)で例示した水以外の媒体、すなわち水溶性の有機溶媒と全く同様のものが使用可能であり、好ましい態様も上記水性媒体(C)の水溶性の有機溶媒と同様である。媒体(C2)は、硬化剤(E)を上記主剤(D)と混合する直前に、硬化剤(E)に配合することが好ましい。
【0132】
上記硬化剤(E)における、上記化合物(B)の含有量は、塗料とした場合の固形分濃度を調整しやすさの観点から、硬化剤(E)全量に対して60〜100質量%が好ましく、80〜100質量%がより好ましい。また、硬化剤(E)における媒体(C2)の含有量も、塗料とした場合の固形分濃度の調整しやすい観点から、硬化剤(E)全量に対して0〜40質量%であることが好ましく、0〜20質量%であることがより好ましい。
【0133】
硬化剤(E)中に含ませ得る化合物(B)および媒体(C2)以外の成分としては、消泡剤等が挙げられる。媒体(C2)中には、溶剤として、具体的にはメトキシプロピルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル等を含ませ得る。溶剤の配合量は、硬化剤(E)の総質量に対して0〜30質量%が好ましい。消泡剤は主剤(D)において例示した消泡剤を用いることができ、配合量は、硬化剤(E)の全質量に対して0〜2質量%が好ましい。
【0134】
硬化剤(E)中には、製造に用いた未反応の原料を含んでいてもよい。未反応の原料としては、ジイソシアネートまたはアミノスルホン酸が挙げられる。未反応の原料の量は、化合物(B)の総質量に対して、1質量%未満が好ましくは、0.5質量%未満が特に好ましい。
【実施例】
【0135】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定解釈されない。実施例で用いた化合物の水酸基価および酸価は次の方法で測定したものである。
(酸価)重合体をテトラヒドロフランに溶解し、0.1N水酸化カリウム−エチルアルコール溶液で滴定して求めた。
(水酸基価)重合体をテトラヒドロフランに溶解し、無水酢酸を用いて水酸基をアセチル化し、次に水を加えて過剰の無水酢酸を酢酸にして、酸価を測定した。過剰であった無水酢酸量を定量することにより、水酸基のアセチル化に消費された無水酢酸量を求め、水酸基を計算した。元の重合体に酸価がある場合は差し引いた。
【0136】
[合成例1]含フッ素共重合体(A1)の作製例
含フッ素共重合体(X1)として、旭硝子社製の塗料用フッ素樹脂ルミフロンフレーク(商品名)(クロロトリフルオロエチレン/エチルビニルエーテル/シクロヘキシルビニルエーテル/4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(モル%比が50/15/15/20)、水酸基価100mgKOH/g、質量平均分子量(Mw)7,000)を用い、これをメチルエチルケトン(MEK)に溶解させ、含フッ素共重合体(X1)を固形分として60質量%含有するワニスを得た。
【0137】
ワニス300部に、無水コハク酸の20質量%アセトン溶液の19.3部、および触媒としてトリエチルアミンの0.072部を加え、70℃で6時間反応させて含フッ素共重合体(X1)をエステル化した。反応液の赤外吸収スペクトルを測定したところ、反応前に観測された無水酸の特性吸収(1850cm−1、1780cm−1)が反応後では消失しており、カルボン酸(1710cm−1)およびエステル(1735cm−1)の吸収が観測された。
【0138】
エステル化後の含フッ素共重合体の酸価は12mgKOH/g、水酸基価は86mgKOH/gであった。この酸価と水酸基価の値から、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(重合単位(2))の重合単位20モル%のうち、約2.4モル%がエステル化されたことがわかった。
【0139】
次に、エステル化後の含フッ素共重合体(X1)に、トリエチルアミンの3.9部を加え室温で20分攪拌しカルボン酸の一部を中和し、次いでイオン交換水の180部を徐々に加えた。これにより、エステル化されカルボキシル基が導入された重合単位の約2.4モル%のすべてが中和されて塩を形成した含フッ素共重合体(A1)を得た。
【0140】
含フッ素共重合体(A1)の水分散液から、アセトンおよびメチルエチルケトンを減圧留去した。さらに、イオン交換水の約90部を加えて、含フッ素共重合体(A1)を固形分濃度40質量%で分散する水性分散液を得た。
【0141】
[実施例1]
酸化チタン顔料としてTiPURER706(商品名、デュポン社製)の70部、顔料分散剤としてDisperbyk190(商品名、BYKケミー社製)の7部、消泡剤としてBYK−028(商品名、BYKケミー社製)の1部、イオン交換水22部、ガラスビーズ100部を混合し、グレンミル分散機を用い分散し、その後ガラスビーズを濾過して顔料分散液を作製した。
【0142】
上記合成例1で得られた含フッ素共重合体(A1)の水性分散液50質量部に対し、上記顔料分散液の20質量部、表面調整剤としてBYK−348(商品名、BYKケミー社製)の0.2部、増粘剤としてポリウレタン系会合性増粘剤BERMODOL PUR 2150(商品名、Akzo Nobel社製)の0.1質量部、硬化剤としてバイヒジュールXP2655(商品名:Bayer社製、スルホン酸変性ポリイソシアネート(HDI三量体)(ただし、スルホ基は3級アミンによりその一部が中和されており、イソシアネート基平均数:3〜3.5、イソシアネート基含有量:20.7質量%、である化合物(B)に相当する化合物。)を固形分濃度で100質量%含有する硬化剤)の5部を配合し、PTFE製スパチュラを用いて30秒攪拌混合して、水性塗料用組成物1を得た。
【0143】
水性塗料用組成物1について、混合後の状態を目視で観察したところ、全体が均一に混ざって分散液を形成していた。得られた水性塗料用組成物1を、混合直後、4時間後、6時間後に、その性状を目視で観察した後、それぞれクロメート処理アルミ板に、乾燥膜厚が40μmとなるようにアプリケータを用いて塗布し、23℃で24時間の条件で乾燥・硬化させて得られた塗膜の光沢値を以下の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0144】
<光沢値の測定方法>
日本電色工業社製、ハンディ光沢計PG−1Mを用い、ISO2813に記載の方法にしたがって60°光沢を測定した。
【0145】
[比較例1]
硬化剤の種類をバイヒジュール3100(商品名:Bayer社製、ポリオキシアルキレン変性ポリイソシアネート(HDI三量体)(イソシアネート基平均数:3〜3.5、イソシアネート基含有量:17.4質量%、スルホネート基含有量:0質量%)を固形分濃度で100質量%含有する硬化剤)に変更した以外は、実施例1と同様にして、顔料分散液、含フッ素共重合体(A1)の水性分散液、硬化剤、およびその他添加成分を配合し、攪拌混合を行って、水性塗料用組成物2を得た。
【0146】
水性塗料用組成物2について、混合後の状態を目視で観察したところ、硬化剤のとけ残りがみられた。得られた水性塗料用組成物2を、混合直後、4時間後、6時間後に、その性状を目視で観察した後、それぞれクロメート処理アルミ板に、上記実施例1と同様にして乾燥膜厚が40μmとなるように塗膜を形成したときの塗膜の光沢値を上記同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0147】
【表1】

【0148】
表1からわかるように、ポリイソシアネート化合物として上記化合物(B)に相当する化合物を用いた実施例1で得られた水性塗料用組成物1においては、組成物調製後6時間を経過しても、流動性の低下もなく均一に溶解して外観良好であり、得られる塗膜も調製直後に得られた塗膜と比べて塗膜光沢値はあまり低下しておらず外観も良好である。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明の水性塗料用組成物および二液硬化型水性塗料キットは、ポットライフが長い。本発明の水性塗料用組成物から得られる塗膜は、外観に優れる。本発明の水性塗料用組成物を適用する基材としては、鋼板、表面処理鋼板などの金属、プラスチック、無機材料などの素材が挙げられ、これらの基材にプライマーまたは上中塗りとして用いうる。さらに防錆鋼板を含むプレコートメタル、自動車塗装、プラスチック塗装などに美粧性、耐候性、耐酸性、防錆性、耐チッピング性、電気絶縁性などを付与するための塗料としても有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記含フッ素共重合体(A)、下記化合物(B)、および水性媒体(C)を含有する水性塗料用組成物。
含フッ素共重合体(A):水酸基を有する含フッ素共重合体。
化合物(B):スルホ基または一部もしくは全部が中和されたスルホ基と、1を超える数のイソシアネート基とを有する化合物。
【請求項2】
前記含フッ素共重合体(A)が、フルオロオレフィンに基づく重合単位と、水酸基を有する重合単位を含み、かつ、その水酸基価が20〜150mgKOH/gであることを特徴とする請求項1に記載の水性塗料用組成物。
【請求項3】
前記含フッ素共重合体(A)が、さらに、酸基または一部もしくは全部が中和された酸基を有する重合単位を含み、かつ、その酸価が0mgKOH/gを超え40mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項2に記載の水性塗料用組成物。
【請求項4】
前記含フッ素共重合体(A)が、フルオロオレフィンに基づく重合単位、下式(2)で表わされる重合単位、下式(3)で表される重合単位、および下式(4)で表わされる重合単位を含み、かつ、前記含フッ素共重合体(A)中の全重合単位に対するフルオロオレフィンに基づく重合単位の割合が40〜60モル%であり、前記下式(4)で表わされる重合単位の割合が3〜50モル%である請求項3に記載の水性塗料用組成物。
【化1】

(ただし、式(2)中、R2bは水素原子またはメチル基、R2cは炭素数1〜10のアルキレン基または炭素数4〜10の2価の脂環式基である。mは0〜8の整数、nは0または1である。)
【化2】

(ただし、式(3)中、R3bは水素原子またはメチル基、R3cは、炭素数1〜10のアルキレン基または炭素数4〜10の2価の脂環式基、R3dは炭素数2〜10のアルキレン基、またはエチレン性二重結合を1以上有する炭素数2〜10の2価の炭化水素基、炭素数4〜10の2価の脂環式基、または炭素数4〜10の2価の芳香族基、R3eは水素原子または−NHZ(Z、Z、およびZはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基である。)である。pは0〜8の整数、qは0または1である。)
【化3】

(ただし、式(4)において、R4bは水素原子またはメチル基、R4eは炭素数1〜12のアルキル基または炭素数4〜10の1価の脂環式基である。jは0〜8の整数、kは0または1である。)
【請求項5】
前記化合物(B)が、イソシアネート基を2以上有するポリイソシアネートと、アミノスルホン酸とを、前記イソシアネート基が1を超える割合で残るように反応させて得られる化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性塗料用組成物。
【請求項6】
前記アミノスルホン酸が、2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸および3−(シクロへキシルアミノ)プロパンスルホン酸から選ばれる少なくとも1種である請求項5に記載の水性塗料用組成物。
【請求項7】
前記化合物(B)が有するイソシアネート基の数が1.8以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載の水性塗料用組成物。
【請求項8】
前記化合物(B)が有するイソシアネート基の数が2.0〜4.8であり、前記化合物(B)における、分子量に占めるイソシアネート基の割合が4.0〜26.0質量%であり、スルホネート基(ただし、SO基として計算した質量)の割合が0.1〜7.7質量%である請求項1〜7のいずれか1項に記載の水性塗料用組成物。
【請求項9】
前記含フッ素共重合体(A)と前記水性媒体(C)とを含む主剤(D)、および前記化合物(B)を含む硬化剤(E)、または、前記含フッ素共重合体(A)と水性媒体(C1)とを含む主剤(D)、および前記化合物(B)と水を含まない媒体(C2)とを含む硬化剤(E)(ただし、水性媒体(C1)と媒体(C2)を合わせると前記水性媒体(C)となる。)からなり、前記主剤(D)と前記硬化剤(E)とを合わせることで請求項1〜8のいずれか1項に記載の水性塗料組成物を形成することを特徴とする二液硬化型水性塗料キット。

【公開番号】特開2013−1756(P2013−1756A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132270(P2011−132270)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】